(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851982
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】自動車用冷却装置
(51)【国際特許分類】
F28F 27/00 20060101AFI20160114BHJP
B60L 3/00 20060101ALI20160114BHJP
F01P 3/12 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
F28F27/00 511D
B60L3/00 H
F01P3/12
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-504060(P2012-504060)
(86)(22)【出願日】2010年4月9日
(65)【公表番号】特表2012-523542(P2012-523542A)
(43)【公表日】2012年10月4日
(86)【国際出願番号】FR2010050687
(87)【国際公開番号】WO2010116104
(87)【国際公開日】20101014
【審査請求日】2013年3月19日
(31)【優先権主張番号】0952362
(32)【優先日】2009年4月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】オベルティ, クレール
(72)【発明者】
【氏名】マルシリア, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】クレギュー, サミュエル
【審査官】
▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−275492(JP,A)
【文献】
特開2009−065767(JP,A)
【文献】
特開2007−202244(JP,A)
【文献】
特開平08−030337(JP,A)
【文献】
特開2005−204091(JP,A)
【文献】
特開平10−288301(JP,A)
【文献】
特開平06−229308(JP,A)
【文献】
特開平10−238345(JP,A)
【文献】
特開2008−256313(JP,A)
【文献】
特開2003−239742(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0018118(US,A1)
【文献】
特開2006−216303(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第19542125(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
B60L 3/00
F01P 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式自動車両のための冷却装置(1)であって、当該冷却装置(1)は、少なくとも1つの可変流速ポンプ(2、3)を用いて循環されるクーラントを用いて電気駆動システム(12)を含むエンジン組立体(5)を冷却することのできる冷却回路を含み、各ポンプ(2、3)の流速が制御システム(9)によって制御され、制御システム(9)は、クーラントの温度および設定温度によって閉ループ制御システムで各ポンプ(2、3)の流速をサーボ制御でき、
前記電気式自動車両がバッテリー充電組立体(4)を含み、前記冷却回路が前記充電組立体(4)および前記エンジン組立体(5)を冷却することができ、
当該エンジン組立体(5)の冷却回路には、当該エンジン組立体(5)を回路短絡するときでも、クーラントの0を超える最小流速を維持するための液圧制限(10)が連結されている、
冷却装置。
【請求項2】
エンジン組立体(5)にクーラントを選択的に供給することのできる第1ポンプ(2)、および充電組立体(4)にクーラントを選択的に供給することのできる第2ポンプ(3)を含む、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記充電組立体(4)中のクーラントの流れを防止することのできる第1バルブ(7)、および前記エンジン組立体(5)中のクーラントの流れを防止することのできる第2バルブ(8)を含む、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記閉ループ制御システムが比例積分式補正器を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記補正器が、最小値と最大値で制御が飽和されている場合、積分動作も飽和される飽和ブロックを含む、請求項4に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記設定温度が車両の外部温度および車両の速度によって予め定められる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、
電気式自動車
両用の冷却装置であって、少なくとも1つの可変流速ポンプによって循環されるクーラントを用いてエンジン組立体を冷却することのできる冷却回路を含む。本発明は電気自動車に有利に適用される。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、繰り返される燃焼は、例えば、ピストン、シリンダー、およびバルブなどの接触する部品を過熱し、エンジンの全ての機構部品に伝導される。したがって、それを冷却する必要があり、さもなければ破壊の危険性がある。したがって、正しい運転のために、爆発エンジンは均一の適切な温度を必要とする。
【0003】
電気的推進力を備える車両の場合、駆動システムのさまざまな要素を冷却することも必要である。
【0004】
エンジン、および液体を冷却するのに用いられる熱交換機であるラジエータを通してクーラントを循環するために1つ以上のポンプを含む冷却システムを使用することは既知の慣例である。この場合、クーラントの流速はエンジン速度に依存し、特にエンジンが停止するときにゼロである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポンプの運転を最適化し、特にその摩耗およびエネルギー消費を制限することを可能にする冷却装置を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による装置はこの目的の達成を可能にする。
【0007】
したがって、本発明の主題は
電気式自動車
両用
の冷却装置であって、少なくとも1つの可変流速ポンプを用いて循環されるクーラントを用いて
電気駆動システムを有するエンジン組立体を冷却することのできる冷却回路を含み、各ポンプの流速は制御システムによって制御される。
当該制御システムは、クーラントの温度と設定温度によって閉ループ制御システムで各ポンプの流速をサーボ制御することが可能である。
【0008】
本発明による装置において、電気式車両は、バッテリー充電器組立体を含み、冷却回路は、充電器組立体とエンジン組立体とを冷却することができる。【0009】
したがって、各ポンプの閉ループモード流速のサーボ制御はその摩耗およびそのエネルギー消費を制限することを可能に
し、使用フェーズ(移動又は再充電)によらずに制限することを可能にする。
【0010】
上記装置はエンジン組立体にクーラントを選択的に供給することのできる第1ポンプと、充電器組立体にクーラントを選択的に供給することのできる第2ポンプを含むことができる。
【0011】
この目的のために、装置は充電器組立体中のクーラントの流れを防止することのできる第1バルブと、エンジン組立体中のクーラントの流れを防止することのできる第2バルブを含むことができる。
【0012】
また、装置はエンジン組立体中のクーラントの最小流速を維持するための液圧制限を含むことができる。
【0013】
閉ループ制御システムは比例積分型の補正器を含むことができる。
【0014】
補正器は最小値と最大値の間の補正を制限することのできる飽和ブロックを含むことができる。
【0015】
設定温度は、車両の外部温度および車両の速度によって予め定めることができる。【0016】
本発明の他の特徴および利点は、付属の図面を参照しながら、例示的に非制限的な例として与えられる以下の説明を読み取ることによってより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】電気自動車に組み込まれた本発明による冷却装置をブロック図の形で示す図である。
【
図2】車両のための制御計画を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、冷却装置1は、第1電気ポンプ2、第2電気ポンプ3、バッテリー充電器4、エンジン組立体5、ラジエータ6、ならびに第1ソレノイドバルブ7および第2ソレノイドバルブ8を含む。第1電気ポンプ2、第2電気ポンプ3、第1ソレノイドバルブ7、第2ソレノイドバルブ8は制御装置9に連結される。
【0019】
第1電気ポンプ2は車両の走行中に用いることが意図され、第2電気ポンプ3はバッテリーを再充電するときに用いることが意図される。第1電気ポンプ2の流速および第2電気ポンプ3の流速は制御信号を用いて設定することができる。
【0020】
充電器4は、車両が停止しているとき、図示されていない家庭用電気本線システムから電気牽引バッテリーを再充電するために用いられる。
【0021】
第1ソレノイドバルブ7は、車両の走行中に第2ポンプ3と充電器4を回路短絡するために用いられ、他方、第2ソレノイドバルブ8は、バッテリーの再充電中にエンジン組立体5の冷却が必要ではないと判断されるとき、エンジン組立体5を回路短絡するために用いられる。第2ソレノイドバルブ8は、液圧制限10に連結することができ、これはヘッド損失を生成し、第2ソレノイドバルブ8が通過モードのときでも、エンジン組立体5中のクーラントの流速を保持するために用いられる。
【0022】
エンジン組立体5は、エンジン11および特にバッテリーからのDC電圧をAC電圧に変換することが意図される電気駆動システム12を含む。
【0023】
ラジエータ6は、内燃機関の冷却装置と同じようにクーラントを冷却するために用いられる。それには図示されないが電気ファンが備えられる。
【0024】
エンジン組立体5は、車両が停止しているときの充電器4のように、車両が走行するとき冷却されなければならない。冷却計画は制御装置9によって管理される。制御装置9は、冷却回路のセンサー、詳細にはクーラント温度センサーに連結されたコンピュータである。コンピュータ9はポンプ2、3、ソレノイドバルブ7、8、およびラジエータ6の電気ファンセットを駆動する。また、コンピュータ9は、冷却計画に必要な他の測定値を得るために、例えば、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)のバス型ネットワークを経由して車両の他のコンピュータに有利に連結される。
【0025】
冷却回路制御計画は
図2に示したように、2つのモジュールAおよびBの形で実施することができる。モジュールAはクーラントの温度の制御に関し、モジュールBは電気ポンプ2、3の選択に関する。
【0026】
モジュールAは車両の状態(走行中または停止したときのバッテリーの再充電)によってクーラントの流速制御を発生する役割を有する。モジュールAの入力は、
−クーラントの温度T(これは1つ以上の温度センサーを用いて得ることができる)、
−車両の外部の温度T
ext、
−車両の速度V、である。
【0027】
モジュールBの入力は、
−モジュールAからの流速制御D
com、
−車両の状態E(これは自動車の中央コンピュータから発せられる信号であり、車両がバッテリー再充電モードの場合値1を有し、車両が走行モードの場合値0を有する)、である。
【0028】
モジュールBの出力は、
−走行モードに用いられた第1ポンプのための流速制御D
com1(これは0と100の間の信号であり、ポンプによって生成することのできる最大流速のパーセントを表す)、
−再充電モードに用いられる第2ポンプの流速制御D
com2(これは0と100の間の信号でありポンプによって生成することのできる最大流速のパーセントを表す)、である。
【0029】
単純にするために、車両状態信号が値1を有する場合には第2ポンプのみを使用し、車両状態が値0を有する場合に第1ポンプのみ使用するように選択することができる。
【0030】
流速制御の一実施形態は
図3に詳細が示される。目的は、クーラントの温度によって最小流速値D
minと最大流速値D
maxの間で自動的に流速制御を変化させることである。クーラントの温度が設定温度以下である限り、流速制御は最小値D
minを維持する。クーラントの温度が設定温度を超えるとすぐに、閉ループ制御によって流速制御が得られ、関係する設定は設定温度であり、関係するフィードバックループはクーラントの測定された温度である。
【0031】
この目的はモジュールAのブロックA1からA6の力で達成される。
【0032】
ブロックA1は車両の外部温度T
extと車両の速度Vによってクーラント用の温度設定値T
consを発生する。実際に、車両の速度Vが速いほど冷却するラジエータの能力は大きく、したがって、温度設定値T
consをより高くすることが可能になる。同様に、外部温度T
extが低いほどラジエータはより効率的になり、したがって、温度設定値T
consをより高くすることが可能になる。したがって、ブロックA1は
マップに基づく線形外挿によって温度設定値T
consを発生する。
【0033】
次いで、ブロックA2は設定温度T
consと測定された温度Tの間の差であるエラー信号ΔTを発生する。信号ΔTは当業者には周知の補正ブロックPI(比例積分)であるブロックA3へ送られる。しかし、比例式補正器または積分式補正器を用いることも可能である。
【0034】
ブロックA3の入力は、
−ブロックA2からのエラー信号ΔT、
−前のサンプリング時間に送られた流速制御D
com(制御が値D
minまたは値D
maxで飽和されている場合、補正器はその情報を得て積分動作も飽和される)、
−補正器PIの比例利得G、例えば1%、
−補正器PIの積分時間定数C
t、例えば500sである。
【0035】
ブロックA3の出力は、最小流速D
minに対する望ましい流速の増加ΔDである。この制御は飽和されるべきである。
【0036】
ブロックA4は0(望ましい流速増加はない)とD
max−D
minの間のこの飽和を生成する。次いで、この飽和された制御は遅延ブロックA5によって保存され、次のサンプリング時間に用いられて補正器PIに任意の飽和情報を与える。
【0037】
最終的に、ブロックA6は最終的な流速制御D
comfを発生する。最終制御D
comfは値D
minに補正器PIから要求された変化ΔDを加えることによって演算される。
【0038】
したがって、流速制御は2つの値D
minとD
maxの間を自動的に変化させることに成功する。例えば、値D
minはポンプによって生成することのできる最大流速の30%に設定することができる。クーラントの回路全てに渡って均一な温度を得て熱点の形成を回避するために、温度が低くてもゼロではない最小流速D
minを維持することは、実際にきわどい作業である。例えば、ポンプに過負荷を与えたくない場合、値D
maxは最大流速の80%に設定することができる。
【0039】
したがって、クーラント流速制御計画はコンピュータ上で実行するのが特に簡単である。それは短い演算時間しか必要とせず、電力消費を低減することを可能にする。
【0040】
上述の装置は2つのポンプを有するが、本発明は1つのまたは2つよりも多いポンプを有する装置にも関係する。本発明はまた、電気ウォーターポンプを備えたガソリンエンジンにも適用できる。