特許第5851572号(P5851572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5851572
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
   H05K3/46 X
   H05K3/46 Q
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-177257(P2014-177257)
(22)【出願日】2014年9月1日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】592214450
【氏名又は名称】株式会社イースタン
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 恒彦
【審査官】 井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−293952(JP,A)
【文献】 特開平08−162769(JP,A)
【文献】 特許第5555368(JP,B1)
【文献】 特開2006−339365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板上に絶縁樹脂層を形成する工程と、
(b)前記絶縁樹脂層上に埋込型を形成する工程と、
(c)前記基板を厚み方向でプレスすることで、前記絶縁樹脂層に前記埋込型を埋め込む工程と、
(d)埋め込まれた前記埋込型を除去することで、前記絶縁樹脂層に凹み部を形成する工程と
を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板の製造方法において、
前記(a)工程で、前記絶縁樹脂層として半硬化状態の熱硬化性樹脂層を形成し、
前記(d)工程の前で、前記埋込型が埋め込まれた前記熱硬化性樹脂層全体を完全に硬化させる。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板の製造方法において、
前記(c)工程で、前記熱硬化性樹脂層に前記埋込型を埋め込んだ後、プレスしたまま前記熱硬化性樹脂層全体を完全に硬化させる。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法において、
前記(b)工程で、前記絶縁樹脂層側に向かって幅狭のテーパ状となるように前記埋込型を形成する。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法において、
前記(b)工程で、前記絶縁樹脂層側に設けられる第1層と該第1層上の第2層とを有し、前記第1層で窪んだ積層体からなる前記埋込型を形成する。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法において、
前記(b)工程で、前記絶縁樹脂層側に設けられる金属箔と該金属箔上のキャリアとを有するキャリア付金属箔をサブトラクティブ法、アデティブ法、またはMSAP法によってパターン形成して前記埋込型を形成する。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法において、
前記(c)工程で、前記埋込型を覆うように前記絶縁樹脂層上にフィルムを介してプレス板を設けた後に前記基板をプレスすることで、前記絶縁樹脂層に前記埋込型を埋め込み、その後、前記フィルムとの境界から前記基板を剥離させる。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法において、
前記(a)工程で、前記基板が有する表面パターンを覆うように、前記絶縁樹脂層を形成し、
前記(b)工程で、前記表面パターンの上方に、前記埋込型を形成し、
前記(c)工程で、前記表面パターンに接する手前まで前記埋込型を埋め込むことで、前記表面パターンと前記埋込型との間に介在層として前記絶縁樹脂層を残存させ、
前記(d)工程の後で、前記介在層を除去することで、前記凹み部の底部で前記表面パターンを露出させる。
【請求項9】
請求項記載の配線基板の製造方法において、
前記表面パターンと電気的に接続される電子部品のキャビティとして前記凹み部を形成する。
【請求項10】
請求項記載の配線基板の製造方法において、
前記表面パターンと電気的に接続される接続部品の開口部として前記凹み部を形成する。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法において、
前記(b)工程で、前記表面パターンの上方ではない前記絶縁樹脂層上に前記埋込型とは別の埋込型を形成し、
前記(c)工程で、前記絶縁樹脂層に前記別の埋込層を埋め込み、
前記(d)工程で、埋め込まれた前記別の埋込型を除去することで、前記絶縁樹脂層に前記凹み部とは別の凹み部を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010−199240号公報(以下、「特許文献1」という。)には、配線基板の製造技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−199240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体素子(半導体チップ)の高密度化、小型化、薄型化が進むにつれて、半導体素子が実装される配線基板の薄型化、高密度化が要求されるようになり、配線基板の直進性、剛性を確保するのが困難になっている。そこで、例えば、特許文献1に記載の技術によれば、配線基板の最外層(最表層)のソルダレジストとして絶縁樹脂層を用いることで、反りを抑制し、剛性のある配線基板を製造することが可能となる。しかしながら、絶縁性樹脂層に接続端子用などの凹み部(開口部)を形成するにあたり、特許文献1に記載のレーザ照射のような機械的加工では、凹み部の開口サイズや数に比例して、生産性が低下し、また、製造コストも増加してしまう。
【0005】
本発明の目的は、配線基板の生産性を向上させることのできる技術を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0007】
本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法は、(a)基板上に絶縁樹脂層を形成する工程と、(b)前記絶縁樹脂層上に埋込型を形成する工程と、(c)前記基板を厚み方向でプレスすることで、前記絶縁樹脂層に前記埋込型を埋め込む工程と、(d)埋め込まれた前記埋込型を除去することで、前記絶縁樹脂層に凹み部を形成する工程とを含むことを特徴とする。これによれば、絶縁樹脂層に埋め込まれた埋込型を除去することで容易に凹み部を形成することができ、配線基板の生産性を向上させることができる。
【0008】
前記一実施形態に係る配線基板の製造方法において、前記(a)工程で、前記絶縁樹脂層として半硬化状態の熱硬化性樹脂層を形成し、前記(d)工程の前で、前記埋込型が埋め込まれた前記熱硬化性樹脂層全体を完全に硬化させることがより好ましい。これによれば、半硬化状態の熱硬化性樹脂層に埋込型を容易に埋め込むことができ、埋込型を除去する際には熱硬化性樹脂層全体が硬化されているので凹み部の形状を保持することができる。
【0009】
ここで、前記(c)工程で、前記熱硬化性樹脂層に前記埋込型を埋め込んだ後、プレスしたまま前記熱硬化性樹脂層全体を完全に硬化させることがより好ましい。これによれば、埋込型をプレスした状態で熱硬化性樹脂層全体を硬化させることができ、サイクルタイムを短縮することができ、半硬化の状態の熱硬化性樹脂層に埋込型を確実に埋め込むことができる。
【0010】
前記一実施形態に係る配線基板の製造方法において、前記(b)工程で、前記絶縁樹脂層側に向かって幅狭のテーパ状となるように前記埋込型を形成することがより好ましい。これによれば、絶縁樹脂層に埋込型を容易に埋め込むことができる。
【0011】
前記一実施形態に係る配線基板の製造方法において、前記(b)工程で、前記絶縁樹脂層側に設けられる第1層と該第1層上の第2層とを有し、前記第1層で窪んだ積層体からなる前記埋込型を形成することがより好ましい。これによれば、絶縁樹脂層側に向かって幅狭のテーパ状となる埋込型を容易に形成することができ、絶縁樹脂層に埋込型を容易に埋め込むことができる。
【0012】
前記一実施形態に係る配線基板の製造方法において、前記(b)工程で、前記絶縁樹脂層側に設けられる金属箔と該金属箔上のキャリアとを有するキャリア付金属箔をサブトラクティブ法、アデティブ法、またはMSAP法によってパターン形成して前記埋込型を形成することがより好ましい。これによれば、埋込型を容易に形成することができる。
【0013】
前記一実施形態に係る配線基板の製造方法において、前記(c)工程で、前記埋込型を覆うように前記絶縁樹脂層上にフィルムを介してプレス板を設けた後に前記基板をプレスすることで、前記絶縁樹脂層に前記埋込型を埋め込み、その後、前記フィルムとの境界から前記基板を剥離させることがより好ましい。これによれば、絶縁樹脂層とプレス板とが接着するのを防止することができ、プレス板から基板を容易に分離させることができる。
【0014】
前記一実施形態に係る配線基板の製造方法において、前記(a)工程で、前記基板が有する表面パターンを覆うように、前記絶縁樹脂層を形成し、前記(b)工程で、前記表面パターンの上方に、前記埋込型を形成し、前記(c)工程で、前記表面パターンに接する手前まで前記埋込型を埋め込むことで、前記表面パターンと前記埋込型との間に介在層として前記絶縁樹脂層を残存させ、前記(d)工程の後で、前記介在層を除去することで、前記凹み部の底部で前記表面パターンを露出させることがより好ましい。これによれば、表面パターンにダメージを与えずに埋込型を除去することができる。
【0015】
ここで、前記表面パターンと電気的に接続される電子部品のキャビティとして前記凹み部を形成することがより好ましい。これによれば、電子部品を実装する領域を、配線基板に確保することができる。
【0016】
また、前記表面パターンと電気的に接続される接続部品の開口部として前記凹み部を形成する。これによれば、例えばボンディングワイヤなどの接続部品が接続される領域を、配線基板に確保することができる。
【0017】
また、前記(b)工程で、前記表面パターンの上方ではない前記絶縁樹脂層上に前記埋込型とは別の埋込型を形成し、前記(c)工程で、前記絶縁樹脂層に前記別の埋込層を埋め込み、前記(d)工程で、埋め込まれた前記別の埋込型を除去することで、前記絶縁樹脂層に前記凹み部とは別の凹み部を形成するがより好ましい。これによれば、表面パターンを露出させる凹み部と、表面パターンを露出させない別の凹み部とを同時に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。前記一実施形態に係る配線基板の製造方法によれば、配線基板の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1に係る製造工程中の配線基板の要部模式的断面図である。
図2図1に続く製造工程中の配線基板の要部模式的断面図である。
図3図2に続く製造工程中の配線基板の要部模式的断面図である。
図4図3に続く製造工程中の配線基板の要部模式的断面図である。
図5図4に示す円C内の配線基板の拡大模式的断面図である。
図6図5に続く製造工程中の配線基板の要部模式的断面図である。
図7図6に続く製造工程中の配線基板の要部模式的断面図である。
図8図7に続く製造工程中の配線基板の要部模式的断面図である。
図9図8に続く製造工程中の配線基板の要部模式的断面図である。
図10図9に続く製造工程中の配線基板の要部模式的断面図である。
図11】本発明の実施形態2に係る配線基板を備えた電子装置の一例の要部模式的断面図である。
図12】本発明の実施形態2に係る配線基板を備えた電子装置の他の一例の要部模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変更例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0021】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る配線基板10の製造方法について、図1図10を参照して説明する。なお、配線基板10の表面(実装面)の所定領域に電子部品(例えば、半導体素子、チップコンデンサなど)が実装されて、電子装置(半導体装置、半導体パッケージ)が構成される。
【0022】
まず、図1に示すように、表面パターン11を有する基板12(コア層)を形成(準備)する。具体的には、まず、ガラスクロスを内包した熱硬化性樹脂材(例えば、エポキシ樹脂材、ポリイミド樹脂材など)をコア層とし、その一方および他方の表面(両面)に金属箔(例えば、銅箔)を張り合わせた基板12を形成する。次いで、基板12に貫通孔(図示せず)を形成し、貫通孔の内壁にめっきを施して両面の金属箔を導通させる。次いで、両面それぞれの金属箔をパターン形成して表面パターン11(配線パターン)を形成する。これにより、2層の表面パターン11を有する基板12(2層板)が形成される。なお、本実施形態では、他方の表面パターンおよび貫通孔を省略し、一方の表面側に本発明を適用して説明するが、他方の表面側にも同様にして本発明を適用することができる。
【0023】
続いて、図2に示すように、表面パターン11を覆うように、基板12上に絶縁樹脂層13を形成する。具体的には、絶縁樹脂層13として熱硬化性樹脂材(エポキシ樹脂材やポリイミド樹脂材など)からなる樹脂シートを完全に硬化を進めない、すなわち半硬化(Bステージ)状態となるような所定温度(例えば、80℃〜130℃)でラミネートする。このように、本実施形態では、絶縁樹脂層13として半硬化(Bステージ)状態の熱硬化性樹脂層を形成する。
【0024】
続いて、図3に示すように、熱硬化性樹脂層(絶縁樹脂層13)の硬化を進めずに、絶縁樹脂層13上にキャリア付金属箔14を張り付ける。キャリア付金属箔14は、絶縁樹脂層13側に設けられる金属箔15(例えば、銅箔)とこれに接着された金属箔15よりも厚いキャリア16(例えば、銅箔)とを有する。なお、キャリア付金属箔14の代わりに、絶縁樹脂層13上にキャリア付樹脂シートを張り付けることもできる。
【0025】
続いて、図4に示すように、半硬化状態の絶縁樹脂層13上に埋込型20を形成する。具体的には、逆コンフォーマルマスクを用いたサブトラクティブ法、アデティブ法、またはMSAP(Modified Semi Additive Process)法によってキャリア付金属箔14を、例えば、平面視円形状、矩形状などにパターン形成して表面パターン11の上方に埋込型20を形成する。本実施形態では、図5図4中の円C付近を拡大した図)に示すように、絶縁樹脂層13側に向かって幅狭のテーパ状(先細り状)となるようにテーパ部20aを有する埋込型20を形成する。
【0026】
この埋込型20は、金属箔15(ボトム部、第1層)および金属箔15よりも厚いキャリア16(トップ部、第2層)が積層されたキャリア付金属箔14(積層体)から構成される。そして、サブトラクティブ法、アデティブ法、またはMSAP法によるキャリア付金属箔14のパターン形成において、金属箔15がオーバーエッチングされて金属箔15(パターンボトム部)の形状が絶縁樹脂層13側に向かって幅狭のテーパ状となり、金属箔15で窪んだ埋込型20が形成される。金属箔15、キャリア16が銅箔から構成される場合、塩化鉄や塩化銅などのエッチング液(薬液)を用いて、キャリア16上に形成されたレジストマスク(図示せず)から露出した部分がエッチング(溶解)されて埋込型20が形成される。このように、キャリア付金属箔14をエッチングすることで、絶縁樹脂層13側に向かって幅狭のテーパ状となる埋込型20を容易に形成することができる。なお、アデティブ法、MSAP法よりもサブトラクティブ法の方が、オーバーエッチングによって金属箔15の形状を絶縁樹脂層13側に向かって幅狭のテーパ状とし易い。
【0027】
続いて、図6図7図8に示すように、基板12を厚み方向でプレスすることで、絶縁樹脂層13に埋込型20を埋め込む。具体的には、図6に示すように、埋込型20を覆うように絶縁樹脂層13上にフィルム21を介してプレス板22を設ける。フィルム21としては、耐熱性を有し、プレス板22および絶縁樹脂層13(基板12)から容易に剥離するもの(例えば、フッ素樹脂)が用いられる。また、プレス板22としては、例えば、ステンレス鋼が用いられる。プレス板22で直接埋込型20を絶縁樹脂層13へ埋め込むのではなく、フィルム21を介することで、絶縁樹脂層13がプレス板22に接着してしまうのを防止することができる。
【0028】
次いで、図7に示すように、フィルム21を介してプレス板22で基板12をプレスすることで絶縁樹脂層13に埋込型20を埋め込む。ここで、表面パターン11の手前まで埋込型20を埋め込むことで、表面パターン11と埋込型20との間に介在層23として絶縁樹脂層13を残存させる。
【0029】
この際、埋込型20を埋め込む際に絶縁樹脂層13として用いられる熱硬化性樹脂層を完全に硬化させておくこともできるが、半硬化の状態としておくことで埋込型20を容易に埋め込むことができる。また、埋込型20が絶縁樹脂層13側に向かって幅狭のテーパ状(先細り状)に形成されているため、絶縁樹脂層13に埋込型20を容易に埋め込むことができる
【0030】
本実施形態では、プレスプログラムの前半において絶縁樹脂層13に埋込型20を埋め込んだ後、後半において所定温度(例えば、180℃〜200℃)でプレスしたまま熱硬化性樹脂層である絶縁樹脂層13全体を完全に硬化(キュア)させる。すなわち、プレスにより半硬化の状態の熱硬化性樹脂層(絶縁樹脂層13)に埋込型20を確実に埋め込み、そのまま状態で熱硬化性樹脂層(絶縁樹脂層13)全体を硬化させる。プレス解除後、高温炉などに基板12を搬入することで熱硬化性樹脂層である絶縁樹脂層13全体を完全に硬化させることもできるが、本実施形態のようにプレスプログラムで完結させることで、サイクルタイムを短縮することができる。
【0031】
次いで、プレス解除した後、図8に示すように、プレス板22およびフィルム21を剥いで解体する。すなわち、フィルム21と絶縁樹脂層13との境界でフィルム21から基板12を剥離させる。フィルム21を用いることで、絶縁樹脂層13とプレス板22とが接着するのを防止することができ、プレス板22から基板11を容易に分離させることができる。
【0032】
続いて、図9に示すように、埋め込まれた埋込型20を除去することで、絶縁樹脂層13に凹み部24を形成する。埋込型20(金属箔15およびキャリア16の積層体)が銅箔から構成される場合、例えば、塩化鉄や塩化銅などのエッチング液(薬液)でエッチングされて埋込型20が除去される。埋込型20を除去する際には熱硬化性樹脂層(絶縁樹脂層13)全体が硬化されているので、表面パターン11のエッチングが進まずに凹み部24の形状を保持することができる。また、埋込型20の下方には、表面パターン11(例えば、銅箔から構成される)が位置することとなるが、介在層23として絶縁樹脂層13が残るように調整されるため、表面パターン11にダメージを与えずに埋込型20を除去することができる。
【0033】
続いて、図10に示すように、介在層23を除去することで、凹み部24の底部で表面パターン11を露出させる。具体的には、エッチング液を用いて表面パターン11が露出するまでエッチングする。絶縁樹脂層13がエポキシ樹脂材から構成される場合、エッチング液としては、例えば、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液が用いられる。このエッチング処理後は、必要に応じて、表面パターン11に表面処理を施したり、絶縁樹脂層13の表面も白化した場合に絶縁樹脂層13に表面処理を施したりする。なお、本実施形態では、積極的に介在層23を形成しているが、埋込型20を除去して凹み部24を形成する際の表面パターン11上の樹脂残渣(スミア)を介在層23として用い、デスミア処理を施して表面パターン11を露出させることもできる。
【0034】
このようにして、配線基板10が略完成する。これにより、例えば、表面パターン11と電気的に接続されるボンディングワイヤ104(接続部品)の開口部として凹み部24を形成することができる(図11参照)。本実施形態では、絶縁樹脂層13に埋め込まれた埋込型20を除去することで容易に凹み部24を形成することができる。したがって、配線基板10の生産性を向上させることができる。また、配線基板10のソルダレジストとして熱硬化性樹脂層(例えば、エポキシ樹脂材などから構成される)を用いることで、一般的な感光性ソルダレジストを用いたものより、反りを抑制し、剛性のある配線基板10を得ることができる。このため、配線基板10を備える電子装置(半導体装置)を形成(製造)する際に、配線基板10を容易に搬送供給することができる。なお、凹み部24を形成すると共に、認識マークなどの開口部(凹み部)を形成することもできる。
【0035】
(実施形態2)
本実施形態では、配線基板10を用いて構成される電子装置100について、図11および図12を参照して説明する。なお、説明を明解にするために、配線基板10の一部を省略して説明する。
【0036】
図11に示す電子装置100は、配線基板10と、配線基板10の実装領域において積層して実装されたチップ状の半導体素子101,102とを備える。半導体素子101は、半導体素子102よりもチップサイズが大きく、半導体素子102周囲の配線基板10(絶縁樹脂層13)の表面と、半導体素子101との間には空間が形成される。この配線基板10は、電極パッドとなる表面パターン11を露出する凹み部24(開口部)と、実装領域の周囲を平面視枠状に形成された凹み部25(周溝部)とを有する。
【0037】
この凹み部25は、凹み部24と同様にして同時に形成することができる。具体的には、表面パターン11の上方でない絶縁樹脂層13上に埋込型20とは別の埋込型(例えば、埋込型20と同時にキャリア付金属箔14からパターン形成されたもの)を形成する。次いで、絶縁樹脂層13に埋込型20と共に別の埋込層を埋め込み、埋込型20と共に別の埋込層を除去する。これにより、別の埋込層が除去された絶縁樹脂層13に凹み部24とは別の凹み部25が形成される。すなわち、表面パターン11を露出させる凹み部24と、表面パターン11を露出させない別の凹み部25とを同時に形成することができる。
【0038】
配線基板10に実装された半導体素子101は、その表面に形成された電極パッド(図示せず)と凹み部24で露出する表面パターン11(電極パッド)とをボンディングワイヤ104(接続部品)を介して、配線基板10と電気的に接続される。このように、表面パターン11と電気的に接続されるボンディングワイヤ104の開口部として凹み部24が形成される。すなわち、ボンディングワイヤ104などの接続部品が接続される領域を、配線基板10に確保することができる。
【0039】
そして、実装された半導体素子101,102を保護するために、実装領域における配線基板10の表面と半導体素子101との間の空間を埋めるように、保護材105が塗布(アンダーフィル)される。ここで、配線基板10に平面視枠状の凹み部25(周溝部)が形成されているので、この凹み部25がダムとなって、保護材105が配線基板10の実装領域以外の表面に広がるのを防止することができる。
【0040】
図12に示す電子装置100は、配線基板10と、配線基板10の実装領域においてフリップチップ実装されたチップ状の半導体素子103とを備える。配線基板10に実装された半導体素子103は、その主面(下面)に形成された複数の電極バンプ106(接続部品)と凹み部24(キャビティ)で露出する複数の表面パターン11(電極パッド)とを接合して、配線基板10と電気的に接続される。このように、表面パターン11と電気的に接続される半導体素子103(電子部品)のキャビティとして凹み部24が形成される。すなわち、半導体素子103を実装する領域を、配線基板10に確保することができる。
【0041】
そして、実装された半導体素子103を保護するために、実装領域における配線基板10の表面と半導体素子103との間の空間を埋めるように、保護材105が塗布(アンダーフィル)される。ここで、配線基板10に実装領域を囲む平面視枠状の凹み部25(周溝部)が形成されているので、この凹み部25がダムとなって、保護材105が配線基板10の実装領域以外の表面に広がるのを防止することができる。
【0042】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、次のとおり、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0043】
例えば、前記実施形態1では、2層の表面パターン(配線層)を備える配線基板(2層板)に適用した場合について説明した。これに限らず、3層以上の配線層を備える配線基板(多層板)に適用することもできる。例えば、ビルドアップ基板(プリント基板)に適用することができる。
【0044】
また、例えば、前記実施形態1では、埋込型が絶縁樹脂層側に向かって幅狭のテーパ状(先細り状)に形成されたものを用いた場合について説明した。これに限らず、円柱状、四角柱状のように、側面がストレート状に形成された埋込型を用いることができる。
【0045】
また、例えば、前記実施形態1では、凹み部の形状となる埋込型としてキャリア付金属箔をパターン形成したものを用いた場合について説明した。これに限らず、円柱状、四角柱状、半球状(椀状)など種々の形状の凹み部を得るために、埋込型として金属(例えば、銅、アルミニウム)などからなるポストやボールなどを用いることができる。また、ポストやボールなどの高さ(厚み、大きさ)の異なる複数の埋込型を絶縁樹脂層に埋め込むことにより、深さの異なる複数の凹み部を形成することもできる。
【0046】
また、例えば、前記実施形態1では、絶縁樹脂層上にキャリア付金属箔を形成し、これをサブトラクティブ法によってパターン形成して埋込型を形成する場合について説明した。これに限らず、絶縁樹脂層上に、キャリア付金属箔からキャリアが剥離された金属箔(例えば、銅箔)を形成したり、めっき層(例えば、銅めっき層)を形成したりした後、これをサブトラクティブ法によってパターン形成して埋込型を形成することもできる。また、絶縁樹脂層上にセミアデティブ法によって形成されためっき層を埋込型とすることもできる。
【符号の説明】
【0047】
10 配線基板
11 表面パターン
12 基板
13 絶縁樹脂層
14 キャリア付金属箔
15 金属箔
16 キャリ
0 埋込型
20a テーパ部
21 フィルム
22 プレス板
23 介在層
24 凹み部
100 電子装置
101,102,103 半導体素子
104 ボンディングワイヤ
105 保護材
106 電極バンプ
【要約】
【課題】配線基板の生産性を向上させることのできる技術を提供する。
【解決手段】配線基板の製造方法は、以下の工程を含む。まず、基板(12)上に絶縁樹脂層(13)を形成する。次いで、絶縁樹脂層(13)上に埋込型(20)を形成する。次いで、基板(12)を厚み方向でプレスすることで、絶縁樹脂層(13)に埋込型(20)を埋め込む。次いで、埋め込まれた埋込型(20)を除去することで、絶縁樹脂層(13)に凹み部を形成する。
【選択図】図8
図1
図2
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図10
図11
図12