(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851491
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用正極活性組成物を製造するための添加剤
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20160114BHJP
H01M 4/14 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
H01M4/62 B
H01M4/14 Q
【請求項の数】35
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-511621(P2013-511621)
(86)(22)【出願日】2011年5月19日
(65)【公表番号】特表2013-530496(P2013-530496A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2011058183
(87)【国際公開番号】WO2011147740
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年1月31日
(31)【優先権主張番号】102010021268.7
(32)【優先日】2010年5月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512302979
【氏名又は名称】ペノックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】イアン・クライン
【審査官】
冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0121233(US,A1)
【文献】
特表2008−515151(JP,A)
【文献】
特開平05−242887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3μm未満の平均粒径を有する、微粉化した四塩基性硫酸鉛と、微粉シリカとをベースとする、鉛蓄電池用の正極活性組成物の製造のための添加剤であって、当該添加剤が鉛丹(2PbO,PbO2)の平均粒径が1.5μm未満であると共に/または、前記鉛丹中、1モルのPbO2あたり2.2モル未満のPbOがあり、前記微粉シリカが、10〜120nmの平均粒径、及び/又は300m2/g未満のBET比表面積を有することを特徴とする添加剤。
【請求項2】
前記添加剤が、20〜80重量%の鉛丹を含むことを特徴とする、請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
前記添加剤が、45〜65重量%の鉛丹を含むことを特徴とする、請求項2に記載の添加剤。
【請求項4】
前記鉛丹の平均粒径が0.2〜1μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項5】
前記鉛丹の平均粒径が0.4〜0.6μmであることを特徴とする、請求項4に記載の添加剤。
【請求項6】
前記鉛丹が、1.5m2/g未満のBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項7】
1モルのPbO2あたり、2.1モル未満のPbOがあることを特徴とする、請求項6に記載の添加剤。
【請求項8】
前記微粉シリカが、疎水性及び/又は親水性であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項9】
前記四塩基性硫酸鉛の平均粒径が1.5μm未満であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項10】
四塩基性硫酸鉛及び微粉シリカの総重量を基準とし、0.01〜10重量%の微粉シリカを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項11】
水性スラリーの形態であり、当該スラリーが、30〜65重量%の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項12】
前記水性スラリーが、53〜57重量%の添加剤を含むことを特徴とする、請求項11に記載の添加剤。
【請求項13】
四塩基性硫酸鉛及び鉛丹を、水性媒体中で湿式粉砕し、当該粉砕を、前記四塩基性硫酸鉛の平均粒径が3μm未満になるまで続け、微粉シリカを、粉砕すべき又は粉砕された材料に加えることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の添加剤の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の添加剤の特徴が達成されるまで、前記方法を実施することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記湿式粉砕を、撹拌ボールミル中で実施することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記湿式粉砕を、直径0.2〜0.6mmのジルコニア球の形態の粉砕体を用いて実施することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
水性スラリーの形態で得られた粉砕生成物を、乾燥により粉末に変換することを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記湿式粉砕を、70℃未満の温度で実施することを特徴とする、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記湿式粉砕を、40〜50℃の温度で実施することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
鉛蓄電池用の正極活性ペーストの製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の添加剤の使用。
【請求項21】
前記添加剤が、40〜70重量%の鉛丹を含むことを特徴とする、請求項1に記載の添加剤。
【請求項22】
前記添加剤が、55〜65重量%の鉛丹を含むことを特徴とする、請求項2に記載の添加剤。
【請求項23】
前記鉛丹が、1.3〜0.5m2/gのBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項24】
1モルのPbO2あたり、2モル未満のPbOがあることを特徴とする、請求項6に記載の添加剤。
【請求項25】
前記微粉シリカが、ヒュームドであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項26】
前記四塩基性硫酸鉛の平均粒径が0.2〜0.9μmであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項27】
四塩基性硫酸鉛及び微粉シリカの総重量を基準とし、0.02〜5重量%の微粉シリカを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項28】
水性スラリーの形態であり、当該スラリーが、50〜60重量%の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項29】
前記水性スラリーが、55重量%の添加剤を含むことを特徴とする、請求項11に記載の添加剤。
【請求項30】
四塩基性硫酸鉛及び鉛丹を、脱塩水中で湿式粉砕し、当該粉砕を、前記四塩基性硫酸鉛の平均粒径が3μm未満になるまで続け、疎水性及び/又は親水性形態の微粉シリカを、粉砕すべき又は粉砕された材料に加えることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の添加剤の製造方法。
【請求項31】
前記湿式粉砕を、閉鎖系撹拌ボールミル中で実施することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項32】
前記湿式粉砕を、直径0.4mmのジルコニア球の形態の粉砕体を用いて実施することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項33】
水性スラリーの形態で得られた粉砕生成物を、噴霧乾燥により粉末に変換することを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記湿式粉砕を、60℃未満の温度で実施することを特徴とする、請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
高い重放電抵抗を有する鉛蓄電池用の正極活性ペーストの製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の添加剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、約3μm未満の平均粒径を有する微粉化された四塩基性硫酸鉛と、微粉化シリカとをベースとする鉛蓄電池用正極活性組成物を製造するための添加剤、及びこの添加剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術によれば、鉛蓄電池の製造の過程において、格子に正極活性組成物を貼り付けた後、正極板を、熟成及び乾燥チャンバーと呼ばれるものの中で、バッチ処理又は連続的に、熟成及び乾燥する。上記熟成により、酸化鉛、水及び硫酸鉛の形態の主成分から、三塩基性(3PbOPbSO
4)及び/又は四塩基性(4PbOPbSO
4)硫酸鉛が形成する。プレートは、大部分は、それらが分散することなく、パレット上のスタックに配置される。一般的ではないが、それらは分散することなくパレット上に配置され、又は外側にラグを備えた二重格子の特定のケースにおいては、フレーム内にゆるくかけられている。
【0003】
10μm未満の結晶サイズを有する三塩基性硫酸鉛を得るための熟成については、プレートを、約55℃で、12〜24時間熟成し、次いで、乾燥するのが一般的な方法である。用いられる酸化物及び所望の残存含水量により、乾燥は数日までかかる。
【0004】
化学的及び物理的条件により、三塩基性硫酸鉛の形成から四塩基性硫酸鉛の形成までの相転移は、60〜70℃の範囲の温度内で生じる。三塩基性硫酸鉛を得るための熟成については、標準的方法に従い、プレートを、水蒸気中、通常は80℃を超える温度で数時間熟成し、次いで三塩基性の熟成プレートの場合のように乾燥させる。水蒸気下における、このような熟成工程の場合の重大な不都合は、50μmを超えるサイズの結晶が発生する可能性がある、四塩基性硫酸鉛の粗結晶が形成されることである。
【0005】
熟成した、正極板の活性組成物は、それに続く形成の際に電気化学的に酸化鉛に変換される。塩基性硫酸鉛の変換は、結晶サイズの増大を伴い、大変な労力を要するものとなる。粗結晶構造の変換に必要な電気エネルギー量は、小さい結晶を含む構造についてのものよりも、25%より以上高い。本明細書において、「小さい結晶を含む構造」は、結晶サイズが10μm未満である物質を意味すると理解すべきである。大きい結晶を含む構造の場合、30μmを超える結晶が存在する。完全な形成のために、更に休止時間を含む必要がある。より高いエネルギー量の導入、及び休止時間を含むことを必要とする結果、粗結晶性の四塩基性硫酸鉛の形成には、一般的にはるかに長い時間がかかる。
【0006】
四塩基性硫酸鉛を得るための熟成は、正極格子用のアンチモンを含まない合金を備える鉛蓄電池の場合に有利である。正極格子用の四塩基的に熟成した(tetrabasically ripened)、アンチモンを含まない合金を備える鉛蓄電池は、繰り返しにおいて安定した容量を有し、明らかに寿命が延びている。これらの鉛蓄電池は、更に長い保存性及び目に見えるほどの低い水使用量を更に有するので、正極格子内のアンチモンを含む合金を備える鉛蓄電池は、更にアンチモンを含まない格子に置換される。
【0007】
この理由により、正極板を熟成して、四塩基性硫酸鉛の小さい結晶を得るための方法及び手段に大いに興味がある。先行技術によれば、この目的のための2つの方法について強調すべきである:
【0008】
通常の製造の実施例によれば、プレートを最初に三塩基的に熟成し、残存含水率が0.5重量%になるまで乾燥させることが有利である。これに、通常、80℃を超える温度で数時間の水蒸気処理が続く。この段階の際に、三塩基性硫酸鉛が四塩基性硫酸鉛に変換する。ここでは、結晶サイズは実質的に変わらないが、プレートの水蒸気処理の間に、含水率は約2重量%を超えない。過剰に湿ったプレートの場合、四塩基性硫酸鉛の粗結晶の形成が起こる。適切に実施された方法の場合、後に続く他の乾燥作業の後、四塩基性硫酸鉛の小さい結晶を含むプレートが存在する。この方法の重大な不都合は、処理時間が長いことである。更に、ペースト−グリッド結合は、直接熟成した正極板の場合よりも弱く、水蒸気中で四塩基性硫酸鉛の粗結晶が得られる。四塩基性硫酸鉛の結晶のサイズを制御することはできず、3μm未満の結晶サイズである。湿式鉛蓄電池の周期性重放電の場合、正極に修復不能の損傷をもたらし、その結果、鉛蓄電池の耐用年数を短くしてしまう。
【0009】
2つ目の公知の方法においては、前もって小さいサイズに粉砕された四塩基性硫酸鉛が、製造工程の際に、正極活性組成物に添加される。熟成は、水蒸気下で、また好ましくは80℃を超える温度で、四塩基性硫酸鉛の粗結晶を得るために議論した熟成と同様の方法で実施される。直径が1μm未満の小さいサイズに粉砕された、添加された四塩基性硫酸鉛の結晶は核形成剤としての機能を果たし、結晶成長を制御し、小さい結晶を含む四塩基性結晶構造を得るようプレートを個別化することを可能にする。この方法は、好ましくは連続的に実施される。
【0010】
この方法の欠点は、例えば、2枚のプレートを離して懸濁するか、又は個々のプレートの間に通気性のある隔膜を用いることによって、プレートを分散する必要があることである。現在は、貼り付けた後、スペーサーを用いずにスタック中にプレートを積み重ね、スタック中でプレートを熟成することは、鉛蓄電池のプレート製造において常識である。従って、プレートを個別化するには、かなりの付加的な作業が必要になる。その結果、新規な付加的な装置又はかなりの調整なしでは、プレート製造のための最新のシステム及び方法を用いることはできない。中間のスペース又は通気性のある隔膜を用いることによるプレートの分散は、より広いスペースを必要とし、その結果として、従来の熟成及び乾燥チャンバー内のプレートのための容量が相当に縮小してしまう。
【0011】
前記先行技術の更なる開発は、WO2004/059772A2に開示されている。これは、四塩基性硫酸鉛をベースとする鉛蓄電池用の正極活性組成物の製造のための添加剤に関する。この添加剤は、約3μm未満の平均粒径を有する四塩基性硫酸鉛と、四塩基性硫酸鉛の粒子の凝集防止のための、微粉シリカとを含む。微粉シリカは、疎水性及び/又は親水性の形態であり、特にヒュームドシリカである。WO2004/059772A2に示すように、この公知の添加剤は広範な利点を示す。例えば、この添加剤を用いる場合、現在の工場技術及び通常のプロセス操作の全ての範囲がカバーされる。全ての標準的な熟成及び乾燥チャンバーのための、下流の積層システムを備える最新の糊付けラインは、修正なしで用いることができる。更に、この添加剤を、約3〜4時間の全期間内に、連続的熟成及び乾燥法を提供するために用いることができる。処理される全ての用途において、生じる最終製品は、10μm未満の結晶サイズを有する四塩基性硫酸鉛の小さい結晶である。それによって得られるプレートは、三塩基性硫酸鉛から製造されるものと同じくらい容易に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
WO2004/059772A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、更なる改良により、WO2004/059772A2による先行技術の教示と関連する利点を維持することであるが、特別な目的は、バッテリーペースト内に添加剤の構成成分を最適に分布させることである。更に、本発明の目的は、四塩基的に熟成し、繰り返しに耐える、有利なバッテリーの安価な製造を可能にすることである。更に、バッテリーの熟成プレートは、良好な帯電性を可能にする。結果として、バッテリーの形成に低電流が必要となる。言い換えると、必要なバッテリーを製造するために、より少ないエネルギーを消費する必要がある。更に、特に工業用バッテリーの場合、例えば、バッテリー用の四塩基性硫酸鉛は、約15〜18μmの結晶サイズで得ることができるように、粒径は、好ましくは制御可能なものである。従来の添加剤により、1メータートンの鉛ペーストあたり、約2〜4kgを用いる、従来技術の課題を解決することをも意図する。これに関連し、適切かつ好ましい良好な分布を達成することは困難である。本発明の目的である添加剤は、特に、バッテリーペースト中の添加剤の他の構成要素の、ほぼ最適化された分布をもたらすことを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、約3μm未満の平均粒径を有する、微粉化四塩基性硫酸鉛と、微粉シリカとをベースとする、鉛蓄電池用の正極活性組成物の製造のための添加剤であって、添加剤が鉛丹(2PbO.PbO
2)を含むことを特徴とする添加剤により達成される。
【0015】
示された目的のための最適な解決法は、約20〜80重量%、特に約40〜70重量%の鉛丹を含む添加剤によって達成される。添加剤が、約45〜65重量%の鉛丹を含む場合が特に好ましく、特に好ましくは、約55〜65重量%の範囲で得られる。鉛丹の平均粒径は決定的に重要ではないが、適切には約1.5μm未満であり、約0.2〜1μmの範囲が特に有利である。鉛丹の平均粒径が約0.4〜0.6μmである場合が特に好ましい。本発明の有利な実施形態においては、鉛丹のBET比表面積を最適化することが好ましい。これは当業者にとって可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
(原文に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の関連において「鉛丹」を議論する場合、鉛丹はPbO
2及びPbOを含むと考えるべきである。本発明の関連において、用いられる鉛丹内に、1モルのPbO
2あたり2.2モル未満のPbOがあることが好ましい。約1モルのPbO
2あたり、約2.1、特に約2モルのPbOがある場合が、特に好ましい。純粋なPbO
2を純粋なPbOと混合することは不都合をもたらすことがわかった。遊離型のPbOは、好ましくない水酸化鉛を生成する。PbOは、鉛丹中に化学的に取り入れられており、このような不都合をもたらさない。市販の鉛丹は約80%のPb
3O
4(2PbO+PbO
2)、更にある程度の遊離型のPbOを含む場合がある。従って、遊離型のPbOがごく少量であり、特に、可能な限り20重量%未満、特に15重量%未満のPbOを含む、市販の鉛丹を使用することが好ましい。可能な限り、10%未満の遊離型のPbOが存在する場合が特に好ましい。
【0018】
本発明の添加剤の最適化のために、鉛丹は、約1.5m
2/g未満、特に約1.3m
2/g未満のBET比表面積を有することが適切であり、対応するBET値が約1.3〜0.9であり、特に約1.3〜0.5m
2/gである場合が好ましい。
【0019】
特に最適な形態における、本発明の添加剤の更なる構成成分については後述する:
四塩基性硫酸鉛の平均粒径が、特に約1.5μm未満である場合に、本発明の添加剤の使用において、特に良好な効果が達成されることがわかった。約0.2〜0.9μmの範囲が特に有利であることがわかる。0.2μm未満の値は、経済的利点をもたらさない。平均粒径が大きくなると、添加剤の量が増加し、上限値を非常に超過することは、本明細書においては、経済的理由により回避すべきである。
【0020】
市販の微粉シリカは、 BET比表面積が300m
2/g未満、特に150m
2/g未満の場合に特に有利であることがわかった。市販の微粉シリカは、通常、比表面積の仕様により指定されるタイプに分類される。特に、相関関係は、微粉シリカの比表面積についての情報と、活性組成物の製造の際に存在するアルカリ性の範囲における対応する粒径との間でなし得る。
【0021】
シリカの大きい微粒子径は、好ましくは回避すべきである。用いられる微粉シリカの平均粒径は、そのようなことを考慮し、適切には約10〜120nmの範囲であり、特に20〜80nmであり、約40〜60nmの範囲が特に有利である。その値が約10nmよりも小さいと、四塩基性硫酸鉛の粒子の凝集の回避に関する所望の効果が達成されない。原則として、120nmの値は個々のケースにおいて超えることもあるが、所望の効果は、約40〜60nmの範囲で議論した範囲内で良好に現れる。
【0022】
粒子があまりに小さすぎると、この影響は、熟成の際に、四塩基性硫酸鉛結晶の種々の結晶サイズの結晶粒分布が広くなることである。このようなシリカを利用する場合、10μmを超える粒径を有する四塩基性硫酸鉛結晶を回避することができない。これらは、一部は個々の分布に、一部は連続して生じ、過剰の粗結晶を含む熟成プレートの場合に通常に遭遇する結晶サイズに達し得る。議論した、特に約20〜80nm、更に特に約40〜60nmの範囲の粒径の範囲内で、微細に粉砕した四塩基性種結晶の凝集は阻止される。更に、四塩基性硫酸鉛結晶構造の非常に均一な微細結晶が、熟成の過程で形成されることが確実である。四塩基性硫酸鉛結晶の最終的なサイズは、十分量のマイクロ硫酸塩を加えることにより制御される。経済的理由により、電解質として遊離の硫酸を含む鉛蓄電池にとって、約5〜10μmの範囲内の結晶サイズを有する小さい結晶を含む四塩基性結晶構造が得られるような量を固定することが有利であることがわかった。このような分布のために、簡単な形成が可能である。ゲル又は微細孔ガラス不織布に固定された電解質を有する閉鎖系鉛蓄電池の場合、マイクロ硫酸量の増加に伴い結晶サイズを小さく変化させることが有利な場合がある。ガイド値として、約0.5〜3.0重量%の本発明のスラリーを追加する場合、活性組成物の熟成後に、四塩基性硫酸鉛の結晶サイズは、約2〜10μmの範囲内で制御し得る。経済的理由により、(a)湿式鉛蓄電池と呼ばれるものにとっては、約0.5〜2%のスラリーを加えることにより、約5〜10μmの結晶サイズが得られ、(b)閉鎖系蓄電池にとっては、約2〜3重量%を加えることにより、約2〜5μmの結晶サイズが得られるような量のスラリーを固定することが提案される。従って、十分量のマイクロ硫酸塩を加えることにより、所望の効果は制御され、従来の方法による処理パラメータ(温度、水分含量及び時間)によっては制御されない。
【0023】
本発明の関連において、当業者にとっては、微粉シリカの選択に関して、あらゆる重要な限定には依存しない。しかし、ヒュームドシリカ、特に「疎水性」及び/又は「親水性」の品質のものを用いることが好ましい。
【0024】
本発明の添加剤中の四塩基性硫酸鉛と微粉シリカとの比率に関し、重大な限定はない。四塩基性硫酸鉛の粒子の凝集阻止の好ましい効果が、所望の範囲で生じるようなレベルで、微粉シリカの割合が選択されなければならないことが理解されるであろう。適切には、本発明の添加剤の組成は、四塩基性硫酸鉛及び微粉シリカの総重量を基準とし、約0.01〜10重量%、特に約0.02〜5重量%の微粉シリカが存在するように調整される。特には、約0.05〜0.5重量%の範囲が選択される。微粉シリカが0.01重量%の値より低いと、もはや凝集を十分に阻止することができない。10重量%を超える値では、この所望の効果の更なる有意な向上が起こらない。
【0025】
本発明の添加剤に含まれる、微粉化された四塩基性硫酸鉛と鉛丹との定量的関係は、同様に重要ではない。用途により、この関係は、当業者によって最適化し得る。1重量部の微粉化された四塩基性硫酸鉛あたり、約1.0〜2.0重量部の鉛丹、特に約1.4〜1.6重量部の鉛丹がある場合に、有利であると特定される。任意の場合において、上記で概要を述べた先行技術に関し、所望の効果がまだ生じ、本発明の目的が所望の程度まで達成されるような範囲でのみ、四塩基性硫酸鉛の割合は、適切に減少し、又は(安価な)鉛丹に置換される。
【0026】
本発明の添加剤は、好ましくは水性スラリーの形態であり、特に、後述する本発明の方法により得られる。この水性スラリーは、後述する可能な用途において好ましい。それにもかかわらず、得られた水性スラリーを乾燥して粉末を得ることが可能であり、これは、好ましくは、水性スラリーを噴霧乾燥することにより得られる。乾燥なしで意図したように使用される、議論される水性スラリーは、約10〜70重量%、特に約20〜50重量%の固形分含量を有することが有利であることがわかった。70重量%の最大値を超える場合、正極活性組成物への均一な取り込みが、より困難又は不可能となる。完成した正極活性組成物の均等性又は均一性は、熟成を通して狭い範囲の均一な粒径分布を得るために必要である。理論的には、本発明の水性スラリーの固形含量の下限は、水分含量に関してペーストの形成によってのみ制限される。
【0027】
本発明は、更に、前述した、また請求項1〜14に記載した本発明の添加剤の製造方法を提供する。この方法は、四塩基性硫酸鉛及び鉛丹を、水性媒体中で、特に脱塩水中で湿式粉砕し、粉砕を、四塩基性硫酸鉛の平均粒径が約3μm未満になるまで続け、微粉シリカ、特に疎水性及び/又は親水性形態のシリカを、粉砕すべき、又は粉砕された材料に加えることを特徴とする。
【0028】
本発明との関連で実施される湿式粉砕は、好ましくは撹拌ボールミル中、特に閉鎖系撹拌ボールミル中で実施される。閉鎖系撹拌ボールミルは、最適化された様式で粉砕エネルギーを導入するという利点を示す。湿式粉砕の場合、粉砕体がジルコニア球の形態をとることが適切であることがわかった。これらは、好ましくは0.2〜0.6mm、特に約0.3〜0.5mmの直径を有する。特に好ましくは直径は約0.4mmである。本発明の目的である成功を最も有利に達成するために、湿式粉砕は、好ましくは約70℃未満、特に60℃未満の温度で実施される。約40〜50℃の範囲は、良好な技術的結果をもたらす。
【0029】
従って、本発明は、特に、本発明の添加剤を含むスラリーにおいて具体化される。後述するように、このスラリーは、乾燥した本発明の添加剤に変換し得る。しかし、一般的に、本発明のスラリーは、直接、関連のある最終用途に、特に鉛蓄電池、特に高い重放電抵抗を有する鉛蓄電池用の正極活性ペーストの製造のための、請求項1〜14の少なくとも1項に記載の添加剤の使用との関連で用いられる。これは、本明細書において、以下に詳細に議論する。水性スラリー中に得られる本発明の添加剤の量は、あらゆる重大な制限を受けない。水性スラリー中に約30〜65重量%、特に約50〜60重量%の量で存在する場合が好ましい。特に好ましい範囲として、約53〜57重量%の量を特定することができる。特に好ましい結果は、水性スラリー中の添加剤の重量割合が約55重量%である場合に得られる。
【0030】
個々の場合においては、水性スラリーの形態で得られた粉砕生成物を、湿式粉砕の過程で、乾燥、特に噴霧乾燥により粉末の形態に変換することが可能である。
【0031】
本発明の方法及び本発明の添加剤の有利な使用については、達成可能な利点にも関し、以下に詳細に説明する:
【0032】
本発明によれば、特定の微細シリカ及び鉛丹を加え、水性媒体中で四塩基性硫酸鉛を粉砕することで、スラリーが得られ、本明細書において、以下「マイクロ硫酸塩」と呼ぶ。市販の四塩基性硫酸鉛、又は四塩基的に熟成したプレートから得られる四塩基性硫酸鉛を出発物質として、湿潤粉砕工程で、例えば、撹拌ボールミル、特に閉鎖型ボールミルを用いて、好ましくは1μm未満の平均結晶サイズまで粉砕する。本明細書で重要なポイントは、「シリカ」及び「鉛丹」に関して達成された付加的パラメータに適合することである。例えば、特に、シリカは、微粉化されていなければならないが、これは鉛丹には等しく該当しない。微粉シリカは約10〜120nmの平均粒径を有することが好ましいが、鉛丹の平均粒径は、好ましくは約1.5μm未満であり、特に約0.2〜1μmである。
【0033】
シリカは、好ましくは疎水性である。本明細書においては、好ましくは、議論された、ヒュームドシリカである。ヒュームドシリカは、鉛蓄電池の操作を妨害するような異物を含まないように、望ましく純粋であるという特別の利点を示す。初期段階で、粉砕すべき四塩基性硫酸鉛に微粉シリカを加えることが有利である。しかし、適切な計量系において、後に測定して加えることも可能である。これは、追加の経済的費用、及び全体の工程所要時間の延長をもたらす。
【0034】
鉛蓄電池の製造過程において、活性正極組成物の混合過程に加え、湿式粉砕工程において得られたスラリーを用いることは工業的に有利である。例えば、スラリーは、簡単な計量装置を用いて容易に混合過程に加えることができる。スラリーから粉末を乾燥及び製造することは可能であり、特定の用途、特に噴霧乾燥との関連において望ましい。職業上の衛生規制の更なる複雑さ及び監視の結果として、粉末の製造は、起こりうる有害な粉じんを考慮すると、水性スラリーの使用に関しては一般的に望ましくない。
【0035】
上述したような本発明の概念は、本発明の更なる教示に十分に従い、微粉シリカ、特に疎水性及び/又は親水性形態、特にヒュームドシリカを、約3μm未満の平均粒径を有する微粉化した四塩基性硫酸鉛と、特に約0.2〜1μmの粒径を有する鉛丹とを組み合わせて用い、これら3種の成分を、鉛蓄電池用の正極活性組成に添加することである。これら3種の成分は、好ましくは、鉛蓄電池用の正極活性組成物に連続的に添加され、特に好ましくは、最初に微粉化された四塩基性硫酸鉛、次いで、微粉シリカ、次いで、鉛丹が正極組成物に添加される。
【0036】
混合操作の際に、本発明により得られたスラリーを正極活性組成物に加えた後、本明細書において特定される実施形態における、その後の熟成により、特に小さい結晶を含む四塩基性硫酸鉛がもたらされる。これは、本発明の添加剤を用いる場合に、従来のシステムを、変更せずに有利に利用できるという利点をもたらす。前記添加剤は、鉛蓄電池の製造において、個別化された、及び個別化されていないプレートの熟成及び乾燥のための正極活性組成物において用いることが好ましい。特に有利には、プレートの熟成は、スタック中で、水平に、垂直に、又は懸濁させて、約60℃以上の温度、特に約80〜95℃の温度の蒸気の作用の下、約1〜2時間で実施される。プレートの熟成が、スタック中で、水平に、垂直に、又は懸濁させ、バッチチャンバー中、約70℃未満の温度の蒸気の作用の下、12〜24時間で実施する場合にも、良好な結果が達成される。
【0037】
プレートは、連続的熟成及び乾燥工程において熟成してもよい。特に良好な結果は、プレートの熟成を、スタック中、水平に、垂直に、又は懸濁させて、約80〜95℃の温度の蒸気の作用の下、約1時間以内の連続的熟成及び乾燥工程により実施した場合に得られる。記載された連続的熟成及び乾燥工程においては、熟成及び乾燥を、高温下、多段階乾燥により実施することが特に好ましい。温度上昇を約50℃の温度で開始し、約1〜4時間、特に約2〜3時間かけて約90℃まで上昇させ、乾燥を実施することが特に有利であることがわかった。
【0038】
熟成における、微粉シリカ及び鉛丹による、正極活性組成物中の四塩基性種晶の良好な分布は、特に結晶サイズの範囲が狭く、及び非常に均一な組成物である、四塩基性結晶構造をもたらす。これは、スタック中のプレート、また熟成における分散プレートにも適用される。狭い範囲の四塩基性結晶サイズにより、同じ細孔容積にとって、より高い表面積が達成され、言い換えると、四塩基性結晶の同じ表面積にとって、より高い細孔容積が達成される。利点は、プレートの遊離の孔中に吸収される硫酸の量が増加することである。これは、電気的性能のデータを向上させる。マイクロ硫酸塩の使用者にとって、経済的利点は、鉛蓄電池の同じ性能データに対し、活性正極組成物を節約するという可能性である。
【0039】
本発明の教示を適用する場合、最新の工場技術及び従来の方法の全ての領域がカバーされる。下流スタック系を備えた最新の糊付けライン、及び全ての標準的熟成及び乾燥チャンバーは、修正せずに使用可能である。更に、将来は、3〜4時間の全期間にわたる連続的熟成及び乾燥法が提供され得る。対処される全ての応用において、得られる最終製品は、20μm未満の結晶サイズを有する四塩基性硫酸鉛の小さい結晶である。このように製造されるプレートは、三塩基性硫酸鉛から製造されるものと全く同様に容易に製造される。
【0040】
本発明の利点は、特に、熟成した鉛プレートの良好な帯電性を可能にすることである。同時に、電池の形成に必要な電流を低くする。言い換えると、必要なバッテリーを製造するために消費されるエネルギーが小さくなる。更に、特に工業用バッテリーの場合、粒径を最適に制御し得る。電池内で約15〜18μmの粒径を有する四塩基性硫酸鉛を形成することが、特別な場合には好ましい。このような制御は、本発明の添加剤を用いることにより特に有利にもたらされる。問題は、一般的に、鉛ペースト1トンあたり約2〜4kgの従来の添加剤があることである。ここで、適切に良好な分布を達成することは困難である。本発明の添加剤を用いると、既に強調したように、より大量の10kg/tの鉛ペーストを用い、意外にも鉛丹を含ませることが可能であり、バッテリーペースト中、鉛丹自体を含む、添加剤の全ての成分の最適な分布をもたらす。更に、鉛丹を更に含ませても、製品の費用に有意な影響を及ぼさない。同等の効果を考慮すると、結果は、費用が約1/3に低下し得ることである。
【0041】
本発明を実施例及び比較例により、以下に更に詳細に説明する。
実施例/比較例
表1の処方に従い、2種の水性スラリーを製造した。特定の手順は以下の通りである:1つの混合物中、欧州特許第1576679号B1(WO2004/059772A2に対応する)の請求項1による定義による、TBLS+を使用した。他の処方においては、スラリー中のTBLS+の割合を小さくし、鉛丹に置換した。
【0042】
本発明のスラリーの調製:
40重量部の四塩基性硫酸鉛
60重量部の鉛丹(Pb
3O
4が86%を超える)
0.3重量部のシリカ
95重量部の水(脱塩水)
【0043】
個々の成分を撹拌容器内で分散させ、閉鎖系撹拌ボールミル及びジルコニア粉砕体を用いて、1μm未満の最終の粒径が達成されるまで、循環させて粉砕する。
【0044】
結果として、以下の表1に示すスラリーが得られた。
【表1】
N.B.:TBLS+は、欧州特許第1576679号B1に従い、四塩基性硫酸鉛及び微粉シリカ(混合比:2000:1〜200:1)の混合物を意味する。TBLS+/鉛丹は、本発明に由来する混合物を意味する(TBLS+:鉛丹の重量比1:1.5)。
本発明の処方の場合、表1中の情報から計算することができ、TBLS+の割合は33.8%〜18.8%に減少し、又は高価なTBLS+の45%減少が達成される。
【0045】
2種のスラリー(比較例及び本発明)を、以下のようにして、トラックのバッテリー用のペーストに変換した:
各場合において得られたペーストの組成を以下の表2に示す。
【表2】
【0046】
以下のようにして、表2に示す処方(比較例/本発明)を加工処理し、トラックのバッテリー用ペーストを得た:
トラックのバッテリー用ペーストの製造のために、適当量の酸化鉛(粉砕酸化物)を、最初に撹拌機に入れ、混合を開始した。ポリアクリル繊維(繊維長3〜7mm)を手動で計量した後、水を用いて、酸化鉛/繊維混合物をペーストに変換する。水の添加が完了した後、ペーストを更に3分間かけて均一化する。次いで、混合手段を停止し、ペーストに、TBLS+又はTBLS+/鉛丹混合物を加える。更に2分間混合した後、硫酸(50%、密度1.4g/mL)を13分間かけて、酸化鉛ペースト中に計り入れる。この過程において、63℃のペースト温度が達成される。ペースト温度が、鉛格子の糊付けに適している45℃になるまで、攪拌機を更に20分間操作する。
【0047】
最終的に、2種のバッテリーペーストを、通常の方法により鉛格子に塗布し、熟成させる。この過程は以下の通りであった:
糊付けした格子をプレドライヤー中で表面乾燥し、垂直の配置で(懸濁して)、パレット上に保存し、これらのパレットを熟成チャンバー内に入れる。熟成は、以下の熟成プログラム(チャンバーパラメータ)に従って実施する:
第1段階:80℃、100%の相対湿度、4時間。
第2段階:55℃、70〜80%の相対湿度、14時間。
第3段階:55〜85℃、0%の相対湿度、10時間。
【0048】
電子顕微鏡画像を、2種の熟成バッテリーペーストのそれぞれについて作成した。TBLS+のみに由来する熟成バッテリーペーストの画像を
図1に示し、
図2は、本発明の熟成バッテリーペーストの画像を示す。関連する相違点は確認されない。同様に、X−線回折計による画像に適用する。これに関し、以下の
図3(TBLS+/熟成バッテリーペースト)(比較例/Penox A)及び
図4(TBLS+/鉛丹/熟成バッテリーペースト(本発明/Penox B)について参照される。最初に存在していた三塩基性硫酸鉛に帰し得るピークは、明らかにいずれの回折図にもないことがわかる。個々のピークの割り当ては、回折図の下に示される識別子により示される。
【0049】
次いで、プレートを、168Ahの公称容量、及び少なくとも90秒のコールドスタート放電性能CCA(−18℃におけるバッテリーの放電、及び6ボルトまで低下し、633アンペア)を有するB型のトラック用バッテリー内に取り付ける。バッテリーを、密度1.074g/mLの硫酸で満たした後、バッテリーは、後述する帯電プログラムに従い、続けて実験室内に置く。
【0050】
以下の表3は、上述するように、最初にTBLS+、第二にTBLS+/鉛丹混合物を使用するトラックのバッテリーのための形成プログラムを示す。種々のバッテリーを帯電させる形成プログラムをここに特定する:
【表3】
【0051】
表3による形成プログラムを用い、以下の表4に示す結果が得られた:
【表4】
表4中の情報は、TBLS+の割合が相当低いにもかかわらず、本発明は、比較実験による材料と同じ帯電特性を示し、高い割合の安価な鉛丹が添加剤中に存在することは相当に有利であることを示す。
【0052】
最初にTBLS+処方(比較例)に由来し、第二にTBLS+/鉛丹処方(本発明)に由来する、帯電したトラックのバッテリーを、容量定量のために、K20試験に供した。バッテリーを、一定の8.4Aで放電した。以下の表5に示す測定が得られた:
【表5】
168Ahの仕様は、使用されるバッテリーの公称容量である。本発明により得られる値は、明らかに適切とはいえず、前記仕様を超えているが、比較実験についてもかなり超えている。
【0053】
更に、バッテリーを−18℃及び633Aで放電し、残留電圧を6ボルトに低下させる、コールドスタート電流試験(CCA)を実施した。以下の表6に示す値が得られた:
【表6】
【0054】
比較試験、及び本発明に由来する試験の両者において、高い高電流放電抵抗が観察される。しかし、本発明は、比較例よりも明らかに優れている。