特許第5851943号(P5851943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851943
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】車載用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
   B60R11/02 C
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-133867(P2012-133867)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-256217(P2013-256217A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津 武志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 康平
(72)【発明者】
【氏名】木下 佳久
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−050522(JP,A)
【文献】 特表2009−521268(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0316057(US,A1)
【文献】 米国特許第5207471(US,A)
【文献】 特開2000−330475(JP,A)
【文献】 特開2007−290552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の設置部材に設けられた開口部に対して出入可能な可動本体と、この可動本体の支持板部に取り付けられた矩形状の表示パネルと、前記可動本体を前記開口部の内部の格納位置と前記開口部から突出する突出位置との間で移動させる駆動機構とを備え、前記突出位置で前記表示パネルが車室内を向いた起立姿勢で前記開口部から露出する車載用表示装置において、
前記支持板部に前記表示パネルの下辺に沿って略平行に延びる破断容易部を設けると共に、前記支持板部と前記表示パネルとの間に前記破断容易部を跨ぐように伸縮シートを介設し、この伸縮シートを前記可動本体の前記破断容易部を跨いで離間する少なくとも2箇所に固定したことを特徴とする車載用表示装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記可動本体に前記支持板部の下辺部から背面側へ突出する基体部を設け、前記伸縮シートを前記破断容易部より上方の前記支持板部と前記基体部とにそれぞれ貼着したことを特徴とする車載用表示装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記破断容易部と重なる前記伸縮シートの中間部分が前記支持板部に貼着されていない非貼着部となっていることを特徴とする車載用表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記支持板部と前記伸縮シートとの間に前記破断容易部を跨ぐように保護シートを介設し、この保護シートの前記破断容易部を跨いだ一方側のみを前記可動本体に固定したことを特徴とする車載用表示装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記伸縮シートに前記破断容易部を縦断する方向に延びるスリットを形成したことを特徴とする車載用表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の記載において、前記破断容易部が前記支持板部の内面に形成された断面凹状の長溝であることを特徴とする車載用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の設置部材に設けられた開口部の内部に表示パネルを格納しておき、この表示パネルが使用時に開口部から突出して搭乗者に目視されるようになっている車載用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、インストルメントパネル等の設置部材の内部に表示パネルが取り付けられた可動本体を収納し、設置部材内に配設した駆動機構を用いて可動本体を突出方向へ移動することにより、設置部材に設けられた開口部から表示パネルを起立姿勢で突出させるようにした車載用表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の車載用表示装置では、駆動機構の駆動源であるモータの回転方向に応じて可動本体が格納位置と突出位置との間を往復移動するようになっており、可動本体が開口部内の格納位置にあるときにモータを一方向へ回転すると、可動本体が突出位置へ向かって移動して開口部から突出するため、可動本体の先端側に取り付けられた表示パネルが搭乗者に対面して使用状態となる。また、可動本体が突出位置にあるときにモータを他方向へ回転すると、可動本体が格納位置へ向かって移動して開口部の内部に収納されるため、表示パネルは設置部材の内部に隠されて非使用状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−74303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した従来の車載用表示装置のように、使用時に表示パネルが設置部材の開口部から起立姿勢で突出しているものにおいては、車両走行中の急ブレーキ等によって搭乗者が表示パネルに頭部等をぶつけてしまったときに、その衝撃によって表示パネルを支持している可動本体が破損して飛散したり、衝撃によって車室内前方側へ倒れ込んだ可動本体と表示パネルの下端側が設置部材の開口部周辺を変形させたり破損させるおそれがある。この場合、衝撃によって可動本体が破損したとしても、可動本体の飛散や設置部材の破損を抑止できる対策が講じられていれば、搭乗者の安全性を高めることができて好ましい。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、搭乗者の安全性を高めた車載用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、車室内の設置部材に設けられた開口部に対して出入可能な可動本体と、この可動本体の支持板部に取り付けられた矩形状の表示パネルと、前記可動本体を前記開口部の内部の格納位置と前記開口部から突出する突出位置との間で移動させる駆動機構とを備え、前記突出位置で前記表示パネルが車室内を向いた起立姿勢で前記開口部から露出する車載用表示装置において、前記支持板部に前記表示パネルの下辺に沿って略平行に延びる破断容易部を設けると共に、前記支持板部と前記表示パネルとの間に前記破断容易部を跨ぐように伸縮シートを介設し、この伸縮シートを前記可動本体の前記破断容易部を跨いで離間する少なくとも2箇所に固定するという構成にした。
【0008】
このように構成された車載用表示装置では、起立姿勢に保持された表示パネルに搭乗者の頭部等が衝突すると、その衝撃によって車室内前方側へ倒れ込んだ可動本体の支持板部が破断容易部に沿って破断し、この破断容易部を跨いで可動本体に固定された伸縮シートが引き伸ばされる。その結果、破断した支持板部および表示パネルが伸縮シートの伸び量だけ前方(斜め上方)へスライドするため、可動本体の破断箇所は伸縮シートに繋がれたままの状態を維持し、破断した支持板部や表示パネルが可動本体から分離して車内に飛散することを防止できる。また、このように表示パネルが前方(斜め上方)へスライドしながら倒れ込むことにより、破断した支持板部や表示パネルの下辺部と設置部材の開口部との干渉が回避されるため、設置部材の開口部周辺が変形したり破損することを防止できる。
【0009】
上記の構成において、伸縮シートを破断容易部によって上下方向に区画された支持板部の上部領域と下部領域の2箇所に貼着するようにしても良いが、可動本体に支持板部の下辺部から背面側へ突出する基体部を設け、伸縮シートを破断容易部より上方の支持板部と破断容易部より下方の基体部とにそれぞれ貼着すると、伸縮シートの剥離を防止して確実に伸縮動作させることができる。この場合において、破断容易部と重なる伸縮シートの中間部分が可動本体の支持板部に貼着されていない非貼着部となっていると、伸縮シートの伸縮動作が非貼着部で確実に行われるようになって好ましい。
【0010】
また、上記の構成において、支持板部と伸縮シートとの間に破断容易部を跨ぐように保護シートを介設し、この保護シートの破断容易部を跨いだ一方側のみを可動本体に固定すると、可動本体の支持板部が破断容易部に沿って破断したとき、その破断面に保護シートが接触して伸縮シートとの接触を回避するため、伸縮シートの切断を確実に防止することができて好ましい。
【0011】
また、上記の構成において、伸縮シートに破断容易部を縦断する方向に延びるスリットを形成してあると、万一、支持板部の破断時に伸縮シートの一部が切断したとしても、その切断がスリットで遮断されて他の部位に伝播しにくくなって好ましい。
【0012】
また、上記の構成において、支持板部にミシン目状に連続する複数の孔やスリット形状の長孔等を形成して破断容易部とすることも可能であるが、この破断容易部が支持板部の内面に形成された断面凹状の長溝であると、破断容易部が外部に露出しないというデザイン上のメリットに加えて、ダイカスト等の金型形状によって長溝を簡単に形成できるという製造上のメリットもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車載用表示装置は、可動本体の支持板部に表示パネルの下辺に沿って略平行に延びる破断容易部が設けられており、起立姿勢に保持された表示パネルに搭乗者の頭部等が衝突すると、その衝撃によって車室内前方側へ倒れ込んだ可動本体の支持板部が破断容易部に沿って破断すると共に、この破断容易部を跨いで可動本体に固定された伸縮シートが引き伸ばされる。その結果、破断した支持板部および表示パネルが伸縮シートの伸び量だけ前方(斜め上方)へスライドするため、破断した支持板部や表示パネルが可動本体から分離して車内に飛散することを防止できると共に、破断した支持板部や表示パネルの下辺部と設置部材の開口部との干渉が回避されるため、設置部材の開口部周辺が変形したり破損することも防止でき、搭乗者の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態例に係る車載用表示装置の使用状態を示す側面図である。
図2】該車載用表示装置に備えられる可動本体の斜視図である。
図3】該可動本体を背面側から見た斜視図である。
図4】該可動本体から表示パネルを取り除いて示す斜視図である。
図5】該可動本体の分解斜視図である。
図6】該車載用表示装置の収納状態を示す側面図である。
図7】該車載用表示装置の移動途中状態を示す側面図である。
図8】該可動本体が衝撃力を受けたときの倒れ込み動作を示す説明図である。
図9】該可動本体が衝撃力を受けたときの倒れ込み動作を示す説明図である。
図10】該可動本体が衝撃力を受けたときの倒れ込み動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1に示すように、本実施形態例に係る車載用表示装置は、車室内の設置部材1の裏面に固定されたシャーシ2と、設置部材1に設けられた開口部1aに対して出入可能な可動本体3と、可動本体3を開口部1aの内部の格納位置と開口部1aから突出する突出位置との間で移動させる駆動機構4等を備えている。設置部材1は運転席前方のフロントガラス下に配設されたダッシュボードであり、この設置部材1の上面に横長形状の開口部1aが開設されている。シャーシ2は設置部材1の裏面にネジ止め等により固定されており、このシャーシ2には設置部材1の開口部1aに連続する連通孔2aが開設されている。
【0016】
図2図5に示すように、可動本体3は支持板部5と基体部6とからなり、これら支持板部5と基体部6はマグネシウムダイカスト等を用いて一体形成されている。支持板部5は矩形状に形成されており、その左右両側部には合成樹脂製の装飾板7が取り付けられている。支持板部5の周縁部には矩形状の表示パネル8の周縁部が固定されており、支持板部5の内面(前面)と表示パネル8の裏面は間隙を存して対向している。表示パネル8はLCD(液晶ディスプレイ)からなり、表示パネル8の下辺を除く残り3辺は支持板部5の上端部と両装飾板7によって覆われている。支持板部5の内面の上辺側にはハニカム形状の補強リブ5aが多数形成されており、これら補強リブ5aによって支持板部5の機械的強度が高められている。また、支持板部5の内面には表示パネル8の下辺に沿って略平行に延びる破断容易部5bが形成されており、この破断容易部5bを境にして支持板部5の内面は広い上部領域S1と狭い下部領域S2とに区画されている。破断容易部5bは支持板部5の左右方向へ延びる断面凹状の長溝であり、この破断容易部5bの機械的強度は他の部分に比べて低くなっている。
【0017】
基体部6は支持板部5の下辺部から背面側へ向かって略直交するように突出しており、この基体部6の内面における支持板部5との接続箇所は平坦な貼着部6aとなっている。この貼着部6aには複数のリブ状突起6bが形成されており、これらリブ状突起6bによって貼着部6aの周囲の強度が高められている。また、基体部6の外表面には第1軸受部6cと第2軸受部6dが設けられており、これら第1および第2軸受部6c,6dは後述する駆動機構4の駆動アームと規制アームにそれぞれ回転可能に軸支されている。
【0018】
支持板部5の内面には保護シート9と伸縮シート10が積層状態で配置されており、破断容易部5bの両端部を除く大部分はこれら保護シート9と伸縮シート10によって覆われている。保護シート9は強度や弾性率等の力学的性質に優れたパラ系アラミド繊維等からなり、この保護シート9の下辺側は支持板部5の下部領域S2に接着剤や粘着テープ等を用いて固定(貼着)されているが、支持板部5の上部領域S1に対して保護シート9は貼着されていない。ただし、保護シート9は破断容易部5bを跨いで離間する2箇所のいずれか一方に固定されていれば良く、例えば、基体部6の貼着部6aに貼着した保護シート9を破断容易部5bを縦断して上部領域S1まで延ばしたり、上部領域S1に貼着した保護シート9を破断容易部5bを縦断して下部領域S2や貼着部6aまで延ばすようにしても良い。
【0019】
伸縮シート10は、ポリエステル繊維やポリウレタン繊維の不織布と高分子弾性体を3次元融合したシートや、伸縮性を有する弾性シートに非弾性的な伸長性を有する繊維集合体を積層一体化した複合シート等、引張り強度や弾性特性に優れたシート状部材からなり、本実施形態例の場合は東レ(株)の商品名「エクセーヌ」が用いられている。この伸縮シート10は保護シート9を覆って支持板部5の上部領域S1と基体部6の貼着部6aとの間に配置されており、これら上部領域S1と貼着部6aに伸縮シート10の上下両端部が貼着されている。ただし、伸縮シート10の上下両端部を除く中間部分、つまり、破断容易部5bを跨いで配置された保護シート9上に重なる部分は、支持板部5に貼着されていない非貼着部となっている。また、伸縮シート10には複数のスリット10aが形成されており、これらスリット10aは伸縮シート10の下辺から上辺の途中まで延びている。各スリット10aは貼着部6aから突出するリブ状突起6bに挿入されるようになっており、伸縮シート10の下端部を基体部6の貼着部6aに貼着するとき、リブ状突起6bが貼着作業の邪魔にならないように配慮されている。したがって、伸縮シート10の貼着箇所にリブ状突起6b等の突起物が存在しない場合は、伸縮シート10からスリット10aを省略することも可能である。なお、伸縮シート10は破断容易部5bを跨いで離間する2箇所に固定されていれば良く、例えば、支持板部5の下部領域S2に十分に広い貼着スペースが確保されていれば、伸縮シート10の上下両端部を上部領域S1と下部領域S2に貼着することも可能である。
【0020】
伸縮シート10の左右両側には露出した破断容易部5bを跨ぐように引張りコイルばね11が配置されており、これら引張りコイルばね11の端部は支持板部5の上部領域S1と基体部6の貼着部6aに掛止されている。すなわち、これら引張りコイルばね11は支持板部5から貼着部6aに連なる屈曲面に沿って略L字状に張架されている。ただし、引張りコイルばね11は破断容易部5bを跨いで離間する2箇所に掛止されていれば良く、例えば、支持板部5の下部領域S2に十分に広い掛止スペースが確保されていれば、引張りコイルばね11の両端部を上部領域S1と下部領域S2に掛止して直線状に配置することも可能である。
【0021】
図6図7に示すように、前記駆動機構4は、シャーシ2の下面後方に取り付けられたモータ12と、シャーシ2のシャフト13に回転可能に支持された駆動アーム14と、シャーシ2の別のシャフト15に回転可能に支持された規制アーム16等によって主に構成されており、モータ12の回転が図示せぬ減速ギア列やクラッチギアを介して駆動アーム14に伝達されるようになっている。駆動アーム14の先端部は基体部6の第1軸受部6cに連結されており、可動本体3(支持板部5と基体部6)は駆動アーム14の揺動回転に伴って後述する格納位置と突出位置との間を移動する。また、規制アーム16の先端部は基体部6の第2軸受部6dに連結されており、可動本体3の移動中の姿勢が規制アーム16によって規定されるようになっている。なお、図示省略されているが、シャーシ2には連通孔2aを開閉可能なカバーが保持されており、このカバーは規制アーム16の揺動回転に伴ってスライド移動する。また、支持板部5と表示パネル8の下辺部には合成樹脂製の保護キャップ17が取り付けられており、この保護キャップ17によって表示パネル8の下辺側が覆われている。
【0022】
図6は可動本体3が開口部1aの内部の格納位置に収納された状態を示しており、この場合、開口部1aと連通孔2aは前記カバーによって塞がれている。この状態でモータ12が一方向へ回転すると、駆動アーム14が図6の時計回り方向へ揺動回転するため、図7に示すように、可動本体3が規制アーム16の回動軌跡に沿って移動開始すると共に、規制アーム16の回転に伴ってカバーが開口部1aと連通孔2aを開放する方向へスライド移動し、支持板部5と表示パネル8の上辺側が開口部1aから車室内へ突出する。モータ12が同方向へ回転し続けると、駆動アーム14が基体部6を突出方向へ押し出すため、図1に示すように、支持板部5と表示パネル8の大部分が開口部1aから突出する。この時点でモータ12の回転が停止すると、可動本体3は表示パネル8を車室内に対面させた突出姿勢に保持され、車室内の搭乗者は表示パネル8の表示画面に映し出された画像を見ることができる。また、可動本体3が図1に示す突出位置にあるとき、モータ12が他方向へ回転すると、駆動アーム14が上記と逆向きに揺動回転して基体部6を収納方向へ引き込むため、可動本体3は開口部1aの内部に収納されて図6に示す格納位置に戻る。
【0023】
このように構成された車載用表示装置において、可動本体3の支持板部5と表示パネル8が開口部1aから突出して使用状態にあるとき、車両走行中の急ブレーキ等によって搭乗者が表示パネル8に頭部等をぶつけてしまった場合、図1の矢印Aで示すように、表示パネル8を保持する支持板部5に車室内前方へ向けた大きな衝撃力が作用する。その結果、図8に示すように、衝撃によって車室内前方側へ倒れ込んだ支持板部5が破断容易部5bに沿って破断し、表示パネル8を保持する支持板部5の上部領域S1と基体部6に連続する支持板部5の下部領域S2とが破断箇所Pで分断される。
【0024】
ここで、支持板部5と表示パネル8の間に破断容易部5bを跨ぐように伸縮シート10が配置され、この伸縮シート10の上下両端部が支持板部5の上部領域S1と基体部6の貼着部6aに貼着されているため、伸縮シート10が分断した支持板部5の上部領域S1に固定されたまま引き伸ばされ、支持板部5の上部領域S1と表示パネル8は伸縮シート10の伸び量だけさらに前方(図8における右斜め上方)へスライドすることになる。したがって、支持板部5の破断箇所Pは伸縮シート10に繋がれたままの状態を維持し、破断した支持板部5と表示パネル8が車内に飛散することを防止できる。また、破断した支持板部5と表示パネル8が前方(斜め上方)へスライドしながら倒れ込むため、これら支持板部5と表示パネル8の下辺部は、図9に示すように保護キャップ17から外れた後、図10に示すように設置部材1の開口部1aから飛び出すことになる。よって、支持板部5と表示パネル8の下辺部が開口部1aの手前(図9における図示左方)下面側に潜り込み、この下辺部が支持板部5と表示パネル8の倒れ込み動作に伴って開口部1a周辺を上方に持ち上げることはなく、設置部材1の開口部1a周辺が変形したり破損することも防止できる。
【0025】
しかも、支持板部5と伸縮シート10との間に破断容易部5bを跨ぐように保護シート9が介設され、この保護シート9の下辺側が支持板部5の下部領域S2に貼着されているため、支持板部5が破断容易部5bに沿って破断したとき、その破断面に保護シート9が覆い被さって伸縮シート10と破断面との接触を阻止する。したがって、伸縮シート10は破断箇所Pの鋭利な破断面に直接触れなくなり、支持板部5の破断面によって伸縮シート10が切断してしまうことを防止できる。
【0026】
また、支持板部5と表示パネル8の間に破断容易部5bを跨ぐように一対の引張りコイルばね11が配置され、これら引張りコイルばね11の両端部が支持板部5の上部領域S1と基体部6の貼着部6aに掛止されているため、衝撃によって下部領域S2から分断した支持板部5の上部領域S1が表示パネル8と一緒に前方へ移動すると、伸縮シート10だけでなく両引張りコイルばね11も支持板部5の上部領域S1に掛止されたまま伸延される。したがって、衝撃によって破断した支持板部5と表示パネル8は、図10に示すように前方へスライドして倒れ込んだ後、両引張りコイルばね11の弾発力を受けて図1に示す起立姿勢へ瞬時に戻る。これにより、支持板部5と表示パネル8の下端部が開口部1aの内部に戻されて保護キャップ17内に収まるため、突起物である支持板部5と表示パネル8の下端部は搭乗者に対面しなくなる。しかも、支持板部5の破断箇所Pが伸縮シート10と両引張りコイルばね11の3箇所で繋がれたままの状態を維持するため、破断した支持板部5と表示パネル8の飛散をより確実に防止できる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態例に係る車載用表示装置は、表示パネル8を保持する可動本体3の支持板部5に破断容易部5bが設けてあり、設置部材1の開口部1aから突出して起立姿勢に保持された表示パネル8に搭乗者の頭部等が衝突したとき、その衝撃によって前方へ倒れ込んだ支持板部5を破断容易部5bに沿って破断するようにしている。そして、表示パネル8の裏面側に配置した伸縮シート10を破断容易部5bを跨いで離間する2箇所(支持板部5の上部領域S1と基体部6の貼着部6a)に貼着し、この伸縮シート10が破断した支持板部5の上部領域S1に固定されたまま引き伸ばされるようになっているので、支持板部5の破断箇所Pは伸縮シート10に繋がれたままの状態を維持し、破断した支持板部5と表示パネル8が破断箇所から分離して車内に飛散することを防止できる。また、破断した支持板部5と表示パネル8が伸縮シート10の伸び量だけ前方(斜め上方)へスライドしながら倒れ込むことにより、支持板部5と表示パネル8の下辺部が開口部1aの手前下面側に衝突しなくなるため、設置部材1の開口部1a周辺が変形したり破損することも防止でき、搭乗者の安全性を高めることができる。
【0028】
また、本実施形態例では、可動本体3に支持板部5の下辺部から背面側へ突出する基体部6を設けてあり、伸縮シート10の貼着箇所である支持板部5の上部領域S1と基体部6の貼着部6aとが略直交するようになっているため、伸縮シート10の剥離を防止して確実な伸縮動作を行わせることができる。しかも、伸縮シート10の上下両端部を除く中間部分、つまり、破断容易部5bを跨いで配置された保護シート9上に重なる部分が、支持板部5に貼着されていない非貼着部となっているので、伸縮シート10の伸縮動作を非貼着部で確実に行わせることができる。
【0029】
また、伸縮シート10に破断容易部5bを縦断する方向に延びるスリット10aを形成し、このスリット10aを貼着部6aに設けられた突起物(リブ状突起6b)に挿入するようにしたので、伸縮シート10を貼着部6aに対して簡単かつ確実に貼着することができるだけでなく、万一、支持板部5の破断時に伸縮シート10の一部が切断したとしても、その切断をスリット10aで遮断して伸縮シート10全体の切断を防止することができる。
【0030】
また、本実施形態例では、支持板部5と伸縮シート10との間に破断容易部5bを跨ぐように保護シート9を介設し、この保護シート9の下辺側を支持板部5の下部領域S2に貼着しているため、支持板部5が破断容易部5bに沿って破断したとき、その破断面に保護シート9が覆い被さって伸縮シート10と破断面との接触が回避される。それゆえ、伸縮シート10が破断箇所Pの鋭利な破断面に直接触れることはなく、保護シート9によって伸縮シート10の切断が防止されるため、伸縮シート10の伸縮動作を確実に行わせることができる。
【0031】
また、本実施形態例では、支持板部5の内面に破断容易部5bとして断面凹状の長溝を形成したので、破断容易部5bが外部に露出しないというデザイン上のメリットがあるだけでなく、支持板部5と基体部6をマグネシウムダイカスト等を用いて一体形成する際に、その金型形状によって長溝(破断容易部5b)を簡単に形成できるという製造上のメリットもある。
【0032】
なお、上記実施形態例では、モータ12を駆動源として回転する駆動アーム14等で構成された駆動機構4によって可動本体3を移動するようにしているが、駆動機構4の構成はこれに限定されず、要は、可動本体3を格納位置と突出位置との間で移動させることができるものであれば良い。
【符号の説明】
【0033】
1 設置部材
a 開口部
2 シャーシ
2a 連通孔
3 可動本体
4 駆動機構
5 支持板部
5b 破断容易部
6 基体部
6a 貼着部
6b リブ状突起
7 装飾板
8 表示パネル
9 保護シート
10 伸縮シート
10a スリット
11 引張りコイルばね
S1 上部領域
S2 下部領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10