特許第5851402号(P5851402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5851402薬物送達デバイス用の駆動機構及び薬物送達デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851402
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス用の駆動機構及び薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
   A61M5/315
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-527332(P2012-527332)
(86)(22)【出願日】2010年9月3日
(65)【公表番号】特表2013-503669(P2013-503669A)
(43)【公表日】2013年2月4日
(86)【国際出願番号】EP2010062924
(87)【国際公開番号】WO2011026928
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2013年8月23日
(31)【優先権主張番号】09011420.8
(32)【優先日】2009年9月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン・ラープ
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ・アルンホルト
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−541931(JP,A)
【文献】 特表2006−519078(JP,A)
【文献】 特開2007−233(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102007052013(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0210199(US,A1)
【文献】 国際公開第2004/078242(WO,A2)
【文献】 独国特許出願公開第10237258(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス用の駆動機構であって:
近位端(2)及び遠位端(3)を有する本体(1)、
回転軸に沿って本体内に配置されるピストンロッド(7)、並びに
本体内に配置され、軸に対して回転可能なようにピストンロッドと連結されている駆動部材(10)、
を含み
ここで、ピストンロッドは、ピストンロッドの軸周囲回転によりピストンロッドが軸に沿って移動するよう本体に対してラセン状に可動であり、ピストンロッドが、ラセンエレメント(13)及び軸エレメント(18)を含む誘導トラックを備え、誘導エレメント(25)が、本体内に配置されており、誘導エレメントが本体に対して固定されており、誘導エレメントは、誘導エレメントおよび誘導トラックがピストンロッドの運動を案内するよう誘導トラックと連結されており、そしてピストンロッド(7)が、プライミング工程において、駆動部材(10)により遠位端(3)に向かって移動するよう提供される、駆動機構。
【請求項2】
ピストンロッド(7)のラセンエレメント(13)が、スクリューネジ山(13)である、請求項1に記載の駆動機構。
【請求項3】
ピストンロッド(7)の軸エレメント(18)が、スクリューネジ山(13)へ導く軸方向のネジ溝(18)である、請求項2に記載の駆動機構。
【請求項4】
駆動部材(10)が、ピストンロッドの軸方向のネジ溝(17)を用いることによりピストンロッド(7)と回転連結され、軸方向のネジ溝が遠位端(3)の方向に限界を有することを更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項5】
駆動部材(10)が、遠位端(3)に向かって移動できるような方法で配置され、
前記駆動部材が、ピストンロッド(7)の軸方向のネジ溝(17)を係合する軸方向のネジ山(27)を用いることによりピストンロッド(7)と連結し、
前記駆動部材が遠位端に向かって移動するとき、前記駆動部材が遠位端に向かってピストンロッドを移動させ、一方、軸方向のネジ山が軸方向のネジ溝の限界と接触し、そして誘導エレメント(25)がピストンロッドの軸エレメント(18)と連結する、請求項4に記載の駆動機構。
【請求項6】
ピストンロッド(7)が、プライミング工程において駆動部材(10)により遠位端(3)に向かって移動するように提供される、請求項5に記載の駆動機構。
【請求項7】
用量スリーブ(12)を用いることにより、ピストンロッド(7)を遠位端(3)に向かって移動させることを可能にするような方法で、用量スリーブ(12)が。ピストンロッド(7)と連結されることを更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項8】
ピストンロッド(7)が、用量スリーブ(12)を用いることにより、遠位端(3)に向かって移動し、一方、誘導エレメント(25)が、ピストンロッドの軸エレメント(18)に連結する、請求項7に記載の駆動機構。
【請求項9】
ピストンロッド(7)が、プライミング工程において用量スリーブ(12)により遠位端に向かって移動するように提供される、請求項8に記載の駆動機構。
【請求項10】
−本体(1)内に配置され、そして本体に回転連結される停止部材(9)、
−本体内に配置されるスプリング(8)、前記スプリングは近位端の方向に、停止部材に力を加え、
−近位端に面する駆動部材(10)の側面上の本体内に配置された駆動スリーブ(11)、前記駆動スリーブは本体に対して軸の周囲に回転可能であり、
−ギヤ(21)は、駆動スリーブが軸の周囲で第一の回転方向に回転するとき、駆動部材及び停止部材と回転連結し、
−ギヤ(22)は、駆動スリーブが軸の周囲で第一の回転方向と反対方向の第二の回転方向に回転するとき、駆動部材及び駆動スリーブを回転連結し、
−本体内に配置された用量スリーブ(12)、前記用量スリーブは、用量スリーブの軸周囲回転により用量スリーブが軸に沿って移動するよう本体に対してラセン状に可動であり、及び
−用量スリーブと駆動スリーブの間の連結、用量スリーブが遠位端に向かって動くとき、連結は軸の周囲で第二の回転方向に駆動スリーブの回転をもたらす;
ことを更に含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項11】
ピストンロッド(7)のラセン運動は、ピストンロッドが本体に対して第二の回転方向に回転するとき、遠位端(3)に向かってピストンロッドを前進させる、請求項10に記載の駆動機構。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の駆動機構を含む薬物送達デバイスであって、本体内の遠位端(3)でのレセプタクル(4)、及びレセプタクル内でのピストン(6)を更に含み、前記ピストンはピストンロッド(7)を用いることにより軸に沿って可動である、薬物送達デバイス。
【請求項13】
レセプタクルはカートリッジ(5)のために提供され、そしてピストン(6)はカートリッジ内に挿入される、請求項12に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
用量は、近位端(2)の方向で用量スリーブ(12)の運動により設定され、そして
薬剤は、遠位端(3)の方向に用量スリーブの運動により送達される、請求項12又は13に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
本体(1)が、注射ペンの形状を有する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物送達デバイス用の駆動機構及びそのような駆動機構を組み込んだ薬物送達デバイスに関する。
【0002】
ポータブル薬物送達デバイスは、患者による自己投与に好適な薬液又は医薬品の投与用として一般的に公知である。薬物注射デバイスは、容易に取り扱うことができ、そしてどこでも利用できるペン形状が特に有用である。薬物送達デバイスの洗練されたタイプは、再充填可能で、そして何回も再使用可能であるように構築される。薬剤の用量は駆動機構を用いて送達され、それはまた、このようにして注射される流体量を設定することを可能にする。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、複数の異なった処方用量の送達を可能とする駆動機構を有する注射ペン形状の薬物送達デバイスを記載している。駆動機構は回転可能エレメントを含み、それは共通軸の周りを互いに対して回転し、そして回転可能エレメントの反対面の間に配置されているギヤにより連結される。ギヤは、回転可能エレメントの反対面のリムに沿って、方位角方向に傾斜していく対応するひと続きの 傾斜面により形成された改変ラチェットを含む。各傾斜面の勾配は急な側面に続き、その結果、ギヤの鋸歯形状を成し、それは、回転可能エレメントが軸に向かって半径方向に回転中に視認できるとき明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE第10237258号B4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、プライミングを可能とする薬物送達デバイス用の改良された駆動機構を開示することである。
【0006】
この目的は、請求項1に記載の駆動機構で達成される。変形体及び実施態様は、従属項から導かれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
薬物送達デバイス用の駆動機構は、近位端及び遠位端を有する本体又はハウジング内に配置される。駆動機構により駆動されるピストンロッドは、回転軸に沿って本体内で配置される。駆動部材は本体内で配置され、そして回転軸に対してピストンロッドと回転連結される。ピストンロッドは、ピストンロッドの軸周囲回転によりピストンロッドが軸に沿って移動するよう本体に対して、ラセン状に可動であ。ピストンロッドはラセンエレメント及び軸エレメントを含む誘導トラックを備えている。誘導エレメントは本体内に配置され、そして本体に対して固定されている。誘導エレメントは、誘導エレメントおよび誘導トラックがピストンロッドの運動を案内するようピストンロッドの誘導トラックに連結される。誘導エレメントがラセンエレメントに連結されるとき、誘導エレメントはピストンロッドのラセン運動を案内し、そして誘導エレメントが軸エレメントに連結されるとき、それは、本体の遠位端の方向へのピストンロッドの軸運動、ラセン運動を先導する軸運動を案内する。ピストンロッドは、プライミング工程において、駆動部材により遠位端に向かって移動するよう提供される。
【0008】
本体は、薬物送達デバイスの構成部品(特に、駆動機構及びピストンロッド)を収納し、固定し、又は保護するように、好ましくは、液体、ほこり、ごみなどの汚染物質への曝露を制限するように設計することができる。本体は、管状又は非管状の単一、又はマルチパートの構成部品であってもよい。
【0009】
用語「遠位端」は、薬剤が投与される薬物送達デバイスの部分に配置されることを意図する本体の部分に関する。用語「近位端」は、遠位端から遠く離れた本体の部分に関する。
【0010】
用語「ピストンロッド」は、特に、薬物又は薬剤を投与する目的で、運動をピストンへ移すように提供されるいかなるエレメントも包含する。ピストンロッドは、可撓性であっても、そうでなくてもよい。それは一体形であっても、又はマルチパートの構造であってもよく、そして、特に、単一ロッド、リードスクリュー、ラックアンドピニオン、ウォームギヤ系などであってもよい。
【0011】
駆動機構の実施態様において、ピストンロッドは遠位端を有し、それは本体の遠位端に最も近く、そしてピストン、又は摩擦で発生するかもしれない損傷を低減するために、ピストンとピストンロッドの間に配置されるベアリングを係合する。ピストンはリザーバ又はアンプルから薬剤を放出するように提供される。
【0012】
駆動機構の実施態様において、ピストンロッドのラセン状エレメントは、スクリューネジ山であり、そしてピストンロッドのラセン運動は、スクリューネジ山により起因する。本体に対して固定される誘導エレメントは、ピストンロッドのスクリューネジ山に沿って摺動し、その結果、ピストンロッドのラセン運動を案内する。誘導エレメントは、例えば、本体の内壁から突き出るラグ、又はスパイクであってもよい。
【0013】
更なる実施態様において、ピストンロッドの軸エレメントは、スクリューネジ山に導く軸方向のネジ溝である。
【0014】
更なる実施態様において、ピストンロッドの回転は、駆動部材により達成され、それはピストンロッドの軸方向のネジ溝又はピストンロッドのトラックを用いてピストンロッドと回転連結し、前記軸方向のネジ溝は、遠位端方向に限界を有する。
【0015】
更なる実施態様において、駆動部材は遠位端に向かって移動できるような方法で配置される。駆動部材は、ピストンロッドの軸方向のネジ溝に係合する軸方向のネジ山を用いて、ピストンロッドと連結する。駆動部材が遠位端に向かって移動するとき、駆動部材はピストンロッドを遠位端に向かって移動させ、 一方、軸方向のネジ山が、軸方向のネジ溝の限界と接触し、そして誘導エレメントは、ピストンロッドの軸方向のエレメントに連結する。ピストンロッドは、プライミング工程において、駆動部材により遠位端に向かって移動するように提供できる。
【0016】
更なる実施態様において、軸方向のネジ溝はスクリューネジ山と交差し、そして、駆動部材に対してピストンロッドの軸運動を可能にする。軸方向のネジ溝は、ピストンロッドの遠位端からの第一の距離で終結する。ピストンロッドのスクリューネジ山は、同様に、ピストンロッドの遠位端からの第二の距離で終結し、そして、更なる軸方向のネジ溝に導き、それはピストンロッドの遠位端へ伸びる。第一の距離は、更なる軸方向のネジ溝が、ピストンロッドを回転させるために提供されるピストンロッドの端部と軸方向のネジ溝の端部の間の第一の距離より短かくなるように、第二の距離より大きい。
【0017】
更なる軸方向のネジ溝は、ピストンロッドが本体の近位端に最も近い位置の近辺である限り、回転なしでピストンロッドの軸方向の運動を可能にする。この位置から本体の遠位端に向かうピストンロッドの軸方向の移動は、本体の誘導エレメントが完全に更なる軸方向のネジ溝を通過し、そしてピストンロッドのスクリューネジ山と係合するまで、ピストンロッドの回転なしで起る。その後、本体に対してピストンロッドのラセン運動が開始する。プライミング工程において、駆動部材と連結する軸方向のネジ溝の遠位限界が、ピストンロッドを本体の遠位端に向かって移動させるために使用される。これにより、誘導エレメントがピストンロッドのスクリューネジ山を開始させることになり、そして、その結果、ピストンロッドが、本体に対して、及び送達される薬物又は薬剤を含む本体内のレセプタクルに対して十分に画成された位置を占めるようになる。従って、第一の用量が設定されると、正確に送達される、何故ならば、ピストンの偶発的な運動が、ピストンロッドの正確な初期の位置決めにより阻止されるからである。
【0018】
駆動機構の実施態様において、用量部材は投与される各々の用量を設定するように提供され、そして、ピストンロッドのプライミングは、本体の遠位端に向かって用量部材を押すことにより実施される。用量部材は、ピストンロッドを、用量スリーブを用いることにより遠位端に向かって移動することを可能にするような方法でピストンロッドと係合する用量スリーブであってよい。
【0019】
更なる実施態様において、ピストンロッドは、用量部材を用いることにより遠位端に向かって移動し、その間、誘導エレメントはピストンロッドの軸エレメントに連結する。ピストンロッドは、プライミング工程において、用量部材により遠位端に向かって移動するように提供できる。
【0020】
更なる実施態様において、停止部材は本体内に配置され、そして本体と回転連結される。これは、停止部材の本体に対して回転が阻止されることを意味する。スプリングは本体内に配置され、前記スプリングは近位端の方向へ停止部材に力を加える。駆動部材は、近位端に面する停止部材側の本体内に配置される。駆動部材はピストンロッドと回転連結され、そして軸に沿ってピストンロッドに対して、可動である。駆動スリーブは、近位端に面する駆動部材側の本体内に配置される。駆動スリーブは、軸の周りの本体に対して回転可能である。駆動スリーブが軸の周りの第一の回転方向(sense of rotation)に回転するとき、ギヤは駆動部材及び停止部材と回転連結する。駆動スリーブが、軸周囲の第一の
回転方向と反対方向の第二の回転方向に回転するとき、更なるギヤが、駆動部材及び駆動スリーブと回転連結する。用量スリーブは本体内に配置され、そして、本体に対してラセン状に可動であり、前記運動は軸周囲の回転、及び軸に沿った同時移動を含む。用量スリーブ及び駆動スリーブが連結され、用量スリーブが遠位端に向かって動くとき、前記連結は、軸の周りの第二の回転方向に、駆動スリーブの回転を引き起こす。
【0021】
駆動機構の更なる実施態様は、ピストンロッドが本体に対して第二の回転方向に回転するとき、ピストンロッドのラセン運動は、ピストンロッドを遠位端に向かって前進させる方法でピストンロッドを案内する手段を含む。
【0022】
更なる実施態様において、ピストンロッドにより可動のピストンは、本体内の遠位端でレセプタクル内に配置できる。レセプタクルは、特に、カートリッジに対して提供し得て、そしてピストンはカートリッジ内に挿入し得る。
【0023】
駆動機構の更なる実施態様において、用量は近位端方向に用量スリーブを動かすことにより設定され、そして、薬剤は遠位方向に用量スリーブを動かすことにより送達される。
【0024】
駆動機構の更なる実施態様において、それは薬物送達デバイスの部分である。本体は、例えば、注射ペン形状であってもよい。
【0025】
更なる実施態様において、薬物送達デバイスは、本体内の遠位端でレセプタクルを、そして、レセプタクル内でピストンを含み、ピストンはピストンロッドを用いることにより軸に沿って可動である。レセプタクルはカートリッジに対して提供でき、そしてピストンはカートリッジ内に挿入することができる。
【0026】
薬物送達デバイスの更なる実施態様において、用量は近位端方向における用量スリーブの運動により設定され、そして薬剤は遠位端方向における用量スリーブの運動により送達される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のこれら及びその他の特徴は、図面の次の簡潔な記述、詳細な記述及び添付の請求項及び図面から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】注射ペン形状の薬物送達デバイスの概略の断面図を示す。
図2】駆動機構の部分透視図を示す。
図3】停止部材、駆動部材、及び駆動スリーブを含む駆動機構の実施態様の部分詳細図を示す。
図4】その遠位端を含むピストンロッド部分の透視図を示す。
図5】ピストンロッドの遠位端の拡大透視図を示す。
図6】駆動機構の更なる実施態様の概略断面図を示す。
図7】本体、ピストンロッド、及びピストンロッドをラセン運動に案内する手段を含む駆動機構の実施態様の部分断面図を示す。
図8】用量スリーブ、駆動スリーブ、駆動部材、及びピストンロッドを含む駆動機構の実施態様の部分透視図を示す。
【0029】
異なった実施態様の類似の、又は対応するエレメントは、図において同一参照番号が指定される。
【0030】
図1は、注射ペン形状の薬物送達デバイスの概略断面図を示す。薬物送達デバイスは代わりに他の好適な形状を有してもよい。デバイスはハウジング又は本体1を含む。用語「本体」は、主ハウジング又は外殻(shell)のようないかなる外部ハウジング、並びに、外部ハウジング内に配置されたインサート又は内部本体のような内部ハウジングも包含する。
【0031】
図1で示す実施態様において、本体1は細長い形状である。それは近位端2及び遠位端3を有する。本体1は、デバイスの再充填を可能にする、少なくとも二つの取付け可能な、そして分離部分からできている。本体1は薬物又は薬剤用に提供されたレセプタクル4を含む。レセプタクル4は薬剤を含み、そしてレセプタクル4内に挿入されるカートリッジ5を用いることにより充填されるように設計できる。カートリッジ5が空のとき、それは取り除かれ、そして新しいカートリッジで代替できる。薬剤はピストン6を用いてレセプタクルの開口部を通して投与され、それは薬剤を放出するためにピストンロッド7を用いて遠位端3に向かって、レセプタクル内で、特に、カートリッジ5内で前進する。
【0032】
本明細書で使用する用語「薬物」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで一実施態様において、薬学的に活性な化合物は、最大で1500Daまでの分子量を有し、及び/又は、ペプチド、蛋白質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、抗体、酵素、抗体、ホルモン、若しくはオリゴヌクレオチド、又は上記の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈又は肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症、及び/又は、関節リウマチの治療、及び/又は、予防に有用であり、
ここで更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の治療、及び/又は、予防のための、少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、又はその類似体若しくは誘導体、又はエキセンジン−3又はエキセンジン−4、若しくはエキセンジン−3又はエキセンジン−4の類似体若しくは誘導体を含む。
【0033】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであり、ここで、B28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで代替され、そして、B28位において、Lysは、Proで代替されてもよく;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0034】
インスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイル ヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0035】
エキセンジン−4は、例えば、エキセンジン−4(1−39)、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドを意味する。
【0036】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下の化合物リスト:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);又は
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
ここで、基−Lys6−NH2は、エキセンジン−4誘導体のC−末端と連結してもよく;
【0037】
又は以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desMet(O)14,Asp28,Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5,desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25, Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
又は前述のいずれかのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物;
から選択される。
【0038】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン (ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどのRote Liste、2008年版、50章に表示されている脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は規制活性ペプチド及びそれらの拮抗剤である。
【0039】
多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、又は超低分子量ヘパリン、若しくはその誘導体などのグルコアミノグリカン、又はスルホン化された、例えば、上記多糖類のポリスルホン化形体、及び/又は、薬学的に許容可能なその塩がある。ポリスルホン化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例としては、エノキサパリンナトリウム塩がある。
【0040】
薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩及び塩基塩がある。酸付加塩としては、例えば、HCl又はHBr塩がある。塩基塩は、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、Na+、又は、K+、又は、Ca2+から選択されるカチオン、又は、アンモニウム
イオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)を有する塩であり、ここで、R1〜R4は互いに独立に、水素;場合により置換されるC1−C6アルキル基;場合により置換されるC2−C6アルケニル基;場合により置換されるC6−C10アリール基、又は場合により置換されるC6−C10ヘテロアリール基である。薬学的に許容される塩の更なる例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences”17編、Alfonso R.Gennaro(編集),Mark
Publishing社,Easton, Pa., U.S.A.,1985 及び Encyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0041】
薬学的に許容可能な溶媒和物としては、例えば、水和物がある。
【0042】
遠位端3は、図1では示していないが、ニードル、又は、例えば、ニードルユニットを備えることができる。ピストンロッド7がピストン6に対して動く場合、図1に示していないが、ベアリングは、摩擦で発生するかもしれない損傷を低減するために、ピストン6とピストンロッド7の間に配置できる。図1は近位端2で用量ボタン20により操作できる駆動機構の位置29を示す。
【0043】
図1で示すデバイスと連結して使用される薬物又は薬剤は、好ましくは、液体薬物である。フルカートリッジ5は、好ましくは、薬剤の複数用量を含み、それは、例えば、インスリン、ヘパリン、又は成長ホルモンであってよい。デバイスは、使い捨て、又は再使用可能であってもよく、そしてそれは、薬剤の固定用量又は変動可能用量を投与するように構成し得る。薬剤はニードルにより投与してもよく、又はデバイスはニードルなしでもよい。
【0044】
図2は、駆動機構の実施態様の部分透視図を示す。停止部材9、駆動部材10及び駆動スリーブ11は、駆動部材10及び停止部材9を連結するラチェットにより、そして駆動部材10及び駆動スリーブ11を連結するラチェットにより係合される。ラチェット及びその機能は、以下により詳細に記載されるであろう。駆動スリーブ11は、スクリューネジ山15を備えた用量スリーブ12内に配置される。駆動スリーブ11及び用量スリーブ12は、回転連結され、それは、例えば、駆動スリーブ11の軸方向のネジ溝16により達成され得る。駆動スリーブ11は、用量スリーブ12に対して軸方向に動くことができるが、用量スリーブ12に対して回転することができない。用量スリーブ12は用量ボタン20を備えている。
【0045】
用量スリーブ12は、本体1に対して可動である。近位方向における用量スリーブ12の運動が、送達すべき薬剤の用量を設定し、そして遠位方向における用量スリーブ12の運動が、設定用量の送達をもたらす。用量スリーブ12は、 対応するネジ山を備えることができる本体1に対してラセン運動するスクリューネジ山15により案内される。用量スリーブ12のネジ山15を係合するネジ山は、代わりに、本体1に対して固定される更なる構成部品上に提供できる。用量スリーブ12の運動の近位端及び遠位端位置の位置は、本体1に提供される各々の停止機構により決定し得る。
【0046】
駆動部材10は、本体1に対して回転可能であり、そしてピストンロッド7へ回転を移すよう構成される。駆動部材10は、回転連結を用いることにより、ピストンロッド7を係合する。停止部材9は本体1に回転連結される。これは以下により詳しく説明される。
【0047】
用量の設定中、用量スリーブ12、及び回転連結のために、駆動スリーブ11は、本体1に対して第一の回転方向へ回転する。第一の回転方向への本体1に対して駆動部材10の回転は、駆動部材10と停止部材9の間のギヤで阻止される、何故ならば、このギヤは第一の回転方向において、停止部材9及び駆動部材10を回転連結するからである。駆動スリーブ11は、本体1に対して反対の第二の回転方向に回転し、駆動部材10と駆動スリーブ11の間のギヤは、駆動部材10が駆動スリーブ11と同じ回転方向に、及び同じ角速度で回転するように駆動部材10と駆動スリーブ11を回転連結する。従って、薬剤の送達中に発生するこの第二の回転方向において、回転は、駆動部材10からピストンロッド7へ移す。
【0048】
図3は、停止部材9、駆動部材10及び駆動スリーブ11の間のギヤを示す。駆動スリーブ11が本体1に対して第一の回転方向に回転するとき、駆動部材10に対して駆動スリーブ11の回転を可能にする一方向ギヤにより、駆動スリーブ11は、駆動部材10に連結される。駆動スリーブ11が本体1に対して第二の回転方向に回転するとき、ギヤは駆動部材10に対して駆動スリーブ11の回転を阻止する。その結果、駆動部材10は、薬剤の送達中、第二の回転方向において駆動スリーブ11の回転に従う。図3の実施態様において、ギヤは一種のラチェットを形成する。
【0049】
駆動部材10は、構成部品の周囲に沿って方位角的に配置され、そして駆動部材10及び停止部材9を連結する一種のラチェット21、並びに駆動部材10及び駆動スリーブ11を連結する一種のラチェット22を形成する歯を含む。ラチェット21の傾斜面23は、駆動部材10及び停止部材9を係合し、そしてラチェット22の傾斜面24は、駆動部材10を係合し、そして、駆動スリーブ11は、ギヤの一つに隣接するこれら二つの構成部品の相対的回転が回転の一方向で可能であるような方式で配置され、一方二つの構成部品の相対的回転が反対方向の回転で阻止される。その結果、上記の回転連結が達成される。停止部材9は、停止部材9を本体1と回転連結することを可能にする、図3で示す歯28のような突起部分を備えることができる。歯28は本体1での軸方向のネジ溝に案内される場合、停止部材9は軸方向に動くことができるが、本体1に対して回転できない。これは、回転の第二の向きにおいて駆動機構11の回転、その結果、駆動スリーブ11と駆動部材10の間でのラチェット22の係合が回転固定された停止部材9に対する駆動部材10の回転をもたらすことを明確に示し、一方、駆動部材10と停止部材9の間でのラチェット21の係合中に、第一の回転方向における駆動スリーブ11の回転が駆動部材10に対して駆動スリーブ11の回転をもたらす、何故ならば、駆動部材10は、回転固定された停止部材9へのその連結のため、第一の回転方向に回転できないからである。従って、用量の設定中、駆動部材10は回転せず、そして、用量の送達中、駆動部材10は、図7及び8と関連して記述される更なる機構に基づき、ピストンロッド7の同時回転を発生させるために回転する。
【0050】
図4は、その遠位端19を含むピストンロッド7の透視図を示す。ピストンロッド7は、スクリューネジ溝13、及びピストンロッド7の縦軸においてスクリューネジ溝13と交差する軸方向のネジ溝17を含む。その結果、スクリューネジ山13は、周期的にスクリューネジ山13の回転内で遮断されるが、ピストンロッド7のラセン運動を案内する機能は、それが薬剤の送達中に本体1の遠位端3に接近するとき、軸方向のネジ溝17により阻止されない。図4は、軸方向のネジ溝17がピストンロッド7の遠位端19からの第一の距離d1において終結することを明確に示す。従って、軸方向のネジ溝17は、駆動部材10の突起エレメントに駆動部材10とピストンロッド7を回転連結させることを可能にし、同時に、ピストンロッド7に対して駆動部材10の軸方向の運動を可能にする。駆動部材10の突起エレメントが、軸方向のネジ溝17の端部で停止部と合致するとき、駆動部材10のピストンロッド7に対する軸方向の運動が停止する。本体1に対して駆動部材10の軸方向の運動が、機構の操作により継続する場合、駆動部材10は、ピストンロッド7を本体1の遠位端3の方向に移動させる。
【0051】
ピストンロッド7の遠位端19において、スクリューネジ山13のラセン回転が更なる軸方向のネジ溝18において終結する。本体1に対してそのラセン運動を発生させるために、ピストンロッド7のスクリューネジ山13で摺動するよう提供される本体1の誘導エレメントが、誘導エレメントが更なる軸方向のネジ溝18内に留まる限り、本体1に対してピストンロッド7の回転を発生させない。従って、ピストンロッド7は、誘導エレメントがピストンロッド7の遠位端19からの第二の距離d2においてスクリューネジ山13の第一の回転に合致するまで、本体1の遠位端3に向かう回転なしで軸方向に動くことができない。この位置において、ピストンロッド7の軸方向の運動が停止し、そしてピストンロッド7が駆動部材10を用いて回転するとき、ピストンロッド7のラセン運動が始まる。
【0052】
図5は、ピストンロッド7の遠位端19上の拡大透視図を示す。それは更なる軸方向のネジ溝18がいかにしてスクリューネジ山13へ導くかを示している。
【0053】
図6は、駆動機構の更なる実施態様の概略の断面図を示す。この実施態様において、用量部材12は、ピストンロッド7に矢印方向に力を加えるスプリング30を用いてプライミング工程中、遠位端3に向かってピストンロッド7を移動させるために、直接用いられる。本体1の内部インターフェース14は、ピストンロッド7を案内し、そして、ラセン運動を発生させるために用いられる。これは、内部インターフェース14の誘導エレメント25により達成される。誘導エレメントは、ピストンロッド7のスクリューネジ山13で摺動する。スクリューネジ山13の第一の回転のみが、図6の概略断面図で示される。更なる軸方向のネジ溝18が、その隠れた輪郭の破線で示される。ピストンロッド7は、誘導エレメント25がスクリューネジ山13の第一の回転に到達し、そしてプライミング工程が完結するまで、回転なしで矢印の方向に移動できることを、図6の断面図が明確に示す。ピストンロッド7の更なる運動は、本体1に対してラセン的であり、そしてピストンロッド7の回転により発生する。
【0054】
図7は、本体1に対してラセン運動においてピストンロッド7を案内するための手段を有する駆動機構の実施態様の部分断面図を示す。駆動機構はスプリング8を含む。スプリング8は、駆動機構の操作中、停止部材9の駆動部材10との接触を維持するように提供される。図7は、停止部材9と、図7で示す実施態様における本体1の内部インターフェース14である支持部材の間のスプリング8の可能性のある配置を示す。内部インターフェース14は、ピストンロッド7を案内する誘導エレメント25を有する開口部を備えることができる。この目的のために、ピストンロッド7はスクリューネジ山13を備え、それはピストンロッド7が内部インターフェース14の開口部を通じて動き、そして誘導エレメント25がスクリューネジ山13を通じて摺動するとき、本体1に対するピストンロッド7のラセン運動を発生させる。
【0055】
停止部材9は、本体1の内壁で形成される軸方向のガイド26内で案内される歯28を有するように示される。これは停止部材9と本体1の間での、軸方向の相対的運動を可能にする回転連結の例である。
【0056】
停止部材9が遠位端方向に移動するとき、スプリング8は圧縮される。スプリング力は、停止部材9が駆動スリーブ11と接触状態にある隣接した駆動部材10と、実際的に、
恒久的に、接触するように、近位端に向かって停止部材9を駆動させる。その結果、スプリング8は、傾斜面23、24に沿った摺動運動を含む相対的回転を支援するために、停止部材9、駆動部材10及び駆動スリーブ11の一種の相対的軸運動を可能にする。
【0057】
図8は、いかにして、ピストン7が駆動部材10に回転連結できるかを示す。この目的のために、図3から分かる通り、ピストンロッド7は少なくとも一つの軸方向のネジ溝17、又は軸方向におけるピストンロッド7のスクリューネジ溝を切断する係合トラックを含む。図8の実施態様における駆動部材10の突起エレメントにおいて、軸方向のネジ山27は、ピストンロッド7の軸方向のネジ溝17と係合し、そしてその結果、駆動部材10に対するピストンロッド7の相対的軸運動を可能にするが、一方、同時に、駆動部材10及びピストンロッド7を回転連結する。図8は、また、駆動部材10及び駆動スリーブ11を連結するラチェット22を示す。この実施態様において、駆動スリーブ11は、また、図2で示す軸方向のネジ溝16を備えている。駆動スリーブ11は、代わりに、例えば、スクリューネジ山を備えることもできる。
【0058】
本発明及びその利点を詳細に記載したが、当然のことながら様々な変化、置換、修正を、本明細書において、添付の請求項により定義される発明の精神及び範囲から離れることなく、することができる。
【0059】
参照番号:
1:本体;
2:近位端;
3:遠位端;
4:レセプタクル;
5:カートリッジ;
6:ピストン;
7:ピストンロッド;
8:スプリング;
9:停止部材;
10:駆動部材;
11:駆動スリーブ;
12:用量スリーブ;
13:ピストンロッドのスクリューネジ山;
14:内部インターフェース;
15:用量スリーブのネジ山;
16:駆動スリーブの軸方向ネジ溝;
17:ピストンロッドの軸方向ネジ溝;
18:ピストンロッドの更なる軸方向ネジ溝;
19:ピストンロッドの遠位端;
20:用量ボタン;
21:駆動部材と停止部材を連結するラチェット;
22:駆動部材と駆動スリーブを連結するラチェット;
23:ラチェットの傾斜面;
24: ラチェットの傾斜面;
25:誘導エレメント;
26:本体における軸方向のガイド;
27:駆動部材の軸方向のネジ山;
28:停止部材の歯;
29:駆動機構の位置;
30:スプリング;
d1、d2:第一の及び第二の距離;
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8