(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1混合層のうち、第2物質の含量が第1混合層100重量部当り30重量部ないし70重量部であり、第2混合層のうち、第2物質の含量が第2混合層100重量部当り30重量部ないし70重量部であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
前記第2単一層が2層の第2物質−含有層を含み、前記2層の第2物質−含有層間の界面が不明確で1つの層として観察されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
前記第1電極と前記電子輸送層との間に正孔注入層、正孔輸送層及び正孔阻止層からなる群から選択された1つ以上の層がさらに備えられたことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
前記第3単一層と前記第4単一層との間の界面が不明確で、前記第3単一層と前記第4単一層とが1つの層として観察されることを特徴とする請求項13に記載の有機発光素子。
前記第2単一層及び前記第5単一層各々が2層の第2物質−含有層を含み、前記2層の第2物質−含有層間の界面が不明確で、1つの層として観察されることを特徴とする請求項14に記載の有機発光素子。
前記第1電極の形成後、及び前記電子輸送層の形成前、正孔注入層の形成段階、正孔輸送層の形成段階及び正孔阻止層の形成段階のうち、1つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の有機発光素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面に基づいて本発明を説明する。
【0027】
図1は、本発明の一具現例による有機発光素子100の断面図を概略的に示す図面である。
【0028】
有機発光素子100は、基板110、第1電極120、正孔注入層130、正孔輸送層140、発光層150、電子輸送層160、電子注入層180及び第2電極190が順次に積層された構造を有する。前記電子輸送層160は、第1物質を含む第1単一層161、前記第1単一層161上に形成され、前記第1物質と第2物質とを含む第1混合層163、前記第1混合層163上に形成され、前記第2物質を含む第2単一層165、前記第2単一層165上に形成され、前記第1物質と前記第2物質とを含む第2混合層167及び前記第2混合層167上に形成され、前記第1物質を含む第3単一層169を含む。前記第1単一層161は発光層150上に備えられている。
【0029】
前記基板110としては、通常の有機発光素子で使われる基板を使用しうるが、機械的強度、熱的安定性、透明性、表面平滑性、取扱容易性及び防水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板などを使用しうるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
前記基板110上には、第1電極120が形成されている。前記第1電極120は、基板110上に第1電極用物質を蒸着法またはスパッタリング法などを用いて提供することによって形成しうる。前記第1電極120は、アノードであって、前記第1電極120がアノードである場合、正孔注入を容易にするために、第1電極用物質は高い仕事関数を有する物質のうちから選択されうる。前記第1電極120は、透過型電極または半透過型電極でありうる。第1電極用物質としては、透明で伝導性に優れた酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)などを利用しうる。または、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などを用いた半透過型電極で形成することもできる。
【0031】
前記第1電極120上には、正孔注入層(HIL)130が備えられている。正孔注入層130は、前記第1電極120上に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法(Langmuir Blodgett)のような多様な方法を用いて形成しうる。
【0032】
真空蒸着法によって正孔注入層130を形成する場合、その蒸着条件は、正孔注入層130の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層130の構造及び熱的特性によって異なるが、一般的に蒸着温度100ないし500℃、真空度10
−8ないし10
−3torr、蒸着速度0.01ないし100Å/secの範囲で適切に選択することが望ましい。
【0033】
スピンコーティング法によって正孔注入層130を形成する場合、そのコーティング条件は、正孔注入層130の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層130の構造及び熱的特性によって異なるが、約2000rpmないし5000rpmのコーティング速度、コーティング後溶媒除去のための熱処理温度は、約80℃ないし200℃の温度範囲で適切に選択することが望ましい。
【0034】
正孔注入層130の物質としては、公知された正孔注入材料を使用しうるが、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、m−MTDATA[4,4’,4’’−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylamine]、TDATA、2T−NATA、Pani/DBSA(Polyaniline/Dodecylbenzenesulfonicacid:ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PEDOT/PSS(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/Poly(4−styrenesulfonate):ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート))、Pani/CSA(Polyaniline/Camphorsulfonicacid:ポリアニリン/カンファースルホン酸)またはPANI/PSS(Polyaniline)/Poly(4−styrenesulfonate):ポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホネート))などを使用しうるが、これらに限定されない。
【0036】
前記正孔注入層130の厚さは、約100Åないし10000Å、例えば、100Åないし1000Åである。前記正孔注入層130の厚さが前述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに満足できるほどの正孔注入特性を得る。
【0037】
次いで、前記正孔注入層130の上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような多様な方法を用いて、正孔輸送層(HTL)140を形成しうる。真空蒸着法及びスピンコーティング法によって正孔輸送層140を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層130の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0038】
正孔輸送層物質は公知された正孔輸送材料を用いて形成できるが、例えば、N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)などの芳香族縮合環を有するアミン誘導体、TCTA(4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4’’−tris(N−carbazolyl)triphenylamine))のようなトリフェニルアミン系物質のような公知された正孔輸送物質を使用しうる。この中、例えば、TCTAの場合、正孔輸送の役割以外にも、発光層から励起子の拡散を防止する役割も果たす。
【0040】
前記正孔輸送層140の厚さは、約50Åないし1000Å、例えば、100Åないし800Åである。前記正孔輸送層140の厚さが前述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに満足できるほどの正孔輸送特性を得る。
【0041】
前記正孔輸送層140の上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような方法を用いて発光層(EML)150を形成しうる。真空蒸着法及びスピンコーティング法により発光層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0042】
前記発光層150は、1つの化合物を含むか、ホストとドープ剤との組合わせを含むことができる。ホストの例としては、Alq
3、CBP(4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル)、PVK(ポリ(n−ビニルカルバゾール))、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(ADN)、TCTA、TPBI(1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(1,3,5−tris(N−phenylbenzimidazole−2−yl)benzene))、TBADN(3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン)、E3、DSA(ジスチリルアリーレン)、ADN、ビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾレート)ジンク(Bis(2−(2−hydroxyphenyl)benzothiazolate)zinc:Zn(BTZ)
2)、下記化合物1、下記化合物2を使用しうるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
一方、赤色ドープ剤としてPtOEP、Ir(piq)
3、Btp
2Ir(acac)などを利用しうるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
また、緑色ドープ剤として、Ir(ppy)
3(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)
2(acac)、Ir(mpyp)
3、または下記化合物3を利用しうるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
一方、青色ドープ剤として、F
2Irpic、(F
2ppy)
2Ir(tmd)、Ir(dfppz)
3、ter−フルオレン(fluorene)、4,4’−ビス(4−ジフェニルアミノスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(TBPe)、下記化合物4などを利用しうるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
ドープ剤とホストとを共に使用する場合、ドープ剤のドーピング濃度は、特に制限されないが、通常ホスト100重量部を基準として前記ドープ剤の含量は0.01〜15重量部である。
【0051】
前記発光層150の厚さは、約100Åないし1000Å、例えば、200Åないし600Åでありうる。前記発光層150の厚さが前述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに優秀な発光特性を示すことができる。
【0052】
発光層150の形成に燐光ドープ剤をさらに使用する場合には、三重項励起子または正孔の電子輸送層への拡散現象を防止するために、真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような方法を用いて前記発光層150上に正孔阻止層(HBL)(
図1には、図示せず)を形成しうる。真空蒸着法及びスピンコーティング法により正孔阻止層を形成する場合、その条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。公知の正孔阻止材料も使用しうるが、その例としては、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体などを挙げられる。
【0053】
前記正孔阻止層の厚さは、約50Åないし1000Å、例えば、100Åないし300Åでありうる。前記正孔阻止層の厚さが前述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに優秀な正孔阻止特性を得る。
【0054】
前記発光層150上に(正孔阻止層を形成したならば、正孔阻止層上に)は、電子輸送層160が備えられている。
【0055】
前記電子輸送層160は、第1物質を含む第1単一層161、前記第1単一層161上に形成され、前記第1物質と第2物質とを含む第1混合層163、前記第1混合層163上に形成され、前記第2物質を含む第2単一層165、前記第2単一層165上に形成され、前記第1物質と前記第2物質とを含む第2混合層167及び前記第2混合層167上に形成され、前記第1物質を含む第3単一層169を含む。前記第1単一層161、第1混合層163、第2単一層165、第2単一層167及び第3単一層169は1つのユニットをなす。
【0056】
前記電子輸送層160は、第1単一層161、第1混合層163、第2単一層165、第2混合層167及び第3単一層169が順次に積層された構造を有するところ、電子の注入と輸送を適切に調節する効果及び正孔阻止効果を同時に有することができる。有機発光素子は、駆動後に経時的に電子または正孔の量が変化することによって、発光領域で生成される励起子の数が次第に減少しうる。その結果、キャリア均衡(carrier balance)が崩れ、これは有機発光素子の寿命低下の一原因になりうる。しかし、前述したような構造を有する電子輸送層160は、類似または同じエネルギーレベルを有する複数層(第1単一層161、第1混合層163、第2単一層165、第2混合層167及び第3単一層169)が積層されており、電子の移動速度を調節しつつ、キャリアの流れを一定に維持させうる。これにより、有機発光素子の寿命が向上しうる。
【0057】
前記第1物質は、電子を輸送する役割を行える。これを考慮して、前記第1物質は、アントラセン系物質でありうる。
【0058】
例えば、前記第1物質は、下記化合物5、下記化学式1で表示される化合物、及び下記化学式2で表示される化合物からなる群から選択されうる:
【0060】
前記化学式1及び2のうち、
R
1ないしR
6は、互いに独立して、水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、置換または非置換のC
1−C
30アルキル基、置換または非置換のC
1−C
30アルコキシ基、置換または非置換のC
1−C
30アシル基、置換または非置換のC
2−C
30アルケニル基、置換または非置換のC
2−C
30アルキニル基、置換または非置換のC
6−C
30アリール基、または置換または非置換のC
3−C
30ヘテロアリール基であり、そのうち、隣接した2つ以上は互いに結合して飽和または不飽和環を形成し、
L
1は、単一結合、置換または非置換のC
1−C
30アルキレン基、置換または非置換のC
6−C
30アリーレン基または置換または非置換のC
3−C
30ヘテロアリーレン基であり、
Q
1ないしQ
9は、互いに独立して、水素、置換または非置換のC
6−C
30アリール基または置換または非置換のC
3−C
30ヘテロアリール基であり、
aは、1ないし10の整数である。
【0061】
例えば、前記R
1ないしR
6は、互いに独立して、水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジニル基及びピラジニル基からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
具体的に、前記化学式1のうち、R
1ないしR
4は、水素であり、前記化学式1のうち、R
5は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジニル基及びピラジニル基からなる群から選択されうる。また、前記化学式2のうち、R
1ないしR
6は水素であるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
例えば、前記Q
1ないしQ
9は互いに独立して、水素、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジニル基及びピラジニル基からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
具体的に、前記化学式1及び2のうち、Q
1、Q
3−Q
6、Q
8及びQ
9は水素であり、Q
2及びQ
7は、互いに独立して、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジニル基及びピラジニル基からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
例えば、前記L
1は、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ピリジニレン基及びピラジニレン基からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。具体的に、前記L
1はフェニレン基またはピリジニレン基でありうる。
【0066】
例えば、前記aは、1、2,または3であるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
前記第1物質は、前記化合物5、下記化合物6または下記化合物7でありうる:
【0069】
前記第2物質は、電子を注入して正孔を阻止する役割を果たす。これを考慮して、前記第2物質はL
i錯体でありうる。
【0070】
例えば、前記第2物質は、リチウムキノラート(LithiumQuinolate(LiQ))、下記化合物8であるが、これに限定されるものではない:
【0072】
前記第1単一層161、第2単一層165及び第3単一層169の厚さは、互いに独立して、0.5nmないし10nm、例えば0.5nmないし6nmでありうる。前記第1単一層161、第2単一層165及び第3単一層169が前記厚さ範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに電子を効果的に注入及び輸送しうる。前記第1単一層161、第2単一層165及び第3単一層169の厚さは互いに同一か、異なりうる。
【0073】
前記第1混合層163及び第2混合層167の厚さは、互いに独立して、6nmないし16nm、例えば、6nmないし10nmでありうる。前記第1混合層163及び第2混合層167が前記厚さ範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに電子を効果的に注入及び輸送しうる。前記第1混合層163及び第2混合層167の厚さは互いに同一か、異なりうる。
【0074】
前記第1混合層163のうち、第2物質の含量は、第1混合層163 100重量部当り30重量部ないし70重量部、例えば、45重量部ないし55重量部であり得る。また、第2混合層167のうち、第2物質の含量は、第2混合層167 100重量部当り30重量部ないし70重量部、例えば、45重量部ないし55重量部であり得る。第1混合層163及び第2混合層167のうち、第2物質の含量が前述した範囲を満たすならば、優秀な効率を得る。
【0075】
前記電子輸送層160は、真空蒸着法、またはスピンコーティング法、キャスト法などの多様な方法を用いて形成しうる。真空蒸着法及びスピンコーティング法により電子輸送層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択されうる。
【0076】
前記電子輸送層160を蒸着法を用いて形成する場合、電子輸送層160は、第1蒸着領域に第1物質を放出する第1蒸着源、及び第2蒸着領域に第2物質を放出する第2蒸着源を準備する段階、前記第1蒸着領域と前記第2蒸着領域とが互いに重畳する第1重複領域が設定されるように、前記第1蒸着源と前記第2蒸着源とを所定間隔に離隔して配する段階、及び前記第1蒸着源と前記第2蒸着源とを発光層150(正孔阻止層を形成したならば、正孔阻止層の上部)の第1末端から第2末端を経て再び第1末端まで往復させる段階を行うことによって形成されうる。
【0077】
図3Aないし
図3Gは、電子輸送層160を発光層150の上部に形成する方法の一具現例を順次に示す図面である。
図3Aないし
図3Gにおいて、発光層150のうち、電子輸送層160が形成されていない一面には、基板110、第1電極120、正孔注入層130及び正孔輸送層140が形成されているが、
図3Aないし
図3Gでは、便宜上、図示していない。
【0078】
図3Aにおいて、発光層150の一面(すなわち、正孔注入層130及び正孔輸送層140が形成されていない一面)の下部には、第1蒸着源300及び第2蒸着源400が配置されうる。前記第1蒸着源300は、前記第1物質を放出する蒸着源であり、第2蒸着源400は、前記第2物質を放出する蒸着源でありうる。前記第1蒸着源300によって第1物質が放出される領域C1及び第2蒸着源400によって第2物質が放出される領域C2は、
図3Aに示されたように、所定角度を有する扇形を有することができる。
【0079】
一方、前記第1蒸着源300と前記第2蒸着源400は、前記第1物質が放出される領域C1と前記第2物質が放出される領域C2とが互いに重畳される領域が形成されるように、所定間隔に配する。これにより、後述する
図3Bのように、前記第1物質と第2物質とが同時に積層されて第1物質と第2物質とをいずれも含んだ混合層が形成されうる。
【0080】
前記第1蒸着源300及び前記第2蒸着源400は、ベース350に配設され、ベース350はチャンバ内に配設されているガイドレール340上に置かれて、このガイドレール340に沿って往復動可能に備えられうる。したがって、ベース350は、別途の駆動部(図示せず)と連結されて駆動されうる。
【0081】
前述したように所定間隔に離隔された第1蒸着源300と第2蒸着源400とが配設されたベース350は、
図3Aに示されたように、第1蒸着源300と第2蒸着源400とがオン状態で、発光層150下部の第1末端AからB方向に移動しうる。この際、第1物質のみが、先に発光層150に蒸着されて第1物質を含む第1単一層161(D1参照)が形成され始める。第1単一層161は、ベース350がB方向に移動することによって、発光層150の他面に延び続けて蒸着される。
【0082】
この後、
図3Bのように、第1蒸着源300と第2蒸着源400とが配設されたベース350がB方向に移動し続ければ、第1物質と第2物質とが同時に蒸着される領域(D2参照)が形成され、第1物質を含む第1単一層161の下部に第1物質と第2物質とを含む第1混合層163が形成され始める。第1混合層163は、ベース350がB方向に移動することによって、発光層150の他面に延び続けて蒸着される。
【0083】
次いで、
図3Cのように、第1蒸着源300と第2蒸着源400が配設されたベース350がB方向に再び移動し続ければ、第2物質−含有層165’が前記第1混合層163の下部に形成され始める(D3参照)。
【0084】
引続き、第1蒸着源300と第2蒸着源400とが配設されたベース350がB方向に移動し続けて発光層150下部の第2末端Eに到着すれば、
図3Dのように、発光層150下部に第1物質を含む第1単一層161、第1物質及び第2物質を含む第1混合層163及び第2物質−含有層165’が形成されうる。
【0085】
次いで、発光層150下部の第2末端Eに到着したベース350は、
図3Eのように、進行方向を変えて、B方向とは反対であるF方向に移動し始める。ここで、
図3Eに図示されたように第2物質−含有層165”が初めに形成され始める。
【0086】
次に、ベース350がF方向に移動しつつ、
図3Fに示されたように、第2単一層165の下部には、第1物質及び第2物質を含む第2混合層167及び第1物質を含む第3単一層169が順次に形成されうる。この際、第2物質−含有層165’と第2物質−含有層165”は、層構成成分が同一であるために、これら間の界面は、実質的に不明確でありえて、これら層は1つの層として観察されうる。これを考慮して、
図3Fで、第2物質−含有層165’と第2物質−含有層165”との間の界面は実線の代わりに、点線で表示されている。したがって、例えば、第2物質−含有層165’と第2物質−含有層165”は、1つの層、すなわち、第2物質を含む第2単一層165と観察されうるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
その後、第1蒸着源300と第2蒸着源400を含むベース350が発光層150の下部の第1末端Aに到着することによって、
図3Gのように発光層150の下部には第1物質を含む第1単一層161、第1物質及び第2物質を含む第1混合層163、第2物質を含む第2単一層165、第1物質及び第2物質を含む第2混合層167及び第1物質を含む第3単一層169が順次に形成されうる。ここで、第2単一層165は、2層の第2物質−含有層を含むが、これら間の界面S’は不明確なので、
図3Gのように点線で表示されている。
【0088】
前述したような電子輸送層160の形成方法によれば、第1蒸着源300及び第2蒸着源400が配設されたベース350が発光層150下部の第1末端Aを出発して第2末端Eを経て再び第1末端Aに戻ってくる往復1回によって電子輸送層160を形成しうる。すなわち、
図3Aないし
図3Gに図示された多層形成方法は、本発明の一具現例による電子輸送層の1つのユニットを形成する方法の一例でありうる。したがって、積層工程がさらに簡単で速くなって、単一チャンバ内で複数の膜を同時に蒸着するとしても、工程がほぼ同時になされるために、各層の成膜の間にチャンバ内を排気する必要はない。
【0089】
電子輸送層160上には、カソードから電子の注入を容易にする機能を有する物質である電子注入層(EIL)180が積層されうる。前記電子注入層形成材料としては、LiF、NaCl、CsF、Li
2O、BaOのような電子注入層の形成材料として公知された任意の物質を利用しうる。前記電子注入層の蒸着条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0090】
前記電子注入層180の厚さは、約1Åないし100Å、望ましくは、5Åないし90Åでありうる。前記電子注入層の厚さが前述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに満足できるほどの電子注入特性を得る。
【0091】
前記電子注入層180上には、第2電極190が備えられている。前記第2電極190は、電子注入電極であるカソードであるが、前記第2電極形成用の金属としては、低い仕事関数を有する金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を使用しうる。具体例としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などを用いて反射型電極を得る。また、ITO、IZOのような透明な導電性物質を用いて透過型電極または半透過型電極で形成することもできる。
【0092】
前記有機発光素子100の電子輸送層160は、多層構造を有するが、電子輸送層をなす各層間のエネルギーレベルが類似しており、電子の注入と輸送とを適切に調節する効果及び正孔阻止効果を同時に有することができるところ、長寿命を有することができる。
【0093】
図2は、本発明の他の一具現例による有機発光素子200の断面を概略的に示す図面である。
【0094】
前記有機発光素子200は、基板210、第1電極220、正孔注入層230、正孔輸送層240、発光層250、電子輸送層260、電子注入層280及び第2電極290を含む。前記電子輸送層260は、第1ユニット260a及び第2ユニット260bを有する。
【0095】
前記第1ユニット260aは、第1物質を含む第1単一層261a、前記第1単一層261a上に形成され、前記第1物質と第2物質とを含む第1混合層263a、前記第1混合層263a上に形成され、前記第2物質を含む第2単一層265a、前記第2単一層265a上に形成され、前記第1物質と前記第2物質とを含む第2混合層267a及び前記第2混合層267a上に形成され、前記第1物質を含む第3単一層269aを含む。
【0096】
前記第2ユニット260bは、第1物質を含む第4単一層261b、前記第4単一層261b上に形成され、前記第1物質と第2物質とを含む第3混合層263b、前記第3混合層263b上に形成され、前記第2物質を含む第5単一層265b、前記第5単一層265a上に形成され、前記第1物質と前記第2物質とを含む第4混合層267b及び前記第4混合層267b上に形成され、前記第1物質を含む第6単一層269bを含む。
【0097】
前記電子輸送層260は、前述したような構造を有するところ、電子輸送層260をなす各層間のエネルギーレベルが類似しており、電子の注入と輸送とを適切に調節する効果及び正孔阻止効果を同時に有することができるところ、長寿命を有することができる。
【0098】
前記電子輸送層260の第1ユニット260a及び第2ユニット260bに含まれた各層についての詳細な説明は、前記
図1についての説明を参照する。
【0099】
前記電子輸送層260は、2個のユニットを含むので、例えば、
図3Aないし
図3Gに図示されている多層形成方法を2回反復することによって形成しうる。すなわち、第1蒸着源300及び第2蒸着源400をガイドレール340に沿って2回往復させることによって電子輸送層260を形成しうる。
【0100】
図3Aないし
図3Gに示されている多層形成方法を2回反復することによって電子輸送層260を形成する場合、前記第3単一層269a及び前記第4単一層261b間の界面は不明確であって、第3単一層269a及び第4単一層261bは実質的に1つの層として観察されうる。したがって、
図2において、第3単一層269a及び前記第4単一層261b間の界面は点線で表示されている。これは、ベース350の移動方向を変えて第2物質−含有層165’形成直後、第2物質−含有層165”がその下部に形成されることによって、第2物質−含有層165’と第2物質−含有層165”との間の界面が不明確であって、これらが1つの第3単一層165と観察されるような原理である。前記第3単一層269a及び前記第4単一層261bが実質的に1つの層として観察されうるということは、
図3E、
図3F及び
図3Gを参照して容易に認識されうる。
【0101】
一方、
図3Aないし
図3Gに図示されている多層形成方法を2回反復することによって、電子輸送層260を形成する場合、前記第2単一層265a及び前記第5単一層265b各々は2個の第2物質−含有層を含むことができる。前記2層の第2物質−含有層間の界面は不明確であって、前記第2単一層265a及び前記第5単一層265bは実質的に1つの層として観察されうる。
【0102】
有機発光素子200の基板210、第1電極220、正孔注入層230、正孔輸送層240、発光層250、電子注入層280についての詳細な説明は、前記
図1についての説明を参照する。
【0103】
本発明の一具現例による有機発光素子の構造及び製造方法は、
図1、
図2、
図3Aないし
図3Gを参照して説明したが、これらに限定されず、多様な変形例が可能である。例えば、本発明の他の一具現例による有機発光素子の電子輸送層は、3つ以上のユニットを含むことができるなど、多様な変形例が可能である。
【0104】
本明細書において、“A層がB層(またはB面)上に形成される”または“A層がB層(またはB面)上に備えられる”という表現は、A層がB層(またはB面)の一部以上を覆うように形成されている構造を説明するための表現であって、これはA層とB層との間に他の層がさらに形成されている構造及びA層がB層と接触する構造をいずれも示す表現であり、これは当業者ならば容易に理解できるものである。
【0105】
一方、
図1及び
図2には、図示していないが、第2電極の上部には、有機発光素子の密封のための公知された構造の密封層がさらに備えられうるなど、多様な変形例が可能である。
【0106】
以下、実施例を挙げて、本発明の一具現例による有機発光素子について、さらに具体的に説明するが、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例]
【0107】
(実施例1)
コーニング社(Corning)の15Ω/cm
2(1200Å)ITO(第1電極)が備えられたガラス基板を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断し、イソプロピルアルコールと純水とで各々5分間超音波洗浄した後、30分間UVオゾン洗浄して使用した。前記ITO電極上にm−MTDATAを真空蒸着して750Å厚さの正孔注入層を形成した後、前記正孔注入層の上部にα−NPDを真空蒸着して150Å厚さの正孔輸送層を形成した。前記正孔輸送層の上部にホストとしてZn(BTZ)
2を92重量%、ドープ剤としてIr(piq)
3を8重量%使用して300Å厚さの赤色発光層を形成した。
【0108】
その後、
図3Aないし
図3Gで説明された方法を、第1物質として化合物7、及び第2物質としてLiQを用いて2回実行(すなわち、蒸着源往復2回)して、
−化合物7の第1単一層5Å;
−化合物7+LiQの第1混合層82Å;
−LiQの第2単一層10Å(
図3D及び
図3Eでの参照番号165’及び165”のように5ÅのLiQ層が順次に2回形成されるが、
図3Gのように界面S’は実質的に区分されないことがあるので、10ÅLiQ層として観察される);
−化合物7+LiQの第2混合層82Å;
−化合物7の第3単一層5Å及び化合物7の第4単一層5Å(前記第3単一層及び前記第4単一層間の界面は実質的に不明確であって、10Å厚さの層(化合物7からなる)が観察されうる);
−化合物7+LiQの第3混合層82Å;
−LiQの第5単一層10Å(
図3D及び
図3Eでの参照番号165’及び165”のように5ÅのLiQ層が順次に2回形成されるが、
図3Gのように界面S’は実質的に区分されないことがあるので、10ÅLiQ層として観察される);
−化合物7+LiQの第4混合層82Å;及び
−化合物7の第6単一層5Å;
からなる電子輸送層を形成した。前記電子輸送層の上部にLiFを真空蒸着して80Å厚さの電子注入層を形成した後、Alを真空蒸着して1000Å厚さの第2電極を形成した。
【0109】
(比較例A)
前記赤色発光層の上部に化合物7とLiQとを1:1で共蒸着して、37nm厚さの電子輸送層を形成したという点を除いては、前記実施例1と同じ方法を用いて有機発光素子を製造した。
【0110】
(実施例2)
ホストとして化合物1を97重量%、ドープ剤として化合物3を3重量%使用して緑色発光層を形成したという点を除いては、実施例1と同じ方法を用いて有機発光素子を製造した。
【0111】
(比較例B)
前記緑色発光層の上部に化合物7とLiQとを1:1で共蒸着して、37nm厚さの電子輸送層を形成したという点を除いては、前記実施例2と同じ方法を用いて有機発光素子を製造した。
【0112】
(実施例3)
ホストとして化合物2を95重量%、ドープ剤として化合物4を5重量%使用して、青色発光層を形成したという点を除いては、実施例1と同じ方法を用いて有機発光素子を製造した。
【0113】
(比較例C)
前記青色発光層の上部に化合物7とLiQとを1:1で共蒸着して、37nm厚さの電子輸送層を形成したという点を除いては、前記実施例3と同じ方法を用いて有機発光素子を製造した。
【0114】
(評価例1)
前記実施例1、2及び3の有機発光素子及び比較例A、B及びCの有機発光素子の輝度を経時的に測定して
図4、
図5及び
図6に示した。
図4、
図5及び
図6のy軸は、0時間である時の輝度を100%とした輝度比(%)である。輝度は、PR650(Spectroscan) Source Measurement Unit.(PhotoResearch社製)を用いて評価した。
図4、
図5及び
図6から実施例1、2及び3の有機発光素子は、優秀な寿命特性を有するということを確認した。