(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押し下げ手段は、前記ダイ部に備えられ、前記ダイから前記缶体ホルダに向けて前方に突出して前記胴部外周面の開口部側を拘束する略円筒状の第2拘束リングであり、
この第2拘束リングの先端は、前記第1拘束リングの前記先端に当接する前記当接部であることを特徴とする請求項3に記載の缶胴縮径装置。
前記復帰手段は、前記缶体ホルダに設けられて、前記ベースパッドに対して前記第1拘束リングを前進させるように付勢する弾性保持体であることを特徴とする請求項2に記載の缶胴縮径装置。
前記第1拘束リング移動手段は、前記第1拘束リングを進退させる駆動手段と、この駆動手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の缶胴縮径装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなボトル缶の成形加工において、缶軸方向に長い変形をさせる加工や、径変化量の大きな加工など、1回の加工量を大きくすることが求められている。しかしながら、1回の加工量を大きくするには缶胴を絞り型に押し込む荷重(いわゆるネック成形荷重)が大きくなるため、缶底が沈み込んだり缶胴が膨出したりしやすくなるおそれがある。
【0007】
また、近年、缶底から開口部までに複数段の縮径部と拡径部とを有する形状を有する異形缶などを成形するため、従来よりも缶底に近い部分に加工を行うことが求められている。
【0008】
特許文献1に記載された装置を用いて底部近傍に縮径部を設けようとする場合、ガイドリングがベースパッドに当接するとさらに後退する構造により、縮径位置を底部に近づけることができる。しかしながら、ベースパッドと絞り型との間にガイドリングが設けられていることにより、ガイドリングの長さ分は縮径位置が底部から離れてしまう。この構造においてさらに縮径位置を底部に近づけるには、ガイドリングの長さを小さくすることになるが、ガイドリングの長さが小さすぎると缶胴の膨出等を防止することが難しくなる。また、ガイドリングと絞り型とが離間しているため、ガイドリングと絞り型との間の部分では缶胴を拘束するものがなく、膨出等が生じるおそれがある。
【0009】
一方、特許文献2に記載された装置を用いる場合、缶胴の成形加工の前に予め開口部にフランジ加工を施しているが、フランジ加工後の拡径成形は不可能であるため、デザインに制約がかかってしまう。すなわち、フランジ加工が施された缶を開口側と底部から軸方向に挾持しているため、拡径成形が不可能であり、開口部側から加工した部分については開口部が最も小径となり、またボトム側から加工した部分についてはボトム側が最も小径となるので、中途部分でくびれた形状を有する異形缶は製造できない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、金属素材からなる缶体の胴部に対して底部近傍まで縮径加工を施して、底部近傍がくびれた異形缶の提供を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一端が開口された有底円筒形状の缶体における胴部に縮径加工を施す缶胴縮径装置であって、缶体の底部に当接するベースパッド、および前記缶体の胴部外周面の前記底部側を拘束するとともに前記ベースパッドに対して缶軸方向に相対的に進退自在である略円筒状の第1拘束リングを備え、前記缶体の底部を保持する缶体ホルダと、前記缶体ホルダに対して缶軸方向に進退することにより前記胴部を縮径加工するダイを備える縮径用のダイ部と、前記ダイの前進に伴い、前記第1拘束リングを前記缶軸方向に後退させる第1拘束リング移動手段とを有する。
【0012】
この缶胴縮径装置によれば、ダイの前進に伴い、缶体の胴部外周面を拘束する第1拘束リングをベースパッドに対して後退させるので、缶体の胴部外周面を拘束しながらダイを缶体の底部に近接させ、底部近傍まで縮径加工を施すことができる。一方、第1拘束リングよりも開口部側の胴部を加工する際には、第1拘束リングは移動することなく、缶体の底部側の胴部を拘束して、加工時の弾性変形を抑えることができる。これにより、外径変化を伴う加工において、圧延材料の素材異方性に起因する肉厚のばらつきの発生を抑えることができる。
【0013】
この缶胴縮径装置において、前記第1拘束リング移動手段は、前記缶体ホルダに対する前記ダイの接近に伴い前記第1拘束リングを押し下げて後退させる押し下げ手段と、前記第1拘束リングを後退前の位置に復帰させる復帰手段とを有することが好ましい。また、前記押し下げ手段は、前記ダイ部に設けられて前記第1拘束リングの先端に当接する当接部を有することが好ましい。
【0014】
この場合、ダイの接近と第1拘束リングの後退とを物理的にリンクさせることにより、確実にダイを底部近傍まで前進させることができる。
【0015】
この缶胴縮径装置において、前記押し下げ手段は、前記ダイ部に備えられ、前記ダイから前記缶体ホルダに向けて前方に突出して前記胴部外周面の開口部側を拘束する略円筒状の第2拘束リングであり、この第2拘束リングの先端は、前記第1拘束リングの前記先端に当接する前記当接部であることが好ましい。この場合、ダイの近傍に第2拘束リングが配置されるので、ダイの近傍における胴部の膨出を効果的に防止することができる。
【0016】
この缶胴縮径装置において、前記復帰手段は、前記缶体ホルダに設けられて、前記ベースパッドに対して前進させるように付勢する弾性保持体が備えられていることが好ましい。この場合、缶体の成形時にダイ部の当接部に押圧されて後退した第1拘束リングを、ダイ部の後退に伴い容易に前進させることができる。
【0017】
この缶胴縮径装置において、前記第1拘束リング移動手段は、前記第1拘束リングを進退させる駆動手段と、この駆動手段を制御する制御手段とを備えてもよい。この場合、たとえばダイの位置を検出するセンサやアクチュエータ等を用いて、ダイと第1拘束リングとを接触させずに、適切なタイミングで第1拘束リングを進退させることができる。
【0018】
また、本発明は一端が開口された有底円筒状の缶体を保持する缶体ホルダであって、缶体の底部に当接するベースパッドと、前記缶体の胴部外周面の底部側を拘束するとともに前記ベースパッドに対して缶軸方向に相対的に進退自在である略円筒状の拘束リングとを備える。
【0019】
また、本発明は一端が開口された有底円筒形状の缶体に加工を施す缶製造装置であって、上述の缶体ホルダを複数備えるとともに、前記缶体ホルダに対して前記缶軸方向に進退することにより前記缶体の胴部を加工する少なくとも1つの加工用ダイ部と、前記缶体ホルダを前記加工用ダイ部に対して間欠的に移動させる缶体ホルダ移動手段とを備え、前記加工用ダイ部は、少なくとも1つが前記缶体の前記胴部を縮径加工する縮径用ダイ部である。
【0020】
この缶製造装置において、前記加工用ダイ部が複数備えられるとともに、少なくとも1つが前記缶体の前記胴部を拡径加工する拡径用ダイ部であることが好ましい。
【0021】
また、本発明は一端が開口された有底円筒形状の缶体における胴部に縮径加工を施す方法であって、略円筒状の拘束リングを用いて缶体の胴部外周面の底部側を拘束しながら、前記缶体の底部を保持し、前記拘束リングを後退させながら、前記胴部を縮径加工するダイを前記缶体の開口部から前記底部に向けて前進させて前記缶体の前記胴部に圧入することにより、前記ダイの先端部を前記缶体の前記底部近傍まで到達させ、前記胴部を前記開口部から前記底部近傍まで縮径加工する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、金属素材からなる缶体の胴部に対して底部近傍まで縮径加工を施して、底部近傍がくびれた異形缶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る缶体ホルダを備えた缶胴縮径装置において、成形前の缶体を保持させた状態を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す缶胴縮径装置において、ダイの先端部近傍を示す部分拡大断面図である。
【
図3】
図1に示す缶胴縮径装置において、ダイ部が前進し、缶体の開口部がダイに押し込まれた状態を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す缶胴縮径装置において、当接部が第1拘束リングの先端に当接した状態を示す断面図である。
【
図5】
図1に示す缶胴縮径装置において、第1拘束リングが当接部に押し下げられ、缶体の胴部が底部近傍までダイによって成形された状態を示す断面図である。
【
図6】
図1に示す缶胴縮径装置において、ダイ部が後退してダイから缶体の胴部が抜き取られ、第1拘束リングが弾性保持体によって付勢されて前進した状態を示す断面図である。
【
図7】
図1に示す缶胴縮径装置において、成形された缶体が缶体ホルダから取り外された状態を示す断面図である。
【
図8】本発明に係る缶胴縮径装置によって製造されるボトル缶の各工程における形状を示す断面図である。
【
図9】缶体を拡径させる缶胴拡径装置において、拡径前の缶体を保持させた状態を示す断面図である。
【
図10】
図9に示す缶胴拡径装置において、ダイ部が前進し、缶体の開口部にパンチが押し込まれた状態を示す断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係り第2拘束リングを備える缶胴縮径装置において、成形前の缶体を保持させた状態を示す断面図である。
【
図12】
図11に示す缶胴縮径装置において、ダイ部が前進し、缶体の開口部がダイに押し込まれるとともに、第2拘束リングの当接部が第1拘束リングの先端に当接した状態を示す断面図である。
【
図13】
図11に示す缶胴縮径装置において、第1拘束リングが当接部に押し下げられ、缶体の胴部が開口部から所定位置までダイによって成形された状態を示す断面図である。
【
図14】
図11に示す缶胴縮径装置において、ダイ部が後退し、第1拘束リングが弾性保持体によって付勢されて前進した状態を示す断面図である。
【
図15】
図11に示す缶胴縮径装置において、成形された缶体が缶体ホルダから取り外された状態を示す断面図である。
【
図16】
図1に示す缶胴縮径装置を備える缶製造装置の概略を示す正面図である。
【
図18】第1拘束リング移動手段の別の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の缶体ホルダ、缶胴縮径装置および缶製造装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の缶胴縮径装置10は、本発明に係る缶体ホルダ20を備え、一端が開口された有底円筒形状の缶体100における胴部102に縮径加工を施す装置である。なお、一端が開口された有底円筒形状としては、いわゆるDI缶、底部を巻締めた3ピース缶、インパクト缶などが適用可能である。
【0025】
缶胴縮径装置10は、
図1に示すように、缶体100を保持する缶体ホルダ20と、缶体100を縮径加工するダイ70を備える縮径用のダイ部60とを有する。この缶胴縮径装置10では、缶体ホルダ20に対してダイ部60が缶軸方向に沿って進退することにより、ダイ70によって缶体100の胴部102が加工される。
【0026】
缶体ホルダ20は、缶体100の底部101に当接するベースパッド30と、缶体100の胴部102の外周面の底部101側を拘束する略円筒状の第1拘束リング40とを備えている。ベースパッド30は、ゴム等の弾性体により環状に形成され、略円筒状のベースパッドホルダー31の先端面に固定されている。
【0027】
ベースパッドホルダー31は、後端部がベースパッドホルダープレート32に固定されており、内部に円柱状の空洞が形成されている。この空洞には、ベースパッドホルダープレート32に設けられたエア流路32aを通じて導入・排気されるエアにより進退自在に収容されたプランジャー23が配置されている。
【0028】
第1拘束リング40は、缶体100を収容可能な略円筒状に形成され、ベースパッド30およびプランジャー23によって底部を塞がれているとともに、その内周面がベースパッドホルダー31の外周面に嵌合することにより、ベースパッド30に対して缶軸方向に沿って相対的に進退自在に設けられている。第1拘束リング40には、第1拘束リング40をベースパッド30に対して前進させるように付勢するスプリング(弾性保持体・復帰手段)50が備えられている。すなわち、第1拘束リング40は、ベースパッドホルダー31の円筒部分の外周面に嵌合するとともにガイドピン22によって支持され、スプリング50によって前方(図の左方)に向けて付勢されながら、缶軸方向に進退可能となっている。なお、この缶胴縮径装置10において、ベースパッド30とベースパッドホルダー31とを一体に形成してもよい。
【0029】
また、第1拘束リング40には、缶体100を押圧保持するエアーチャックユニット21が設けられている。エアーチャックユニット21は、第1拘束リング40を径方向に貫通するエア流路40aに接続するように設けられたエア供給部24からエアを供給されることにより膨張し、第1拘束リング40の内周面から缶軸に向けて突出して第1拘束リング40に収容された缶体100を外周面から缶軸に向けて押圧し、缶体100を保持することができる。このエアーチャックユニット21では、第1拘束リング40が後退することによりエア供給部24との接続が切断され、缶体100に対する押圧が解除される。
【0030】
缶体ホルダ20に対向するダイ部60は、缶体ホルダ20に対して進退可能に設けられ、同心の二重円筒状に設けられた外側ダイ71および内側ダイ72からなるダイ70と、ダイ70の内側に嵌合した円柱状のコア73と、ダイ70およびコア73を保持する有底円筒状のダイホルダ80とを備えている。
【0031】
コア73は、ダイホルダ80の底面80aに当接するとともにダイホルダ80の内周面80bに嵌合するフランジ部73aを有し、このフランジ部73aをダイホルダ80に嵌合させることにより、ダイホルダ80と軸線を一致させるように位置決めされた状態で保持されている。コア73には、フランジ部73aと同軸に円柱部73bが設けられているとともに、これらフランジ部73aおよび円柱部73bを貫通するエア流路73cが設けられている。このエア流路73cは、円柱部73bの先端面で開口しているとともに、ダイホルダ80に設けられたエア流路80cに連通しており、外部のエア供給装置(図示せず)から供給されるエアを流通させることができる。
【0032】
ダイ70を構成する外側ダイ71は、ダイホルダ80の内周面80bに嵌合するとともにコア73のフランジ部73aに当接することにより、ダイホルダ80に対して位置決めされた状態で保持されている。一方、内側ダイ72は、コア73の円柱部73bに嵌合するとともにコア73のフランジ部73aに当接することにより、コア73に対して位置決めされた状態で保持されている。
【0033】
図2に示すように、内側ダイ72の外周面72aは缶軸方向に延びるストレート状に形成されており、その外側に嵌められた外側ダイ71の内周面71aは、先端部のみ内径が大きく形成されている。このため、外側ダイ71の内周面71aと内側ダイ72の外周面72aとの間において、先端部は比較的幅の広い円筒状の導入部s1が形成されており、先端部を除く大部分には幅の微小な円筒状隙間s2が導入部s1に続いて形成されている。すなわち、このダイ70において、缶体100の胴部102は、導入部s1から外側ダイ71の内周面71aに沿って倣うように変形されながら円筒状隙間s2に圧入されることにより縮径される。
【0034】
ダイ部60には、第1拘束リング40の先端に当接する当接部61が、外側ダイ71の先端に設けられている。缶体ホルダ20に対してダイ部60が接近した場合、当接部61が第1拘束リング40を缶体100の底部101に向かう方向に押圧することにより、第1拘束リング40を後退させながら、ダイ70の先端を缶体100の底部101近傍まで前進させることができるので、缶体100の胴部102を底部101近傍まで縮径成形することができる。
【0035】
これら缶体ホルダ20とダイ部60とを用いて缶体100を成形する場合について、図を参照して説明する。まず、
図1に示すように、缶体ホルダ20とダイ部60との間を離間させた状態で、第1拘束リング40を用いて缶体100の胴部102の外周面の底部101側を拘束しながら、缶体ホルダ20に缶体100の底部101を保持させる。このとき、缶体100は第1拘束リング40の円筒内面によって位置決めされているとともに、エアーチャックユニット21がエア供給部24を通じてエア供給を受けて缶体100の胴部102の底部101近傍を押圧することにより固定されている。
【0036】
次に、第1拘束リング40を後退させながら、胴部102を縮径加工するダイ70を缶体100の開口部103から底部101に向けて前進させて缶体100の胴部102に圧入する。
【0037】
すなわち、
図3に示すように、ダイ部60を缶体100の開口部103から底部101に向けて前進させ、ダイ70の外側ダイ71と内側ダイ72との間の円筒状隙間s2に、導入部s1を通じて缶体100の胴部102を圧入させることにより、胴部102に対して縮径加工を行う。このとき、コア73に設けられたエア流路73cおよびダイホルダ80に設けられたエア流路80cを通じて、外部のエア供給手段(図示せず)から缶体100の内部にエアが供給され、缶体100の内部は陽圧に維持される。
【0038】
さらにダイ70を前進させて縮径位置を缶体100の底部101に接近させると、当接部61が第1拘束リング40の先端に当接し(
図4参照)、第1拘束リング40が後方に向けて押し下げられる(
図5参照)。このとき、第1拘束リング40の後退によりエアーチャックユニット21とエア供給部24との接続が切断されるので、エアーチャックユニット21による押圧保持は解除され、第1拘束リング40の移動が妨げられることはない。この縮径加工が行われている間、缶体100の胴部102は第1拘束リング40によって外周面が拘束されているので、胴部102の膨出等の変形が防止される。
【0039】
第1拘束リング40を後退させながらダイ70を前進させて缶体100の胴部102に圧入することにより缶体100の底部101近傍まで胴部102に縮径加工を施した後、
図6に示すようにダイ70を後退させる。このとき、ダイ70が後退することにより、スプリング50により前方(図の左方)に向けて付勢された第1拘束リング40が前進して後退前の位置に復帰すると、エアーチャックユニット21がエア供給部24に接続され、エアーチャックユニット21による缶体100の押圧保持が再び可能となる。
【0040】
また、ダイ70が後退する際には、コア73に設けられたエア流路73cおよびダイホルダ80に設けられたエア流路80cを通じて外部のエア供給手段(図示せず)から供給されるエアによって缶体100の内部が陽圧に保たれていることにより、ダイ70は缶体100を保持したまま後退することはなく、缶体100は缶体ホルダ20による保持が維持される。
【0041】
そして、この時点で缶体100を取り外す場合、ダイ70が缶体100から離れた後、
図7に示すように、ベースパッドホルダープレート32のエア流路32aを通じてエアを供給することにより、缶体ホルダ20のプランジャー23を前進させて缶体100の底部101を突き出し、所定の縮径位置Aまで縮径加工が施された缶体110を缶体ホルダ20から取り外す。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る缶胴縮径装置10によれば、缶体100の底部101近傍の胴部102の外周面を第1拘束リング40が拘束しているので、縮径加工時の底部101近傍における胴部102の膨出が防止される。また、この第1拘束リング40が缶体100に対して後退可能であるので、縮径加工を行うダイ70を缶体100の底部101近傍まで前進させることができ、開口部113から底部111近傍の縮径位置Aまでが縮径された缶体110を成形することができる。
【0043】
次いで、このように縮径加工が施された缶体110に対して、
図9および
図10に示す缶胴拡径装置14を用いて、この缶体110の開口部113近傍の内径よりも大きな外形を有するパンチ170を圧入するなどの拡径加工を施すことにより、開口部123から所定の拡径位置Bまで拡径された缶体120が得られる(
図8参照)。拡径位置Bが縮径位置Aよりも開口部123側であるので、この缶体120は底部121近傍の胴部122がくびれた形状となる。
【0044】
縮径加工を施した缶体110に対して、縮径位置Aよりも開口部113側に拡径加工を行う缶胴拡径装置14について説明するが、缶胴縮径装置10と共通する部材については
図9および
図10において同じ符号を付してここでは説明を省略する。この缶胴拡径装置14は、缶胴縮径装置10と同様に缶体110を保持する缶体ホルダ20と、缶体110を拡径加工するパンチ170を備える拡径用のダイ部160とを有する。このダイ部160には、缶体110の胴部112の外周面に嵌合する外側ダイは備えられておらず、胴部112の内周面に圧入されるパンチ170が備えられている。
【0045】
この缶胴拡径装置14において、パンチ170は小径の先端部(図の右端)から基端側(図の左方)へ向けて徐々に拡径するテーパ部170aと、テーパ部170aの基端側の大径部170bとを有している。テーパ部170aの先端部の外径は缶体110の開口部113よりも小さく、缶体110に容易に挿入することができる。また、大径部170bの外径は缶体110の胴部112よりも大きく、この大径部170bの右端位置が拡径位置B近傍に到達するまでパンチ170を缶体110に対して開口部113から圧入することにより、缶体110の胴部112を開口部113から拡径位置Bまで拡径させることができる(
図10)。これにより、縮径位置Aから拡径位置Bまでの底部近傍がくびれた缶胴122を有する缶体120が得られる(
図8)。
【0046】
次いで、以上のように縮径加工および拡径加工を施した缶体120に対して本発明の位置実施形態に係る缶胴縮径装置12を用いることにより、
図11に示すように、拡径位置Bよりも開口部123側に縮径加工を行うことができる。この缶胴縮径装置12は、缶胴縮径装置10と同様に第1拘束リング40を備えて缶体120を保持する缶体ホルダ20と、缶体120を縮径加工するダイ70を備える縮径用のダイ部180とを有するが、このダイ部180にさらに第2拘束リング90を備えている点で缶胴縮径装置10とは異なっている。以下、この缶胴縮径装置12について説明するが、缶胴縮径装置10と共通する部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0047】
この缶胴縮径装置12において、ダイ部180に備えられた略円筒状の第2拘束リング90は、ダイ70から缶体ホルダ20に向けて前方(図の右方)に突出し、胴部122の外周面の開口部123側を拘束する。そして、この缶胴縮径装置12における当接部62は、この第2拘束リング90の先端であり、第1拘束リング40の先端に当接するように配置されている。
【0048】
胴部122の開口部123に比較的近い部分の縮径加工を行う場合、缶胴縮径装置10を用いると、当接部61を第1拘束リング40に当接させるまでダイ70が前進しないため、缶体120の胴部122の外周面が一部分拘束されないまま加工が行われ、胴部122の膨出などの変形等が生じるおそれがある。そこで、第1拘束リング40の缶軸方向の長さを大きくすることも考えられるが、缶体ホルダ20への缶体120を取り付けが困難となってしまうおそれがある。
【0049】
これに対して、この缶胴縮径装置12では、第1拘束リング40の長さは変更せず、ダイ70の前方に延びる第2拘束リング90をダイホルダ80に取り付けることにより、この第2拘束リング90によって缶体120の胴部122の外周面を拘束した状態で縮径加工を行うことを可能としている。そして、ダイ部180が前進する際には、この第2拘束リング90の先端が第1拘束リング40の先端に当接して(
図12)、第1拘束リング40を押し下げる(
図13)。したがって、缶体120の胴部122の外周面全体を拘束しながら、胴部122の所定の縮径位置Cまで縮径された缶体130を得ることができる(
図8参照)。
【0050】
所定位置までダイ70を前進させて縮径加工を行った後はダイ70を後退させ(
図14)、プランジャー23を前進させて缶体130の底部131を突き出し、開口部133から縮径位置Cまで胴部132に縮径加工が施された缶体130を缶体ホルダ20から取り外すことができる(
図15)。この缶体130に対してさらに加工を行うことにより、
図8に示すように底部近傍がくびれた形状を有する異形のボトル缶200が得られる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る缶胴縮径装置12によれば、缶体120の底部121近傍の胴部122の外周面を第1拘束リング40が拘束しているので、縮径加工時の底部121から拡径位置B近傍における胴部122の膨出が防止される。これにより、縮径加工時の底部121および胴部122の縮径位置A、拡径位置Bの弾性変形を抑え、圧延材料の素材異方性に起因する缶体120の肉厚のばらつきの発生を抑えることができる。
【0052】
また、ダイ70の近傍に第2拘束リング90が配置されることにより、ダイ70による変形量が比較的大きい場合であっても胴部122の膨出等を効果的に防止することができる。さらに、ダイ部60を後退させた後は、缶体120の成形時にダイ部60の当接部62に押圧されて後退した第1拘束リング40をスプリング50によって前進させ、元の位置に復帰させることができる。
【0053】
以上説明した缶胴縮径装置10,12および缶胴拡径装置14と缶体ホルダ20とを備える缶製造装置300について説明する。本発明の一実施形態に係る缶製造装置300は、複数の缶体ホルダ20と、缶体ホルダ20に対して缶軸方向に進退することにより有底円筒状の缶体(ワークW)の胴部を加工する少なくとも1つの加工用ダイ部322と、缶体ホルダ20を加工用ダイ部322に対して間欠的に移動させる缶体ホルダ移動手段(駆動部)330とを備える。加工用ダイ部322は、少なくとも1つが缶体の胴部を縮径加工する縮径用ダイ部60,180である。
【0054】
缶製造装置300は、より具体的には
図16および
図17に示すように、ワークWを保持する複数の缶体ホルダ20が環状に配列された円盤311を有するワーク保持部310と、ワークWに各種成形加工を施す複数の加工用ダイ部322が環状に配列された円盤321を有するツール保持部320と、これらワーク保持部310およびツール保持部320を駆動する駆動部330とを備えている。ここの缶製造装置300においては、加工用ダイ部322として、上述した缶胴縮径装置10の縮径用ダイ部60,缶胴拡径装置14の拡径用ダイ部160,缶胴縮径装置12の縮径用ダイ部180などが備えられている。
【0055】
駆動部330は、ワーク保持部310の円盤311を支持する支持軸331と、ツール保持部320の円盤321を支持する支持軸332とを同軸状に有している。この駆動部330において、支持軸331を間欠回転させることによって各缶体ホルダ20を円盤311の円周方向に沿って搬送することができる。また、支持軸332を軸線方向に進退させることにより、加工用ダイ部322(ダイ部60,160,180)を缶体ホルダ20に対して缶軸方向に進退させることができる。なお、駆動部330による支持軸331の間欠回転は、複数の加工用ダイ部322に対して各缶体ホルダ20が対向する位置で停止するように設定される。
【0056】
図17に示すように、この缶製造装置300では、ワーク保持部310の各缶体ホルダ20に対して、DI成形による有底筒状のワークW(缶体100)が、ワーク供給部301の供給側スターホイール302により順次供給される。供給されたワークW(缶体100)は、ワーク保持部310によって円盤311の周方向に沿って搬送されながら、ツール保持部320に保持された各加工用ダイ部322によって各種加工を施される。各種加工を施されたワークW(缶体200)は、ワーク排出部303において排出側スターホイール304により順次缶製造装置300から排出される。
【0057】
ワーク保持部310とツール保持部320とは、各缶体ホルダ20と各加工用ダイ部322とが対向するように配置されている。缶体ホルダ20を保持する円盤311が支持軸331を介して駆動部330によって間欠的に回転されることにより、保持されたワークWの対向する加工用ダイ部322が変更される。また、円盤321が支持軸332を介して駆動部330によって進退駆動されることにより、各加工用ダイ部322がワークWに対して缶軸方向に進退し、ワークWに各種成形加工が施される。
【0058】
ツール保持部320には、上述した各ダイ部60,160,180の他にも、ワークWの開口部を縮径(ネックイン加工)するための複数の肩部ネッキング型、口金部分のねじ部成形ツール、カール部成形ツール等、各加工段階に応じた加工を行うための加工用ダイ部322が複数備えられている。これらの加工用ダイ部322は、工程順に円盤321上に周方向に並んで環状に配置されている。
【0059】
支持軸331の軸線を回転中心とするワーク保持部310(円盤311)の間欠的な回転停止位置は、開口部をツール保持部320側に向けた各ワークWの缶軸が各加工用ダイ部322の中心軸にそれぞれ一致するように設定される。そして、駆動部330による円盤311の間欠的回転によって、各ワークWは次工程用の各加工用ダイ部322に対向する位置に回転移動されて、次の段階の加工が施される。
【0060】
缶体ホルダ20は、上述したように、缶体の胴部外周面の底部側を拘束する第1拘束リング40を、加工用ダイ部322の前進に伴い缶軸方向に後退させる構造を備えている。したがって、各加工用ダイ部322の前進によるワークWの底部近傍に対する加工を妨げることなく、ワークWを保持することができる。
【0061】
すなわち、ツール保持部320が前進してワーク保持部310とツール保持部320とが互いに接近したときに、各加工用ダイ部322が各工程に応じた加工をワークWに施し、両保持部310,40が互いに離間した状態のときに各ワークWに次工程の加工用ダイ部322が対向するようにワーク保持部310が回転移動される。
【0062】
このように、両保持部310,40が接近して加工を行い、離間および回転するという動作が繰り返されることにより、ワークWに各種の成形加工が施され、所望の形状の缶体が得られる。
【0063】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0064】
たとえば、缶体の開口部に比較的近い部分を縮径加工する場合、すなわちダイを缶体の底部近傍まで前進させない場合には、缶体ホルダの第1拘束リングを後退させる必要はなく、第1拘束リングによって底部近傍の膨出等の弾性変形を抑えながら縮径加工を行うことができる。
【0065】
また、前記実施形態では、缶体ホルダ20の第1拘束リング40を、加工用ダイ部(ダイ部60,160)の前進に伴い押し下げ手段(ダイ70および第2拘束リング90)によって押し下げて後退させ、ダイ部60,160の後退に伴い復帰手段(スプリング50)によって当初位置に復帰させる構造の第1拘束リング移動手段を採用したが、第1拘束リング移動手段としては、前記実施形態のように直接当接して押し下げられる構造に限らない。
【0066】
たとえば
図18に示すように、第1拘束リング40を進退させるアクチュエータ等の駆動手段190と、この駆動手段190を制御する制御手段192とを備える構造を採用することもできる。この場合、ダイ部60,180の進退位置に応じて駆動手段190を駆動させるように制御手段192によって駆動手段190を制御することができるので、たとえば第1拘束リング40とダイ70との接触による部品損傷等を防止することができる。