(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主弁電磁駆動装置は前記主弁の戻りエネルギーの回生を蓄電するキャパシタを備え、前記副弁電磁駆動装置は前記副弁の戻りエネルギーの回生を蓄電するキャパシタを備え、前記第2弁電磁駆動装置は、前記第2弁の戻りエネルギーの回生を蓄電するキャパシタを備えることを特徴とする、請求項2又は3に記載の内燃機関。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
まず、本実施形態にかかる内燃機関10の構成について、
図1〜
図8を参照しながら説明する。なお、本実施形態の内燃機関10は自動車の内燃機関であるが、これは一例であり、本発明は、建設機械、鉄道車両、モーターボート、可搬式発電機、農林業機械などの内燃機関にも適用される。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態にかかる内燃機関を正面方向から見た図である。本実施形態にかかる内燃機関10は、
図1に示したように、シリンダ20とそのシリンダ20内を移動するピストン30とによって形成される第1換気通路110に連通する吸気通路120及び排気通路130と、が形成されたシリンダヘッド100と、第1換気通路110を開閉することにより燃焼室40への給排気と燃焼室の密閉を切り替える主弁200と、主弁200に沿って移動した位置に応じて第1換気通路110と吸気通路120と排気通路130との連通を切り替える副弁300と、により構成される第1弁700と、第2換気通路140を開閉することにより、燃焼室40への吸気量を変更する第2弁300と、を主に備えて構成される。
【0019】
以下、本実施形態にかかる内燃機関10の各構成要素について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明の一実施形態にかかる内燃機関を説明するための図である。
【0020】
シリンダ20には、
図2に示したように、ピストン30が嵌め合わされており、シリンダ20とシリンダ20内を移動するピストン30によって燃焼室40が形成される。シリンダ20には、さらに、燃焼室40内に燃料を噴射する燃料噴射弁50と、燃料噴射弁50から噴射された燃料に対して、燃焼室40内の複数の点で火種を生成する、後述するレーザー光発射器90とが設けられる。
【0021】
(シリンダヘッド100)
シリンダヘッド100は、
図2に示したように、シリンダヘッド100の中央に円筒形状の第1換気通路110が形成されており、第1換気通路110は燃焼室40に連通している。この第1換気通路110を介して燃焼室40が換気される。第1換気通路110は、シリンダヘッド100に1つ設けられ、主弁200によって開閉される。
【0022】
また、シリンダヘッド100には、燃焼室40内へ新気を取り込むための吸気通路120と、燃焼後のガスを排気するための排気通路130が形成されている。吸気通路120と排気通路130は第1換気通路110に連通している。吸気通路120と排気通路130は、第1換気通路110に沿って設けられており、第1換気通路110の長さ方向において、吸気通路120が、燃焼室40に近い側に、排気通路130が遠い側にそれぞれ上下に並んで配置されている。なお、この吸気通路120と排気通路130の位置は一例である。例えば、吸気通路120と排気通路130を第1換気通路110の円周方向における他の位置に設けるなど、適宜設定することができる。吸気通路120と排気通路130は副弁300によって開閉される。
【0023】
さらに、シリンダヘッド100には、第1換気通路110に隣り合った位置に第1換気通路110と燃焼室40とを連通する第2換気通路140が形成されている。第2換気通路140の出口は、逆S字状の空気流動生成形状141に形成されている。これにより、第2換気通路140は、第2弁400が開弁時に、空気流動を縦及び横方向の渦流にする。第2換気通路140は、第2弁460によって開閉される。
【0024】
また、
図2に示したように、シリンダヘッド100の吸気通路120は、吸気マニホルド60に逆止弁70を介して連結されている。
【0025】
吸気マニホルド60には、
図2に示したように、吸気マニホルド噴射弁80が設けられており、吸気マニホルド噴射弁80は、吸気マニホルド60内に燃料を噴射する。
【0026】
逆止弁70は、
図3に示したように、弁シート71に主弁となるリード弁72とリフト押え73が組み付けられて構成されている。リード弁72は、リード弁体74、第1補助板75及び第2補助板76を組み立てることにより構成されている。これは、一般に、リード弁は、これのバネ定数が小さいと回転数が早くなるほど空きっぱなしになる。一方、リード弁は、バネ定数が大きいと低回転で吸い込み抵抗が大きくなりエンジン燃費が悪くなり、高回転で割れやすくなり耐久性が低下する。このため、第1補助板75と第2補助板76を用いてこれらのバネ定数をリード弁本体74のバネ定数に加算することにより、低回転から高回転まで対応することができるようにした。なお、本実施形態のリード弁72をリード弁体74、第1補助板75及び第2補助板76の3つを組み立てることにより構成したが、必ずしもこれに限定されず、例えば、補助板のバネ定数に応じて、組み立てる板の数は適宜変更することができる。
【0027】
逆止弁70は、リード弁72とリフト押え73の一端が弁シート71から離隔したり、当接したりすることにより開閉する。逆止弁70が開くと、吸気通路120と吸気マニホルド60とが連通し、逆止弁70が閉じると、吸気通路120と吸気マニホルド60との連通が遮断される。
【0028】
本実施形態では、燃焼室40に設けられる燃料噴射弁50と吸気マニホルド60に設けられる吸気マニホルド噴射弁80により燃料を噴射する構成となっている。ここでは、これら2つの噴射弁を用いた作用について説明する。燃料噴射弁50は、20MPa位の高圧で燃焼室40に直接燃料を噴射する。燃料噴射弁50は、このように噴射された燃料が、ノズルで微細化される際に気化熱により周りの熱を奪う冷却作用を利用して、圧縮比を高くしても冷却により温度が低く押さえられるようにしている。これにより、ノッキング発生を抑制できるので熱効率が良くなる。このように、燃焼室40では、高中速域では燃料噴射弁50からの燃料噴射で希薄燃焼する。しかし、燃料噴射弁50の燃焼の方法は、希薄燃焼が主体で熱効率を良くしているため、低中速域では希薄燃焼では燃料に火が点かず失火し易くなる。一方、吸気マニホルド噴射弁80は、吸気マニホルド60内に7MPa位の圧力で燃料を噴射する。このように噴射された燃料は、確実に火が点く理論空燃比で空気と混合されて燃焼室40に送り込まれることにより、特に低速域で燃焼が安定する。このように、燃焼室40では、高中速域では燃料噴射弁50からの燃料噴射で希薄燃焼し、低速では、吸気マニホルド噴射弁80からの燃料噴射で燃焼が安定する。よって、燃料噴射弁50と吸気マニホルド噴射弁80の両方を用いる構成では、燃料噴射弁50のみで低速から高速までの全域をカバーする場合に比べて、全域スムーズな燃焼ができ、燃料噴射弁50と吸気マニホルド噴射弁80で適宜細かい燃料供給調整ができるので熱効率が大変良くなる。
【0029】
(主弁200)
主弁200は、
図2に示したように、第1換気通路110の長さ方向に移動して第1換気通路110を開閉する主弁本体210と、第1換気通路110を閉塞する方向に主弁本体210を常時付勢する主弁バネ220と、主弁本体210と主弁バネ220を収容する主弁ケース230と、主弁本体210を駆動する後述する主弁電磁駆動装置240及び主弁ロッカアーム250と、を主に備えて構成されている。
【0030】
主弁本体210は、前述のように、第1換気通路110の長さ方向に移動して第1換気通路110を開閉するものである。主弁本体210は、長尺な棒状の主弁ロッド211と主弁ロッド211の先端に円錐状に広がった主弁円錐状閉塞部212とを備えて構成されている。主弁円錐状閉塞部212は燃焼室40内に配置されている。主弁ロッド211は第1換気通路110を貫通して、シリンダヘッド100に固定されている主弁ケース230内に第1換気通路110の長さ方向に移動可能に支持されて配置されている。主弁円錐状閉塞部212は、主弁本体210が第1換気通路110の長さ方向に移動すると、第1換気通路110を開閉するようになっている。本実施形態では、主弁本体210は、耐熱セラミック材料で構成されるが、これに限定されず、例えば、SUH3(マルテンサイト系耐熱鋼)などのような耐熱鋼などでもよい。
【0031】
主弁バネ220は、主弁ケース230の長さ方向に沿って移動可能に設けられ主弁リテーナ221と、主弁ケース230との間に設けられている。主弁バネ220は、自然長より予荷重を掛けたセット長で主弁リテーナ221が主弁ケース230の上端に配置されるようになっている。また、主弁バネ220は1重の樽型のバネである。これにより、主弁バネ220は、バネ高さが削減されており、不等ピッチによりバネ有効巻き数が削減されてサージング防止効果が向上している。
【0032】
主弁電磁駆動装置240は、
図2に示したように、主弁ロッカアーム250を介して主弁ロッド211に連結されている。主弁電磁駆動装置240は主弁ロッカアーム250を揺動することにより、主弁本体210を第1換気通路110の長さ方向に移動して第1換気通路110を開閉させる。以下、主弁電磁駆動装置240について、
図4を参照しながら説明する。
【0033】
主弁電磁駆動装置240は、
図4に示したように、稼動ロッド241と、稼動ロッド241に間隔をあけて設けられる2つのロッド円盤板242と、ロッド円盤板242に取り付けられる永久磁石243と、2つのロッド円盤板242の間に配置される複数の電磁石244と、ロッド円盤板242と電磁石244を収容する外ケース245と、外ケース245に取り付けられる外ケース用永久磁石246と、を主に備えて構成される。
【0034】
稼動ロッド241は、
図4に示したように、外ケース245の中心を貫通して設けられており、稼動ロッド241は、外ケース245に対して軸方向に移動する。
【0035】
ロッド円盤板242は、
図4に示したように、稼動ロッド241の軸方向の2か所に設けられた磁気受けである。ロッド円盤板242は、
図5に示したように、円盤状の形状をしており、円周方向に永久磁石243が嵌り合う嵌合孔242aが複数形成されている。
【0036】
永久磁石243は、フェライト磁石によって構成されている。永久磁石243は、
図5に示したように、扇形部243aから円筒状部243bが突出した形状である。永久磁石243は、ロッド円盤板242の嵌合孔242aに嵌め合わされると、扇形部243aが電磁石244方向に突出し、円筒状部243bが外ケース245方向に突出する。
【0037】
電磁石244は、
図4に示したように、2つのロッド円盤板242の間に配置される。また、電磁石244は、稼動ロッド241の周りおいて、円周方向に永久磁石243と同数配置される。
【0038】
電磁石244は、
図6に示したように、鉄心244−1と鉄心244−1に巻き付けられる銅線244−2によって構成されている。鉄心244−1は、アモルファス金属によって構成されており、永久磁石243の扇形部243aとほぼ同様の扇形の形状をしている。このような扇形の形状の鉄心244−1に銅線244−2が巻き付けられることにより、電磁石244が構成される。このように構成された複数の電磁石244は、ドーナツ型に配置され、円の中心に稼働ロッド241がストロークできるように配置される。鉄心244−1が外ケース245に固定される。
【0039】
ここで、鉄心244−1を構成するアモルファス金属について説明する。アモルファス金属は、結晶構造のない金属の総称であり、溶けた金属を急冷することで非結晶構造が実現される。アモルファス金属を鉄心244−1に使用すると、鉄損と呼ばれる損失が従来の電磁鋼板(珪素鋼板)の約1/10と小さくなる。しかし、薄くて硬いアモルファス金属で鉄心244−1を構成する場合、プレス加工などで複雑な形状にすることは困難である。そこで、本実施形態では、電磁石固定子と稼働ロッド241のストローク軸方向、すなわち、アキシャル方向でN極とS極を受け取る構造のアキシャルギャップ方式を採用する。この方式にすると、鉄心244−1と稼働ロッド241の軸方向が同一断面形状の柱体となる。すなわち、薄くて硬いアモルファス金属を短冊状に切断して、扇形の鉄心244−1の構造とすれば、アモルファス金属を鉄心244−1の構造に加工することができる。
【0040】
このように、鉄心244−1をアモルファス金属で構成すると鉄損が小さくなるため、電磁駆動装置200を小型化したり、駆動力を大きくしたりすることができる。
【0041】
外ケース245の内部には、
図4に示したように、2つのロッド円盤板242と、電磁石244が収容されている。また、外ケース244の中心に稼動ロッド241が貫通している。外ケース245は、稼働ロッド241の主弁ロッカアーム250との連結端が上を向くように主弁ケース230に固定されている。
【0042】
外ケース245には、
図4に示したように、ヘリウム空気混合ガスを導入するための導入部245aが設けられており、導入部245aを介して外ケース245内にヘリウム空気混合ガスが充填される。外ケース245内に導入されるヘリウム空気混合ガスは、ロッド円盤板242が高速で上下動するときの風損抵抗を軽減するものである。すなわち、ロッド円盤板242が高速で上下動すると、風損の発生が考えられる。特に、主弁電磁駆動装置240や後述する副弁電磁駆動装置340などの稼働ロッド241のストロークが長い場合は、風損抵抗が大きくなる。そこで、ヘリウム空気混合ガスをロッド円盤板242の動作空間に充填して、風損抵抗を軽減する。
【0043】
ロッド円盤板242の動作空間に充填するガスはヘリウム100パーセントの方が軽減効果が大きいが、粒子が小さいため、Oリング程度では漏れ防止ができない。このため、ヘリウムを空気と混合し、大気圧化で使用する。高気密構造によるケースなどのコストアップ対風損軽減の費用対効果は、ヘリウム空気混合ガスの大気圧下での利用の方が大きくなる傾向にある。
【0044】
外ケース用永久磁石246は、フェライト磁石によって構成されている。外ケース用永久磁石246は、
図4に示したように、外ケース244のロッド円盤板242の永久磁石243と対向する位置に取り付けられている。外ケース244に取り付けられる外ケース用永久磁石246の数は、ロッド円盤板242の永久磁石243の数と同じである。
【0045】
このように構成された主弁電磁駆動装置240は、銅線244−2に電流を流すと、電流の流れる方向に応じて、鉄心244−1の両端にN極とS極の磁極が発生する。鉄心244−1に発生した磁極とロッド円盤板242の永久磁石243の磁極とで吸引と反発を同時に行い、稼動ロッド241を電流を流した方向に応じて鉄心244−1に対してアキシャルギャップ方向にストロークさせる。永久磁石243と外ケース用永久磁石246との同極の組み合わせで反発を起こさせ、稼動ロッド241のストローク端の衝撃を吸収する。
【0046】
主弁ロッカアーム250は、
図2に示したように、主弁ロッカアーム250の一端が主弁電磁駆動装置240の稼動ロッド241の連結端に連結されており、稼動ロッド241がストロークすると、主弁ロッカアーム250の一端が上下動する。また、主弁ロッカアーム250の他端は主弁ロッド211の上端に連結されており、主弁ロッド211を主弁電磁弁駆動装置240によって主弁ロッカアーム250が揺動することにより、主弁ロッド211をストロークさせる。
【0047】
(副弁300)
副弁300は、
図2に示したように、第1換気通路110の長さ方向に移動して吸気通路120と排気通路130を開閉する副弁本体310と、吸気通路120を閉塞する方向に副弁本体310を常時付勢する副弁バネ320と、副弁本体310と副弁バネ320を収容する副弁ケース330と、副弁本体310を駆動する副弁電磁駆動装置340及び副弁ロッカアーム350と、を主に備えて構成されている。
【0048】
副弁本体310は、
図2に示したように、第1換気通路110の長さ方向に移動して吸気通路120と排気通路130、さらに第2換気通路140を開閉するものである。副弁本体310は、吸気通路120と排気通路130を閉塞する通路閉塞部311と、一端が通路閉塞部311に連結しており、主弁ロッド211に沿って移動する副弁ガイドバー312とを備えて構成されている。本実施形態では、副弁本体310は、耐熱セラミック材料で構成されるが、これに限定されず、例えば、ステンレス鋼などでもよい。
【0049】
通路閉塞部311は、円筒状の形状をしており、円筒状の周面によって各通路52、53、54を閉鎖する。通路閉塞部311が、吸気通路120を開くときには、排気通路130は閉じられ、第2換気通路140は開かれる。逆に通路閉塞部311が、吸気通路120を閉じるときには、排気通路130は開かれ、第2換気通路140は閉じられる。
【0050】
副弁ガイドバー312は中空に構成されており、副弁ガイドバー312の中空には、主弁200の主弁ロッド211が軸方向に相対移動可能に挿通して配置される。また、副弁ガイドバー312には、副弁ロッカアーム350が連結される。
【0051】
副弁バネ320は、
図2に示したように、副弁ケース330の長さ方向に沿って移動可能に設けられ副弁リテーナ321と、副弁ケース330との間に設けられている。副弁ケース330は、主弁ケース230内に配置され、主弁ケース230に固定されている。副弁バネ320は、自然長より予荷重を掛けたセット長で副弁リテーナ321が副弁ケース330の下端に配置されるようになっている。また、副弁バネ320は1重の樽型のバネである。これにより、副弁バネ320は、バネ高さが削減されており、不等ピッチによりバネ有効巻き数が削減されてサージング防止効果が向上している。
【0052】
副弁電磁駆動装置340及び副弁ロッカアーム350の主な構成は、
図4〜
図6に示した主弁電磁駆動装置240及び主弁ロッカアーム250と同様の構成である。また、副弁電磁駆動装置340及び副弁ロッカアーム350の主な作用も、主弁電磁駆動装置240及び主弁ロッカアーム250と同様の構成である。よって、ここでは、主弁電磁駆動装置240及び主弁ロッカアーム250と同様の構成及び作用については説明を省略し、相違する点のみ説明することとする。また、主弁電磁駆動装置240及び主弁ロッカアーム250と同じ部分には同じ符号を付するものとする。
【0053】
副弁電磁駆動装置340は、主弁電磁駆動装置240と同一のものであり、主弁電磁駆動装置240と軸方向において逆向きに主弁ケース230に固定されている。すなわち、稼働ロッド341の副弁ロッカアーム350との連結端が下を向くように主弁ケース230に固定されている。
【0054】
副弁電磁駆動装置340の稼働ロッド341の連結端には、副弁ロッカアーム350の一端が連結されている。副弁ロッカアーム350の他端は副弁ガイドバー312に連結されており、稼働ロッド341による副弁ロッカアーム350の一端の上下動に対応して、副弁ガイドバー312が上下動する。これにより、副弁本体310が吸気通路120と排気通路130を開閉する。
【0055】
(第2弁400)
第2弁400は、第2換気通路140を開閉することで、従来のスロットル弁に相当する絞り効果を得るようにしたものである。第2弁400は、
図2に示したように、第2換気通路140の長さ方向に移動して第2換気通路140を開閉する第2弁本体410と、第2換気通路140を閉塞する方向に第2弁本体410を常時付勢する第2弁バネ420と、第2弁本体410と第2弁バネ420を収容する第2弁ケース430と、第2弁本体410を駆動する後述する第2弁電磁駆動装置440と、を主に備えて構成されている。なお、第2弁400は、1つの燃焼室40に対して、複数個、例えば2〜3個設けることにより、低負荷運転がより円滑になり、且つポンピング損失を低減できるので、熱効率が向上する。
【0056】
第2弁400は、前述のように、第2換気通路140の長さ方向に移動して第2換気通路140を開閉するものである。第2弁400は、
図2に示したように、主弁200よりも小型であり、シリンダヘッド100の高さよりも若干低くなるように構成されている。第2弁本体410は、長尺な棒状の第2弁ロッド411と第2弁ロッド411の先端に円錐状に広がった第2弁円錐状閉塞部412とを備えて構成されている。
【0057】
第2弁円錐状閉塞部412は燃焼室40内に配置されている。第2弁ロッド411は第1換気通路110を貫通して、第2弁ケース430内に第2換気通路140の長さ方向に移動可能に支持されて配置されている。第2弁円錐状閉塞部412は、第2弁本体410が第2換気通路140の長さ方向に移動すると、第2換気通路140を開閉するようになっている。本実施形態では、第2弁本体410は、耐熱セラミック材料で構成されるが、これに限定されず、例えば、SUH3(マルテンサイト系耐熱鋼)などのような耐熱鋼などでもよい。
【0058】
第2弁バネ420は、第2弁ケース430の長さ方向に沿って移動可能に設けられ第2弁リテーナ421と、第2弁ケース430との間に設けられている。第2弁バネ420は、自然長より予荷重を掛けたセット長で第2弁リテーナ421が第2弁ケース430の上端に配置されるようになっている。また、第2弁バネ420は1重の樽型のバネである。これにより、第2弁バネ420は、バネ高さが削減されており、不等ピッチによりバネ有効巻き数が削減されてサージング防止効果が向上している。
【0059】
第2弁本体410は、主弁本体210や副弁本体310とは異なり、ロッカアームを用いること無く、第2弁電磁駆動装置440のみで駆動する。第2弁電磁駆動装置440の主な構成は、
図4〜
図6に示した主弁電磁駆動装置240と同様であるが、第2弁電磁駆動装置440は主弁電磁駆動装置240よりも小型に構成されている。また、第2弁電磁駆動装置440の主な作用も主弁電磁駆動装置240と同様である。ここでは、主弁電磁駆動装置240と同様の構成及び作用については説明を省略し、相違する点のみ説明することとする。また、主弁電磁駆動装置240と同じ部分には同じ符号を付するものとする。
【0060】
第2弁電磁駆動装置440は、主弁電磁駆動装置240と同一のものであり、主弁電磁駆動装置240と軸方向においてほぼ逆向きにシリンダヘッド100に固定されている。すなわち、稼働ロッド441の第2弁ロッド411との連結端が上を向くようにシリンダヘッド100に固定されている。第2弁電磁駆動装置440の稼働ロッド441の連結端には、第2弁ロッド441の一端が直接連結されている。稼働ロッド441の稼働によって第2弁ロッド441が上下動する。これにより、第2弁本体410が第2換気通路140を開閉する。
【0061】
このように、第2弁400を電磁駆動装置440で駆動するため、第2弁400の駆動機構が簡単でコストを抑えることができる。このため、第2弁400を備えることによる内燃機関10の製造コストの増加を最小限に抑えることができる。また、前述のように、電磁駆動装置440の鉄心444−1をアモルファス金属で構成し、電磁駆動装置440を小型したことにより、第2弁400を備えることによる内燃機関10の大型化を最小限に抑えることができる。
【0062】
次に、電磁駆動装置の駆動装置について説明する。ここでは、第2弁電磁駆動装置440を例にとって、
図7及び
図8を参照しながら説明するが、主弁電磁駆動装置240及び副弁電磁駆動装置340も第2弁電磁駆動装置440と同様である。
【0063】
第2弁電磁駆動装置440の駆動装置は、
図7に示した第2弁本体410を開く際の開弁駆動装置500と、
図8に示した第2弁本体410を閉じる際の閉弁駆動装置600とを備えている。開弁駆動装置500は、
図7に示したように、バッテリ510と、昇圧回路520と、クランク角度センサ530と、エンジン回転センサ540と、通電制御回路550と、電流正順回路560と、キャパシタ放電回路570と、を備えて構成される。また、閉弁駆動装置600は、
図8に示したように、電流反転回路610とキャパシタ充電回路620と、を備えて構成される。
【0064】
まず、開弁駆動装置500について、
図7を参照しながら説明する。バッテリ510は、12Vの電圧であり、昇圧回路520は、バッテリ510の12Vの電圧を60Vに昇圧する。
【0065】
クランク角度センサ530は、検出したクランク角度を通電制御回路550に送信する。クランク角度センサ530としては、例えば、アブソリュウトエンコーダが用いられる。
【0066】
エンジン回転センサ540は、エンジン回転数を検出し、検出したエンジン回転数を通電制御回路550に送信する。
【0067】
通電制御回路550は、第2弁電磁駆動装置440への通電開始から稼働ロッド441のストローク終了までの通電と、稼働ロッド441のストローク位置が保持されるための通電と、を電流正順回路560に命令する。
【0068】
第2弁電磁駆動装置440への通電開始から稼働ロッド441のストローク終了までの通電の時間は、通電制御回路550に予めタイマーで設定されている。また、稼働ロッド441のストローク位置が保持されるための通電の命令は、通電制御回路550が、クランク角度とエンジン回転数に基づいて演算した最適通電時期と最適通電時間に基づいて行われる。
【0069】
電流正順回路560は、通電制御回路550の命令に基づき、稼働ロッド441が開弁する方向の電流を電磁石444に流す。
【0070】
また、キャパシタ放電回路570は、バッテリ電源にキャパシタ電源分を加えて、バッテリ510の単独以上の容量の電力を電磁石444に通電するものである。したがって、必要供給電力量に対してキャパシタ電源が加わった分だけ、バッテリ510の消費電力量を低減できるので、バッテリ510の小型化やバッテリ510の充填量の削減をすることができる。これにより、バッテリ510のエネルギーを削減することができるため、エンジン駆動発電機の負荷が軽減されて、エンジンの熱効率が向上する。また、キャパシタ放電回路570は、稼働ロッド441の起動からストローク終了までを補助するものであり、ストローク位置を保持する間は補助しないため、小型化と低コスト化が図られる。なお、キャパシタとしては、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタが用いられる。
【0071】
以上、開弁駆動装置500の構成について説明した。次に、第2弁電磁駆動装置440によって第2弁本体410を開弁する際の制御の流れを説明する。まず、バッテリ510から昇圧回路520に12Vの電圧を供給する。昇圧回路520では、供給された12Vの電圧を60Vに昇圧して、通電制御回路550に供給する。通電制御回路550は、
図7のグラフAに示したように、60Vの電圧で予めタイマーで設定しておいた通電時間だけ電流正順回路560から電磁石444に通電する。このとき、キャパシタ放電回路570も電流正順回路560に電力を供給し、稼働ロッド441の起動からストロークの終了までを補助する。稼働ロッド441のストロークに伴って、第2弁本体410が開弁していく。
【0072】
稼働ロッド441のストロークが終了すると、通電制御回路550は、クランク角度とエンジン回転数に基づいて最適通電時期と最適通電時間を演算し、演算した最適通電時期から最適通電時間だけ、12Vで通電する。これにより、稼働ロッド441がストローク位置で保持され、第2弁本体410の開弁した状態が保持される。
【0073】
最適通電時間が終了すると、電磁石444への通電が終了し、第2弁本体410の開弁の制御が終了する。
【0074】
以上、開弁時の第2弁電磁駆動装置440の制御について説明した。次に、閉弁駆動装置600について、
図8を参照しながら説明する。閉弁駆動装置600は、開弁制御が終了した後の、電磁弁444のエネルギーを回生するためのものであり、電流反転回路610は、
図8に示したように、電磁石444に開弁時とは逆方向の電流を流すものである。また、キャパシタ充電回路620は、電磁石444から戻った電流をキャパシタに充電し、エネルギーを回生するものである。
【0075】
次に、第2弁本体410の閉弁時の制御について説明する。最適通電時間が終了し、電磁石444への通電が終了すると、開いていた第2弁本体410は、第2弁バネ420の弾性力により閉じる方向にストロークする。このとき、電流反転回路610で電磁石444に逆方向の電流を流す。これにより、電磁石444の磁極が反転し、電流が電源側に戻ってくる。この電流がキャパシタ充電回路620でキャパシタに充電され、エネルギーが回生される。
【0076】
以上、本実施形態の内燃機関10の構成について説明した。次に、内燃機関10の動作を、
図9を参照しながら説明する。本実施形態において、内燃機関10は(1)吸入工程、(2)圧縮工程、(3)(爆発)膨張工程、(4)排気工程を1サイクルとする燃焼サイクルで動作する。各工程における内燃機関10の動作について、以下に詳述する。
【0077】
(1)吸入工程
吸入工程においては、
図9(a)に示したように、主弁電磁駆動装置240に通電し、主弁電磁駆動装置240を駆動して、主弁ロッカアーム250を介して主弁本体210が下降し、第1換気通路110を開放する。また、副弁電磁駆動装置340を通電する。これにより、副弁電磁駆動装置340の駆動により副弁ロッカアーム350を介して副弁本体310が上昇し、吸気通路120を開放する。さらに、第2弁電磁駆動装置440を通電して駆動する。これにより、第2弁本体410が下降し、第2換気通路140を開放する。
【0078】
第1換気通路110、吸気通路120及び第2換気通路140が開放された状態で、ピストン駆動機構31によりピストン30が上死点から下降していく。これにより、
図9(f)に示したように、燃焼室40の内圧が負圧になるため、逆止弁70が開いて、吸気通路120、第1換気通路110及び第2換気通路140を通って燃焼室40内に新気が吸い込まれる。第2換気通路140から吸い込まれる新気は縦及び横方向渦流となる空気流動を生成するため、この空気流動によって急速燃焼が助成される。
【0079】
そして、
図9(e)に示したように、ピストン30が下降していく途中で、2弁電磁駆動装置440への通電が停止して、第2弁バネ420の弾性力により第2弁本体410が上昇し、第2換気通路140が閉鎖する。ピストン30が下死点まで移動した時点で、吸入工程が終了する。このように、第2換気通路140を開閉することで、従来のスロットル弁に相当する絞り効果が得られる。また、従来のスロットル弁に比べてポンピングロスを低減することで、熱効率の向上を計ることができる。吸気工程の終了後、引き続き圧縮工程に移行する。
【0080】
なお、吸入工程における第2弁400の開放動作は、エンジンの作動領域において以下のように行う。
1)低負荷、低速回転
第2弁400は閉塞し、主弁200のみ開放して吸入する。
2)中負荷、中速回転
第2弁400を短時間開放して、主弁200と併用して中程度に吸入を行う。
3)高負荷、高速回転
第2弁400を長時間開放して、主弁200と併用して多量に吸入を行う。
【0081】
(2)圧縮工程
圧縮工程においては、
図9(b)に示したように、主弁電磁駆動装置240への通電が停止し、主弁本体210が主弁バネ220の弾性力により上昇する。これにより、第1換気通路110が閉塞する。また、主弁本体210が第1換気通路110を閉じると、引き続き、副弁電磁駆動装置340への通電を停止する。これにより、副弁バネ320の弾性力により、副弁本体310が下降して吸気通路120を閉塞するとともに、排気通路130を開放する。さらに、第1換気通路110の閉塞と同時に、第2電磁駆動装置440を通電する。これにより、第2電磁駆動装置440の駆動により、第2弁本体410が下降し、第2換気通路140が開放される。
【0082】
主弁本体210が第1換気通路110を閉じると、ピストン30が下死点から上死点まで上昇して、
図9(f)に示したように、燃焼室40の空気を圧縮する。この圧縮により、燃焼室40の空気は高温になる。また、第1換気通路110が閉じると同時に、
図9(e)に示したように、第2換気通路140を開放し、燃焼室40の圧縮圧を減圧して、実圧縮比を可変にする。仮に、燃焼室40の実圧縮比を可変にせず、高圧縮比固定だと、高負荷時にノッキング回避のために遅角点火するため、効率を高めることができない。すなわち、熱効率が最高になる圧縮比は、低負荷時は大きく、高負荷時は小さいため、負荷に合わせて最適な圧縮比が得られれば、熱効率を向上することができる。また、減圧した空気圧を吸気通路120に導き、この時、吸気通路120と吸気マニホルド60との間に設けた逆止弁70を閉じる。これにより、吸気通路120内に空気が蓄積され、吸気工程時に過給効果を持たせて、熱効率向上が計られる。ピストン30が上死点に達するより前に、第2電磁駆動装置440への通電が停止し、第2弁本体410が第2弁バネ220の弾性力により上昇し、第2換気通路140が閉塞される。圧縮工程が終了すると、(爆発)膨張行程に移行する。
【0083】
なお、圧縮工程における第2弁400の開放動作は、エンジンの作動領域において以下のように行う。
1)低負荷、低速回転
第2弁400は閉塞し、圧縮比18で熱効率を最高にする。
2)中負荷、中速回転
第2弁400を短時間開放して減圧し、圧縮比14にしてノッキングを回避する。
3)高負荷、高速回転
第2弁400を長時間開放して減圧し、圧縮比10にしてノッキングを回避する。
【0084】
(3)(爆発)膨張工程
(爆発)膨張工程においては、
図9(c)に示したように、主弁200が第1換気通路110を閉塞し、副弁300が吸気通路120を閉塞し、第2弁400が第2換気通路140を閉塞した状態を維持している。一方、燃焼室40では、
図9(c)に示したように、圧縮工程において圧縮されて高温となった空気に対して、燃料噴射弁50が、高圧の燃料51を噴射する。また、レーザー光発射器90からレーザー光91が照射される。照射されたレーザー光91がレンズで集光される。燃焼室40の空気は、圧縮工程で圧縮されて高温・高圧となっているため、レーザー光91の集光部にプラズマ熱が発生する。高エネルギーのプラズマ熱は火種(火炎核)を生成する。これにより、燃焼室40内の燃料が燃焼する。このとき、レーザー光91の集光位置を瞬時に調整することで、複数の点で火種が生成される。
【0085】
燃焼室40では燃料の燃焼により、燃焼ガスが膨張し、ピストン30が、
図9(f)に示したように、下死点まで押し下げられる。ピストン30の下降に伴って、燃焼室40の圧力が低下する。燃焼行程が終了すると、排気工程に移行する。
【0086】
(4)排気工程
排気工程においては、
図9(d)に示したように、主弁電磁駆動装置240に通電し、主弁電磁駆動装置240を駆動して、主弁ロッカアーム250を介して主弁本体210が下降し、第1換気通路110を開放する。また、副弁電磁駆動装置340に通電されておらず、副弁バネ320の弾性力により、副弁本体310が下降し、吸気通路120を閉塞する。ピストン30は、
図9(f)に示したように、下死点から上死点まで上昇し、燃焼ガスが第1換気通路110と排気通路130を通って燃焼室40から押し出される。
【0087】
図9(e)に示したように、ピストン30が下死点から上死点まで上昇する途中、すなわち、排気工程の途中で、第2弁電磁駆動装置440に通電し、第2弁電磁駆動装置440を駆動する。これにより、第2弁本体410が下降し、第2換気通路140を開放する。
【0088】
これにより、第2換気通路140から燃焼ガスが吸気通路120内に導かれ(内部EGRという)、逆止弁70が閉じて、吸気通路120内で燃焼ガスと新気が混合し、EGRができる。このようにできたEGRと外部からのクールドEGRとを合わせて多量のEGRができる。多量EGR制御で、ポンピングロスを低減して、熱効率を向上し、かつエンジン単体での大気放出ガスを後処理なしで、さらにクリーンにすることができる。
【0089】
これにより、排気工程が終了し、1つの燃焼サイクルが終了する。次に、排気から吸気への切り替えのタイミングの調整について、主弁200、副弁300及び第2弁400の動作を、
図10を参照しながら説明する。
【0090】
図10に示したように、排気工程が始まるときには、第2弁400は第2換気通路140を閉じた状態であり、主弁200が第1換気通路110を開いていく。主弁200が第1換気通路110を完全に開いてしばらくすると、第2弁400が第2換気通路140を開く。これにより、前述のように、燃焼ガスが吸気通路120内に導かれ、逆止弁70が閉じて、吸気通路120内で燃焼ガスと新気が混合し、EGRができる。
【0091】
ピストン30が上死点に到達する直前である排気工程の終了直前に、副弁300を上昇させる。これにより、燃焼室40では、燃焼ガスが排出されるとともに、新気が吸気される。新気の吸気量は、副弁300の駆動開始直後は少ないが、副弁300が吸気通路120を開放していくとともに排気通路130を閉塞していくにしたがって、多くなっていく。そして、排気工程が完全に終了した時点では、最大量の吸気が行われる状態になっている。このように、排気工程の終了直前において、弁重合が行われ、排気工程と吸気工程とが重なり合うように、副弁300が動作するため、排気から吸気への切り替えタイミングが良好になる。これにより、ガス交換効率が向上し、燃費が向上する。
【0092】
次に、エンジンの始動時と停止時の第2弁400の動作について説明する。
エンジンの始動時には、第2弁400を開放して燃焼室40を減圧し、無負荷状態でフライホイールを回転させ、すぐに第2弁400を閉塞する。これにより、エンジンの始動時の負荷を軽減することができる。
【0093】
また、通常、エンジン始動時には、始動モータのスターターピニオンをフライホイールの外側に取り付けられたリングギヤに押し付けて、エンジンを始動する。このため、エンジン停止時には、従来のエンジンでは、始動モータのスターターピニオンとフライホイールの外側に取り付けられたリングギヤの噛み合い位置が、4気筒なら2箇所、6気筒なら3箇所の常に決まった位置に噛み合って止まる。よって、エンジン始動時には、フライホイールをリングギヤに押し付けて行うが、常に同じ位置が押し付けられることになる。このため、特にリングギヤが片減りして、早い時期に噛み合いが悪くなる。よって、リングギヤの耐久寿命が低下して早期交換が必要となり、メンテナンスコストが高騰する。しかし、本実施形態では、エンジン停止時に、第2弁400を開いて燃焼室40の減圧をするため、スターターピニオンとリングギヤの噛み合い位置が不規則になる。よって、前記問題が解決される。
【0094】
また、エンジン停止時にピストン30が圧縮上死点に達する場合、フライホイールの回転エネルギーが小さくなり、従来のエンジンでは圧縮越えができなくなる。また、圧縮圧でピストン30が撥ね返されるため、撥ね返りながらピストン30と連接棒の慣性質量が停止すると、ピストン30と連接棒を締結するピストン・ピンとピン受け面に大きな衝撃が加わり、ピストン30と連接部尾のピン受け面が損傷し、耐久性が低下してメンテナンス費用が高騰する。
【0095】
これに対して、本実施形態では、エンジンの停止時に、第2弁400を開放して燃焼室40を減圧する。これにより、ピストン圧縮上死点で燃焼室40の圧が抜けてフリーの状態でピストン停止位置を不規則にする。このため、エンジンの停止時におけるピストン・ピンの衝撃が緩和されて、部品の耐久性を向上させることができる。
【0096】
なお、本実施形態において、アイドリング時や極低負荷運転時は、第2弁400が第2換気通路140を閉塞した状態で、燃料噴射弁50から噴射される燃料51の量を少なく調整する。また、本実施形態の内燃機関10をハイブリッド車に用いる場合は、アイドリング時や極低負荷運転時は、内燃機関10の作動を停止する。
【0097】
(本実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、シリンダヘッド100に燃焼室40への給排気と燃焼室40の密閉を切り替える主弁200とは別に、燃焼室40への吸気量を変更する第2弁400を設けた。このため、第2弁400の作動領域を大きくすることにより、第2弁400を開閉することで、従来のスロットル弁に相当する絞り効果が得られるとともに、従来のスロットル弁に比してポンピングロスを低減できるよって、内燃機関10の熱効率を向上することができる。
【0098】
また、吸気通路120は、排気通路130の下方に設け、副弁バネ320の弾性力によって副弁本体310が下方に移動したときに、排気通路130が開き、吸気通路120が閉じるようにしたことにより、内燃機関10を停止したときに、副弁バネ320の作用によって、上方に設けた排気通路130が開き、下方に設けた吸気通路120が閉じた状態で停止する。一般的に、内燃機関が停止したときには、排気通路が開いて排気するとともに、内燃機関を再開させるときのために、吸気通路は閉じておくことが好ましいが、本実施形態の内燃機関10は、停止したときに好ましい状態になる。
【0099】
また、第2換気通路140に縦及び横方向の渦流を生成する空気流動生成形状141が形成されているため、第2弁400の開放時に、空気に縦及び横方向の渦流が生成される。このため、急速燃焼が助成される。また、急速燃焼の実現で、燃焼時間が短縮すると異常燃焼を回避できるので、圧縮比を大きくでき、内燃機関10の熱効率が向上する。
【0100】
また、第2弁400を電磁駆動装置440で駆動するため、第2弁400の駆動機構が簡単な構成となり、コストを抑えることができる。このため、第2弁400を備えることによる内燃機関40の製造コストの増加を最小限に抑えることができる。
【0101】
また、各電磁駆動装置240、340、440の鉄心244−1、344−1、444−1をアモルファス金属で構成されるようにしたことにより、鉄損が小さくなり、電磁駆動装置240、340、440を小型化したり、駆動力を大きくしたりすることができる。このため、第2弁400を備えることによる内燃機関40の大型化を最小限に抑えることができる。
【0102】
また、各電磁駆動装置240、340、440に各弁200、300、400の戻りエネルギーの回生を蓄電するキャパシタを備えるようにしたことにより、電磁駆動装置240、340、440を駆動するバッテリ510のエネルギーを削減することができる。このため、エンジン駆動発電機の負荷が軽減され、内燃機関10の熱効率が向上する。
【0103】
さらに、吸気通路120の出口に逆止弁70を設けることにより、吸気通路120内で排気ガスと新気とを混合してEGRを生成することができる。このため、多量EGR制御でポンピングロスを低減して内燃機関10の熱効率を向上することができ、かつ、内燃機関10単体での大気放出ガスを後処理なしで、さらにクリーンにすることができる。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0105】
例えば、上記実施形態では、吸気通路120は、排気通路130の下方に設け、副弁バネ320の弾性力によって副弁本体310が下方に移動したときに、排気通路130が開き、吸気通路120が閉じるようにしたが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、吸気通路120と排気通路130の位置を逆にしてもよく、この場合、副弁本体310に作用する副弁バネ320の方向を逆にする、すなわち、副弁バネ320の弾性力によって副弁本体310が上方に移動したときに、排気通路130が開き、吸気通路120が閉じるようにしてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、第2換気通路140に縦及び横方向の渦流を生成する空気流動生成形状141を形成したが、本発明はこれに限定されず、縦方向のみの渦流や横方向のみの渦流を形成する空気流動生成形状141としたり、そもそも空気流動生成形状141を備えない形状としたりしてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、主弁本体210、副弁本体310、第2弁本体410を主弁電磁駆動装置240、副弁電磁駆動装置340、第2弁電磁駆動装置440でそれぞれ駆動することにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、カムとロッカアームとを備えた駆動装置で駆動してもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、電磁駆動装置の電磁石の鉄心にアモルファス合金を使用する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば電磁鋼板でもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、電磁駆動装置に弁の戻りエネルギーの回生を蓄電するキャパシタを備える構成としたが、本発明はこれに限定されず、キャパシタを備えない構成としてもよい。
【0110】
さらに、上記実施形態では、吸気通路120の出口に逆止弁70を設けたが、これは一例であり、逆止弁70を設けない構成としてもよい。
【解決手段】燃焼室40に連通するとともに相互に連通する第1換気通路110及び第2換気通路140と、第1換気通路110に連通する吸気通路120及び排気通路130と、が形成されたシリンダヘッド100と、第1換気通路110を開閉することにより燃焼室40への給排気と燃焼室40の密閉を切り替える主弁200と、主弁200に沿って移動した位置に応じて第1換気通路110と吸気通路120又は排気通路130との連通を切り替える副弁300と、により構成される第1弁700と、第2換気通路120を開閉することにより、燃焼室40への吸気量を変更する第2弁400と、を備える。これにより、第2弁400を開閉することで、ポンピングロスを低減できるため、燃焼室40の熱効率が向上する。