(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851840
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】骨に移植靱帯を取付けるヘリコイル干渉固定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20160114BHJP
A61B 17/68 20060101ALI20160114BHJP
A61F 2/08 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
A61B17/56
A61B17/58 310
A61F2/08
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-538642(P2011-538642)
(86)(22)【出願日】2009年11月20日
(65)【公表番号】特表2012-509744(P2012-509744A)
(43)【公表日】2012年4月26日
(86)【国際出願番号】US2009065304
(87)【国際公開番号】WO2010062833
(87)【国際公開日】20100603
【審査請求日】2012年11月7日
【審判番号】不服2014-18408(P2014-18408/J1)
【審判請求日】2014年9月16日
(31)【優先権主張番号】12/392,804
(32)【優先日】2009年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/200,285
(32)【優先日】2008年11月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511127210
【氏名又は名称】ヘアリコイル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】デニス・マクデヴィット
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント・ノヴァック
【合議体】
【審判長】
山口 直
【審判官】
竹下 和志
【審判官】
熊倉 強
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/021474(WO,A2)
【文献】
米国特許第5354299(US,A)
【文献】
国際公開第2008/100944(WO,A1)
【文献】
米国特許第6626917(US,B1)
【文献】
特開平5−300917(JP,A)
【文献】
特開平8−299362(JP,A)
【文献】
特開平6−292686(JP,A)
【文献】
特表2005−506864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04 - 17/56
A61B 17/68
A61F 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻部間のスペースにより離隔させられた複数の巻部を含み、近位端及び遠位端で終端するらせん状体、及び、前記らせん状体の少なくとも二つの巻部の間を延在する少なくとも一つの内部ストラットを備えるヘリコイルと、
少なくとも一つのストラットを受ける少なくとも一つの溝を備え、前記ヘリコイルを回すインサータと、
を備え、前記インサータの回転が前記ヘリコイルの回転を生じるように、前記ヘリコイルの少なくとも一つのストラットが前記インサータの少なくとも一つの溝内にマウントされるように前記ヘリコイルが前記インサータにマウントされ、
前記ヘリコイルが前記インサータにマウントされると、前記ヘリコイル内面が前記インサータのテーパ状本体直径と直接接触するような積極的な締めを前記ヘリコイル及び前記インサータが形成するように、前記ヘリコイルがテーパ状内面を備え、かつ前記インサータがテーパ状外面を構成するヘリコイル固定システム。
【請求項2】
前記少なくとも一つのストラットがらせん構造を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも一つのストラットのらせん構造が前記らせん状体とは反対の方向のらせん状である請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも一つのストラットのらせん構造が前記らせん状体よりも長い周期を有する請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記ヘリコイルが少なくとも二つのストラットを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記らせん状体の遠位端が平滑である請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも二つのヘリコイルが存在する請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ヘリコイルが非吸収性材料で作られている請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ヘリコイルが吸収性材料で作られている請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記インサータが、少なくとも一つの溝よりも遠位に位置したテーパ状座部形成ねじを備え、さらに前記テーパ状座部形成ねじが、前記らせん状体の巻部を受ける座部を組織内に形成するように構成された請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
巻部間のスペースにより離隔させられた複数の巻部を構成し、近位及び遠位で終端する、らせん状体と、
前記らせん状体の少なくとも二つの巻部の間で延在し、らせん構造を備える、少なくとも一つの内部ストラットと、
を備え、
少なくとも一つのストラットを受ける少なくとも一つの溝を備えていて前記ヘリコイルを回すインサータ上へと前記ヘリコイルがマウントされると、前記ヘリコイル内面が前記インサータのテーパ状本体直径と直接接触するような積極的な締めを前記ヘリコイル及び前記インサータが形成するように、前記ヘリコイルが、前記インサータに設けられたテーパ状外面に対応したテーパ状内面を備えているヘリコイル。
【請求項12】
前記少なくとも一つのストラットの前記らせん構造が、前記らせん状体とは反対の方向のらせん状である請求項11に記載のヘリコイル。
【請求項13】
前記少なくとも一つのストラットの前記らせん構造が、前記らせん状体よりも長い周期を有する請求項12に記載のヘリコイル。
【請求項14】
前記ヘリコイルが少なくとも二つのストラットを備える請求項11に記載のヘリコイル。
【請求項15】
前記らせん状体の遠位端が平滑である請求項11に記載のヘリコイル。
【請求項16】
少なくとも二つのヘリコイルが存在する請求項11に記載のヘリコイル。
【請求項17】
前記ヘリコイルが非吸収性材料で作られている請求項11に記載のヘリコイル。
【請求項18】
前記ヘリコイルが吸収性材料で作られている請求項11に記載のヘリコイル。
【請求項19】
前記ヘリコイルが前記インサータにマウントされる際に、前記インサータ上への前記ヘリコイルの導入を行うように、前記テーパ状座部形成ねじが前記ヘリコイルよりも小さなサイズとされている請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[係属中の先行特許出願の参照]
本特許出願は、2009年2月25日付け出願の特許文献1及び2008年11月26日付け出願の特許文献2の優先権を主張するPCT国際特許出願である。
【0002】
上記二つの特許出願はそれらの全体が参照によりここに折り込まれる。
【0003】
本発明は概して医療装置及び方法に関し、より詳しくは靭帯を再建する医療装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
靭帯は、骨の人工四肢を接続する、及び/又は体内の所定位置に組織をサポート及び/又は保持する働きをする組織の強いバンドである。靭帯は一般的に、平行に又は近接して組み合わされた手法で配置された密な線維組織の粗束から作られており、線維組織がしなやか且つ柔軟であるが、あまり伸張しない。
【0005】
多くの場合、靭帯は、事故の結果として、損傷又は破壊される。したがって、このようなダメージを受けた靭帯を修復又は置換するための様々な手法が開発されている。
【0006】
例えば、人間の膝において、前十字靱帯および後十字靱帯(すなわち「ACL」及び「PCL」)は、脛骨の上端と大腿骨の底端との間を延在する。ACL及びPCLは、他の靭帯及び軟組織とともに、膝に対する静的及び動的安定性の両方をもたらす役目をする。多くの場合、前十字靭帯(すなわち「ACL」)は、例えばスポーツに関するけがの結果として、破壊及び断裂される。この結果、膝の正常な機能を実質的に回復するように、ACL再建に対する様々な外科的手法が開発されてきた。
【0007】
多くの場合、ACLは、破裂されたACLを移植靭帯と置換することにより、再建することができる。より具体的には、この手法において、骨トンネルは通常、脛骨上部及び大腿骨底部の両方に形成され、移植靭帯の一端が大腿骨トンネル内に位置決めされ且つ移植靭帯の他端が脛骨端部に位置決めされ、移植靱帯の中間部分が大腿骨底部と脛骨上部との間の距離に及んでいる。移植靭帯の二つの端部は、移植靭帯が実質的に同じ方法で大腿骨底端と脛骨上端の間を延在してオリジナルのACLと実質的に同じ機能を有するように、従来周知の様々な方法で各骨トンネルに固定されている。移植靭帯はその後、膝の正常な機能を実質的に再建するように、周囲の身体上構造と協働する。
【0008】
ある状況下で、移植靭帯は、患者体内の他の部分から採取された靭帯又は腱、例えば、骨ブロックを有する又は有しない膝蓋腱、半腱様筋の腱、及び/又は薄筋腱とすることができる。状況が違えば、移植靭帯は、死体から採取されたものとすることができる。さらに他の状況では、移植靭帯は、合成繊維とすることができる。本発明を目的として、上記のすべては、本明細書において総称して移植靭帯ということができる。
【0009】
上述のように、大腿骨及び脛骨トンネル内に移植靭帯の二つの端部を固定するため、当該技術分野において様々なアプローチが周知である。
【0010】
大腿骨固定、脛骨固定、又は両方に適用することのできる周知の手法において、移植靭帯の端部は骨トンネル内に配置され、次に移植靭帯は当該技術分野では一般的に「干渉」ねじとして知られている、頭部のない整形外科用ねじを用いて適所に固定される。より具体的には、このアプローチによって、移植靱帯の端部は骨トンネル内に配置され、次に干渉ねじが骨トンネル内で進められ、それによって、干渉ねじが骨トンネルに沿って延在すると共に、移植靱帯及び骨トンネル側壁の両方を同時に係合する。この構成において、干渉ねじは、骨トンネルの対向側壁と係合するように、移植靱帯を横方向に実質的に押し進め、それによって、ホスト骨(host bone)に移植靱帯を所謂「締まりばめ」を用いて固定する。したがって、長い時間(例えば数ヶ月)をかけて、移植靱帯及びホスト骨は、靱帯と骨との間に強く自然な接合をもたらすように、それらの接触点で共に成長する。
【0011】
干渉ねじ(interference screw)は、骨トンネル内に移植靱帯を固定するのに効果的な手段であることが確認されている。しかしながら、干渉ねじ自体は通常、骨トンネル内のかなりの量の空間を占めてしまい、それは移植靱帯と骨トンネル側壁との間に作られる表面接触を制限することがある。これは、逆に、骨・靱帯内部成長の領域を制限してしまい、したがって接合強度に影響を及ぼすことがある。限定ではなく一例として、一般的な干渉ねじは、潜在的骨・靱帯組込部位(potential bone-to-ligament integration region)の約50%を閉塞することが推定される。
【0012】
このため、干渉ねじが時間とともに最終的に見えなくなると共に骨・靱帯内部成長が骨トンネルのほぼ全周囲について生じるように、吸収性材料から作られた干渉ねじを提供するために大変な努力がなされた。この目的を達成するために、様々な吸収性干渉ねじが開発されており、該吸収性干渉ねじは、生態適合性ポリマー、生態吸収性ポリマー、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸など、から作られている。これらのポリマーは通常、干渉ねじを適所に進め、その後、永続的(permanent basis)に適所に残すことなく、骨・靱帯内部成長が生じる間は、移植靱帯を適所に保持するのに必要な、十分な機械強度をもたらす。
【0013】
一般に、生体適合性、生体吸収性ポリマーから作られた干渉ねじは、臨床的な成功が確認されている。しかしながら、これらの吸収性のある干渉ねじは未だ、いくつかの問題点に悩まされている。第一に、臨床的証拠は、骨・靱帯内部成長の質が、自然の骨・靱帯内部成長とは少し違うことを示しており、ある意味では、上記の生体吸収性ポリマーは、秩序だった(well-ordered)組織マトリックスよりも、線維性腫瘤により置換されやすい。第二に、臨床的証拠は、吸収は通常、かなりの期間、例えば約3年位を要することを示している。したがって、この吸収の期間の間は、骨・靱帯内部成長は、干渉ねじの存在により未だ、大幅に制限されてしまう。第三に、臨床的証拠は、多くの患者にとって、吸収は決して完全ではなく、体内にかなりの異質の固まりを残したままにしていることを示している。この問題は、十分な強度を有する吸収性干渉ねじを提供するために、吸収性干渉ねじがかなり大きくなる傾向にあることにより若干悪化し、例えば、吸収性干渉ねじは、8〜12mmの直径(すなわち、外径)及び20〜25mmの長さを有することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願第12/392,804号明細書
【特許文献2】米国特許出願第61/200,285号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、新規であり且つ改良された干渉固定システムに対する要求があり、該システムは、(i)骨・靱帯内部成長(bone-to-ligament in-growth)が生じる間は、適所に移植靱帯を保持するのに必要な強度を有し、かつ(ii)優れた骨・靱帯内部成長を促進する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらと他の目的は、骨に移植靱帯を固定する新規のヘリコイル干渉固定システムの提供及び使用により対応される。
【0017】
本発明の一形態において、新規のヘリコイル干渉固定システムが提供され、該ヘリコイル干渉固定システムが、
巻部間のスペースにより離隔させられた複数の巻部から構成され、近位端及び遠位端で終端するらせん状体、及び、前記らせん状体の少なくとも二つの巻部の間を延在する少なくとも一つの内部ストラットを含むヘリコイルと、
少なくとも一つの前記ストラットを受ける少なくとも一つの溝を備え、前記ヘリコイルを回すインサータと、
を備え、前記インサータの回転が前記ヘリコイルの回転を生じるように、前記ヘリコイルの少なくとも一つのストラットが前記インサータの少なくとも一つの溝内にマウントされるように前記ヘリコイルが前記インサータにマウントされる。
【0018】
本発明の他の態様において、骨に移植靱帯を取付ける新規の方法が提供され、
該方法は、ヘリコイル干渉固定システムを提供する工程を備え、
該ヘリコイル干渉固定システムが、
巻部間のスペースにより離隔させられた複数の巻部から構成され、近位端及び遠位端で終端するらせん状体、及び、前記らせん状体の少なくとも二つの巻部の間を延在する少なくとも一つの内部ストラットを含むヘリコイルと、
前記少なくとも一つのストラットを受ける少なくとも一つの溝を備え、前記ヘリコイルを回すインサータと、
を備え、前記インサータの回転が前記ヘリコイルの回転を生じるように、前記ヘリコイルの少なくとも一つのストラットが前記インサータの少なくとも一つの溝内にマウントされるように、前記ヘリコイルが前記インサータにマウントされ、
前記骨内に骨トンネルを形成し、かつ移植靱帯を設ける工程を備え、
前記骨トンネル内に移植靱帯を挿入する工程を備え、
締まりばめを利用して前記骨に前記移植靱帯を固定するように、インサータを用いて前記骨トンネル内で前記ヘリコイルを回す工程を備える。
【0019】
本発明の更なる他の形態において、巻部間のスペースにより離隔させられた複数の巻部から構成され、近位端及び遠位端で終端するらせん状体と、らせん構造から構成され、前記らせん状体の少なくとも二つの間の巻部の間を延在する、少なくとも一つの内部ストラットと、を備える新規のヘリコイルが提供される。
【0020】
これらと他の本発明の目的及び特徴は、以下の本発明の好適な実施形態の詳細な説明により、より完全に開示又は明らかにされ、それは、添付図面とともに考慮され、該図面は、同様の符号は同様の部品に言及し、また、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に従って構成された第一のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図2】本発明に従って構成された第一のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図3】本発明に従って構成された第一のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図4】本発明に従って構成された第一のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図5】本発明に従って構成された第一のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図6】本発明に従って構成された第一のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図7】本発明に従って構成された第一のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図8】本発明に従って構成された第二のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図9】本発明に従って構成された第二のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図10】本発明に従って構成された第二のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図11】本発明に従って構成された第二のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図12】本発明に従って構成された第二のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図13】本発明に従って構成された第二のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図14】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた大腿骨固定を示す概略図である。
【
図15】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた大腿骨固定を示す概略図である。
【
図16】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた大腿骨固定を示す概略図である。
【
図17】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた大腿骨固定を示す概略図である。
【
図18】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた大腿骨固定を示す概略図である。
【
図19】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた大腿骨固定を示す概略図である。
【
図20】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた大腿骨固定を示す概略図である。
【
図21】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた完全(full)ACL再建術を示す概略図である。
【
図22】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた完全ACL再建術を示す概略図である。
【
図23】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた完全ACL再建術を示す概略図である。
【
図24】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた完全ACL再建術を示す概略図である。
【
図25】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた完全ACL再建術を示す概略図である。
【
図26】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた軟組織ACL固定を示す概略図である。
【
図27】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた軟組織ACL固定を示す概略図である。
【
図28】
図8〜
図13の第二のヘリコイル干渉固定システムを用いた軟組織ACL固定を示す概略図である。
【
図29】本発明に従って構成された第三のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図30】本発明に従って構成された第三のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図31】本発明に従って構成された第三のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図32】本発明に従って構成された第四のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図33】本発明に従って構成された第五のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図34】本発明に従って構成された第六のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図35】本発明に従って構成された第六のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図36】本発明に従って構成された第六のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図37】本発明に従って構成された第七のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図38】本発明に従って構成された第八のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【
図39】本発明に従って構成された第九のヘリコイル干渉固定システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、骨又は他の組織に移植靱帯を取付ける、新規のヘリコイル干渉固定システム(helicoil interference fixation system)の提供及び使用を含んでいる。
【0023】
都合上、本発明は、以下に、ACL脛骨及び/又は大腿骨固定に対する使用との関連について説明する。しかしながら、本発明はまた、脛骨及び/または大腿骨への他の移植靱帯の固定、及び/又は、他の骨又は臓器などの他の組織への他の移植靱帯の固定に使用することができることが理解されるべきである。
【0024】
まず
図1〜
図7を見ると、骨に移植靱帯を固定する新規のヘリコイル固定システム5が示されている。ヘリコイル干渉固定システム5は通常、骨・靱帯内部成長が生じる間は、適所に移植靱帯を保持するように、骨内に配置するヘリコイル10を備えている。ヘリコイル干渉固定システム5はまた、骨トンネル内にヘリコイル10を配置するインサータ15を備えている。
【0025】
より詳しくは、さらに
図1〜
図6、特に
図5を見ると、ヘリコイル10は通常、遠位端25及び近位端30で終端する、らせん状体20を備えている。らせん状体20は、前記らせん状体の巻部40の間にかなりのスペース又はギャップ35が存在するように構成されている。スペース又はギャップ35は、例えば、らせん状体を通じて大きな開口を設けることにより、骨・靱帯内部成長を促進する。これらの大きな開口は、骨・靱帯内部成長を向上するように、ヘリコイルを通じて細胞・栄養素を有する(cell-and nutrient-bearing)流体の流れを促進し、かつヘリコイルにわたって細胞の内部成長を可能にする。
【0026】
一つ又は二つ以上のストラット45は、前記一つ又は二つ以上のストラット45がらせん状体20の内面50に固定された状態で、らせん状体20の内面内に配置されている。以下に、より詳細に説明されるように、一つ又は二つ以上のストラット45は、前記らせん状体内に配置の間中、ヘリコイル10を回す手段を提供する。また、一つ又は二つ以上のストラット45は、らせん状体20の巻部40に対する構造支柱を提供することができる。一つ又は二つのストラット45は、らせん状体20と一体的に形成することができ(例えば、成形加工により)、又は、ヘリコイル20とは別個に形成して次に、別個の製造プロセスにおいて(例えば、溶接工程により)、らせん状体20に取付けることができる。ここで、一つ又は二つ以上のストラット45は、らせん状体20と一体的に形成され、一つ又は二つのストラット45は、適所に溶融流れが得られるように用いることができる。
【0027】
本発明の一の好適な形態において、一つ又は二つ以上のストラット45は、らせん構造を構成している。そして、本発明の一の特に好適な形態において、一つ又は二つ以上のストラット45は、らせん構造を備え、該らせん構造は、らせん状体20のらせんとは反対の方向にらせん状とし、かつ一つ又は二つ以上のストラット45は、らせん状体20のピッチよりもかなり大のピッチを有する。
図5参照。
【0028】
好適には、ストラット45の数、及びそのサイズは、らせん状体20の巻部40間のスペース又はギャップ35の重要でない部分を隔離するように、それによってヘリコイルを通じて流体及び組織の通路を実質的に妨げないように、選択される。同時に、しかしながら、ストラット45の数、そのサイズ、及びその構成は、配置の間中、ヘリコイル10を回す適切な手段を提供するように、かつらせん状体20の巻部20に対する任意の必要なサポートを提供するように、選択される。
【0029】
本発明の一の好適な形態において、一つのストラット45が設けられる。
【0030】
本発明の他の好適な形態において、複数のストラット45(例えば、二つ、三つ、四つ又は五つ以上のストラット)が設けられる。
【0031】
そして、本発明の一の好適な形態において、ストラット45は合計で、らせん状体20の巻部40間のスペース又はギャップ35の50パーセント(50%)未満で、隔離する。
【0032】
そして、本発明の一の好適な形態において、ストラット45は合計で、らせん状体20の巻部40間のスペース又はギャップ35の20パーセント(50%)未満で、隔離する。
【0033】
ヘリコイル10は、一つ又は二つ以上の生体適合性のある材料から形成されている。これら生体適合性のある材料は、非吸収性(例えば、ステンレス鋼又はプラスチック)、又は、吸収性(例えば、生体吸収性ポリマー)とすることができる。本発明の一つの好適な形態において、ヘリコイル10は、好ましくは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)などの、生体吸収性ポリマー、から構成することができる。いずれにしても、しかしながら、ヘリコイル10は、固定デバイスを適所にセットするとともに、骨・靱帯内部成長が生じる間中、移植靱帯を適所に保持するのに必要な強度を提供することのできる材料から構成されている。
【0034】
インサータ15は
図1〜
図4、及び
図7に示されている。インサータ15は通常、遠位端60及び近位端65を有するシャフト55を備えている。一つ又は二つ以上の溝70が、シャフト55の遠位端に形成されている。溝70は、ヘリコイル10をシャフト55の遠位端にマウントするとともにシャフト55の回転により回転することができるように、一つ又は二つ以上の、ヘリコイル10のストラット45を受ける。テーパ状座部形成ねじ75(例えば、テーパ状切断ねじ、テーパ状開口ねじ、又は拡張ねじなど)は、溝70に対して遠位のシャフト55に形成されている。テーパ状座部形成ねじ(tapered seat-forming thread)75は、移植靱帯と骨トンネルとの間のスペース内にヘリコイル10を先行するとともに、次に、以下により詳細に説明されるように、ねじ形態を作るタップとほぼ同じ方法で、移植靱帯及びらせん状体20の巻部40を受ける、骨トンネルの壁部内に導入部又は開口を形成するのに役立つ。ハンドル80は、外科医によるシャフト55の回転を容易にするために、シャフト55の近位端にマウントされる。
【0035】
テーパ状座部形成ねじ75は、ヘリコイル10がインサータ15にマウントされると、テーパ状座部形成ねじ75がヘリコイル10に対して適切な導入部を設けるように、ヘリコイル10に適合させられることが理解される。
【0036】
好適には、らせん状体20の内面50及びインサータ15の遠位端60は、テーパが付けられており、近位方向において外側に拡張しており、それによってヘリコイルの内面がインサータのテーパ状本体直径(tapered body diameter)と直接接触するように、ヘリコイル10及びインサータ15が積極的な締め(positive seat)を形成している。
【0037】
したがって、ヘリコイル10がシャフト55の遠位端にマウントされると、インサータ15は、ヘリコイルを手術部位に進め、ハンドル80の回転により、ヘリコイル10を移植靱帯と骨トンネルの壁部との間のギャップ内で回し、それによって、骨トンネル内に移植靱帯の干渉固定を作るのに使用することができることが理解される。有意に、インサータ15は、ヘリコイル10より先に遠位端に形成されたテーパ状座部形成ねじ75を有するために、テーパ状座部形成ねじは、ヘリコイル10より先に組織内に座部(seat)を形成することができ、それによって、ヘリコイルが容易に組織内を進むとともに所望の干渉固定を作るのを可能にする。したがって、ヘリコイル10は、組織を貫通するために、その遠位端に貫通点を有することを必要としない。
【0038】
必要に応じて、インサータ15は、カニューレ挿入することでき、それによってインサータ及びヘリコイル10は、以下に説明されるように、ガイドワイヤにわたって配置することができる。
【0039】
図8〜
図13は他のヘリコイル干渉固定システム5を示しており、ヘリコイル10は、二つのストラット45と、二つの溝70を含むインサータ15と、を備えている。一つのストラット45ではなく二つのストラット45を使用することにより、より大の表面積にわたって回転中にかかる荷重を分散することができるので、有利とすることができる。これは、ヘリコイル10が生体吸収性ポリマーから形成される場合、重要とすることができる。
【0040】
ヘリコイル干渉固定システム5は、骨に移植靱帯を取付けるために、干渉ねじシステムのものに一般に類似した手法において利用することができる。
【0041】
より詳しくは、
図14〜
図25を見ると、ヘリコイル干渉固定システム5を用いて達成される、ACL再建の種々の態様が示されている。
【0042】
図14は、一般的な膝関節205を示しており、関節がACL再建に対して準備された状態であり、例えば、自然のACLが除去された状態であり、脛骨トンネル210が脛骨215内に形成された状態であり、かつ大腿骨トンネル220が大腿骨225内に形成された状態である。
【0043】
図15は、移植靱帯230が、当該技術分野において周知の方法に従って、大腿骨トンネル220内及び脛骨トンネル210内に位置決めされていること以外は、
図14と同様の図である。一例として、移植靱帯230は、けん引縫合を用いて、脛骨トンネル210を通じて大腿骨220内に、上方に「引かれている」ものとすることができる。
【0044】
図16及び
図17は、ヘリコイル干渉固定システム5を用いて、大腿骨トンネル220内に迅速に作られた移植靱帯230を示す。より具体的には、本発明に従って、ヘリコイル10は、インサータの溝70にヘリコイル10のストラット45を取付けることにより、インサータ15の遠位端にマウントされている。次に、インサータは、脛骨トンネル210を通じて、膝関節205の内部を通って、そして大腿骨トンネル220内へ完全に、ヘリコイル10を進めるのに使用される。必要に応じて、インサータ15はカニューレ挿入することができ、それによってインサータ及びヘリコイルが、当該技術分野で周知のガイドワイヤのようなものにわたって進められる。インサータの遠位端が進められると、テーパ状座部形成ねじ75はまず、移植靱帯230と大腿骨トンネル220の側壁との間のスペース内に、その進む空間を見出す。次に、インサータが回されると、テーパ状座部形成ねじ75は、ヘリコイルより先に組織内に座部を形成し、らせん状体20の回転が座部形成ねじ75により形成された座部にらせん状体を座らせるように、ヘリコイル10が組織内で進められる。これが生じると、移植靱帯は、骨トンネルの対向する側壁と係合するように、横方向に駆動される。この動作は、大腿骨トンネル220の側壁と移植靱帯230との間に、ヘリコイル10をセットし、それによって移植靱帯230と骨トンネルの側壁との間に締まりばめを固定し、それによって移植靱帯230を骨に固定する。
【0045】
その後、
図18及び
図19を見ると、インサータ15は、ヘイコイル20を移植靱帯と骨トンネルの側壁との間の適所にとどまらせたまま取り出される。
図20に示されるように、ヘリコイル10は、移植靱帯220と骨トンネルの側壁との間に設けられた締まりばめ(interference fit)を維持し、それによって移植靱帯を骨に固定する。
【0046】
必要に応じて、ヘリコイル干渉固定システム5は、その後、同様の方法で、脛骨固定を構成するために用いることができる。
図21〜
図25参照。
【0047】
有意に、開口らせんコイルは適所に固定デバイスをセットするのに必要な強度を提供し、かつ骨・靱帯内部成長が生じる間は移植靱帯を適所に保持するが、一方で固定デバイス本体を通じて追加アクセスを提供するため、固定デバイスを開口らせんコイルの形態で構成することは特に有利であることが確認されている。したがって、細胞・栄養素を有する流体は、ヘリコイル10の本体を通じて実質的にスムースに移動することができ、かつ組織内部成長(tissue in-growth)がヘリコイル10の本体にわたって生じる。
【0048】
さらに、移植靱帯がその後、締まりばめに軸荷重をかけた場合、ストラット45がらせん状体20の巻部40の構造的な完全性を維持するのに役立ち、それによって締まりばめの完全性を確実にすることが見出された。
【0049】
図16〜
図24において、移植靱帯230が、靱帯の端部で骨ブロックを含むように示されており、例えば、移植靱帯10は、付着した骨ブロックを有する膝蓋腱とすることができる。しかしながら、
図26〜
図28に見られるように、移植靱帯230はまた、軟組織のみを構成することができる。例えば移植靱帯230は、半腱様筋腱及び/又は薄筋腱、及び/又は人工デバイスから構成することができる。
【0050】
図5及び
図11において、一つ又は二つ以上のストラット45は、らせん構造を有するものとして示されている。しかしながら、一つ又は二つ以上のストラット45はまた、直線構造と共に形成することができる。例えば
図29〜
図30を参照すると、
図29〜
図30は、単一の直線ストラット45を有するヘリコイル10を示し、かつ
図31は複数の直線ストラット45を有するヘリコイル10を示す。
【0051】
さらに、
図32に見られるように、一つ又は二つ以上のストラット45は、巻部40の間に入れられ、又は
図33に見られるように、一つ又は二つ以上のストラット45は、巻部40の間に選択的に入れることができる。
【0052】
締まりばめは、複数のヘリコイル10を用いて形成することができることが理解される。したがって、
図34〜36に見られるように、複数のヘリコイル10は、インサータ15に負荷をかけると共に、集合締まりばめ(collective interference fit)に対して使用することができる。
【0053】
必要に応じて、
図37を見ると、一つ又は二つ以上のストラット45は、陥凹45Aと置換することができる。この場合、インサータ15上の溝70は、対応リブ(図示省略)により置換され、それによってインサータ15がヘリコイル10を回転可能に駆動することを可能にする。
【0054】
図38に示されるように、巻部40の周期(period)は、ヘリコイル10の長さ方向に沿って変えることができる。
【0055】
また必要に応じて、ヘリコイル10は、その遠位端25とその近位端30との間でテーパを付けることができる。
【0056】
[修正]
本開示を考慮して、本発明の更なるなる実施形態は当業者にとって明らかであると理解される。本発明は、本明細書に開示及び/又は図面に示された特定の構成及び方法ステップに限定されるものでなく、本発明の要旨の範囲内で任意の修正又は均等物を構成することができると理解される。
【符号の説明】
【0057】
10 ヘリコイル
15 インサータ
20 らせん状体
35 スペース又はギャップ
40 巻部
45 ストラット
70 溝