(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。
図1は本発明に係わる画像形成システムの一実施形態を示し、
図2はそのシステムの一部を構成する製本装置を示す。この製本装置Bには、予め設定された2つの搬入口(
図1に示す第1搬入口34a、第2搬入口34b)から表紙シートを所定位置(製本処理位置)に給送するように構成され、本発明に係わるシート給送装置を構成している。以下、本発明における「シート給送装置」を「製本装置」として、「目的位置」を「製本位置(製本処理位置)」として、「表紙給送経路」を「搬送経路」として説明する。
【0023】
[画像形成システムの構成]
図1のシステムは、画像形成装置Aと、製本装置Bとインサータ装置(給紙装置)Cで構成されている。そして画像形成装置Aで画像形成したシートを製本装置Bで製本処理する。このため製本装置Bは、画像形成装置から送られたシートを部揃え集積し、その中紙シート束を表紙シートでくるみ綴じして周縁3方向をトリミング(断裁)仕上げするように構成されている。この過程で表紙シートは画像形成装置Aとインサータ装置Cから製本装置Bに選択的に供給される。
【0024】
図1の装置構成は、画像形成装置Aの排紙口14に製本装置Bのシート搬入経路24が連結され、この製本装置Bにインサータ装置Cが一体に備えられている。なお、
図1のシステムにおいて画像形成装置Aと製本装置Bとの間には連結ユニットDが設けられ、この連結ユニットDは画像形成装置Aの排紙口14に送られたシートを製本装置Bの集積トレイ35に転送する。
【0025】
このように画像形成装置Aと製本装置Bとインサータ装置Cを組合せたシステム構成では製本装置Bに表紙シートを画像形成装置Aとインサータ装置Cから選択的に供給する。
これは画像形成装置Aで中紙シートの画像形成と同時にタイトル画像をオンディマンド作成するときには画像形成装置Aから表紙シートを給送し、画像形成できないコーティングシート、厚紙などの特殊シートのときにはインサータ装置Cから供給する為である。
【0026】
本発明は、製本装置Bに画像形成装置Aとインサータ装置Cから選択的に表紙シートを供給するシステム構成において中央に製本装置Bを、その左右に画像形成装置Aとインサータ装置Cを配置する。製本装置Bに装置を横断する方向に表紙給送経路34を配置し、経路中央に製本位置F(製本ステージ)を配置する。この表紙給送経路34の経路端に第1搬入口34a(
図1左経路端)と第2の搬入口34b(
図1右経路端)を設ける。第1搬入口34aは画像形成装置Aの排紙口14に連結し、第2搬入口34bはインサータ装置Cの給紙経路22に連結する。表紙給送経路34は搬送間隙fdを有する一対の搬送ガイド(上部搬送ガイド56、下部搬送ガイド57)で構成する。
【0027】
各搬送ガイドの少なくとも一部はガイド面の位置(角度位置又は高さ位置)が変位可能な可動ガイドkg(左上可動ガイド56ka、右上可動ガイド56kb、左下可動ガイド57ka、右下可動ガイド57kb;これらを「可動ガイドkg」で総称する)で構成する。各可動ガイドkgには、シートの搬送方向に応じてガイド面の位置を変位させるガイドシフト手段(後述のシフトカムなど)を設ける。このガイドシフト手段でシート搬送方向(給紙方向;右から左又は左から右)に応じてガイド面の角度位置、又は高さ位置を変位させる。
【0028】
上記可動ガイドkgのガイド面は、次の条件を満たすように設定する。
(1)ガイド面が傾斜した方向にシート先端を案内するとき(搬送方向を偏向させるガイド面のとき)には、上部搬送ガイドは下流側が徐々に低くなり、下部搬送ガイドは下流側が徐々に高くなるように搬送ガイドを所定角度範囲で揺動(角度変位)させる。
(2)ガイド面に沿って(滑らせながら)シート先端を案内するとき(直進ガイド面)には、a)シート上面を案内する上部搬送ガイドは搬送方向下流側が上流側より高い位置(高さ変位)に設定し、b)シート下面を案内する下部搬送ガイドは搬送方向下流側が上流側より低い位置(高さ変位)に設定する。
【0029】
以下
図1に示す画像形成システムの構成について、画像形成装置A、製本装置B、インサータ装置Cの順に説明する。
【0030】
[画像形成装置]
画像形成装置Aは、シート上に画像形成する印字機構を備え給紙部2に準備されたシートを印字部3で画像を形成し、排紙口14から搬出する。印字機構としては静電印刷、インクジェット印刷、シルク印刷、オフセット印刷などが知られている。
図1の画像形成装置Aは画像形成ユニットA1とスキャナユニットA2と原稿給送ユニットA3で構成されている。スキャナユニットA2で原稿画像を読み取り、その読取データを画像形成ユニットA1に転送して画像形成する複写システムを構成する。原稿給送ユニットA3はスキャナユニットA2の読取部に原稿シートを自動給送する。
【0031】
画像形成装置Aの構成は、種々のものが知られているが、図示の構成について説明する。まず画像形成ユニットA1は複写機、プリンタ、印刷機など種々の構造のものが採用可能であるが静電印刷装置を図示する。この画像形成ユニットA1はケーシング1内に給紙部2と、印字部3と、排紙部4と制御部とが内蔵されている。給紙部2にはシートサイズに応じた複数のカセット5が準備され、制御部から指示されたサイズのシートが給紙経路6に繰り出される。この給紙経路6にはレジストローラ7が設けられ、シートを先端揃えした後所定のタイミングで下流側の印字部3に給送する。
【0032】
印字部3には静電ドラム10が設けられ、この静電ドラム10の周囲には印字ヘッド9、現像器11、転写チャージャ12などが配置されている。そして印字ヘッド9は例えばレーザ発光器などで構成され、静電ドラム10上に静電潜像を形成し、この潜像に現像器11でトナーインクを付着し、転写チャージャ12でシートに印刷する。
【0033】
この印刷シートは定着器13で定着され排紙経路8に搬出される。排紙部4には上記ケーシング1に形成した排紙口14と排紙ローラ15が配置されている。尚図示16は循環経路であり、排紙経路8からの印刷シートをスッチバック経路で表裏反転した後、再びレジストローラ7に送り、印刷シートの裏面に画像形成する。このように片面若しくは両面に画像形成された印刷シートは排紙口14から排紙ローラ15で搬出される。
【0034】
図1に示すスキャナユニットA2は、上記印字ヘッド9で印刷する原稿画像を光学的に読み取る。その構造は原稿シートを載置セットするプラテン18と、このプラテン18に沿って原稿画像をスキャンする光学キャリッジ19と、このキャリッジ19からの光学像を光電変換する光学読取手段(例えばCCDディバイス)17と、から構成されている。
【0035】
また図示のものは原稿シートを自動的にプラテン18に給送する原稿給送ユニットA3がプラテン上に装備してある。このユニットはトレイ上にセットした原稿シートを1枚ずつ分離して読取プラテンに給送する。このような構成で、画像形成ユニットA1は、スキャナユニットA2から送られた読取データ、或いは図示しないコンピュータネットワークから送られた画像データに基づいてシート上に画像を形成して排紙口14に搬出する。
【0036】
なお、画像形成装置Aにおける画像形成は、モノクロ印刷かカラー印刷か、等倍印刷か縮倍印刷か、片面印刷か両面印刷かなどの画像形成条件は、それぞれ使用者が設定可能に構成されている。このとき使用者(オペレータ)は、例えば
図1前面側(フロントアクセス)で、画像形成装置Aに画像形成条件を設定し、同方向からインサータ装置Cに表紙シートをセットする。これと共に
図1前面側で製本装置Bのメンテナンス作業、例えば製本装置Bに製本糊を補給するなど、各装置の操作とメンテナンスを
図1前面側で行う。このとき製本装置Bを挟んで、その一方側部に画像形成装置Aが、他方側部にインサータ装置Cが配置されているので操作スペースとメンテナンススペースを広く確保することが出来る。
【0037】
上記画像形成装置Aは、図示した複写機として構成する他、コンピユータシステム(不図示)にネットワーク接続し、外部装置から転送されたデータによって画像形成するプリンタシステム構成、或いはスキャナユニットA2で読取ったデータを通信回線で外部に転送するファクシミリシステムとして構成することも可能である。
【0038】
[製本装置]
製本装置Bは、前述の画像形成装置Aで画像形成されたシートを受け取って部揃え集積(集積部B1)して中紙シート束を形成する。このシート束の背綴じ部に接着剤を塗布(糊塗布部B2)し、これを表紙シートでくるみ綴じ(製本処理部B3)する。その後、背綴じ部を除く3方向を断裁揃え(断裁部B4)して収納(スタック部B5)する。このため、製本装置Bは、
図2に示すように「集積部B1」と、「糊塗布部B2」と、「製本処理部B3」と、「断裁部B4」と、「スタック部B5」の各処理部と、これらにシートを給送する搬送経路(後述の製本処理経路33及び表紙給送経路34)で構成されている。以下これらの構成について説明する。
【0039】
「経路構成」
製本装置Bの経路構成を
図2に従って説明する。製本装置Bのハウジング23には、部揃え集積された中紙シート束を製本処理部B3に給送する製本処理経路33と、表紙シートを製本処理部B3に給送する表紙給送経路34が設けられる。この両経路33、34は製本位置(製本処理位置;以下同様)Fで互いに交差(90度又は所定角度)するように配置されている。
図2に示す装置は、ハウジング23に上下方向(鉛直方向)に製本処理経路33が、左右方向(水平方向)に表紙給送経路34が配置されている。そしてこの両経路は直交する方向に配置されている。
【0040】
なお、製本処理経路33と表紙給送経路34とは、直交することなく所定角度で交差させても、或いは製本処理経路33を左右水平方向に、表紙給送経路34を上下鉛直方向に配置させても良い。図示のように製本処理経路33を鉛直方向に配置することによって例えば数10ページに及ぶ束状の中紙シートを自重の作用で経路に沿って移動することが可能である。また表紙給送経路34を、装置を横断する水平方向に配置することによって表紙シートを隣設する画像形成装置Aなどから供給することが可能となるメリットがある。
【0041】
また表紙給送経路34の下流側(画像形成装置Aと対向する位置)に後処理装置(不図示)を配置する。この後処理装置には、例えばシートを部揃え集積してステップル綴じするステップル機能、シートにパンチ穴を穿孔するパンチ穿孔機能、シートをトレイに収納する収納機能などを備える。これによって製本処理しないシートは、製本装置Bをスルーして後処理装置(不図示)に移送する。このとき表紙給送経路34を水平方向に直線経路(又は直線に近い経路)で構成することによって画像形成装置Aからのシートを後処理装置に最短経路で短時間にジャムすることなく移送することが出来る。
【0042】
「製本処理経路」
上記製本処理経路33は、その上流に集積部B1が、下流にスタック部B5が、それぞれ配置され、経路内には糊塗布部B2と製本処理部B3と断裁部B4が上流から下流に配置されている(
図2参照)。そして集積部B1から送られた中紙シート束を経路に沿って糊塗布部B2に移送してシート下端面に(背綴じ端面)に接着剤(ホットメルト接着剤など)を塗布し、製本処理部B3で表紙シートによってくるみ綴じする。そして、その綴じ処理されたシート束を下流の断裁部B4で周縁3方向をトリミングカットし、スタック部B5に収納する。この製本処理経路にはシート束を下流に移送する搬送機構がグリップ搬送手段38(後述)として配置されている。
【0043】
「表紙給送経路」
表紙給送経路34は、
図2に示すようにハウジング23を横断する直線形状の経路で構成され、その中央部に製本位置Fが設定されている。左右の経路端には第1搬入口34a(経路左端)と第2搬入口34b(経路右端)が配置されている。第1搬入口34aは画像形成装置Aの排紙口14にシート搬入経路24を介して連結され、画像形成されたシートを受け入れる。第2搬入口34bは、インサータ装置Cの給紙経路22が連結され、給紙トレイ20に準備されたシートを受け入れる。
【0044】
従って、表紙給送経路34には、第1搬入口34aから製本位置Fにシート(表紙シート)を移送するプリンタ給紙パスPaと、第2搬入口34bから製本位置Fにシートを移送するインサータ給紙パスPbが形成される。このプリンタ給紙パスPaとインサータ給紙パスPbのシート給送方向は、互いに反対方向となる。このプリンタ給紙パスPaと、インサータ給紙パスPbの詳細構成については後述する。
【0045】
「経路搬送機構」
上述の各経路は、シート(又はシート束)の搬送間隙fdを形成する一対の搬送ガイドで構成されている。また各経路にはシート(束)を搬送する搬送手段が配置されている。製本処理経路33には、シート束を経路に沿って上流から下流に移送するシート束搬送手段(グリップ搬送手段)38が配置されている。表紙給送経路34には、第1搬入口34aと製本位置Fの間のプリンタ給紙パスPaに第1搬送ローラ対70a、70b及び第2搬送ローラ対71a、71bが、第2搬入口34bと製本位置Fとの間のインサータ給紙パスPbに第3搬送ローラ対72a、72bが配置されている。この第1〜第3搬送ローラ対は図示しない搬送モータに連結されている。なお表紙給送経路34にはシートの姿勢を矯正するアライニング機構40(後述)が配置されている。
【0046】
[連結ユニット]
前述の連結ユニットDについて
図1に従って説明する。連結ユニットDは上記製本装置Bと画像形成装置Aとの間に設けられ、画像形成装置Aの排紙口14からシートを製本処理経路33と表紙給送経路34に振り分け搬送するように構成されている。この連結ユニットDは、画像形成装置Aのケーシング1及び製本装置Bのハウジング23とは、分離した独立のハウジング25で構成されている。
【0047】
この独立したユニット構成(画像形成装置A、製本装置Bに内蔵することなく分離させた構成)とすることによって「画像形成装置A」「連結ユニットD」「製本装置B」の順に配置することも、「製本装置B」「画像形成装置A」の順に配置することも可能となる。つまり装置配列を左右変更すると製本装置Bの内部構造をすべて変更する必要(例えば対称構造)が生ずるが、図示のものは「連結ユニットD」を介在させることによって「装置A」の右に「装置B」を配置することも、同一構造の「装置A」の左に「装置B」を配置することも可能となる。このため製本装置Bが適合する画像形成装置が広汎となる。
【0048】
上記連結ユニットDには
図1に示すように画像形成装置Aの排紙口14からシートを製本装置B内に繰込むシート搬入経路24が設けられ、この経路から上記製本処理経路33と表紙給送経路34にシートを供給する。このためシート搬入経路24は画像形成装置Aの排紙口14に連なり、後述する集積トレイ35を介して中紙シートを製本処理経路33に送り、
図1に示す経路切換え手段26を介して表紙シートを表紙給送経路34に送るようになっている。
【0049】
「集積部」
集積部B1は、
図2に示すようにハウジング23に配置した集積トレイ35と、このトレイにシートを搬出する排紙手段36で構成される。この集積トレイ35は製本処理経路33の上流で、シート搬入経路24の下流に配置されている。集積トレイ35は、シート搬入経路24の排紙口24aから搬出されたシートを積載する紙載台を備えている。
図2の装置は紙載台(トレイ面;以下同様)を略水平姿勢、又はシートが落下しない程度に傾斜した姿勢に配置している。
【0050】
上記紙載台には、排紙手段36と先端規制部材37と、整合手段(不図示)が設けられている。排紙手段36はトレイ上のシートから上方に退避した退避位置とトレイ上のシートと係合する作動位置との間で上下昇降する。このためローラを支持する支持アームにバネクラッチ(不図示)が設けられている。また、集積トレイ35にはシート先端を突当規制する先端規制部材37が配置されている。この他、集積トレイ35にはシート側縁を基準ラインに整合する整合手段(その構成は既に知られている)が設けられている。
【0051】
上記集積トレイ35は
図2上下方向に昇降可能に構成されている。集積トレイ35はハウジング上部に位置する収納位置(
図2実線)と、ハウジング下部に位置する搬出位置(
図2破線)の間で昇降可能に支持され、図示しない昇降駆動手段(ラック・ピニオン機構など)に連結されている。このようにシートを載置した状態でトレイを上下昇降するのは装置の小型コンパクト化を達成するためである。
【0052】
これは、水平姿勢で集積したシートを鉛直姿勢の製本処理経路33に移送する為にシート姿勢を90度旋回する必要がある。このときシートを収納した水平姿勢で収納位置から90度旋回するとトレイ上方に大きな旋回エリアが必要となり装置の大型化を招く。図示の集積トレイ35はハウジング上部の収納位置からハウジング下部の搬出位置に降下した状態でシートを90度旋回するから装置の小型化が可能である。
【0053】
集積トレイ35を略水平姿勢(シートが滑り落ちない程度)でシートを集積し、集積したシート束を鉛直姿勢に旋回して、同方向に配置されている製本処理経路33に搬出する。このように構成することによってシートの集積機構を簡単に構成することが出来る。また鉛直方向の製本処理経路33でシート束の自重が作用する上方から下方にシート束を移送するためシート束の搬送機構を簡単な構造とするこが出来る。
【0054】
上記集積トレイ35には積載したシート束の厚さを検出する束厚さ検出手段(不図示)が設けられている。この束厚さ検出手段は、集積トレイ35に集積したシート束の厚さを検出して、(1)糊塗布位置Eで中紙シート束に接着剤を塗布する塗布量を束厚さによって増減調整する。(2)製本位置Fに表紙シートを給送する際に中紙シートの束厚さから表紙シートのセンター位置を割り出して給送する。(3)製本位置Fで表紙シートを背折り成形する際にプレス部材の加圧位置を束厚さによって変更する。
【0055】
「糊塗布部」
糊塗布部B2は、製本処理経路33に配置され、経路に沿って移送された中紙シート束の端面(背綴じ端面)に接着剤を塗布する。このため糊塗布部B2には後述する接着剤塗布手段45が配置されている。製本処理経路33に沿って所定の塗布位置に中紙シート束がセットされる。このシート束の下端面(背綴じ端面)に一端から他端に塗布ローラ47が回転しながら移動する。このローラ表面に含浸された液状接着剤がシート端面に塗布される。このとき前述の中紙シート束の束厚さ情報に従って接着剤層の塗布厚さが調整される。
【0056】
「製本処理部」
製本処理経路33には、糊塗布位置B2の下流に表紙給送経路34と交差する製本位置Fに表紙綴じ手段50が配置されている。この表紙綴じ手段50は製本糊を塗布した中紙シート束に表紙シートを接合して背折り処理(製本仕上)する。このため表紙綴じ手段50は、背当てプレート51と背折プレス部材52で構成されている。
【0057】
「背当てプレート」
背当てプレート51は平板形状の板状材で構成され、製本処理経路33を直交方向に横切るように移動可能に装置フレームに支持されている。この背当てプレート51には図示しない駆動手段(電磁ソレノイド、モータなど)に連結され、その制御で経路内の作動位置と経路外の待機位置のいずれかに位置決めされている。
【0058】
上記背当てプレート51は、経路内の作動位置では表紙給送経路34に静止セットしている表紙シートを載置した状態で支持(バックアップ)する。また待機位置では、製本処理経路33を開放して下流側に位置する折りロール63に向けて製本処理したシート束を搬出可能にする。なお、背当てプレート51は、表紙シートをバックアップするのと同時に製本処理(綴じ処理と背折り処理)された背表紙部の接着剤を冷却する。この冷却作用は、熱伝導率の高い素材(金属材料など)で接着剤の熱を外部に放熱する他、ペルチェ素子などの冷却素子、放熱フィン、冷却ファンなどを用いる。
【0059】
「背折プレス部材」
背折プレス部材52(右プレス部材52R、左プレス部材52L)は、左右一対のブロック部材で互いに接近・離反自在に構成する。各プレス部材52には、互いに当接・離間するプレス面(右プレス面52a、左プレス面52b)と、表紙シートを搬送ガイドするガイド面(右ガイド面52c、左ガイド面52d)を備える。この背折プレス部材52の詳細な構成は後述するが、背当てプレート51で表紙シートをバックアップ支持した状態で背折プレス部材52によって表紙シートの肩部を背折り成型する。(
図14参照)。
【0060】
上記背折プレス部材52は表紙給送経路34の製本位置Fに配置され、表紙シートを背折り成形する作用を果たす。このため背折プレス部材52は、表紙給送経路内に給送される表紙シートの進行を妨害することなく製本位置Fに案内する必要がある。背折プレス部材52の表紙給送経路34に臨む上面にはガイド面52c(52d)が形成されている。
【0061】
このように、表紙給送経路34から表紙シートを、製本処理経路33から中紙シート束を互いに交差する製本位置Fに給送する。この表紙シートを背当てプレート51で支持(バックアップ)した状態で両シートを逆T字状に突き当てる。次いで左右一対のプレス部材52で表紙シートの肩部を背折し、加圧成形するように背当てプレート51と背折プレス部材52が構成されている。これと共に一対の背折プレス部材52は、プレス面52a(52b)が互いに当接した状態でガイド面52c(52d)によって表紙給送経路34に送られた表紙シートを製本位置Fに案内する。
【0062】
プレス面52a(52b)は製本処理経路33に沿って搬送された中紙シート束を挟圧するように互いに対向し、ガイド面52c(52d)は表紙給送経路34に臨む上面に形成されている。これによって中紙シート束を表紙シートでくるみ製本することが可能となる。
【0063】
「断裁部」
断裁部B4は、製本処理されたシート束の3方向をトリミングカット(断裁揃え)する。このため、製本処理されたシート束を、その天地方向を変換するターン機構90と、シート束の端縁を断裁するカッター機構部94で構成されている。
【0064】
製本処理経路33には、製本位置Fの下流側に断裁部B4が設定され、この断裁部B4には製本処理したシート束をトリミングカットする断裁刃97と、断裁縁プレス部材96が設けてある。この両部材と製本処理経路33を隔てて対向する位置に刃受部材95が設けてあり、この刃受部材はゴム、樹脂など断裁刃の刃先を損傷しない素材で構成されている。このような構成で製本処理経路33に沿って送られたシート束を断裁縁プレス部材96で断裁姿勢に保持し、断裁刃97で断裁処理する。
【0065】
また、製本処理経路33には、断裁部B4の上流にターン機構90が設けてある。このターン機構90は製本処理されたシート束(以下「冊子シート」という)を回転させて背部を除く3方向(天部・地部・小口部)を断裁位置に送る。このためターン機構90はシート束を挟持する一対の回転盤(クランプ部材)91a、91bと、この回転盤を旋回動する旋回モータ(不図示)で構成されている。そして一対の回転盤91a、91bの間にシート束を把持し、両者を回転することによってシート束の天地姿勢を変更するようになっている。
【0066】
上記ターン機構90は、一対の回転盤91a(91b)がユニットフレーム92に取付けられ、このユニットフレーム92は装置フレーム(不図示)に経路方向(
図2上下方向)に移動可能に支持されている。このユニットフレーム92を図示しない昇降モータで経路方向に移動することによってシート束の下端縁を切断位置に位置決めして断裁量(カット量)を設定する。従ってターン機構90は、送られた冊子シートの姿勢を方向変換するのと同時に断裁部B4にシート端縁を送る。この送り量でシート端縁の断裁量が設定される。
【0067】
「スタック部」
スタック部B5は製本処理経路33の下流側に配置され、製本処理経路33で製本処理されたシート束を収納するスタッカ98と、経路上方に位置する断裁部B4で断裁された屑紙片を収納する屑ボックス99で構成されている。
【0068】
前記断裁部B4の下流側には排紙ローラ対93が配置され、その下流には収納スタッカ98が配置されている。この収納スタッカ98と並んで断裁屑を収納する屑ボックス99が配置されている。従って断裁部B4で断裁揃えされた冊子シートは収納スタッカ98に収容され、断裁時の屑紙片は屑ボックス99に収容されるように構成されている。
【0069】
[製本装置の細部構成]
図2における製本装置Bの詳細構成について説明する。前述の製本処理経路33には、経路に沿って中紙シート束を搬送する「シート束搬送手段」と、接着剤塗布位置に「接着剤塗布手段」が配置されている。また、表紙給送経路34には、製本位置Fにシートを案内する「背折プレス部材」と「搬送ガイド部材」が配置されている。その細部構成を「シート束搬送手段の詳細構成」、「接着剤塗布手段の詳細構成」、「背折プレス部材の詳細構成」、「搬送ガイド部材の詳細構成」の順に説明する。
【0070】
「シート束搬送手段の細部構成」
前述の製本処理経路33には、経路に沿ってシート束を搬送するシート束搬送手段38が内蔵されている。このシート束搬送手段(グリップ搬送手段;以下同様)38は、(1)前記集積トレイ35から搬出されたシート束の姿勢を水平から鉛直姿勢に偏向する機能と、(2)鉛直方向に姿勢偏向したシート束を製本処理経路33に沿って下流側に移送する機能を備える。
【0071】
上記シート束搬送手段38は、
図2に示すシート束をクランプする一対のグリッパ部材(不図示)で構成する。この一対のグリッパ部材を互いに接近・離反自在にユニットフレームに支持する。このユニットフレームを装置フレームに回転可能に軸支持し、この装置フレームにユニットフレームを回転動する旋回モータを配置する。これによってユニットフレームの旋回動でグリッパ部材に把持されたシート束は、その姿勢が偏向される。
【0072】
上記一対のグリッパ部材は、固定グリッパ部材と可動グリッパ部材をユニットフレームに製本処理経路33に沿って位置移動可能に支持し、両グリッパ部材を経路方向に移動する昇降モータと、可動グリッパ部材をグリップ動作させるグリップモータをユニットフレームに配置する。
【0073】
上記構成によって、水平姿勢のシート束は一対のグリッパ部材で保持され、旋回モータで垂直姿勢に偏向される。このシート束は昇降モータで製本処理経路33に沿って移動可能となる。なお、このシート束搬送手段38の具体的構成は
図2に図示しないが、例えば特開2008−162177号公報に開示してある。本発明にあっても同特許文献に開示されている機構を採用することが出来る。
【0074】
「接着剤塗布手段の細部構成」
次に製本処理経路33の糊塗布部B2に配置されている接着剤塗布手段45について説明する。
図3(a)は糊容器46の構造を、(b)は糊容器46の塗布機構を示す。接着剤塗布手段45は液状接着剤を収容する糊容器46と、液化接着剤をシート端面に塗布する塗布ローラ47と、糊容器をシート端面に沿って往復移動するトレイ移動手段(後述のガイドレール)49gで構成されている。
【0075】
糊容器46は、液剤収容室46aと固形剤収容室46bで構成されている。各収容室には加熱手段(加熱素子)48が内蔵され、加熱溶融した接着剤が流通するように各室間は連通している。液剤収容室46aには塗布ローラ47が回転可能に軸受け支持され、このローラを回転するロール回転モータMRに連結されている。
【0076】
上記塗布ローラ47は、含浸性と耐熱性に富んだ多孔質ゴムで構成されている。そして液剤収容室内の接着剤を含浸してロール表面に盛り上がった接着剤を上方に位置するシート束の端面に塗布する。上記固形剤収容室46bには充填された固形接着剤を攪拌する攪拌部材(図示のものは歯車)が設けられている。
【0077】
上記液剤収容室46aには接着剤の温度と残量を検出する糊センサ46Sが配置されている。このセンサは槽内の接着剤の温度と、液面の温度差で接着剤の容量(残量)を検出するように構成されている。そしてこの糊センサ46Sと加熱手段48は制御CPUに結線され、液剤収容室内の接着剤を所定の溶融温度に温度調整する。
【0078】
上述のように構成された糊容器46はシート束に沿って所定ストロークで往復駆動する過程で接着剤を塗布する。
図3(b)に糊容器の往復移動機構を示す。上記糊容器46はシート束の背綴じ端面S1の長さより短い寸法に構成されている。この糊容器46は塗布ロール47と共にシート束の下端縁S1に沿って移動してシート束の端面S1に接着剤を塗布する。
【0079】
製本処理経路33のシート幅方向(
図3(b)左右方向)にガイドレール49gが装置フレームに設けられている。糊容器46はガイドレール49gに所定ストロークで往復動可能に支持されている。糊容器46はガイドレール49gに摺動自在に支持された状態でタイミングベルト49tに連結されている。タイミングベルト49tには糊容器移動モータMSが連結されている。
【0080】
上記糊容器46は、糊容器移動モータMSの駆動でガイドレール49gに沿って所定ストロークで往復動する。
図3(b)に示すHpはホームポジションでシート束の一端に糊塗布動作を開始する位置に設定されている。Rpはリターン位置で糊塗布動作の終了位置である。このリターン位置Rpはシート幅のサイズ情報によって設定される。
【0081】
そして糊容器46がホームポジションHpとリターン位置Rpの間で往復動する過程で、例えば往路(同図左から右方向移動)では塗布ロール47はシート束に圧接してシート端部をバラけさせ、リターン位置RPからホームポジションHpに戻る復路(同図右から左方向移動)ではシート端と所定のギャップを形成して接着剤を塗布する。
【0082】
このときの塗布ロール表面とシート端面とのキャップに比例した塗布量で接着剤がシート下端面S1に塗布される。このキャップ調整はグリップ搬送手段38の送り量を調整する。図示SPは上記糊容器46のホームポジションセンサである。
【0083】
糊容器46は、装置電源投入時(イニシャライズ時)にはホームポジションHpに位置移動され、塗布指示信号で塗布動作を実行する。塗布指示信号は、例えば上流側のグリップ搬送手段38でシート束の糊塗布位置Eへの移送を開始した信号から所定時間後(シート束が糊塗布位置に到達する見込み時間)に伝達される。この信号を受けてホームポジションHpからリターン位置Rpに向けて糊容器46を移動する。その移動と同時にロール回転モータMRで塗布ロール47を回転(開始)する。
【0084】
「背折プレス部材の詳細構成」
表紙給送経路34には、製本位置Fに表紙綴じ手段50が配置され、この手段50は背当てプレート51と、背折プレス部材52で構成されている。背当てプレート51は前述の構成を採用する。以下、背折りプレス部材52の構成を
図6及び
図7に従って説明する。
【0085】
背折りプレス部材52は、表紙給送経路34に送られた表紙シートを製本位置Fに案内するガイド機能と、この製本位置Fで中紙シート束に接合(逆T字状)された表紙シートの肩部を折り合わせるプレス機能を備える。このため、背折プレス部材52は、左右一対のプレス部材52L(52R)で構成される。このプレス部材52L(52R)は、互いに圧接離間可能に装置フレームに支持される。
【0086】
図6は一対のプレス部材52L(52R)が互いに圧接した状態を示し、
図7は一対のプレス部材が離間した状態を示す。各プレス部材52L(52R)には、プレス面(右プレス面52a、左プレス面52b)とガイド面(右ガイド面52c、左ガイド面52d)が設けられている。
図6の状態で左右のプレス面52a(52b)は当接し、左右のガイド面52c(52d)は連続した平面を形成している。また
図7の状態で左右のプレス面52a(52b)は距離wd(wd>許容最大製本厚さ)を隔てて対峙している。
【0087】
上記プレス部材52L(52R)は、離間位置(後述の待機位置Wp)と圧接位置(後述のプレス位置Ap)との間で移動可能に装置フレームに支持される。このため装置フレームには
図6に示すように支持レール53が表紙給送経路34に沿って配置してある。この支持レール53にはレール面53rが形成され、この面に沿って各プレス部材52L(52R)が所定ストロークで接近離反するように嵌合されている。各プレス部材52L(52R)にはガイドコロ54が設けられ、このコロ54がレール面53rに係合している。
【0088】
上述のように左右一対のプレス部材52L(52R)は、離間位置Wpと圧接位置Apの間(動作ストローク)で往復動可能に支持レール53に支持されている。この支持レール53にはレール面53rの一部にシフト面53sが形成してあり、各プレス部材52のガイド面52c(52d)の高さ位置を調整する。このシフト面53sについては後述する。
【0089】
上記左右一対のプレス部材52L(52R)には、支持レール53に沿って位置移動するプレスシフト手段55が設けてある。このシフト手段55は、右プレス部材52Rと、左プレス部材52Lが同一構造であるので一方について
図13、
図14に従って説明する。
【0090】
図13は一対のプレス部材52L(52R)が当接した姿勢で表紙シートを案内する状態を示し、
図14はプレス部材52が表紙シートを背折りプレスする状態を示す。この
図13、
図14にプレス部材の駆動機構を示すが、各プレス部材52にはラック55rが一体に形成されている。このラック55rはプレス部材52の移動方向に、移動ストロークに応じたラック長で、プレス部材側に設けられている。一方、装置フレーム側にはラック55rと噛合するピニオン55pが軸支持されている。このピニオン55pはプレスシフトモータMP(右シフトモータMPR、左シフトモータMPL)に連結されている。このプレスシフトモータMPは正逆転モータで構成されている。
【0091】
そこで
図13の状態で右シフトモータMPRを時計方向に、左シフトモータMPLを反時計方向に回転すると、当接しているプレス面52a(52b)は、待機位置Wp(不図示)に離間する。この離間位置から右シフトモータMPRを反時計方向に、左シフトモータMPLを時計方向に回転すると、離間しているプレス面52a(52b)は互いに接近して
図14の状態に表紙シートを背折りプレスする。
【0092】
[ガイド面の高さ位置調整]
上述の支持レール53には、プレス部材52のガイドコロ54を嵌合支持するレール面53rが設けられ、このレール面53rの一部はガイド面の高さ位置を調整するシフト面53sが形成されている。このシフト面53sの構造について
図9に従って説明する。
図9(a)は前述のプリンタ給紙パスPaから製本位置Fに表紙シートを給送する状態を、同図(b)は前述のインサータ給紙パスPbから製本位置Fに表紙シートを給送する状態を示す。このとき少なくとも一方のプレス部材のガイド面52c(52d)の高さ位置は高低変化するようになっている。
【0093】
このため、レール面53rの一部にはシフト面53sが形成してあり、このシフト面53sはレール面53rより高い位置でプレス部材のガイドコロ54を支持するようになっている。
図9(a)の右プレス部材52Rは、そのガイドコロ54がレール面53rに支持されている(ガイド面52cは
図10の状態)。同図(b)の右プレス部材52Rは、そのガイドコロ54がシフト面53sに支持されている(ガイド面52cは
図11の状態)。
【0094】
右プレス部材52Rのガイドコロ54がレール面53rに支持されている
図9(a)のとき右ガイド面52cは、
図10(b)に示すように左ガイド面52dより低い位置に設定されている。これに対しガイドコロ54がシフト面53sに支持されている
図11のときには、右ガイド面52cは左ガイド面52dより高い位置に位置決めされている。
【0095】
つまりシフト面53sはレール面53rより高い面に形成され、プレス部材52L(52R)がレール面53rに支持されるときには低い姿勢となり、シフト面53sに支持されるときには高い姿勢となるようにレール面53rとシフト面53sとの間に段差が形成されている。なおこの場合、ガイド面52c(52d)の高さとは、表紙給送経路34を移送されるシートを基準に、その距離が近づくときには「高い位置」、距離が遠ざかるときには「低い位置」とする。
【0096】
そして
図10は右プレス部材52Rの右ガイド面52cは「低い位置」に位置決めされ、左ガイド面52dが高く、右ガイド面52cが低くなり、左から右にシートが移動するとき先端が引っ掛かることがない。また、
図11は右プレス部材52Rのガイド面52cは「高い位置」に位置決めされ、右ガイド面52cが高く、左ガイド面52dが低くなり、右から左にシートが移動するとき先端が引っ掛かることがない。
【0097】
[プレス部材の動作位置]
図8は、上記構成の背折りプレス部材52の動作位置を示す。左右のプレス部材52は左右のプレスシフトモータMPR、MPLの回転制御で次のポジションに設定される。この各ポジションへの移動制御は、左右のプレスシフトモータMPR、MPLの駆動制御によって行う。
【0098】
「基準位置」
製本位置Fには基準位置xが設定され、この位置xを基準に製本処理経路33から中紙シート束が、表紙給送経路34から表紙シートが搬送される。図示のものは中紙シート束の最下層紙を基準位置xと一致させるように製本処理経路33が構成され、表紙シートのセンターから1/2束厚さの位置を基準位置xと一致させるように表紙給送経路34が構成されている。
【0099】
「離間位置」
この離間位置Wpは、一対のプレス部材52の各プレス面52a(52b)が距離wdを隔てて対向する位置に設定されている。この距離wd(
図7参照)は、許容最大製本厚さより大きく設定され、この状態で中紙シート束は表紙シートの中央部に逆T字状に接合される(
図12(a)参照)。
【0100】
「プレス位置(プレス動作終了位置)」
このプレス位置Ap(プレス動作終了位置;以下同様)は、離間位置Wpから一対のプレス部材52を接近させ各プレス面52a(52b)でシート束を加圧する位置に設定されている。左右のプレス部材52R(52L)は離間位置Wpからプレス位置さApに移動する動作で中紙シート束を内側にしてシートの肩部を折り曲げ、更にプレス成形する。
【0101】
なお図示の装置は左プレス部材52Lは基準位置xをプレス位置Apに設定されている。一方、右プレス部材52Rは、基準位置xから束厚さtdだけ離れた位置をプレス位置Apに設定されている。この場合の束厚さ情報は前述の束厚さ検知手段から取得し、基準位置xと束厚さtdからプレス位置を演算する。
【0102】
左右のプレス部材52R(52L)のプレス位置Apへの移動は、基準位置xから所定間隔隔てた離間位置Wpから互いを接近させる方向に移動する。この制御は、左シフトモータMPLを離間位置Wpから基準位置xに相当する回転量で、右シフトモータMPRを離間位置Wpから束厚さ(td)位置に相当する回転量で回転する。
【0103】
「給紙位置」
この給紙位置Spは、製本位置Fに表紙シートを給送するときの一対のプレス部材52L(52R)の位置に設定されている。一対の背折りプレス部材52L(52R)は、互いのプレス面52a(52b)が当接した状態でガイド面52c(52d)に沿って表紙シートを製本位置Fに案内する。この為、図示の装置はプリンタ給紙パスPaから表紙シートを移送する第1給紙位置Sp1と、インサータ給紙パスPbから表紙シートを移送する第2給紙位置Sp2との異なる2つの位置に設定されている。
【0104】
「第1給紙位置」
この第1給紙位置Sp1は、プリンタ給紙パスPaから表紙シートを製本位置Fに移送するときのプレス部材52L(52R)のガイド位置に設定され、その状態を
図9(a)と
図10に従って説明する。
図9(a)に示すように、左右のプレス部材52L(52R)はプレス面52a(52b)が当接した状態で、左右いずれのプレス部材52L(52R)も支持レール53のレール面53rに支持されている。図示のものは左プレス部材52Lが基準位置xに設定されている。
【0105】
この第1給紙位置Sp1では
図10に示すように右ガイド面52cは左ガイド面52dより低い位置(δ1;δ1>0)に設定されている。この状態でシートは左から右方向(
図10(a)矢印方向)に送られる。
【0106】
「第2給紙位置」
この第2給紙位置Sp2は、インサータ給紙パスPbから表紙シートを製本位置Fに移送するときのプレス部材52のガイド位置に設定され、その状態を
図9(b)と
図11に従って説明する。
図9(b)に示すように、左右のプレス部材52L(52R)はプレス面52a(52b)が当接した状態で、左右いずれか一方のプレス部材(図示のものは右プレス部材52R)は支持レール53のシフト面53sに支持され、他のプレス部材(図示のものは左プレス部材52L)は支持レール53のレール面53rに支持されている。この状態で
図11に示すように右ガイド面52cは左ガイド面52dより高い位置(δ2;δ2<0;
図11参照)に設定されている。この状態でシートは右から左方向(
図11(a)矢印方向)に移送される。
【0107】
以上の説明から左右一対の背折りプレス部材52L(52R)は、表紙シートを表紙給送経路34のプリンタ給紙パスPaから供給するときには第1給紙位置Sp1に、インサータ給紙パスPbから供給するときには第2給紙位置Sp2に位置決めされる。このとき第1給紙位置Sp1では図示ものは左ガイド面52dが右ガイド面52cより高く設定され、第2給紙位置Sp2では右ガイド面52cが左ガイド面52dより高く設定される。従って第1、第2給紙位置Sp1、Sp2いずれであってもシートが搬送される上流側のガイド面が下流側のガイド面より高い位置に位置決めされる。
【0108】
なお、図示の実施形態は、プレス動作のための駆動機構と左右ガイド面の高さ位置調整のための駆動機構を共通の駆動モータを駆動源としている。このように構成することによって駆動機構の簡素化が可能である。
【0109】
「背折り駆動手段」
背折プレス部材52を背折位置(
図13の状態)と離間位置(
図14の状態)の間で往復動するシフト手段55と、このシフト手段55を制御する制御手段(制御CPU)とで構成されている。上記右プレス部材52Rと左プレス部材52Lとは装置フレーム(図示せず)に摺動自在に支持され、その先端部にプレス面(右プレス面52a、左プレス面52b)が設けられ、左右のプレス面52a(52b)で表紙シートの背部を折り曲げる。
【0110】
この為左右プレス部材52L(52R)にはラック歯車55rが一体に設けられ、このラック歯車55rにシフトモータMPR(MPL)に連結されたピニオン55pが歯合されている。このシフトモータMPR(MPL)はステッピングモータで構成されている。従ってシフト手段55は上記シフトモータMPR(MPL)と、その伝動手段(上記ピニオン55pとラック歯車55r)とで構成されている。
【0111】
尚、上記背折プレス部材52L(52R)には前記表紙給送経路34で搬送された表紙シートを案内するガイド面(右ガイド面52c、左ガイド面52d)が設けられている。このように背折プレス部材52は先端部にプレス面52a(52b)を備えているのと同時に表紙給送経路34に臨む上面に表紙シートを案内するガイド面52c(52d)が備えられている。
【0112】
このガイド面52c(52d)にはピンチローラ80b、81bが設けられ、このピンチローラ80b、81bは左右プレス部材52L、52Rが背折位置で製本処理経路33を閉じているとき(
図13の状態)にはこの経路を横断する表紙シートをガイド面52c(52d)とピンチローラ80b、81bとで案内し、経路外の待機位置に退避するときにはピンチローラ80b、81bは
図14の状態にガイド面52c(52d)から下側に埋没する。
【0113】
このため常時突出するように付勢バネ(図示せず)で付勢されたピンチローラ80b、81bには昇降レバー75が上記付勢バネに抗してピンチローラ80b、81bをガイド面52c(52d)から埋没(
図14の状態)させるように係合配置され、この昇降レバー75は上記付勢バネより強いバネ75aで懸引され図示反時計方向に回動するようになっている。そして装置フレームには背折位置で上記昇降レバー75を時計方向に回転させる突き当てストッパ77が設けられている。
【0114】
これによって背折プレス部材52が背折位置(
図13の状態)のときにはピンチローラ80b、81bは付勢バネでガイド面52c(52d)から上方に突出し、背折位置から待機位置側に離れたときには付勢バネでガイド面52c(52d)から下方に埋没するようになっている。このようにピンチローラ80b、81bをガイド面52c(52d)から出没させたのは表紙シートを搬送する背折位置ではローラが突出してシートの移動を円滑に案内し、この表紙シートを背折りするために背折プレス部材52を待機位置に移動するときには製本位置Fにセットされた表紙シートをみだりに移動させないようにガイド面52c(52d)から下側に埋没させるためである。
【0115】
「表紙給送経路の搬送ガイドの詳細」
上述の表紙給送経路34は、プリンタ給紙パスPaとインサータ給紙パスPbから製本位置Fに表紙シートが給送される。この経路には製本位置Fで製本処理する「表紙綴じ機構」と、この位置に表紙シートを案内する「搬送ガイド機構」が配置されている。また、プリンタ給紙パスPa(インサータ給紙パスPbであっても良い)には表紙シートの搬送姿勢を矯正する「アライニング機構40」が配置されている。以下順次説明する。
【0116】
「搬送ガイド機構」
上述の表紙給送経路34は、搬送間隙fdを有する一対の搬送ガイド56、57で構成されている。この表紙給送経路34は、所定位置(製本位置F;以下同様)にシートを給送するプリンタ給紙パス(第1給紙パス)Paとインサータ給紙パス(第2給紙パス)Pbが形成される。この両パスは給送方向が反対となる2方向からシートを供給するように構成されている。本発明はこのように給送方向が反対となる2方向から移送されるシートを案内する搬送ガイド機構を次のように構成している。
【0117】
図9は、搬送ガイド機構の全体を、
図10はプリンタ給紙パスPaのガイド構造を、
図11はインサータ給紙パスPbのガイド構造を示す。
【0118】
図9に示すように表紙給送経路34は、シートの搬送間隙fdを有する一対の搬送ガイド(上部搬送ガイド56、下部搬送ガイド57)で構成されている。この搬送ガイド56、57は、固定ガイドと可動ガイドで構成されている。可動ガイドはガイド面の角度位置、又は高さ位置が変位するように構成される。以下その構成を
図9、
図10、
図11に従って説明する。
【0119】
図9に示すように表紙給送経路34には、左上固定ガイド56faと左下固定ガイド57faが搬送間隙fdを隔てて対向配置され、画像形成装置Aから製本位置Fに表紙シートを案内する「プリンタ給紙パスPa」を構成している。同様に右上固定ガイド56fbと右下固定ガイド57fbが搬送間隙fdを隔てて対向配置され、インサータ装置Cから表紙シートを製本位置Fに案内する「インサータ給紙パスPb」を構成している。
【0120】
この表紙給送経路34の製本位置Fには、左上可動ガイド56kaと、右上可動ガイド56kbがそれぞれ図示位置に配置されている。同様に、左下可動ガイド57kaと、右下可動ガイド57kbが図示位置に配置されている。この各可動ガイド56ka(56kb)、57ka(57kb)は、シートを製本位置Fに案内するガイド面の角度姿勢が
図10の第1給紙姿勢と
図11の第2給紙姿勢に角度変位するように支軸56x(56y)と支軸57x(57y)で装置フレーム軸支持されている。
【0121】
上記各可動ガイド56ka(56kb)、57ka(57kb)は、(1)製本位置Fに表紙シートを給送する際に、このシートをプリンタ給紙パスPaから給送するのか、インサータ給紙パスPbから給送するのかによってシートを案内する角度姿勢を異ならせる機能と、(2)製本位置Fで、この位置にセットされた表紙シートと中紙シート束を突合わせて接着する為に製本位置Fの上方を開放して中紙シート束をセット位置に移送可能にする機能を備える。
【0122】
図9に示すように左上可動ガイド56kaは、支軸56xを中心に揺動可能に支持され、右上可動ガイド56kbは支軸56yを中心に揺動可能に軸支持されている。これによって両可動ガイド56ka(56kb)は、プリンタ給紙パスPa(
図10;左から右方向)からのシート先端を製本位置Fに案内する角度姿勢(
図10の状態)と、インサータ給紙パスPbからの表紙シートを製本位置Fに案内する角度姿勢(
図11の状態)との間で変位可能に構成される。この場合、両可動ガイド56ka(56kb)の角度姿勢は、シート搬送方向の下流側のガイド面が徐々に下方に傾斜する姿勢にガイド位置が変位させてある。
【0123】
上記左上可動ガイド56kaと右上可動ガイド56kbには、カムロール58a、58bが一体に形成してある。このカムロール58a(58b)は後述するシフトカム(第1第2ガイドシフト手段)に係合して、ガイド面の角度姿勢を変更するようになっている。
【0124】
表紙給送経路34の経路下方には、表紙シートの給送方向に応じてガイド姿勢の異なる可動ガイド57ka、57kbが設けてある。
図9に示すように左下可動ガイド57kaは支軸57xを中心に揺動可能に軸支持され図示位置に配置されている。また、右下可動ガイド57kbは支軸57yを中心に揺動可能に軸支持され図示位置に配置されている。
左下可動ガイド57kaにはカムロール59aが、右下可動ガイド57kbにはカムロール59bが一体形成され、後述するシフトカム(第3第4ガイドシフト手段)に係合している。
【0125】
これによって両可動ガイド57ka(57kb)は、プリンタ給紙パスPa(
図10;左から右方向)からのシート先端を製本位置Fに案内する角度姿勢(
図10の状態)と、インサータ給紙パスPbからの表紙シートを製本位置Fに案内する角度姿勢(
図11の状態)との間で変位可能に構成される。この場合、両可動ガイド57ka(57kb)の角度姿勢は、シート搬送方向の下流側のガイド面が徐々に上方に傾斜する姿勢にガイド位置が変位させてある。
【0126】
「ガイドシフト手段の構成」
次に上述の可動ガイド56ka(56kb),57ka(57kb)のガイドシフト手段を説明する。
図9に示すように左右一対のプレス部材52R(52L)には、各可動ガイド56ka(56kb),57ka(57kb)と係合するガイドシフト手段60が設けられている。図示のシフト手段60は左右のプレス部材52に設けられた板カムで構成している。左右プレス部材52R(52L)が前述の第1給紙位置Sp1に位置するときと第2給紙位置Sp2に位置するときに、その位置に応じて可動ガイド56ka(56kb),57ka(57kb)のガイド面位置を変位させる。
【0127】
この為、
図9に示すように左上可動ガイド56kaのカムロール58aと係合する位置に第1シフトカム60aが左プレス部材52Lに設けられている。同様に右上可動ガイド56kbのカムロール58bと係合する位置に第2シフトカム60bが右プレス部材52Rに設けられている。また、左下可動ガイド57kaのカムロール59aと係合する位置に第3シフトカム60cが左プレス部材52Lに設けられている。右下可動ガイド57kbのカムロール59bと係合する位置に第4シフトカム60dが右プレス部材52Rに設けられている。
【0128】
なお、各可動ガイド56ka(56kb)、57ka(57kb)にはカムロール58a(58b)、59a(59b)がシフトカム60a〜60dに係合する方向に図示しない付勢手段が設けてある。この付勢手段は、例えば支軸56x(56y、57x、57y)に巻きバネを嵌装する。或いは付勢手段として可動ガイドに重錘を設けてガイド部材を自重でシフトカム側に付勢する。
【0129】
上記第1乃至第4シフトカム60a〜60dは、左右プレス部材52R(52L)が、第1給紙位置Sp1のとき各可動ガイド56ka(56kb、57ka、57kb)のガイド面は左向き(
図10の状態)となり、第2給紙位置Sp2のときには右向き(
図11の状態)となる位置に設けてある。また、第1給紙位置Sp1のとき背折りプレス部材52は、左プレス部材52Lのガイド面52dが高く右プレス部材52Rのガイド面52cが低い状態となり、第2給紙位置Sp2のときには逆に右プレス部材52Rのガイド面52cが高く左プレス部材52Lのガイド面52dが低い状態となる。
【0130】
「アライニング機構」
前述の表紙給送経路34には、製本位置Fに向けて給送するシート(表紙シート)の姿勢を矯正するアライニング機構が配置してある。図示の装置は製本位置F(所定位置;以下同様)に給送する表紙シートの先端又は後端を揃えるアライニング手段40を表紙給送経路34のプリンタ給紙パスPaとインサータ給紙パスPbのいずれか一方に配置する。
そしていずれの給紙パス(PaかPb)に送られたシートも、一旦アライニング手段40に給送して先端揃え(後端揃え)した後に製本位置Fに給送セットする。
【0131】
「アライニング手段の構成」
表紙給送経路34には、製本位置Fに表紙シートを供給する際に、このシートのスキュ及びレジストを矯正するアライニング手段40が配置されている。
【0132】
図4、
図5に従ってその構成を説明する。同図に示すアライニング手段40は、シート先端を突当て規制する端縁規制部材42aと、この先端を規制されたシートを保持するニップ手段42bと、この両者を保持するベースフレーム41で構成されている。端縁規制部材42aは、シートの先端又は後端を突き当てて先端曲がりを修正(スキュ修正)するストッパ部材で構成されている。ニップ手段42bはシートを把持する爪部材で構成され、図示しない作動手段(モータ、電磁ソレノイドなど)に連結されている。
【0133】
上記ベースフレーム41は、上記端縁規制部材42aとニップ手段42bをマウント支持し、装置フレーム(不図示)にシート幅方向(搬送方向と直交する方向)に移動可能に取り付けられている。装置フレームとベースフレーム41との間には、搬送方向シフト手段MT1が、ニップ手段42bには第2シフトモータMT2が連結してある。
【0134】
上記搬送方向シフト手段MT1は
図5(b)に示すようにベースフレーム41に設けたラック歯車43rと装置フレーム側に配置したピニオン43pと、このピニオン43pに連結した第1シフトモータMO1から構成されている。
【0135】
また第2シフトモータMT2は
図5(a)に示すようにベースフレーム41に設けたタイミングベルト43tに固定され、このタイミングベルト43tには第2シフトモータMO2が連結してある。また
図5(b)に示すHPSはニップ手段42bのホームポジションセンサである。
【0136】
従ってアライニング手段40は搬送方向に移動可能に表紙給送経路34に配置され、第1シフトモータMO1で搬送方向の所定位置に移動自在となり、第2シフトモータMO2で搬送直交方向に移動自在となる。そしてこのニップ手段42bには
図5(a)に示す作動ソレノイドSOLが連結してあり、この作動ソレノイドSOLによって表紙シートの先端縁を把持するようになっている。
【0137】
従って表紙給送経路34を搬送ローラで送られた表紙シートは、その先端を端縁規制部材42aで突当て規制されスキュ(先端曲がり)修正される。その後シート先端はニップ手段42bでニップされ幅方向に幅寄せ移送されることとなる。尚上記ニップ手段42bは作動ソレノイドによらず付勢スプリングなどで付勢するように構成しても良い。
【0138】
図示の装置は画像形成装置Aから表紙シートを給送するプリンタ給紙パスPaにアライニング手段40を配置している。この場合の画像形成装置Aからの給紙動作とインサータ装置Cからの給紙動作について説明する。
【0139】
「画像形成装置からの給紙動作」
画像形成装置Aの排紙口14から搬出されたシートは、その後端がアライニング手段40を通過した位置に送る。このシートのオーバランをセンサ(図示せず)で検知し表紙シートを搬送する搬送ローラ対70a、70b(71a、71b)を停止する。そしてこの搬送ローラ7対70a、70b(71a、71b)を逆転してシート後端を端縁規制部材42aに突き当て停止する。この状態でシートの後端縁は端縁規制部材42aに倣って揃えられる。このシートの端縁が揃えられた状態でニップ手段42bでシートをグッリプ拘束する。そしてアライニング手段40のユニットをシート幅方向に移動して幅寄せする。このシート幅寄せ移動で図示しない基準位置センサがシート側端を検知して基準位置にアライニング手段40を停止する。
【0140】
「インサータ装置からの給紙動作」
インサータ装置Cから表紙シートを給送する場合には、インサータ給紙パスPbから表紙シートを給送する場合は表紙給送経路34に配置された搬送ローラ対72a、72bで第2搬入口34bからシートを搬入する。そしてこのシートが製本位置Fを通過して先端がセンサで検出されたタイミングで搬送ローラ対72a、72bを停止する。
【0141】
このときシート先端はアライニング手段40の端縁規制部材42aに突き当たって先端揃えされる。このシート先端が揃えられた状態でニップ手段42bによってシートをグリップ拘束してアライニング手段40のユニットをシート幅方向に幅寄せ移動する。このシート幅寄せ移動で図示しない基準位置センサがシート側端を検知して基準位置にアライニング手段40を停止する。このように表紙シートの整合(先端位置整合と側縁位置整合)が終了した後、製本位置Fに向けてシート搬送するように搬送ローラを回転する。