(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
媒体を収納するカセットの外側に設置して前記カセットに媒体を引込む搬送力を測定または前記カセットの内側に設置して前記カセットから媒体を繰出す搬送力を測定する搬送力測定装置において、
互いに平行に配置された側壁を有するフレームと、
媒体に結合して搬送装置が媒体を搬送するときの引っ張り力を測定するテンションゲージと、
前記テンションゲージを載置して該テンションゲージの傾斜角度が切替えられるよう前記フレームの前記側壁に回動自在に支持されたテーブルと、
前記テーブルの下面に配置されて前記テンションゲージを載置した前記テーブルを第1の傾斜角度または第2の傾斜角度で支持するテーブルストッパと、
を備えていることを特徴とする搬送力測定装置。
前記テーブルストッパは、前記第1の傾斜角度と同じ傾斜角度の回転中心を有するよう前記フレームの前記側壁に設けられた軸受に支持され、前記回転中心を中心にして回転されることにより前記テーブルの支持面が前記第2の傾斜角度と同じ傾斜角度を有する面になることを特徴とする請求項1記載の搬送力測定装置。
前記テーブルストッパは、台形のベースと、前記ベースの斜辺を含む隣接した三辺から同一方向に同じ長さで延出された第1ないし第3の支持板とを有し、対辺が互いに平行をなす二辺から延出された前記第1および第3の支持板は、前記軸受に支持されるシャフトが通される孔を有するとともに前記第2の支持板から遠い側の角部が前記孔と同心円の形状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の搬送力測定装置。
前記フレームの前記側壁に設けられて、基準面に突き当てることで、前記基準面から所定の距離を離間することができるスペーサをさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の搬送力測定装置。
【背景技術】
【0002】
紙幣リサイクルユニットは、入金処理では、入金され、鑑別されて搬送されてきた紙幣を引込んでカセットの内部に収納し、出金処理では、カセットに収納されている紙幣を内部から繰り出す。つまり、入金された紙幣は、出金用の紙幣としてリサイクルされる。このカセットにおける紙幣の引込みおよび繰出しは、紙幣の引込みおよび繰出しを行う部分に駆動ローラ、ピンチローラなどによる搬送装置が設置され、駆動ローラおよびピンチローラが紙幣を挟み込んで回転駆動したときの摩擦による搬送力によって行われる。
【0003】
紙幣の引込みおよび繰出しを安定して確実に行うため、搬送装置の搬送力を測定して確認することが一般に行われている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1では、ローラによって搬送される記録紙の搬送方向後端にテンションゲージを設置し、ローラを回転させることによって記録紙がテンションゲージを引っ張り、これにより、テンションゲージが搬送力を測定している。
【0004】
紙幣リサイクルユニットにおける紙幣補充用のカセットでは、紙幣の収納動作と繰出し動作との両方を有しているので、搬送力の測定は、紙幣を引込むときおよび紙幣を繰出すときの両方で行われる。
【0005】
紙幣を引込むときの搬送力の測定は、テンションゲージが備えられた搬送力測定装置をカセットの外側に設置して行われる。一方、紙幣を繰り出すときの搬送力の測定は、テンションゲージが備えられた搬送力測定装置をカセットの内側に設置して行われる。このとき、搬送力測定装置は、その内外の設置位置によって、搬送力測定装置を設置する高さ基準が異なるので、テンションゲージの高さ位置および紙幣の引っ張り方向がそれぞれ違う構造を有し、そのため、外側設置用と内側設置用との2種類用意されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る搬送力測定装置の全体構成を示す側面図である。
【
図2】搬送力測定装置の可動部の平面視である
図1のA矢視図である。
【
図3】搬送力測定装置の可動部の側面視である
図2のB矢視図である。
【
図4】搬送力測定装置のフレームを示す図であって、(A)はフレームの側面図、(B)はフレームの正面図である。
【
図5】カセット外側で測定するときのテーブルストッパの状態を示す図であって、(A)はテーブルストッパを
図4(B)のC矢視方向から見た図、(B)はテーブルストッパを搬送力測定装置の正面側から見た図である。
【
図6】カセット内側で測定するときのテーブルストッパの状態を示す図であって、(A)はテーブルストッパを
図4(B)のC矢視方向から見た図、(B)はテーブルストッパを搬送力測定装置の正面側から見た図である。
【
図7】テーブルストッパを示す図であって、(A)はテーブルストッパを一方向から見た図、(B)は(A)の状態からテーブルストッパを90度回転した状態で示す図、(C)は(B)の状態のテーブルストッパを図の下方から見た図である。
【
図8】テーブルストッパをフレームの側板の軸受に取り付ける状態を示す斜視図である。
【
図9】カセット外側で測定するときのテーブルストッパの状態を示す
図4(B)のC矢視図である。
【
図10】カセット内側で測定するときのテーブルストッパの状態を示す
図4(A)のC矢視図である。
【
図11】カセットの外側および内側における搬送力測定装置の測定状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る搬送力測定装置の全体構成を示す側面図、
図2は搬送力測定装置の可動部の平面視である
図1のA矢視図、
図3は搬送力測定装置の可動部の側面視である
図2のB矢視図、
図4は搬送力測定装置のフレームを示す図であって、(A)はフレームの側面図、(B)はフレームの正面図である。
【0014】
搬送力測定装置10は、フレーム11を備え、そのフレーム11によって囲まれた空間に、テンションゲージ12を支持する可動部13が設置されている。フレーム11は、
図4に示したように、底板11aの対向端縁から側板11b,11cが立設されてU字形状に形成され、側板11b,11cの正面側(
図4の(A)の右側)端縁には、可動部13を回動自在に保持する保持板11d,11eが突設されている。保持板11d,11eには、可動部13の回動中心となる孔11xがそれぞれ設けられている。
【0015】
可動部13は、テーブル14と、このテーブル14に載置されたステージ15と、このステージ15に載置されたスライダ16と、このスライダ16に載置されたゲージベース17とを備えている。
【0016】
テーブル14は、
図2および
図3に示したように、その正面側(
図2の右側)の両端より立ち上げられた側板14a,14bを有している。その側板14a,14bには、孔が形成されていて、そこに軸受部18a,18bの軸がそれぞれ遊嵌され、さらに、その軸受部18a,18bは、フレーム11の孔11xを介してねじ止めされることによりフレーム11に固定されている。これにより、テーブル14は、フレーム11の孔11xを中心にしてフレーム11に回動自在に保持されている。
【0017】
テーブル14は、また、その背面側(
図2の左側)にて幅が狭くされた部分の両端より側板14c,14dが立ち上げられており、その側板14c,14dには、ステージ15が揺動自在に取り付けられている。すなわち、ステージ15は、その側面より側板15a,15bが立ち上げられており、その側板15a,15bに設けた孔には、軸受部19a,19bが固定されている。これら軸受部19a,19bとテーブル14の側板14c,14dの孔には、シャフト20が挿通され、その両端は、Eリング21が嵌められて抜けが防止されている。
【0018】
ステージ15の側板15a,15bよりも正面側(
図2の右側)には、スライダ16が載置されている。スライダ16は、テンションゲージ12の軸線方向の位置を微調整するためのものであり、横に設けられたつまみ部16aを回転させることによって、上面がステージ15に対してその長手方向にスライドさせることができる。
【0019】
スライダ16の上面には、テンションゲージ12を収容するゲージベース17が固定されている。ゲージベース17は、棒形のテンションゲージ12を収容が可能なように細長いベースの両側側と正面側(
図2の右側)の側縁とに側板17a,17b,17c,17d,17eが立ち上げられている。ゲージベース17の側板17eは、正面から見てU字形状の切欠きを有し、その切欠きに、テンションゲージ12の一端に取り付けられていて媒体が取り付けられるフックを通すようにしている。これにより、フックが媒体によって引っ張られるとき、テンションゲージ12は、ゲージベース17の側板17eによって軸線方向の移動が阻止される。
【0020】
搬送力測定装置10は、これをカセットの外側または内側に設置するときに水平方向の位置決めをするためのスペーサ27をフレーム11の正面側に備えている。すなわち、フレーム11の保持板11dの正面側端縁には、スペーサベース11iが形成され、そのスペーサベース11iには、長孔11jが穿設されている。スペーサ27は、スペーサベース11iの長孔11jに固定され、その長孔11jによって高さ方向の位置が調節される。スペーサ27は、また、伸縮自在に形成されており、スペーサベース11iからの水平方向の突出距離が調整可能になっている。なお、スペーサ27は、その先端が弾性を有する材料によって形成されている。
【0021】
以上のようにして、搬送力測定装置10は、その可動部13がフレーム11の孔11xを中心に回動自在にフレーム11に設けられている。次に、可動部13を回動させて所定の2角度に停止可能な角度位置決めを行うテーブルストッパ22について説明する。
【0022】
図5はカセット外側で測定するときのテーブルストッパの状態を示す図であって、(A)はテーブルストッパを
図4(B)のC矢視方向から見た図、(B)はテーブルストッパを搬送力測定装置の正面側から見た図である。
図6はカセット内側で測定するときのテーブルストッパの状態を示す図であって、(A)はテーブルストッパを
図4(B)のC矢視方向から見た図、(B)はテーブルストッパを搬送力測定装置の正面側から見た図である。
図7はテーブルストッパを示す図であって、(A)はテーブルストッパを一方向から見た図、(B)は(A)の状態からテーブルストッパを90度回転した状態で示す図、(C)は(B)の状態のテーブルストッパを図の下方から見た図である。
図8はテーブルストッパをフレームの側板の軸受に取り付ける状態を示す斜視図である。
図9はカセット外側で測定するときのテーブルストッパの状態を示す
図4(B)のC矢視図、
図10はカセット内側で測定するときのテーブルストッパの状態を示す
図4(A)のC矢視図である。なお、
図5および
図6においては、テーブルストッパ22がシャフト23を水平にしたときの状態で示されている。
【0023】
テーブルストッパ22は、フレーム11の側板11cに回動可能に取り付けられている。すなわち、
図4に示されるように、フレーム11の側板11cには、切り起こし曲げによってテーブルストッパ22の軸受11f,11gが形成され、軸受11gの近傍には、切り起こし曲げによってピンベース11hが形成されている。軸受11f,11gは、それらの孔中心を結ぶ回転中心線が、カセット外側で測定するときのテンションゲージ12の傾きに一致するように傾斜して形成されている。
【0024】
テーブルストッパ22は、
図7および
図8に詳細に示されるように、隣接する三辺の内角が直角をなし、残りの一辺が隣接する三辺の中心の辺と平行になっていない台形形状のベース22aを有している。テーブルストッパ22は、また、そのベース22aの四辺のうち、対辺が互いに平行をなす二辺と、この二辺となす内角が直角でない一辺とから同一方向に同じ長さで延出された3枚の支持板22b,22c,22dを有している。テーブルストッパ22は、さらに、互いに平行な対辺の二辺となす内角が直角である一辺から、支持板22b,22c,22dの延出方向とは逆方向に回転制限板22eが延出されている。
【0025】
互いに平行な対辺の二辺より延出された支持板22b,22cには、回転中心のシャフト23(
図9および
図10参照)を通す孔22fが穿設されている。また、支持板22bには、孔22fから回転制限板22eの延出方向と平行であって回転制限板22eの延出方向とは逆方向の位置に、ピン24(
図9および
図10参照)を固定する孔22gが形成されている。なお、支持板22b,22cは、回転制限板22eとは反対側の角部は、孔22fと同心円の形状になるよう形成されている。
【0026】
テーブルストッパ22は、支持板22b,22cの孔22fと、フレーム11の側板11cに形成された軸受11f,11gとにシャフト23を通し、シャフト23の両端には、Eリングが嵌め込まれている。これにより、テーブルストッパ22は、シャフト23の回転中心23aを中心に回動自在にフレーム11に設けられていることになる。
【0027】
テーブルストッパ22は、また、支持板22bに固定されたピン24と、ピンベース11hに固定されたピン25との間にコイルばね26が掛け渡されている。このコイルばね26は、テーブルストッパ22が回転しないように、テーブルストッパ22をフレーム11の側板11cに押し付ける機能を有している。
【0028】
すなわち、カセット外側で測定するときには、テーブルストッパ22は、
図5の(B)の状態になるが、実際には、回転制限板22eと側板11cとの間には微小のスペースがある。このため、支持板22bに固定されたピン24とシャフト23の回転中心23aとを結ぶ線は、側板11cの面と平行にならず、ピン24は、シャフト23の回転中心23aよりも側板11cから微小に離れた位置に来る。その結果、コイルばね26は、回転制限板22eを側板11cに当接させる方向にテーブルストッパ22を回転駆動することになる。
【0029】
一方、カセット内側で測定するとき、テーブルストッパ22は、
図6の(B)の状態になるので、コイルばね26は、支持板22b,22c,22dを側板11cに当接させる方向にテーブルストッパ22を回転駆動することになる。
【0030】
テーブルストッパ22は、カセット外側で測定するとき、3枚の支持板22b,22c,22dの延出方向の端面が
図5、
図8および
図9に示すように上を向くので、3枚の支持板22b,22c,22dの延出方向の端面がテーブル14の下面を下から支持する支持面になる。また、カセット内側で測定するときは、テーブルストッパ22は、回転制限板22eに対向する側の支持板22dの外表面が
図6および
図10に示すように上を向くので、その支持板22dの外表面がテーブル14の下面を下から支持する支持面になる。しかも、支持板22dの外表面は、3枚の支持板22b,22c,22dの端面がテーブル14の支持面となる場合よりも、シャフト23の回転中心23aからの距離が長くなるので、テーブル14をより高く押し上げて傾斜をより急にすることになる。
【0031】
次に、テーブルストッパ22の回転中心23aの水平に対する傾斜角度およびテーブルストッパ22が回転したときの支持板22dの傾斜角度と、その設定方法などを、搬送力測定装置10の設置方法とともに説明する。
【0032】
図11はカセットの外側および内側における搬送力測定装置の測定状態を示す説明図である。
まず、搬送力測定装置10をカセットの外側および内側に設置するときには、設置のための高さ基準と横基準とがある。高さ基準は、カセット外側での測定では、カセットに隣接する基準面L1であり、カセット内側での測定では、カセット内の基準面L2である。すなわち、搬送力測定装置10は、搬送力測定時には、基準面L1,L2の上に載置される。横基準は、カセット外側での測定では、カセットに隣接して設置されたフレーム板金などからなる基準面S1であり、カセット内側での測定では、カセット内のフレーム板金などからなる基準面S2である。搬送力の測定は、スペーサ27を基準面S1,S2に突き当てて、搬送力測定装置10を基準面S1,S2から所定距離だけ離間した状態で行われる。
【0033】
搬送力測定装置10は、搬送装置としての駆動ローラ30およびピンチローラ31,32が疑似媒体33をカセットの中に引込む方向またはカセットから外部へ繰出す方向に搬送する力を測定する。すなわち、疑似媒体33を駆動ローラ30およびピンチローラ31,32で挟持させた状態でテンションゲージ12と結合し、駆動ローラ30を回転駆動させて疑似媒体33が搬送されるときの引っ張り力をテンションゲージ12が測定することになる。
【0034】
カセット内部へ疑似媒体33を引込むときの搬送力は、カセットの外側(
図11では、右側)の所定位置に搬送力測定装置10を設置して測定される。このとき、テンションゲージ12の先端は、基準面L1から高さHの位置であって基準面S1からは距離Dの位置にあり、水平に対してある角度αだけ傾斜している。この傾斜の角度αは、テーブルストッパ22の回転中心23aの水平に対する傾斜角度に相当する。つまり、テーブルストッパ22を支持する軸受11f,11gは、水平に対して角度αだけ傾斜してフレーム11の側板11cに形成されている。
【0035】
カセット外部へ疑似媒体33を繰出すときの搬送力は、カセットの内側(
図11では、左側)の所定位置に搬送力測定装置10を設置して測定される。このとき、テンションゲージ12の先端は、テーブルストッパ22を回転させなければ、基準面L2から高さHの位置、基準面S2から距離Dの位置にあり、水平に対して角度αだけ傾斜した状態にある。疑似媒体33を繰出すときの搬送力を測定するときは、テーブル14を起こしてテーブルストッパ22を
図5の(B)の状態になるよう90度回転させ、その上にテーブル14を載せた状態で行われる。これにより、テンションゲージ12は、テーブル14の回動中心を中心にして角度βだけさらに傾斜する。つまり、この角度βは、テーブルストッパ22の回転中心23aに対する支持板22dの傾斜角度に相当する。
【0036】
以上のように、テーブルストッパ22を回転するだけで、テンションゲージ12を2つの角度に位置決めすることができる。このため、紙幣を引込むときの搬送力を測定する装置および紙幣を繰出すときの搬送力を測定する装置の2台を必要とすることなく、1台で両方の測定が可能になる。紙幣を引込むときの搬送力および紙幣を繰出すときの搬送力を同一のテンションゲージ12で測定するため、同じ精度で測定でき、テンションゲージ12の維持管理が一台分で済む。
【0037】
なお、上記の実施の形態では、テーブルストッパ22の回転中心23aの傾斜角度をカセット外側に搬送力測定装置10を設置したときのテンションゲージ12の角度αに合わせたが、カセット内側に設置したときのテンションゲージ12の角度に合わせてもよい。この場合、テーブルストッパ22の回転中心23aに対する支持板22dの傾斜角度は、上記の場合と逆になる。