特許第5851665号(P5851665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5851665セラミックスプレートと金属製の円筒部材との接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5851665
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】セラミックスプレートと金属製の円筒部材との接合構造
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20160114BHJP
   B23K 1/19 20060101ALI20160114BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   C04B37/02 B
   B23K1/19 B
   H01L21/68 R
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-544246(P2015-544246)
(86)(22)【出願日】2015年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2015056892
【審査請求日】2015年9月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-65541(P2014-65541)
(32)【優先日】2014年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片居木 俊
(72)【発明者】
【氏名】谷村 昂
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−251991(JP,A)
【文献】 特開平10−195657(JP,A)
【文献】 特開平8−268770(JP,A)
【文献】 特開2003−300784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00−37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスプレートと金属製の円筒部材との接合構造であって、
前記円筒部材の端部に形成されたフランジと、
前記セラミックスプレートのうち前記フランジと対向する位置に設けられた環状のバンクと、
前記フランジと前記バンクとの間に形成されたろう付け部と、
を備え、
前記フランジは、幅が3mm以上、厚みが0.5mm以上2mm以下であり、
前記バンクは、前記フランジの外縁に対向する角の面取りがC面取り又はR面取りされている、
接合構造。
【請求項2】
前記バンクは、高さが0.5mm以上である、
請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記バンクは、前記フランジの外縁に対向する角の面取りがC面取りの場合にはC0.3以上、R面取りの場合にはR0.3以上である、
請求項1又は2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記セラミックスプレートは、AlN製であり、
前記円筒部材は、コバール製であり、
前記ろう付け部は、Ag,Cu及びTiを含むろう材又はAlろうによって形成されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合構造。
【請求項5】
前記セラミックスプレートは、前記環状のバンクの内側に開口し厚み方向に貫通するガス導入孔を有し、
前記円筒部材は、前記ガス導入孔へガスを供給するガス導入パイプである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の接合構造。
【請求項6】
前記環状のバンクは、前記セラミックスプレートの外周縁に沿って形成され、
前記円筒部材は、前記セラミックスプレートを支持する支持リングである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスプレートと金属製の円筒部材との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
静電チャックは、ウエハを吸着し、半導体製造プロセス中でウエハの温度を制御するための保持部材として用いられている。こうした静電チャックとしては、ガス導入孔が設けられた円板状のセラミックスプレートの裏面側より、金属製のガス導入パイプを接合して、ウエハの吸着面にHeガスなどを供給し、熱伝導性を向上させたものが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
ところで、セラミックスプレートと金属製のガス導入パイプとの接合方法としては、図7に示すように、セラミックスプレート110とガス導入パイプ120との間にろう材を充填すると共にガス導入パイプ120の側面から静電チャックの裏面にかけてろう材を塗布して、ろう付けする方法が知られている(例えば特許文献2)。ろう付け後、ろう材はフィレット状のろう付け部124となる。セラミックスプレート110とガス導入パイプ120との間に熱膨張差による応力が発生するが、その応力をできるだけ小さくするために、ガス導入パイプ120をセラミックスプレート110に近い熱膨張係数を有する金属で形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−297103号公報
【特許文献2】特開2000−219578号公報(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図7の接合構造では、ガス導入パイプ120をセラミックスプレート110に近い熱膨張係数を有する金属で形成したとしても、静電チャック使用時に熱サイクルが加わると接合部の剥がれが発生することがあった。その原因は、ガス導入パイプ120やろう付け部124が冷却時にセラミックスプレート110よりも大きく収縮してしまうことにある。そのため、熱サイクルを数回繰り返しただけでセラミックプレート110にクラックが発生し、気密性が維持できず、ガス導入孔からリークが起きてしまうことがあった。一方、セラミックスプレート110の裏面には、ガス導入パイプ120のほかにセラミックスプレート110より僅かに径の小さな金属製のリング(図示せず)がろう付けされることがあるが、このリングとセラミックスプレート110との接合部においても、上述したようにクラックが発生して気密性が維持できないという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、セラミックスプレートと金属製の円筒部材との接合構造において、熱サイクルに対する耐久性を向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の接合構造は、
セラミックスプレートと金属製の円筒部材との接合構造であって、
前記円筒部材の端部に形成されたフランジと、
前記セラミックスプレートのうち前記フランジと対向する位置に設けられた環状のバンクと、
前記フランジと前記バンクとの間に形成されたろう付け部と、
を備え、
前記フランジは、幅が3mm以上、厚みが0.5mm以上2mm以下であり、
前記バンクは、前記フランジの外縁に対向する角の面取りがC面取り又はR面取りされている、
ものである。
【0008】
この接合構造では、円筒部材のフランジとセラミックスプレートの環状のバンクとがろう付け部で接合されている。また、フランジの大きさや厚みが適正な数値範囲にあり、バンクはフランジの外縁に対向する角の面取りがC面取り又はR面取りされている。そのため、円筒部材とセラミックスプレートとの熱膨張差による応力をバンクの側面で受けることができるようになり、応力に対して強い構造となる。また、接合面積が広くなり、シール距離が長くなる。したがって、こうした接合構造を有する接合体に熱サイクルを繰り返し行ったとしても、接合部分にクラックが発生するのを抑制できる。よって、こうした接合構造によれば、熱サイクルに対する耐久性が向上する。
【0009】
本発明の接合構造において、前記バンクは、高さが0.5mm以上であることが好ましい。こうすれば、熱サイクルに対する耐久性が一層向上する。
【0010】
本発明の接合構造において、前記バンクは、前記フランジの外縁に対向する角の面取りがC面取りの場合にはC0.3以上であることが好ましく、R面取りの場合にはR0.3以上であることが好ましい。こうすれば、熱サイクルに対する耐久性が一層向上する。
【0011】
本発明の接合構造において、前記セラミックスプレートは、AlN製であり、前記円筒部材は、コバール製であり、前記ろう付け部は、Ag,Cu及びTiを含むろう材又はAlろうによって形成されていることが好ましい。このような材料の組合せを採用すれば、より確実に本発明の効果を得ることができる。
【0012】
本発明の接合構造において、前記セラミックスプレートは、前記環状のバンクの内側に開口し厚み方向に貫通するガス導入孔を有し、前記円筒部材は、前記ガス導入孔へガスを供給するガス導入パイプとしてもよい。こうすれば、熱サイクル後も、ガス導入パイプから供給されたガスがガス導入パイプやガス導入孔の外側へリークするのを防止することができる。
【0013】
本発明の接合構造において、前記環状のバンクは、前記セラミックスプレートの外周縁に沿って形成され、前記円筒部材は、前記セラミックスプレートを支持する支持リングとしてもよい。こうすれば、熱サイクル後も、支持リングの内部の気密性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】半導体製造装置用部材1の概略構成を示す断面図。
図2図1のA部拡大図。
図3図1のB部拡大図。
図4】他の実施形態の部分拡大断面図。
図5】試験用サンプルの断面図。
図6】試験用サンプルの断面図。
図7】従来の接合構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態を図面を参照して以下に説明する。図1は半導体製造装置用部材1の概略構成を示す断面図、図2図1のA部拡大図、図3図1のB部拡大図である。
【0016】
半導体製造装置用部材1は、図1に示すように、チャンバ2の内部に設置されている。この半導体製造装置用部材1は、ウエハWが載置されるウエハ載置面10aを備えたサセプタ10と、サセプタ10のウエハ載置面10aとは反対側の裏面10bに接合された小径のガス導入パイプ20と、同じく裏面10bに接合された大径の支持リング30とを備えている。また、半導体製造装置用部材1は、支持リング30の下端にてチャンバ2の内面に気密になるように接合されている。
【0017】
サセプタ10は、円板状のAlN製セラミックスプレートである。このサセプタ10は、厚さ方向に貫通するガス導入孔12を備えている。ガス導入孔12の裏面10b側の開口の周囲には、環状のパイプ接合用バンク14が形成されている。パイプ接合用バンク14は、ガス導入パイプ20のフランジ22と対向する位置に設けられている。また、サセプタ10のうち支持リング30のフランジ32と対向する位置には、環状のリング接合用バンク16が形成されている。リング接合用バンク16は、サセプタ10の外周縁よりもやや内側に、その外周縁に沿って形成されている。
【0018】
ガス導入パイプ20は、コバール製であり、図2に示すように、サセプタ10の裏面10bに接合される端部に、フランジ22を有している。コバールは、AlNと同等の熱膨張係数を有する。ちなみに、AlNの熱膨張係数は4.3×10-6/℃(40℃〜400℃)、コバールの熱膨張係数は9×10-6/℃(40℃〜400℃)である。フランジ22とパイプ接合用バンク14との間には、パイプろう付け部24が形成されている。パイプろう付け部24は、例えば、Ag−Cu−Tiろう材又はAlろうで形成されている。Ag−Cu−Tiろう材の熱膨張係数は、組成がAg63重量%、Cu32.25重量%、Ti1.75重量%の場合には 18.5×10-6/℃(40℃〜400℃)、Alろうの熱膨張係数は19.5×10-6/℃(40℃〜400℃)である。
【0019】
支持リング30は、コバール製であり、図3に示すように、サセプタ10の裏面10bに接合される端部に、フランジ32を有している。この支持リング30の直径は、サセプタ10の直径よりも僅かに小さい。フランジ32とリング接合用バンク16との間には、リングろう付け部34が形成されている。リングろう付け部34は、例えば、Ag−Cu−Tiろう材又はAlろうで形成されている。
【0020】
フランジ22,32は、図2及び図3に示すように、幅Aが3mm以上、厚みBが0.5mm以上2mm以下である。フランジ22,32の幅Aが3mm未満の場合には、シール距離不足や接合面積不足により気密性を維持できないため好ましくない。また、フランジ22,32の厚みBが2mmを超えると、熱サイクル時に接合部分に発生する応力が大きくなりすぎて接合部分にクラックが入るため好ましくない。この応力の大きさを考慮すると、フランジ22,32の厚みは薄いほどよいが、厚みが0.5mm未満の場合には、製造が困難になるため好ましくない。
【0021】
パイプ接合用バンク14及びリング接合用バンク16は、図2及び図3に示すように、段高さCが0.5mm以上であることが好ましく、フランジ22,32の外縁に対向する角の面取りサイズDがC面取りの場合にはC0.3以上、R面取りの場合にはR0.3以上であることが好ましい。この条件を満たせば、熱サイクルに対する耐久性が十分高くなる。なお、図2及び図3では、各バンク14,16の角の面取りはC面取りの場合を例示した。
【0022】
但し、各バンク14,16の段高さCが0.5mm未満であったとしても、各バンク14,16のない場合に比べて熱サイクルに対する耐久性は向上する。また、各バンク14,16の角の面取りサイズDがC面取りの場合にC0.3未満、R面取りの場合にR0.3未満であったとしても、角の面取りがされていない場合に比べて熱サイクルに対する耐久性は向上する。
【0023】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材1の使用例について説明する。半導体製造装置用部材1は、チャンバ2内に配置され、このチャンバ2内で発生させたプラズマによってウエハWの表面をエッチングするのに用いられる。このとき、必要に応じて、Heガスをガス導入パイプ20及びガス導入孔12を介してウエハWの裏面に供給する。これにより、ウエハWの均熱性が向上する。
【0024】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のサセプタ10が本発明のセラミックスプレートに相当し、ガス導入パイプ20及び支持リング30がそれぞれ円筒部材に相当する。
【0025】
以上詳述した本実施形態の半導体製造装置用部材1では、ガス導入パイプ20のフランジ22とサセプタ10のパイプ接合用バンク14とがパイプろう付け部24で接合され、支持リング30のフランジ22とサセプタ10のリング接合用バンク16とがリングろう付け部34で接合されている。また、フランジ22,32の大きさや厚みが適正な数値範囲にあり、バンク14,16はフランジ22,32の外縁に対向する角の面取りがC面取り又はR面取りされている。そのため、支持リング30とサセプタ10との熱膨張差による応力をバンク14,16の側面で受けることができるようになり、応力に対して強い構造となる。また、接合面積が広くなり、シール距離が長くなる。したがって、こうした接合構造を有する半導体製造装置用部材1に熱サイクルを繰り返し行ったとしても、接合部分にクラックが発生するのを抑制できる。よって、この半導体製造装置用部材1によれば、熱サイクルに対する耐久性が向上する。
【0026】
また、サセプタ10は、AlN製であり、ガス導入パイプ20や支持リング30は、コバール製であり、パイプろう付け部24及びリングろう付け部34は、Ag−Cu−Tiろう材又はAlろうによって形成されているため、熱膨張差によって発生する応力を低く抑えることができ、熱サイクルに対する耐久性を確実に高めることができる。
【0027】
更に、熱サイクル後に、ガス導入パイプ20から供給されたガスがガス導入パイプ20やガス導入孔12の外側へリークするのを防止することができるし、支持リング30の内部の気密性を維持することもできる。
【0028】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0029】
例えば、上述した実施形態のサセプタ10の代わりに、静電電極、ヒータ電極及びプラズマ発生電極の少なくとも1つを埋設したセラミックスプレートを用いてもよい。
【0030】
上述した実施形態では、パイプ接合用バンク14をサセプタ10の裏面10bから突出するように設けたが、図4に示すように、裏面10bのうちガス導入孔12の開口周辺に円周溝13を設けてパイプ接合用バンク14を形成してもよい。この場合、パイプ接合用バンク14の頂面の高さは、裏面10bの高さと同じになる。このようにしても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。なお、リング接合用バンク16についても、これと同様に形成してもよい。即ち、小径の円周溝と大径の円周溝とを溝を設けて、両溝の間をリング接合用バンク16としてもよい。
【0031】
上述した実施形態では、サセプタ10の材料としてAlNを採用したが、AlN以外のセラミック(例えばアルミナなど)を採用してもよい。その場合、ガス導入パイプ20や支持リング30の材料は、サセプタ10の材料と熱膨張係数が同等のもの(例えばサセプタ10の材料の熱膨張係数の±10%のもの)とするのが好ましい。また、パイプろう付け部24やリングろう付け部34のろう材も、サセプタ10の材料と熱膨張係数が同等のものとするのが好ましい。
【0032】
上述した実施形態では、金属製の円筒部材としてガス導入パイプ20や支持リング30を例示したが、そのほかの円筒部材を接合してもよい。例えば、サセプタ10の表面温度を測定する熱電対を挿入するための円筒部材を接合してもよい。
【実施例】
【0033】
[試験用サンプルNo.1〜16]
図5に示す試験用サンプルを作製した。すなわち、まず、サセプタ10を模したAlN製のブロック50を用意した。ブロック50には、ガス導入孔12を模したガス導入孔52と、パイプ接合用バンク14を模したパイプ接合用バンク54とを設けた。そして、パイプ接合用バンク54に、パイプろう付け部24を介してコバール製のガス導入パイプ20のフランジ22を接合し、試験用サンプルとした。ろう材は、Ag−Cu−Tiろう材(Ag63重量%、Cu32.25重量%、Ti1.75重量%)を使用した。ガス導入パイプ20は、内径が約7.5mm、外径が約9.5mmのものを使用した。試験用サンプルとしては、表1に示すフランジ幅A、フランジ厚みB、バンクの段高さC、面取りサイズDを有するサンプルNo.1〜16を作製した。
【0034】
【表1】
【0035】
[評価]
各サンプルを熱サイクル試験に供した。熱サイクル試験は、大気中で150℃から450℃に昇温し、その後150℃に降温するのを1サイクルとし、これを50サイクル行った。熱サイクル試験後、接合部のシール性の確認と、断面観察によるクラックの確認を行った。接合部のシール性の確認は、ガス導入孔52の開口52aを塞ぎ、ガス導入パイプ20の入口からHeリークディテクタを用いて真空引きを行い、接合部側面からHeを吹き付けてHeのリーク量を測定した。リーク量が閾値(ここでは1×10-8Pa・m3
sec)未満であればシール性良好と判定し、閾値以上であればシール性不良と判断した。そして、シール性が良好で且つ断面観察でクラックなしの場合、「OK」と評価し、シール性が不良か断面観察でクラックありの場合、「NG」と評価した。その結果を表1に示した。
【0036】
サンプルNo.1〜4の評価結果から、フランジ幅Aは3mm以上であれば、接合面積が十分広くシール距離も十分長くなるため、シール性が良好でクラックも見られなかった。
【0037】
サンプルNo.5〜8の評価結果から、フランジ厚みBは2mm以下であれば、熱サイクル試験中に大きな応力が発生しないため、シール性が良好でクラックも見られなかった。なお、フランジ厚みBが0.5mmより薄くなると製造が困難になる。
【0038】
サンプルNo.9〜12の評価結果から、パイプ接合用バンクの段高さCが0.5mm以上であれば、熱サイクル試験中に発生する応力が緩和されるため、シール性が良好でクラックも見られなかった。
【0039】
サンプルNo.13〜16の評価結果から、面取りサイズD(ここではC面取り)が0.3mm以上(つまりC0.3以上)であれば、熱サイクル試験中に発生する応力が緩和されるため、シール性が良好でクラックも見られなかった。また、C面取りの代わりにR面取りを行った場合も、同様の結果が得られた。
【0040】
なお、パイプ接合用バンク54を有さないブロック50と、フランジ22を有さないガス導入パイプ20とを、上述したAg−Cu−Tiろう材で図7に示す接合構造となるように接合したサンプルを作製し、上述した熱サイクル試験に供したあとシール性の確認を行ったところ、リーク量が閾値を超えていた(シール性不良)。また、断面観察を行ったところ、図7の点線で示すようなクラックが発生していた。
【0041】
[試験用サンプルNo.17〜24]
図6に示す試験用サンプルを作製した。すなわち、まず、サセプタ10を模したAlN製のプレート60と、支持リング30を模したコバール製のリング70とを用意した。プレート60には、リング接合用バンク16を模したリング接合用バンク66を設け、リング70には、フランジ32を模したフランジ72を設けた。そして、リング接合用バンク66に、リングろう付け部74を介してリング70のフランジ72を接合し、試験用サンプルとした。ろう材は、上述したAg−Cu−Tiろう材を使用した。また、リング70のサイズは、内径が約228mm、外径が約229.5mmのものを使用した。試験用サンプルとしては、表2に示すフランジ幅A、フランジ厚みB、バンクの段高さC、面取りサイズDを有するサンプルNo.17〜24を作製した。
【0042】
【表2】
【0043】
[評価]
サンプルNo.17〜24についても、サンプルNo.1〜16と同様にして評価を行い、その結果を表2に示した。サンプルNo.17,18の評価結果から、フランジ幅Aは3mm以上であれば、接合面積が十分広くシール距離も十分長くなるため、シール性が良好でクラックも見られなかった。サンプルNo.19,20の評価結果から、フランジ厚みBは2mm以下であれば、熱サイクル試験中に大きな応力が発生しないため、シール性が良好でクラックも見られなかった。サンプルNo.21,22の評価結果から、リング接合用バンクの段高さCが0.5mm以上であれば、熱サイクル試験中に発生する応力が緩和されるため、シール性が良好でクラックも見られなかった。サンプルNo.23,24の評価結果から、面取りサイズD(ここではC面取り)が0.3mm以上(つまりC0.3以上)であれば、熱サイクル試験中に発生する応力が緩和されるため、シール性が良好でクラックも見られなかった。また、C面取りの代わりにR面取りを行った場合も、同様の結果が得られた。
【0044】
この出願は、2014年3月27日に出願された日本国特許出願第2014-065541号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、静電チャックや静電チャックヒータ、セラミックヒータなどの半導体製造装置用部材として利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 半導体製造装置用部材、2 チャンバ、10 サセプタ、10a ウエハ載置面、10b 裏面、12 ガス導入孔、13 円周溝、14 パイプ接合用バンク、16 リング接合用バンク、20 ガス導入パイプ、22 フランジ、24 パイプろう付け部、30 支持リング、32 フランジ、34 リングろう付け部、50 ブロック、52 ガス導入孔、52a 開口、54 パイプ接合用バンク、60 プレート、66 リング接合用バンク、70 リング、72 フランジ、74 リングろう付け部、110 セラミックスプレート、120 ガス導入パイプ、124 ろう付け部。
【要約】
半導体製造装置用部材は、AlN製のセラミックスプレートであるサセプタ10と、サセプタ10に接合されたガス導入パイプ20とを備えている。サセプタ10のうちガス導入パイプ20のフランジ22と対向する位置には、環状のパイプ接合用バンク14が形成されている。また、フランジ22とパイプ接合用バンク14との間には、パイプろう付け部24が形成されている。フランジ22は、幅が3mm以上、厚みが0.5mm以上2mm以下である。パイプ接合用バンク14は、高さが0.5mm以上であることが好ましく、フランジ22の外縁に対向する角の面取りがC面取りの場合にはC0.3以上、R面取りの場合にはR0.3以上であることが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7