(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の第1内部電極と複数の第1共通電極とを第1絶縁層を介して交互に積層した第1積層部と、前記第1積層部と積層方向に対向して配置され、複数の第2内部電極と複数の第2共通電極とを第2絶縁層を介して交互に積層した第2積層部とを有する積層コンデンサであって、
複数の前記第1内部電極を前記積層方向に接続する第1接続導体により、複数の容量部が並列接続された第1電極積層部を前記第1積層部に有し、
前記第1電極積層部と前記積層方向と直交する方向において非対向となるようにして配置され、複数の前記第2内部電極を積層方向に接続する第2接続導体により、複数の容量部が並列接続された第2電極積層部を前記第2積層部に有し、
前記第1内部電極および前記第2内部電極と電気的に接続されない共通導体により、前記第1共通電極と前記第2共通電極とを互いに電気的に接続し、前記第1電極積層部に形成される容量部と前記第2電極積層部に形成される容量部とを直列に接続させた
ことを特徴とする積層コンデンサ。
前記第1電極積層部と前記第2電極積層部との間において、前記積層方向に沿って前記第1内部電極および前記第2内部電極と対向するように配置され、且つ、前記共通導体と電気的に接続される共通電極が絶縁層内に形成された中間電極層を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の積層コンデンサ。
前記第1積層部と前記第2積層部との間に、前記第1内部電極、前記第2内部電極、前記第1共通電極、及び、前記第2共通電極と電気的に接続されない中間金属層が形成された中間絶縁層が配置される
ことを特徴とする請求項4に記載の積層コンデンサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、積層コンデンサ内でクラックが発生すると積層コンデンサが故障してしまうという問題があった。
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、クラックに起因した故障の発生を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本発明は、複数の第1内部電極と複数の第1共通電極とを第1絶縁層を介して交互に積層した第1積層部と、第1積層部と積層方向に対向して配置され、複数の第2内部電極と複数の第2共通電極とを第2絶縁層を介して交互に積層した第2積層部とを有する積層コンデンサであって、複数の第1内部電極を積層方向に接続する第1接続導体により、複数の容量部が並列接続された第1電極積層部を第1積層部に有し、第1電極積層部と積層方向と直交する方向において非対向となるようにして配置され、複数の第2内部電極を積層方向に接続する第2接続導体により、複数の容量部が並列接続された第2電極積層部を第2積層部に有し、第1内部電極および第2内部電極と電気的に接続されない共通導体により、第1共通電極と第2共通電極とを互いに電気的に接続し、第1電極積層部に形成される容量部と第2電極積層部に形成される容量部とを直列に接続させたことを特徴とする積層コンデンサである。
【0006】
このように構成された積層コンデンサは、第1内部電極と第1共通電極との間に第1絶縁層が挟まれてなるコンデンサ(以下、第1コンデンサという)と、第2内部電極と第2共通電極との間に第2絶縁層が挟まれてなるコンデンサ(以下、第2コンデンサという)とを直列接続した構造を有する。このため、第1コンデンサおよび第2コンデンサの何れか一方が故障しても、第1コンデンサと第2コンデンサの両方が故障しなければ部品として故障しないため、信頼性が向上する。
【0007】
そして、本発明の積層コンデンサは、複数の第1内部電極と複数の第1共通電極とを第1絶縁層を介して交互に積層した第1積層部と、複数の第2内部電極と複数の第2共通電極とを第2絶縁層を介して交互に積層した第2積層部とが、積層方向と直交する方向において非対向となるようにして配置されている。このため、本発明の積層コンデンサにおいて、積層方向と直交する方向に沿ってクラックが伸展した場合には、第1積層部および第2積層部のうちの何れかがクラックにより故障することがあっても、第1積層部および第2積層部の両方がクラックにより故障してしまうという状況の発生を抑制することができ、コンデンサとしての機能を維持することができる。
【0008】
なお、積層コンデンサは積層方向に沿って複数の金属層(内部電極)が積層されて構成されているため、クラックが積層方向に沿って伸展した場合に、この伸展は金属層により阻止され易い。すなわちクラックは、積層方向よりも、積層方向と直交する方向に沿って伸展し易い。そして、本発明の積層コンデンサは、積層方向と直交する方向にクラックが発生した場合に、クラックに起因した故障の発生を抑制することができる。すなわち、本発明の積層コンデンサによれば、クラックが発生した場合に、そのクラックに起因した故障の発生を高確率で抑制することができる。
【0009】
また、本発明の積層コンデンサでは、第1電極積層部と第2電極積層部との間において、積層方向に沿って第1内部電極および第2内部電極と対向するように配置され、且つ、共通導体と電気的に接続される共通電極が絶縁層内に形成された中間電極層を備えるようにしてもよい。
【0010】
このように構成された積層コンデンサでは、第1電極積層部の第1内部電極と中間電極層の共通電極との間に絶縁層が挟まれてなるコンデンサと、第2電極積層部の第2内部電極と中間電極層の共通電極との間に絶縁層が挟まれてなるコンデンサとを直列接続した構造が形成される。すなわち、本発明の積層コンデンサによれば、中間電極層を備えることにより、第1電極積層部の第1内部電極と第2電極積層部の第2内部電極との間で寄生容量が発生するのを抑制することができる。
【0011】
また、本発明の積層コンデンサにおいて、第1接続導体は、複数の第2内部電極に設けられたクリアランスホールを貫通することにより、第2内部電極とは絶縁され、第2接続導体は、複数の第1内部電極に設けられたクリアランスホールを貫通することにより、第1内部電極とは絶縁されるようにしてもよい。
【0012】
このように構成された積層コンデンサは、ビアアレイ型積層コンデンサであり、互いに隣接する第1接続導体と第2接続導体について、第1接続導体を流れる電流の方向が、第2接続導体を流れる電流の方向と逆になる。これにより、第1接続導体で発生する磁束と、第2接続導体で発生する磁束が互いに逆向きになるため、第1接続導体で発生する磁束と第2接続導体で発生する磁束とを効果的に相殺することができ、積層コンデンサのインダクタンスを低減することができる。
【0013】
また、本発明の積層コンデンサにおいて、複数の第1共通電極は、電気的に接続されない複数の組に区分されるようにしてもよい。
このように構成された積層コンデンサでは、複数の第1共通電極が組毎に分割されているため、複数の組に区分された第1共通電極のうち或る組の第1共通電極が破損した場合に、その破損の影響が他の組の第1共通電極に及ぶのを抑制することができる。すなわち、或る組の第1共通電極が破損することによって、この第1共通電極により複数の容量部が並列接続された第1電極積層部が故障した場合に、この故障の影響を、他の組の第1共通電極により複数の容量部が並列接続された第1電極積層部にまで及ぶのを抑制することができる。
【0014】
また、本発明の積層コンデンサにおいて、第1積層部と第2積層部との間に、第1内部電極、第2内部電極、第1共通電極、及び、第2共通電極と電気的に接続されない中間金属層が形成された中間絶縁層が配置されるようにしてもよい。
【0015】
このように構成された積層コンデンサでは、クラックが積層方向に沿って伸展した場合に、この伸展を中間金属層により阻止することが可能となる。このため、本発明の積層コンデンサにおいて、クラックが積層方向に沿って伸展した場合には、第1積層部および第2積層部のうちの何れかがクラックにより故障することがあっても、第1積層部および第2積層部の両方がクラックにより故障してしまうという状況の発生を更に抑制することができ、コンデンサとしての機能を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態を図面とともに説明する。
図1は、本発明が適用された第1実施形態の積層コンデンサ1の概略構成を示す断面図である。
【0018】
積層コンデンサ1は、ビアアレイ型積層セラミックコンデンサであり、コンデンサ10,20と中間電極層30,40と共通導体50と表面電極60,70とを備える。
そして積層コンデンサ1は、コンデンサ10とコンデンサ20との間に中間電極層30,40を挟んで、コンデンサ10とコンデンサ20とを積層方向SDに沿って互いに対向するように配置することにより構成されている。
【0019】
コンデンサ10は、複数の内部電極11と複数の共通電極12とが、例えばチタン酸バリウム等の誘電体セラミックを材料とする絶縁層13を介して積層方向SDに沿って交互に積層されて構成される。これにより、1つの内部電極11と1つの共通電極12との間に絶縁層13を挟んで構成される容量部が複数形成される。
【0020】
またコンデンサ10は、積層された複数の内部電極11を互いに電気的に接続するために、コンデンサ10,20と中間電極層30,40を積層方向SDに沿って貫通する複数の接続導体14を備える。これによりコンデンサ10は、接続導体14毎に、複数の容量部が並列接続された電極積層部15を有する。
【0021】
コンデンサ20は、複数の内部電極21と複数の共通電極22とが、例えばチタン酸バリウム等の誘電体セラミックを材料とする絶縁層23を介して積層方向SDに沿って交互に積層されて構成される。これにより、1つの内部電極21と1つの共通電極22との間に絶縁層23を挟んで構成される容量部が複数形成される。
【0022】
またコンデンサ20は、積層された複数の内部電極21を互いに電気的に接続するために、コンデンサ10,20と中間電極層30,40を積層方向SDに沿って貫通する複数の接続導体24を備える。これによりコンデンサ20は、接続導体24毎に、複数の容量部が並列接続された電極積層部25を有する。
【0023】
中間電極層30は、コンデンサ10と中間電極層40との間に配置されており、例えばチタン酸バリウム等の誘電体セラミックを材料とする絶縁層31内に共通電極32を配置して構成される。そして共通電極32は、積層方向SDに沿って内部電極11および共通電極42と対向するように配置される。
【0024】
中間電極層40は、コンデンサ20と中間電極層30との間に配置されており、例えばチタン酸バリウム等の誘電体セラミックを材料とする絶縁層41内に共通電極42を配置して構成される。そして共通電極42は、積層方向SDに沿って共通電極32および内部電極21と対向するように配置される。
【0025】
共通導体50は、共通電極12,22,32,42を互いに電気的に接続するために、コンデンサ10,20および中間電極層30,40を積層方向SDに沿って貫通する。これにより、コンデンサ10とコンデンサ20とが互いに直列に接続される。
【0026】
表面電極60は、積層コンデンサ1の表面側と裏面側において、接続導体14の端部に配置されている。
表面電極70は、積層コンデンサ1の表面側と裏面側において、接続導体24の端部に配置されている。
【0027】
図2(a)は、第1実施形態の積層コンデンサ1の平面図である。
図2(b)は、
図1のA−A断面部を示す図である。
図2(c)は、
図1のB−B断面部を示す図である。
図3(a)は、
図1のC−C断面部を示す図である。
図3(b)は、
図1のD−D断面部を示す図である。
【0028】
第1実施形態の積層コンデンサ1は、
図2,3に示すように、平面視で矩形状に形成されている。
そして、
図2(a)に示すように、複数の表面電極60,70は、矩形を構成する一辺に平行な方向RD(列方向RD)と、列方向RDに直交する方向(行方向CD)のそれぞれに沿って、表面電極60と表面電極70とが交互に配置されるようにして二次元格子状に配列されている。さらに、複数の共通導体50は、列方向RDと行方向CDのそれぞれに沿って、表面電極60と表面電極70との間に配置されるようにして二次元格子状に配列されている。
【0029】
また、複数の接続導体14,24は、
図2(b)に示すように、列方向RDと行方向CDのそれぞれに沿って、接続導体14と接続導体24とが交互に配置されるようにして二次元格子状に配列されている。また、複数の共通導体50は、列方向RDと行方向CDのそれぞれに沿って、接続導体14と接続導体24との間に配置されるようにして二次元格子状に配列されている。さらに内部電極11は、積層方向SDに直交する面の略全体に亘る矩形状に形成され、接続導体24と共通導体50が形成されている領域に、接続導体24と共通導体50の断面積より大きい開口面積を有するクリアランスホールCH1が設けられている。
【0030】
また共通電極12は、
図2(c)に示すように、積層方向SDに直交する面の略全体に亘る矩形状に形成され、接続導体14,24が形成されている領域に、接続導体14,24の断面積より大きい開口面積を有するクリアランスホールCH2が設けられている。なお共通電極32も、共通電極12と同一の形状に形成されている。
【0031】
また内部電極21は、
図3(a)に示すように、積層方向SDに直交する面の略全体に亘る矩形状に形成され、接続導体14と共通導体50が形成されている領域に、接続導体14と共通導体50の断面積より大きい開口面積を有するクリアランスホールCH3が設けられている。
【0032】
また共通電極22は、
図3(b)に示すように、積層方向SDに直交する面の略全体に亘る矩形状に形成され、接続導体14,24が形成されている領域に、接続導体14,24の断面積より大きい開口面積を有するクリアランスホールCH4が設けられている。なお共通電極42も、共通電極22と同一の形状に形成されている。
【0033】
次に、本発明が適用された積層コンデンサ1の製造方法について説明する。
(1)スラリーの調製
まず、チタン酸バリウム粉末と、MgO,CaO,SiO
2,MnO
2,Y
2O
3などが混合されている誘電体セラミック粒子粉末と、分散剤と、可塑剤とを、エタノールおよびトルエンの混合溶媒中で湿式混合した。その後、ブチラール系バインダを添加して更に混合することにより、グリーンシート用スラリーを調製した。
【0034】
(2)セラミックグリーンシートの形成
調製したグリーンシート用スラリーを、ドクターブレード法などの汎用の方法により、所望の厚さとなるように塗工し乾燥させて、未焼成セラミックグリーンシートを得た。
【0035】
(3)内部電極用ペーストの調製
導電性粒子(ニッケル粉末)と共材粉末(チタン酸バリウム粉末)と有機ビヒクル成分とを所定の体積割合で湿式混合して、内部電極用ペーストを得た。また本実施形態において、共材とは、グリーンシートを構成する材料と共通の成分を含む材料である。
【0036】
(4)ビア導体用ペーストの調製
導電性粒子(ニッケル粉末)と共材粉末(チタン酸バリウム粉末)と有機ビヒクル成分とを、内部電極用ペーストの調製とは異なる所定の体積割合で湿式混合して、接続導体14,24および共通導体50用のペースト(以下、ビア導体用ペーストという)を得た。
【0037】
(5)表面電極用ペーストの作製
ニッケル粉末と所定量の共材粉末とを混合して表面電極用ペーストを得た。共材には、チタン酸バリウム粉末と、チタン酸バリウムを主材とする誘電体磁器組成物(MgO,CaO,SiO
2,MnO
2,Y
2O
3等の希土類を主に含んでいる)の粉末を使用した。
【0038】
(6)未焼成積層体形成工程
上記(2)で得られたセラミックグリーンシートの表面に、上記(3)で得られた内部電極用ペーストをスクリーン印刷により印刷した。
【0039】
その後、印刷済みのセラミックグリーンシートを1枚ずつ積み重ねて圧着することにより、複数枚のセラミックグリーンシートを積層して未焼成積層体を得た。
(7)ビアホール形成工程
上記(6)で得られた未焼成積層体に、レーザ成形機を用いて、ビアホールを穿孔した。
【0040】
(8)未焼成ビア導体形成工程
上記(7)で得られた未焼成積層体のビアホール内に、上記(4)で得られたビア導体用ペーストをスクリーン印刷により充填して、未焼成ビア電極を形成した。
【0041】
(9)高圧圧着工程
上記(8)で得られた積層体を、80℃、100MPaの条件にて熱圧着を行った。
(10)未焼成表面電極形成工程
上記(9)で得られた未焼成積層体をスクリーン印刷装置にセットし、メッシュマスクを、未焼成積層体の上に重ね合わせるようにして配置する。このメッシュマスクは、表面電極を形成すべき箇所にメッシュ部が形成されている。そして、メッシュマスクの上面に、上記(5)で得られた表面電極用ペーストを供給し、スキージの移動によって表面電極用ペーストを刷り込む。これにより、メッシュ部に表面電極パターンが形成される。その後、メッシュマスクを未焼成積層体から引き離すとともに、未焼成積層体をスクリーン印刷装置から取り外し、取り外した未焼成積層体を乾燥することにより、表面電極パターンをある程度固化させる。
【0042】
(11)焼成工程
上記(10)で得られた未焼成積層体を、大気中300℃で15時間脱脂した後、還元雰囲気中1300℃で焼成することにより、焼成積層体を得た。その後、焼成積層体を個片に分割して、複数個のビアアレイ型積層セラミックコンデンサを得た。
【0043】
このように構成された積層コンデンサ1は、複数の内部電極11と複数の共通電極12とを絶縁層13を介して交互に積層したコンデンサ10と、コンデンサ10と積層方向SDに対向して配置され、複数の内部電極21と複数の共通電極22とを絶縁層23を介して交互に積層したコンデンサ20とを有する。
【0044】
そして積層コンデンサ1は、複数の内部電極11を積層方向SDに接続する接続導体14により、複数の容量部が並列接続された電極積層部15をコンデンサ10に有する。また積層コンデンサ1は、電極積層部15と積層方向SDと直交する方向において非対向となるようにして配置され、複数の内部電極21を積層方向SDに接続する接続導体24により、複数の容量部が並列接続された電極積層部25をコンデンサ20に有する。
【0045】
そして積層コンデンサ1は、内部電極11および内部電極21と電気的に接続されない共通導体50により、共通電極12と共通電極22とを互いに電気的に接続し、電極積層部15に形成される容量部と電極積層部25に形成される容量部とを直列に接続させる。
【0046】
すなわち積層コンデンサ1は、内部電極11と共通電極12との間に絶縁層13が挟まれてなるコンデンサ10と、内部電極21と共通電極22との間に絶縁層23が挟まれてなるコンデンサ20とを直列接続した構造を有する。このため、コンデンサ10およびコンデンサ20の何れか一方が故障しても、コンデンサ10とコンデンサ20の両方が故障しなければ部品として故障しないため、信頼性が向上する。
【0047】
さらに積層コンデンサ1は、コンデンサ10とコンデンサ20とが、積層方向SDと直交する方向において非対向となるようにして配置されている。このため、積層コンデンサ1において、積層方向SDと直交する方向に沿ってクラックが伸展した場合には、コンデンサ10およびコンデンサ20のうちの何れかがクラックにより故障することがあっても、コンデンサ10およびコンデンサ20の両方がクラックにより故障してしまうという状況の発生を抑制することができ、コンデンサとしての機能を維持することができる。
【0048】
なお、積層コンデンサ1は積層方向SDに沿って複数の金属層(内部電極11,21)が積層されて構成されているため、クラックが積層方向SDに沿って伸展した場合に、この伸展は金属層により阻止され易い。すなわちクラックは、積層方向SDよりも、積層方向SDと直交する方向に沿って伸展し易い。そして積層コンデンサ1は、積層方向SDと直交する方向にクラックが発生した場合に、クラックに起因した故障の発生を抑制することができる。すなわち、積層コンデンサ1によれば、クラックが発生した場合に、そのクラックに起因した故障の発生を高確率で抑制することができる。
【0049】
また積層コンデンサ1では、電極積層部15と電極積層部25との間において、積層方向SDに沿って内部電極11および内部電極21と対向するように配置され、且つ、共通導体50と電気的に接続される共通電極32,42が絶縁層31,41内に形成された中間電極層30,40を備える。これにより、電極積層部15の内部電極11と共通電極32との間に絶縁層31が挟まれてなるコンデンサと、電極積層部25の内部電極21と共通電極42との間に絶縁層41が挟まれてなるコンデンサとを直列接続した構造が形成される。すなわち、積層コンデンサ1によれば、中間電極層30,40を備えることにより、電極積層部15の内部電極11と電極積層部25の内部電極21との間で寄生容量が発生するのを抑制することができる。
【0050】
また積層コンデンサ1は、ビアアレイ型積層コンデンサであり、互いに隣接する接続導体14と接続導体24について、接続導体14を流れる電流の方向が、接続導体24を流れる電流の方向と逆になる。これにより、接続導体14で発生する磁束と、接続導体24で発生する磁束が互いに逆向きになるため、接続導体14で発生する磁束と接続導体24で発生する磁束とを効果的に相殺することができ、積層コンデンサ1のインダクタンスを低減することができる。
【0051】
以上説明した実施形態において、内部電極11は本発明における第1内部電極、共通電極12は本発明における第1共通電極、絶縁層13は本発明における第1絶縁層、コンデンサ10は本発明における第1積層部、内部電極21は本発明における第2内部電極、共通電極22は本発明における第2共通電極、絶縁層23は本発明における第2絶縁層、コンデンサ20は本発明における第2積層部である。
【0052】
また、接続導体14は本発明における第1接続導体、電極積層部15は本発明における第1電極積層部、接続導体24は本発明における第2接続導体、電極積層部25は本発明における第2電極積層部である。
【0053】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態を図面とともに説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0054】
図4は、第2実施形態の積層コンデンサ1の概略構成を示す断面図である。
図5(a)は、第2実施形態の積層コンデンサ1の平面図である。
図5(b)は、
図4のA−A断面部を示す図である。
図5(c)は、
図4のB−B断面部を示す図である。
図6(a)は、第2実施形態の積層コンデンサ1の底面図である。
図6(b)は、
図4のC−C断面部を示す図である。
図6(c)は、
図4のD−D断面部を示す図である。
【0055】
第2実施形態の積層コンデンサ1は、
図4,5,6に示すように、共通電極12,22,32,42と表面電極60,70の形状が変更された点以外は第1実施形態と同じである。
【0056】
まず、
図4と
図5(a)と
図6(a)に示すように、積層コンデンサ1の上面と下面のそれぞれに設けられている表面電極60のうち、下面側の表面電極60は、第1実施形態の表面電極60と同じである。また、積層コンデンサ1の上面と下面のそれぞれに設けられている表面電極70のうち、上面側の表面電極70は、第1実施形態の表面電極70と同じである。
【0057】
そして、積層コンデンサ1における上面側の表面電極60は、
図5(a)に示すように、積層コンデンサ1の上面の略全体に亘る矩形状に形成され、表面電極70が形成されている領域に、表面電極70の断面積より大きい開口面積を有するクリアランスホールCH5が設けられるとともに、共通導体50が形成されている領域に、共通導体50の断面積より大きい開口面積を有するクリアランスホールCH6が設けられている。
【0058】
また、積層コンデンサ1における下面側の表面電極70は、
図6(a)に示すように、積層コンデンサ1の下面の略全体に亘る矩形状に形成され、表面電極60が形成されている領域に、表面電極60の断面積より大きい開口面積を有するクリアランスホールCH7が設けられるとともに、共通導体50が形成されている領域に、共通導体50の断面積より大きい開口面積を有するクリアランスホールCH8が設けられている。
【0059】
また、第2実施形態の内部電極11および内部電極21の形状は、それぞれ
図5(b)と
図6(b)に示すように、第1実施形態と同一である。
また、共通電極12および共通電極22は、それぞれ
図5(c)と
図6(c)に示すように、矩形状に形成されており、矩形を構成する一辺に平行な方向CD(行方向CD)に沿って整列している1組の接続導体14と共通導体50と接続導体24毎に設けられている。このため、複数の共通電極12,22は、行方向CDと、行方向CDに直交する方向RD(列方向RD)のそれぞれに沿って二次元格子状に配列されている。さらに共通電極12,22は、矩形を構成する辺が対向している状態で隣接する共通電極12,22に対して、互いに所定の間隔離間して配置されている。また、共通電極12,22は、接続導体14,24が形成されている領域に、接続導体14,24の断面積より大きい開口面積を有するクリアランスホールCH9が設けられている。また共通電極12,22は、共通電極12,22内に含まれる1組の接続導体14と共通導体50と接続導体24を構成する共通導体50とは異なる共通導体50が形成されている領域に共通導体50の断面積より大きい開口面積を有するクリアランスホールCH10を形成できる形状に成形されている。
【0060】
このように構成された積層コンデンサ1では、複数の共通電極12,22が、電気的に接続されない複数の組に区分されている。すなわち積層コンデンサ1では、複数の共通電極12,22が組毎に分割されているため、複数の組に区分された共通電極12,22のうち或る組の共通電極12,22が破損した場合に、その破損の影響が他の組の共通電極12,22に及ぶのを抑制することができる。すなわち、或る組の共通電極12,22が破損することによって、この共通電極12,22により複数の容量部が並列接続された電極積層部15,25が故障した場合に、この故障の影響を、他の組の共通電極12,22により複数の容量部が並列接続された電極積層部15,25にまで及ぶのを抑制することができる。
【0061】
(第3実施形態)
以下に本発明の第3実施形態を図面とともに説明する。なお第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0062】
図7(a)は、第3実施形態の積層コンデンサ1の概略構成を示す断面図である。
第3実施形態の積層コンデンサ1は、
図7(a)に示すように、中間電極層30と中間電極層40との間に、例えばチタン酸バリウム等の誘電体セラミックを材料とする絶縁層80(以下、中間絶縁層80という)が形成されている点以外は第1実施形態と同じである。
【0063】
このように構成された積層コンデンサ1では、クラックが積層方向SDに沿って伸展した場合に、この伸展を中間絶縁層80で阻止することが可能となる。すなわち、例えばコンデンサ10でクラックが発生して積層方向SDに沿って伸展した場合に、このクラックは、コンデンサ20に到達する前に中間絶縁層80内を伸展することになるため、中間絶縁層80内でクラックの伸展が終了すれば、クラックの影響がコンデンサ20に及ばない。従って、中間絶縁層80が厚いほど中間絶縁層80内でクラックの伸展を阻止し易くなる。
【0064】
このため、積層コンデンサ1において、クラックが積層方向SDに沿って伸展した場合に、コンデンサ10およびコンデンサ20のうちの何れかがクラックにより故障することがあっても、コンデンサ10およびコンデンサ20の両方がクラックにより故障してしまうという状況の発生を更に抑制することができ、コンデンサとしての機能を維持することができる。
【0065】
(第4実施形態)
以下に本発明の第4実施形態を図面とともに説明する。なお第4実施形態では、第3実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0066】
図7(b)は、第4実施形態の積層コンデンサ1の概略構成を示す断面図である。
図7(c)は、
図7(b)のA−A断面部を示す図である。
第4実施形態の積層コンデンサ1は、
図7(b)に示すように、中間絶縁層80内に、内部電極11、共通電極12、内部電極21、および共通電極22と電気的に接続されない中間金属層81が形成されている点以外は第3実施形態と同じである。
【0067】
中間金属層81は、
図7(c)に示すように、積層方向SDに直交する面の略全体に亘る矩形状に形成され、接続導体14,24および共通導体50が形成されている領域に、接続導体14,24および共通導体50の断面積より大きい開口面積を有するクリアランスホールCH11が設けられている。
【0068】
このように構成された積層コンデンサ1では、クラックが積層方向に沿って伸展した場合に、この伸展を中間金属層81により阻止することが可能となる。このため、積層コンデンサ1において、クラックが積層方向SDに沿って伸展した場合に、コンデンサ10およびコンデンサ20のうちの何れかがクラックにより故障することがあっても、コンデンサ10およびコンデンサ20の両方がクラックにより故障してしまうという状況の発生を更に抑制することができ、コンデンサとしての機能を維持することができる。
【0069】
(第5実施形態)
以下に本発明の第5実施形態を図面とともに説明する。
図8(a)は、本発明が適用された第5実施形態の積層コンデンサ101の概略構成を示す断面図である。
図8(b)は、
図8(a)のA−A断面部を示す図である。
図9(a)は、
図8(a)のB−B断面部を示す図である。
図9(b)は、
図8(a)のC−C断面部を示す図である。
図9(c)は、
図8(a)のD−D断面部およびE−E断面部を示す図である。
【0070】
積層コンデンサ101は、直方体状に形成されており、
図8(a),(b)および
図9(a),(b),(c)に示すように、矩形状の上面P1と、矩形状の下面P2と、矩形状の上面P1および下面P2の4辺を構成する矩形状の端面P3,P4,P5,P6を有する。なお、端面P3と端面P4とが互いに対向するとともに、端面P5と端面P6とが互いに対向するように配置されている。
【0071】
また積層コンデンサ101は、コンデンサ110,120と中間電極層130,140と共通導体150とを備える。
そして積層コンデンサ101は、
図8(a)に示すように、コンデンサ110とコンデンサ120との間に中間電極層130,140を挟んで、コンデンサ110とコンデンサ120とを積層方向SDに沿って互いに対向するように配置することにより構成されている。
【0072】
コンデンサ110は、複数の内部電極111と複数の共通電極112とが、例えばチタン酸バリウム等の誘電体セラミックを材料とする絶縁層113を介して積層方向SDに沿って交互に積層されて構成される。これにより、1つの内部電極111と1つの共通電極112との間に絶縁層113を挟んで構成される容量部が複数形成される。なお内部電極111は端面P3に引き出されている(
図8(a)と
図9(a)を参照)。また共通電極112は、端面P5と端面P6に引き出されている(
図8(b)と
図9(c)を参照)。
【0073】
またコンデンサ110は、積層された複数の内部電極111を互いに電気的に接続するために、端面P3上に形成された接続導体114を備える。これによりコンデンサ110は、複数の容量部が並列接続された電極積層部115を有する。
【0074】
コンデンサ120は、複数の内部電極121と複数の共通電極122とが、例えばチタン酸バリウム等の誘電体セラミックを材料とする絶縁層123を介して積層方向SDに沿って交互に積層されて構成される。これにより、1つの内部電極121と1つの共通電極122との間に絶縁層123を挟んで構成される容量部が複数形成される。なお内部電極121は端面P4に引き出されている(
図8(a)と
図9(b)を参照)。また共通電極122は、端面P5と端面P6に引き出されている(
図8(b)と
図9(c)を参照)。
【0075】
またコンデンサ120は、積層された複数の内部電極21を互いに電気的に接続するために、端面P4上に形成された接続導体124を備える。これによりコンデンサ120は、複数の容量部が並列接続された電極積層部125を有する。
【0076】
中間電極層130は、コンデンサ110と中間電極層140との間に配置されており、例えばチタン酸バリウム等の誘電体セラミックを材料とする絶縁層131内に共通電極132を配置して構成される。そして共通電極132は、積層方向SDに沿って内部電極111および共通電極142と対向するように配置される。なお共通電極132は、共通電極112と同一の形状に形成されている。すなわち共通電極132は、端面P5と端面P6に引き出されている。
【0077】
中間電極層140は、コンデンサ120と中間電極層130との間に配置されており、例えばチタン酸バリウム等の誘電体セラミックを材料とする絶縁層141内に共通電極142を配置して構成される。そして共通電極142は、積層方向SDに沿って共通電極132および内部電極121と対向するように配置される。なお共通電極142は、共通電極122と同一の形状に形成されている。すなわち共通電極142は、端面P5と端面P6に引き出されている。
【0078】
共通導体150は、
図8(b)に示すように、共通電極112,122,132,142を互いに電気的に接続するために、端面P5および端面P6上に形成される。これにより、コンデンサ110とコンデンサ120とが互いに直列に接続される。
【0079】
このように構成された積層コンデンサ101は、複数の内部電極111と複数の共通電極112とを絶縁層113を介して交互に積層したコンデンサ110と、コンデンサ110と積層方向SDに対向して配置され、複数の内部電極121と複数の共通電極122とを絶縁層123を介して交互に積層したコンデンサ120とを有する。
【0080】
そして積層コンデンサ101は、複数の内部電極111を積層方向SDに接続する接続導体114により、複数の容量部が並列接続された電極積層部115をコンデンサ110に有する。また積層コンデンサ101は、電極積層部115と積層方向SDと直交する方向において非対向となるようにして配置され、複数の内部電極121を積層方向SDに接続する接続導体124により、複数の容量部が並列接続された電極積層部125をコンデンサ120に有する。
【0081】
そして積層コンデンサ101は、内部電極111および内部電極121と電気的に接続されない共通導体150により、共通電極112と共通電極122とを互いに電気的に接続し、電極積層部115に形成される容量部と電極積層部125に形成される容量部とを直列に接続させる。
【0082】
すなわち積層コンデンサ101は、内部電極111と共通電極112との間に絶縁層113が挟まれてなるコンデンサ110と、内部電極121と共通電極122との間に絶縁層123が挟まれてなるコンデンサ120とを直列接続した構造を有する。このため、コンデンサ110およびコンデンサ120の何れか一方が故障しても、コンデンサ110とコンデンサ120の両方が故障しなければ部品として故障しないため、信頼性が向上する。
【0083】
さらに積層コンデンサ101は、コンデンサ110とコンデンサ120とが、積層方向SDと直交する方向において非対向となるようにして配置されている。このため、積層コンデンサ101において、積層方向SDと直交する方向に沿ってクラックが伸展した場合には、コンデンサ110およびコンデンサ120のうちの何れかがクラックにより故障することがあっても、コンデンサ110およびコンデンサ120の両方がクラックにより故障してしまうという状況の発生を抑制することができ、コンデンサとしての機能を維持することができる。
【0084】
なお、積層コンデンサ101は積層方向SDに沿って複数の金属層(内部電極111,121)が積層されて構成されているため、クラックが積層方向SDに沿って伸展した場合に、この伸展は金属層により阻止され易い。すなわちクラックは、積層方向SDよりも、積層方向SDと直交する方向に沿って伸展し易い。そして積層コンデンサ101は、積層方向SDと直交する方向にクラックが発生した場合に、クラックに起因した故障の発生を抑制することができる。すなわち、積層コンデンサ101によれば、クラックが発生した場合に、そのクラックに起因した故障の発生を高確率で抑制することができる。
【0085】
また、積層コンデンサ101において、電極積層部115と電極積層部125との間において、積層方向SDに沿って内部電極111および内部電極121と対向するように配置され、且つ、共通導体150と電気的に接続される共通電極132,142が絶縁層131,141内に形成された中間電極層130,140を備える。これにより、電極積層部115の内部電極111と共通電極132との間に絶縁層131が挟まれてなるコンデンサと、電極積層部125の内部電極121と共通電極142との間に絶縁層141が挟まれてなるコンデンサとを直列接続した構造が形成される。すなわち、積層コンデンサ101によれば、中間電極層130,140を備えることにより、電極積層部115の内部電極111と電極積層部125の内部電極121との間で寄生容量が発生するのを抑制することができる。
【0086】
以上説明した実施形態において、内部電極111は本発明における第1内部電極、共通電極112は本発明における第1共通電極、絶縁層113は本発明における第1絶縁層、コンデンサ110は本発明における第1積層部、内部電極121は本発明における第2内部電極、共通電極122は本発明における第2共通電極、絶縁層123は本発明における第2絶縁層、コンデンサ20は本発明における第2積層部である。
【0087】
また、接続導体114は本発明における第1接続導体、電極積層部115は本発明における第1電極積層部、接続導体124は本発明における第2接続導体、電極積層部125は本発明における第2電極積層部である。
【0088】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
【符号の説明】
【0089】
1,101…積層コンデンサ、10,20,110,120…コンデンサ、11,21,111,121…内部電極、12,22,112,122…共通電極、13,23,113,123…絶縁層、14,24,114,124…接続導体、15,25,115,125…電極積層部、30,40,130,140…中間電極層、31,41,131,141…絶縁層、32,42,132,142…共通電極、50,150…共通導体、60,70…表面電極、80…中間絶縁層、81…中間金属層