特許第5851523号(P5851523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851523
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】衣類ファスニングシステム
(51)【国際特許分類】
   A44B 1/18 20060101AFI20160114BHJP
   A44B 99/00 20100101ALI20160114BHJP
   A44B 5/00 20060101ALN20160114BHJP
【FI】
   A44B1/18 Z
   A44B99/00 611D
   !A44B5/00 640C
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-550711(P2013-550711)
(86)(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公表番号】特表2014-503322(P2014-503322A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】CA2011001417
(87)【国際公開番号】WO2012103626
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】61/437,769
(32)【優先日】2011年1月31日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513193255
【氏名又は名称】パトリツィア アンジェラ カズボロ
【氏名又は名称原語表記】CASUBOLO, Patrizia Angela
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】パトリツィア アンジェラ カズボロ
【審査官】 山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第00609495(US,A)
【文献】 登録実用新案第3037518(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3141128(JP,U)
【文献】 米国特許第02899731(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 1/00−9/20
A44B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類のボタンホールに挿入されるように構成されるボタン部材であって、前記ボタン部材は前壁、後壁及びそれらの間に配置される側壁を備え、前記ボタン部材は、前記後壁の一部及び前記側壁の一部から延びる開口部、並びに前記開口部と連通する内部チャンバを画定する、ボタン部材と、
前記開口部を通って延在し、前記内部チャンバに連結される2つの対向する端部を有し、それによって、前記ボタン部材の外側で少なくとも部分的に延びて、前記衣類のボタンを受け入れるように構成されるループを画定する弾性部材であって、前記開口部は、前記弾性部材が前記側壁の前記一部に当接することなく前記後壁の前記一部に当接する後方姿勢から、前記弾性部材が前記後壁の前記一部に当接することなく前記側壁の前記一部に当接する前方姿勢までの、前記弾性部材の運動を可能にする寸法である、弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、前記ボタン部材の前記開口部に又は前記内部チャンバ内に接着される、衣類ファスニングシステム。
【請求項2】
前記開口部は、前記後壁に画定される第1部分と、前記側壁に画定される第2部分とを有し、前記第1部分は、前記第2部分の表面積よりも大きい表面積を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記開口部が有する表面積の60%を超える部分が前記後壁に画定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記開口部が有する表面積の80%を超える部分が前記後壁に画定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ボタン部材は、全体的にディスク形状を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記前壁は、平坦である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記後壁は、凸状である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記後壁は、凸状である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記弾性部材は、伸縮する部材である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記ボタン部材は、一体に構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記弾性部材は、前記内部チャンバ内に接着される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記開口部が有する表面積の70%を超える部分が前記後壁に画定される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記内部チャンバの直径は、前記弾性部材の直径の2.1倍から2.5倍である、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
請求項1に定義された衣類ファスニングシステムを製造する方法であって、
前記弾性部材を、前記内部チャンバに挿入するステップと、
前記弾性部材を、前記弾性部材が前記後壁の前記一部に当接する前記後方姿勢へ回動させるステップと、
前記弾性部材を内側部分と接着するために、前記内側部分に接着材を挿入するステップとを含み、
前記接着材を挿入するステップは、当該方法の間いつでも実施できる、衣類ファスニングシステムを製造する方法。
【請求項15】
前記弾性部材を前記後方姿勢へ回動させた後に、前記接着材を挿入する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記弾性部材が前記後方姿勢にあるときに前記接着材は塗布され、
前記弾性部材が前記後方姿勢にあるときに前記前壁の一部から離れている前記弾性部材の部分であって、かつ前記弾性部材が前記前方姿勢にあるときに前記前壁の前記一部に当接する前記弾性部材の部分に、前記接着材の少なくとも一部を塗布する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は衣服及び衣類の分野に関するものである。より具体的には、本開示は衣類ファスニングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
普通の衣服及び衣類は通常、あらゆる体型にフィットするものではない一定のサイズ及び形状で作成されることは共通の認識である。実際、人体の形態は、しばしば当該一定のサイズ及び形状の中間に該当するため、人々はより大きなサイズの衣服を購入して当該衣服を調整することを強いられる。実際、サイズのより大きな人は仕立てられたシャツを購入しない限り、カラーの着心地をよくし、カラーを閉めるために、本来のサイズよりも1サイズ又は2サイズ大きなものをしばしば購入しなければならない。結果として、袖を短くしなければならないが、普通は2度以上洗濯をした後に生地が縮む傾向がある。このような状況は、大柄の人又は肥満体形の人、及びアスリートにとって特に問題となる。彼らは、自身のプロポーションにフィットする衣服を見つけることが出来ない。例えば、アスリートは、シャツ又は他の衣服を着ることがしばしば困難となる。筋肉質な首にはカラーが窮屈すぎることが頻繁にあり、これが着心地の悪さ及び窒息を引き起こすからである。また大抵の場合、シャツのカフスは、手首の直径に適応し、腕時計を取り付けるのに必要なスペースをつくるための2つのボタンを両方の手首に有する。しかし、より太い又はより筋肉質な、手首及び腕をもつ人はしばしば、シャツが手首で引っかかり、自分の運動に追随できない状況に置かれる。例えば、人が上腕を上げる(地下鉄又はバスにおいて典型的な姿勢)と、シャツ又は衣服は手首で引っかかり、下向きに巻かれず、シャツの破れ及び/又はその人の皮膚の炎症を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
他の潜在的に問題のある状況として、当初は衣服が人の体にフィットしても、衣料が必要に応じて広がらないために、その人の動作又は姿勢により衣類又は衣服の着心地が悪くなる又は破れさえする状況がある。例えば、美味しい昼食の後又は緊張の多い状況では、血液循環がより促進されるため、首が腫れ始めることがあり、着心地という点で窮屈すぎるため、カラー及びネクタイを緩めることを強いられる。同様に、激しい肉体的動作の後に人体は腫れることがあり、柔軟性不足による衣類の破れを引き起こすことがある。また、衣類の弾力性の不足のために、体の伸長及び運動のようないくつかの動作が制限されることがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様によると、下記の衣類ファスニングシステムが提供される。
【0005】
その衣類ファスニングシステムは、衣類のボタンホールに挿入されるように構成されるボタン部材であって、当該ボタン部材は1組の対向する壁及びそれらの間に配置される側壁を備え、当該ボタン部材は対向する壁の一方の一部及び側壁の一部から延びる開口部を画定し、当該ボタン部材は本質的に一体に構成される、ボタン部材と、開口部を通って延在し、ボタン部材に連結される弾性部材であって、当該弾性部材は衣類のボタンに連結するように構成され、当該弾性部材は少なくとも一部がボタン部材の内側部分に連結され、少なくとも一部がボタン部材の外側で延在する、弾性部材とを備える。
【0006】
他の態様によると、以下の衣類ファスニングシステムが提供される。
【0007】
その衣類ファスニングシステムは、衣類のボタンホールに挿入されるように構成されるボタン部材であって、当該ボタン部材は前壁、後壁及びそれらの間に配置される側壁を備え、当該ボタン部材は、後壁の一部及び側壁の一部から延びる開口部、並びに開口部と連通する内部チャンバを画定する、ボタン部材と、開口部を通って延在し、内部チャンバに連結された2つの対向する端部を有し、それによって、ボタン部材の外側で少なくとも部分的に延びて、衣類のボタンを受け入れるように構成されるループを画定する弾性部材であって、当該開口部は弾性部材の運動を可能にする寸法である、弾性部材とを備える。
【0008】
他の態様によると、下記の衣類ファスニングシステムが提供される。
【0009】
その衣類ファスニングシステムは、衣類のボタンホールに挿入されるように構成されるボタン部材であって、当該ボタン部材は前壁、後壁及びそれらの間に配置される側壁を備え、当該ボタン部材は、後壁に画定される単一の開口部及び開口部と連通する単一の内部チャンバを有し、当該ボタン部材は本質的に一体に構成される、ボタン部材と、開口部を通って延在し、内部チャンバに連結された2つの対向する端部を有し、それによって、ボタン部材の外側で少なくとも部分的に延びて、衣類のボタンを受け入れるように構成されるループを画定する、弾性部材とを備え、後壁は弾性部材の回動運動を促進するために凸状になっている。
【0010】
他の態様によると、衣類のボタンホールに挿入されるように構成されるボタン部材であって、当該ボタン部材は、1組の対向する壁及びそれらの間に配置された側壁を備え、当該ボタン部材は、対向する壁の一方の一部及び側壁の一部から延びる開口部を画定する、ボタン部材と、ボタン部材に連結され、衣類のボタンに連結するように構成される弾性部材であって、当該弾性部材はボタン部材の内側部分に連結し、開口部を通ってボタン部材の外側で延在する、弾性部材とを備える、衣類ファスニングシステムが提供される。
【0011】
このような衣類ファスニングシステムは、衣類及び/又は使用者の外見を変えることなく、要求される水準の柔軟性及び着心地を使用者に提供するのに効果的であることが判明した。このようなシステムにより、固定位置(a fastened position)にあるときに、衣類によって画定される調整可能な内周が得られる。実際、このような衣類ファスニングシステムは、柔軟性を要するいかなる場合、より具体的には、弾性部材が静止位置にあるとき、及び/又は、使用者が、例えばこのようなシステムを有するカラーを有するシャツをネクタイとともに着用する場合にも用いることができ、さらに目にはほぼ見えない。また、このような衣類ファスニングシステムは、衣服又は衣類に柔軟性を提供するのに効果的となり得、衣服又は衣類を着用している人によってこのような衣類ファスニングシステムを手作業で適用することができることが判明した。このような衣類ファスニングシステムは、様々な種類のシャツ又はセーターと使用できる。実際、固定位置にあるときに、衣類が画定する内周を大きくするため、衣料ファスニングシステムは様々な種類及びサイズの衣類に適用される。これらの衣類ファスニングシステムは、より高い柔軟性及びより良い着心地のよさを使用者に提供するための、単純で、安価な解決方法を提供する。これらの衣類ファスニングシステムは、裁縫師又は洋裁師に頼らずに、カラー、ウエスト又はカフスのサイズを、簡単かつ迅速に修正するのに用いることもできる。例えば、利用者が洋裁師又は裁縫師の特定の技能を有しなくてもカラー、ウエスト又はカフスのサイズを簡単に修正することができる。
【0012】
他の態様によると、本開示で定義される衣類ファスニングシステムを製造する方法が提供され、当該方法は、弾性部材を内側部分に挿入するステップと、弾性部材が、対向する壁の一方の一部に当接する第1位置へ、弾性部材を回動させるステップと、弾性部材を内側部分と接着するために、内側部分に接着材を挿入するステップとを含み、接着材を挿入するステップは、当該方法の間いつでも実施できる。
【0013】
他の態様によると、本開示で定義される衣類ファスニングシステムを製造する方法が提供され、当該方法は、弾性部材を、内部チャンバに挿入するステップと、弾性部材を、弾性部材が後壁の一部に当接する後方姿勢へ回動させるステップと、弾性部材を内側部分と接着するために、内側部分に接着材を挿入するステップとを含み、接着材を挿入するステップは、当該方法の間いつでも実施できる。
【0014】
他の態様によると、本開示に定義される衣類ファスニングシステムを製造する方法が提供され、当該方法は、弾性部材を内部チャンバに挿入するステップと、弾性部材を回動させるステップと、弾性部材を内側部分と接着するために、接着材を内側部分に挿入するステップとを含み、接着材を挿入するステップは、当該方法の間いつでも実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示による衣類ファスニングシステムの実施例を表す分解側面図であり、説明を目的としてボタン部材及び弾性部材は互いに分離されている。
図2図1の衣類ファスニングシステムの正面図であり、説明を目的として弾性部材は省略されている。
図3図1の衣類ファスニングシステムの平面図である。
図4図1の衣類ファスニングシステムの、線4−4に沿った断面図であり、説明を目的として弾性部材は省略されている。
図5】弾性部材がボタン部材に挿入された、図1の衣類ファスニングシステムの側面図である。弾性部材は後方姿勢(又は起き上がり姿勢)で示されている。点線は前方姿勢にあるときの弾性部材を表す。
図6】本開示による衣類ファスニングシステムの他の実施例を表す分解側面図であり、説明を目的としてボタン部材及び弾性部材は互いに分離されている。
図7図6の衣類ファスニングシステムの平面図である。
図8図6の衣類ファスニングシステムの線8−8に沿った断面図であり、説明を目的として弾性部材を加えている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面は様々な実施例を表す。
【0017】
以下に示す実施例は非限定的なものである。
【0018】
例えば、ボタン部材は全体的にディスク形状を有することができる。例えば、対向する壁の一方を凸状にすることができる。例えば、ボタン部材は対向する壁の一方と側壁との間に配置される周縁を備えることができ、対向する壁の一方の一部及び側壁の一部は、周縁と隣接する。
【0019】
例えば、弾性部材を伸縮する部材とすることができる。
【0020】
例えば、開口部を、側壁への回動運動及び対向する壁の一方への回動運動を可能とする寸法にできる。例えば、開口部を、弾性部材が、対向する壁の一方の一部に当接する第1位置から、弾性部材が側壁の一部に当接する第2位置への、弾性部材の回動運動を可能とする寸法にできる。
【0021】
例えば、本開示のシステムには前壁及び後壁を備える1組の対向する壁を設けることができ、開口部は後壁の一部と側壁の一部との間に画定されている。前壁をほぼ平坦にすることができる。開口部は、対向する壁の一方に画定された第1部分と、側壁に画定された第2部分とを有することができ、第1部分は、第2部分の表面積よりも大きい表面積を有する。
【0022】
例えば、開口部が有する表面積の60%、70%又は80%を超える部分を対向する壁の一方に画定することができる。
【0023】
例えば、内側部分又は内部チャンバの直径を、弾性部材の直径の約2.05倍から約2.55倍、又は2.1倍から2.5倍とすることができる。
【0024】
例えば、ボタン部材は全体的にディスク形状を有することができ、当該全体的なディスク形状は単一の外周を画定する。
【0025】
例えば、内側部分をボタン部材の内部に画定される内部チャンバとすることができ、当該内部チャンバは開口部と連通している。弾性部材は内側部分に連結する2つの対向する端部を有することができ、それによって、衣類のボタンを受け入れるように構成されるループを画定する。弾性部材は、全体的には円柱状の形状を有する伸縮素材を有することができる。
【0026】
例えば、開口部を、側壁へ及び後壁へ回動運動できるような寸法にできる。
【0027】
例えば、開口部を、弾性部材が後壁の一部に当接する後方姿勢から、弾性部材が側壁の一部に当接する前方姿勢への、弾性部材の回動運動を可能とする寸法にできる。
【0028】
例えば、開口部は、後壁に画定された第1部分と、側壁に画定された第2部分とを有することができ、第1部分は、第2部分の表面積よりも大きい表面積を有する。
【0029】
例えば、ボタン部材を一体のボタン部材とすることができる。ボタン部材を高分子材料で作ることができる。
【0030】
例えば、弾性部材を第1位置(例えば後方姿勢)へ回動させた後に、接着材を挿入することができる。
【0031】
例えば、弾性部材が後方姿勢にあるときに接着材を塗布することができ、弾性部材が第1位置(例えば、後方姿勢)にあるときに前壁から離れている弾性部材の部分であって弾性部材が第2位置(例えば、前方姿勢)にあるときに前壁に当接する弾性部材の部分に、接着材の少なくとも一部を塗布することができる。その後弾性部材を第2位置(例えば、前方姿勢)へ回動させることができる。
【0032】
ここからは、図面に示される非限定的な実施例に言及する。
【0033】
図1〜5から分かるように、衣類ファスニングシステムは、ボタン部材12及び弾性部材14を備える。ボタン部材12は2つの対向する壁(例えば、後壁16及び前壁18)を備える。ボタン部材12は側壁20、及び側壁と2つの対向する壁との間に配置された2つの周縁も備える。例えば、周縁は22(後方周縁)及び24(前方周縁)等の端縁とすることができる。ボタン部材12は内部チャンバ28に連通する開口部26も備える。開口部26及び内部チャンバ28は、弾性部材14の対向する端部30を受け入れるように構成される。例えば、開口部26及び内部チャンバ28を、弾性部材14を任意の堅さで受け入れる寸法又は弾性部材14と係合する寸法にできる。弾性部材14は、接着剤、縫合、溶着等の手段による様々な方法で、ボタン部材12に連結することができる。実際に、対向する端部30は、内部チャンバ28内に接着することができる。例えば、内部チャンバ28の直径を、弾性部材14の直径の約2.05倍から約2.55倍、又は約2.1倍から約2.5倍の大きさとすることができる。
【0034】
図1〜5に示すように、ボタン部材12はディスク形状を有することができる。ボタン部材12を、平行六面体形状、円柱形状又は細長形状、三角形状等の他の形状とすることもできる。例えば、対向する壁の少なくとも一方を(例えば後壁16のように)凸状にすることができる。このような凸状の壁はボタン部材12をボタンホールに挿入しやすくすることが判明した。さらに、対向する壁の少なくとも一方を(例えば前壁18のように)ほぼ平坦にすることができる。例えば、ボタン部材を全体的にディスク形状とすることができる。
【0035】
図5から分かるように、弾性部材14がボタン部材12に連結されたとき(例えば、弾性部材14の対向する端部30が内部チャンバ28に挿入されたとき)、弾性部材を後方姿勢(実線)から前方姿勢(点線参照)へ回動させることができる。実際に、弾性部材14が後方姿勢にあるとき、弾性部材14は後壁16の一部34に当接する。さらに、弾性部材14が前方姿勢にあるとき、弾性部材14は前壁18の一部に当接する。
【0036】
図2から分かるように、開口部26は後壁16から側壁20へ延びる。実際に、開口部26はこのように後壁16上に第1表面積を画定し、側壁20上に第2表面積を画定する。例えば、第1表面積を第2表面積よりも大きくすることができる。言い換えると、開口部の大部分又は開口部の主要部分が後壁16上に延びる。例えば、開口部の60%、70%又は80%を超える部分を対向する壁の一方(例えば後壁16)上に画定することができる。
【0037】
利用者は、図1から5の衣類ファスニングシステムをどのように用いるかを容易に理解できるであろう。図1から5に示すシステムと一緒に提供できる取扱説明書を見ることなく、利用者は衣類ファスニングシステムがどのように機能するかを容易に理解することができる。
【0038】
ボタン部材12は、市販の標準的なボタンの一般的な直径である約6mmから約15mm、又は約10mmから約12mmと同様の直径を有することができる。
【0039】
ボタン部材12は標準的なボタンと同じ全体寸法を有することもできる。例えば、厚さを約2mmから約5mm、又は約2mmから約4mmとすることができる。
【0040】
このように、より良い着心地のよさを望み、より低い剛性で又はより窮屈でないように又はより着心地よく自分の衣類を固定することを望む利用者は、自分の衣類に存在するボタンを弾性部材14が画定するスペース32(ループ)に簡単に導入することができる。弾性部材14をポリマー等の様々な伸縮材料又は弾性材料で作ることができる。弾性部材14を全体的な円柱形状又は全体的な平行六面体形状等の様々な形状とすることができる。スペース32のサイズを調整するために、弾性部材14を様々な長さとすることができる。従って、ボタン部材のサイズ及びスペース32のサイズ(弾性部材の長さ)について、様々なサイズの衣類ファスニングシステムを製造することができる。
【0041】
従って、一旦衣類に存在するボタンがスペース32に挿入されると、利用者は単純にボタン部材12を自分の衣類に存在するボタンホールに導入するだけでよい。これによって、弾性部材14が弾力性を有するという事実により、着心地をよくするための余裕を持って衣類を固定する。実際に、衣類ファスニングシステム10は、拡張を可能にするため、上述した使用者に不快な状況を回避することができる。要するに、衣類にいくらかの弾力性及び柔軟性を提供する。
【0042】
図5に示すような方法で弾性部材14の回動運動を可能にする設計を有することで、ボタン部材12が衣類に対して見た目上、奇妙な角度(つまり、ボタンの上壁と衣類との間の一般的な平行関係とは異なる角度)で傾いたり延在したりする状況を避けられることが判明した。実際に、弾性部材14のこのような回動運動を可能にするためにボタン部材をこのような方法に適応させることで、衣類ファスニングシステム10が伸張形態又は伸張位置にあるときに、弾性部材14によってボタン部材にいくらかの力が加えられて、ボタン部材が傾く状況を避けられることが判明した。実際に、このような設計を持たない特定の衣類ファスニングシステムを発明者が試験すると、力が加えられたときに、当該特定の衣類ファスニングシステムは、傾く傾向及び/又は衣類に存在するボタンホールから取り外れる(取れる)傾向があることが観察された。すなわち、すでに傾いたり斜めになったりしている従来技術のボタン部材を、(例えば使用者が引っ張ることで)移動させたり特定の運動(衣類を伸長させる運動)を生じさせたりする場合に、当該ボタン部材がボタンホールから取れる傾向があることを観察した。従って、図1から5に示すように、この設計は、衣類ファスニングシステム10が何気なく外れる状況を避けることを可能にする。またこの設計は、ボタン部材12が、奇妙な角度で衣類のボタンホール内に延在する状況を避けることを可能にし、又は、衣類に存在するボタンホール内のボタンの一般的な状態(つまりボタンの前壁が、衣類及びボタンホールに対してほぼ平行である状態)と比較して、ボタン部材が傾いた角度で衣類に存在するボタンホール内に延在する状況を避けることを可能にする。
【0043】
例えば、ボタン部材12を一体のボタン部材とすることができる。このことはこのような衣類ファスニングシステムの製造工程を大幅に単純化する。このことでコストを抑えることもできる。同じことが弾性部材14にも当てはまる。
【0044】
衣類ファスニングシステム10は以下のように製造することができる。弾性部材14を内部チャンバ28内に導入することができ、その後弾性部材を第1姿勢に回動させることができ、その結果弾性部材は後壁16の一部34に当接する。その後、弾性部材14とボタン部材12とを、例えばチャンバ28で、互いに接着又は互いに連結するために、内部チャンバ28内に接着材を塗布することができる。例えば、弾性部材14が図5に示すように後方姿勢にあるとき(弾性部材14が後壁16の一部34に当接するとき)に接着材が塗布され、接着部の一部が部分38に塗布されたとき、得られたボタン部材12は、衣服に対して傾く傾向がより少なく、又は衣類に対して見た目上奇妙な角度で延在する傾向がより小さくなることが観察された。さらに、このような方法で製造されたとき、ボタン部材12がボタンホールから外れる傾向もより小さかった。例えば、弾性部材14をボタン部材12に挿入するとき、壁18がほぼ水平に延在するようにボタン部材12を配置することができる。例えば、接着材がチャンバ内へ挿入され、又は接着材が開口部26を通過するとき、弾性部材が後方姿勢(起き上がり姿勢)にある際に、壁18又は部分36に接触又は当接しない部分38に、接着材の一部を塗布することができる。その後、弾性部材14を前方姿勢に、戻す又は回動させることができる。接着材を塗布するとき、壁18もまたほぼ水平に延在させることができる。
【0045】
図6から図8で分かるように、図1から5に示す衣類ファスニングシステムの変形例が提供されている。
【0046】
図6から図8はボタン部材112及び弾性部材114を有する衣類ファスニングシステム110を示す。ボタン部材112は2つの対向する壁(例えば後壁116及び前壁118)を備える。ボタン部材112は側壁120及び2つの周縁122(後方周縁)及び124(前方周縁)も備える。ボタン部材112には内部チャンバ128に連通する単一の開口部126も設けられている。チャンバ128及び開口部126は、弾性部材114の対向する端部130を受け入れるように構成されている。開口部126及び内部チャンバ128の寸法を、弾性部材114を任意の堅さで受け入れる、又は弾性部材114と係合するようにすることができる。開口部126及び内部チャンバ128はボタン部材112の中央に配置されている。弾性部材114は、既に衣類ファスニングシステム112について上述したような様々な方法で、ボタン部材112に連結することができる。弾性部材は、衣類に存在するボタンを挿入することができるスペース132を作るループを画定する。
【0047】
このように、衣類ファスニングシステム110は、上述した衣類ファスニングシステム10と同様の方法で用いることができる。後壁116が凸状であるという事実により、存在するボタンを一方の端部で受け他方の端部をボタンホールに挿入するときに、ボタン部材が奇妙な角度で延在する状況、又は衣類のボタンホール内のボタンの一般的な状態(つまりボタンの前壁が、衣類及びボタンホールに対してほぼ平行である状態)と比較してボタン部材が傾いている角度で延在する状況を、ほぼ排除する(システム10ほど効果的な方法ではないが、一定のレベルで排除する)ことができることが観察された。このような凸状の壁により、弾性部材を、このような望ましくない状況をほぼ排除する特定の角度で回動させることができることが観察された。
【0048】
本開示は、特定の具体例に関して記載している。本明細書は本開示の理解を助けることを意図しており、本開示の範囲を限定するものではない。本明細書に記載した開示の範囲から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正を加えられることが、当業者には明らかであり、このような修正を本明細書がカバーしていることを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8