(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851490
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】射出成形部品の中の挿入物を検出する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20160114BHJP
B29K 105/20 20060101ALN20160114BHJP
【FI】
B29C45/76
B29K105:20
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-510464(P2013-510464)
(86)(22)【出願日】2011年5月18日
(65)【公表番号】特表2013-526436(P2013-526436A)
(43)【公表日】2013年6月24日
(86)【国際出願番号】CH2011000114
(87)【国際公開番号】WO2011143786
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2014年4月9日
(31)【優先権主張番号】786/10
(32)【優先日】2010年5月19日
(33)【優先権主張国】CH
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502281471
【氏名又は名称】キストラー ホールディング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン、エリック
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−320574(JP,A)
【文献】
実開昭57−027322(JP,U)
【文献】
特開昭59−156729(JP,A)
【文献】
特開2010−099914(JP,A)
【文献】
特開2009−260054(JP,A)
【文献】
特開2009−274252(JP,A)
【文献】
特開平11−207750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成型部品(2)の中の挿入物(1、8)を検出する方法であって、前記挿入物(1、8)が、射出成形サイクルの開始前に、型(5)の型壁(4)によって取り囲まれた空洞(3)の中に設置されているために、前記挿入物(1、8)が、射出成形工程中に前記射出成型部品(2)に堅く結合される、方法において、
a)前記空洞(3)の中の温度又は圧力が、前記挿入物(1、8)を介して間接的に測定されるように、少なくとも1つの温度センサ又は圧力センサ(6、7)を、前記型壁(4)に配置し、射出成形サイクル中の少なくとも一時点において、少なくとも1つの測定値を温度又は圧力の形態で記録して解析するステップと、
b)前記解析に基づいて、前記射出成形サイクル中に、前記空洞(3)の中の特定の位置に挿入物(1、8)が存在するかどうかを判断するステップと、
c)前記射出成形部品(2)が取り出された後に、前記測定値の前記解析に基づいて、前記射出成形部品(2)を合格品又は不合格品として選別するステップとを特徴とする方法。
【請求項2】
前記射出工程の間及び/又は後に前記測定値を記録することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記射出成形サイクル中に、前記空洞(3)の中の特定の位置において、挿入物(1、8)が、存在しないのか、1つだけ存在するのか、又は複数存在するのかを、前記測定値の解析に基づいて判断することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記温度センサ又は圧力センサ(6、7)が、前記射出成形サイクル中に、いくつかの測定値、具体的には測定された曲線を記録して解析することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記型壁(4)にいくつかの温度センサ又は圧力センサ(6、7)を配置して、前記射出成形サイクル中に別々の位置(1、8)において1つ又は複数の挿入物を検出し、及び、これらの測定値の前記解析に基づいて、前記射出成型部品(2)を合格品又は不合格品として選別することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記挿入物(1)が、前記射出成形部品(2)の外側のフォイルから成ることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フォイルが、ボール紙、紙、アルミニウム、革、プラスチック、金属又は繊維材料から成ることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記挿入物(8)が、チップ、LED、バッテリー、他の電子部品及び/又は電線から成ることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
解析中に、すべての温度センサ又は圧力センサ(6、7)の前記1つ又は複数の測定値又は前記測定された曲線を、所定の公称範囲と比較し、記録されたすべての測定値又は測定された曲線が、それらの公称範囲内に存在すれば、前記射出成形部品(2)を合格品として選別することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記挿入物(1、8)を検出するための前記センサ(6、7)が、前記射出成形システムを制御するために測定データを同時に配送することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形部品の中の挿入物を検出する方法に関する。挿入物は、射出成形サイクルの開始前に、型の型壁によって囲まれた空洞に設置されるので、射出成形工程の間に射出成形部品に堅く結合される。
【背景技術】
【0002】
射出成形工程では、例えば、外部に配置されたフォイルによって、特定の表面を有する射出成形製品を提供するために、挿入物が空洞の中に設置されることが多い。このような製品の例には、ヨーグルト・カップ又はインスリン用注射筒がある。このような挿入物の表面は、例えば製品固有の情報、広告、有効期限及び/又はバーコードを特色とする。
【0003】
射出成形部品の製造中にエラーが生じて、意図せず、空洞の中に挿入物が設置されなかったり、複数の挿入物が設置されたりすることがある。このように製造された射出成形部品を、製造の後に、不合格品として選別する必要がある。
【0004】
今日では、このようなエラーを検出するために、すなわち、挿入物が存在すること、又は挿入物が1つしか存在しないことを確認するために、製造工程の後に品質管理が実行される。これは、完成した射出成形製品の画像を生成するカメラを利用して実現される。これらの画像を克明に分析すれば、最終的に、射出成形部品が所望の挿入物の特色を示すかどうかを判断することができ、その結果、射出成形部品を、それに応じて合格品又は不合格品として区分することができる。
【0005】
米国特許第5582845号は、射出成形工程を実行する前に、カメラによって挿入物を光学的に検出するシステムを開示している。挿入物が見当たらないと警報が作動され、システムは、エラーを補正するために、後退して挿入物を得る。DE202008014027U1号、特許第60219017号、特許第60068918号、及び特許第63220967号では、挿入物は、同様に、それぞれ射出成形工程に先立って検出され、このような挿入物が見当たらないと判断されると工程が停止される。このようにして、不完全な部品を製造することが防止される。
【0006】
これらの方法のすべては、確かに、挿入物のない不完全な部品を製造することを首尾よく防止する。しかし、装置の停止後に工程を再始動する必要があるということが確認されており、その結果、ほんの一例を挙げると、とりわけ溶融塊状物の温度変動に起因して、他の複雑な問題が生じる可能性がある。
【0007】
さらに、様々なグレースケールを確実に評価する必要があり、このために複雑な評価システムが必要とされるので、光学的方法は、不確実であることが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5582845号
【特許文献2】DE202008014027U1号
【特許文献3】特許第60219017号
【特許文献4】特許第60068918号
【特許文献5】特許第63220967号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、射出成形部品の中の挿入物を検出するための最初に引用されたタイプの方法であって、既知の方法ほど複雑でなく、それほど高価でない方法を開示することである。さらに、この方法は、好ましくは射出成形工程を妨げるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項の特徴で達成される。
【0011】
本発明の基本原理によれば、型壁に少なくとも1つの温度センサ又は圧力センサを配置することが最初に提案される。前記センサは、射出成形サイクル中の少なくとも一時点において、少なくとも1つの測定値を温度又は圧力の形態で記録する。この測定値が、最終的に解析される。次いで、この解析に基づいて、射出成形サイクル中に、空洞の中の特定の位置に挿入物が存在するかどうかが判断される。射出成形部品は、取り出された後に、測定値の解析に基づいて合格品又は不合格品として選別される。
【0012】
この方法の利点は、射出成形部品が取り出されたとき、合格品かどうかが既に確かであるという点に見ることができる。したがって、カメラ及び別の複雑な解析が除去されるばかりではなく、射出成形部品の取り出し後に必要とされる取扱いも除去される。
【0013】
さらに、この検出のために製造工程が中断されるのでなく、不完全な部品が選別されるだけである。多くの場合において、不合格品を製造することに起因する損害は、この場合、工程を再始動する必要がないので、工程を中断することによる損害よりはるかに少ない。
【0014】
光学的検出システムを、測定値の評価が非常に容易な温度センサ又は圧力センサで置換するという点に、別の利点が見られる。この発明方法では、射出成形工程中に測定を実行することも好ましい。このことは、こうして得られた測定値を、射出成形工程にも用いることができるという利点をもたらす。これは、既存のセンサが使用され得ること、又は、使用されるセンサが、同時に、特定の場合においてシステムを制御するのに役立ち得ることを意味する。
【0015】
他の有利な方法が、従属請求項で説明される。
【0016】
この文献では、「合格品」、「不合格品」という用語は、挿入物に関連した品質のみを指すものである。本来正確に挿入物の特色を示す製造された射出成形部品が、他の理由で欠陥があり、したがって不合格品として選別されることがある。合格品は、最終的には、規定された品質要求事項をすべて満たす部品のみである。
【0017】
本発明が、図面を参照しながら以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明方法に適切な射出成形金型の概略断面図である。
【
図2】
図1による型で生成された射出成形部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、射出成形システムの型5を通る断面を示す。型5は、一緒に空洞3を画定する2つの半割体から成り、前記空洞は型壁4によって囲まれている。
図2に示された射出成形部品2は、射出成形工程の間に、この空洞3の中に生成される。このために、液体プラスチックの形態の溶融塊状物10が、ゲート・システム9を通って空洞3の中に注入される。溶融塊状物10が凝固した後、完成した射出成形部品2を取り除くために、型の2つの半割体5が開かれる。これによって、射出成形サイクルが終了する。
【0020】
新しいサイクルの開始時に、型の2つの半割体5が再度接合される前に、挿入物1、8を空洞3の中に設置することができる。溶融塊状物10の注入の間に、この挿入物1と溶融塊状物10とが結合され、射出成形部品2になる。
【0021】
射出成形部品2の中の挿入物1、8を検出するための本発明方法が、以下で説明される。
【0022】
本発明によれば、少なくとも1つのセンサ6、7が型壁4に配置される。前記センサは、射出成形サイクル中の少なくとも一時点において、少なくとも1つの測定値を温度又は圧力の形態で記録して解析する。次いで、この解析に基づいて、射出成形サイクルの間に、空洞3の中の特定の位置に挿入物1、8が存在するかどうかが判断される。射出成形部品2は、取り出された後に、測定値の解析に基づいて、最終的に合格品又は不合格品として選別される。しかし、万一、合格品が、例えば寸法精度が不十分であるなどの他の理由により欠陥品であるならば、それに応じて、この合格品も不合格品として選別される。本明細書で説明される選別は、結果的に、事前選別であると解釈されるべきである。
【0023】
この発明方法の利点は、挿入物1、8の早期検出であり、それは、依然として射出成形サイクルの間に行なわれる。これによって、合格品が最終的に選別され得る前の、完成した射出成形部品2の複雑な取扱い、並びに、他の認識装置及び解析の利用が除去される。
【0024】
センサ6、7は、温度センサ6又は圧力センサ6から成る。
【0025】
この挿入物が、センサ6の位置において型壁4に直接接触しているならば、溶融塊状物10がセンサ6の位置に到着するときに温度上昇が減速するということに基づいて、温度センサ6は、挿入物1の存在を判断することができる。挿入物1が、センサ6の位置において型壁4に直接接触しているならば、射出成形サイクルの間に、圧力センサ6も、圧力上昇の減速及び/又は最大圧力の低下にさらされる。このようにして、温度センサ及び圧力センサ6は、挿入物1を検出することができる。
【0026】
原則として、測定値は、射出工程中に、又は射出工程が終了するまでに記録されるが、常に、射出成形サイクルが依然として実行されている間に、すなわち、完成した射出成形部品が取り出される前に記録される。
【0027】
センサ6、7は、様々な態様で型壁4に設置することができる。前述のセンサ6、7のどちらのタイプも、空洞3へ向かう開口内に設置され、空洞表面の一部分を実際に画定するようになっていてもよい。しかし、また、それらは、空洞3のすぐ近くの型壁4に設置され、残された型壁4を介して伝達される圧力及び/又は熱流を、必要な変化を判断するのに十分な精度で依然として測定することができるようになっていてもよい。
【0028】
また、例えば、挿入物1、8が正確に配置されていることを判断するために、いくつかのセンサ6、7を型壁4に配置することも、もちろん可能である。例えば、長方形の挿入物1、8の4つのコーナーのすべてなどのキーポイントにおいて検出を実行することによって、例えば、挿入物1、8が空洞3の中に斜めに配置されているか、又は射出成形工程の間に所望の場所から移動させられたかどうかを判断することができる。
【0029】
また、射出成形サイクル中に、空洞3の中のそれぞれの位置において、挿入物1、8が、存在しないのか、1つだけ存在するのか、又は複数存在するのかを、記録された測定データの解析に基づいて判断することもできる。したがって、いくつかの挿入物1が、空洞の中に意図せずに設置された場合にも、射出成形部品2を不合格品として選別することもできる。これは、特に、過度に遅い温度上昇又は過度に小さい最大圧力に基づいて判断することができる。また、同様に、挿入物1、8が配置されていないとしても、チェックすることができる。
【0030】
いくつかの測定値、具体的には測定された曲線を、記録して解析するのが得策であることが多い。このようにして、一連のデータのうち評価する必要があるのは、どのデータであるか、すなわち、射出成形サイクル中に時間遅延が生じているかどうかについても、常に判断することができる。例えば、射出成形サイクル全体にわたる最大圧力は、測定された曲線に基づいて、基準値と比較することによって求めることができる。一方、溶融塊状物10が到達する時間は、測定データに基づいて、温度上昇が起こる時間を確定することによって求めることができる。このとき、測定値の解析が、挿入物1の検出に関する情報を与える。
【0031】
解析中に、すべてのセンサ6、7の測定値又は測定された曲線が、所定の公称範囲と比較される。記録されたすべての測定値又は測定された曲線が、これらの公称範囲内に存在すれば、射出成形部品2は合格品として選別される。
【0032】
いくつかのセンサ6、7が型壁4に配置されていれば、射出成形サイクル中に、別々の位置にあるいくつかの挿入物1、8を検出することも可能である。また、これらの測定値の解析に基づいて、射出成形部品2は、最終的には合格品又は不合格品として選別される。具体的には、型5の中に、同一のセンサ6、7及び/又は別々のセンサ6、7を配置することが可能である。
【0033】
挿入物1は、具体的には射出成形部品2の外側のフォイルによって構成されてもよい。表面上にフォイルを有するこのような射出成形部品2の例には、食品産業又は薬剤用のプラスチック・パッケージや、プリントされた広告をその上に有するペンなどの消費財がある。再利用可能な製品を得るために、挿入物1は、射出成形部品を製造するための溶融塊状物と同一の材料から成ることが好ましい。代替材料としては、ボール紙、紙、アルミニウム、革、プラスチック、金属、及び繊維材料が含まれる。もちろん他の材料を使用することもできる。
【0034】
他の挿入物8は、プラスチック材料を上塗りされており、空洞3のエッジの上には小さな部分しか存在しないようになっている。これらの挿入物は、具体的には、チップ、LED、バッテリー、他の電子部品、及び/又は電線から構成されてもよい。透明な溶融塊状物10が用いられる場合、上塗りされた挿入物8は、目に見えることも可能であり、例えば装飾の目的に用いられてもよい。
【0035】
製造の日付及び場所などの製品固有の情報は、射出成型部品に含まれるチップ上に書き込まれてもよい。もちろん、チップは、続いて、例えば装置に組み込まれた日付など他の情報を与えられてもよい。これは、この射出成型部品2が後で故障した場合の、使用期間、保管期間、製造業者、及び/又は製造に関して結論を導き出すために重要であり得る。
【0036】
射出成形工程の制御又は管理のために、同時に使用されるセンサ6、7を利用するのが好ましい。このことによって、他のセンサを付加する必要性が除去される。
【符号の説明】
【0037】
1 空洞壁に接触している挿入物
2 射出成型部品
3 空洞
4 型壁
5 型
6 温度又は圧力のセンサ、センサ
7 温度又は圧力のセンサ、センサ
8 空洞壁から離隔されて、エッジには小さな部分しか接触しない挿入物
9 ゲート・システム
10 溶融塊状物、プラスチック塊状物