(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(廃棄物浸出水の窒素処理方法)
本発明の廃棄物浸出水の窒素処理方法は、電気分解工程と、散布工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0014】
<電気分解工程>
前記電気分解工程としては、最終処分場から浸出した浸出水を電気分解処理する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
最終処分場から浸出した浸出水は、最終処分場にある廃棄物を浸透して発生した浸出水ということもできる。
【0015】
−最終処分場−
前記最終処分場は、廃棄物を処分する施設であり、ごみ処理場、ごみ埋立地、埋立処分場などとも呼ばれる。
【0016】
産業廃棄物最終処分場の環境管理(社団法人 全国産業廃棄物連合会,p.158,表II−22,発行日2010年3月29日)によれば、最終処分場からの浸出水中の全窒素濃度は、8つの最終処分場における調査結果から、それぞれの最終処分場における平均値が170mg/L〜820mg/Lであると報告されている。そのため、浸出水には脱窒素処理が必要である。
【0017】
前記最終処分場の大きさ、形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記最終処分場の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、浸出水のCOD(化学的酸素要求量)、及びBOD(生物化学的酸素要求量)を低減できる点から、好気性埋立構造、準好気性埋立構造が好ましい。なお、好気性埋立構造、及び準好気性埋立構造は、構造上の相違点がある。即ち、準好気性埋立構造では、集排水管に十分な大きさを持たせ、その開口部を大気に放出させている。また、集排水管の周りを栗石等で巻くことにより、集排水管及び栗石等から酸素が埋立地内に供給され、好気性領域を拡大し安定化を図っている。一方、好気性埋立構造では、集排水管の他に、空気挿入管を設け、これにより強制的に空気を挿入し、廃棄物層内部を更に好気性状態にしている。
前記好気性埋立構造及び前記準好気性埋立構造の場合、ガス抜き設備による送気又はごみの発酵熱による自然対流などにより廃棄物に空気が流入されるため、好気性の微生物により、浸出水のCOD(化学的酸素要求量)、及びBOD(生物化学的酸素要求量)を低減できる。
一方、前記最終処分場にある廃棄物中には、硝化菌が存在する。前記硝化菌がアンモニア態窒素を硝化すると、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素が発生する。硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素は、後述する電気分解処理では窒素ガス(N
2)に変換できない。しかし、本発明では、前記散布工程により、前記廃棄物中の硝化菌の活動を抑制できる(即ち硝化菌の量を調整できる)ことから、廃棄物中での硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の増加を抑制できる。即ち、浸出水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の増加を抑制できる。
【0018】
−廃棄物−
前記最終処分場にある廃棄物は、塩化物イオンを含有することが好ましい。前記廃棄物が塩化物イオンを含有することにより、後述する電気分解処理において必要とする塩素源を浸出水に添加する必要がなくなる。即ち、前記浸出水は、塩化物イオンを添加することなく、塩化物イオンを有することになる。
【0019】
前記廃棄物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、焼却処理された廃棄物を含むことが好ましい。廃棄物を焼却処理する際には、廃棄物から発生する塩化水素ガス、亜硫酸ガスなどを除去する目的で、石灰粉が使用される。そうすると、塩化水素ガス及び亜硫酸ガスは、それぞれ塩化カルシウム及び硫酸カルシウムになる。そのため、前記焼却処理された廃棄物は、塩素源となる塩化カルシウム、即ち塩化物イオンを有する。
なお、一般的な、最終処分場からの浸出水の塩化物イオン濃度は、7,000mg/L〜20,000mg/Lともいわれている。
【0020】
−浸出水−
前記浸出水としては、前記最終処分場から浸出した浸出水、言い換えれば、最終処分場にある廃棄物から浸出した浸出水であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記最終処分場には、通常、集排水管が接続されており、雨水などが前記最終処分場にある廃棄物を浸透して発生した浸出水は、集排水管から排水される。
前記浸出水には、前述のとおり、窒素が含有されている。前記窒素は、アンモニア態窒素、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素として存在しているが、大部分はアンモニア態窒素である。
【0021】
−電気分解処理−
前記電気分解処理としては、次亜塩素酸イオンを用い前記浸出水中のアンモニア態窒素を窒素ガス(N
2)に変換する処理であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
前記電気分解処理は、例えば、電解槽を用いて行うことができる。
前記電解槽の形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陽極と陰極とを有する槽などが挙げられる。前記陽極の材質としては、例えば、白金電極、酸化チタンに白金を被覆した電極、酸化鉛電極、イリジウムスズ電極、DSA(白金族金属酸化物型電極)などが挙げられる。前記陰極の材質としては、例えば、ステンレス、鉄、酸化チタン、銅などが挙げられる。
前記電気分解処理における電極間距離としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記電気分解処理における電圧としては、前記浸出水の導電率、電極間距離などに応じて適宜選択することができ、例えば、2V〜10Vなどが挙げられる。
【0023】
前記浸出水中には、アンモニア、及び塩化物イオンが含有されている。そこで、前記浸出水を電気分解すると、塩化物イオンから生成される次亜塩素酸イオンとアンモニアとが反応し、アンモニアが窒素ガス(N
2)に変換される。その反応の詳細を以下に示す。
【化1】
【0024】
上記反応式(1)は、アンモニアと次亜塩素酸イオンとから窒素ガス(N
2)を生成する全体反応を示す反応式である。上記反応式(2)〜(4)は、中間生成物の生成反応の反応式である。
また、電解槽内での上記反応の様子を
図1に示す。
図1に示すように、電解槽内では、陽極において塩化物イオンが塩素に変換され、その塩素から次亜塩素酸イオンが生成する。生成した次亜塩素酸イオンは、アンモニアと反応し、アンモニアは窒素ガス(N
2)に変換され、浸出水から除去される。
【0025】
<散布工程>
前記散布工程としては、前記電気分解工程後の前記浸出水の一部を前記最終処分場にある前記廃棄物に散布する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
一般に最終処分場にある廃棄物は、不燃性廃棄物又は焼却残渣主体の廃棄物ではあるが、有機物を全く含まないわけではない。そのため、浸出水中には有機物も含まれることになる。そして、最終処分場は、通常、ガス抜き設備等が設けられ通気下で管理されている。このことから好気性微生物が廃棄物に存在し、有機物の酸化分解作用とともにアンモニア態窒素の硝化により、亜硝酸態窒素及び硝酸態窒素が発生する。一旦、アンモニアが亜硝酸や硝酸になると、塩素による分解はできないため、できるだけアンモニア態窒素をそのまま浸出水処理設備へと導入することが望まれる。
【0027】
前記電気分解工程では、発生した塩素は、次亜塩素酸イオンとしてアンモニアの分解に利用されるが、一部の次亜塩素酸は、前記浸出水中に残留している。即ち、前記電気分解工程後の前記浸出水は、次亜塩素酸を含有している。そこで、次亜塩素酸を含有した前記浸出水の一部を前記最終処分場にある前記廃棄物に散布することで、次亜塩素酸により前記最終処分場にある前記廃棄物中の硝化菌の活動が抑制され(即ち、硝化菌の量を調整でき)、前記廃棄物中での硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の増加を抑制できる。また、次亜塩素酸により有機物分解菌を滅菌することができる。また、次亜塩素酸によりCOD負荷成分及びBOD負荷成分を低減することができる。
【0028】
前記散布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプリンクラーによる散布、ホースによる散布などが挙げられる。
前記散布は、前記最終処分場の全面に行ってもよいし、一部に行ってもよい。
【0029】
前記散布に用いる前記電気分解工程後の前記浸出水の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記最終処分場にある前記廃棄物を浸透して発生した前記浸出水の0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましい。また、前記散布に用いる前記電気分解工程後の前記浸出水が含有する残留塩素の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mg/L〜500mg/Lが好ましく、10mg/L〜200mg/Lがより好ましい。前記残留塩素の濃度が、1mg/L未満であると、滅菌効果が低いことがあり、500mg/Lを超えると、残留塩素を生成するのに消費する電力が高くなりコストがかかり過ぎることがある。
【0030】
前記散布工程は、不燃性廃棄物又は焼却残渣主体の廃棄物を有する最終処分場では、確実な効果がある。
即ち、不燃性廃棄物又は焼却残渣主体の最終処分場で本発明の廃棄物浸出水の窒素処理方法を用いると、浸出水中の窒素の大部分はアンモニア態窒素となり電気分解工程だけで脱窒素処理ができる。また浸出水中のBOD負荷は、元々低く且つ滅菌効果でさらに低減するうえに、電気分解工程においても酸化され低減されるので、簡易な生物処理プロセスで処理できる。また、負荷が低い場合には生物処理を必要としない。
【0031】
一方、可燃性廃棄物主体の最終処分場では、堆積部においてBOD及びCOD酸化分解とアンモニア態窒素の硝化作用は、逐次又はほぼ同時に起こることが予想されるが、電気分解工程後の浸出水の散布効果は、アンモニア態窒素の硝化防止により寄与する。なぜなら、有機物の分解菌よりも硝化菌の方が、比増殖速度が小さいので、消毒剤散水(塩素含有水の散布)の影響を受け易いからである。そして、生物学的処理設備の設計は、BOD及びCOD負荷成分主体の設備設計よりは、むしろ窒素成分主体の設備設計によって、規模の大きさが決まるため、アンモニア態窒素の硝化防止は、設備設計の負担を大きく軽減する。
即ち、可燃性廃棄物主体の最終処分場で本発明の廃棄物浸出水の窒素処理方法を用いると、浸出水中の窒素の大部分はアンモニア態窒素であり、かつ浸出水はBOD負荷のある水となるので、窒素は電気分解で処理し、かつBOD負荷成分は通常の生物処理プロセスで処理することになる。
【0032】
本発明の廃棄物浸出水の窒素処理方法の一例を図を用いて説明する。
図2は、本発明の廃棄物浸出水の窒素処理方法の一例を示す概略図である。最終処分場に降った雨は、廃棄物を浸透して浸出水となり、集排水管により集められる。集まった浸出水は、浸出水電解処理設備へ送られ、電気分解処理される。電気分解処理後の浸出水の一部は、最終処分場へ戻され、廃棄物に散布される。他の浸出水は、汚泥の処理や他の処理に送られる。
【0033】
本発明の廃棄物浸出水の窒素処理方法は、最終処分場から発生する浸出水を簡易で安価に脱窒素処理できる。
即ち、本発明の廃棄物浸出水の窒素処理方法は、生物学的脱窒方法と比較して、簡単な設備で行うことができ、処理時間が短く、安価である。
また、次亜塩素酸ナトリウムの添加による不連続点塩素処理方法と比較して、次亜塩素酸ナトリウムを添加する必要がないため、処理コストが低い。また、不連続点塩素処理方法では、アンモニア態窒素量に対して大過剰な次亜塩素酸を添加しない限り亜硝酸態窒素及び硝酸態窒素の増加を抑制できないのに対して、本発明の廃棄物浸出水の窒素処理方法では、亜硝酸態窒素及び硝酸態窒素の増加を抑制できるため、亜硝酸態窒素及び硝酸態窒素を処理する負担が軽減される又は亜硝酸態窒素及び硝酸態窒素の処理が必要ない。
更に、浸出水中の有機物が低減されているので、接触曝気法、生物ろ過法などの簡易な生物処理法でBODを低減できる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の廃棄物浸出水の窒素処理方法の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
本実施例における水質の各項目の測定方法は以下のとおりである。
(1)全窒素濃度:JIS K 0102 45.1に規定の総和法に従って測定した。
(2)アンモニア態窒素濃度:試料をアルカリ性として蒸留分離し、インドフェノール青吸光光度法により分光光度計(UVmini−1240、島津製作所製)を用いて測定した。
(3)硝酸態窒素濃度:検水をイオンクロマトグラフィー(DX−120、日本ダイオネクス株式会社製)を用いて測定した。
(4)亜硝酸態窒素濃度:検水をイオンクロマトグラフィー(DX−120、日本ダイオネクス株式会社製)を用いて測定した。
(5)有機態窒素濃度:ケルダール法を用いて、アンモニア態窒素濃度と有機態窒素濃度の合計濃度を求め、そこからアンモニア態窒素濃度を差し引くことで有機態窒素濃度を測定した。
(6)CODMn(化学的酸素要求量):JIS K 0102工場排水試験方法に従って滴定法により測定した。
(7)BOD(生物化学的酸素要求量):JIS K 0102−21に定められる方法に従って測定した。
(8)残留塩素濃度:ヨウ素滴定法(検水を弱酸性にして、ヨウ化カリウムを加え、ヨウ素を遊離させ、そのヨウ素を、デンプンを指示薬として、還元剤であるチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する方法)により測定した。
【0036】
(実施例1)
産業廃棄物最終処分場の環境管理(社団法人 全国産業廃棄物連合会,p.158,表II−22,発行日2010年3月29日)には、最終処分場からの浸出水中の全窒素濃度は、8つの最終処分場における調査結果から、それぞれの最終処分場における平均値が170mg/L〜820mg/Lであると報告されている。
即ち、最終処分場にある廃棄物を浸透して発生する浸出水には窒素が含有されており、また、最終処分場の準好気性埋立構造の機能が十分である場合には、最終処分場中に硝化菌が存在する。
そこで、試験浸出水を用い、電気分解処理を行い、更に電気分解処理後の試験浸出水を、最終処分場を想定したカラム試験に供した。具体的方法は以下のとおりである。
【0037】
<試験浸出水1>
試験浸出水1には、実際の最終処分場(グリーンフィル小坂、準好気性埋立構造、秋田県大館市、グリーンフィル小坂株式会社)から発生する浸出水を用いた。試験浸出水1の水質を表1に示す。なおこの浸出水は汚泥10mg/Lを含んでいた。
【0038】
<硝化菌の培養>
前記試験浸出水1を用いて硝化菌の培養を行った。この培養により、硝化菌を含有した汚泥を得た。培養方法を以下に示す。
【0039】
−合成下水の調製−
下記組成のA液50mL、B液1.35mL、C液5mL、D液50mL、E液5mL、及びポリペプトン0.75gを混合して合成下水を調製した。
A液:グルコース 50g/L
B液:K
2HPO
4 22g/L、KH
2PO
4 8.5g/L、Na
2HPO
4・2H
2O 44.6g/L、NH
4Cl 1.7g/L
C液:MgSO
4・7H
2O 22.5g/L、FeCl
3・6H
2O 0.25g/L
D液:NH
4Cl 46.4g/L
E液:CaCl
2 27.5g/L
A液〜E液はいずれも蒸留水を用いた水溶液である。
(薬剤はいずれも和光純薬工業社製)
【0040】
−培養−
前記合成下水に前記試験浸出水1を混合し合計5Lの液を得た。この液を、5Lの反応槽に入れて曝気して、発生した汚泥を沈殿させ、上澄みを前記合成下水と入れ換える操作を2日に1回、合計30回行った。
この時に用いた試験浸出水1中のアンモニア濃度は、20mg/L〜50mg/Lであり、塩素濃度は、15,000mg/L〜18,000mg/Lであった。これにより、硝化菌を含有する汚泥を乾燥重量で15g得た。
【0041】
<電気分解工程による電解処理水(電気分解工程後の浸出水)の調製>
前記試験浸出水1 1L中に、チタン製の陰極と、酸化チタンに白金をコーティングした不溶性電極とを配置し、電極間距離5mm、電流値50A、電圧7Vで通電し、5分間電気分解処理を行い、電解処理水1(電気分解工程後の浸出水)を得た。電気分解処理を行うことにより、次亜塩素酸イオンが生成し、アンモニア態窒素が窒素として除去された。また、このときの残留塩素濃度は60mg/Lであった。電解処理水1(電気分解工程後の浸出水)の水質を表1に示す。
電気分解工程を行うことにより、試験浸出水1中のアンモニア態窒素、有機態窒素、及びCODMnが大幅に減少した。一方、硝酸態窒素、及び亜硝酸態窒素はほとんど変化がなかった。なお、CODMnの減少は、有機物が陽極で酸化されたためと考えられる。
【0042】
<最終処分場を想定したカラム試験(散布工程)>
最終処分場を想定したカラム試験(散布工程)を行った。
カラム試験に用いた廃棄物は、実際に最終処分場(グリーンフィル小坂、秋田県大館市、グリーンフィル小坂株式会社)へ受け入れを行っている固化灰を用いた。固化灰400gに対して、前記硝化菌の培養において作製した硝化菌を含有する汚泥を乾燥重量で5g混合し、直径50mmの円筒型のカラムに充填した。降水量20mm/日間を想定し、約40mL/日間となるようにカラム内へ前記試験浸出水1を滴下した(実際には4時間おきに、6.7mLを添加)。その際、硝化菌の活動を抑制するために、前記電解処理水1を4mL/日間で滴下した(実際には4時間おきに0.67mLを添加)。通水は144時間実施した。通水開始から48時間後〜72時間後のカラム通過液と、120時間後〜144時間後のカラム通過液を採取し、分析を行った。その結果を表2に示す。
その結果、試験浸出水1に対して電解処理水1を10分の1(10質量%)加えた場合(電解処理後の水を処分場へ返送する場合を想定)、硝酸態窒素の濃度(1mg/L以下)は試験浸出水1の硝酸態窒素の濃度(1mg/L以下)と比較して増加せず、硝化が起こっていないことが確認された。
【0043】
(比較例1)
実施例1のカラム試験において、カラム内へ電解処理水1を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、カラム試験を行った。その結果を表2に示す。
電解処理を添加しなかった場合は、カラム内で硝化反応が起き、硝酸態窒素濃度(48時間後〜72時間後が18mg/L、120時間後〜144時間後が19mg/L)は、試験浸出水1の硝酸態窒素濃度(1mg/L以下)と比較して増加していた。
【0044】
(実施例2)
<模擬浸出水の調製>
実施例1で用いた試験浸出水1の全窒素濃度は、産業廃棄物最終処分場の環境管理(社団法人 全国産業廃棄物連合会,p.158,表II−22,発行日2010年3月29日)に記載された浸出水中の全窒素濃度と比べて低かったため、前記試験浸出水1に薬剤(塩化アンモニウム、和光純薬工業社製)を添加して前記試験浸出水1中のアンモニア態窒素濃度を増加させ、全窒素濃度が300mg/Lとなるようにし、試験浸出水2を調製した。
【0045】
<電気分解工程による電解処理水(電気分解工程後の浸出水)の調製>
アンモニア濃度を調整した前記模擬浸出水(試験浸出水2)1L中に、チタン製の陰極と、酸化チタンに白金をコーティングした不溶性電極とを配置し、電極間距離5mm、電流値50A、電圧7Vで通電し、150分間電気分解処理を行い、電解処理水2(電気分解工程後の浸出水)を得た。電気分解処理を行うことにより、次亜塩素酸が生成し、アンモニア態窒素が窒素として除去された。また、このときの残留塩素濃度は73mg/Lであった。電解処理水2(電気分解工程後の浸出水)の水質を表1に示す。
電気分解工程を行うことにより、試験浸出水2中のアンモニア態窒素、有機態窒素、及びCODMnが大幅に減少した。一方、硝酸態窒素、及び亜硝酸態窒素はほとんど変化がなかった。
【0046】
<最終処分場を想定したカラム試験(散布工程)>
実施例1において、試験浸出水1を試験浸出水2に代え、電解処理水1を電解処理水2に代えた以外は、実施例1と同様にして、カラム試験を行った。結果を表2に示す。
その結果、電解処理水2を10分の1加えた場合(電解処理後の水を処分場へ返送する場合を想定)、硝酸態窒素の濃度(1mg/L以下)は試験浸出水2の硝酸態窒素の濃度(1mg/L以下)と比較してほとんど増加せず、硝化が起こっていないことが確認された。
【0047】
(比較例2)
実施例2のカラム試験において、カラム内へ電解処理水2を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして、カラム試験を行った。その結果を表2に示す。
電解処理を添加しなかった場合は、カラム内で硝化反応が起き、硝酸態窒素の濃度(48時間後〜72時間後が21mg/L、120時間後〜144時間後が30mg/L)は、試験浸出水2の硝酸態窒素の濃度(1mg/L以下)と比較して増加していた。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表1の結果から、浸出水を電解処理した場合には、アンモニア態窒素が減少することが確認できた。しかし、電解処理のみでは、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素の濃度にほとんど変化はなかった。
表2の結果から、硝化菌を含有した汚泥(廃棄物に相当)に電解処理後の浸出水を通過させた場合には、硝酸態窒素の増加が抑制されていることが確認できた。
即ち、本発明の電解処理工程と散布工程とを併用することで、浸出水から脱窒素処理ができていることが確認できた。
【0051】
(参考例1)
電気分解工程のスケールを大きくした試験を実施した。
【0052】
<試験浸出水3>
試験浸出水3には、実際の最終処分場(グリーンフィル小坂、秋田県大館市、グリーンフィル小坂株式会社)にある廃棄物を浸透して発生する浸出水を用いた。試験浸出水3の水質を表3に示す。
【0053】
<電気分解処理>
容量が15Lの電解槽(縦30cm×横20cm×高さ24cm)に、チタン製の陰極と、酸化チタンに白金をコーティングした不溶性電極とを配置し、電極間距離0.8cm、電流値216A、電圧7V、電流密度10A/dm
2で通電した。試験浸出水3を流量25L/分間で電解槽に流し続け、オーバーフローするようにした。電解槽での試験浸出水3の滞留時間は0.6分間であった。電気分解処理後の試験浸出水3の水質を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
電気分解処理のスケールを大きくし、連続式の処理装置にした場合でも、全窒素濃度、及びアンモニア態窒素濃度が低減できていることが確認できた。また、CODMn及びBODも低減できていた。
また、電気分解処理におけるコスト(主に消費電力)は、13円/m
3であり、次亜塩素酸を添加してアンモニア態窒素を分解する際の次亜塩素酸のコスト105円/m
3〜120円/m
3と比較して、非常に安価であった。
また、生物学的脱窒方法の場合は、硝化工程及び脱窒工程を合わせると半日以上の滞留時間を必要とし、かつ建設費が高く、広い敷地が必要となるのに対して、電気分解処理は設備も単純であり、安価かつ短時間で容易に脱窒素処理が可能であった。