特許第5851777号(P5851777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱日立パワーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5851777-ボイラ装置 図000002
  • 特許5851777-ボイラ装置 図000003
  • 特許5851777-ボイラ装置 図000004
  • 特許5851777-ボイラ装置 図000005
  • 特許5851777-ボイラ装置 図000006
  • 特許5851777-ボイラ装置 図000007
  • 特許5851777-ボイラ装置 図000008
  • 特許5851777-ボイラ装置 図000009
  • 特許5851777-ボイラ装置 図000010
  • 特許5851777-ボイラ装置 図000011
  • 特許5851777-ボイラ装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851777
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】ボイラ装置
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/00 20060101AFI20160114BHJP
   F22B 37/10 20060101ALI20160114BHJP
   F22B 37/40 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   F23J15/00 G
   F22B37/10 X
   F22B37/40
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-198640(P2011-198640)
(22)【出願日】2011年9月12日
(65)【公開番号】特開2013-61100(P2013-61100A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 誠
(72)【発明者】
【氏名】東川 謙示
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−011132(JP,A)
【文献】 特開平05−180403(JP,A)
【文献】 特開平10−259720(JP,A)
【文献】 特開平10−160104(JP,A)
【文献】 特開2009−139044(JP,A)
【文献】 特開2000−065313(JP,A)
【文献】 実公昭55−014903(JP,Y2)
【文献】 実公昭52−050029(JP,Y2)
【文献】 米国特許第06257155(US,B1)
【文献】 米国特許第04721069(US,A)
【文献】 特開昭63−220012(JP,A)
【文献】 実用新案登録第2514625(JP,Y2)
【文献】 特開平09−280446(JP,A)
【文献】 実公平05−047925(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J15/00−15/08
F22B37/00
F22B37/10
F22B37/40
B01D53/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部鉄骨から吊り下げられたケージ壁後部パネルと、
そのケージ壁後部パネルの内側に設置されて流通する火炉ガスとの間で熱交換を行なう節炭器と、
その節炭器を経由した火炉ガスを導入して所定のガス処理を行うガス処理装置と、
前記節炭器の火炉ガス流れ方向上流側におけるケージ壁後部パネルの外側部分に取り付けられて、他端が前記ガス処理装置側に延びた節炭器バイパスダクトを備えて、
前記火炉ガスの温度が低いときは、火炉ガスを前記節炭器には通さないで、前記節炭器バイパスダクトを通して前記ガス処理装置に導入する構成になっているボイラ装置において、
前記ケージ壁後部パネルの外側部分に取り付ける前記節炭器バイパスダクトのガス取り出し口が、ケージ壁後部パネルの炉幅方向において2箇所以上に分割して形成され、
前記ケージ壁後部パネルがメンブレンバーと後部伝熱管を交互に組み合わせてパネル状に形成されると共に、前記メンブレンバーと、そのメンブレンバーの両側に設置された後部伝熱管との間に凹部が形成され、
前記凹部内に溶接部を介して取り付けられるプレート部材と、
前記プレート部材に溶接部を介して固定され、前記節炭器バイパスダクトを前記ケージ壁後部パネルに取り付けるためのバイパスダクト取り合い金具と、を有し、
前記ケージ壁後部パネルのうち前記プレート部材が取り付けられた部分がほぼフラットな状態となるよう形成される、ことを特徴とするボイラ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボイラ装置において、
前記複数のガス取り出し口が、前記ケージ壁後部パネルの炉幅方向において所定の間隔離して形成されていることを特徴とするボイラ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のボイラ装置において、
前記ケージ壁後部パネルの炉幅方向中央部には前記節炭器バイパスダクトのガス取り出し口は形成されておらず、前記炉幅方向中央部の両側にそれぞれガス取り出し口が形成されていることを特徴とするボイラ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のボイラ装置において、
前記節炭器バイパスダクトが、前記ケージ壁後部パネル側に配置される第1の節炭器バパスダクトと、前記ガス処理装置側に配置される第2の節炭器バイパスダクトとを備え、
前記第1の節炭器バイパスダクトと第2の節炭器バイパスダクトの間に、非金属製のエキスパンションが介在されていることを特徴とするボイラ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のボイラ装置において、
前記ケージ壁後部パネルと前記非金属製エキスパンションの間が1000mm以上離れていることを特徴とするボイラ装置。
【請求項6】
請求項1に記載のボイラ装置において、
前記節炭器バイパスダクトを前記ケージ壁後部パネルに取り付けるためのバイパスダクト取り合い金具の各コーナ部に応力集中を緩和するための丸みを付けたことを特徴とするボイラ装置。
【請求項7】
請求項1に記載のボイラ装置において、
前記ガス処理装置が脱硝酸装置であり、前記火炉ガスの温度が低いときが当該ボイラ装置の起動時であることを特徴とするボイラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラントなどに用いられる炉幅が例えば10m以上の大型のボイラ装置に係り、特にケージ壁後部パネル(ボイラ本体)と節炭器バイパスダクトの取り合い構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、この種ボイラ装置の概略構成図である。図中の符号1は火炉、2はバーナ、3は吊り下げ過熱器、4は吊り下げ再熱器、5は横置き再熱器、6は横置き過熱器、7は節炭器、8はケージ壁後部パネル、9は節炭器バイパスダクト、15は節炭器出口ダクトであり、各部材は図に示すような配置状態になっている。
【0003】
火炉ガスGは、火炉1に設置したバーナ2での燃料の燃焼によって発生した高温ガスであり、吊り下げ過熱器3、吊り下げ再熱器4、横置き再熱器5または横置き過熱器6、節炭器7の順に通過し、節炭器出口ダクト15を通して流れ、図示しない脱硝装置に供給される経路を通る。
【0004】
火炉ガスGは、前記各種熱交換器を通過する際、熱交換器に熱を奪われるため、熱交換器を通過する度に温度が徐々に下がる。ボイラ装置の通常運転時には、ガス温度が低下しても脱硝装置の運用には支障はないが、ボイラ装置の起動時などでは、火炉ガスGの温度が低いため、通常の節炭器7から節炭器出口ダクト15を通る経路で火炉ガスGを流すと、脱硝装置の運転に必要な約260〜280℃は確保できない。
【0005】
そこでボイラ装置の起動時に節炭器7による火炉ガスGの熱吸収を防ぐため、図6に示すように、節炭器7の火炉ガス流れ方向上流側に節炭器バイパスダクト9を設置し、節炭器7を通さないことで火炉ガス温度の低下を防ぎ、脱硝装置に火炉ガスGを供給している。
【0006】
この節炭器バイパスダクト9は、ケージ壁後部パネル8に設置されている。すなわち、ケージ壁後部パネル8のメンブレンバー12(例えば図10図11参照)を部分的に取り除くことでガス取り出し口を形成し、そこに節炭器バイパスダクト9を接続することにより、火炉ガスGを節炭器バイパスダクト9に送り込む構造になっている。
【0007】
図7ないし図11は従来の節炭器バイパスダクト9付近の構造を説明するための図であり、図7はケージ壁後部パネル8と節炭器バイパスダクト9の取り合い構造の側面図、図8図7のA−A矢視図、図9図8のB−B矢視図である。また、図10および図11はケージ壁後部パネル8とバイパスダクト取り合い金具10の取り合い構造を示す図であり、図10図8に示すコーナ部17の詳細図、図11図10のD−D矢視図である。
【0008】
図8に示すように、ケージ壁後部パネル8および節炭器バイパスダクト9に設置されているバイパスダクト取り合い金具10の横幅は、ケージ壁後部パネル8(ボイラ本体)の炉幅Wとほぼ同等の大きさとなっている。従って、バイパスダクト取り合い金具10(節炭器バイパスダクト9)の内側に形成されるガス取り出し口18(斜線部分)も、ケージ壁後部パネル8(ボイラ本体)の炉幅Wとほぼ同等の1600mmの大きさとなっている。
【0009】
また図7に示すように、金属製の第1のエキスパンション11aが、ケージ壁後部パネル8(ボイラ本体)の近傍、すなわち、バイパスダクト取り合い金具10と第1の節炭器バイパスダクト9aの間に配置されおり、第1のエキスパンション11aはケージ壁後部パネル8(ボイラ本体)に対して300mm程度しか離れていない。
【0010】
さらに図8ならびに図10に示すように、バイパスダクト取り合い金具10の4隅のコーナ部17は、応力集中し易い角型形状となっている。
また、ケージ壁後部パネル8は後部伝熱管8aとメンブレンバー12を交互に組み合わせてパネル状に形成しているため、図11に示すように平面形状がほぼ波型形状(凹凸形状)になっており、バイパスダクト取り合い金具10も、ケージ壁後部パネル8の形状に合わせてほぼ波型形状に形成されている。そしてバイパスダクト取り合い金具10を、ケージ壁後部パネル8の後部伝熱管8aに直接溶接19する構造となっている。さらに、バイパスダクト取り合い金具10の補強部材14(板状部材)もケージ壁後部パネル8の後部伝熱管8aに直接溶接19していた。
【0011】
図7ならびに図9に示す符号Gは火炉ガス、図7に示す符号11bは第1の節炭器バイパスダクト9aと第2の節炭器バイパスダクト9bの間に設置された金属製の第2のエキスパンションである。
【0012】
なお、ボイラ本体と節炭器バイパスダクトの取り合い構造に関しては、例えば下記特許文献1〜3などを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実用新案登録第2514625号公報
【特許文献2】実開昭63−167006号公報
【特許文献3】実公平5−47925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来のボイラ装置は、図8ならびに図9に示すように、節炭器バイパスダクト9ならびにバイパスダクト取り合い金具10の横幅がケージ壁後部パネル8(ボイラ本体)の横幅(炉幅W)とほぼ同じ大きさになっている。
【0015】
ここでボイラ装置の運用(起動)時には、ケージ壁後部パネル8と節炭器バイパスダクト9ならびにバイパスダクト取り合い金具10との間には温度差があり、さらに節炭器バイパスダクト9、バイパスダクト取り合い金具10のサイズが大きいため、ケージ壁後部パネル8との間で大きな熱伸び差が発生し、それが節炭器バイパスダクト9とケージ壁後部パネル8のバイパスダクト取り合い金具10に悪影響を与えている。
【0016】
また、図10に示すように、バイパスダクト取り合い金具10の全てのコーナ部17は、角型形状となっており応力集中し易い構造になっている。
【0017】
さらに、図11に示すように、バイパスダクト取り合い金具10ならびに補強部材14が、ケージ壁後部パネル8の後部伝熱管8aに直接溶接19しているため、バイパスダクト取り合い金具10や補強部材14に割れが発生した場合、ケージ壁後部パネル8の後部伝熱管8a側に進展する可能性が高い。
【0018】
ケージ壁後部パネル8(ボイラ本体)は、図6に示すように上部鉄骨20より吊り下げられた構造であることから、ボイラ装置の運用(起動)時にはケージ壁後部パネル8(ボイラ本体)に下方向に熱伸びが発生する。
【0019】
従来のボイラ装置は前述のような構造になっており、節炭器バイパスダクト9(9a)のエキスパンション11(11a)がケージ壁後部パネル8(ボイラ本体)の近傍(300mm程度近傍)に設置されているため、前述のケージ壁後部パネル8(ボイラ本体)の熱伸びの影響を大きく受け、エキスパンション11(11a)が破損するという問題がある。
【0020】
このようなことから、運用中のボイラ装置では、定期検査毎の点検、検査および補修が必要となり、そのために多大な作業時間と費用を費やしていた。
【0021】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、ケージ壁後部パネルと節炭器バイパスダクトの取り合い構造での、熱伸び差に基づく熱応力が低減できる、信頼性の高いボイラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、
上部鉄骨から吊り下げられたケージ壁後部パネルと、
そのケージ壁後部パネルの内側に設置されて流通する火炉ガスとの間で熱交換を行なう節炭器と、
その節炭器を経由した火炉ガスを導入して所定のガス処理を行うガス処理装置と、
前記節炭器の火炉ガス流れ方向上流側におけるケージ壁後部パネルの外側部分に取り付けられて、他端が前記ガス処理装置側に延びた節炭器バイパスダクトを備えて、
前記火炉ガスの温度が低いときは、火炉ガスを前記節炭器には通さないで、前記節炭器バイパスダクトを通して前記ガス処理装置に導入する構成になっているボイラ装置において、
前記ケージ壁後部パネルの外側部分に取り付ける前記節炭器バイパスダクトのガス取り出し口が、ケージ壁後部パネルの炉幅方向において2箇所以上に分割して形成され、
前記ケージ壁後部パネルがメンブレンバーと後部伝熱管を交互に組み合わせてパネル状に形成されると共に、前記メンブレンバーと、そのメンブレンバーの両側に設置された後部伝熱管との間に凹部が形成され、
前記凹部内に溶接部を介して取り付けられるプレート部材と、
前記プレート部材に溶接部を介して固定され、前記節炭器バイパスダクトを前記ケージ壁後部パネルに取り付けるためのバイパスダクト取り合い金具と、を有し、
前記ケージ壁後部パネルのうち前記プレート部材が取り付けられた部分がほぼフラットな状態となるよう形成される、ことを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記複数のガス取り出し口が、前記ケージ壁後部パネルの炉幅方向において所定の間隔離して形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の第3の手段は前記第2の手段において、
前記ケージ壁後部パネルの炉幅方向中央部には前記節炭器バイパスダクトのガス取り出し口は形成されておらず、前記炉幅方向中央部の両側にそれぞれガス取り出し口が形成されていることを特徴とするものである。
【0026】
本発明の第の手段は前記第1の手段において、
前記節炭器バイパスダクトが、前記ケージ壁後部パネル側に配置される第1の節炭器バイパスダクトと、前記ガス処理装置側に配置される第2の節炭器バイパスダクトとを備え、
前記第1の節炭器バイパスダクトと第2の節炭器バイパスダクトの間に、非金属製のエキスパンションが介在されていることを特徴とするものである。
【0027】
本発明の第の手段は前記第の手段において、
前記ケージ壁後部パネルと前記非金属製エキスパンションの間が1000mm以上離れていることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の第の手段は前記第1の手段において、
前記節炭器バイパスダクトを前記ケージ壁後部パネルに取り付けるためのバイパスダクト取り合い金具の各コーナ部に応力集中を緩和するための丸みを付けたことを特徴とするものである。
【0029】
本発明の第の手段は前記第1の手段において、
前記ガス処理装置が脱硝酸装置であり、前記火炉ガスの温度が低いときが当該ボイラ装置の起動時であることを特徴とするのである。
【発明の効果】
【0030】
本発明は前述のような構成になっており、ケージ壁後部パネルと節炭器バイパスダクトの取り合い構造での、熱伸び差に基づく熱応力が低減できる、信頼性の高いボイラ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るケージ壁後部パネルと節炭器バイパスダクトの取り合い構造を示す側面図である。
図2図1のE−E矢視図である。
図3図2のF−F矢視図である。
図4】ケージ壁後部パネルとバイパスダクト取り合い金具の取り合い構造を示す図であり、図2に示すコーナ部の詳細図である。
図5図4のH−H拡大矢視図である。
図6】ボイラ装置の概略構成図である。
図7】従来のケージ壁後部パネルと節炭器バイパスダクトの取り合い構造の側面図である。
図8図7のA−A矢視図である。
図9図8のB−B矢視図である。
図10】ケージ壁後部パネルとバイパスダクト取り合い金具の取り合い構造を示す図であり、図8に示すコーナ部の詳細図である。
図11図10のD−D矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
図1は本発明の実施形態に係るケージ壁後部パネル8と節炭器バイパスダクト9の取り合い構造を示す側面図、図2図1のE−E矢視図、図3図2のF−F矢視図である。また、図4および図5はケージ壁後部パネル8とバイパスダクト取り合い金具10の取り合い構造を示す図であり、図4図2に示すコーナ部17の詳細図、図5図4のH−H拡大矢視図である。
【0033】
ボイラ装置全体の概略構成は図6とほぼ同じであるので、その図示は省略する。ボイラ装置の起動時に、約260〜280℃の火炉ガスGを後流側の脱硝装置に供給するための節炭器バイパスダクト9(9a,9b)は、ケージ壁後部パネル8と節炭器出口ダクト15の間に設置されている。
【0034】
本発明の実施形態に係る節炭器バイパスダクト構造は、ケージ壁後部パネル8と、節炭器バイパスダクト9と、バイパスダクト取り合い金具10と、メンブレンバー12と、ケージ壁後部パネル8とバイパスダクト取り合い金具10を繋ぐためのフィラプレート13と、補強部材14と、非金属製のエキスパンション16とから主に構成されている。
【0035】
図1に示すように、節炭器バイパスダクト9は、バイパスダクト取り合い金具10を介して、ケージ壁後部パネル8に設置されている。各部の取り合い部には、シール溶接が施されている。
【0036】
第1の節炭器バイパスダクト9aと第2の節炭器バイパスダクト9bの間には、非金属製エキスパンション16が介在されており、前記第2の節炭器バイパスダクト9bの他端部は節炭器出口ダクト15の途中に接続されている。
【0037】
図2ならびに図3に示すように、節炭器バイパスダクト9(9a,9b)とバイパスダクト取り合い金具10は、ケージ壁後部パネル8の全幅にわたっては設けられておらず、2箇所以上(本実施形態では2箇所)に分割されている。従って、節炭器バイパスダクト9とバイパスダクト取り合い金具10の横幅は、ケージ壁後部パネル8(ボイラ本体)の炉幅Wの1/2以下の大きさになっている。
【0038】
従って、ガス取り入れ口18もケージ壁後部パネル8の炉幅方向に沿って複数に分割され、個々のガス取り入れ口18は炉幅方向にわたって所定の間隔離れている。本実施形態では図2に示すように、炉幅W16000mmに対してガス取り入れ口18の横幅は7400mmとなっている。
【0039】
なお、節炭器バイパスダクト9とバイパスダクト取り合い金具10の縦幅は、所定量の火炉ガスGを脱硝装置に送り込まなくてはいけないため、従来の節炭器バイパスダクト9とバイパスダクト取り合い金具10の縦幅とほぼ同寸かあるいは若干大きく設計されている。
【0040】
このように節炭器バイパスダクト9とバイパスダクト取り合い金具10を横幅方向にわたって複数に分割することにより、ケージ壁後部パネル8と節炭器バイパスダクト9(9a,9b)の熱伸び差を小さくして、節炭器バイパスダクト9(9a,9b)ならびにバイパスダクト取り合い金具10に発生する熱応力の低減を図っている。
【0041】
本実施形態では図2ならびに図3に示すように、ケージ壁後部パネル8の炉幅方向中央部21には節炭器バイパスダクト9のガス取り出し口18は形成されておらず、前記炉幅方向中央部21の両側にそれぞれガス取り出し口18が形成されている。従って、ケージ壁後部パネル8の炉幅方向中央部21には、ケージ壁後部パネル8が残ったままの状態になっている。
【0042】
火炉ガスGは、ボイラ本体の炉幅方向中央部21において流れ易く、流速が速く、ガス温度も高い傾向にある。そのため、図8に示すように従来の構造では、節炭器バイパスダクト9のガス取り出し口18の横幅がボイラ本体の炉幅Wとほぼ同等の大きさであるため、前述の火炉ガスGの流速分布や温度分布を殆どそのまま維持した状態で脱硝装置内に流れ込むから、十分な脱硝効率が得られないという問題がある。
【0043】
これに対して本実施形態では、ケージ壁後部パネル8の炉幅方向中央部21には節炭器バイパスダクト9のガス取り出し口18を形成しないで、ケージ壁後部パネル8を残しておき、その炉幅方向中央部21の両側にガス取り出し口18を形成している。
【0044】
そのためボイラ本体の炉幅方向中央部21を流れていた火炉ガスGが、前記炉幅方向中央部21のケージ壁後部パネル8部分に衝突して左右に拡がり、ボイラ本体の炉幅方向両側部を流れていた火炉ガスGと混合しながらガス取り出し口18に流れ込む。そのため流速分布や温度分布がなくなった火炉ガスGを脱硝装置内に送り込むことができるから、高い脱硝効率が得られる。
【0045】
また、図4に示すように、バイパスダクト取り合い金具10は、四隅のコーナ部17を全て丸味を有する形状(R型形状)とすることで、コーナ部17における応力集中の低減を図っている。
【0046】
前記ケージ壁後部パネル8は、メンブレンバー12と後部伝熱管8aを交互に組み合わせてパネル状に形成したものであり、図5に示すように、メンブレンバー12と、そのメンブレンバー12の両側に設置された後部伝熱管8aによって凹部が形成されている。
【0047】
本実施形態では、図5に示すように、前記凹内に平板状のフィラプレート13を挿入して、メンブレンバー12にフィラプレート13を溶接で取り付け、バイパスダクト取り合い金具10の取り付け部をほぼフラットな状態にする。そして、フィラプレート13にバイパスダクト取り合い金具10を溶接して取り付け、後部伝熱管8aとバイパスダクト取り合い金具10との直接溶接を避けている。
【0048】
図5中の符号19は、バイパスダクト取り合い金具10とフィラプレート13の溶接部を示している。このようにすれば、前記溶接部19に割れが発生してもそれがケージ壁後部パネル8の後部伝熱管8a側に進展することはない。
【0049】
また補強部材14についても前述と同様で、図4に記すように、補強部材14の設置位置での、メンブレンバー12と、そのメンブレンバー12の両側に設置された後部伝熱管8aによって形成される凹部内に平板状のフィラプレート13を挿入して、フィラプレート13をメンブレンバー12に溶接固定する。そして、フィラプレート13に補強部材14を溶接して取り付けることにより、後部伝熱管8aと補強部材14との直接溶接を避けている。
【0050】
さらにまた、図1に示すように、火炉ガスGの流れ方向上流側に配置される第1の節炭器バイパスダクト9aと第2の節炭器バイパスダクト9bの間には、例えば四弗化エチレン樹脂などからなる非金属製エキスパンション16が設置されている。このように金属製のものよりも伸び許容の大きい非金属製のエキスパンション16を用いることにより、エキスパンションの設置個数が削減でき、設置作業の簡素化とコストの低減が図れる。
【0051】
この非金属製エキスパンション16は、ボイラ本体の下方への熱伸びの影響をさらに緩和するため、ケージ壁後部パネル8との取り合い部より、1000mm以上(本実施形態では1000mm)離れた位置、すなわち従来よりも約3以上離れた位置に設置されている。
【符号の説明】
【0052】
1・・・火炉、2・・・バーナ、3・・・吊り下げ過熱器、4・・・吊り下げ再熱器、5・・・横置き再熱器、6・・・横置き過熱器、7・・・節炭器、8・・・ケージ壁後部パネル、8a・・・後部伝熱管、9・・・節炭器バイパスダクト、9a・・・第1の節炭器バイパスダクト、9b・・・第2の節炭器バイパスダクト、10・・・バイパスダクト取り合い金具、13・・・ボイラ装置、14・・・脱硝装置、17・・・吸収液循環ポンプ、12・・・メンブレンバー、13・・・フィラプレート、14・・・補強部材、15・・・節炭器出口ダクト、16・・・非金属製エキスパンション、17・・・コーナ部、18・・・ガス取り出し口、19・・・溶接部、20・・・上部鉄骨、21・・・ケージ壁後部パネルの炉幅方向中央部、G・・・火炉ガス、W・・・炉幅。
図1
図3
図5
図7
図9
図11
図2
図4
図6
図8
図10