【実施例】
【0061】
以下の実施例は本発明の実施態様を例示するために提供されるが、本発明の範囲を限定するものとして見なされるべきではない。
【0062】
実施例1 アッセイ方法
いくつかの十分に特徴づけられた方法は、本発明者らの液体処方物中のインターフェロンβの物理化学的特性を決定するために用いられ、そしてこれらの方法は、同様に、他のインターフェロンの特性をモニターするために使用され得る。
【0063】
不溶性凝集体の存在/非存在を、320nmで吸収を、および580nmで透過度を測定することによってモニターする。可溶性タンパク質の濃度を、標準である処方緩衝液中にスパイクされたインターフェロンβの公知の濃度を使用して、278-280nm(1.5の吸光係数を使用して)の吸光度の測定かまたは逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によるかのいずれかによって決定する。液体処方物サンプルを、アッセイする前に遠心分離する。この可溶性凝集体のパーセンテージを、TSK-Gel(登録商標)G2000SWXLカラム(Toso Haas, Montgomeryville, PA)においてサイズ排除クロマトグラフィーによりインターフェロンβモノマーから凝集体を分離することにより決定する。280nmでモニターされたピーク面積を、パーセンテージ可溶性凝集体を計算するために使用する。
【0064】
ペプチド骨格の安定性を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により確認する。インターフェロンβを、10〜20%勾配ゲル(MiniPlusSepragel(登録商標),Integrated Separation Systems, Natick, MA)において電気泳動に供する前に、ドデシル硫酸ナトリウムの存在下で、メルカプトエタノールを使用して還元する。次いで、このタンパク質をニトロセルロース膜へ電気泳動的に移動し、そして西洋ワサビと結合体化した抗インターフェロンβ抗体およびヤギ抗マウス抗体を使用して免疫検出法により展開する。例えば、GelElectrophoresis of Proteins, A Practical Approach、第2編、B.D. Hames and D.Rickwood, IRL Pressを参照のこと。
【0065】
脱アミド化および他の化学変化により生じる正味の表面電荷の変化は、ポリアクリルアミドゲル(IEF3-10 MiniPlus Sepragel(登録商標), Integrated Separation Systems)上で等電点電気泳動によりモニターする。GelElectrophoresis of Proteins, A Practical Approach(前出)を参照のこと。
【0066】
メチオニン酸化、アスパラギン脱アミド化、および他の可能性のある化学変化をまた、ペプチドマッピングによりモニターする。インターフェロンβを、ジチオスレイトールの存在下でエンドプロテアーゼ Lys-C(Wako Pure Chemicals)を使用して消化し、生じるペプチドフラグメントを逆相HPLCにより分離する。一般には、Kalgahtgi,K.およびHorvath,C.「高性能液体クロマトグラフィーによる迅速ペプチドマッピング」、J. Chromatography 443,343〜354 (1988)を参照のこと。
【0067】
N-連結オリゴ糖のプロフィールを、Glyko, Inc.(Novato, CA)による発蛍光団補助炭水化物電気泳動(FluorecenceAssisted Carbohydrate Electrophoresis)(FACE(登録商標))システム使用して決定する。アスパラギン連結(N-連結)オリゴ糖を、酵素ペプチドN-グリコシダーゼFを使用して、糖タンパク質から放出し、次いで、還元性アミノ化により還元末端で蛍光団で標識し、分離し、次いでポリアクリルアミンドゲル上で定量する。
【0068】
インターフェロンの抗ウイルス活性を、W.E.Stewart II, TheInterferon System, Springer-Verlag(第2編、1981)により十分に記載されるような多数の方法により決定する。細胞変性効果抑制アッセイ(CPE)は、インターフェロン抗ウイルス活性を決定するために特に有用である。本発明者らの特に好ましい方法は、WHOTechnical Report Series No. 725, Annex 1, (1985)(本明細書中に参考として援用される)に記載される。手短にいうと、このCPE法は、以前にWHO参照標準に対して較正されたインターフェロンβ標準の作業ストック(workingstock)を調製することにより開始される。このストックを、10%仔ウシ血清および1mlあたり10,000ユニット(U)の濃度で4mMのL-グルタミンを含むD-MEM+培地中で調製する。アッセイの日に、標準、コントロールおよびサンプルを、3種類の異なる一連の希釈:a)32U/mlで開始し、その後2倍に希釈;b)12U/mlで開始し、その後1.5倍に希釈;およびc)6U/mlで開始し、その後1.2倍に希釈;において、DMEM+に希釈する。希釈物の50μlを96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに対して、希釈列あたり1プレートで、縦列に添加する。次いで、D-MEM+中のA549細胞(ATCCカタログ番号 CCL-185,Rockville, MD)細胞を、ウェルあたり50μlで、5×10
5細胞/mlにて各ウェルに添加し、細胞とインターフェロンβの両方の2倍希釈を達成する。この細胞およびインターフェロンを、15〜20時間の間、5%の二酸化炭素中で、37℃で培養する。このプレート内容物を脱色用バケツ中に振盪してそして培地中の適切な希釈で100μlのEMC(脳心筋炎)ウイルスを各ウェルに添加する。このウイルスと細胞を、30時間、5%の二酸化炭素中で、37℃で培養する。このプレート内容物を脱色用バケツ中で振盪して、そして0.75%の結晶紫色素をこのプレートへ添加する。5から10分後、このプレートを滅菌水で洗浄して、そして乾燥させる。各アッセイプレートは、インターフェロンもEMCもいずれも含まない細胞増殖コントロールウェル、EMCおよび細胞は含むがインターフェロンを含まないウイルスコントロールウェル、ならびにインターフェロン標準の希釈列を含有する。プレートを、生存可能な細胞(25%を超えるコンフルエント紫染色)を有する各カラム中の最後のウェルを決定するために視覚的に試験する。この検出限界は、ウイルス細胞傷害性から防御する標準の最も低濃度として決定する。最後の陽性ウェル中のサンプル希釈を、サンプル中のインターフェロン活動度(MU/ml)を得るために標準について決定される検出限界、およびサンプル希釈因子により乗算する。各プレートからの結果は、幾何学的な手段の決定および95%の信頼区間の計算の決定のためにログ単位へ変えられる。
【0069】
実施例2:緩衝液系の選択
本発明者らは、各セットにつき9および10個の間の異なる成分を含む3セットの緩衝液を調製した。セットIは、pH4.0〜7.2の間で一連のリン酸ナトリウム溶液、および/または100mM塩化ナトリウム溶液を含む。セットIIは、pH4.0〜7.0の間でさらに一連のクエン酸ナトリウム緩衝液を含む。セットIIIは、一連のコハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウム緩衝液溶液を含み、全てを100mM塩化ナトリウムと合わせ、これは4.0〜7.2の範囲のpH値を有する。2つの他の溶液は、pH4.0〜7.2で塩化ナトリウムを50mM硫酸ナトリウムで置き換えた。
【0070】
融解した、バルクインターフェロンβを異なる緩衝液中で、2〜8℃で少なくとも2回緩衝液を交換して一晩透析し、次いで、使用前に濾過滅菌する。タンパク質濃度は、278nmでの吸光度によって決定する(1.5mg
−1ml.cm
−1の吸光係数を用いて)。そして全てのサンプルは140μg/mlまたは150μg/mlのインターフェロンβ含んだ。サンプルを濾過し、そして部分的に2.2mlのエッペンドルフチューブに詰めて4つのセットに分割する。1セットは2〜8℃に静置する;1つのセットは37℃に6日から2週間静置した;別のセットは7〜9時間ローテータ上に配置する;そして最後のセットは0時間目のコントロールとして用いる。不溶性凝集体に起因するタンパク質の損失の割合は、種々の処置の間のタンパク質濃度の損失を開始時の濃度で除することによって算出する。
【0071】
結果:
不溶性凝集体によるタンパク質損失の割合はタンパク質濃度の損失を出発タンパク質濃度で除することによって算出する。全てのデータの統計的分析は、pH4.0および5.0の緩衝液中のインターフェロンサンプルが、より高いpHのサンプルより、凝集に起因するより低い割合のタンパク質の損失を有することを示した。37℃で、かつpH4.0および5.0でインキュベートしたインターフェロンサンプルは、凝集に起因して約10%〜15%の間で損失していた。6.0よりも大きなpH値で、損失は40〜50%まで増加した。本発明者らはまた、6.0よりも大きなpH値で、インターフェロンサンプルがより可溶性の凝集体を有することを決定した。さらに、本発明者らはペプチドマッピングによってpHが4.0から7.2に増加するにつれて、脱アミド化されたインターフェロン量が、実質的に直線状に増加することを決定した;pH7.0以上で、85%より多くのインターフェロンが研究中に脱アミド化される。本発
明者らは、サンプル中のタンパク質種の等電点(pI)(すなわち、タンパク質が電場中で移動せず、そしてタンパク質の平均荷電が0であるpH)を、IEF/ウエスタンブロットで測定した。そしてブロットは、クエン酸ナトリウム中でのサンプルについてさらなるpIバンド、およびコハク酸ナトリウム中のサンプルについてバンド強度の移動を示す。リン酸塩はpH5.0では緩衝能を有さない。pH5.0での塩化ナトリウムを有する酢酸ナトリウムはバンドのパターンまたは強度に変化を示さなかった。
【0072】
実施例3:空洞化の効果
実施例2に記載されるpHスクリーニング実験の間、本発明者らは保存チューブの頭部空間がサンプルのいくらかのタンパク質の損失に重要であるようなことに気付いた。2.2ml容積チューブ中の1.5mlのサンプルには、タンパク質の損失は観察されなかった。反対に、1.2mlのサンプルでは凝集体の有意な増加が生じた。これは、精製プロセスのウイルス不活化工程の間の凝集したインターフェロンβの形成が、この工程の間の溶存酸素のレベルに依存する、という本発明者らの観察と一致している。
【0073】
簡単には、ウイルス不活化工程は、キレート化Sepharose溶出液(C章を参照のこと)のpHを7.85+/-0.25から、15%リン酸を用いて2.5〜3.5の間に調整する工程、酸性化した溶出液を120〜135分間保持する工程、そして次に0.5Nの水酸化ナトリウムを用いてpHを6.7+/-0.7に再び調整する工程を包含する。全ての工程を2〜8℃で行う。本発明者らは、この工程中のインターフェロンβ凝集体の形成と溶存酸素の量との間に関連性が存在するかどうかを決定するための研究を設計した。
【0074】
材料および方法
キレート化Sepharoseカラムからの溶出液を50mlまたは100mlのアリコートに分割し、100mlの撹拌フラスコ中に入れる。各フラスコに、1mlのアルゴン散布(argon-sparged)15%リン酸を添加する。次いでフラスコを約2分間、穏やかに撹拌し、そして撹拌せずに約2時間の間2〜8℃で維持する。この維持時間の後、6.5mlのアルゴン散布水酸化ナトリウムを添加し、そして種々の時点でサンプルをサイズ排除クロマトグラフィーによってアッセイする。液体中の溶存酸素を酸素プローブ(Orion、Model860)で連続的に測定し、そして塩基を添加した時点で記録した。10%以下の溶存酸素のレベルを有するサンプルについて、反応容器の頭部空間からアルゴンガスを一掃する。
【0075】
結果:水酸化ナトリウムを添加した時点で存在する溶存酸素の量とウイルス不活化工程を介したインターフェロンβモノマーの収量との間の明らかな関連性を示すデータを、
図1に提示する。10%以下での溶存酸素濃度で得られた収量値は、他の酸素濃度での他の全ての収量とは有意に異なる。本発明者らはまた、凝集体(データはここに示さない)を特徴付け、そしてその比活性はバルク中間体から約30〜40倍が減少することを決定した。本発明者らはまた、約90%の凝集体が非還元条件下でSDS変性に耐性であることを決定し、これは共有架橋結合を示唆する。還元条件下(2%βメルカプトメタノール)で、凝集体はモノマーに崩壊し、これはジスルフィルド結合を含む架橋結合を示唆する。
【0076】
実施例4:賦形剤の選択
異なる賦形剤を含む一連のインターフェロンβ(60μg/ml)処方物を、50mM 酢酸ナトリウムおよび100mM塩化ナトリウムを含む、好ましいpH5.0の緩衝液中で調製する。賦形剤は、グリシン、アルギニン-HCl、リジン-HCl、スクロース、グリセリン、PEG3350、グルタチオンおよびPluronicF-68を含む。インターフェロンβバルク中間体を、50mM 酢酸ナトリウムおよび100mM塩化ナトリウム、pH5.0の中で2〜8℃で少なくとも2回緩衝液を交換して一晩透析し、次いで使用前に濾過する。インターフェロンβ濃度は、バックグラウンドを引いた278nmでの吸光度によって決定する。全てのサンプルを、約60μg/mlのインターフェロン最終濃度まで希釈する。全ての調製したサンプルを濾過し、2mlを4mlガラスバイアル(シリコーン製ではないもの)に移し、頭部空間にアルゴンを散布し、そしてこのバイアルを封着する。サンプルのセットを2〜8℃および37℃に2週間までの期間設置する。他のサンプルは室温で3日間回転させることによって、機械的に応力をかける。
【0077】
サンプルは実施例1の手順に従って分析する。さらに、処方物の溶存酸素の割合をCiba-CorningModel 248血液ガス分析機によって測定する。「実験」値は、サンプルの酸素分圧(mm Hg)−窒素をパージした緩衝液ブランクの分圧、そして「コントロール」値は、室温に保存した緩衝液ブランク中の酸素分圧−窒素をパージした緩衝液ブランクの酸素分圧である。溶存酸素の割合(「実験」/「コントロール」)は常に30%未満である。
【0078】
結果:
37℃で2週間インキュベートしたサンプルのIEF/ウエスタンブロットおよびSDS-PAGE/ウエスタンブロットは、バンド移動および強度の減少ならびにPEG3350およびグルタチオンを含むサンプル中のインターフェロンマルチマーの存在を示す。さらに1週間37℃の後、グリシン賦形剤は、本発明者らのブロットに、1本余分なバンドを示す。スクロース賦形剤はバンド強度の損失を示す。この初期スクリーニング手順は、さらなる研究のために、アルギニン-HCl、グリシン、塩化ナトリウムおよびマンニトールをより詳細に考察することを可能にした。
【0079】
実施例5:インターフェロンの吸着
溶解したバルクインターフェロンβを2〜8℃で一晩少なくとも2回緩衝液を交換して、BG9589-1、2、3および4で透析(表1を参照のこと)し、次いで使用前に濾過する。タンパク質濃度を280nmでの吸光度(1.5mg
−1ml.cm
−1吸光係数)によって決定する。全てのサンプルを、約60μg/mlの最終濃度まで希釈する。希釈したサンプルを濾過し、そして頭部空間に窒素を流入させた3連の1.0ml長のシリコーンを吹き付けたBDシリンジ(I型ガラス)に0.5ml、または頭部空間にアルゴンを流入させた3連の0.75mlI型ガラスバイアルに0.75mlのいずれかに満たす。タンパク質濃度を逆相HPLC(実施例1)によって決定する。
【0080】
結果:
以下の表3は逆相HPLCによって決定したタンパク質濃度を列挙する。データは、ガラスバイアルに満たされたサンプルについてのタンパク質が、シリコーンでコートした予め詰めたシリンジに比較して、より少ないことを示す。従って、シリコーン化したシリンジがインターフェロンβの液体処方物のために用いられる。
【0081】
【表3】
【0082】
。
【0083】
実施例6.生理学的pHでの処方物
イオン強度/リン酸塩。本発明者らは、緩衝液成分濃度を変化させるための、リン酸塩/塩化ナトリウム(pH7.2)緩衝液系中で最初の実験を行った。ここでリン酸濃度は10、50、および75mMの間で変化し、塩化ナトリウムの添加によって調節された0.2、0.4、および0.6のイオン強度を有する(イオン強度はI=Σc
1z
12によって定義され、ここでc
1およびz
1はそれぞれイオン種Iのモル濃度および原子価電荷である)。
【0084】
本発明者らは、リン酸濃度(10、50、および75mM)およびイオン強度(I=0.2、0.4、および0.6)の変因に対して完全要因設計を用いた。緩衝液中の一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム(所望のイオン強度を達成するため)の組成は、EllisおよびMorrison「Buffersof Constant Ionic Strength for Studying pH-dependent Processes」、MethodsEnzymol.87:405-426(1982)から適合させた表計算を用いて算出する。等式は、特定のpH、リン酸濃度およびイオン強度のための各緩衝液成分の必要量の決定を可能にした。要因実験に用いた9個の溶液の各々を、PharmaciaPD-10脱塩カラムを通したインターフェロンβバルク中間体の緩衝液交換によって得る。全ての得られた溶液のpHは7.20+/-0.15である。濃度は280nmでの吸光度によってアッセイし、次いで適切な緩衝液を用いて150μg/mlインターフェロンβに希釈する。得られた溶液をアルゴン下で0.22ミクロンフィルターで滅菌濾過し、そして1.3mlを、アルゴン頭部空間を有する5mlガラスバイアルにアリコートする。サンプルを37℃で6日間インキュベートし、3連で行う。サンプルは、580nmでの透過率割合、タンパク質回収の割合、そしてIEF-PAGE/ウエスタンブロットによって分析する。
【0085】
結果:
イオン強度の変化に関する透過率割合の分析は、イオン強度が増加するに伴い透過率が増加(すなわち、不溶性タンパク質凝集体の量が減少)する傾向を示す。タンパク質回収割合のデータは類似の傾向を示すけれども、一方IEF-PAGEウエスタンブロットは、全てのサンプルが等しく脱アミド化されるようなイオン強度の変化に伴う脱アミド化の傾向を示さない。従って、37℃での6日間の保存後、サンプルは、リン酸濃度の減少およびイオン強度の増加に伴い、より少ない凝集を示す傾向があった。リン酸濃度の変化の関数としての、透過率割合および回収パーセントにおける実験の結果(ここには示さない)は、リン酸濃度の増加に伴って透過率%を減少させる弱い傾向を示すが、分散分析は、異なるリン酸濃度のサンプル間の平均値において有意差を示さない。回収割合のデータは、より低いリン酸濃度での改良されたタンパク質回収を示す(94%の信頼水準での有意差あり)。IEF-PAGEウエスタンブロットは、リン酸濃度の変化に伴う脱アミド化の識別可能な傾向を示さない。
賦形剤/塩の比。予備研究(示さず)は、いくつかの賦形剤が、高いイオン強度を維持するため、およびpH7.2で安定化効果を示すために塩(例えば塩化ナトリウム)を要求し得ることを示した。本発明者らは、賦形剤(グリシン、リジン、アルギニン、スクロースおよびマンニトール)、および等張性に寄与する塩化ナトリウムの画分(f
塩=0、0.25、0.75および1.0)を用いる要因実験を設計した。画分は以下によって算出した:f
塩=O
塩/(O
塩+O
賦形剤)、ここでO
塩およびO
賦形剤は、溶液中の塩化ナトリウムおよび賦形剤それぞれのmOsm/kgでの重量モル浸透圧濃度である。塩の画分は、異なる賦形剤にわたって塩の効果を比較する手段を提供する。全てのサンプルは、賦形剤:塩の比の変化に伴って、等張性のための添加物を含んだ(f
塩によって定義される)。
【0086】
20mMリン酸塩、pH7.2中の各賦形剤の10%(w/v)ストック溶液を調製し、脱気し、そしてアルゴンを散布する。250mM塩化ナトリウム、20mMリン酸塩、pH7.2のストック溶液を調製し、脱気し、そしてアルゴンを散布する。バルクインターフェロンβ中間物を、pH7.2のアルゴン散布20mMリン酸緩衝液に対して徹底的に透析する。得られた溶液を280nmでの吸光度によってインターフェロンβ濃度についてアッセイし、そしてリン酸緩衝液ならびにそれぞれの賦形剤および塩のストック溶液で希釈し、60μg/mlインターフェロンβならびに所望の最終的な塩の状態および最終的な賦形剤の状態を達成する。得られたサンプルを濾過滅菌(0.22ミクロン)し、そして窒素頭部空間を有する1.0mlBecton Dickinsonシリコーンスプレー化I型ガラスシリンジ(全容量0.5ml)に満たす。サンプルを40℃で保存する。
【0087】
6日目に、アルギニンサンプル、グリシンサンプル、およびスクロースサンプルを、0.22ミクロンフィルターを通す濾過前後両方で、320nmおよび280nmでの吸光度によって分析する。2週間目にアルギニン、リジン、およびマンニトールを同様に、IEF-PAGE、還元型SDS-PAGEおよび非還元型SDS-PAGEと共に分析する。コントロールサンプルは2〜8℃の間で保存し、そして同様に分析した。
【0088】
結果:
インターフェロンβ1a(コントロールのパーセントとして)の回収率は、スクロースおよびマンニトールに関してのf
塩が増加するにつれて増加し、f
塩=1(130mM塩化ナトリウム)で最大回収率に達する。アルギニンおよびリジンに関しては、f
塩が増加するにつれて回収率は減少する。pH7.2でのグリシン処方物に関する最大回収率は、約f
塩=0.75にて到達する。
【0089】
例えば、等張性になるまで加えた、グリシン、リジン、アルギニン、マンニトールおよびスクロースのような種々の賦形剤を伴うpH 7.2のリン酸緩衝液を用いる、この賦形剤スクリーニング研究により、全ての非荷電性賦形剤に関して乏しい回収率が示された。脱アミド化の程度は、これらの添加剤の影響を受けなかった。例えば、還元型SDS/PAGEおよび非還元型SDS/PAGEは、全ての処方物中の非グリコシル化インターフェロンβ種の損失を示し、そして等張性塩化ナトリウム単独およびマンニトールに関しては、より大きなマルチマーバンドを示す。つまり、従って、賦形剤のイオン特性と、生理学的pHでのこれらの緩衝液系における凝集に対してインターフェロンβを安定化させるその能力との間に高い相関が存在する。スクロースおよびマンニトールのような非イオン性添加剤は、防御を何ら提供しないようであるか、または生理学的pHでのタンパク質損失を実際に促進し得る。塩化ナトリウムは、可溶性種あたり単一の電荷を有し、マンニトールまたはスクロースのいずれよりも良好に機能する。アミノ酸は、生理学的pHで1分子あたり2つの電荷を含む。グリシンの場合では、分子自体の両性イオン性質は、インターフェロンβを安定化させるに充分ではないようである。アルギニンおよびリジンは、各々が1分子あたり3つの荷電を含み、塩化ナトリウム単独の処方物またはグリシン/塩化ナトリウム処方物のいずれよりも良好にインターフェロンβを安定化させる。
【0090】
実施例7:安定性および速度論研究
処方物を、不活環境下で無菌で充填し、シリンジを種々の時間にわたってある範囲の温度でインキュベートし、シリンジの内容物を分析した。簡潔には、解凍された大量のインターフェロンβを、BG9589-1、BG9589-2、BG9589-3、およびBG9589-4に対して、少なくとも2回緩衝液を交換して、2〜8℃で一晩透析する。タンパク質濃度を、1.5ml/mg/cmの吸光係数を有する280nmでの吸光度により決定する。全てのサンプルを、最終的なインターフェロンβ-1a濃度が約60μg/mlになるまで希釈する。表1の4つのインターフェロンβ-1a処方物を濾過し、そして0.5mlを、シリンジ内表面が、焼付シリコーンまたは噴霧シリコーンで覆われている、1.0ml長のBectonDickinson(BD)シリンジに分配する。サンプルをOD、サイズ排除HPLC(SEC)、等電点ゲル電気泳動(IEF)/ウェスタンブロット、還元型ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)/ウェスタンブロット、ペプチドマッピング、発蛍光団補助炭水化物電気泳動(FACE)およびCPEバイオアッセイによって分析した。シリンジの頭隙には、窒素ガスが存在する。シリンジを、90日までにわたって、2〜8℃、25℃、33℃、および40℃でインキュベートする。サンプルを、実施例1の方法に従って分析する。
【0091】
結果:
本発明者らは、種々の温度で90日までの期間にわたって、本発明者らのサンプルのタンパク質濃度を分析し、出発物質のタンパク質濃度に対して正規化した。
図2は、BG9589-1が、2〜8℃(平均4℃)から25℃までの範囲の温度で3ヶ月インキュベーションした後に、完全なタンパク質安定性(タンパク質の損失なし)を示したことを説明している。体温に近い保存温度(33℃)では、タンパク質の約18%が、分解した。体温を超える保存温度(40℃)では、3ヶ月の終了時にはタンパク質の約30%が分解した。実質的に同一の結果が、BG9589-2についても得られた(データは示さず)。
図3は、BG9589-3について2ヶ月保存試験の結果を示す。タンパク質分解は、4℃〜25℃での保存の中では最小であったが、より高温では、タンパク質分解は、急速であった。BG9589-4に関する結果は、
図2および
図3の結果と実質的に同一である。これらのデータは、還元型SDS-PAGE/ウェスタンブロットを用いて確認された。
【0092】
「焼付」シリンジでは、この研究の期間にわたって、検出可能な可溶性凝集物は存在しない。タンパク質濃度、CPEアッセイ、酸化AP6パーセント、および炭水化物プロフィールにおいて、有意な変化は認められなかった。還元型SDS-PAGE/ウェスタンブロットおよびIEF/ウェスタンブロットによって見られたような観察可能な変化はサンプル中で存在しなかった。開始時点と比較すると、脱アミド化パーセントに若干の増加が見られた。しかし、これらのシリンジを充填するために用いられた大量の中間体は、37%脱アミド化され、これは、シリンジへ充填後の物質の33.8%の値より高い。この後者の低い値は、アッセイの変動性に起因し得る。「噴霧」シリンジにおいては、この研究の期間にわたってもまた、検出可能な可溶性凝集物が存在しない。タンパク質濃度、CPEアッセイ、脱アミド化パーセント、酸化AP6パーセント、および炭水化物プロフィールにおいて、有意な変化は認められない。還元型SDS-PAGE/ウェスタンブロットおよびIEF/ウェスタンブロットによって見られたような観察可能な変化はサンプル中で存在しない。要約すると、これまでのところ、最終産物BG9589-1が、「焼付シリコーン」シリンジにおいて、3ヶ月まで2〜8℃で安定であり、そして「噴霧シリコーン」シリンジにおいて、6ヶ月まで2〜8℃で安定であるという結果が示された。
【0093】
本発明者らは、シリンジが無菌的に充填された後に、BG9589-1処方物およびBG9589-2処方物についての抗ウイルスCPEアッセイ(表1を参照のこと)を実施した。報告されたBG9589-1およびBG9589-2の両方の活性値は、12.0MU/mlである。抗ウイルスCPEアッセイを、2〜8℃の間で3ヶ月までにわたってサンプルを保存した後に、繰り返した。BG9589-1に関して報告された活性値は、10.2〜13.3MU/mlの95%の信頼区間で11.6 MU/ml(n=8)である。
【0094】
本発明者らはまた、2〜8℃で5ヶ月にわたって、そして-70℃で6ヶ月にわたってBG9589-1の大量の中間体物質の安定性を測定した。予備的なダイアフィルタレーション研究からのBG9589-1のサンプルを、実施例1の方法によって分析した。これまでのところ、BG9589-1の製造過程の物質は、2〜8℃で5ヶ月にわたって、そして70℃で6ヶ月にわたって安定であるという結果が示された。
【0095】
この特定の研究の期間にわたって、検出可能な可溶性凝集物は存在しない。脱アミド化のパーセントおよび炭水化物プロフィールに有意な変化は認められない(脱アミド化パーセントにおける差異は、アッセイの変動性の範囲内である)。還元型SDS-PAGE/ウェスタンブロットおよびIEF/ウェスタンブロットで見られるような検出可能な変化はサンプル中で存在しなかった。タンパク質濃度にわずかな減少が存在する。-70℃でのタンパク質濃度の減少は、1サイクルの凍結/融解を経るサンプルに起因し得る。タンパク質濃度の減少は、依然として最初の濃度の15%内である。
【0096】
実施例8:前臨床研究
ウサギでの筋肉内(IM)の単回用量の局所寛容性研究を実施し、何回か新たな処方物で投与した場合のインターフェロンの局所的毒性を評価する。本発明の液体処方物、または凍結乾燥され再構成されたインターフェロンの投与に起因する注射部位の反応は、通常の生理食塩水の投与後の明らかな反応に匹敵する。
【0097】
1.インターフェロンβの4つの処方物の単回用量のIM投与に続くウサギ刺激/生物利用可能性研究
20匹の雄性ニュージーランドホワイトウサギは、各々、以下の5つの処方物のうち1つについて、インターフェロンβ-1aの30μgの筋肉内(IM)単回注射を受けた:BG9589-1(pH5.0、酢酸緩衝液、アルギニン安定化剤、0.5ml/用量);BG9589-2(pH 5.0、酢酸緩衝液、グリシン/NaCl安定化剤、0.5ml/用量);BG9589-3(pH7.2、リン酸緩衝液、アルギニン安定化剤、0.5ml/用量);BG9589-4(pH 7.2、リン酸緩衝液、グリシン/NaCl安定化剤、0.5ml/用量);および凍結乾燥された、1.5%HSA、1.0ml/用量を含むpH 7.2でのインターフェロンβ処方物(Jacobsら、前出を参照のこと)。
【0098】
4匹の動物を、各処理に供した。BG9589-1を受けた動物または凍結乾燥した処方物を受けた動物もまた、陰性コントロールとして対側の部位に通常の生理食塩水の等容量注射を受けた。血液サンプルを、血清インターフェロンβ活性分析のために投与後72時間の間に採取する。紅斑、瘢痕形成および浮腫に関する肉眼での真皮評価を、投与後6、12、24、48、および72時間に実施する。投与72時間後の血液採取に次いで、動物を屠殺し、注射部位を組織損傷の徴候に関して肉眼で視診する。次いで、10%中性緩衝ホルマリンで固定する。筋肉サンプル(3/注射部位)を、炎症、壊死、出血、および病変について顕微鏡検
査する。
【0099】
結果:
初回刺激指数スコア(EPA真皮分類系)によって類別した場合、上記の液体処方物はい
ずれも、僅かな皮膚刺激より悪くは決定されなかった。1匹の動物でのBG9589-4注射部位の肉眼視診では、僅かな刺激(出血)が示された;しかし、検鏡においては、出血の徴候は全く見られず、そして肉眼での観察により、人工産物であることが決定された。簡潔には、検鏡により、液体処方物試験物質注射部位の反応は、一貫して最小から中等度であること、および凍結乾燥処方物または通常の生理食塩水の投与により誘導される反応より重篤な反応は全く見られなかったことが示される。
【0100】
加えて、液体処方物のIM投与を繰り返した後のウサギ真皮性刺激を、8日間にわたって1日おきに液体処方物または通常の生理食塩水の筋肉内注射を受けるウサギの複数の群を用いて容易に試験し得る(全部で5回の投与)。用量を、各動物の背部の予め規定された領域に、試験物質への局所的曝露が最大になるように投与する。肉眼的真皮評価を、各処置群について、各投与後4〜6時間および最終投与の24時間後に実施する。一日全体の観察を各真皮評価の時間に行う。投与後24時間の肉眼検査の後、動物を屠殺し、注射部位を組織損傷の徴候について検査する。そして組織を10%中性緩衝ホルマリンで固定する。保存された組織を、炎症、壊死、出血、および病変について検鏡する。血液サンプルもまた、最初の試験物質投与の直前に採取し、屠殺時に血液学的評価および血清化学評価を行った。
【0101】
実施例9:臨床研究
本発明の液体処方物は、これまでのインターフェロン処方物とは有意に異なっている。任意の臨床的指標に関して、ヒトに投与した場合、インターフェロンの薬物動態学的および薬力学的挙動における変化の可能性が存在する。不運なことに、インターフェロン-βの活性は、高度に種特異的であり、最も適切な薬理学的情報は、培養ヒト細胞での研究、ヒトでの研究、そしてより少ない程度のアカゲザルでの研究に由来する。薬理学的変化(もしあるならば)に関する、好ましい試験方法は、ヒトとの生物学的等価性(bioequivalence)の試行を実施することである。
【0102】
血清中のインターフェロン-βの抗ウイルスレベルは、例えば、実施例1に記載のような、細胞変性効果(CPE)バイオアッセイを用いて定量化され得る。ヒトとの生物学的等価性の研究を、任意の数の液体インターフェロン処方物および凍結乾燥インターフェロン処方物を用いて実施し得る。血清、曲線の下の面積(AUC)およびC
MAX活性パラメーターの分析を通して、当業者は、凍結乾燥処方物および液体処方物が、生物学的に等価であるか否かを決定し得る。生物学的等価性研究プロトコルの1つの例として、本発明者らは、単回容量交叉二重盲検を簡潔に記載し、健常ボランティアにおける本発明の液体処方物および凍結乾燥インターフェロン-β産物の生物学的等価性を実証する。
【0103】
設計。各被験体は、二重盲検、二期交叉におけるインターフェロン-β処方物の同一の投薬量(例えば、60μg/12MU)を受ける(表4)。被験体の年齢は、18才以上45才以下であり、身長および体格について正常な体重範囲の15%以内である。血液学的、化学的、血清インターフェロン-β活性および薬力学的プロフィールのための血液サンプルを、投与直前、および各投薬後の種々の時間で、投与後144時間を通して採血する。注射疼痛および注射部位反応の評価もまた、行う。
研究の実施。インターフェロンに関連するインフルエンザ症候群に対する予防として、全ての被験体は、投与期の直前および投与期全体を通してアセトアミノフェンを受ける。
【0104】
薬物動態学。
【0105】
血清インターフェロンβ決定。血清レベルを、(CPE)アッセイにより抗ウイルス活性の単位として測定する。血清抗ウイルスレベルをAUC、C
maxおよびT
maxに関して分析する。AUC値を、投与の時点から最後の検出可能なレベルまで(AUC
0-T)および投与の時点から投薬後144時間まで(AUC
0-144)について算出する。処置データの標準的な記述的分析を、SASを用いて実施する(バージョン6.08、SASInstitute、Cary、North Carolina)。
【0106】
【表5】
【0107】
薬力学。生物学的マーカーのネオプトリンは、マクロファージおよびT細胞の活性化(C. Huberら、J Exp Med 1984;160:310〜314;September 20,1996; D. Fuchsら、Immunol.Today 9:150〜155,1988)を反映する、インターフェロンにより誘導された酵素GTPシクロヒドロラーゼの産物であり、これが特徴づけられた。組換えヒトインターフェロンβの非臨床的研究および臨床的研究の両方において、ネオプトリンの誘導は、種々の組換えヒトインターフェロンβ処置の投与後に続く、血清活性レベルに相関する。
【0108】
ネオプトリンを、標準的な実験室手順により測定する。インターフェロンβの薬力学的プロフィールを、3つの血清ネオプトリンパラメーターの算出により定量的様式で記載する。第1のパラメーターであるE
AUCは、ベースラインレベルに対して正規化されたネオプトリン対時間曲線の下の面積である。第2のパラメーターは、E
MAXであり;このパラメーターは、実測されるピークのネオプトリンレベルとベースラインのネオプトリンレベルとの間の差である。第3のパラメーターは、誘導比、IRである;このパラメーターは、ベースラインネオプトリンレベルで除したピークのネオプトリンレベルとして算出される。
【0109】
統計。Wilcoxon-Mann-Whitney両側検定、Wilcoxon-Mann-Whitney片側検定手順を、AUCについて用い、等価性を決定する。凍結乾燥処方物に対する液体処方物からのインターフェロンの相対的生物学的利用性およびその90%信頼限界を評価するために、AUCは、対数に変換した後に、分散分析(ANOVA)を受ける。「被験体間」変動から、順序および性別を分離する。「被験体内」変動から、期間および処置に起因する成分を分離する。
等価物
本発明の他の実施態様および用途は、本明細書中および本明細書中に開示される本発明の実施を考慮することにより、当業者に明らかである。本発明の真の範囲および精神は、以下の請求の範囲により示されており、詳細および実施例は、単なる例示であると考慮されることを意図される。