特許第5851832号(P5851832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851832
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】電力供給装置及び電力供給切替方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20160114BHJP
   G05F 1/00 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   H02J1/00 304E
   G05F1/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-290132(P2011-290132)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-141346(P2013-141346A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】江本 英晃
(72)【発明者】
【氏名】白江 光行
【審査官】 大手 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−004503(JP,A)
【文献】 特開2008−172979(JP,A)
【文献】 特開2009−232587(JP,A)
【文献】 特開2002−199742(JP,A)
【文献】 特開2010−110136(JP,A)
【文献】 特開2005−222728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/00− 1/10、
H02J 1/00− 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の負荷に対して電力を供給可能な複数の電力供給手段を備え、一の前記電力供給手段によって前記負荷へ電力を供給し、前記負荷へ電力を供給している前記電力供給手段に異常が発生した場合に、前記負荷へ電力を供給する前記電力供給手段を他の前記電力供給手段へ切り替える電力供給装置であって、
前記電力供給手段は、
出力するべき電圧及び電流に対応したパルス幅のパルス電圧を発生させるパルス発生手段と、
前記負荷に流れる電流が所定値となるように、前記パルス発生手段が出力するパルス電圧をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
を具備し、
前記負荷へ電力を供給している前記電力供給手段に異常が発生し、前記負荷へ電力を供給する前記電力供給手段を他の前記電力供給手段へ切り替える場合、切替先の前記電力供給手段が具備する前記パルス発生手段に対するフィードバック制御の制御周期を、切り替え前の前記電力供給手段における第1周期に比べて早い第2周期とする電力供給装置。
【請求項2】
前記第2周期は、前記パルス発生手段に対するフィードバック制御が行われることによって前記負荷に流れる電流が変化を開始し、安定するまでの時定数よりも早い周期である請求項1記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記フィードバック制御手段は、前記時定数に基づいて前記負荷に流れる電流を推算し、該推算結果に基づいて前記パルス発生手段に対するフィードバック制御を行う請求項2記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記フィードバック制御の制御周期は、前記負荷へ電力を供給する前記電力供給手段が他の前記電力供給手段へ切り替えられてから所定時間経過後に、前記第2周期から前記第1周期へ変更される請求項1から請求項3の何れか1項記載の電力供給装置。
【請求項5】
出力するべき電圧及び電流に対応したパルス幅のパルス電圧を発生させるパルス発生手段と、負荷に流れる電流が所定値となるように、前記パルス発生手段が出力するパルス電圧をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を具備した電力供給手段を複数備えた電力供給装置を用いて、同一の前記負荷へ電力を供給する前記電力供給手段を切り替える電力供給切替方法であって、
前記負荷へ電力を供給している前記電力供給手段に異常が発生したか否かを判定する第1工程と、
前記負荷へ電力を供給している前記電力供給手段に異常が発生したと判定され、前記負荷へ電力を供給する前記電力供給手段を他の前記電力供給手段へ切り替える場合、切替先の前記電力供給手段が具備する前記パルス発生手段に対するフィードバック制御の制御周期を、切り替え前の前記電力供給手段における第1周期に比べて早い第2周期とする第2工程と、
を含む電力供給切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給装置及び電力供給切替方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所等で用いられる機器(電磁弁やモータ等)を負荷とし、負荷に電力を供給する電力供給装置(例えば負荷に流す電流を所定値とする電流出力回路)は、その信頼性を高めるために、健全性診断が行われている。
【0003】
健全性診断の方法として例えば特許文献1には、矩形パルスを含む交流の発生手段をトランスの1次側に、2次側に計測、駆動、制御のいずれかを行う被駆動体を直接、あるいは整流回路を介して接続し、トランスを介して送られる電力により2次側に接続された被駆動体の動作によって消費されることで生じる1次側電流の変化を測定し、該測定手結果で前記被駆動体の動作と信号状態の診断を行う方法が記載されている。
【0004】
そして、電力供給装置の電力供給手段を多重化(例えば二重化)し、負荷へ電力を供給している電力供給手段に異常が検出された場合には、負荷へ電力を供給する電力供給手段を他の電力供給手段へ切り替えることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−168529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電力供給装置は、負荷へ電力を供給している電力供給手段に異常が発生し、負荷へ電力を供給する電力供給手段を他の電力供給手段へ切り替える場合、他の電力供給手段の出力をより短時間で負荷が必要とする値にさせなければならない。
特に、電源からの電力をパルス電圧とし、負荷へ供給するパルス発生部を備える電力供給手段では、電力供給手段の切り替えが行われた場合、パルス電圧を短時間で、負荷に応じたパルス電圧にしなければならない。しかし、切替先の電力供給手段は、負荷に関する情報を有していないため、短時間で負荷に応じたパルス電圧を出力することが困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、負荷へ電力を供給する電力供給手段を切り替えても、切替先の電力供給手段から出力される電力をより短時間で負荷が必要とする電力にできる、電力供給装置及び電力供給切替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の電力供給装置及び電力供給切替方法は以下の手段を採用する。
【0009】
すなわち、本発明の第一態様に係る電力供給装置は、同一の負荷に対して電力を供給可能な複数の電力供給手段を備え、一の前記電力供給手段によって前記負荷へ電力を供給し、前記負荷へ電力を供給している前記電力供給手段に異常が発生した場合に、前記負荷へ電力を供給する前記電力供給手段を他の前記電力供給手段へ切り替える電力供給装置であって、前記電力供給手段は、出力するべき電圧及び電流に対応したパルス幅のパルス電圧を発生させるパルス発生手段と、前記負荷に流れる電流が所定値となるように、前記パルス発生手段が出力するパルス電圧をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を具備し、前記負荷へ電力を供給している前記電力供給手段に異常が発生し、前記負荷へ電力を供給する前記電力供給手段を他の前記電力供給手段へ切り替える場合、切替先の前記電力供給手段が具備する前記パルス発生手段に対するフィードバック制御の制御周期を、切り替え前の前記電力供給手段における第1周期に比べて早い第2周期とする。
【0010】
本構成によれば、電力供給装置は、同一の負荷に対して電力を供給可能な複数の電力供給手段を備え、一の電力供給手段によって負荷へ電力を供給し、負荷へ電力を供給している電力供給手段に異常が発生した場合に、負荷へ電力を供給する電力供給手段を他の電力供給手段へ切り替える。これにより、負荷への電力の供給が滞ることが防止される。
【0011】
電力供給手段は、出力するべき電圧及び電流に対応したパルス幅のパルス電圧を発生させるパルス発生手段と、負荷に流れる電流が所定値となるように、パルス発生手段が出力するパルス電圧をフィードバック制御するフィードバック制御手段とを備える。
【0012】
ここで、電力供給装置は、負荷へ電力を供給している電力供給手段を他の電力供給手段へ切り替える場合、他の電力供給手段から出力される電力をより短時間で負荷が必要とする電力にするために、他の電力供給手段が出力するパルス電圧を短時間で負荷に応じたパルス電圧としなければならない。
【0013】
そこで、電力供給装置は、負荷へ電力を供給している電力供給手段に異常が発生し、負荷へ電力を供給する電力供給手段を他の電力供給手段へ切り替える場合、切替先の電力供給手段が具備するパルス発生手段に対するフィードバック制御の制御周期を、切り替え前の電力供給手段における周期に比べて早い(短い)周期とする。
【0014】
このように、本構成は、フィードバック制御の制御周期を早めることによって、フィードバック制御を短時間でより多くの回数行うこととなるので、パルス発生手段から出力されるパルス電圧が、負荷に流れる電流が所定値となるようにより短時間で制御されることとなる。このため、本構成は、負荷へ電力を供給する電力供給手段を切り替えても、切替先の電力供給手段から出力される電力をより短時間で負荷が必要とする電力にできる。
【0015】
また、上記第一態様では、前記第2周期を、前記パルス発生手段に対するフィードバック制御が行われることによって前記負荷に流れる電流が変化を開始し、安定するまでの時定数よりも早い周期とすることが好ましい。
【0016】
負荷に流れる電流は、フィードバック制御によって、パルス発生手段から出力されるパルス電圧の変化に伴って変化するが、電流が変化を開始して安定するまでは所定の時定数を有する。そして、従来、フィードバック制御の周期(第1周期)をこの時定数よりも遅い(長い)周期としていた。しかし、本構成は、切替先の電力供給手段のパルス発生手段に対するフィードバック制御の第2周期を、負荷に流れる電流が変化を開始して安定するまでの時定数よりも早い周期とするので、切替先の電力供給手段から出力される電力をより短時間で負荷が必要とする電力にできる。
【0017】
また、上記第一態様では、前記フィードバック制御手段が、前記時定数に基づいて前記負荷に流れる電流を推算し、該推算結果に基づいて前記パルス発生手段に対するフィードバック制御を行うことが好ましい。
【0018】
本構成によれば、負荷に流れる電流が変化を開始して安定するまでの時定数よりも早い第2周期で、切替先の電力供給手段のパルス発生手段に対するフィードバック制御を行う。しかし、時定数よりも早い周期でフィードバック制御を行うということは、負荷に流れる電流を安定する前に検出することとなり、負荷に流れる安定した電流を正確に検出していない。そこで、本構成は、時定数に基づいて推算した負荷に流れる電流に基づいてパルス発生手段に対するフィードバック制御を行う。これにより、本構成は、パルス発生手段に対するフィードバック制御を早い周期で行っても、負荷に対する電流の制御を精度良く行える。
【0019】
また、上記第一態様では、前記フィードバック制御の制御周期を、前記負荷へ電力を供給する前記電力供給手段が他の前記電力供給手段へ切り替えられてから所定時間経過後に、前記第2周期から前記第1周期へ変更することが好ましい。
【0020】
第2周期によるフィードバック制御は、第1周期よりも早いものの、その精度は第1周期の場合に比べて悪い。そこで、電力供給手段を切り替えてから所定時間経過すると、負荷に流れる電流は略所定値となることから、本構成は、フィードバック制御の制御周期を第2周期から第1周期へ変更することにより、負荷に流れる電流に対してより精度の高い制御を行うことができるようになる。
【0021】
また、本発明の第二態様に係る電力供給切替方法は、出力するべき電圧及び電流に対応したパルス幅のパルス電圧を発生させるパルス発生手段と、負荷に流れる電流が所定値となるように、前記パルス発生手段が出力するパルス電圧をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を具備した電力供給手段を複数備えた電力供給装置を用いて、同一の前記負荷へ電力を供給する前記電力供給手段を切り替える電力供給切替方法であって、前記負荷へ電力を供給している前記電力供給手段に異常が発生したか否かを判定する第1工程と、前記負荷へ電力を供給している前記電力供給手段に異常が発生したと判定され、前記負荷へ電力を供給する前記電力供給手段を他の前記電力供給手段へ切り替える場合、切替先の前記電力供給手段が具備する前記パルス発生手段に対するフィードバック制御の制御周期を、切り替え前の前記電力供給手段における第1周期に比べて早い第2周期とする第2工程と、を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、負荷へ電力を供給する電力供給手段を切り替えても、切替先の電力供給手段から出力される電力をより短時間で負荷が必要とする電力にできる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る電力供給装置の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る電力供給切替処理の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態に係るパルス発生部に対してフィードバック制御が行われることによる負荷電流の時間変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る電力供給装置及び電力供給切替方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る電力供給装置10の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る電力供給装置10は、一例として発電所に設けられ、発電所で用いる機器(電磁弁やモータ等)を負荷12としている。そして、電力供給装置10は、負荷12に対して電力を供給可能な電力供給手段として、負荷12へ所定値の電流を流す定電流出力回路14A,14Bを備える。以下の説明において、各定電流出力回路14A,14Bを区別する場合は、符号の末尾にA〜Bの何れかを付し、各定電流出力回路14A,14Bを区別しない場合は、末尾のA〜Bを省略する。
【0026】
電力供給装置10は、一の定電流出力回路14によって負荷12へ電力を供給し、負荷12へ電力を供給している定電流出力回路14に異常が発生した場合に、負荷12へ電力を供給する定電流出力回路14を他の定電流出力回路14へ切り替える。すなわち、電力供給装置10は、定電流出力回路14を二重化しており、一方の定電流出力回路14で負荷12へ電力供給させ、他方の定電流出力回路14を予備機として待機させている。なお、予備機とされている定電流出力回路14は、何時でも負荷12へ電力を供給できるように電源が投入され、電力を供給していない状態(以下、「待機状態」という。)とされている。このように、定電流出力回路14を多重化(本実施形態では二重化)する構成により、負荷12への電力の供給が滞ることが防止される。
【0027】
定電流出力回路14は、パルス発生部20、絶縁トランス22、及び整流部24を備える。
【0028】
パルス発生部20は、絶縁トランス22の一次側に接続されており、電源から電力が供給され、出力するべき電圧及び電流に対応したパルス幅のパルス電圧を発生させる。すなわち、定電流出力回路14は、パルス発生部20によるパルス幅変調(PWM:pulse width modulation)により、負荷12へ流す電流を定電流とする。パルス発生部20が発生するパルス電圧は、矩形波又はサイン波からなる交流である。なお、上述した定電流出力回路14が、負荷12へ電力を供給していない待機状態とは、すくなくとも、パルス発生部20を駆動させていない状態である。
【0029】
整流部24は、絶縁トランス22の二次側に接続されており、絶縁トランス22から出力された電圧をダイオード及びコンデンサによって整流し、負荷12へ印加する。
【0030】
また、定電流出力回路14は、AD変換器26A,26B、2次側電流推定部28、及びPIフィードバック制御部30を備える。
【0031】
AD変換器26Aは、パルス発生部20から出力された電圧値をデジタル値(電圧値)へアナログ/デジタル変換(以下、「AD変換」という。)し、2次側電流推定部28へ出力する。
【0032】
AD変換器26Bは、1次側の電流値をデジタル値(電圧値)へAD変換し、2次側電流推定部28へ出力する。
【0033】
2次側電流推定部28は、AD変換器26Aから入力された電圧値とAD変換器26Bから入力された電圧値とに基づいて、二次側、すなわち負荷12に流れる電流(以下、「負荷電流」という。)の値を推定し、推定値をPIフィードバック制御部30へ出力する。
【0034】
PIフィードバック制御部30は、負荷12に流れる電流が所定値(要求電流値)となるように、パルス発生部20が出力するパルス電圧をフィードバック制御する。具体的には、PIフィードバック制御部30は、2次側電流推定部28から入力された推定値と要求電流値とに基づいたPI制御(比例積分制御)によって、パルス発生部20の設定値(以下、「PWM設定値」という。)であるパルス電圧のパルス幅を決定し、該パルス幅をパルス発生部20へ出力する。このため、パルス発生部20は、PIフィードバック制御部30から入力されたパルス幅でパルス電圧を出力することとなる。これにより、より精度高く負荷電流を所定値とすることができるようになる。
【0035】
また、定電流出力回路14は、定電流出力回路14に異常が発生したか否かを検出する異常検出部32を備える。定電流出力回路14の異常とは、例えば、予め定められた範囲外の電流が負荷12へ継続して流されている場合等である。異常検出部32によって、定電流出力回路14に異常の発生が検出されると、負荷12に電力を供給している定電流出力回路14は、負荷12への電力の供給を停止する。また、異常の検出に伴い、異常検出部32は、異常検出信号を出力する。異常検出信号は、通信部34を介して、待機状態とされている他の定電流出力回路14へ送信される。
【0036】
そして、待機状態にある他の定電流出力回路14が異常検出信号を受信すると、受信した定電流出力回路14がパルス発生部20の駆動を開始する。これにより、負荷12への電力の供給元が、待機状態にある他の定電流出力回路14に切り替えられる。
【0037】
上記のように、本実施形態に係る定電流出力回路14は、フィードバック制御により負荷電流を所定値としている。このため、電力供給装置10は、負荷12へ電力を供給する定電流出力回路14を待機状態にある他の定電流出力回路14へ切り替える場合、切替先の定電流出力回路14から出力される電力をより短時間で負荷12が必要とする電力にするために、切替先の定電流出力回路14が出力するパルス電圧を短時間で負荷12に応じたパルス電圧としなければならない。
【0038】
そこで、本実施形態に係る電力供給装置10は、負荷12へ電力を供給している定電流出力回路14に異常が発生し、負荷12へ電力を供給する定電流出力回路14を他の定電流出力回路14へ切り替える場合、切替先の定電流出力回路14が具備するパルス発生部20に対するフィードバック制御の周期を、切り替え前の定電流出力回路14における第1周期に比べて早い(短い)第2周期とする。第1周期は、換言すると通常のパルス発生部20の駆動時におけるフィードバック制御の周期である。
【0039】
次に、図2に示される本実施形態に係る電力供給切替処理の流れを示すフローチャートを用いて、本実施形態に係る電力供給装置10の作用を具体的に説明する。なお、図2に示されるフローチャートは、定電流出力回路14Aが負荷12へ電力を供給し、定電流出力回路14Bを待機状態とした場合における、定電流出力回路14Bの動作を示したフローチャートである。
【0040】
ステップ100では、定電流出力回路14Aから通信部34を介して異常検出信号を受信したか否かが判定され、受信した場合にステップ102へ移行し、受信していない場合には、引き続き異常検出信号を受信したか否かの判定が繰り返される。なお、異常検出信号の受信判定は、例えば通信部34に設けられた演算装置で行われ、異常検出信号を受信したことを示す判定結果は、通信部34からAD変換器26A,26B、2次側電流推定部28、及びPIフィードバック制御部30へ出力される。定電流出力回路14Aが備える異常検出部32が異常を検出すると、定電流出力回路14Aから負荷12への電力の供給は停止される。
【0041】
ステップ102では、予め定められた値(PI制御に用いるゲイン等)を用いてPIフィードバック制御部30で算出されたPWM設定値に基づいたパルス電圧が、パルス発生部20から出力される。これにより、定電流出力回路14Bから負荷12への電力の供給が開始されることとなる。しかし、このときの負荷電流は、必ずしも適した値となっていない。この負荷電流は、フィードバック制御に必要なフィードバック値を得るために流した電流だからである。
【0042】
次のステップ104では、パルス発生部20から出力されるパルス電圧が、負荷電流を所定値にするように、PIフィードバック制御部30によって第2周期でフィードバック制御される。なお、AD変換器26A,26B、2次側電流推定部28、及びPIフィードバック制御部30は、ステップ100で通信部34から出力された判定結果をトリガとして、フィードバック制御に必要な各処理を開始する。これにより、定電流出力回路14Bから負荷12への電力の供給が開始されることとなる。
【0043】
ここで、本実施形態に係る第1周期及び第2周期について図3を参照して説明する。図3は、パルス発生部20に対してフィードバック制御が行われることによる負荷電流の時間変化を示したグラフである。なお、本実施形態では、一例として第1周期を5msecとし、第2周期を1msecとするが、第1周期及び第2周期の値はこれに限られない。
負荷電流は、フィードバック制御によって、パルス発生部20から出力されるパルス電圧のパルス幅が変化することに伴い変化するが、変化を開始して安定するまでに図3に示されるように所定の時定数を有する。
【0044】
そして、パルス発生部20の通常の駆動におけるフィードバック制御の周期である第1周期は、時定数よりも遅い(長い)周期とされている。第1周期を時定数よりも遅い周期とすることで、変動が無い安定した負荷電流に基づいてフィードバック制御が行われることとなるので、負荷電流に対してより精度の高い制御を行うことができる。
一方、第2周期は、時定数よりも早い周期とされている。これにより、本実施形態に係る電力供給装置10は、フィードバック制御を短時間でより多くの回数行うこととなるので、パルス発生部20から出力されるパルス電圧が、負荷電流を所定値とするようにより短時間で制御されることとなる。
【0045】
具体的には、AD変換器26Bが、第2周期で1次側の電流値をAD変換し、2次側電流推定部28へ出力することにより、第2周期によるフィードバック制御が実現される。これと共に、AD変換器26Aも第2周期で1次側の電圧値をAD変換し、2次側電流推定部28へ出力する。
【0046】
このように本実施形態に係る電力供給装置10は、負荷電流が変化を開始して安定するまでの時定数よりも早い第2周期で、切替先の定電流出力回路14のパルス発生部20に対するフィードバック制御を行う。しかし、時定数よりも早い周期でフィードバック制御を行うということは、図3に示されるように、負荷電流を安定する前に検出することとなり、安定した負荷電流を正確に検出していない。そこで、本実施形態に係る電力供給装置10は、時定数に基づいて負荷電流を推算し、その推算結果に基づいてパルス発生部20に対するフィードバック制御を行う。
【0047】
具体的には、負荷電流が変化を開始して安定するまでに要する時定数を予め求めておき、2次側電流推定部28によって、二次側へ流れる電流値を推定する場合に、AD変換器26Bから入力される1次側の電流値と予め求められた時定数とに基づいて、負荷電流を推算する。
これにより、本実施形態に係る電力供給装置10は、パルス発生部20に対するフィードバック制御を早い周期で行っても、負荷電流の制御を精度良く行えることとなる。
【0048】
次のステップ106では、負荷12への電力の供給元が定電流出力回路14Bへ切り替えられてから所定時間経過したか否かが判定され、肯定判定の場合は、ステップ108へ移行し、否定判定の場合は、ステップ104へ戻り、第2周期によるパルス発生部20に対するフィードバック制御が繰り返される。なお、この時間経過判定は、例えばAD変換器26Bで行われ、所定時間経過したことを示す判定結果は、AD変換器26Aに出力される。
【0049】
ステップ108では、フィードバック制御の周期が、第2周期から第1周期へ変更される。第2周期によるフィードバック制御は、第1周期よりも早いものの、その精度は第1周期の場合に比べて悪い。そこで、定電流出力回路14を切り替えてから所定時間経過すると、負荷電流は略所定値となることから、本実施形態に係る電力供給装置10は、フィードバック制御の周期を第1周期へ変更することにより、負荷電流に対してより精度の高い制御を行うことができるようになる。
【0050】
具体的には、AD変換器26Bが、第2周期行っていた1次側の電流値のAD変換を第1周期で行い、2次側電流推定部28へ出力することにより、フィードバック制御の第2周期から第1周期への変更が実現される。これと共に、AD変換器26Aも第1周期で1次側の電圧値をAD変換し、2次側電流推定部28へ出力する。
【0051】
なお、上記所定時間の間に行われるフィードバック制御の回数は、第2周期の値によって決まるため、上記所定期間は、換言すると第2周期によるフィードバック制御の回数といえる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る電力供給装置10は、負荷12へ電力を供給している定電流出力回路14に異常が発生し、負荷12へ電力を供給する定電流出力回路14を他の定電流出力回路14へ切り替える場合、切替先の定電流出力回路14が具備するパルス発生部20に対するフィードバック制御の周期を、切り替え前の定電流出力回路14における第1周期に比べて早い第2周期とする。
【0053】
このため、本実施形態に係る電力供給装置10は、負荷12へ電力を供給する定電流出力回路14を切り替えても、切替先の定電流出力回路14から出力される電力をより短時間で負荷12が必要とする電力にできる。
【0054】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
例えば、上記実施形態では、電力供給装置10が定電流出力回路14を2つ備える形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、定電流出力回路14を3つ以上備える形態としてもよい。この形態の場合、一の定電流出力回路14が負荷12へ電力を供給し、複数の他の定電流出力回路14が待機状態とされる。そして、負荷12へ電力を供給している一の定電流出力回路14に異常が発生した場合、負荷12へ電力を供給する定電流出力回路14は、待機状態とされる複数の他の定電流出力回路14のうち一の定電流出力回路14に切り替えられる。
【0056】
また、上記実施形態では、異常検出部32が異常を検出した場合に異常検出信号を出力する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、異常検出部32が異常を検出していない場合に異常でないことを示す正常信号を出力し、異常を検出した場合に該正常信号の出力を停止する形態としてもよい。この形態の場合、待機状態とされている定電流出力回路14が、負荷12へ電力を供給している定電流出力回路14からの正常信号を受信しなくなった場合に、負荷12へ電力を供給する定電流出力回路14が待機状態とされている定電流出力回路14に切り替えられることとなる。
【0057】
また、上記実施形態では、一次側に流れる電流に基づいて、負荷12に流れる電流を推算し、該推算結果に基づいてパルス発生部20をフィードバック制御する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、負荷12に流れる電流を直接検出し、該検出結果に基づいてパルス発生部20をフィードバック制御する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 電力供給装置
12 負荷
14A,14B 定電流出力回路
20 パルス発生部
30 PIフィードバック制御部
図1
図2
図3