(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の吸収体について、それを具備する本発明の使い捨ておむつと共に、それらの好ましい一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態のおむつ1は、いわゆる展開型の使い捨ておむつであり、
図1及び
図2に示すように、吸収体4及び吸収体4の肌対向面側に配された表面シート2を具備し、吸収体4が、吸収性材料を含有する吸収性コア40と、吸収性コア40の一面40a(後述する凹部41の形成面)を被覆するコアラップシート5Aとを含んで構成されている。本実施形態においては、吸収性コア40の一面40aは、吸収性コア40の肌対向面であり、吸収性コア40においておむつ1の着用者から排泄された尿、軟便等の体液(排泄液)を最初に受ける受液面である。
【0015】
おむつ1について更に説明すると、おむつ1は、肌対向面を形成する液透過性の表面シート2、非肌対向面を形成する液不透過性ないし撥水性(以下、これらを総称して液不透過性という)の裏面シート3、及び両シート2,3間に配置された吸収体4を具備し、実質的に縦長に形成されている。表面シート2、裏面シート3及び吸収体4は、何れも、一方向Xに長い縦長の形状を有している。表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、吸収体4よりも大きな寸法を有し、吸収体4の周縁から外方に延出している。表面シート2は、
図2に示すように、その幅方向Yの寸法が、裏面シート3の幅方向Yの寸法よりも小さくなっている。
【0016】
おむつ1は、
図1に示すように、長手方向Xに、着用時に着用者の背側に配される背側部Aと、着用時に着用者の腹側に配される腹側部Bと、着用時に着用者の股下に配される股下部Cとを有している。股下部Cは、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を含んでおり、おむつ1の長手方向Xの中央部に位置している。おむつ1は、股下部Cの両側縁が内向きの円弧状に湾曲しており、
図1に示す如き平面視において、長手方向Xの中央部が内方に括れた砂時計状の形状となっている。
【0017】
本明細書において、長手方向(図中のX方向)は、吸収性物品(おむつ1)又はその構成部材(表面シート2、吸収性コア40、コアラップシート5A等)の長辺に沿う方向であり、幅方向(図中のY方向)は、該長手方向と直交する方向である。また、肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。
【0018】
吸収体4は、
図1及び
図2に示すように、吸収性コア40とこれを被覆する2枚のコアラップシート5A,5Bとを含んで構成されている。吸収性コア40は、繊維材料や吸水性ポリマー等の吸収性材料を含有し、
図1に示すように、一方向(おむつ1の長手方向X)に長い薄板状を有し、長手方向中央部が括れている。
【0019】
図2に示すように、コアラップシート5Aは、吸収性コア40の肌対向面を形成する一面40aを被覆しており、コアラップシート5Bは、吸収性コア40の他面40b(非肌対向面)及び吸収性コア40の長手方向Xに沿う両側縁部40s、40sを被覆している。両シート5A,5Bは、寸法(幅方向Yの長さ)のみが異なっており、組成等は同一である。コアラップシート5Aは、吸収性コア40の一面40aの略全域を被覆している。コアラップシート5Bは、吸収性コア40の他面40bの略全域を被覆し、且つ吸収性コア40の両側縁部40s,40sから幅方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の一面40aに対向配置されたコアラップシート5A上に巻き上げられ、該シート5Aの長手方向Xに沿う両側縁部を被覆している。コアラップシート5Aと吸収性コア40との間、及びコアラップシート5Bと吸収性コア40との間は、それぞれ、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていても良い。
【0020】
図1及び
図2に示すように、おむつ1の長手方向Xに沿う両側部それぞれには、一側縁部に弾性部材61が伸長状態で固定されているサイドシート6が配されており、着用時における股下部Cには、一対の立体ギャザーが形成される。また、着用者の脚周りに配される左右のレッグ部には、弾性部材62が長手方向Xに沿って配されており、着用時におけるレッグ部には、弾性部材62の収縮により、一対のレッグギャザーが形成される。一対のサイドシート6,6、表面シート2、吸収体4、弾性部材61,62及び裏面シート3は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により適宜互いに接合されている。
【0021】
また、
図1に示すように、おむつ1の背側部Aの長手方向Xに沿う両側縁部には、一対のファスニングテープ7,7が設けられている。ファスニングテープ7には、機械的面ファスナーのオス部材からなる止着部71が取り付けられている。また、おむつ1の腹側部Bの非肌対向面には、機械的面ファスナーのメス部材からなる被止着領域8が形成されている。被止着領域8は、裏面シート3の非肌対向面に、機械的面ファスナーのメス部材を公知の接合手段(例えば、接着剤やヒートシール等)で接合固定して形成されており、ファスニングテープ7の止着部71を着脱自在に止着可能である。
【0022】
吸収性コア40について説明すると、
図2及び
図3に示すように、吸収性コア40の肌対向面(受液面)を形成する一面40aには、線状の凹部41(41A〜41E)が二方向以上に延びて形成されており、凹部41によって吸収性コア40が複数の領域に区画化されて、複数の小吸収部43が形成されている。本実施形態における吸収性コア40は、
図1及び
図2に示すように、凹部41が形成された一面(凹部形成面)40aが、表面シート2と対向するように配されて肌対向面とされており、表面シート2側に凹部41を有している。一方、本実施形態における吸収性コア40は、裏面シート3側には凹部を有しておらず、裏面シート3と対向する他面40bは、凹凸を実質的に有しない平坦面(凹部非形成面)となっている。
【0023】
より具体的には、吸収性コア40の一面40aにおいて、吸収性コア40の長手方向Xの一端部側(背側部Aに配される長手方向端部側)には、長手方向X及び幅方向Yの両方向に交差する方向に延びる直線状の凹部41A,41Bが互いに交差してなる、平面視格子状の凹部が形成されており、また、吸収性コア40の長手方向Xの他端部側(腹側部Bに配される長手方向端部側)には、長手方向X及び幅方向Yの両方向に交差する方向に延びる直線状の凹部41C,41Dが互いに交差してなる、平面視格子状の凹部が形成されており、また、前記一端部と前記他端部とに挟まれた吸収性コア40の長手方向中央部(股下部Cに配される領域)には、長手方向Xに延びる一対の線状の凹部41E,41Eが形成されている。これら線状の凹部41A〜41Eは互いに連結されており、凹部41全体として一面40a内に連続して形成されている。そして、吸収性コア40の長手方向Xの一端部及び他端部においては、それぞれ、格子状に形成された凹部41の格子の目の部分に小吸収部43が位置し、また、長手方向Xの中央部においては、小吸収部43と凹部41とが幅方向Yに交互に配置されている。
【0024】
小吸収部43は、凹部41の底部42に比して高坪量であり、繊維材料や吸水性ポリマー等の吸収性材料が凹部41の底部42よりも多く存している部位である。本実施形態においては、小吸収部43は、凹部41の底部42に比して高坪量であることに加えて更に、凹部41の底部42に比して高密度で面積率が高い。面積率は、吸収性コア40の一面40aの単位面積に占める、凹部41の底部42の面積又は小吸収部43の面積の割合であり、後述する方法により求められる。吸収性コア40は、後述するように、積繊装置を用いて吸収性材料の積繊体を得、該積繊体全体を厚み方向に圧縮することにより製造されたものであるところ、該積繊体は、小吸収部43に対応する部位が、凹部41の底部42に対応する部位に比して吸収性材料の積繊量が多い。即ち、吸収性コア40の凹部41は、吸収性材料の積繊量を予め他の部位より少なくして形成されたものであり、積繊体の一部(凹部形成予定部)の吸収性材料を削り取る等して除去したり、あるいは積繊体の一部(凹部形成予定部)を圧縮する等して形成されたものでもない。
【0025】
吸収性コア40による液の拡散作用について説明する。凹部41が形成されている吸収性コア40の一面40a上に液が供給されると、液の大部分は、小吸収部43の表面から凹部41の内部に流れ込み、凹部41を通って面方向に拡散され、液の一部は、小吸収部43の表面からその内部に直接吸収される。また、凹部41を通る液の大部分は、凹部41の底部42より吸収性コア40の内部に吸収され、毛管力によって面方向に拡散され、凹部41を通る液の一部は、底部42と共に凹部41を画成する、小吸収部43の側部より該小吸収部43の内部に吸収されることにより、面方向に拡散される。特に、本実施形態においては、小吸収部43が凹部41の底部42に比して高密度であるため、凹部41の底部42より吸収性コア40の内部に吸収された液が、毛管力によって面方向へ拡散され易く、液を面方向に素早く拡散させることができる。また、本実施形態においては、小吸収部43が凹部41の底部42に比して面積率が高いため、小吸収部43の内部における液の吸収保持量が十分に確保されている。
【0026】
このように、吸収性コア40は、その一面40aに導液路として機能する線状の凹部41(41A〜41E)を有しているため、液拡散性に優れ、液の吸収速度が速く、一面40aのドライ感に優れる。また、吸収性コア40は、複数の小吸収部43にブロック化されていることにより、ブロック化されておらず坪量が均一なフラット型の吸収性コアに比して、股下部Cにおける前記排泄部対向部に位置する部位が着用者の肌に向かって隆起するような形状に変形し易く、そのため、おむつ1のフィット性を向上させ、着用者に快適な装着感を与えると共に、尿や軟便等の体液の漏れを効果的に抑制し得る。このような吸収性コア40による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、吸収性コア40の各部の坪量等は次のように設定されることが好ましい。
【0027】
小吸収部43と凹部41の底部42との坪量比(小吸収部の坪量/凹部の底部の坪量)は、好ましくは1.2〜30、更に好ましくは1.5〜15である。
小吸収部43の坪量は、好ましくは100〜700g/m
2、更に好ましくは300〜600g/m
2であり、凹部41の底部42の坪量は、好ましくは10〜300g/m
2、更に好ましくは30〜200g/m
2である。吸収性コア40の坪量は、好ましくは200〜800g/m
2、更に好ましくは250〜600g/m
2である。
【0028】
小吸収部43と凹部41の底部42との密度比(小吸収部の密度/凹部の底部の密度)は、好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜5である。
小吸収部43の密度は、好ましくは0.03〜0.30g/cm
3、更に好ましくは0.05〜0.25g/cm
3であり、凹部41の底部42の密度は、好ましくは0.01〜0.15g/cm
3、更に好ましくは0.02〜0.10g/cm
3である。
小吸収部43の面積率は、好ましくは60〜95%、更に好ましくは70〜80%であり、凹部41の底部42の面積率は、好ましくは5〜40%、更に好ましくは5〜30%である。
【0029】
凹部41の底部42の厚みT1(
図3(b)参照)と小吸収部43の厚みT2(
図3(b)参照)との比(T1/T2)は、好ましくは0.1〜0.9、更に好ましくは0.2〜0.8である。
凹部41の底部42の厚みT1は、好ましくは0.5〜5.0mm、更に好ましくは1.0〜3.0mmであり、小吸収部43の厚みT2は、好ましくは2.0〜10.0mm、更に好ましくは2.0〜7.0mmである。
尚、ここでいう、各部の厚みT1及びT2は、それぞれ、吸収性コア40を、できるだけその厚みを潰さないように切断し、その切断面を顕微鏡等で拡大して無荷重下における各部の厚みをそれぞれ測定したものである。
【0030】
吸収性コア40の各部(凹部41の底部42、小吸収部43)の密度は、JIS−P8118:1998に準じて測定され、具体的には次式によって算出される。 密度D(g/cm
3)=坪量W(g/m
2)/厚みT(mm) 前記式中の坪量Wは、JIS−P8124に記載の方法に準じて測定され、凹部41の低部42及び小吸収部43をそれぞれ加工寸法に合わせて一定の面積にカットし重量を測定して坪量を算出する。具体的には、裁断機又はカッターによって試験片をカットし、はかりによって該試験片の重量を測定し、その測定値を面積で除して坪量Wを算出する。また、前記式中の厚みTは、JIS−P8118:1998に準じて測定される。但し、厚みTの測定には、2つの平行な加圧面(固定加圧面と可動加圧面)を持つマイクロメーターであるピーコック式精密測定器(型式R1−C)を用い、測定子可動加圧面の直径は5mm、圧力は100kPa以下で測定し、測定用試験片の大きさは、下記プレートの大きさ以上とする。試験片上に20mm×20mmのプレート(重量5.4g)を置き、測定子可動加圧面を2mm/sの速度で操作し、該プレートに当て、安定直後の値を読み取る。加圧面間(試験片に加わる圧力)の圧力は1.3kPa以下になる。
【0031】
また、吸収性コア40の各部(凹部41の底部42、小吸収部43)の面積率は、以下のようにして求められる。マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製マイクロスコープ、商品名VHX−1000)を用い、凹部41の底部42に焦点を合わせて、該底部42及び小吸収部43をそれぞれ1箇所以上含む範囲を撮像し、その画像における凹部41の底部42に相当する部分を二値化して画像処理装置により該底部42の面積率を求め、その差分が小吸収部43の面積率となる。必要であれば、画像解析装置の手動補正等を使用する。吸収性コア40全体を一度に画像化して画像解析装置により面積率を求めることが好ましいが、複数の画像により計測を行う場合には、例えば、所定領域における小吸収部43の画素(ピクセル)Sbの総和ΣSb、凹部41の底部42の画素(ピクセル)Stの総和ΣSt、吸収性コア40の画素(ピクセル)の総和ΣSb+ΣStの何れか2つを求め、面積率を算出するか、異なる面積率の部位の代表面積率と各々の部分の面積の全体面積における割合を乗じた数値の合計より求めることができる。小吸収部43の面積率はΣSb/(ΣSb+ΣSt)により算出でき、凹部41の底部42の面積率はΣSt/(ΣSb+ΣSt)により算出できる。
【0032】
次に、吸収性コア40の肌対向面(受液面)を被覆するコアラップシート5Aについて説明する。コアラップシート5Aは、表面シート2を透過してきた液を素早く透過させて吸収性コア40に移行させる役割を担うもので、コアラップシート5Aには、高い液透過性と実用上十分な強度特性が求められる。
【0033】
斯かる要望特性に鑑み、コアラップシート5Aは、坪量が8〜20g/m
2、密度が0.03〜0.2g/cm
3、製造時の搬送方向(Machine Direction、略してMD方向)の乾燥引張強度が600cN/25mm以上である。液透過性の向上の観点から、コアラップシート5Aでは、坪量及び密度がこのように比較的低く設定される。コアラップシート5Aの坪量が8g/m
2未満では、シート強度が著しく低下するおそれがあり、坪量が20g/m
2超では、液透過性の向上効果に乏しいおそれがある。また、コアラップシート5Aの密度が0.03g/cm
3未満では、シート強度が著しく低下するおそれがあり、密度が0.2g/cm
3超では、液透過性の向上効果に乏しいおそれがある。また、コアラップシート5Aの製造時のMD方向の乾燥引張強度が600cN/25mm未満では、シート強度が不足して吸収体製造時に破れが生じるおそれがある。
【0034】
コアラップシート5Aの坪量は、好ましくは10〜18g/m
2、更に好ましくは10〜15g/m
2である。コアラップシート5Aの密度は、好ましくは0.05〜0.2g/cm
3、更に好ましくは0.1〜0.2g/cm
3である。コアラップシート5Aの製造時の搬送方向の乾燥引張強度は、好ましくは600〜1500cN/25mm、更に好ましくは700〜1200cN/25mmである。
【0035】
また、コアラップシート5Aは、製造時のMD方向の乾燥引張強度が600cN/25mm以上であることに加えて、MD方向に直交する方向(Cross machine Direction、略してCD方向)の乾燥引張強度が、150cN/25mm以上、特に150〜350cN/25mm、とりわけ180〜300cN/25mmであることが、実用上十分な強度特性をより確実に有するようにする点で好ましい。
【0036】
コアラップシートの坪量は、次のようにして測定される。JIS P8111の条件にてサンプル(コアラップシート)の調湿を行った後、サンプルから10cm四方(面積100cm
2)の測定片を切り出し、該測定片の重量を少数点以下2桁の天秤にて測定し、その測定値を面積で除して該測定片の坪量を算出する。サンプルから切り出した10枚の測定片について、前記手順に従って坪量を算出し、それらの平均値をサンプルの坪量とする。
【0037】
また、コアラップシートの密度は、次のようにして測定される。20cm四方のサンプル(コアラップシート)を10枚重ねて積層体とし、該積層体を液体窒素で冷却固化させた後、カッターで該積層体の真ん中付近を切断する。そして、10枚のサンプルのうち、カッターによる切断で生じた断面にせん断がかかっていないものを選択し、選択したサンプルの厚みを光学顕微鏡により測定する。尚、サンプルの厚みは、当該サンプルに後述するクレープ等の凹凸がある場合は、その凹凸部における最底部から最上部までの長さ(見掛け厚み)ではなく、構成繊維が堆積している部分の長さ(実質厚み)である。こうして厚みを測定した20cm四方のサンプルの重量Wを、小数点以下2桁の天秤を用い測定する。目的とする密度は、サンプルの重量Wを次式により算出したサンプルの体積Vで除して(即ちW/Vにより)算出する。次式中、Tはサンプルの厚み(cm)、Aはサンプルのクレープ率(%)、Bはサンプルの1辺の長さ(20cm)である。クレープ率は後述する測定方法によって測定される。測定対象のコアラップシートがクレープを有していない場合(クレープ率が0%の場合)、次式においてA=0とする。
V={T×B×B×(100+A)/100}
【0038】
また、コアラップシートの乾燥引張強度は、次のようにして測定される。測定対象のシート(コアラップシート)を室温23℃±2℃、相対湿度50%RH±2%の環境下で12時間放置して一定状態になるよう調湿する。調湿後のシートから、MD方向に150mm、CD方向に25mmの寸法の長方形形状を切り出し、この切り出された長方形形状をサンプルとする。このサンプルを、そのMD方向が引張方向となるように引張試験機(島津製作所製オートグラフAG−1kN)のチャックに無張力で取り付ける。チャック間距離は100mmとする。サンプルを300mm/分の引張速度で引っ張り、サンプルが破断するまでの最大強度を測定する。測定は5回行い、これらの平均値をMD方向の乾燥引張強度とする。また、CD方向の乾燥引張強度は、調湿後のシートから、CD方向に150mm、MD方向に25mmの寸法の長方形形状を切り出してこれをサンプルとし、このサンプルを、そのCD方向が引張方向となるように引張試験機のチャックに無張力で取り付け、前記と同様の手順により、CD方向の乾燥引張強度を求める。
【0039】
コアラップシート5Aの坪量及び密度をそれぞれ前記範囲に調整するには、コアラップシート5Aの構成繊維として適切なものを選択することが重要である。一般に、太い繊維(後述する繊維粗度の値が大きい繊維)をシートの構成繊維として用いると、シートが嵩高となり密度が低下する。また、コアラップシート5Aの乾燥引張強度は、構成繊維のフリーネス、紙力増強剤、クレープ率等により調整可能である。
【0040】
坪量、密度及び製造時の搬送方向の乾燥引張強度がそれぞれ前記範囲にあるコアラップシート5Aは、液透過性に優れており、具体的には、下記方法で測定される液透過時間が、好ましくは100〜600秒、更に好ましくは150〜300秒である。液透過時間が短いほど、液透過性が高く高評価となる。
【0041】
<液透過時間の測定方法>
図4に示すように、上下端が開口している内径35mmの2本の円筒91,92を、両円筒91,92の軸を一致させて上下に配し、8cm四方の測定対象シートS(コアラップシート)を上下の円筒91,92間に挟み込む。このとき、上側の円筒91の下端及び下側の円筒92の上端に設けられた環状のフランジ部にクリップ93を嵌合させ、上下の円筒91,92を連結させることが好ましい。符号94は、円筒91,92の内径と同径同形状の貫通孔を有するゴム製等のパッキンである。このように、上下の円筒91,92で測定対象シートS(コアラップシート)を挟持固定した状態で、上側の円筒91内に、
図4中符合Wで示す粘度290mPa・s(株式会社エー・アンド・デイの振動式粘度計CJV5000で測定し、測定開始から60秒後の25℃での値)の高粘性液を10g±1g供給する。高粘性液は、グリセリンとイオン交換水とを、前者:後者=94:6の質量比で混合して調製される。供給された高粘性液は、測定対象シートSを透過するか又は測定対象シートSに吸収されて上側の円筒内からなくなる。高粘性液の供給開始時から、高粘性液の液面が測定対象シートSの表面と同位置になるまでの時間を測定し、その時間を液透過時間とする。
【0042】
コアラップシート5Aは、坪量、密度及び製造時の搬送方向の乾燥引張強度がそれぞれ前記範囲にあれば良く、紙でも不織布でも良く、あるいは紙と不織布とを貼り合わせた複合シートでも良い。
【0043】
紙であるコアラップシート5Aは、公知の湿式抄紙法によって製造することができる。湿式抄紙法は、繊維の水分散液からなる紙料(スラリー)を調製する紙料調製工程と、紙料から繊維を抄いて繊維ウエブとしたものを搬送しながら乾燥する抄紙工程とを有するものである。抄紙工程は、通常、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤーパート、サイズプレス、カレンダパート等に分けられ、順次実施される。湿式抄紙法は、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ抄紙機、ハイブリッド抄紙機又は丸網抄紙機等の抄紙機を用いて常法に従って実施することができる。
【0044】
また、不織布であるコアラップシート5Aとしては、例えば、ヒートロール不織布、エアスルー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド−メルトブローン不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの不織布には、界面活性剤等の親水化剤を用いた親水化処理が施されていても良い。中でもエアスルー不職布は、コアラップシート5Aの液透過性を最適にし易いため、コアラップシート5Aとして好ましい。
【0045】
以下、コアラップシート5Aが紙である場合について更に説明する。
【0046】
紙であるコアラップシート5Aは、セルロース繊維を含んで構成されていることが好ましい。セルロース繊維の含有率は、コアラップシート5A中、好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70〜100質量%である。セルロース繊維としては、この種のコアラップシートに通常用いられているものを特に制限無く用いることができ、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の木材パルプや木綿パルプ、ワラパルプ等の非木材パルプ等の天然セルロース繊維;レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのセルロース繊維の中でも、特にNBKPは、コアラップシート5Aの引張強度の向上の観点から好ましい。
【0047】
紙であるコアラップシート5Aに含有されるセルロース繊維の繊維粗度は、コアラップシート5Aの坪量及び密度をそれぞれ前記範囲に調整する観点から、好ましくは0.10〜0.25mg/m、更に好ましくは0.13〜0.20mg/mである。繊維粗度は、木材パルプのように、繊維の太さが不均一な繊維において、繊維の太さを表す尺度として用いられるものである。また、同様の観点から、コアラップシート5Aに含有されるセルロース繊維の平均繊維長は、好ましくは1〜4mm、更に好ましくは2〜3mmである。繊維粗度及び平均繊維長は、それぞれ、次のようにして測定される。
【0048】
<繊維粗度及び平均繊維長の測定>
繊維粗度計FS−200(KAJAANI ELECTRONICS LTD.製)を用いて測定する。測定対象の繊維(パルプ)は未叩解のものとする。先ず、測定対象の繊維の真の重量を求めるために、該繊維を真空乾燥機内にて100℃で1時間乾燥させ、繊維中に存在している水分を除去する。こうして乾燥させた繊維から1gを正確に量りとる(誤差±0.1mg)。次に、量り取った繊維を、該繊維に極力損傷を与えないように注意しつつ、前記繊維粗度計に付属のミキサーで150mlの水中に完全に離解させ、これを全量が5000mlになるまで水で薄めて希釈液を得た。得られた希釈液から50mlを正確に量りとってこれを繊維粗度測定溶液とし、前記繊維粗度計の操作手順に従って目的とする繊維粗度及び平均繊維長をそれぞれ算出する。尚、平均繊維長の算出には、前記操作手順に基づき下記式により計算された値を用いる。
【0050】
紙であるコアラップシート5Aに含有されるセルロース繊維のフリーネスは、コアラップシート5Aの強度特性と液透過性とのバランスの観点から、好ましくは400〜600ml、更に好ましくは450〜600mlである。フリーネスは、JIS P8121に規定するカナダ標準ろ水度(C.S.F.)で示される値であり、繊維の叩解(水の存在下で繊維を機械的に叩き、磨砕する処理)の度合いを示す値である。繊維の叩解は、繊維を分散させた紙料(スラリー)に対して、ビーダー、ディスクリファイナー等の公知の叩解機を用いて常法に従って実施することができる。通常、繊維のフリーネスの値が小さいほど、叩解の度合いが強く、叩解による繊維の損傷が大きくてフィブリル化が進行している。フリーネスが前記範囲にあるセルロース繊維は、フィブリル化が進行しているため繊維どうしが絡み合い易く、そのため、コアラップシートの低坪量化を図った場合に、繊維の繊維間結合点の数が減少しても、各繊維間結合の強度は、フリーネスが600mlを超え相対的にフィブリル化が進行していない繊維に比して高い。一方、フリーネスが400ml未満の場合は、繊維の絡み合いによる強度改善効果は飽和しており、また、繊維の切断が促進され、透過時間が遅くなるおそれがある。従って、フリーネスが400〜600mlであるセルロース繊維を含有するコアラップシート5Aは、良好な強度特性(引張強度)及び液透過性を有し得る。
【0051】
紙であるコアラップシート5Aは、セルロース繊維以外の他の繊維を含んでいても良い。この他の繊維としては、例えば、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維;ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレン(PE)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維を界面活性剤により親水化処理したもの等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これら他の繊維の含有率は、紙であるコアラップシート5A中、好ましくは50質量%以下である。
【0052】
紙であるコアラップシート5Aは、乾燥引張強度を前記範囲に調整する観点から、紙力増強剤を含有することが好ましい。紙力増強剤には、乾燥紙力を向上させる乾燥紙力増強剤と、湿潤紙力を向上させる湿潤紙力増強剤とがあり、何れを用いても良い。特に、乾燥紙力増強剤の1種であるカルボキシメチルセルロース(CMC)及びその塩は、汎用性が高く、繊維どうしの凝集効果も低いため、好ましく用いられる。即ち、紙であるコアラップシート5Aは、紙力増強剤として、少なくともCMC又はその塩を含有していることが好ましい。
【0053】
乾燥紙力増強剤としては、従来公知の乾燥紙力増強剤を用いることができ、例えば、CMC及びその塩、ポリアクリルアミド系樹脂及びその塩、カチオン化デンプン、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。CMCあるいはポリアクリルアミド系樹脂の塩としては、それぞれ、ナトリウム塩が主に用いられる。ポリアクリルアミド系樹脂としては、例えば、カチオン性又はアニオン性ポリアクリルアミド(PAM)が挙げられる。これらの乾燥紙力増強剤の中でも、特にCMC及びその塩、アニオン性PAM及びその塩が好ましい。
【0054】
湿潤紙力増強剤としては、従来公知の湿潤紙力増強剤を用いることができ、例えば、エポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂(PAE)、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ジアルデヒドデンプン、ポリエチレンアミン、メチロール化ポリアミド等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの湿潤紙力増強剤の中でも、特にPAEが好ましい。
【0055】
紙力増強剤(乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤)の含有率は、紙であるコアラップシート5A中、好ましくは0.01〜1.5質量%、更に好ましくは0.03〜1.2質量%である。紙力増強剤の添加量が少なすぎると、引張強度等の強度特性が十分に得られず、紙力増強剤の添加量が多すぎると、コアラップシートの硬化(風合いの低下)の他、コアラップシートの製造時におけるヤンキードライヤへの張り付きやメッシュドラムへの紙力増強剤の付着等による、コアラップシートの地合の低下を招くおそれがある。
【0056】
紙であるコアラップシート5Aは、セルロース繊維及び紙力増強剤以外の他の成分を含んでいても良い。他の成分としては、例えば、タルク等の填料、染料、色顔料、抗菌剤、pH調整剤、歩留り向上剤、耐水化剤、消泡剤等の一般的に抄紙用原材料や添加物として使用されているものが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
紙であるコアラップシート5Aは、クレープ(ちりめん状のシワ)を有していても良い。紙であるコアラップシート5Aがクレープを有している場合、そのクレープは、湿式抄紙法のドライヤーパートにおけるヤンキードライヤ等から乾燥状態の繊維ウエブ(コアラップシート)をドクターナイフ等で剥離する際に生じる、ドライクレープであることが好ましい。クレープ率は、次のようにして測定される。
【0058】
<クレープ率の測定方法>
測定対象のコアラップシートから長さ方向(コアラップシートの製造時の搬送方向、MD方向)に200mm、幅方向(MD方向に直交する方向、CD方向)に100mmの矩形形状を切り出してサンプルとする。この矩形形状のサンプルを10分間水中に浸漬した直後のMD方向の長さCを測定し、次式によりクレープ率を算出する。
クレープ率(%)={(C−200)/200}×100
例えば、10分間浸漬後のMD方向の長さCが220mmであった場合、前記式により算出される当該コアラップシートのクレープ率は10%である。
【0059】
クレープを有するコアラップシートは、クレープを有しないコアラップシートに比して液透過性が高く、また、クレープ率が高くなるほど液透過性が高まる。但し、クレープ率が高くなると、強度特性(引張強度)は低下する傾向がある。本発明においては、斯かる知見に基づき、液透過性と強度特性とのバランスの観点から、コアラップシート5Aのクレープ率は、好ましくは5〜20%、更に好ましくは7〜15%である。
【0060】
紙であるコアラップシート5Aとしては、下記の特定紙が好ましく用いられる。特定紙は、公知の湿式抄紙法によって製造することができるもので、太さの異なる2種の親水性セルロース繊維の集合体を含んでおり、これにより強度特性と液透過性との両立を図っている。以下、特定紙について説明する。尚、特定紙に関し、特に説明しない点(クレープ率、液透過時間等)は、前述した紙であるコアラップシート5Aについての説明が適宜適用される。
【0061】
特定紙:繊維粗度の異なる2種の親水性セルロース繊維の集合体を主体とし、紙力増強剤が添加されており、前記2種の親水性セルロース繊維として、繊維粗度が0.13〜0.16mg/mの第1パルプと繊維粗度が0.17〜0.20mg/mの第2パルプとが含有されており、含有されている第1パルプと第2パルプとの繊維粗度の差が0.01〜0.07mg/mであり、前記集合体のフリーネスが400〜600mlの範囲にある。
【0062】
特定紙には、2種の親水性セルロース繊維として、繊維粗度が0.13〜0.16mg/m、好ましくは0.135〜0.155mg/m、更に好ましくは0.14〜0.15mg/mである第1パルプと、繊維粗度が0.17〜0.20mg/m、好ましくは0.175〜0.195mg/m、更に好ましくは0.18〜0.19mg/mである第2パルプとが含有されており、第2パルプの方が第1パルプよりも太い。このように、シートの構成繊維の一部として相対的に太いパルプを用いることで、シートの地合が粗くなり、液透過性が向上する。尚、パルプは、木材、じん皮、葉等の植物繊維を化学的あるいは機械的方法によって単繊維化したものである。
【0063】
そして、特定紙に含有されている第1パルプと第2パルプとの繊維粗度の差が、0.01〜0.07mg/m、好ましくは0.02〜0.06mg/m、更に好ましくは0.03〜0.05mg/mである。両パルプの繊維粗度の差が0.01mg/m未満では、液透過性の向上効果に乏しく、繊維粗度の差が0.07mg/m超では、シートの強度が著しく低下するおそれがある。
【0064】
第1パルプ及び第2パルプそれぞれの平均繊維長は、好ましくは2〜3mm、更に好ましくは2.2〜2.8mmである。両パルプの平均繊維長がそれぞれ前記範囲にあることで、繊維どうしの交絡のバランスが良く、シートの地合も良いという効果が奏される。両パルプの平均繊維長は同じであっても良く、異なっていても良い。
【0065】
第1パルプと第2パルプとの含有質量比(第1パルプ/第2パルプ)は、強度特性と液透過性とのバランスの観点から、好ましくは3/7〜7/3、更に好ましくは4/6〜6/4である。相対的に繊維径の太い第2パルプが少なすぎると、十分な液透過性が得られないおそれがあり、逆に第2パルプが多すぎると、シートの強度の急激な低下が生じるおそれがある。
【0066】
第1パルプ及び第2パルプ(親水性セルロース繊維)としては、繊維粗度が前記範囲にあり且つ親水性表面を有する繊維であって、その湿潤状態において、繊維どうしが互いに高い自由度を有するシートを形成できるものであれば、特に制限無く用いることができる。そのような親水性セルロース繊維の例には、NBKP、LBKP等の木材パルプや木綿パルプ、ワラパルプ等の非木材パルプ等の天然セルロース繊維;レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの親水性セルロース繊維の中でも、特にNBKPが好ましく、第1パルプ及び第2パルプは、それぞれ、NBKPが好ましい。また、本発明で用いるNBKPとしては、この種の紙において通常用いられるNBKPを特に制限無く用いることができる。NBKPとして、パルプの漂白に塩素化合物を使用しないECF(エレメンタリー・クロリンフリー)漂白パルプやTCF(トータル・クロリンフリー)漂白パルプを使用しても良い。
【0067】
特定紙は、繊維粗度の異なる2種の親水性セルロース繊維(第1パルプ及び第2パルプ)の集合体を主体としている。ここで、「主体としている」とは、第1パルプ及び第2パルプの含有率が50質量%以上であることを意味する。該含有率は、強度特性と液透過性との両立を図る観点から、好ましくは70〜80質量%、更に好ましくは80〜100質量%である。
【0068】
特定紙においては、前記2種の親水性セルロース繊維(第1パルプ及び第2パルプ)の集合体のフリーネスを400〜600mlに設定している。即ち、第1パルプ及び第2パルプそれぞれのフリーネスは400〜600mlの範囲にある。フリーネスが前記範囲にある繊維の集合体を主体とする特定紙は、良好な強度特性(引張強度)及び液透過性を有し得る。
【0069】
特定紙で用いる2種の親水性セルロース繊維の集合体のフリーネスは、好ましくは450〜600mlである。フリーネスが400ml未満の場合は、繊維の絡み合いによる強度改善効果は飽和しており、また、繊維の切断が促進され、透過時間が遅くなるおそれがある。繊維の集合体の叩解は、繊維の集合体を構成する各親水性セルロース繊維(第1パルプ及び第2パルプ)を混合分散させた紙料(スラリー)に対して、ビーダー、ディスクリファイナー等の公知の叩解機を用いて常法に従って実施することができる。
【0070】
特定紙は、第1パルプ及び第2パルプ以外の他の繊維を含んでいても良く、他の繊維は、両パルプの如き親水性セルロース繊維でなくても良い。他の繊維としては、例えば、LBKP、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプ;楮、三椏、雁皮等の靱皮繊維;藁、竹、ケナフ、麻等の非木材パルプ;ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維等の合成繊維等が挙げられる。これら他の繊維の含有率は、好ましくは20質量%以下である。
【0071】
特定紙には、良好な強度特性(引張強度)を得る観点から、紙力増強剤が添加されている。特定紙に添加される紙力増強剤については、概ね前述した通りである。特定紙において2種以上の紙力増強剤を用いる場合、それらの好ましい組み合わせとして、2種の乾燥紙力増強剤及び1種の湿潤紙力増強剤が挙げられる。これら計3種類の紙力増強剤のうち、2種の乾燥紙力増強剤としてはCMCの塩及びアニオン性PAMの塩が好ましく、1種の湿潤紙力増強剤としてはPAEが好ましい。
【0072】
また、前記のように、2種の乾燥紙力増強剤としてCMCの塩及びアニオン性PAMの塩を用い、1種の湿潤紙力増強剤としてPAEを用いた場合、アニオン性PAMの塩の重量平均分子量は、10万以上、特に100万以上、とりわけ800万以上が好ましく、また、アニオン性PAMの塩の重量平均分子量の上限は、2500万が好ましい。このように特定の3種類の紙力増強剤を用いる場合において、それらのうちの1種であるアニオン性PAMの塩の重量平均分子量が前記範囲(10万以上2500万以下)であれば、アニオン性PAMの塩自体の接着性の発現によるシートの強度向上効果に加えて、CMCの塩の歩留まりの向上によるシートの強度向上効果が得られるため、両強度向上効果によって特定紙のより良好な強度特性が得られる。また、アニオン性PAMの塩の重量平均分子量が2500万以下であると、特定紙の製造時においてアニオン性PAMの塩の水中での分散性や粘度が比較的低く抑えられるため、ハンドリング性や抄紙機の汚れ防止の点で良い結果が得られる。
【0073】
また、紙力増強剤として、乾燥紙力増強剤の1種以上と湿潤紙力増強剤の1種以上との組み合わせを用いる場合、乾燥紙力増強剤の総添加質量と湿潤紙力増強剤の総添加質量との比(前者/後者)は、好ましくは0.01〜0.5、更に好ましくは0.03〜0.35である。
【0074】
また、前述したように、乾燥紙力増強剤としてCMCの塩及びアニオン性PAMの塩の2種を用い、湿潤紙力増強剤としてPAEの1種を用いる場合、特定紙の全構成繊維の乾燥質量に対する各紙力増強剤の添加量は、CMCの塩が好ましくは0.05〜0.5質量%、更に好ましくは0.1〜0.3質量%であり、アニオン性PAMの塩が好ましくは0.001〜0.1質量%、更に好ましくは0.02〜0.05質量%であり、PAEが好ましくは0.5〜1.5質量%、更に好ましくは0.6〜1.2質量%である。
【0075】
特定紙の坪量は8〜20g/m
2であり、密度は0.03〜0.2g/cm
3である。一般に、坪量や密度がこのように低いとシート強度の低下が懸念されるが、特定紙においては、前述したように、構成繊維の一部として相対的に繊維粗度の小さい(繊維径の細い)第1パルプを用い、且つ2種の繊維(第1パルプと第2パルプ)の集合体のフリーネスを特定範囲に設定し、更に紙力増強剤を併用することで、斯かる懸念を払拭している。特定紙の製造時の搬送方向の乾燥引張強度は600cN/25mm以上であり、特定紙は実用上十分な強度を有している。
【0076】
おむつ1におけるコアラップシート5A〔吸収性コア40の肌対向面(受液面)を被覆するコアラップシート〕以外の他の構成部材としては、当該技術分野において従来用いられているものを適宜用いることができる。コアラップシート5Bとしては、コアラップシート5Aと同じものを用いても良く、異なるもの(当該技術分野においてコアラップシートとして従来用いられているもの)を用いても良い。
【0077】
表面シート2としては、当該技術分野において従来用いられている液透過性のシートを用いることができ、例えば、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布;開口手段によって液透過可能とされたフィルム等が挙げられる。これらの不織布やフィルムには、界面活性剤等の親水化剤を用いた親水化処理が施されていても良い。裏面シート3としては、例えば、透湿性を有しない樹脂フィルムや、微細孔を有し、透湿性を有する樹脂フィルム、撥水不織布等の不織布、これらと他のシートとのラミネート体等の各種液不透過性ないし撥水性のものを用いることができる。また、サイドシート6としては、裏面シート3と同様のものを用いることができる。
【0078】
吸収性コア40に含有される吸収性材料としては、例えば、繊維材料及び吸水性ポリマーが挙げられる。吸収性コア40は、繊維材料及び吸水性ポリマーの一方のみを含有していても良く、両方を含有していても良い。吸収性材料(繊維材料及び吸水性ポリマー)の含有率は、吸収性コア40中、好ましくは70〜100質量%であり、更に好ましくは95〜100質量%である。
【0079】
吸水性ポリマーの含有率(吸収性コア40の質量に占める吸水性ポリマーの割合)は、特に制限されず、吸収体4やおむつ1の具体的な用途等に応じて適宜調整することができる。近年、製造コストや環境に対する負荷の低減等の観点から、吸収性コアにおける吸水性ポリマーの含有率を低減することが望まれているが、吸水性ポリマーの含有率をコスト低減効果等が十分に得られる程度まで減らすと、吸収性能が大幅に低減してしまうおそれがあった。これに対し、本実施形態の吸収体4は、吸収性コア40を被覆するコアラップシートとして、液透過性に優れるコアラップシート5Aを用いているため、吸収性コア40における吸水性ポリマーの含有率を従来より大幅に減らしても、良好な吸収性能を発現し得る。吸水性ポリマーの含有率は、吸収性コア40中、好ましくは70質量%以下、更に好ましくは40〜60質量%である。
【0080】
吸収性コア40に含有される繊維材料(吸収性材料)としては、親水性表面を有する繊維(親水性繊維)であって、その湿潤状態において、繊維どうしが互いに高い自由度を有するシートを形成できるものであれば、特に制限なく用いることができる。そのような繊維材料の例には、NBKP、LBKP等の木材パルプや木綿パルプ、ワラパルプ等の非木材パルプ等の天然セルロース繊維;レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維;ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維;PET繊維、PE繊維、PP繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維を界面活性剤により親水化処理したもの等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0081】
吸収性コア40に含有される吸水性ポリマー(吸収性材料)としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを用いることができ、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。吸水性ポリマーとしては、通常は粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでも良い。粒子状の吸水性ポリマーには、その形状の違いから、不定形タイプ、塊状タイプ、俵状タイプ、球粒凝集タイプ、球状タイプ等があるが、何れのタイプも用いることができる。
【0082】
本実施形態のおむつ1は、通常の展開型の使い捨ておむつと同様に使用することができる。
本実施形態のおむつ1によれば、吸収体4が、液拡散性に優れるいわゆるブロック型の吸収性コア40と液透過性に優れるコアラップシート5Aとを含んで構成されているため、吸収体4全体として液透過性及び液拡散性に優れ、良好な吸収性能を有しており、尿や軟便等の体液が表面シート2上に排泄された場合、これを素早く吸収・拡散・保持することができ、表面のドライ感が良好で、液戻り等の不都合を起こし難い。また、主として、ブロック型の吸収性コア40の変形容易性により、おむつ1は着用者の肌へのフィット性にも優れ、着用者に快適な装着感を与えると共に、尿や軟便等の体液の漏れを効果的に抑制し得る。
【0083】
また、このようなおむつ1の良好な吸収性能は、主として、吸収性コア40の特定形状及びこれを被覆するコアラップシート5Aによるものであるから、製造コストや環境に対する負荷の低減等を目的として、吸水性ポリマーの使用量を大幅に減らすことが可能である。
【0084】
次に、吸収体4の製造方法について説明する。
図5には、吸収体4(吸収性コア40)の製造に好ましく使用される製造装置(積繊装置)の一例が示されている。吸収体の製造装置80は、矢印R1方向に回転駆動される積繊ドラム81と、積繊ドラム81の外周面に吸収性コア40の原料である吸収性材料45(繊維材料、吸水性ポリマー等)を供給するダクト82とを有している。積繊ドラム81内には吸引部83が配されている。また、積繊ドラム81の下部には、積繊された吸収性コア40を搬送する搬送コンベア等の搬送手段(図示せず)が配されている。
【0085】
積繊ドラム81は、その外周面に、吸収性コア40の形状に区画され、吸収性材料45を積繊する積繊キャビティ84を複数有している。積繊キャビティ84の底面には、多数の通気孔(図示せず)が設けられており、ダクト82内の空気は該通気孔を通して吸引部83により吸引される。また、積繊キャビティ84の底面には、吸収性コア40に凹部41を配する非通気性の突起部85が配されており、突起部85においては吸収性材料45は吸引されない。突起部85は、吸収性コア40に配される凹部41の形状を転写した形状を成すものである。
【0086】
ダクト82は、
図5に示すように、その一端側が、負圧に維持される積繊ドラム81の外周面の一部を覆っており、図示しない他端側には、繊維材料導入装置を有している。繊維材料導入装置は、例えば、シート状の木材パルプを粉砕して解繊パルプとし、その解繊パルプ(繊維材料)をダクト内に送り込む粉砕器を備えている。ダクト82の途中に吸水性ポリマーを導入する吸水性ポリマー導入部を設けることもできる。
【0087】
製造装置80を用いて吸収体4(吸収性コア40)を製造するためには、積繊ドラム81内の空間(ダクト82で覆われた部分の空間)を、積繊ドラム81に接続された排気装置(図示せず)を作動させて負圧にし、それによりダクト82内に、吸収性材料45を積繊ドラム81の外周面に搬送する空気流を生じさせる。また、積繊ドラム81を回転させ、更に、積繊ドラム81の下部に配された前記搬送手段を作動させる。そして、前記繊維材料導入装置を作動させて、ダクト82内に繊維材料を供給し、更には吸水性ポリマーを供給すると、これらの吸収性材料45は、ダクト82内を流れる空気流に乗り、飛散状態となって積繊ドラム81の外周面に向けて供給される。
【0088】
ダクト82に覆われた部分を搬送されている間に、積繊ドラム81の積繊キャビティ84には、吸収性材料(繊維材料と吸水性ポリマーとの混合物)45が吸引される。吸収性材料45は、積繊キャビティ84の底面上に徐々に堆積していき、最終的には
図6に示すように、突起部85の該底面からの突出高さを超えて積繊キャビティ84内に堆積する。こうして得られた積繊物46においては、突起部85上に吸収性材料45が堆積してなる部位(凹部対応部)46aが、相対的に吸収性材料45の堆積量が少なく、その他の部位(小吸収部対応部)46bが、相対的に吸収性材料45の堆積量が多くなっており、積繊物46全体として凹凸構造を有している。
【0089】
その後、積繊キャビティ84内の積繊物46は、積繊ドラム81の回転によりその下部へ搬送され、前記搬送手段上へ移行する。前記搬送手段上には、積繊物46の移行前に予めコアラップシート5Bが載置されており、積繊物46はコアラップシート5B上に移行する。更に、積繊物46の上面にコアラップシート5Aを載置し、コアラップシート5Bの積繊物46からの延出部をコアラップシート5A上に巻き上げる。こうしてコアラップシート5A,5Bにより被覆された積繊物46の全体を、加圧手段(図示せず)によって厚み方向に圧縮し、積繊物46の厚みを積極的に減少させて、目的とする吸収体4(吸収性コア40)を得る。前記加圧手段は、例えば、表面平滑な一対のロールを備え、両ロール間に導入された被加圧物を上下面から加圧して厚み方向に圧縮可能に構成されている。
【0090】
前記加圧手段によって積繊物46の全体を圧縮すると、吸収性材料が相対的に多く厚みの大きい小吸収部対応部46b(
図6参照)は、吸収性材料が相対的に少なく厚みの小さい凹部対応部46a(
図6参照)よりも強く圧縮される。その結果、積繊物46における小吸収部対応部46bは、吸収性コア40において相対的に密度の高い小吸収部43となり、積繊物46における凹部対応部46aは、吸収性コア40において相対的に密度の低い凹部41(41A〜41E)となる。
【0091】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態では、2枚のコアラップシート5A,5Bを用いて吸収性コア40を被覆していたが、
図7に示すように、1枚のコアラップシート5Aのみを用いても良い。その場合、吸収性コア40を被覆する1枚のコアラップシート5Aは、吸収性コア40の幅方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有している。
図7に示す吸収体4Aは、この1枚のコアラップシート5Aの幅方向Yの中央部に吸収性コア40を載置し、その幅方向Yの両側部を吸収性コア40の上面側に折り返し、その両側縁部どうしをホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合して該シート5Aを筒状に形成し、上下反転させて得られる。
【0092】
また、前記実施形態では、吸収性コア40は、凹部41が形成された一面40aが表面シート2と対向するように配されており、表面シート2側に凹部41を有していたが、
図8に示すように、凹部41が形成された一面40aが裏面シート3と対向するように配され、裏面シート3側に凹部41を有していても良い。
図8に示す実施形態によっても、前記実施形態と同様の効果が奏される。
【0093】
また、凹部41の配置パターン、小吸収部43の平面視形状等は、
図3に示すものに制限されず適宜選択可能であり、例えば、複数の小吸収部43の全てが平面視において同じ大きさの四角形形状となるように、線状の凹部41を配置しても良い。また、表面シート2とコアラップシート5Aとの間に、紙、不織布等の透過シート(セカンドシート)を配置しても良い。また、本発明の使い捨ておむつは、
図1に示す如き展開型の使い捨ておむつに制限されず、予めパンツ型に成形されたパンツ型の使い捨ておむつにも適用できる。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0095】
〔実施例1〕
図1及び
図2に示すおむつ1と同様の基本構成を有する展開型の使い捨ておむつを製造し、これを実施例1のサンプルとした。表面シートとしては、坪量25g/m
2のエアスルー不職布を用いた。裏面シート及びサイドシートとしては、それぞれ、坪量20g/m
2の液不透過性且つ透湿性のポリエチレン製樹脂フィルム(炭酸カルシウム配合)を用いた。吸収性コアとしては、フラッフパルプの繊維集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたもので、
図3に示す吸収性コア40と同様のブロック型の吸収性コア(線状の凹部及び複数の小吸収部を有する吸収性コア)を用い、凹部が形成された一面が表面シートと対向するように配した。詳細は下記の通り。コアラップシートとしては下記のもの(前記特定紙に相当する紙)を用いた。
【0096】
〔実施例1で用いた吸収性コア〕
長手方向の全長370mm、幅方向の全長(最大長さ)120mm、坪量348g/m
2、吸水性ポリマーの含有率56質量%、吸水性ポリマーの含有量7.5g。
小吸収部と凹部の底部との坪量比(小吸収部の坪量/凹部の底部の坪量)4.10、小吸収部の坪量410g/m
2、凹部の底部の坪量100g/m
2。
小吸収部と凹部の底部との密度比(小吸収部の密度/凹部の底部の密度)1.4、小吸収部の密度0.14g/cm
3、凹部の底部の密度0.1g/cm
3。
小吸収部の面積率80%、凹部の底部の面積率20%。
凹部の底部の厚みと小吸収部の厚みとの比(前者/後者)0.3、凹部の底部の厚み1mm、小吸収部の厚み3mm。
【0097】
〔実施例1で用いたコアラップシート〕
第1パルプ(相対的に繊維径の細いパルプ)として、繊維粗度0.15mg/mのNBKPを用い、第2パルプ(相対的に繊維径の太いパルプ)として、繊維粗度0.18mg/mのNBKPを用いた。第1パルプ及び第2パルプを、両パルプの含有質量比(第1パルプ/第2パルプ)が5/5となるように混合して繊維の集合体を得、該集合体を水中に均一に分散させて、繊維濃度2質量%のスラリーを調製し、このスラリーを叩解機にかけて、集合体のフリーネスを500mlに調整した。更に、このスラリーに、第1紙力増強剤としてCMCのナトリウム塩(乾燥紙力増強剤、第一工業製薬株式会社製、商品名「セロゲンWS−C」)を、スラリー中の全繊維の乾燥質量に対して0.2質量%投入し、次いで、第2紙力増強剤としてPAE(湿潤紙力増強剤、星光PMC株式会社製、商品名「WS4030」)を、スラリー中の全繊維の乾燥質量に対して0.78質量%投入し、各成分が均一になるように十分に撹拌した。こうして得られたスラリーを、ワイヤー目開き径90μm(166メッシュ)の金網抄紙ワイヤー上に散布し、金網抄紙ワイヤー上に紙層を形成させ、サクションボックスを用いて6ml/(cm
2・sec)の速度で該紙層を脱水した後、該紙層をドライヤで乾燥させて、目的とするコアラップシートを得た。
【0098】
〔実施例2〕
吸収性コアとして下記のブロック型の吸収性コア(線状の凹部及び複数の小吸収部を有する吸収性コア)を用いた以外は、実施例1と同様にして展開型の使い捨ておむつを製造し、これを実施例2のサンプルとした。
【0099】
〔実施例2で用いた吸収性コア〕
長手方向の全長370mm、幅方向の全長(最大長さ)120mm、坪量360g/m
2、吸水性ポリマーの含有率57質量%、吸水性ポリマーの含有量8.0g。
小吸収部と凹部の底部との坪量比(小吸収部の坪量/凹部の底部の坪量)4.25、小吸収部の坪量425g/m
2、凹部の底部の坪量100g/m
2。
小吸収部と凹部の底部との密度比(小吸収部の密度/凹部の底部の密度)1.4、小吸収部の密度0.14g/cm
3、凹部の底部の密度0.1g/cm
3。
小吸収部の面積率80%、凹部の底部の面積率20%。
凹部の底部の厚みと小吸収部の厚みとの比(前者/後者)0.3、凹部の底部の厚み1mm、小吸収部の厚み3mm。
【0100】
〔実施例3〕
コアラップシートとして坪量15g/m
2のエアスルー不織布を用いた以外は、実施例2と同様にして展開型の使い捨ておむつを製造し、これを実施例3のサンプルとした。
【0101】
〔比較例1〕
吸収性コアとして、両面に凹部が形成されていなくてブロック化されておらず、坪量が均一なフラット型の吸収性コア(長手方向の全長370mm、幅方向の全長(最大長さ)120mm、坪量430g/m
2、吸水性ポリマーの含有率60質量%、吸水性ポリマーの含有量9.0g)を用いた以外は、実施例1と同様にして展開型の使い捨ておむつを製造し、これを比較例1のサンプルとした。
【0102】
〔比較例2〕
コアラップシートとして坪量16g/m
2、密度0.23g/cm
3、クレープ率10%のクレープ紙を用いた以外は、実施例1と同様にして展開型の使い捨ておむつを製造し、これを比較例2のサンプルとした。
【0103】
〔比較例3〕
吸収性コアとして比較例1で用いたものと同じものを用い、且つコアラップシートとして比較例2で用いたものと同様のものを用いた以外は、実施例1と同様にして展開型の使い捨ておむつを製造し、これを比較例3のサンプルとした。
【0104】
実施例及び比較例で使用したパルプ(NBKP)の詳細は次の通り(繊維粗度の小さい順に記載)。これらのパルプは、日本紙パルプ商事又は伊藤忠商事を通じて入手した。
・繊維粗度0.15mg/m(商品名「Cariboo」、Cariboo Pulp and Paper Company製)
・繊維粗度0.18mg/m(商品名「ARAUCO」、ARAUCO製)
【0105】
〔評価〕
実施例及び比較例の各サンプル(使い捨ておむつ)について、コアラップシートの各種物性を前記方法によって測定し、液戻り量を下記方法によって測定した。それらの結果を下記表1に示す。
【0106】
<液戻り量の測定方法>
使い捨ておむつを平面状に拡げ、表面シートを上に向けて水平面上に固定した状態で、おむつに対し30cm×10cmの面積当たり2kPaの荷重を加えつつ、吸収体の中心部における該表面シート上に人工尿40gを注入して吸収させ、10分間放置し、更に人工尿40gを注入して吸収させた。斯かる人工尿の注入操作を4回繰り返し、合計160gの人工尿をおむつに吸収させた。次いで、おむつにおける人工尿の吸収部位上にADVANTEC製の5Cろ紙を16枚重ね、更にその上に荷重を2分間加えて、おむつに吸収させた人工尿をろ紙に吸収させた。ろ紙に対する荷重は10cm×10cmの面積に3.5kgが加わるようにした。2分経過後荷重を取り除き、人工尿を吸収したろ紙の重量を測定した。この重量から人工尿吸収前のろ紙の重量を差し引き、その値を液戻り量とした。液戻り量が少ないほど、吸収体(吸収性コア)の利用効率が高く高評価となる。尚、下記表1では、比較例3の液戻り量を基準とした液戻り量の相対値(当該サンプルの液戻り量/比較例3のサンプルの液戻り量)を示した。また
図9に、実施例及び比較例の各サンプルにおける吸収性コア中の吸水性ポリマーの含有量(g)−液戻り量の相対値のグラフを示した。
【0107】
人工尿の組成は次の通り。尿素1.940質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム(七水和物)0.111質量%、塩化カルシウム(二水和物)0.062質量%、硫酸カリウム0.198質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.004質量%及びイオン交換水(残量)。
【0108】
【表1】
【0109】
表1に示す通り、実施例及び比較例の使い捨ておむつは、吸収性コア中の吸水性ポリマーの含有率が60質量%以下とされており、従来に比して吸水性ポリマーの含有量が少なく設計されているところ、
図9にも示す通り、実施例1〜3は、フラット型の吸収性コアを用い且つコアラップシートとして従来用いられているクレープ紙を用いた比較例3に比して、吸収性コア中の吸水性ポリマーの含有量が少ないにもかかわらず、液戻り量が少なく(液戻り量の相対値が小さく)、吸収性能が良好であった。比較例1は、実施例1と同じコアラップシートを用いているものの、吸収性コアがフラット型であるため、実施例1に比して吸収性能に劣る結果となり、また比較例2は、実施例1と同じブロック型の吸収性コアを用いているものの、コアラップシートが比較例3と同じクレープ紙であるため、実施例1に比して吸収性能に劣る結果となった。このことから、吸水性ポリマーの含有量を少なく設計しても吸収性能が良好な吸収体を得るためには、吸収性コアとして特定構造のブロック型の吸収性コアを用い且つ該ブロック型の吸収性コアの受液面を、坪量及び密度がそれぞれ特定範囲にあるコアラップシートで被覆することが重要であることがわかる。