(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通電制御手段は、前記通電待機状態において検出された前記筐体内温度が所定の第3閾値以下となるとき、前記ヒータへの通電をオンにして通電復帰状態とすることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱装置には、通電により発熱する発熱部を有するヒータと、この発熱部が収容され、該発熱部との間に熱媒体の流路を形成する筐体と、この流路にて熱媒体の温度を検出し、この検出された熱媒体の温度に応じてヒータへの通電をオンオフする通電制御手段とを備えたものが知られている。
そして、特許文献1には、温水装置の温度を検出する温度センサと、温度センサによる検出値に基づき、温水装置の温度が所定温度より高いか否かを判定する温度判定手段と、温度判定手段による判定結果に基づき、温水装置の温度が所定温度より高いときにスイッチをオフするオフ指令手段と、温水装置の温度が所定温度より高いときに、スイッチのオフの状態を保持するようにオフ指令手段を制御するオフ保持手段とを備える加熱保護手段を設けた電気自動車用温水装置の保護装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、流路に熱媒体が存在する場合、通電制御手段によってヒータへの通電をオンオフすることにより熱媒体の温度が適正範囲に制御されるため、ヒータが異常に温度上昇することはない。
一方、流路への熱媒体の未供給状態や流路からの熱媒体の漏洩等の理由により、流路に熱媒体が存在しないか、或いは非常に少ない場合、ヒータからの熱を伝達する熱媒体が存在しない、或いは熱媒体が少量の状態となるため、加熱装置が空焚き状態となってヒータ自体の温度が異常上昇してしまうという不具合が生じ得る。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の加熱保護手段では、流路に熱媒体が存在する場合と、流路に熱媒体が存在しないか、或いは非常に少ない場合とを判別することができないため、加熱装置の空焚きを検知できず、加熱装置の発煙発火に至るおそれがある。
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、空焚きを高精度に検知し、発煙発火を確実に防止することにより信頼性を高めた加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の加熱装置は、通電により発熱する発熱部を有するヒータと、前記発熱部が収容され、該発熱部との間に熱媒体の流路を形成する筐体と、前記流路にて前記熱媒体及び前記発熱部の熱に基づく筐体内温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段にて検出された前記筐体内温度に応じて前記ヒータへの通電をオンオフする通電制御手段とを備え、前記通電制御手段は、前記温度検出手段にて検出された前記筐体内温度が所定の第1閾値以上となるとき、前記ヒータへの通電をオフにして通電待機状態とし、該通電待機状態において検出された前記筐体内温度が所定の第2閾値以上となるとき、前記ヒータへの通電を継続的にオフにして通電完全停止状態とする(請求項1)。
【0007】
好ましくは、前記通電制御手段は、前記通電待機状態において検出された前記筐体内温度が所定の第3閾値以下となるとき、前記ヒータへの通電をオンにして通電復帰状態とする(請求項2)。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1閾値から第2閾値の温度範囲を空焚き判定範囲とすることにより、ヒータの通電待機状態から加熱装置の空焚き状態をヒータによる通常の温度制御と区別して判別し、ヒータの通常の通電制御を行いながら、空焚きを高精度且つ迅速に検知し、発煙発火を確実に防止することにより信頼性を高めた加熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の加熱装置に係る一実施形態について説明する。
図1に概略的に示されるように、加熱装置1はヒータ2、及びヒータ2が収容されるケース(筐体)4を備えている。
図2に概略的に示されるように、ヒータ2は、通電により発熱する電熱線ヒータであり、有底円筒状の金属パイプ(発熱部)6内にニクロム線などのコイル状の電熱線8を挿入し、金属パイプ6内に高い電気絶縁性及び熱伝導性を有する酸化マグネシウムなどの耐熱絶縁材10を加圧充填して電熱線8を封入することで形成されている。
【0011】
金属パイプ6の一端開口部には、シリコンやガラスなどを鋳込みモールド成形した端子部12が設けられ、端子部12からは電熱線8に接続されたリード線14が引き出されている。リード線14は外部の電源装置15に電気的に接続され、電熱線8に通電するための図示しない通電回路を構成している。なお、
図1ではヒータ2は1本しか示されていないが、ヒータ2を複数本設けても良い。
【0012】
一方、ケース4は、1又は複数の鋳造体から構成され、ケース4内には金属パイプ6の両端近傍を環状のOリング16を介して気密に囲繞することでヒータ2が収容されている。ケース4の内面4aと金属パイプ6の外周面6aとの間にはクリアランスが確保され、このクリアランスはエチレングリコールなどのLLC(冷却水、不凍液)としての熱媒体が流れる流路18として使用される。また、ケース4の外面4bの適宜位置には、熱媒体の入口パイプ20と出口パイプ22とが流路に連通するように突設されている。
【0013】
このように概略構成される加熱装置1は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に搭載され、ハイブリッド自動車の場合には、エンジンの不足する廃熱を補うようにして熱供給する補助熱源として、電気自動車の場合には、存在しないエンジンに代わって熱供給する代替熱源として、車両用空調装置の冷凍回路を循環する冷媒などの加熱に用いられる。
【0014】
例えばハイブリッド自動車の場合には、エンジン冷却用の図示しない冷却水回路を循環するLLCが流路18に入口パイプ20を介して流入され、ヒータ2により加熱される。エンジン及び加熱装置1で加熱されたLLCの熱は、車両用空調装置に設けられた冷凍回路を循環する冷媒の加熱に用いられ、この加熱された冷媒によって車室内空気の冷暖房が行われる。冷媒の加熱に供したLLCは、流路18から出口パイプ22を介して流出されて冷却水回路に戻され、エンジンを再び冷却する。
【0015】
ここで、本実施形態では、ケース4のヒータ2の長手方向と垂直方向に貫通孔24が穿孔され、貫通孔24には流路18を流れるLLCの温度を検出する温度センサ(温度検出手段)26が挿入されている。温度センサ26は、略円柱形状の外観を有するサーミスタであって、その温度測定端部28が先端面30においてヒータ2の金属パイプ2の外周面6aに接触されている。これより温度センサ26はLLCの温度のみならずヒータ2の発熱部である金属パイプ6の表面温度をも検出可能である。
【0016】
また、温度センサ26の側面26aには2つの環状溝32が形成され、各環状溝32にはそれぞれOリング34が装着されており、温度センサ26は各Oリング34を介して貫通孔24に気密に接続固定されている。
温度センサ26は、その外端部36から引き出されたリード線38によってインバータ40に電気的に接続され、インバータ40は、上述した電源装置15及び通電回路を介し、温度センサ26にて検出されるLLCの温度及び/又は金属パイプ10の表面温度に応じて、ヒータ2への通電をオンオフする通電制御を行う(通電制御手段)。
【0017】
この通電制御では、流路18にLLCが存在する場合、温度センサ26によってLLCの温度が適正範囲に制御されるため、ヒータ2が異常に温度上昇することはない。
一方、従来において、冷却水回路へのLLCの未供給状態や冷却水回路からのLLCの漏洩等の理由により、流路18にLLCが存在しないか或いは非常に少ない場合、ヒータ2からの熱を伝達する熱媒体が存在しない、或いは熱媒体が少量の状態となるため、加熱装置1が空焚き状態となってヒータ2自体の温度が異常上昇してしまうという不具合が生じ得る。このような空焚き状態が生じても、温度センサ26が金属パイプ6に非接触であってLLCの温度のみを検出する位置に配置されている従来の場合には、温度センサ26の周囲に存在する空気による断熱効果によって温度センサ26の応答性が悪化し、空焚き検知が遅延した結果、流路18内の温度が上昇し続け、ひいては加熱装置1の発煙発火に至るおそれがある。
【0018】
これに対し本実施形態では、温度センサ26をヒータ2の発熱部である金属パイプ6の外周面6aに直接接触させ、且つLLCが流れる流路18に配置することにより、液体であるLLCと空気である気体との伝熱性の差異に着目し、流路18にLLCが存在するときにはLLCの温度が支配的になる一方、流路18にLLCが存在しない、或いは少量であるときにはヒータ2自体の温度が支配的になることを利用した通電制御が行われる。
【0019】
以下、
図3のフローチャート、
図4及び
図5のヒータ2への通電状態及び温度センサ26にて検出された温度Tの関係を時系列的に示した図を参照して、インバータ40で実行される通電制御について説明する。
ヒータ2への通電がオンされ、本通電制御の制御ルーチンが開始されると、先ず、温度センサ26にて検出された、流路18におけるLLCの温度及び金属パイプ6の表面温度に基づいた温度(筐体内温度)Tが所定の第1閾値TS1以上となるか否かが判定される<ステップS1>。
【0020】
ステップS1の判定結果が真(YES)であるとき、すなわち、T≧TS1の関係式が成立すると判定された場合には、
図4及び
図5に示されるように、ヒータ2への通電をオフにして通電待機状態(ウェイト状態)とする<ステップS2>。
一方、ステップS1の判定結果が偽(NO)であるとき、すなわち、T≧TS1の関係式が成立しないと判定された場合には、
図4及び
図5に示されるように、ヒータ2への通電をオンのまま再びステップS1に移行する。
【0021】
次に、ステップS2のウェイト状態において、温度センサ26にて検出された温度Tが所定の第2閾値TS2以上となるか否かが判定される<ステップS3>。
ステップS3の判定結果が真(YES)であるとき、すなわち、T≧TS2の関係式が成立すると判定された場合には、LLCが流路18に存在しない、或いは存在しても正常よりも少ない、いわゆる空焚き状態と判定し、
図5に示されるように、加熱装置1の高温異常処理としてヒータ2への通電を継続的にオフする通電完全停止状態(スリープ状態)とし、以降の通電復帰は自動では行わない<ステップS4>。
【0022】
一方、ステップS3の判定結果が偽(NO)であるとき、すなわち、T≧TS2の関係式が成立しないと判定された場合には、上記ウェイト状態において温度センサ26にて検出された温度Tが所定の第3閾値TS3以下となるか否かが判定される<ステップS5>。
ステップS5の判定結果が真(YES)であるとき、すなわち、T≦TS3の関係式が成立すると判定された場合には、正常な量のLLCが流路18に存在していると判定し、通常の通電制御を行うべく、
図4に示されるように、ヒータ2への通電をオンにして通電復帰状態とする<ステップS6>。
【0023】
一方、ステップS5の判定結果が偽(NO)であるとき、すなわち、T≦TS3の関係式が成立しないと判定された場合には、
図4に示されるように、ヒータ2への通電をオフのまま再びステップS3に移行する。
以上のように本実施形態では、第1閾値TS1から第2閾値TS2の温度範囲を空焚き判定範囲とすることにより、ヒータ2の通電待機状態(ウェイト状態)から加熱装置1の空焚き状態をヒータ2による通常の温度制御と区別して判別し、空焚き状態と判定された場合にはヒータ2への通電を継続的にオフする通電完全停止状態(スリープ状態)とし、以降の通電復帰は自動では行わないようにすることができる。
【0024】
また、温度Tが第3閾値TS3以下となったときにはヒータ2の通電待機状態から通電オンの復帰状態に戻すことができる。このような通電制御を行うことにより、流路18にLLCが存在するときには加熱装置1を不要に保護停止せずに通常の通電制御を行え、一方、流路18にLLCが存在しない、或いは少量であるときには異常処理を行うことで加熱装置1を迅速に保護停止することができる。従って、温度センサ26によるヒータ2の通常の通電制御を行いながら、空焚きを高精度且つ迅速に検知し、発煙発火を確実に防止することにより信頼性を高めた加熱装置1を提供することができる。
【0025】
本発明は、上記実施形態の加熱装置1に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、本発明の加熱装置1は、ハイブリッド自動車や電気自動車の車両用空調装置に組み込むのみならず、他の用途の熱源としても利用可能であるのは勿論である。