(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1は、
生地の位置合わせ装置の全体図を示したものである。
図1に示すように、
生地の位置合わせ装置1は、搬送テーブル(搬送ライン)2上の
生地Wを、所定の位置に設置した光センサ(光学センサ)3に向けて移動させ、光学センサ3で
生地Wを検知するまでの移動量等によって
生地Wの傾きを演算し、演算結果に基づいて、
生地Wの位置合わせを行うことができるものである。この実施形態では、衣類などを仕立てるうえで必要とされる種々様々な形状をした
生地Wの中から一例を説明する。なお、
生地Wは、化繊などから構成されたものであってもよい。
【0011】
この
生地の位置合わせ装置1は、例えば、ミシンに
生地Wを供給する前に、ミシンに対する
生地Wの位置合わせを行うなどの時に用いることができる。なお、
生地の位置合わせ装置1は、
生地Wの位置合わせが必要となった場合に適宜設置して使用すればよく、ミシンに対して
生地の位置合わせを行う用途に限定されない。
まず、
生地の位置合わせ装置1について詳しく説明する。
【0012】
図1に示すように、
生地の位置合わせ装置1は、移動部20と、傾き変更部21とを備えている。
移動部20は、搬送テーブル2の幅方向と直交する方向であるx軸方向と搬送テーブル2の幅方向となるy軸方向との両方向に、
生地Wを移動させることができるものである。この移動部20は、
生地Wを上方から押さえる押さえ部22と、この押さえ部22を昇降させる第1昇降機構23と、押さえ部22及び第1昇降機構23を支持する支持フレーム24と、支持フレーム24の全体を昇降させる第2昇降機構25と、支持フレーム24及び第2昇降機構25をy軸方向に移動させるy軸移動機構26と、y軸移動機構26をx軸方向に移動させるx軸移動機構27とを備えている。
【0013】
詳しくは、長尺状の支持フレーム24に所定の間隔をおいて第1昇降機構23が複数固
定されている。この第1昇降機構23はエア等により昇降するエアアクチュエータにより構成され、第1昇降機構23の昇降軸の先端部に各押さえ部22が取り付けられている。また、支持フレーム24には、スライド機構によって上下動させる第2昇降機構25が取り付けられている。
【0014】
第2昇降機構25は、支持フレーム24にスライド部材30を結合し、このスライド部材30を摺動させるレール部材31を、支持フレーム24の上方に設置し、スライド部材30をレール部材31を上下方向に摺動可能とすることによって構成されている。
y軸移動機構26は、スライド機構等によって第2昇降機構25を支持フレーム24と共にy軸方向に移動させるもので、第2昇降機構25のレール部材31を取り付けるブラケット等の取付部材32を、支持フレーム24の上方に設置されたy軸方向に伸びる第1フレーム33に摺動自在とすることによって構成されている。y軸移動機構26の駆動は、サーボモータ等の電動モータ等の動力によって行うことができる。サーボモータを採用した場合は、高精度の制御が可能である。
【0015】
x軸移動機構27もy軸移動機構26と同様にスライド機構によって構成されていて、y軸移動機構26を含めた第2昇降機構25及び支持フレーム24をx軸方向に移動させるもので、y軸移動機構26の第1フレーム33を、y軸移動機構26の上方に設置されたx軸方向に伸びる第2フレーム34に摺動自在とすることによって構成されている。x軸移動機構27の駆動は、ロッドレスシリンダや電動の巻き掛け駆動等の高速移動の動力によって行うとよい。
【0016】
傾き変更部21は、搬送テーブル2上の
生地Wの傾きを変更するものであって、第2昇降機構25のスライド部材30にブラケット35を介して電動モータ等から構成された駆動部36を取り付け、駆動部36の上下方向に向く上下回転軸37を支持フレーム24に取り付けることにより構成されている。この傾き変更部21は、後述するように搬送テーブル2上の
生地Wが所定の傾きになっていない場合、上下回転軸37を回転させることによって支持フレーム24(押さえ部22)の向きを変え、これにより、搬送テーブル2上の
生地Wの傾きを修正することができるようになっている。
【0017】
生地の位置合わせ装置1では、第1昇降機構23によって押さえ部22を下降させ、押さえ部22で搬送テーブル2上にある
生地Wを押さえる。そして、当該装置は、
生地Wを押さえた状態でx軸移動機構27がy軸移動機構26の第1フレーム33をx軸方向に移動させることにより、
生地Wを搬送テーブル2上で上方から押さえながら(
生地Wを搬送テーブル2上で滑らしながら)x軸方向に移動させることができる。
【0018】
また、
生地の位置合わせ装置1では、押さえ部22で
生地Wを押さえた状態で第2昇降機構25をy軸方向に移動させることによって支持フレーム24(
生地W)をy軸方向に移動させることができ、駆動部36の上下回転軸37を回転させることによって上下回転軸37を中心として
生地Wの角度を変えることができる。なお、第1昇降機構23によって押さえ部22を上昇させることによって押さえ込んだ
生地Wを離すことができる。また、第2昇降機構25は支持フレーム24などの全体の昇降に用いる。この実施形態では、
生地Wを搬送テーブル2に向けて押さえながらx軸方向やy軸方向に移動させるという構成となっているが、
生地Wを掴んでx方向やy方向に移動させる構成であってもよい。
【0019】
本発明の位置合わせ装置や位置合わせ方法では、従来とは異なり
生地Wを撮像して撮像した画像を画像処理によって解析しなくても、光センサ3によって簡単に
生地Wの位置合わせを行うことができる。即ち、
図1及び2に示すように、搬送テーブル2上に、少なくとも2つの光センサ3a、3bを設置し、この光センサ3a、3bに向けて
生地Wを移動させ、一方の光センサ3aによって
生地Wを検出すると共に、他方の光センサ3bによってさらに
生地Wを検出して、一方の光センサ3aが
生地Wを検出してから他方の検出センサ3bが
生地Wを検出するまでの
生地の移動距離L3を求め、この移動距離L3を用いて
生地Wの傾きを求めて、その後に、
生地Wの傾きを修正することによって
生地Wの位置合わせを行うこととしている。
【0020】
つまり、本発明では、少なくとも2つの光センサ3a、3b上に
生地Wを通過させて、光センサ3a、3bを通過したときの
生地Wの移動距離L3を用いて
生地Wの傾きを求め
ることとしている。なお、
生地Wの移動距離L3を用いるための光センサ3の数は、2つ以上であれば、それ以上であってもよい。
この実施形態では、説明の便宜上、一方の光センサ3a、即ち、先行して
生地Wを検出するものを第1検出センサ(先行検出センサ)といい、他方の光センサ3b、即ち、後で
生地Wを検出するものを第2検出センサ(後検出センサ)といい説明を進める。
【0021】
このような
生地の位置合わせ装置1は、複数の光センサ3(第1検出センサ3a、第2検出センサ3b、後述する第3検出センサ3c)と、様々な演算を行う演算部4とを備えている。
第1検出センサ3a及び第2検出センサ3bは、搬送テーブル2の上方又は下方であってy軸方向の同一ライン上(y軸方向にはズレないように)に、x軸方向に対しては所定の距離で離れて設置されている。第1検出センサ3a及び第2検出センサ3bは、
生地Wの位置合わせのため
生地Wをy軸方向に移動させたときに、
生地Wを検出するものであって、
図2(a)に示すように
生地Wが傾いているときは、第1検出センサ3aが第2検出センサ3bよりも先行して
生地Wを検出し、その後に、第2検出センサ3bで
生地を検出する。
【0022】
また、第3検出センサ3cは、
生地Wをx軸方向に移動させたときに
生地Wをx方向の所定の位置で停止させるためのものであって、当該第3検出センサ3cは、搬送テーブル2の上方又は下方であって第1検出センサ3aや第2検出センサ3bからx軸方向に離れた位置に設置されている。これら第1検出センサ3a、第2検出センサ3b、第3検出センサ3cで
生地Wを検出した検出信号は演算部4に入力されるようになっている。
【0023】
演算部4は、第1検出センサ3aや第2検出センサ3bが
生地Wを検出したときの様々な情報に基づいて
生地Wの位置ズレなどを演算するものであって、コントローラ等から構成されている。この演算部4は、移動量算出手段40と、
生地角度算出手段41とを備えている。移動量算出手段40及び
生地角度算出手段41は、コントローラに格納されたプログラム等から構成されている。
【0024】
次に、
生地Wの位置合わせ方法と共に、コントローラ(演算部4)による処理について詳しく説明する。
搬送テーブル2上にある
生地Wのy軸方向の位置合わせを行うにあたっては、
図2(a)に示すように、まず、第1検出センサ3a及び第2検出センサ3bによって搬送テーブル2上の
生地Wを検出しない位置、例えば、搬送テーブル2の手前側で
生地Wを押さえ部22で押さえ、これを移動開始位置とする。
【0025】
次に、
図2(b)に示すように、搬送テーブル2の手前側で押さえている
生地Wを搬送テーブル2上で滑らしながら、第1検出センサ3a及び第2検出センサ3bに向けて、即ち、y軸方向に手前側から奥側に移動させる。言い換えれば、
図2(a)に示すように手前側にある
生地Wを、
図2(b)に示すようにy軸方向に向けて平行移動し、平行移動させている
生地Wを第1検出センサ3a上に通過させると共に第2検出センサ3b上に通過させる。
【0026】
ここで、まず、第1検出センサ3aが
生地Wの縁部を検出すると、移動量算出手段40は、
生地Wを押さえ部22で押さえた位置(移動開始位置)から第1検出センサ3aで
生地Wの縁部を検出するまでのy軸方向の移動距離L1を求める。また、第2検出センサ3bが
生地Wの縁部を検出すると、移動量算出手段40は、移動開始位置から第2検出センサ3bで
生地Wを検出するまでのy軸方向の移動距離L2を求める。具体的には、第1検出センサ3aまでの移動距離L1や第2検出センサ3bまでの移動距離L2を、例えば、y軸移動機構26を駆動する電動モータの回転数等をエンコードして距離に換算することにより求める。なお、移動距離L1、L2の算出は、電動モータの回転数等の信号に基づいて求めるだけでなく、第1フレーム33に対する支持フレーム24等のy軸方向の移動量を他のセンサで検出してもよいし、その他の方法によって求めてもよい。
【0027】
そして、移動量算出手段40によって、第1検出センサ3aで
生地Wを検出してから第2検出センサ3bで検出するまでの
生地Wのy軸方向の移動距離L3を求める。具体的には、移動量算出手段40は、移動距離L2から移動距離L1を減算(L3=L2−L1)
することによって、移動距離L3を求める。この移動距離L3は、
生地Wの一端部側と他端部側とのy軸方向における差であって、平面視で
生地Wがx軸に対して真っ直ぐ(x軸に平行)であるときは、移動距離L3=0であり
生地Wはy軸方向に傾いていない状態である。移動距離L3>0であるときは、
生地Wはy軸方向に傾いている状態となる。
【0028】
なお、移動距離L1、L2を求めることなく直接的に移動距離L3を求めても良い。この場合、移動量算出手段40は、第1検出センサ3aで
生地Wを検出すると、第1検出センサ3aの検出時から電動モータの回転数等の信号(例えば、パルス信号)の読み込みを開始し、第2検出センサ3bにて
生地Wの検出をするまで信号の読み込みを続ける。そして、第1検出センサ3aで
生地Wを検出してから第2検出センサ3bで
生地Wを検出するまでの信号を、エンコードすることによって、移動距離L3を求める。
【0029】
移動距離L3を求めた後は、
生地角度算出手段41によって移動量算出手段40で求めた移動距離L3と、第1検出センサ3aと第2検出センサ3bとの間のセンサ間距離L4とに基づいて
生地Wの傾きθ(x軸に対する
生地Wの傾き)を求める。具体的には、
生地角度算出手段41によって、移動距離L3及びセンサ間距離L4を式(1)に入力することによって、
生地Wの傾きθを求める。
【0030】
θ=tan
-1(L3/L4) ・・・(1)
そして、
図2(c)に示すように、
生地Wの傾きθが0°よりも大きいときは、その
生地Wの傾きθ=0°となるように、
生地Wを押さえた状態で傾き変更部21によって上下軸を時計回りに回転させて
生地Wの傾きを修正し、これにより、y軸方向における
生地Wの位置合わせを行う(
生地Wの奥側の縁をx軸に対して真っ直ぐにする)。この傾き変更部21は、傾いた
生地Wを素早く直せるように上下軸の回転方向を決定して、決定した方向に回転させる(
図2(c)では上下軸を反時計回りでなく時計回りに回転させる)。
【0031】
このように、
生地の位置合わせ装置1では、
図2(a)〜
図2(c)に示した処理を行うことによって画像処理等を用いなくても、y軸方向における
生地Wの傾きを修正することができる。
さて、
生地Wの傾きを修正してy軸方向における
生地Wの位置合わせ完了後、さらに、x軸方向における位置合わせを行ってもよい。具体的には、
図2(c)に示すように、y軸方向における
生地Wの位置合わせ完了後、
生地Wを搬送テーブル2に押さえつけた状態で、
図2(d)に示すように、x軸移動機構27によって押さえた
生地Wを第3検出センサ3cに向けて移動させ、第3検出センサ3cが
生地Wを検出したときに
生地Wの移動を停止させる。このようにすれば、第3検出センサ3cで
生地Wを検出した位置が、x軸方向における
生地Wのオフセット位置(正規な位置)となるため、x軸方向における位置合わせを簡単に行うことができる。
【0032】
なお、
図3(a)に示すように、
生地Wがy軸方向に傾いていない理想状態を考えたとき、移動開始位置においては、
生地Wの縁部から第1検出センサ3aまでの距離(移動距離L1)と
生地Wの縁部から第2検出センサ3bまでの距離(移動距離L2)とは一致する。そのため、移動開始位置において理想状態となるよう置くことができる
生地Wの形状であれば、例えば、
図3(b)、(c)に示すように、
生地Wにおいて検出センサ側の縁部が左右対称のものでなくても、
生地Wの位置合わせを行うことができる。
生地Wの縁部は、曲線状でも段違い状でもよい。
【0033】
また、第1検出センサ3aや第2検出センサ3bをx軸方向に位置調整可能とし、第1検出センサ3aと第2検出センサ3bを遠ざけたり近づけたりすることによって、様々な
生地Wの形状に対応して位置合わせが可能となる。
生地Wの縁部は、この他に曲線状でも段違い状でも、位置合わせすることができる。
以上、本発明によれば、
生地Wを移動させることによって第1検出センサ3aで
生地Wを検出してから第2検出センサ3bで検出するまでの
生地Wの移動距離L3を求め、この移動距離L3と、第1検出センサ3aと第2検出センサ3bとのセンサ間距離L4とに基づいて
生地Wの傾きを求めているため、画像処理を用いなくても簡単に
生地Wの傾きを求めることができ、
生地Wの位置合わせを容易に行うことができる。また、本発明では画像処理に比べて高速化が実現できるため、生産性を向上させることができる。
【0034】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図2(b)から(c)に示すように、駆動部36の上下回転軸37を回転させることによって
生地Wの角度を変える構成となっているが、
生地Wの角度を変更後(位置合わせを完了後)、一旦、押さえ部22を上昇させて、押さえ部22と
生地Wとを離し、上下回転軸37を元の状態に復帰させた後(角度変更前に戻した後)、再び、押さえ部22を下降させて、
生地Wを搬送テーブル2に押さえながら移動させてもよい。なお、押さえ部22を上昇させるタイミングは、y軸方向における
生地Wの位置合わせ完了後でも、x軸方向における
生地Wの位置合わせ完了後でもよい。
【0035】
このように、
生地Wの持ち直し(押さえ部22の上昇→上下回転軸37の復帰→押さえ部22の下降)を、
生地Wの位置合わせ完了後に行うことによって、支持フレーム24が傾いたまま下流側に移動することが無いため、下流側において支持フレーム24等の干渉を防止することができる。特に、
生地Wの傾きが大きく、
生地Wの位置合わせを大幅に行った場合は、支持フレーム24が大きく平面視で大きく斜めになり、そのまま支持フレーム24を移動させると下流側の装置と干渉する虞があるが、
生地Wの持ち直し、即ち、支持フレーム24の復帰を行うことによって、下流側の装置と支持フレーム24との干渉を確実に防止することができる。
【0036】
上述した
生地の位置合わせ装置1や
生地の位置合わせ方法では、y軸方向における位置合わせと、x軸方向における位置合わせとの両方を行っていたが、少なくとも
生地の傾きを演算して
生地の位置合わせを行うものであれば、両方の位置(y軸方向、x軸方向)合わせを行うものでなくてもよい。また、説明の便宜上、搬送テーブル2を平面視したときに、搬送テーブル2の幅方向をy軸方向とし、長手方向(上流側から下流側に向けて移動する方向)をx軸方向としたが、x軸方向とy軸方向は逆であってもよい。
【0037】
上述した実施形態において
図2等では、
生地Wにおいて右側が左側よりも奥側に位置していて
生地Wが傾いている例(右側上がり)をとりあげているが、
生地Wにおいて左側が右側よりも奥側に位置していて
生地Wが傾いている場合(左側上がり)であっても
生地Wの位置合わせを行うことができる。
生地Wにおいて左側が右側よりも奥側に位置するような
生地Wを回転させて位置の修正を行う場合は、傾き変更部21によって上下軸を反時計回りに回転させるのが好ましい。