(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗Bv8抗体が、配列番号:49のアミノ酸配列を含むHVR−L1、配列番号:50のアミノ酸配列を含むHVR−L2、配列番号:51のアミノ酸配列を含むHVR−L3、配列番号:52のアミノ酸配列を含むHVR−H1、配列番号:53のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む抗Bv8抗体よりも少なくとも2倍の強さでヒトBv8に結合する、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗Bv8抗体。
癌が、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓癌、神経膠芽腫、食道癌、メラノーマ、膀胱癌、卵巣癌、膵癌および肝細胞癌からなる群から選択される、請求項17に記載の抗体。
第二医薬が、他の抗体、化学療法剤、細胞障害性剤、抗血管形成剤、免疫抑制剤、プロドラッグ、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、細胞障害性放射線療法、副腎皮質ステロイド、制吐剤、癌ワクチン、鎮痛剤又は増殖阻害性剤である、請求項22に記載の抗体。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の詳細な説明
本発明は、抗Bv8抗体に関する方法、組成物、キットおよび製造品を提供する。これら方法、組成物、キットおよび製造品の詳細を本明細書中に示す。
【0034】
一般的技術
本明細書中に記載又は引用される技術及び手順は、一般に十分に理解されるものであり、当業者によって従来の方法論を用いて共通して実施されるものである。その例として、以下の文献に記載される方法論が広く利用されている。Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, et al. eds., (2003)); the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames and G. R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, and ANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney, ed. (1987))。
【0035】
定義
「Bv8」、「Bv8ホモログ」、「プロキネチシン-2(別名「PK2」、「KAL4」及び「MIT1」)なる用語は、交換可能に本明細書中で用いられ、完全長ポリペプチドおよび/または完全長ポリペプチドの活性な断片を指す。天然配列Bv8は、Bv8の天然に生じるプレプロ、プロおよび成熟型および切断型、天然に生じる変異体型(例えばオルターナティブスプライス型)および天然に生じる対立遺伝子変異体を包含する。ある実施態様では、天然Bv8アミノ酸配列は配列番号:235から239に示される。ヒトおよびネズミ科Bv8配列は、例えばWechselberger et al.(FEBS Lett.462:177-181 (1999))およびLi et al.(Mol.Pharm.59:692-698 (2001))にも開示される。
「Bv8レセプター」はBv8が結合し、Bv8の生物学的性質を媒介する分子である。それ故に、「Bv8レセプター」なる用語は、PKR1/GPR73/EG−VEGFレセプター-1/PROKR1及びPKR2/GPR37L1/EG−VEGFレセプター-2/PROKR2を意味するものを包含する(LeCouter et al., 2003, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 100:2685-2690;Lin et al., 2002, J. Biol.Chem., 277:19276-19280;Masuda et al., 2002, Biochem.Biophys.Res.Commun., 293:396-402)。
【0036】
ポリペプチドに関する「生物学的活性」および「生物学的に活性な」という用語は、分子が、特異的に結合し、細胞応答、例えば、増殖、遊走等を制御する能力を指す。また、細胞応答としては、これらに限定されないが、遊走および/または増殖を含めた、レセプターを通して媒介されるものも挙げられる。
ここでの目的に対するBV8に関して「活性な」又は「活性」とは、天然又は天然に生じるBv8の生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するBv8の形態を意味し、ここで「生物学的」活性とは、天然又は天然発生Bv8が保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力以外の、天然又は天然発生Bv8によって引き起こされる生物機能を意味し、「免疫学的」活性とは、天然又は天然発生Bv8が保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力を意味する。ある実施態様では、Bv8の生物学的活性は、骨髄系細胞動員の調節、腫瘍血管形成の促進および/または腫瘍転移の促進をする能力である。
「抗Bv8抗体」又は「Bv8に結合する抗体」なる用語は、Bv8を標的とする診断用薬及び/又は治療剤として有用である程度に、十分な親和性でBv8に結合することが可能である抗体を意味する。ある実施態様では、Bv8に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、又は0.01nM以下の解離定数(Kd)を有する。ある実施態様では、抗Bv8抗体は、異なる種由来のBv8間で保存されるBv8のエピトープに結合する。ある実施態様では、抗Bv8抗体は、キメラ2G9、h2G9.K4G1.v19、h2G9.K4G1.v52、h2G9.K4G1.v55、h2G9.K4G1.v73およびキメラ2D3からなる群から選択される抗体と同じ、ヒトBv8上のエピトープに結合する。ある実施態様では、抗Bv8抗体は、キメラ2G9、h2G9.K4G1.v19、h2G9.K4G1.v52、h2G9.K4G1.v55、h2G9.K4G1.v73およびキメラ2D3からなる群から選択される抗体と、ヒトBv8への結合について競合する。
【0037】
一般的に「結合親和性」は、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合的な相互作用の総合的な強度を意味する。特に明記しない限り、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば抗体と抗原)間の1:1相互作用を反映する内因性結合親和性を意味する。一般的に、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、解離定数(Kd)として表される。親和性は、本明細書中に記載のものを含む当業者に公知の共通した方法によって測定することができる。低親和性抗体は抗原にゆっくり結合して素早く解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は抗原により密接により長く結合したままとなる。結合親和性の様々な測定方法が当分野で公知であり、それらの何れかを本発明のために用いることができる。以下に具体的な例示的実施態様を記載する。
【0038】
ある実施態様では、本発明の「Kd」又は「Kd値」は、段階的な力価の非標識抗原の存在下で、最小濃度の(
125I)-標識抗原にてFabを均衡化して、抗Fab抗体コートプレートと結合した抗原を捕獲することによって抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する以下のアッセイで示されるような(Chen,等, (1999) J. Mol Biol 293:865-881)、抗Bv8抗体のFab型(バージョン)とその抗原を用いて実行される放射性標識した抗原結合アッセイ(RIA)で測定される。アッセイの条件を決めるために、ミクロタイタープレート(Dynex)を5μg/mlの捕獲抗Fab抗体(Cappel Labs)を含む50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)にて一晩コートして、その後2%(w/v)のウシ血清アルブミンを含むPBSにて室温(およそ23℃)で2〜5時間、ブロックする。非吸着プレート(Nunc#269620)に、100pM又は26pMの[
125I]抗原を段階希釈した所望のFabと混合する(例えば、Presta等, (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599の抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一致する)。ついで所望のFabを一晩インキュベートする;しかし、インキュベーションは確実に平衡状態に達するまでに長時間(例えば65時間)かかるかもしれない。その後、混合物を捕獲プレートに移し、室温で(例えば1時間)インキュベートする。そして、溶液を取り除き、プレートを0.1%のTween20
TMを含むPBSにて8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MicroScint
TM-20; Packard)を加え、プレートをTopcountγ計測器(Packard)にて10分間計測する。最大結合の20%か又はそれ以下濃度のFabを選択してそれぞれ競合結合測定に用いる。他の実施態様によると、〜10反応単位(RU)の固定した抗原CM5チップを用いて25℃のBIAcore
TM-2000又はBIAcore
TM-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)にて表面プラズモン共鳴アッセイを行ってKd又はKd値を測定する。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIAcore Inc.)を、提供者の指示書に従ってN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化した。抗原を10mM 酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入した。抗原の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。動力学的な測定のために、2倍の段階希釈したFab(0.78nMから500nM)を25℃、およそ25μl/分の流速で0.05%Tween
TM20(PBST)を含むPBSに注入した。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model) (BIAcore Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(k
on)と解離速度(k
off)を算出した。平衡解離定数(Kd)をk
off/k
on比として算出した。例として、Chen, Y.,等, (1999) J. Mol Biol 293:865-881を参照。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる結合速度が10
6M
−1S
−1を上回る場合、分光計、例えば、流動停止を備えた分光光度計(stop-flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度の抗原の存在下にて、PBS(pH7.2)、25℃の、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて結合速度を測定することができる。
【0039】
「単離された」核酸分子は、同定され、抗体核酸の天然源に通常付随している少なくとも一の汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離された核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。故に、単離された核酸分子は、天然の細胞中に存在する核酸分子とは区別される。しかし、単離された核酸分子は、例えば、核酸分子が天然の細胞のものとは異なった染色体位置にある抗体を通常発現する細胞に含まれる核酸分子を含む。
【0040】
ここで使用される「ベクター」という用語は、それが結合している他の核酸を輸送することのできる核酸分子を意味するものである。一つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは付加的なDNAセグメントが結合されうる円形の二重鎖DNAループを意味する。他の型のベクターはファージベクターである。他の型のベクターはウイルスベクターであり、付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムへ結合させうる。所定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内において自己複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターとエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、宿主ゲノムと共に複製する。更に、所定のベクターは、それらが作用可能に結合している遺伝子の発現を指令し得る。このようなベクターはここでは「組換え発現ベクター」(又は単に「組換えベクター」又は「発現ベクター」)と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形をとる。本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」を相互交換可能に使用する場合が多い。
【0041】
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、もしくは合成反応によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立ての前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後に、例えば標識との結合により、さらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態が含まれる。さらに、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体又は半固体支持体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有するアミン又は有機キャップ基部分で置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されてもよい。さらにポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR
2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH
2(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR及びR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0042】
ここで使用される場合、「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長さの、一般的に合成のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
【0043】
「抗体」及び「イムノグロブリン」なる用語は互換性をもって広義な意味で使われ、モノクローナル抗体(例えば完全長又は無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、単価抗体、多価抗体、多特異性抗体(例えば所望の生物学的活性を示す限りの二重特異性抗体)及び本明細書で記載される抗体断片が含まれる。抗体はヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟したものであり得る。
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療的な使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、抗体は、(1)ローリー法で測定した場合95%を超える抗体、最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに十分なほど、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで十分なほど精製される。抗体の自然環境の少なくとも一の成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツでの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一の精製工程により調製される。
【0044】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の相補性決定領域又は高頻度可変領域(CDR又はHVR、ここでは互換的に使用される)と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つのHVRにより連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖のHVRは、FRによって近接して結合され、他の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, BEthesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞性細胞毒性への抗体の関与を示す。
【0045】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')
2断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
【0046】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。二本鎖のFv種において、この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖の可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv種において、一つの重鎖及び一つの軽鎖の可変ドメインはフレキシブルなペプチドリンカーによって共有結合されて、軽鎖及び重鎖が「二量体」構造類似体内で二本鎖Fv種内のものに結合しうる。この配置において、各可変ドメインの3つのHVRは相互に作用してVH-VL二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
【0047】
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')
2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0048】
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
イムノグロブリンの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、イムノグロブリンは異なるクラスが割り当てられる。イムノグロブリンには5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、及びIgA
2等のサブクラス(アイソタイプ)に分かれる。イムノグロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。イムノグロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
【0049】
「抗体断片」は完全な抗体の一部のみを含んでなるものであり、その一部は、完全な(インタクトな)抗体に存在する場合のその一部に通常関連する機能の少なくとも一、好ましくはその機能のほとんどないしはすべてを保持することが好ましい。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子;及び、抗体断片から形成される多特異性抗体が含まれる。一実施態様では、抗体断片は完全な抗体の抗原結合部位を含んでなるために、抗原結合能を有する。他の実施態様では、抗体断片は、例えばFc領域を含んでなるものは、完全な抗体に存在する場合のFc領域に通常関連する生物学的な機能、例えばFcRn結合、抗体半減期の調節、ADCC機能及び補体結合の少なくとも一を保持する。一実施態様では、抗体断片は、完全な抗体と実質的に類似したインビボ半減期を有する一価性抗体である。例えば、このような抗体断片は、インビボ安定性を断片に与えることができるFc配列に結合した抗原結合アームを含んでもよい。
【0050】
ここで使用される「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、配列において高頻度可変であり、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は6つのHVRを含み;VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)である。天然の抗体では、H3及びL3は6つのHVRのうちで最も高い多様性を示す、特にH3は抗体に良好な特異性を与える際に特有の役割を果たすように思われる。例として、Xu等 (2000) Immunity 13:37-45;Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ)のJohnson and Wu (2003)を参照。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科の抗体は機能的であり、軽鎖が無い状態で安定である。Hamers-Casterman等 (1993) Nature 363:446-448;Sheriff等 (1996) Nature Struct. Biol. 3:733-736。
多数のHVRの描写が使用され、ここに含まれる。カバット相補性決定領域(CDR)は配列変化に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、カバットHVRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRのそれぞれからの残基を以下に示す。
ループ カバット AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B (カバット番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35 (Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0051】
HVRは、次のような「拡大HVR」を含むことができる、即ち、VLの24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)と、VHの26−35(H1)、50−65又は49−65(H2)及び93−102、94−102、又は95−102(H3)である。可変ドメイン残基には、これら各々を規定するために、上掲のKabat等に従って番号を付した。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここで定義する高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0052】
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び/又は能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRが、ヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一又は典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、例えばJones等, Nature 321:522-525(1986);Riechmann等, Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596(1992)を参照のこと。また例としてVaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle及びGross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);米国特許第6982321号及び同第7087409号も参照のこと。
【0053】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はここで開示されたヒト抗体を製造するための何れかの技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を除く。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む、当該分野で知られている様々な技術を使用して生産することが可能である。Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)。また、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boerner et al., J. Immunol., 147(1): 86-95 (1991)において記述される方法は、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用できる。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)も参照のこと。抗原刺激に応答して抗体を産生するように修飾されているが、その内在性遺伝子座が無効になっているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによってヒト抗体を調製することができる(例として、XENOMOUSE
TM技術に関する米国特許第6075181号及び同第6150584号を参照)。また、例えば、ヒトのB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されるヒト抗体に関するLi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)も参照のこと。
【0054】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在しうる可能性がある突然変異、例えば自然に生じる突然変異を除いて同一である。従って、「モノクローナル」との形容は、個別の抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。ある実施態様では、このようなモノクローナル抗体は、通常、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、この場合、標的に結合するポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスにより得られる。例えば、この選択プロセスは、雑種細胞クローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールのような複数のクローンからの、唯一のクローンの選択とすることができる。重要なのは、選択された標的結合配列を更に変化させることにより、例えば標的への親和性の向上、標的結合配列のヒト化、細胞培養液中におけるその産生の向上、インビボでの免疫原性の低減、多選択性抗体の生成等が可能になること、並びに、変化させた標的結合配列を含む抗体も、本発明のモノクローナル抗体であることである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体の調製物とは異なり、モノクローナル抗体の調製物の各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体の調製物は、それらが他の免疫グロブリンで通常汚染されていないという点で有利である。
「モノクローナル」との形容は、抗体の、実質的に均一な抗体の集団から得られたものであるという特性を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は様々な技術によって作製することができ、それらの技術には、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495-97 (1975);Hongo等, Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995);Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988);Hammerling等: Monoclonal Antibodies and T-Cell hybridomas 563-681 (Elsevier, N. Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1992);Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004);Lee等, J. Mol. Biol. 340(5);1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);及びLee等, J. Immounol. Methods 284(1-2): 119-132 (2004))、並びに、ヒト免疫グロブリン座位の一部又は全部、或るいはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子を有する動物にヒト又はヒト様抗体を生成する技術(例えば、国際公開第98/24893号;国際公開第96/34096号;国際公開第96/33735号;国際公開第91/10741号;Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362: 255-258 (1993);Bruggemann等, Year in Immunol. 7:33 (1993);米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;同第5661016号; Marks等, Bio.Technology 10: 779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature 368: 812-813 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnol. 14: 845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnol. 14: 826 (1996)及びLonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)参照)が含まれる。
【0055】
ここでモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致する又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部であり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致するか又は類似するものである(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855(1984))。キメラ抗体には、抗体の抗原結合領域が例えば対象の抗原をマカクザルに免疫投与することによって作製される抗体に由来している、PRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれる。
【0056】
「多特異性抗体」なる用語は、広義の意味で用いられ、具体的にはポリエピトープ特異性を有する抗体を包含する。このような多特異性抗体には、限定するものではないが、重鎖可変ドメイン(V
H)及び軽鎖可変ドメイン(V
L)を含む抗体(このときV
HV
Lユニットは多エピトープ特異性を有するものである)、2以上のV
LおよびV
Hドメインを有し、各々のV
HV
Lユニットが異なるエピトープに結合する抗体、2以上の単一可変ドメインを有し、各々の単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する抗体、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディおよびテトラボディのような抗体断片、共有的又は非共有的に結合した抗体断片が含まれる。一実施態様によると、多特異性抗体は、5μM〜0.001pM、3μM〜0.001pM、1μM〜0.001pM、0.5μM〜0.001pM、又は0.1μM〜0.001pMの親和性で各エピトープに結合するIgG抗体である。
「多エピトープ特異性」は、同じ又は異なる抗原(一又は複数)上の2以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。例えばここで用いる「二重特異性」は2つの異なるエピトープを結合する能力を指す。「単一特異性」は唯一のエピトープを結合する能力を指す。
「単一ドメイン抗体」(sdAb)又は「単一可変ドメイン(SVD)抗体」なる表現は、一般に、単一の可変ドメイン(VH又はVL)が抗原結合を与えうる抗体を指す。換言すれば、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために他の可変ドメインと相互作用する必要はない。単一ドメイン抗体の例には、ラクダ科(ラマおよびラクダ)および軟骨魚(例えばテンジクザメ)由来のもの、および、ヒトおよびマウス抗体由来の組換え方法から得られるもの(Nature (1989) 341:544-546; Dev Comp Immunol (2006) 30:43-56;Trend Biochem Sci (2001) 26:230-235;Trends Biotechnol (2003):21:484-490;国際公開公報2005/035572;国際公開公報03/035694;Febs Lett (1994) 339:285-290;国際公開公報00/29004;国際公開公報02/051870)。
【0057】
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。通常、scFvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
「抗原」とは、抗体が選択的に結合できる既定の抗原である。標的抗原はポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、又は他の自然に生じる又は合成化合物である。
【0058】
「ダイアボディ」なる用語は、2つの抗原結合部位を持つ小抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(VH−VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で2つのドメインの対形成が可能であるリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、2つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディは二価でも二特異性であってもよい。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号;Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。トリアボディ及びテトラボディもまたHudson等 (2003) Nat. Med. 9:129-134に記載されている。
【0059】
「カバット(Kabat)による可変ドメイン残基番号付け」又は「カバットに記載のアミノ酸位番号付け」なる用語及びその異なる言い回しは、上掲のKabat 等の抗体の編集の軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインに用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVR内の短縮又は挿入に相当する2、3のアミノ酸又は付加的なアミノ酸を含みうる。例えば、重鎖可変ドメインには、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えばカバットによる残基82a、82b及び82cなど)と、H2の残基52の後に単一アミノ酸の挿入(Kabatによる残基52a)を含んでもよい。残基のKabat番号は、「標準の」カバット番号付け配列によって抗体の配列の相同領域でアライメントすることによって与えられる抗体について決定してもよい。
カバット番号付けシステムは一般に、可変ドメイン内の残基を指す場合に用いられる(軽鎖のおよそ残基1−107及び重鎖の残基1−113)(例えばKabat et al., Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」は一般に、イムノグロブリン重鎖定常領域を指す場合に用いられる(例えば上掲のKabat et al.において報告されたEUインデックス)。「カバットにおけるEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号の参照は、カバット番号付けシステムによって番号付けする残基を意味する。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号の参照は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する(例えば、米国特許仮出願第60/640323のEU番号付けに関する図を参照のこと)。
「ブロック(遮断)」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低減するものである。あるブロック抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的ないしは完全に阻害する。
【0060】
ここで用いる「実質的に類似」、「実質的に同じ」なる用語は、当業者が2つの数値(例えば、本発明の抗体に関連するもの、及び参照/比較抗体に関連する他のもの)の差異に、該値(例えばKd値)によって測定される生物学的性質上わずかに又は全く生物学的及び/又は統計学的有意差がないと認められるほど、2つの数値が有意に類似していることを意味する。前記2つの値間の差異は、参照/比較値の例えば約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、及び/又は約10%以下である。
ここで用いる「実質的に低減する」又は「実質的に異なる」という句は、当業者が2つの数値(一般に、分子に関連するもの、及び参照/比較分子に関連する他のもの)の差異に、該値(例えばKd値)によって測定される生物学的性質上統計学的に有意であると認められるほど、2つの数値が有意に異なっていることを意味する。前記2つの値間の差異は、参照/比較分子の値の、例えば約10%より大きく、約20%より大きく、約30%より大きく、約40%より大きく、及び/又は約50%より大きい。
【0061】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害;Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
「Fc領域」なる用語は、天然配列Fc領域及び変異形Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226の位置又はPro230からの位置のアミノ酸残基からFc領域のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば、抗体の産生又は精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え遺伝子操作することによって取り除かれてもよい。したがって、インタクト抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体群、K447残基が除去されていない抗体群、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合を含む抗体群を含みうる。
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的「エフェクター機能」には、C1q結合、補体依存性細胞障害作用(CDC)、Fcレセプター結合、抗体依存性細胞媒介性細胞障害作用(ADCC)、食作用、細胞表面レセプター(例えばB細胞レセプター;BCR)の下方制御などが含まれる。そのようなエフェクター機能は、通常、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わさることを必要とし、例えば本明細書中の定義に開示される様々なアッセイを使用して評価される。
【0062】
「天然配列のFc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を包含する。天然配列のヒトFc領域は、天然配列のヒトIgG1Fc領域(非A-及びA-アロタイプ);天然配列のヒトIgG2Fc領域;天然配列のヒトIgG3Fc領域;及び天然配列のヒトIgG4Fc領域;並びに、これらの自然に生じる変異体が含まれる。
「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは一又は複数のアミノ酸置換により、天然配列のFc領域とは異なるアミノ酸配列を包含するものである。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列のFc領域もしくは親ポリペプチドのFc領域と比較した場合、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列のFc領域又は親のポリペプチドのFC領域におよそ1からおよそ10のアミノ酸置換、好ましくはおよそ1からおよそ5のアミノ酸置換を有する。本明細書中の変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列のFc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と、少なくともおよそ80%の同一性を有するか、最も好ましくは少なくともおよそ90%の配列同一性を、より好ましくは少なくともおよそ95%の配列又はそれ以上の同一性を有するものであろう。
【0063】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するものである。ある実施態様では、FcRは天然のヒトFcRである。ある実施態様では、FcRはIgG抗体(ガンマレセプター)を結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif;ITIM)を含んでいる(例としてDaeron, Annu. Rev. immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRに関しては、 例としてRavetch and Kinet, Annu.Rev. Immunol. 9:457-492 (1991);Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haas等, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に概説されている。今後同定されるものも含め、他のFcRも本明細書中の「FcR」なる用語に包含される。
【0064】
また、「Fcレセプター」又は「FcR」なる用語には、母性IgGの胎児への移送と(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976) Kim等, J. Immunol.24:249 (1994))、免疫グロブリンのホメオスタシスの調節を担う新生児性レセプターFcRnも含まれる。FcRnへの結合の測定方法は公知である(例としてGhetie and Ward., Immunol. Today 18(12):592-598 (1997);Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997);Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004):国際公開2004/92219(Hinton et al.)を参照)。
インビボでのヒトFcRnへの結合とヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス又は形質転換されたヒト細胞株、又は変異体Fc領域を有するポリペプチドを投与された霊長類動物においてアッセイすることができる。国際公開公報00/42072(Presta)および米国特許出願12/577967(Lowman) にFcRへの結合を向上又は減弱させた抗体変異型が述べられている。例としてShields等, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)も参照のこと。
【0065】
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。ある実施態様では、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが望ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれる。エフェクター細胞は天然源、例えば血液から単離してもよい。
【0066】
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcR)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原-担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞障害性の形態を意味する。ADCCを媒介する主要な細胞NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性をアッセイするために、米国特許第5500362号又は同第5821337号又は同第6737056号(Presta)に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等, (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
【0067】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。Fc領域アミノ酸配列を変更して(変異体Fc領域を有するポリペプチド)C1q結合能力が増大又は減少したポリペプチド変異体は、例として米特許第6194551号B1及び国際公開公報99/51642に記述される。また例としてIdusogie 等 J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)を参照のこと。
【0068】
「Fc領域含有抗体」なる用語は、Fc領域を含む抗体を指す。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムに従うと残基447)は、例えば、抗体の精製中又は抗体をコードする核酸を組み換え操作することによって除去してもよい。したがって、本発明のFc領域を有する抗体を含んでなる組成物は、K447を有する抗体、すべてのK447が除去された抗体、又はK447残基を有する抗体とK447残基を有さない抗体の混合を包含しうる。
【0069】
本願明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークから得られるVL又はVHフレームワークのアミノ酸配列を含有するフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「から得られる」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含有するか、又は既存のアミノ酸配列変化を含有してもよい。既存のアミノ酸変化が存在する場合、好ましくは5以下及び好ましくは4以下、又は3以下の、既存のアミノ酸変化が存在する。既存のアミノ酸変化がVH中に存在する場合、好ましくは、それらの変化は位置71H、73H及び78Hの内の3つ、2つ又は1つのみ起こり、例えば、それらの位置のアミノ酸残基は、71A、73T及び/又は78Aであってよい。一実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0070】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選別において、最も共通して生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列は、可変ドメイン配列のサブグループから選別する。通常、Kabat等によると、配列のサブグループはサブグループである。一実施態様では、VLについて、Kabat等によると、前記サブグループはサブグループκIVである。一実施態様では、VHについて、Kabat等によると、前記サブグループはサブグループIである。「VHサブグループIコンセンサスフレームワーク」は、Kabat等の可変重鎖サブグループIのアミノ酸配列由来のコンセンサス配列を含む。
「VHサブグループIコンセンサスフレームワーク」は、Kabat等の可変重鎖サブグループIのアミノ酸配列由来のコンセンサス配列を含む。
「VHサブグループIIIコンセンサスフレームワーク」は、Kabat等の可変重鎖サブグループIIIのアミノ酸配列由来のコンセンサス配列を含む。
「VLサブグループIVコンセンサスフレームワーク」は、Kabat等の可変軽鎖κサブグループIVのアミノ酸配列由来のコンセンサス配列を含む。
「VLサブグループIコンセンサスフレームワーク」は、Kabat等の可変軽鎖κサブグループIのアミノ酸配列由来のコンセンサス配列を含む。
【0071】
「医薬」とは、問題としている疾病又はそれ症状又は副作用を治療するための活性薬物である。
「疾病」又は「疾患」は、本発明の物質/分子又は方法を用いた治療によって利益を得る任意の症状である。これには、問題とする疾患に哺乳動物がかかりやすくなる病理学的症状を含む慢性及び急性の疾病又は疾患を含む。限定的なものではなく、ここで治療する疾患の例には、悪性及び良性の腫瘍;癌腫、芽腫及び肉腫が含まれる。
疾患の「病的状態」には、患者の幸福を損なうすべての現象が含まれる。癌では、異常な又は制御不能の細胞増殖、転移、隣接細胞の通常の機能への干渉、異常なレベルのサイトカイン又は他の分泌生成物の放出、炎症性ないし免疫学的応答の抑圧現象又は悪化などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
「細胞増殖性疾患(障害)」及び「増殖性疾患(障害)」なる用語は、異常な細胞増殖にある程度関連している疾患を意味する。一実施態様では、細胞増殖性疾患は癌である。
本明細書中の「腫瘍」とは、悪性か良性かにかかわらず、すべての腫瘍性細胞成長及び増殖と、すべての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。「癌」」「癌性」「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」及び「腫瘍」なる用語は、本明細書に参照されるように相互に限定的なものでない。
【0072】
「癌」及び「癌性」なる用語は、一般的に調節不可能な細胞成長/増殖に特徴がある哺乳動物の生理学的状態を指すか又は表す。癌の例には、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が含まれるが、これに限定されるものではない。このような癌のより具体的な例には、扁平細胞癌、小細胞肺癌、下垂体癌、食道癌、星状細胞腫、軟組織肉腫、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞性癌、胃腸癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮上皮癌、唾液腺上皮癌、腎臓癌、腎性癌、肝癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝臓癌、脳癌、子宮体癌、精巣癌、胆管癌、胆嚢カルチノーマ、胃癌、メラノーマ、及び様々なタイプの頭頸部癌が含まれる。
血管新生の調節不全により、本発明の組成物及び方法により治療されうる多くの疾患が引き起こされうる。これらの疾患には、非腫瘍性及び腫瘍性の両方の状態が含まれる。腫瘍性状態には上記のものが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0073】
本発明の抗体および抗体断片による治療に適する非腫瘍性の状態には、限定するものではないが、例えば、望ましくない又は異常な肥大、良性前立腺肥大、炎症性の痛みを含む疼痛(急性および慢性)、関節炎、関節リウマチ(RA)、乾癬の関節炎、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、AIDS関連の痴呆、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、脊髄筋萎縮および小脳変性)、自己免疫性疾患、乾癬、乾癬のプラーク、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化、アテローム硬化性プラーク、橋本甲状腺炎、血管形成疾患、眼性疾患、例えば推定眼ヒストプラスマ症候群、網膜脈管化、未熟児の網膜症を含む糖尿病性および他の増殖性の網膜症、糖尿病性ネフロパシ、水晶体後繊維増殖、血管新生緑内障、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、角膜血管新生、角膜移植片血管新生、角膜移植片拒絶、網膜/脈絡叢血管新生、虹彩(angle)の血管新生(ルベオーシス)、眼性新生血管疾患、血管系疾患、血管性上皮細胞の異常な増殖を伴う状態、血管性再狭窄、ギラン-バレー症候群、大腸ポリープ、家族性腺腫症ポリポーシス、鼻ポリープ又は胃腸ポリープのようなポリープ、胃腸潰瘍、幼児の肥大性先天性幽門閉塞、泌尿器閉塞性症候群、メネトリエ病、分泌腺腫又はタンパク質喪失症候群、線維腺腫、呼吸器疾患、胆嚢炎、神経線維腫症、動静脈奇形(AVM)、髄膜腫、血管腫、アンギオ線維腫、甲状腺過形成(グレイブス病を含む)、角膜および他の組織移植、炎症性疾患、慢性炎症、肺炎症、急性肺損傷/ARDS、敗血症、慢性閉塞性肺疾患、原発性肺高血圧症、悪性肺滲出、アテローム、熱傷、外傷、放射線、脳卒中、酸素圧低下又は乏血後の浮腫、心筋梗塞由来の浮腫、虚血傷害、大脳虚血性現象後の損傷、大脳浮腫(例えば、急性脳卒中/非開放性頭部損傷/外傷と関係するもの)、血小板凝集によって生じた血栓、線維形成性又は浮腫性疾患、例えば肝硬変、肺線維形成、サルコイドーシス、甲状腺炎(throiditis)、全身過粘稠度症候群、滑液炎症、RAのパンヌス形成、骨化性筋炎、肥大性骨形成、骨関節炎、くる病および骨粗鬆症のような骨関連病態、抵抗性腹水、骨又は関節の炎症、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、腎臓又は肝臓;T細胞媒介性過敏性症候群、パジェット病、多発性嚢胞腎、体液疾患の第三区画(膵炎、区画症候群、熱傷、腸疾患)、IBD(クローン病および潰瘍性大腸炎)のような慢性の炎症、腎臓疾患、腎臓同種異系移植片拒絶反応、移植片対宿主病又は移植拒絶反応、炎症性腸疾患、急性および慢性のネフロパシ(増殖性糸球体腎炎および糖尿病が引き起こす腎疾患を含む)、ネフローゼ症候群、望ましくない又は異常な組織質量増殖(非癌)、肥満、脂肪組織質量増殖、出血性関節、肥厚性瘢痕、体毛増殖の抑制、オスラーウェーバー-ランデュ症候群、化膿肉芽腫水晶体後線維増殖、強皮症、トラコーマ、血管接着、関節滑膜炎、皮膚の過敏性反応、乾癬および皮膚炎を含む皮膚疾患、湿疹、光老化(例えば、ヒトの皮膚の紫外線によって生じるもの)、肥大性瘢痕形成、子宮内膜症、卵巣過刺激症候群、多嚢胞性卵巣疾患、子癇前症、機能障害性子宮出血又は機能性子宮出血のような生殖系の状態、子宮類線維腫、早産、腹水、心嚢貯留液(例えば、心外膜炎と関係するもの)、胸水、内毒素ショックおよび真菌感染、アデノウイルス、ハンタウイルス、ライム病ボレリア、エルシニアspp.、ボルデテラ‐ペルツッシスから選択される微生物病原体を含む特定の微生物感染、および精神的な疾患(例えば統合失調症、二極性の抑鬱、自閉症および注意力欠陥障害)が含まれる。
【0074】
「前癌性」なる用語は、典型的に癌に進行する又は癌に発達する症状ないし成長を指す。「前癌性の」成長は、細胞周期調節、細胞性増殖又は分化のマーカーによって測定されうる、異常な細胞周期調節、増殖又は分化によって特徴が示される細胞を有する。
「形成異常」は、組織、臓器又は細胞の任意の異常な成長ないしは発達を意味する。ある実施態様では、形成異常は高いグレードであるか、前癌性である。
「転移」とは、その原発性部位から体の他の場所への癌の蔓延を意味する。癌細胞は、原発性腫瘍から切り離れ、リンパ管および血管へ浸透し、血流を循環し、身体の至る所の正常組織の離れた病巣で成長しうる(転移)。転移は局所又は遠位でありうる。転移は経時的な過程であり、原発性腫瘍から切り離れ、血流を駆けめぐり、遠位部位に止まる腫瘍細胞に付随するものである。新たな部位で、細胞は、血液供給を確立し、成長して生命を脅かす体積を形成しうる。ある実施態様では、転移性腫瘍なる用語は、転移性であるが身体中の至る所の組織又は臓器には転移していない腫瘍を指す。ある実施態様では、転移性腫瘍なる用語は、身体中の至る所の組織又は臓器には転移している腫瘍を指す。
腫瘍細胞内の刺激性分子および阻害性分子の経路はこの作用を制御するものであり、腫瘍細胞と遠位部位の宿主細胞との間の相互作用も有意である。
「非転移性」とは、良性である癌、又は原発部位に止まり、リンパ管や血管系ないしは原発部位以外の組織に浸透しない癌を意味する。一般的に、非転移性癌は、ステージ0、I又はIIの癌、場合によってステージIIIの癌のいずれかの癌である。
【0075】
ここでいう「前転移性臓器」又は「前転移性組織」は、原発性腫瘍から又は身体の他の部位から癌細胞が検出されていない臓器又は組織を指す。ある実施態様では、ここでいう前転移性臓器又は前転移性組織は、原発性腫瘍から又は身体の他の部位からこの臓器又は組織への癌細胞の蔓延が起こる前の段階にある臓器又は組織を指す。前転移性臓器又は前転移性組織の例には肺、肝臓、脳、卵巣、骨および骨髄が含まれるがこれらに限定されない。
「原発性腫瘍」又は「原発性癌」は元の癌を意味し、被検体の身体の他の組織、臓器又は部位に位置する転移性病巣を意味しない。
「転移性臓器」又は「転移性組織」は広義の意味で用いられ、原発性腫瘍から又は身体の他の部位から癌細胞が蔓延した臓器又は組織を指す。転移性臓器又は転移性組織の例には肺、肝臓、脳、卵巣、骨および骨髄が含まれるがこれらに限定されない。
ここでの「癌再発」は、治療の後に癌が回復することを指し、原発性臓器での癌の回復だけでなく、癌が原発性臓器以外で回復する遠位性再発も包含する。
【0076】
「腫瘍量」は、体内の癌細胞の数、腫瘍のサイズ、又は癌の量を意味する。また、腫瘍量(tumor burden)は腫瘍負荷(tumor load)とも称される。
「腫瘍数」は腫瘍の数を意味する。
【0077】
ここで使用されるところの「治療」は、治療されている個体又は細胞の天然の過程を改変するための臨床的介入を意味し、予防のため又は臨床的病理の過程中に実施することができる。治療の望ましい効果には、疾病の発生又は再発の防止、症状の寛解、疾病の任意の直接的又は間接的病理的結果の低減、転移の防止、疾病の進行速度の低減、疾病状態の回復又は緩和、及び寛解又は改善された予後が含まれる。ある実施態様では、本発明の抗体は疾患又は疾病の進行を遅らせるために用いられる。
【0078】
「抗新生物性組成物」なる用語は、少なくとも一の活性な治療剤、例えば「抗癌剤」を含む癌の治療に有用な組成物を指す。治療剤(抗癌剤)の例には、限定するものではないが、例えば化学療法剤、増殖阻害剤、細胞障害性剤、放射線療法において使用する薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及び癌を治療するための他の薬剤、例えば抗HER-2抗体、抗CD20抗体、上皮性増殖因子レセプター(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼインヒビター)、HER1/EGFRインヒビター(例えば、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、血小板由来増殖因子インヒビター(Gleevec
TM(メシル酸イマチニブ))、COX-2インヒビター(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA又はVEGFレセプターの一又は複数の標的に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)、TRAIL/Apo2、及び他のバイオ活性がある有機化学的薬剤などが含まれる。それらの組合せも本発明に包含される。
【0079】
「抗癌治療」なる用語は、癌の治療において有用な治療を意味する。抗癌治療剤の例には、限定されるものではないが、例えば化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害剤、放射治療に使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及び癌を治療する他の薬剤、例えば抗HER-2抗体、抗CD20抗体、上皮性増殖因子レセプター(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼインヒビター)、HER1/EGFRインヒビター(例えば、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、血小板由来増殖因子インヒビター(Gleevec
TM(メシル酸イマチニブ))、COX-2インヒビター(例えば、セレコキシブ)、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ、Imclone)、インターフェロン、サイトカイン、ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA又はVEGFレセプターの一又は複数の標的に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)、TRAIL/Apo2、及び他のバイオ活性がある有機化学的薬剤などが含まれる。その組合せも本発明に含まれる。
【0080】
「放射線治療」とは、細胞の正常に機能する能力を制限し、破壊させるために、細胞に十分なダメージを誘発させる、定方向ガンマ線又はベータ線を使用することを意味する。線量及び治療時間を決定するために、当該分野で知られている多くの方法が存在すると理解されるであろう。典型的な治療法は、1日当たり10〜200単位(グレイ)の範囲の典型的線量、及び一回投与が付与される。
【0081】
本明細書中で用いる「VEGF」又は「VEGF-A」なる用語は、Leung et al. Science, 246:1306 (1989)、及びHouck et al. Mol. Endocrin., 5:1806 (1991)によって記載されているように、165アミノ酸の血管内皮細胞増殖因子と、関連した121-、189-、及び206-アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子、並びにそれらの天然に生じる対立遺伝子型及びプロセシング型を意味する。また、「VEGF」は、マウス、ラット又は霊長類などの非ヒト動物腫由来のVEGFも意味する。特定の種由来のVEGFは、ヒトVEGFはhVEGF、マウスVEGFはmVEGFなどの用語で表されることが多い。また、「VEGF」なる用語は、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸8〜109、又は1〜109を含むポリペプチドの切断型を意味するために用いられる。そのようなVEGF型を指すときは、本明細書では、例えば、「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」、「VEGF
109」又は「VEGF165」と表す。「切断した(切断型の)」天然のVEGFのアミノ酸位置は、天然のVEGF配列に示される数で示す。例えば、切断型の天然VEGFのアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然のVEGF中の位置17(メチオニン)でもある。切断型の天然VEGFは天然のVEGFに匹敵するKDR及びFlt−1レセプター結合親和性を有する。
【0082】
「VEGFアンタゴニスト」は、限定するものではないが一又は複数のVEGFレセプターへの結合を含むVEGF活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減又は干渉することができる分子を指す。VEGFアンタゴニストには、抗VEGF抗体及びその抗原結合性断片、レセプター分子及び一又は複数のレセプターへの結合を隔離することによってVEGFに特異的に結合する誘導体、抗VEGFレセプター抗体及びVEGFレセプターアンタゴニスト、例えばVEGFRチロシンキナーゼの小分子インヒビター、およびVEGF TrapなどのVEGFに結合するイムノアドヘシンが含まれる。ここで用いる「VEGFアンタゴニスト」なる用語には、具体的には、VEGFに結合し、VEGF活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減又は干渉することができる抗体、抗体断片、他の結合ポリペプチド、ペプチド、および非ペプチド小分子を含む分子が含まれる。よって、「VEGF活性」なる用語には、具体的にはVEGFのVEGF媒介性生物学的活性が含まれる。
【0083】
VEGFポリペプチドに関する「生物学的な活性」及び「生物学的に活性」なる用語は、完全長および/又は切断型のVEGFに関連する物理的/化学的性質及び生物学的機能を指す。ある実施態様では、VEGF活性は、血管形成を誘導および/又は刺激および/又は促している。ある実施態様では、VEGF活性は、血管新生を誘導および/又は刺激および/又は促している。ある実施態様では、VEGF活性は、血管透過性を誘導および/又は調節している。ある実施態様では、VEGF活性は、内皮細胞移動および/又は内皮細胞増殖を誘導および/又は刺激および/又は促している。
抗VEGF中和抗体はヌードマウスの様々なヒト腫瘍細胞株の増殖を抑制し(Kim等, Nature 362:841-844 (1993);Warren等, J. Clin. Invest. 95:1789-1797 (1995);Borgstrom等, Cancer Res. 56: 4032-4039 (1996);Melnyk等, Cancer Res. 56: 921-924 (1996))、更に、虚血性網膜疾患のモデルの眼内血管新生も阻害する。Adamis等, Arch. Ophthalmol. 114:66-71 (1996)。
【0084】
「抗VEGF抗体」又は「VEGFに結合する抗体」なる用語は、抗体がVEGFを標的とした診断上の薬剤及び/又は治療上の薬剤として有用であるために十分な親和性と特異性を有してVEGFに結合することができる抗体を指す。例えば、本発明の抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患及び症状を標的とし、干渉する際の治療上の薬剤として有用でありうる。例として米国特許第6582959号、同第6703020号;国際公開第98/45332号;国際公開第96/30046号;国際公開第94/10202号、国際公開第2005/044853号;;欧州特許第0666868号B1;米国特許公開第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、同第20050112126号、同第20050186208号及び同第20050112126号;Popkov等, Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004);及び国際公開第2005012359号を参照のこと。選択した抗体は通常、VEGFに対して十分に強い結合親和性を有する。例えば、抗体は100nM−1pMの間のK
d値でhVEGFを結合しうる。抗体親和性は、例えば、表面プラスモン共鳴をベースとしたアッセイ(PCT出願公開番号WO2005/012359に記載のあるBIAcoreアッセイなど);酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);及び、競合アッセイ(例えばRIAのもの)によって決定されうる。例えば治療としての有効性を評価するために、抗体を他の生物学的な活性アッセイに用いてもよい。このようなアッセイは当分野で公知であり、標的抗原と抗体の使用目的に依存する。例として、HUVEC阻害アッセイ;腫瘍細胞増殖阻害アッセイ(例えば国際公開第89/06692号に記載のもの);抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体媒介性細胞障害(CDC)アッセイ(米国特許第5500362号);及び、アゴニスト活性又は造血アッセイ(国際公開第95/27062号を参照)などがある。抗VEGF抗体は通常、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D又はVEGF-Eなどの他のVEGFホモログにも、PlGF、PDGF又はbFGFなどの他の増殖因子にも結合しないだろう。一実施態様では、抗VEGF抗体には、ハイブリドーマATCC HB 10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体;組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体(Presta等 (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599)であり、限定するものではないが「ベバシズマブ(BV)」とも「rhuMAb VEGF」又は「AVASTIN(登録商標)」としても知られる抗体が含まれる。AVASTIN(登録商標)は現在市販されている。ベバシズマブは、ヒトVEGFのそのレセプターへの結合をブロックするマウス抗体A.4.6.1から、変異したヒトのIgG
1フレームワーク領域と抗原結合性相補性決定領域を含む。フレームワーク領域のほとんどを含め、ベバシズマブのアミノ酸配列のおよそ93%は、ヒトのIgG
1に由来し、配列のおよそ7%はA4.6.1に由来する。ベバシズマブは、およそ149000のダルトンの分子量を有し、グリコシル化されている。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日に発行の米国特許第6884879号にさらに記載されている。PCT出願公開番号WO2005/012359に記載のあるように、更なる抗VEGF抗体には、G6又はB20系列抗体(例えば、G6-23、G6-31、B20-4.1)が含まれる。さらに好適な抗体については、米国特許第7060269号、同第6582959号、同第6703020号;同第6054297号;国際公開第98/45332号;国際公開第96/30046号;国際公開第94/10202号;欧州特許第0666868号B1;米国特許公開第2006009360号、同第20050186208号、同第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、及び同第20050112126号;及び、Popkov等, Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004)を参照のこと。
【0085】
本明細書で使用する場合「B20シリーズのポリペプチド」なる用語は、VEGFに結合する抗体を含めて、ポリペプチドを指す。B20シリーズのポリペプチドとして、これらに限定されないが、米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号および/または米国特許出願公開第20070020267号に記載されているB20抗体またはB20由来の抗体の配列から得た抗体が挙げられ、これらの特許出願の内容は、出典明記により本明細書に明確に援用される。一実施形態では、B20シリーズのポリペプチドは、米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号および/または米国特許出願公開第20070020267号に記載されているB20−4.1である。別の実施形態では、B20シリーズのポリペプチドは、PCT公開第WO2009/073160号に記載されているB20−4.1.1であり、この開示の全体が、出典明記により本明細書に明確に援用される。
【0086】
本明細書で使用する場合「G6シリーズのポリペプチド」なる用語は、VEGFに結合する抗体を含めて、ポリペプチドを指す。G6シリーズのポリペプチドとして、これらに限定されないが、米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号および/または米国特許出願公開第20070020267号に記載されているG6抗体またはG6由来の抗体の配列から得た抗体が挙げられる。米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号および/または米国特許出願公開第20070020267に記載されているG6シリーズのポリペプチドとして、これらに限定されないが、G6〜8、G6〜23およびG6〜31が挙げられる。
【0087】
「血管形成因子又は薬剤」は、血管の発達を刺激するのに伴う、例えば脈管形成、血管内皮細胞増殖、血管の安定性および/または脈管形成などを促進する増殖因子又はそのレセプターである。例えば、血管形成因子には、例えば、VEGFおよびVEGFファミリのメンバー(VEGF-B、VEGF-CおよびVEGF-D)、PlGF、PDGFファミリ、線維芽細胞増殖因子ファミリ(FGF)、TIEリガンド(アンギオポイエチン)、エフリン、デルタ様リガンド4 (DLL4)、Del-1、線維芽細胞増殖因子:酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF)、ホリスタチン、顆粒性コロニー刺激因子(G−CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)/スキャッター因子(SF)、インターロイキン-8(IL-8)、レプチン、ミドカイン、ニューロフィリン、胎盤増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、血小板由来増殖因子、特にPDGF−BB、PDGFR−α又はPDGFR−β、プレイオトロフィン(PTN)、Progranulin、Proliferin、形質転換増殖因子-α(TGF-α)、形質転換増殖因子-β(TGF-β)、腫瘍壊死因子-α(TNFα)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、成長ホルモン、インスリン様増殖因子-I(IGF−I)、VIGF、上皮細胞増殖因子(EGF)、CTGF及びそのファミリのメンバー、およびTGF−αおよびTGF−βなどの、創傷治癒を促進する因子を含むであろう。例として、Klagsbrun and D'Amore (1991) Annu. Rev. Physiol. 53:217-39;Streit and Detmar (2003) Oncogene 22:3172-3179;Ferrara & Alitalo (1999) Nature Medicine 5(12): 1359-1364;Tonini et al. (2003) Oncogene 22:6549-6556(例えば、公知の血管形成因子の一覧を示す表1);及びSato (2003) Int. J. Clin. Oncol. 8:200-206を参照。
【0088】
「抗血管形成剤」又は「血管形成(血管新生)インヒビター」は、直接的又は間接的に、血管新生、脈管形成又は望ましくない血管透過を阻害する、小分子量の物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離したタンパク質、組換えタンパク質、抗体、又はそれらのコンジュゲート又は融合タンパク質を意味する。例えば、抗血管形成剤は、上記に定義したように血管形成剤に対する抗体又は他のアンタゴニスト、例えば、VEGFに対する抗体、VEGFレセプターに対する抗体、VEGFレセプターシグナル伝達を遮断する小分子(例えば、PTK787/ZK2284、SU6668、SUTENT(登録商標)/SU11248(sunitinib malate)、AMG706)である。また、抗血管形成剤には、天然の血管形成インヒビター、例えばアンジオスタチン、エンドスタチンなどが含まれる。例えば、Klagsbrun and D'Amore (1991) Annu. Rev. Physiol. 53:217-39;Streit and Detmar (2003) Oncogene 22:3172-3179(例えば、悪性メラノーマにおける抗血管形成療法の一覧を示す表3);Ferrara & Alitalo (1999) Nature Medicine 5(12): 1359-1364;Tonini et al. (2003) Oncogene 22:6549-6556(例えば、抗血管形成因子の一覧を示す表2);及び、Sato (2003) Int. J. Clin. Oncol. 8:200-206(例えば、臨床試験において使用される抗血管形成剤の一覧を示す表1)を参照のこと。ある実施態様では、抗血管形成剤は、抗VEGF抗体(例えばベバシズマブ)等の抗VEGF薬剤である。
【0089】
ここで用いられる「細胞障害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞の破壊を生ずる物質を意味する。この用語は、放射性同位元素(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、及びLuの放射性同位元素)、化学治療薬、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素、抗生物質、及び毒素、例えばその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、そして下記に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌剤を含むように意図されている。他の細胞毒性剤を以下に記載する。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
「毒素」は、細胞の成長又は増殖に対して有害な影響を有する任意の物質である。
【0090】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標登録))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビロール、MARINOL(登録商標));β−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン、及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばNicolaou et al., Angew. Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)参照);CDP323、経口α-4インテグリンインヒビター;ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D−99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、ペメトレキセド(ALIMTA(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELIDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANE
TM)及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナ薬剤、例えばシスプラチン、オキサリプラチン(例えばELOXATIN(登録商標))及びカルボプラチン;チューブリン重合が微小管を形成するのを妨げるビンカ、例えばビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))及びビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド、例えばベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えばBONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロン酸(DIDROCAL(登録商標))、NE−58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロン酸(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、又はリセドロネート(ACTONEL(登録商標));トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC−α、Raf、H−Ras及び上皮増殖因子レセプター(EGF-R)(例えばエルロチニブ(Tarceva
TM));及び細胞増殖を低減するVEGF−A;ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1インヒビター(例えばLURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えばABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU-11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリホシン、COX-2インヒビター(例えばセレコキシブ又はエトリコキシブ)、プロテオゾームインヒビター(例えばPS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;ティピファニブ(R11577);オラフェニブ(orafenib)、ABT510;BCL-2インヒビター、例えばオブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピクサントロン;EGFRインヒビター(下記定義を参照);チロシンキナーゼインヒビター(下記定義を参照);セリン-スレオニンキナーゼインヒビター、例えばラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター、例えばロナファーニブ(SCH6636、SARASAR
TM);及び上述したものの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体、並びに、上記のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略称)、及びFOLFOX(5−FU及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN
TM)を用いる治療計画の略称)が含まれる。
【0091】
本明細書中に定義される化学療法剤には、癌の成長を促しうるホルモンの作用を調節、低減、遮断又は阻害するように働く、「抗ホルモン剤」又は「内分泌治療剤」が含まれる。それらはそれ自体がホルモンであってもよく、限定するものではないが:タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4-ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、及びSERM3等の選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)を含むアゴニスト/アンタゴニスト混合プロファイルを有する抗エストロゲン;アゴニスト特性の無い純抗エストロゲン、例えばフルベストラント(fulvestrant)(FASLODEX(登録商標))及びEM800(このような薬剤はエストロゲンレセプター(ER)二量化をブロック、DNA結合を阻害、ERターンオーバーを増加、及び/又はERレベルを抑制し得る);アロマターゼ阻害剤、ホルメスタン及びエキセメスタン(AROMASIN(登録商標))等のステロイド性アロマターゼ阻害剤、及びアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))及びアミノグルテチミド等の非ステロイド性アロマターゼ阻害剤を含み、及び他のアロマターゼ阻害剤はボロゾール(RIVISOR(登録商標))、メゲストロール酢酸エステル(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、及び4(5)−イミダゾールを含む;黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト、ロイプロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、及びトリプトレリンを含む;性ステロイド、メゲストロール酢酸エステル及びメドロキシプロゲステロン酢酸エステル等のプロゲスチン、ジエチルスチルベストロール及びプレマリン等のエストロゲン、及びフルオキシメステロン、オールトランスレチノイン酸(all transretionic acid)及びフェンレチニド等のアンドロゲン/レチノイドを含む;オナプリストン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERDs);フルタミド、ニルタミド、及びビカルタミド等の抗アンドロゲン;及び上記のものの何れかの製薬的に許容される塩類、酸類又は誘導体;並びに上記のものの2又は複数の組合せが含まれる。
【0092】
ここで用いられる際の「増殖阻害剤」は、細胞(例えば、Bv8を発現している細胞)の増殖をインビトロ又はインビボの何れかで阻害する化合物又は組成物を意味する。従って、増殖阻害剤は、S期で細胞(例えばBv8を発現している細胞)の割合を有意に減少させるものである。増殖阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami et al., (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、例えば13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローン・プーラン ローラー)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル-マイヤー スクウィブ)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果となる脱重合を防ぐことによって微小管を安定化にする。
【0093】
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの完全な化学名は、(8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンである。
【0094】
「Fc領域含有ポリペプチド」なる用語は、Fc領域を含む抗体もしくはイムノアドヘンシン(下記の定義を参照)のようなポリペプチドを指す。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムに従うと残基447)は、例えば、ポリペプチドの精製中又はポリペプチドをコードする核酸を組み換え操作することによって除去してもよい。したがって、本発明のFc領域を有するポリペプチドを含んでなる組成物は、K447を有するポリペプチド集団、すべてのK447が除去されたポリペプチド集団、又はK447残基を有するポリペプチドとK447残基を有さないポリペプチドの混合集団を包含しうる。
【0095】
「個体」、「被検体」、又は「患者」とは脊椎動物である。ある実施態様では、脊椎動物は哺乳類動物である。哺乳類動物は、家畜(例えば、ウシ)、スポーツアニマル、愛玩動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類、マウス、及びラットを含むがこれに限らない。ある実施態様では、哺乳類動物はヒトである。
【0096】
「有効量」とは所望の治療又は予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。
本発明の物質/分子の「治療的有効量」は、例えば個体の疾病ステージ、年齢、性別、及び体重、並びに個体に所望の応答を誘発する物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの能力などの因子に従って変わりうる。また、治療的有効量は物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの任意の毒性又は有害な効果よりも治療的に恩恵のある効果が上回る量を包含する。「予防的有効量」とは所望の予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。典型的には必ずではないが、予防的用量は疾患の初期ステージ又はその前の患者に用いるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないであろう。
【0097】
「不応性(難治性、抵抗性)」とは、治療に対する疾患又は症状の抵抗性又は非応答性を指す(例えば、腫瘍性プラズマ細胞の数が治療が施された場合でも増加する)。特に示さない限り、「不応性」なる用語は、VEGFアンタゴニスト、抗血管形成剤及び化学療法治療を含むがこれに限定しない既存の治療の何れかに対する抵抗性又は非応答性を指す。ある実施態様では、「不応性」なる用語は、VEGFアンタゴニスト、抗血管形成剤及び化学療法治療を含む既存の治療の何れかに対する疾患又は状態の内因的な非応答性を指す。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。
「再発性」とは、以前の罹患状態への患者の病気の逆戻り、特に明らかな回復又は部分的な回復後の症状の復活を指す。ある実施態様では、再発状態は、VEGFアンタゴニスト、抗血管形成剤及び/又は化学療法治療を含むがこれに限定しない既存の治療前の病気への逆戻り又は逆戻りの過程を指す。ある実施態様では、再発状態は、VEGFアンタゴニスト、抗血管形成剤及び/又は化学療法治療を含む癌治療に対する初期強応答前の病気への逆戻り又は逆戻りの過程を指す。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。
【0098】
「効果」なる用語は、ここでは最も広義で使用され、所望の効果を生じせしめるための免疫グロブリン、抗体又はFc融合体タンパク質の能力を意味する。ある実施態様では、効果は、飽和レベルでの免疫グロブリン、抗体又はFc融合タンパク質の最大の観察された効果を意味する。ある実施態様では、効果は免疫グロブリン、抗体又はFc融合タンパク質のEC
50を意味する。ある実施態様では、効果は免疫グロブリン、抗体又はFc融合タンパク質の作用強度を意味する。ある実施態様では、効果は、ここに定義される臨床効果を含む疾患の過程又は期間に対して有益な効果を生じせしめる免疫グロブリン、,抗体又はFc融合タンパク質の能力を意味する。
「EC
50」なる用語は、ベースラインと最大値の間の半分の応答を誘導する免疫グロブリン、抗体又はFc融合タンパク質の濃度を意味する。ある実施態様では、EC
50は、その最大効果の50%が観察される免疫グロブリン、抗体又はFc融合タンパク質の濃度を表す。ある実施態様では、EC
50は、最大のインビボ効果の50%を得るのに必要とされる血漿又は血清中濃度を表す。
【0099】
癌の治療における効果は、癌細胞の増殖又は転移を阻害又は低減させ、あるいは癌に付随する一又は複数の症状を寛解又は軽減する本発明の抗体、融合タンパク質、コンジュゲート分子、又は組成物の能力を検出することによって証明されうる。治療は、本発明の抗体、融合タンパク質、コンジュゲート分子、又は組成物の投与後に癌細胞の増殖又は転移の低減、癌に付随する一又は複数の症状の寛解があれば、又は死亡率及び/又は罹患率に減少があれば、治療的と考えられる。本発明の抗体、融合タンパク質又は組成物を、インビトロ、エキソビボ及びインビボアッセイにおいて腫瘍形成を低減させるその能力について試験することができる。癌治療に対しては、インビボにおける効力は、また例えば生存期間、無増悪期間(TTP)、奏効率(RR)、応答期間、及び/又は生活の質の測定により測定される。また以下の治療効果と題したセクションを参照のこと。
【0100】
臨床的利益は、様々なエンドポイント、例えば、緩徐化及び完全な停止を含む、ある程度の疾患進行の阻害;疾患発症及び/又は症状の数の減少;病巣サイズの減少;隣接する末梢器官及び/又は組織への疾患細胞浸潤の阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止);疾患の拡がりの阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止);必ずではないが病変の退行又は消失が生じうる自己免疫応答の低減;疾患と関係する一又は複数の症状の、ある程度の軽減;治療後に呈する疾患がない期間の増加、例えば無進行生存;全体的な生存の増加;応答率の上昇;及び/又は治療後の所定の時点での死亡率の減少を評価することによって、測定することができる。
【0101】
「維持療法」とは、疾患再発又は進行の可能性を低減するために施される治療的投薬計画を意味する。維持療法は、被検体の寿命まで延長された時間を含む任意の長さの時間に提供されうる。維持療法は、最初の療法の後又は、最初ないしは更なる療法と共に提供されうる。維持療法のために使用される用量は変化してもよく、他の種の療法に使用する用量と比較して、減少した用量を含みうる。
ここでの「アジュバント(補助)療法」は、手術後に施される治療を指し、疾患の再発のリスクを低減するために、残存する疾患の所見が検出されないものとする。アジュバント療法の目的は、癌の再発を予防することによって、癌関連の死亡の機会を低減することである。
【0102】
一つ又は複数の他の治療薬と「組み合わせた」投与とは、同時(同時期)及び任意の順序での連続した投与を含む。
「同時に」又は「共に」なる用語は、投与の時間の少なくとも一部がオーバーラップしている、2以上の治療薬の投与を指すためにここで用いられる。従って、同時投与には、一又は複数の薬剤の投与が一又は複数の他の薬剤の投与をやめた後に続く場合の投薬計画が包含される。
【0103】
「生体試料」(「試料」又は「組織又は細胞試料」と交換可能に称される)には、個人から得られた多様な試料タイプが包含され、診断又はモニターアッセイに使用することができる。本定義には、血液及び生体由来の他の液体試料、固体状組織試料、例えばバイオプシー検体又は組織培養体又はそこから得られる細胞、及びそれらの子孫が包含される。また本定義には、試薬を用いた治療、可溶化、又はある種の成分、例えばタンパク質又はポリヌクレオチドについての濃縮による、それらの獲得後、任意の方法においてマニピュレートされた、又は切片化目的のために半固体状又は固体状マトリックスに包埋された試料が含まれる。「生体試料」なる用語には臨床用試料が含まれ、また培養体中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、体液、及び組織試料も含まれる。生体試料の供給源は、新鮮、凍結及び/又は保存器官からの固体状組織、又は組織試料、又はバイオプシー、又は吸引液;血液又は任意の血液構成物;体液、例えば脳脊髄液、羊水、腹水、又は間質液;被験者の妊娠又は発育中の任意の時点での細胞であってよい。幾つかの実施態様では、生体試料は、原発又は転移腫瘍から得られる。生体試料は、保存料、抗凝固剤、バッファー、固定液、栄養剤、抗生物質等、本来、組織とは自然に混ざり合わない化合物を含有可能である。
【0104】
本明細書中の目的では、組織試料の「切片」とは、組織試料の一部又は一片、例えば組織試料から切り出した一スライスの組織又は細胞を意味する。複数の組織試料の切片が採取され本発明に従った分析に供され得ることが理解できる。いくつかの実施態様では、本発明は、組織試料の同じ切片が、形態学的及び分子レベル両方で分析されるか、又はタンパク質及び核酸の両方に関して分析される方法を含むことが理解されるとする。
「薬学的製剤」、「薬学的組成物」又は「治療製剤」なる用語は、活性成分の生物学的活性が効果的であることを可能にするような形態であり、製剤が投与される被検体に毒性が許容されない更なる成分を含まない調製物を意味する。かかる製剤は無菌でありうる。
「無菌」製剤は無菌的又はあらゆる生きている微生物やその芽胞を含まない。
【0105】
本明細書中で用いられる「標識」なる用語は、核酸プローブ又は抗体などの試薬に直接的又は間接的にコンジュゲートないしは融合され、コンジュゲートないしは融合した試薬の検出を容易にする化合物又は組成物を指す。標識自体が検出可能なもの(例えば放射性標識又は蛍光性標識)であってもよく、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物ないしは組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。
【0106】
ここで用いられる「担体」は、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる用量及び濃度でそれらに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN
TM、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS
TMを含む。
「リポソーム」は、種々の型の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤からなる小型の小胞であり、哺乳動物への薬物の送達に有用である。リポソームの成分は、通常は生体膜の脂質配列に類似する二層形式に配列させる。
【0107】
組成物
本発明の抗Bv8抗体は望ましくはモノクローナルである。また、本明細書中で提供される抗Bv8抗体のFab、Fab'、Fab'-SH及びF(ab')
2断片も本発明の範囲内に包含される。これらの抗体断片は、従来の方法、例えば酵素消化により作製されるか、組換え体技術により生成されてもよい。このような抗体断片は、キメラでもよいし、ヒト化のものでもよい。これらの断片は、後述する診断目的及び治療目的のために有用である。
【0108】
モノクローナル抗体は実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、わずかながら存在しうる天然に生じる突然変異体を除いて同一のものである。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個の抗体の混合物ではなく、抗体の特性を示すものである。
本発明の抗Bv8モノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作製することができる。
【0109】
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを免疫化し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を誘導する。Bv8への抗体は、Bv8とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)に注射することにより動物内に生じる。Bv8は当分野で公知の方法を用いて調製されうる。その方法のいくつかは本明細書中でさらに記載される。例えば、ヒト及びマウスのBv8の組み換え産生は以下に記載される。一実施態様では、動物を、免疫グロブリン重鎖のFc部位に融合したBv8で免疫化する。好適な実施態様では、動物を、Bv8−IgG1融合タンパク質で免疫化する。通常、動物は、一リン酸化リピドA(MPL)/トレハロースジクリノミコレート(trehalose dicrynomycolate)(TDM) (Ribi Immunochem. Research, Inc., Hamilton, MT)によりBv8の免疫原性コンジュゲート又は誘導体に対して免疫化され、該溶液は複数の部位の皮下に注射される。2週後に、動物を追加免役する。7〜14日後、動物から採血して、血清を抗Bv8力価について検定する。力価がプラトーになるまで動物を追加免役する。
【0110】
別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁(Academic Press, 1986))。
【0111】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0112】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、San Diego, California USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカ培養細胞系統保存機関、Rockville, Maryland USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0113】
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、Bv8に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonほか, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0114】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-SEPHAROSE、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
【0115】
本発明の抗Bv8抗体は、所望される活性を有する合成抗体クローンをスクリーニングするために、コンビナトリアルライブラリを用いて同定することができる。原則として、合成抗体クローンを、ファージコートタンパク質と融合した抗体可変領域(Fv)の種々の断片を表示するファージを有するファージライブラリをスクリーニングすることによって選択される。このようなファージライブラリは、所望される抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーによって選別される。所望される抗原と結合することができるFv断片を発現するクローンは抗原へ吸収され、それによって、ライブラリの非結合クローンから分離される。次いで、この結合クローンは、抗原から溶出させることが可能であり、抗原吸収/溶出の付加的サイクルによってさらに濃縮することができる。本発明の任意の抗Bv8抗体は、興味の対象であるファージクローンを選択するために適切な抗原スクリーニング手法を設計し、続いて、興味の対象であるファージクローンからのFv配列、及びKabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3に記載の適切な定常領域(Fc)配列を用いての全長抗Bv8抗体クローンの構築によって得ることができる。
【0116】
抗体の抗原結合ドメインは、約110アミノ酸の2つの可変(V)領域である軽(VL)及び重(VH)鎖で形成され、その双方には、3つの超可変ループ又は相補鎖決定領域(CDR)が存在する。可変ドメインは、Winter等,Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455(1994)に記載のように、VH及びVLが短くて柔軟なペプチドを介して共有結合している一本鎖Fv(scFv)断片として、又は定常ドメインと融合して非共有的に相互作用しているFab断片のいずれかとしてファージ上に機能的に表示することができる。ここで用いられているように、scFvコード化ファージクローン、及びFabコード化ファージクローンは、総称して「Fvファージクローン」又は「Fvクローン」と呼ぶ。
【0117】
VH及びVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって分離してクローンし、ファージライブラリにおいてランダムに組み換えられることが可能であり、それは、Winter等,Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455(1994)に記載のように抗原結合クローンについて探索することが可能である。免疫化したソースからのライブラリは、ハイブリドーマを構成する必要がなく、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、天然レパートリーをクローニングして、Griffiths等,EMBO J, 12: 725-734(1993)に記載のようにどんな免疫化もせずに、幅広い非自己及びまた自己抗原に対するヒト抗体の単一のソースを提供することが可能である。最終的には、天然ライブラリは、また、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227: 381-388(1992)に記載のように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、及びランダム配列を有するPCRプライマーを利用して高度可変CDR3領域をコードし、インビトロでの再配列を完成させることによって合成的に作製することができる。
【0118】
繊維状ファージは、マイナーコートタンパク質pIIIへの融合によって、抗体断片を表示するのに用いられる。この抗体断片は、一本鎖Fv断片として表示することが可能であり、そのVH及びVLドメインは、例えば、Marks等,J. Mol. Biol. 222: 581-597(1991)に記載のような、又は、例えば、Hoogenboom等,Nucl. Acids. Res., 19: 4133-4137(1991)に記載のような、1つの鎖はpIIIと融合し、もう一方の鎖は、幾つかの野生型コートタンパク質を置換することによってファージ表面上に表示されるようになるFabコートタンパク質構造のアセンブリがある細菌宿主細胞のペリプラズムへ分泌されるFab断片のように、柔軟なポリペプチドスペーサーによって同じポリペプチド鎖上に連結されている。
【0119】
一般的に、抗体遺伝子断片をコードする核酸は、ヒト又は動物から収集した免疫細胞から得られる。抗Bv8クローンに有利になるように偏ったライブラリが望ましい場合には、個体をBv8で免疫化して抗体応答を生成させ、そして、脾臓細胞及び/又は他の末梢血リンパ球(PBL)である循環B細胞を、ライブラリ構築のために回収する。好ましい実施態様では、Bv8免疫化により、Bv8に対するヒト抗体を産生するB細胞が生じるように、抗Bv8クローンに好ましいヒト抗体遺伝子断片ライブラリは、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを有する(及び、機能的な内因性抗体産生系を欠く)トランスジェニックマウスにおける抗Bv8抗体応答を生成することによって得られる。ヒト抗体産生トランスジェニックマウスの作製は以下に記載する。
【0120】
抗Bv8反応細胞集団のさらなる濃縮は、適切なスクリーニング手法を利用してBv8特異的膜結合抗体を発現するB細胞を単離すること、例えば、Bv8アフィニティクロマトグラフィーによる細胞分離、又は蛍光色素標識Bv8への細胞の吸着とその後の蛍光標示式細胞分取器(FACS)によって得ることができる。
【0121】
あるいは、非免疫化供与体からの脾臓細胞及び/又はB細胞又は他のPBLの利用によって可能性のある抗体レパートリーのより良い表示が提供され、また、Bv8が免疫原ではない任意の動物(ヒト又は非ヒト)種を利用した抗体ライブラリの構築が可能となる。インビトロの抗体遺伝子コンストラクトを取り込むライブラリに関しては、幹細胞を個体から収集して非再配列の抗体遺伝子セグメントをコードする核酸を提供する。対象の免疫細胞は、種々の動物種、例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ目、オオカミ、犬科、ネコ科、ブタ、ウシ、ウマ、及びトリ種等から得ることができる。
【0122】
抗体可変遺伝子セグメント(VH及びVLセグメントを含む)をコードする核酸を、興味の対象の細胞から回収して増幅した。再配列したVH及びVL遺伝子ライブラリの場合では、その所望するDNAは、Orlandiら,Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 86: 3833-3837 (1989)に記載されているように、リンパ球からのゲノムDNA又はmRNAを単離し、再配列したVH及びVL遺伝子の5'及び3'末端と一致するプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによって得ることが可能であり、よって発現のための多様なV遺伝子レパートリーを作製することができる。このV遺伝子は、Orlandi等, (1989)及びWardら,Nature, 341: 544-546(1989)に記載のように、成熟Vドメインをコードするエクソンの5'末端のバックプライマーとJセグメントに基づいた前方向プライマーにより、cDNA及びゲノムDNAから増幅することが可能である。しかしながら、cDNAからの増幅のためには、バックプライマーは、また、Jonesら,Biotechnol., 9:88-89(1991)に記載のようにリーダーエクソンに、前方向プライマーは、Sastryら,Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 86:5728-5732(1989)に記載のように定常領域内に基づくことが可能である。相補性を最大にするために、Orlandiら(1989)又はSastryら(1989)に記載のように、縮重をプライマーへ取り込むことが可能である。好ましくは、例えば、Marksら,J. Mol. Biol., 222: 581-597(1991)の方法に記載のように、又はOrumら,Nucleic Acids Res., 21: 4491-4498(1993)の方法に記載のように、免疫細胞の核酸試料に存在するすべての入手可能なVH及びVL配列を増幅するために、各V遺伝子ファミリーを標的にしたPCRプライマーを用いて、そのライブラリの多様性を最大にする。発現ベクターへの増幅DNAのクローニングに関しては、希な制限部位を、Orlandiら(1989)に記載のように、又はClacksonら,Nature, 352: 624-628(1991)に記載のようにタグ付加したプライマーによるさらなるPCR増幅によって、PCRプライマー内の1つの末端へタグとして導入することができる。
【0123】
合成的に再配列したV遺伝子のレパートリーは、V遺伝子セグメントからインビボで誘導することができる。殆どのヒトVH遺伝子セグメントはクローニング及び配列決定(Tomlinson等, J. Mol. Biol. 227: 776-798(1992)に報告されている)、そしてマッピングがされている(Matsudaら,Nature Genet., 3: 88-94(1993));これらクローニングされたセグメント(H1及びH2ループのすべての主要なコンホメーションを含む)は、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227: 381-388(1992)に記載のように、多様な配列と長さのH3ループをコードするPCRプライマーによる多様なVH遺伝子レパートリーを作製するのに用いられる。VHレパートリーは、また、Barbas等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457-4461(1992)に記載されているように、単一の長さの長いH3ループに焦点を合わせたすべての配列多様性をともなって作製することができる。ヒトVκ及びVλセグメントはクローニング及び配列決定がなされ(Williams及びWinter, Eur. J. Immunol., 23: 1456-1461(1993))、合成軽鎖レパートリーを作製するのに利用することができる。VH及びVLフォールドの範囲及びL3及びH3の長さに基づく合成的V遺伝子レパートリーは、相当に構造的多様性を有する抗体をコードする。DNAをコードするV遺伝子の増幅に続いて、生殖系のV遺伝子セグメントは、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227: 381-388(1992)の方法に従ってインビトロで再配列することができる。
【0124】
抗体断片のレパートリーは、幾つかの方法でVH及びVL遺伝子レパートリーを共に組み合わせることによって構築することができる。各レパートリーを異なるベクターで作製し、そのベクターを、例えばHogrefe等, Gene, 128: 119-126(1993)に記載のようにインビトロで、又はコンビナトリアル・インフェクション、例えばWaterhouse等, Nucl. Acids Res., 21: 2265-2266(1993)に記載のloxP系によってインビボで作製することが可能である。このインビボの組み換え手法では、大腸菌の形質転換効率によって強いられるライブラリの大きさの限界を克服するために、二本鎖種のFabフラグメントが利用される。ナイーブのVH及びVLレパートリーは、1つはファージミドへ、そして他はファージベクターへと個別にクローニングされる。この2つのライブラリは、その後、各細胞が異なる組み合わせを有し、そのライブラリの大きさが、存在する細胞の数(約10
12クローン)によってのみ限定されるように、ファージミド含有細菌のファージ感染によって組み合わせられる。双方のベクターは、VH及びVL遺伝子が単一のレプリコンへ組み換えられ、ファージビリオンへ共にパッケージされるように、インビボの組み換えシグナルを有する。これら巨大なライブラリは、良好な親和性(約10
-8MのK
d-1)の多くの多様な抗体を提供する。
【0125】
別法として、このレパートリーは、例えばBarbas等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 7978-7982(1991)に記載のように同じベクターへ連続してクローニング、又は、Clakson等, Nature, 352: 624-628(1991)に記載のようにPCR後に、クローニングすることでアセンブリすることができる。PCRアセンブリは、また、柔軟なペプチドスペーサーをコードしているDNAとVH及びVL DNAを連結させて、単鎖のFv(scFv)レパートリーを形成することに利用することができる。さらに他の技術では、「細胞内でのPCRアセンブリ」は、Embleton等, Nucl. Acids Res., 20: 3831-3837(1992)に記載のように、PCRによってリンパ球内のVH及びVL遺伝子を組み合わせて、その後、連結した遺伝子のレパートリーをクローニングするのに利用される。
【0126】
ナイーブのライブラリ(天然又は合成のいずれか)によって産生された抗体は中度の親和性(約10
6〜10
7M
-1のK
d-1)である可能性があるが、Winterら(1994), 上掲に記載のように第二番目のライブラリから構築して遊離することによって、親和性成熟をもインビトロで模倣することが可能である。例えば、Hawkins等, J. Mol. Biol. 226: 889-896(1992)の方法、又はGram等, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89: 3576-3580(1992)の方法においてエラー・プローンポリメラーゼ(Leung等, Technique, 1:11-15(1989)で報告されている)を利用することによって、突然変異をインビトロでランダムに導入することができる。さらには、1つ又はそれより多いCDRをランダムに変異させることによって、例えば、選択した個々のFvクローンにおいて、対象のCDRまで及ぶランダム配列を有するプライマーによるPCRを利用して、そしてより高い親和性クローンをスクリーニングすることで親和性成熟をおこなうことが可能である。国際公開第9607754号(1996年3月14日に公開)は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域へ突然変異生成を誘導して軽鎖遺伝子のライブラリを作製する方法を記載している。その他の有効な手法は、Marks等, Biotechnol. 10: 779-783(1992)に記載のように、非免疫化供与体から得られた天然で発生するVドメイン変異体のレパートリーによるファージディスプレイによって選択されたVH又はVLドメインを組み換えること、及び数回のチェーン・シャッフリングにおいてより高い親和性についてスクリーニングすることである。この技術は、10
-9Mの範囲の親和性の抗体及び抗体断片の産生を可能にする。
【0127】
Bv8核酸及びアミノ酸配列は、例えばWechselberger et al.(FEBS Lett.462:177-181 (1999))及びLi et al.(Mol.Pharm.59:692-698 (2001))にあるような当分野で公知である。Bv8をコードする核酸は、当分野で公知の様々な方法によって調製できる。これらの方法には、Engels 等, Agnew. Chem. Int. Ed. Engl., 28: 716-734 (1989)に記載の何れかの方法、例えばトリエステル、亜リン酸エステル、ホスホラミダイト及びH-ホスホン酸塩方法による化学的な合成法が含まれるがこれに限定されるものではない。一実施態様では、発現宿主細胞に好ましいコドンが、Bv8コード化DNAの設定に用いられる。これに対して、Bv8をコードするDNAは、ゲノムないしcDNAのライブラリから単離できる。
【0128】
Bv8をコードするDNA分子の構築に続いて、そのDNA分子は、プラスミド等の発現ベクターの発現コントロール配列と作用可能に連結し、このコントロール配列は、そのベクターで形質転換した宿主細胞によって認識される。一般的に、プラスミドベクターは、その宿主細胞と適合する種から誘導された複製及びコントロール配列を有する。このベクターは、通常は、形質転換細胞で表現型の選択を提供することが可能なタンパク質をコードする配列だけでなく複製部位を有する。原核宿主細胞及び真核宿主細胞での発現に好適なベクターは当分野で公知であり、さらにそのいくつかを本明細書に記載する。酵母菌などの原核生物、又は哺乳動物などの多細胞生物由来の細胞が用いられうる。
【0129】
場合によっては、Bv8をコードするDNAは宿主細胞によって培地中への発現産物の分泌を生じさせる分泌リーダー配列に作用可能に結合される。分泌リーダー配列の例には、stII、エコチン(ecotin)、lamB、ヘルペスGD、lpp、アルカリホスファターゼ、インベルターゼ、及びアルファ因子が含まれる。ここでの使用にまた適しているのはプロテインAの36アミノ酸リーダー配列である(Abrahmsen等, EMBO J., 4:3901(1985) )。
【0130】
宿主細胞はこの発明の上述の発現又はクローニングベクターでトランスフェクトされ、好ましくは形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように変性された一般的な培養液中で培養される。
【0131】
トランスフェクションとは、実際に任意のコード化配列が発現するかどうか分からない宿主細胞による発現ベクターの取り込みを意味する。トランスフェクションの多くの方法は、通常の技能を有する技術者に知られており、例えば、CaPO
4沈降法及び電気穿孔法がある。一般に成功したトランスフェクションは、宿主細胞内で該ベクターの働きの兆候が現れた時に認識される。
【0132】
形質転換とは、DNAが染色体外成分として又は染色体組み込みによってのいずれかで複製可能となるように、生物にDNAを導入することを意味する。用いる宿主細胞によって、その細胞に適した基本的な技術を用いて形質転換は行われる。形質転換法は当分野で公知であり、そのいくつかをさらに本明細書中に記載する。
【0133】
Bv8を産生するために用いる原核生物宿主細胞は、一般的に、Sambrook等, 上掲に記載のように培養することが可能である。
Bv8を産生するために使用される哺乳動物宿主細胞は、様々な培地で培養することができる。その培地は当分野で周知であり、そのいくつかを本明細書中に記載する。
この開示で言及している宿主細胞には、宿主動物内の細胞だけでなくインビトロ培養物の細胞が含まれる。
【0134】
Bv8の精製は、当分野で認識される方法を用いて実施される。そのいくつかを本明細書中に記載する。
ファージディスプレイクローンのアフィニティークロマトグラフィー分離での利用のために、例えば、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、ガラスビーズ、セルロース、種々のアクリルコポリマー、ヒドロキシルメタクリルゲル、ポリアクリル及びポリメタクリルコポリマー、ナイロン、中性及びイオン性担体等の適切な基質へ精製したBv8を付着させることが可能である。基質へのBv8タンパク質の付着は、Methods in Enzymology, 44巻(1976)に記載されている方法によって完遂することができる。アガロース、デキストラン又はセルロース等の多糖類基質へタンパク質リガンドを付着させるために広く用いられている技術には、ハロゲン化シアンによる担体の活性化、それに続く、活性化基質へのペプチドリガンドの第1級脂肪族又は芳香族アミンのカップリングが含まれる。
【0135】
あるいは、Bv8は、吸収プレートのウェルをコーティングするために利用すること、吸収プレートへ付着させた宿主細胞上で発現させるか又はセルソーティングで利用すること、又はストレプトアビジンでコーティングしたビーズによる捕獲のためにビオチンとコンジュゲートすること、又はファージディスプレイライブラリをパニングするためのあらゆる他の当該分野の方法において利用することが可能である。
【0136】
吸着剤との少なくともファージ粒子の一部分の結合に適した条件下で、ファージライブラリの試料を固定化Bv8と接触させる。通常は、pH、イオン強度、温度等を含む条件を選択して、生理学的条件を模倣する。固相と結合したファージを洗浄し、その後、例えばBarbas等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 7978-7982(1991)に記載されているように酸で、又は例えばMarks等, J. Mol. Biol. 222: 581-597(1991)に記載にされているようにアルカリで、又は例えばClackson等, Nature, 352: 624-628(1991)の抗原競合法に類似の手法であるBv8抗原競合によって溶出する。ファージは、1回目の選択で20〜1,000倍に濃縮することが可能である。さらには、この濃縮したファージを細菌培養液で生育させ、さらなる回の選択に供することが可能である。
【0137】
選択の効率は多くの要因に依存し、それには、洗浄の間の解離の動力学、そして単一のファージ上の複数の抗体断片が同時に抗原と関われるかどうかということが含まれる。一次解離定数(及び弱い結合親和性)を有する抗体は、短い洗浄、多価ファージディスプレイ及び固相の抗原の高いコーティング密度の利用によって保持することが可能である。高い密度は、多価相互作用を介してファージを安定化するだけでなく、解離したファージの再結合に有利に作用する。遅い解離動力学(及び良好な結合親和性)を有する抗体の選択は、Bass等, Proteins, 8: 309-314(1990)及び国際公開第92/09690号に記載されているような長い洗浄と単価ファージディスプレイの利用、そしてMarks等, Biotechnol., 10: 779-783(1992)に記載されているような抗原の低度のコーティング密度によって促進することが可能である。
【0138】
親和性に僅かな違いがあったとしても、Bv8に対する異なる親和性のファージ抗体の中で選択することは可能である。しかしながら、選択した抗体のランダム変異(例えば、上記の幾つかの親和性成熟の技術で行われているような)は、多くの変異を生じやすく、その殆どが抗原と結合し、僅かがより高い親和性である。Bv8を限定すると、希な高い親和性のファージが競合して除かれることが可能である。すべてのより高い親和性の変異を保持するために、ファージは、過度のビオチン化Bv8とインキュベートすることが可能であるが、Bv8に対する標的モル濃度親和定数よりも低いモル濃度のビオチン化Bv8とインキュベートできる。次いで、高親和性結合ファージをストレプトアビジンでコーティングした常磁性体ビーズによって捕獲することが可能である。そのような「平衡捕獲」は、結合の親和性に従い、親和性の低い過度のファージから、僅かに2倍高い親和性の変異体クローンの単離を可能にする感度で抗体を選択することを可能にする。固相と結合したファージを洗浄するのに用いる条件を操作して、解離定数を基礎として識別することも可能である。
【0139】
Bv8クローンは活性選択されうる。一実施態様では、本発明は、Bv8とそのリガンド(例えばBv8レセプターPKR1及びPKR2)との結合をブロックするBv8抗体を提供する。このようなBv8抗体に対応するFvクローンは、(1) 上記のようなファージライブラリからBv8クローンを単離して、場合によって、好適な宿主細胞で個体集団を成長させることによって、ファージクローンの単離した母集団を増幅する、(2) 望ましいブロック活性及び非ブロック活性のそれぞれについて第二タンパク質とBv8を選択する、(3) 固定されたBv8に抗Bv8ファージクローンを吸着する、(4) 過剰量の第二タンパク質を用いて、第二タンパク質の結合決定基と共有するかオーバーラップするBv8−結合決定基を認識する任意の望ましくないクローンを溶出する、そして、(5) 工程(4)の後に吸着されたまま残ったクローンを溶出する、ことによって選別できる。場合によって、所望のブロック/非ブロック特性を有するクローンを、本明細書に記載の選別手順を一又は複数回繰り返すことによって、さらに濃縮できる。
【0140】
ハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体をコードするDNA又は本発明のファージディスプレイFvクローンは、常法を用いて(例えば、ハイブリドーマの対象の領域をコードする重鎖及び軽鎖又はファージDNA鋳型を特異的に増幅するように設定したオリゴヌクレオチドプライマーを用いることにより)即座に分離されて、配列決定される。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、この状況以外では抗体タンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を獲得することができる。抗体をコードするDNAの細菌での組み換え発現に関する概説論文には、Skerra等, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPluckthun, Immunol. Revs. 130: 151-188(1992)が含まれる。
【0141】
本発明のFvクローンをコードするDNAは、重鎖及び/又は軽鎖定常領域をコードする公知のDNA配列(例えば好適なDNA配列は上掲のカバット等から得ることができる)と組み合わせて、完全長ないし一部の重鎖及び/又は軽鎖をコードするクローンを形成できる。このために、何れかのアイソタイプの定常領域、例えばIgG、IgM、IgA、IgD及びIgE定常領域を用いることができることが理解されるであろう。このような定常領域は任意のヒト又は動物種から得ることができる。ある動物(例えばヒト)種の可変ドメインDNAから得て、次いで「ハイブリッド」である完全長重鎖及び/又は軽鎖のコード配列を形成するために他の動物種の定常領域DNAに融合したFvクローンは、本明細書で用いられる「キメラ」及び「ハイブリッド」抗体の定義に含まれる。好適な実施態様では、ヒト可変DNAから得たFvクローンをヒト定常領域DNAに融合して、すべてのヒト、完全長ないし一部の重鎖及び/又は軽鎖のコード配列を形成する。
【0142】
また、本発明のハイブリドーマ由来の抗Bv8抗体をコードするDNAは、例えば、ハイブリドーマクローン由来の相同的マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を置換すること(例えばMorrison等, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 81:6851(1984)の方法)によって修飾することができる。ハイブリドーマ又はFvクローン由来の抗体ないし抗体断片をコードするDNAは、免疫グロブリンコード化配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード化配列の全て又は一部を共有結合させることによってさらに修飾することができる。そのように、「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体は、本発明のFvクローン又はハイブリドーマクローン由来の抗体の結合特異性を有するように調製される。
【0143】
抗体断片
本発明は抗体断片を包含する。抗体断片は、酵素消化などの従来の手段又は組み換え技術によって生成されうる。場合によって、全抗体よりも抗体断片の利用に利点がある。より小さいサイズの断片によりクリアランスが速くなり、固形腫瘍へのアクセスが改善されうる。抗体断片の例については、Hudson et al.(2003) Nat. Med.9:129-134を参照のこと。
【0144】
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、完全な抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、Fab、Fv及びScFv抗体断片はすべて、大腸菌で発現され、分泌されるため、この断片の大規模産生が容易となる。抗体断片は上述において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')
2断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')
2断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。サルベージレセプター結合エピトープ残基を含有する、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab')
2断片は米国特許第5869046号に記載される。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。ある実施態様では、抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開93/16185;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと。Fv及びscFvは、定常領域が欠けている完全な結合部を有する唯一の種である;したがって、それらは、インビボでの使用の間の非特異的結合を減らすために適する。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端又はカルボキシ末端の何れかで、エフェクタータンパク質の融合物を得るために構築されうる。上掲のAntibody Engineering, ed. Borrebaeckを参照。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。このような直線状の抗体は単特異的又は二重特異的であってもよい。
【0145】
ヒト化抗体
本発明はヒト化抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化する様々な方法は従来からよく知られている。例えば、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の該当する高頻度可変領域配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536(1988))を使用して実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくつかの高頻度可変領域残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0146】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が重要となる。「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域として受け入れる。例としてSims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987)を参照のこと。他の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる。例としてCarter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623(1993)を参照のこと。
【0147】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが一般的に望ましい。この目標を達成するべく、ある方法によって、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0148】
ヒト抗体
本発明のヒト抗体は、上記のように、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択したFvクローン可変ドメイン配列を公知のヒト定常ドメイン配列と結合することによって構築することができる。あるいは、本発明のヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の生産のためのヒトミエローマ及びマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株は,例えば,Kozbor, J. Immunol. 133, 3001(1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及びBoerner 等, J. Immunol., 147: 86 (1991)によって記載されている。
【0149】
免疫化することで、内因性免疫グロブリンの生産なしに、ヒト抗体の完全なレパートリーを生産することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を生産することが現在は可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系変異体マウスでの抗体重鎖結合領域(J
H)遺伝子のホモ接合体欠失は、内因性抗体の生産の完全な阻害をもたらすことが記載されている。そのような生殖細胞系変異体マウスでのヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子配列の転移は、抗原の挑戦によってヒト抗体の生産を引き起こす。例えば、Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 2551-255(1993);Jakobovits等, Nature 362, 255-258(1993)を参照のこと。
【0150】
また、遺伝子シャフリングは、ヒト抗体が開始非ヒト、例えば齧歯類の抗体と類似した親和性及び特性を有している場合、非ヒト、例えば齧歯類の抗体からヒト抗体を得るために使用することもできる。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法により、ここに記載のファージディスプレイ技術により得られた非ヒト抗体断片の重鎖可変領域遺伝子又は軽鎖可変領域遺伝子の何れかをヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置換し、非ヒト鎖/ヒト鎖scFvないしFabキメラの集団を作成する。抗原を選択することにより、ヒト鎖が初めのファージディスプレイクローンにおいて一致した非ヒト鎖の除去により破壊された抗原結合部位を回復する、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFvないしFabが単離される、つまり、エピトープがヒト鎖のパートナーの選択をつかさどる(インプリントする)。残りの非ヒト鎖を置換するためにこの工程を繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開のPCT特許出願WO93/06213を参照)。伝統的なHVR移植による非ヒト抗体のヒト化と異なり、この技術により、非ヒト起源のFR又はHVR残基を全く持たない完全なヒト抗体が得られる。
【0151】
二重特異性抗体
本発明の二重特異性抗体の一例は、Bv8と他の抗原に結合する抗体がある。他の実施態様では二重特異性抗体はBv8の2つの異なるエピトープに結合しうる。二重特異性抗体はBv8を発現する細胞に細胞障害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はBv8結合アーム及び細胞障害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')
2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0152】
二重特異性抗体を作製する方法は当該分野において記載されている。初めのアプローチの一つは二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現を行うものであり、ここで二つの重鎖は異なる特異性を持っている(Millstein等, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が1993年5月13日に公開の国際公報93/08829及びTraunecker等、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0153】
異なるアプローチ法では、抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は、例えば、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。ある実施態様では、第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させる。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。これにより、コンストラクトに使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2又は3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0154】
このアプローチ法の一実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公報94/04690に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
【0155】
他のアプローチ法によれば、「ノブ・イントゥー・ホール(knob−into−hole)」または「KnH」技術という用語は、インビトロまたはインビボで2つのポリペプチドの相互的な対合を導く技術であって、それらが相互作用する界面において一方のポリペプチドに突起(pertuberance)(ノブ)をおよび他方のポリペプチドに空洞(ホール)を導入することによる技術を指す。例えば、KnHは、抗体のFc:Fc結合界面、CL:CH1界面またはVH/VL界面において導入されている(例えば、米国特許出願公開第2007/0178552号、国際公開第96/027011号、同第98/050431号およびZhu et al.(1997)Protein Science 6:781-788)。これは、多重特異性抗体の製造中に2つの異なる重鎖の相互的な対合を駆動するのに特に有用である。例えば、Fc領域にKnHを有する多重特異性抗体は、各Fc領域に連結された単一可変ドメインをさらに含むことができ、または類似したもしくは異なる軽鎖可変領域と対合する異なる重鎖可変ドメインをさらに含むことができる。一実施態様によると、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0156】
多重特異性抗体とは架橋抗体や「ヘテロコンジュゲート抗体」を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの一方の抗体がアビジンと結合し、他方はビオチンと結合していてもよい。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせること(米国特許第4676980号)及びHIV感染の治療(国際公報91/00360、国際公報92/00373及び欧州特許第03089号)等の用途が提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は適当な架橋方法によって生成できる。適切な架橋剤は周知であり、技術は知られている(例として米国特許第4676980号)。
【0157】
抗体断片から多重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) は完全な抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')
2断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0158】
Fab'-SH断片は大腸菌から回収することも、化学的にカップリングさせて二重特異性抗体を形成させることもできる。Shalaby 等, J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)は、完全なヒト化二重特異性抗体F(ab')
2分子の産生について記述している。各々のFab'断片は大腸菌から別々に分泌されて、インビトロで化学的にカップリングされて、二重特異性抗体を形成する。したがって、形成された二重特異性抗体は、HER2を過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞に結合するだけでなく、ヒト胸部腫瘍の標的に対するヒト細胞毒性リンパ球の溶解活性を引き起こすことができた。
【0159】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産された。Kostelny等, J.Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させられた。抗体ホモダイマーはヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、ついで再酸化させて抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V
L)に重鎖可変ドメイン(V
H)を結合してなる。従って、一つの断片のV
H及びV
Lドメインは他の断片の相補的V
L及びV
Hドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用する他の二重特異性抗体断片製造方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等, J.Immunol. 147:60(1991)。
【0160】
多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体よりも早くインターナリゼーション(及び/又は異化)されうる。本発明の抗体は、3又はそれ以上の結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外のもの)であり得(例えば四価抗体)、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に生成することができる。多価抗体は二量化ドメインと3又はそれ以上の抗原結合部位を有する。ある実施態様では、二量化ドメインはFc領域又はヒンジ領域を有する(又はそれらからなる)。このシナリオにおいて、抗体はFc領域と、Fc領域のアミノ末端に3又はそれ以上の抗原結合部位を有しているであろう。ある実施態様では、多価抗体は3ないし8の抗原結合部位を有する(又はそれらからなる)。ある実施態様では、多価抗体は4の抗原結合部位を有する(又はそれらからなる)。多価抗体は少なくとも1つのポリペプチド鎖(例えば2つのポリペプチド鎖)を有し、ポリペプチド鎖(類)は2又はそれ以上の可変ドメインを有する。例えば、ポリペプチド鎖(類)はVD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを有し、ここでVD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域のポリペプチド鎖の一つであり、X1及びX2はアミノ酸又はポリペプチドを表し、nは0又は1である。例えば、ポリペプチド鎖(類)は:VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖;又はVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を有し得る。ここで多価抗体は、少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに有しうる。ここで多価抗体は、例えば約2〜約8の軽鎖可変ドメインポリペプチドを有しうる。ここで考察される軽鎖可変ドメインポリペプチドは軽鎖可変ドメインを有し、場合によってはCLドメインを更に有する。
【0161】
単一ドメイン抗体
ある実施態様では、本発明の抗Bv8抗体は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてないしは一部又は軽鎖可変ドメインのすべてないしは一部を含む単一ポリペプチド鎖である。ある実施態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例として米国特許第6248516号B1を参照)。一実施態様では、単一ドメイン抗体は抗体の重鎖可変ドメインのすべてないしは一部からなる。
【0162】
抗体変異体
いくつかの実施態様では、ここに開示する抗Bv8抗体のアミノ酸配列の修飾を考える。例えば、抗体の結合親和性及び/又は生物学的特性を向上することができれば望ましい。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入して、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、抗体のアミノ酸配列内の残基の、例えば、欠失型、又は挿入或いは置換を含む。最終構成物が所望する特徴を有していれば、欠失、挿入又は置換をどのように組合せてもよい。アミノ酸変化は、配列ができるときに被検体の抗体アミノ酸配列に導入されうる。
【0163】
突然変異誘発に好ましい位置である抗体の特定の残基又は領域の同定に有益な方法は、Cunningham及びWellsによりScience, 244:1081-1085 (1989年)に開示されているように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的となる残基又は残基の組が同定され(例えば、arg、asp、his、lys、及びgluなどの荷電した残基)、中性の、又は負に荷電したアミノ酸(例えばアラニン又はポリアラニン)で置換され、アミノ酸の抗原との相互作用に影響を与える。次いで、置換に対する機能的感受性を示しているそれらアミノ酸位置を、置換の部位において、又は置換の部位のために、さらなる、又は他の変異体を導入することにより精製する。このように、アミノ酸配列変異体を導入する部位は予め決定されるが、突然変異自体の性質は予め決定する必要は無い。例えば、任意の部位における突然変異の機能を分析するために、標的コドン又は領域においてalaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を実行し、発現した免疫グロブリンを所望の活性についてスクリーニングする。
【0164】
アミノ酸配列挿入には、1残基から100以上の残基を有するポリペプチドまでの長さに亘るアミノ−末端融合及び/又はカルボキシ−末端融合、ならびに、単一又は多重アミノ酸残基の配列内挿入を含む。端末挿入の例には、N−末端メチオニル残基を持つ抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清半減期を増加させるポリペプチド又は(例えばADEPTのための)酵素の抗体のN−末端又はC−末端への融合が含まれる。
【0165】
ある実施態様では、本発明の抗体は、抗体がグリコシル化されている程度を増加又は低減するように変更される。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
【0166】
抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、アミノ酸配列を、一又は複数の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)が作製されるか又は除かれるように変化させることによって簡便に達成される。該変化は、元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、欠失、又は置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
【0167】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物を変更してもよい。哺乳動物細胞によって生産される天然の抗体は典型的にはFc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合によって一般に結合させられる分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えばWright等 (1997) TIBTECH 15:26-32を参照のこと。オリゴ糖は様々な炭水化物、例えばマンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム部」にGlcNAcに結合したフコースを含みうる。ある実施態様では、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾を、ある種の改善された性質を有する抗体を作り出すためになしてもよい。
【0168】
例として、フコース接着を(直接的にも間接的にも)欠いている炭水化物構造を有する抗体変異体が提供される。このような変異体は改善されたADCC機能を有する。例えば米国特許公開2003/0157108(Presta, L.)及び同2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd)を参照のこと。「脱フコース化」又は「フコース欠失」抗体変異体に関する文献の例には以下のものを含む:米国公開番号2003/0157108;国際公報2000/61739;国際公報2001/29246;米国公開番号2003/0115614;米国公開番号2002/0164328;米国公開番号2004/0093621;米国公開番号2004/0132140;米国公開番号2004/0110704;米国公開番号2004/0110282;米国公開番号2004/0109865;国際公報2003/085119;国際公報2003/084570;国際公報2005/035586;国際公報2005/035778;;国際公報2005/053742;国際公報2002/031140;Okazaki 等 J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004);及びYamane-Ohnuki 等 Biotech. Bioeng.87: 614 (2004)。脱フコース化抗体を産生することができる細胞株の例として、タンパク質フコース化欠失Lec13 CHO細胞 (Ripka 等 Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国公開番号2003/0157108, Presta, L;及び国際公報2004/056312, Adams 等, 特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例としてα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8,-ノックアウトCHO細胞 (Yamane-Ohnuki 等 Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda, Y. et al., Biotechnol.Bioeng., 94(4):680-688 (2006);及び国際公報2003/085107)などがある。
【0169】
例えば抗体のFc領域に接着した二分枝のオリゴサッカリドがGlcNAcによって二分されている二分されたオリゴサッカリドを有する抗体変異体が提供される。このような抗体変異体はフコシル化の低減および/又はADCC機能の改善を有する。このような抗体変異体の例は、例えば国際公開公報第2003/011878号(Jean-Mairet等);米国特許第6602684号(Umana等);及び米国公開特許2005/0123546(Umana等)に記載されている。Fc領域に接着したオリゴサッカリド内に少なくとも一のガラクトース残基を有する抗体も提供される。このような抗体は変異体はCDC機能が改善されているかもしれない。このような抗体変異体の例は、例えば国際公開公報第1997/30087号(Patel等)、国際公開公報第1998/58964号(Raju)及び国際公開公報第1999/22764号(Raju)に記載されている。
【0170】
ある実施態様では、抗体変異体は、ADCCを更に改善する一又は複数のアミノ酸置換を含むFc領域を含み、例えばFc領域の298、333、及び/又は334位(残基のEu番号付け)の置換である。かかる置換は上述の変異の何れかとの組合せで起こりうる。
ある実施態様では、本発明は、これをインビボでの抗体の半減期が重要であるがある種のエフェクター機能(例えば補体及びADCC)が不必要であるか有害である多くの用途のための望ましい候補にする、エフェクター機能の全てではないが幾らかを有する抗体変異体を考慮する。ある実施態様では、所望の性質のみが維持されるようにする抗体のFc活性が測定される。インビトロ及び/又はインビボ細胞傷害性アッセイを実施して、CDC及び/又はADCC活性の減少/枯渇を確認できる。例えば、Fcレセプター(FcR)結合アッセイを実施して、抗体がFcγR結合を欠く(よってADCC活性を欠く可能性がある)が、FcRn結合能を保持していることを確認する。ADCCを媒介する一次細胞のNK細胞はFcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現がRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-92 (1991)の464頁の表3にまとめられている。興味ある分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5500362号(例えばHellstrom, I.等 Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986)を参照)及び Hellstrom, I 等, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);第5821337号(Bruggemann, M. 等, J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いることができる(例えばフローサイトメトリーのためのACTI<SUP>TM</SUP>非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ (Promega, Madison, WI)。このようなアッセイのために有用なエフェクター細胞は末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、又は加えて、興味ある分子のADCC活性はインビボで、例えばClynes等 Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998)に開示されているもののような動物モデルにおいて評価することができる。C1q結合アッセイをまた実施して、抗体がC1qに結合できず、よってCDC活性を欠くことを確認することができる。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してもよい(例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, M.S. 等, Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg, M.S.及びM.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照のこと)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定はまた当該分野で知られている方法を使用して実施することもできる(例えばPetkova, S.B. 等, Int’l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006)を参照)。
【0171】
一又は複数のアミノ酸置換を有する他の抗体が提供される。置換突然変異について関心ある部位は高度可変領域を含むが、FR改変もまた考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表1に示す。「例示的置換」と名前を付けたより実質的な変化が「アミノ酸置換表」に提供され、又はアミノ酸クラスに関連して以下に更に記載される。アミノ酸置換を、興味有る抗体中に導入し、例えば所望される活性、例えば改善された抗原結合性、免疫原性の低減、改善されたADCC又はCDC等について生成物をスクリーニングできる。
【0173】
抗体の生物学的性質における修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩に影響を及ぼす置換を選択することにより達成されうる。アミノ酸は、その側鎖の特性の類似性に従ってグループ化することができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, 2版, pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)):
(1)無極性:Ala(A),Val(V),Leu(L),Ile(I),Pro(P),Phe(F),Trp(W),Met(M)
(2)無電荷極性:Gly(G),Ser(S),Thr(T),Cys(C),Tyr(Y),Asn(N),Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D),Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K),Arg(R),His(H)
別法では、天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;及び
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0174】
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。このような置換された残基も、保存的置換部位か、更に好ましくは残存する(非保存的)部位に、導入することができる。
【0175】
一つの種類の置換による変異体は、親抗体(例えばヒト化抗体又はヒト抗体)の一以上の高頻度可変領域残基を置換することを含む。一般に、更なる開発用に選択される得られた変異体は、それらが生産された親抗体に対して変更された(例えば改善された)生物学的特性を有しているであろう。例示的な置換変異体は、ファージディスプレイを用いた親和性成熟法を使用して簡便に生産されうる親和性成熟抗体である。簡単に述べると、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6〜7の部位)を変異させることにより、各部位に可能な全てのアミノ酸置換を生じさせる。このようにして生成された抗体は、各粒子内にパッケージされたファージコートタンパク質(例えば、M13の遺伝子III産物)の少なくとも一部への融合物として、糸状のファージ粒子から表示される。ついで、ファージディスプレイされた変異体は、その生物的活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補高頻度可変領域部位を同定するために、系統的変異導入法(例えばアラニンスキャニング)を行って、抗原結合に有意に貢献する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又は付加的に、抗原抗体複合体の結晶構造を分析することにより、抗体と抗原との接触点を同定することが有効である。このような接触残基及び隣接残基は、ここに説明するものを含む当該分野で知られている技術による置換の候補である。そのような変異体がひとたび生成されたら、ここに記載のものを含む当該分野で知られている技術を用いて変異体パネルのスクリーニングを行い、更なる開発のために一又は複数の関連アッセイで優れた特性を有する抗体を選択することができる。
【0176】
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は当該分野で知られている様々な方法により調製される。これらの方法は、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又はオリゴヌクレオチド媒介性(又は部位特異的)突然変異による調製、PCR突然変異誘発、及び前もって調製された変異体又は抗体の非変異型のカセット変異導入法を含むが、これらに限定されない。
【0177】
本発明の抗体のFc領域に一又は複数のアミノ酸修飾を導入することにより、Fc領域変異体を生成することが望ましい場合がある。Fc領域変異体は、ヒンジシステインのアミノ酸位置を含む一以上のアミノ酸位置に一のアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域)を含みうる。
【0178】
本明細書及び従来技術の教示によれば、ある実施態様では、本発明の抗体は、対応する野生型の抗体と比較した場合、例えばFc領域内に、一又は複数の変更を有すると考えられる。それでも、これらの抗体は、その野生型の同等物と比較した場合、治療的有効性に必要なほぼ同一の特性を保持している。例えば、国際公開第99/51642号等に記載されているように、Fc領域に、C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)に変化(つまり効果の改善又は低減)をもたらす特定の変更を実施することが考慮される。Fc領域の変異体の他の例に関し、Ducan及びWinter, Nature 322:738-40 (1998);米国特許第5648260号;同第5624821号;及び国際公開第94/29351号も参照されたい。国際公開第00/42072号(Presta)及び国際公開第2004/056312号(Lowman)はFcRへの結合が改善された又は低減された抗体変異体を記載している。またShields等, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照のこと。増加した半減期と新生児型Fcレセプター(FcRn)への結合が改善された抗体は、母体IgGの胎児への移動の原因であるが(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim等, J. Immunol. 24:249 (1994))、米国特許出願公開第2005/0014934A1号(Hinton等)に記載されている。これらの抗体はFcRnへのFc領域の結合を改善する一又は複数の置換を有するFc領域を含む。変更されたFc領域アミノ酸と増加又は減少したC1q結合能を有するポリペプチド変異体は、米国特許第6194551B1号、国際公開第99/51642号に記載されている。またIdusogie等, J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照のこと。
【0179】
他の態様では、本発明は、Fc領域を含むFcポリペプチドの界面に修飾を含み、該修飾がヘテロ二量体化を容易にし及び/又は促進するむ抗体を提供する。これらの修飾は、第一のFcポリペプチド内に突部を、第二のFcポリペプチド内にキャビティを導入することを含み、ここで、第一及び第二Fcポリペプチドの複合体化を促進するように突部がキャビティに位置させ得る。これらの修飾を有する抗体の生産方法は当該分野で知られており、例えば米国特許第5731168号に記載されている。
【0180】
また他の態様では、抗体の一又は複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば「thioMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施態様では、置換される残基は抗体の接近可能部位で生じる。その残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が抗体の接近可能部位に位置させられ、ここで更に記載されるように、薬剤部分又はリンカー-薬剤部分のような他の部分に抗体をコンジュゲートさせるために使用されうる。ある実施態様では、次の残基の何れか一又は複数がシステインで置換されうる:軽鎖のV205(カバット番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。
【0181】
抗体誘導体
本発明の抗Bv8抗体は当該分野において知られ直ぐに利用できる更なる非タンパク質性部分を含むように更に修飾することができる。好ましくは、抗体の誘導体化に適した部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例には、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーかランダムコポリマー)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは水中におけるその安定性のために製造の際に有利であろう。ポリマーは任意の分子量であってよく、分枝状でも非分枝状でもよい。抗体に結合するポリマーの数は変化してもよく、一を超えるポリマーが結合する場合、それらは同じでも異なった分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定されるものではないが、その抗体誘導体が定まった条件下での治療に使用されるかどうか、改善される抗体の特定の性質又は機能を含む考慮事項に基づいて決定することができる。
【0182】
他の実施態様では、放射線への暴露によって選択的に加熱されうる非タンパク質様部分及び抗体のコンジュゲートが提供される。一実施態様では、非タンパク質様部分はカーボンナノチューブである(Kam等 , Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線は任意の波長のものであってよく、限定するものではないが、通常の細胞に害を与えないが、抗体-非タンパク質様部分に近位の細胞が死滅させられる温度まで非タンパク質様部分を加熱する波長が含まれる。
【0183】
活性アッセイ
本発明の抗体は当該分野で知られている様々なアッセイによってその物理的/化学的特性及び生物学的機能について特徴付けることができる。
ある態様では、アッセイが、生物学的活性を有する抗Bv8抗体を識別するために提供される。生物学的活性は、例えば、Bv8が関与する効果の一又は複数の態様の調節を含み、限定はされないが、Bv8結合、Bv8介在による内皮細胞増殖、腫瘍転移を含む。
【0184】
本発明の特定の実施態様では、本明細書で生産された免疫グロブリンは、その生物学的活性について分析される。いくつかの実施態様では、本発明の免疫グロブリンは、その抗原結合活性について試験される。当該分野で知られ、ここで使用することができる抗原結合アッセイには、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドウィッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、及びプロテインAイムノアッセイのような技術を用いた任意の直接的又は競合的結合アッセイが制限なく含まれる。実例となる抗原結合アッセイが下記の実施例セクションに提供されている。
【0185】
精製された抗体は、限定されるものではないが、N末端シークエンシング、アミノ酸解析、非変性サイズ排除高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)、質量分析、イオン交換クロマトグラフィ、及びパパイン消化を含む一連のアッセイによってさらに特徴付けることができる。
【0186】
幾つかの実施態様では、本発明は全てではなくいくつかのエフェクター機能を有する変更した抗体について考察し、このことによって、該抗体は、抗体のインビボ半減期が重要であるがある種のエフェクター機能(補体又はADCCなど)が不要又は有害な多くの用途の望ましい候補となる。特定の実施態様では、生成した免疫グロブリンのFc活性を測定して、所望の特性のみが維持されていることを確認する。インビボ及び/又はインビトロ細胞障害アッセイを行って、CDC及び/又はADCC活性の減少/枯渇を確認することができる。例えば、Fcレセプター(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠損している(つまり、おそらくADCC活性を欠損している)が、FcRn結合能は維持していることを確認することができる。ADCCをもたらす第一細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現し、その一方で単核細胞はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血系細胞でのFcR発現については、Ravetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の464頁の表3に要約されている。対象とする分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの例は、米国特許第5500362号又は同第5821337号に記載されている。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又は加えて、対象とする分子のADCC活性は、例えばClynes等, PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデル内でインビボに評価することができる。また、C1q結合アッセイを行って、抗体がC1qに結合できない、つまりCDC活性を欠損していることを確認してもよい。補体活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載のように、CDCアッセイを行ってもよい。また、FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期測定を、当分野で公知の方法を用いて行うことができる。
幾つかの実施態様では、本発明は、増加されたエフェクター機能及び/又は増加された半減期を有する、変更された抗体を提供する。例として米国出願番号12/577967を参照のこと。
【0187】
ベクター、宿主細胞及び組換え方法
本発明の抗体の組み換え生成のために、コードする核酸を単離して、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製ベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは従来の手順で簡単に単離し、配列決定される(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)。多くのベクターが利用可能である。用いる宿主細胞にある程度依存してベクターを選択する。一般的に、好適な宿主細胞は原核生物又は真核生物(一般的に哺乳動物)由来の細胞である。IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE定常領域を含め、任意のアイソタイプの定常領域がこの目的のために使われてもよく、このような定常領域はヒト又は動物種の何れかから得られうることは理解されるであろう。
【0188】
a. 原核生物の宿主細胞を用いた抗体生成
i. ベクターの構築
本発明の抗体のポリペプチド成分をコードしているポリヌクレオチド配列は標準的な組換え技術を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列はハイブリドーマ細胞のような抗体産生細胞から単離し配列決定することができる。あるいは、ポリヌクレオチドはヌクレオチド合成機又はPCR法を使用して合成することができる。ひとたび得られると、ポリペプチドをコードしている配列は原核生物宿主中で異種ポリヌクレオチドを複製し、発現することが可能な組換えベクター中に挿入される。当該分野において入手でき知られている多くのベクターを本発明の目的のために使用することができる。適切なベクターの選択は、主として、ベクターに挿入される核酸のサイズとベクターで形質転換される特定の宿主に依存する。各ベクターは、機能(異種性ポリヌクレオチドの増幅又は発現ないしその両方)及び属する特定の宿主細胞への適合性に応じて、様々な成分を含む。一般的に、限定するものではないが、ベクター成分には複製起源、選択マーカー遺伝子、プロモータ、リボゾーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種性核酸挿入及び転写終末配列が含まれる。
【0189】
一般には、レプリコン及び宿主細胞と適合性のある種に由来するコントロール配列を含んでいるプラスミドベクターが、宿主細胞と関連して使用される。そのベクターは、通常、複製開始点並びに形質転換細胞において表現型の選択を提供可能なマーキング配列を有する。例えば、一般的に大腸菌は、大腸菌種由来のプラスミドであるpBR322を用いて形質転換する。pBR322はアンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性のコード遺伝子を含んでいるため、形質転換細胞を容易に同定することができる。pBR322、その誘導体又は他の微生物プラスミド又はバクテリオファージも外来性タンパク質を発現する微生物によって使用可能なプロモータを含むか、含むように変更される。特定の抗体の発現に使用されるpBR322誘導体の例はCarter等の米国特許第5648237号に詳細に記載されている。
【0190】
また、レプリコン及び宿主微生物と適合性のあるコントロール配列を含んでいるファージベクターを、これらの宿主との関連でトランスフォーミングベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.-11のようなバクテリオファージを、大腸菌LE392のような感受性の宿主細胞を形質転換するために使用できる組換えベクターを作製する際に利用することができる。
【0191】
本発明の発現ベクターは各ポリペプチド成分をコードする2又はそれ以上のプロモータ−シストロン(翻訳単位)対を含みうる。プロモーターはその発現を調節するシストロンの上流(5')に位置している非翻訳配列である。原核生物のプロモーターは典型的には誘導性と構成的との二つのクラスのものがある。誘導性プロモーターは、例えば栄養分の有無又は温度の変化のような、培養条件の変化に応答してその調節下でシストロンの転写レベルを増大させるように誘導するプロモーターである。
【0192】
様々な潜在的宿主細胞によって認識されるプロモータが非常にたくさん公知となっている。選択したプロモーターを、制限酵素消化によって供給源DNAからプロモータを除去し、本発明のベクター内に単離したプロモータを挿入することによって軽鎖又は重鎖をコードするシストロンDNAに作用可能に連結することができる。天然プロモーター配列と多くの異種プロモーターの双方を、標的遺伝子の増幅及び/又は発現を生じさせるために使用することができる。ある実施態様では、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比較して、一般的に発現する標的遺伝子をより多く転写させ、効率をよくするので、異種プロモーターが有用である。
【0193】
原核生物宿主での使用に好適なプロモーターには、PhoAプロモーター、βガラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系及びハイブリッドプロモーター、例えばtac又はtrcプロモーターが含まれる。しかし、細菌中で機能性である他のプロモーター(例えば他の既知の細菌又はファージプロモーター)も好適である。そのヌクレオチド配列は発表されており、よって当業者は、任意の必要とされる制限部位を供給するリンカー又はアダプターを使用して標的軽鎖及び重鎖をコードするシストロンにそれらを結合させることができる(Siebenlist等 (1980) Cell 20:269)。
【0194】
本発明の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、膜を貫通して発現されるポリペプチドの転写を誘導する分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列はベクターの成分でありうるか、ベクター中に挿入される標的ポリペプチドDNAの一部でありうる。この発明の目的のために選択されるシグナル配列は宿主細胞によって認識されプロセシングされる(つまりシグナルペプチダーゼにより切断される)ものでなければならない。異種ポリペプチドに天然のシグナル配列を認識せずプロセシングする原核生物宿主細胞に対しては、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ippあるいは熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列によって置換される。一実施態様では、発現系の双方のシストロンに使用されるシグナル配列はSTIIシグナル配列又はその変異体である。
【0195】
他の態様では、本発明による免疫グロブリンは宿主細胞の細胞質内で産生されるので、各シストロン内に分泌シグナル配列の存在は必要でない。この点において、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖は発現され、折り畳まれ、集合して細胞質内に機能的免疫グロブリンを形成する。ジスルフィド結合形成に好適な細胞質条件を示し、発現したタンパク質サブユニットを好適に折り畳み、集合することができる宿主系が存在する(例として大腸菌trxB
−系)。Proba及びPluckthun Gene, 159:203 (1995)。
【0196】
本発明の抗体を発現するのに適した原核生物宿主細胞には、古細菌及び真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物が含まれる。有用な細菌の例には、エシェリキア属(例えば大腸菌)、バシラス属(例えば枯草菌)、エンテロバクター属、シュードモナス種(例えば緑膿菌)、ネズミチフス菌、霊菌(Serratia marcescans)、クレブシエラ属、プロテウス属、赤痢菌、根粒菌、ビトレオシラ(Vitreoscilla)又はパラコッカス(Paracoccus)が含まれる。一実施態様では、グラム陰性菌が使用される。一実施態様では、大腸菌細胞が本発明の宿主として使用される。大腸菌株の例として、遺伝子型W3110 ΔfhuA (ΔtonA) ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc-fepE) degP41 kan
R を有する33D3株(米国特許第5,639,635号)を含むW3110株 (Bachmann, Cellular and Molecular Biology, vol. 2 (Washington, D.C.: American Society for Microbiology, 1987), 1190-1219頁;ATCC寄託番号27,325)及びその誘導体が含まれる。また、大腸菌294 (ATCC(登録商標)31,446), 大腸菌B, 大腸菌
λ 1776 (ATCC(登録商標)31,537)及び大腸菌RV308(ATCC(登録商標)31,608) など、他の株及びその誘導体も好適である。この例は限定的なものでなく例示的なものである。定義した遺伝子型を有する上記の何れかの細菌の誘導体の構築方法は当業者に公知であり、例として, Bass等, Proteins, 8:309-314 (1990)に記載されている。一般的に、細菌細胞中でのレプリコンの複製能を考慮して適した細菌を選択することが必要である。pBR322、pBR325、pACYC177、又はpKN410のようなよく知られたプラスミドを使用してレプリコンを供給する場合、例えば、大腸菌、セラシア属、又はサルモネラ種を宿主として好適に用いることができる。典型的に、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌しなければならず、望ましくは更なるプロテアーゼインヒビターを細胞培養中に導入することができる。
【0197】
ii. 抗体産生
上述した発現ベクターで宿主細胞を形質転換又は形質移入し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように修飾された通常の栄養培地中で培養する。
形質転換とは、DNAを原核生物宿主中に導入し、そのDNAを染色体外要素として、又は染色体組込みによって複製可能にすることを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換はそのような細胞に適した標準的技術を使用してなされる。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理は実質的な細胞壁障害を含む細菌細胞のために一般に使用される。形質転換のための他の方法はポリエチレングリコール/DMSOを用いる。さらに別の方法はエレクトロポレーションである。
【0198】
本発明のポリペプチドを生産するために使用される原核生物細胞は当該分野で知られ、選択された宿主細胞の培養に適した培地中で増殖させられる。好適な培地の例には、ルリア培地(LB)プラス必須栄養分サプリメントが含まれる。ある実施態様では、培地は発現ベクターを含む原核生物細胞の増殖を選択的に可能にするために、発現ベクターの構成に基づいて選択される選択剤をまた含む。例えば、アンピシリンがアンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖用培地に加えられる。
【0199】
炭素、窒素及び無機リン酸源の他に任意の必要なサプリメントを、単独で、又は複合窒素源のような他のサプリメント又は培地との混合物として導入される適切な濃度で含有させられうる。場合によっては、培養培地はグルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール及びジチオトレイトールからなる群から選択される一又は複数の還元剤を含みうる。
【0200】
原核生物宿主細胞は適切な温度で培養される。例えば、大腸菌の増殖に対しては、好適な温度は約20℃から約39℃、より好ましくは約25℃から約37℃の範囲、更により好ましくは約30℃である。培地のpHは、主として宿主生物に応じて、約5から約9の範囲の任意のpHでありうる。大腸菌に対しては、pHは好ましくは約6.8から約7.4、より好ましくは約7.0である。
【0201】
本発明の発現ベクターに誘導性プロモータが用いられる場合、プロモータの活性に適する条件下でタンパク質発現を誘導する。本発明の一態様では、ポリペプチドの転写制御のためにPhoAプロモータが用いられる。したがって、形質転換した宿主細胞を誘導のためにリン酸限定培地で培養する。好ましくは、リン酸限定培地はC.R.A.P培地である(例として、Simmons等, J. Immunol. Methods (2002), 263:133-147を参照)。様々な他の誘導因子は用いるベクターコンストラクトに応じて当業者に知りうるように用いてよい。
【0202】
一実施態様では、発現された本発明のポリペプチドは宿主細胞の細胞膜周辺中に分泌され、そこから回収される。タンパク質の回収は、一般的には浸透圧ショック、超音波処理又は溶解のような手段によって典型的には微生物を破壊することを含む。ひとたび細胞が破壊されると、細胞片又は全細胞を遠心分離又は濾過によって除去することができる。タンパク質は、例えばアフィニティー樹脂クロマトグラフィーによって更に精製することができる。あるいは、タンパク質は培養培地に輸送しそこで分離することができる。細胞を培養物から除去することができ、培養上清は濾過され、生成したタンパク質の更なる精製のために濃縮される。発現されたポリペプチドを更に単離し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)及びウェスタンブロットアッセイ法のような一般的に知られている方法を使用して同定することができる。
【0203】
本発明の一側面では、抗体産生は発酵法によって多量に受け継がれる。組換えタンパク質の生産には様々な大規模流加発酵法を利用することができる。大規模発酵は少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1000から100000リットルの容量である。これらの発酵槽は、酸素と栄養分、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分散させる撹拌翼を使用する。小規模発酵とは一般におよそ100リットル以下の容積で、約1リットルから約100リットルの範囲でありうる発酵槽での発酵を意味する。
【0204】
発酵法では、タンパク質の発現の誘導は、典型的には、細胞が適切な条件下にて、初期定常期に細胞があるステージで、所望の密度、例えば約180−220のOD
550まで増殖したところで開始される。当該分野で知られ上述されているように、用いられるベクターコンストラクトに応じて、様々なインデューサーを用いることができる。細胞を誘導前の短い時間の間、増殖させてもよい。細胞は通常約12−50時間の間、誘導されるが、更に長い又は短い誘導時間としてもよい。
【0205】
本発明のポリペプチドの生産収量と品質を改善するために、様々な発酵条件を変更することができる。例えば、分泌される抗体ポリペプチドの正しい組み立てとフォールディングを改善するために、例えばDsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD及び/又はDsbG)又はFkpA(シャペロン活性を持つペプチジルプロピルシス、トランス-イソメラーゼ)のようなシャペロンタンパク質を過剰発現する更なるベクターを用いて宿主原核細胞を同時形質転換させることができる。シャペロンタンパク質は細菌宿主細胞中で生産される異種性タンパク質の適切な折り畳みと溶解性を容易にすることが実証されている。Chen等 (1999) J Bio Chem 274:19601-19605;Georgiou等, 米国特許第6083715号;Georgiou等, 米国特許第6027888号;Bothmann及びPluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17100-17105;Ramm及びPluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17106-17113;Arie等 (2001) Mol. Microbiol. 39:199-210。
【0206】
発現された異種タンパク質(特にタンパク分解を受けやすいもの)のタンパク質分解を最小にするために、タンパク質分解酵素を欠くある種の宿主株を本発明に用いることができる。例えば、原核生物宿主細胞株を改変して、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI及びその組合せのような既知の細菌プロテアーゼをコードしている遺伝子に遺伝子突然変異を生じさせることができる。幾つかの大腸菌プロテアーゼ欠損株が利用でき、例えば、上掲のJoly等 (1998);Georgiou等, 米国特許第5264365号;Georgiou等, 米国特許第5508192号;Hara等 (1996) Microbial Drug Resistance 2:63-72に記載されている。
ある実施態様では、タンパク質溶解性酵素を欠損した、一以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換した大腸菌株を本発明の発現系の宿主細胞として用いる。
【0207】
iii. 抗体精製
当分野で公知の標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。以下の方法は好適な精製手順の例である:免疫親和性又はイオン交換カラムによる分画化、エタノール沈降法、逆相HPLC、シリカ又はDEAEなどの陽性交換樹脂によるクロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈降法及び、例えばSephadex(登録商標)G-75を用いたゲル濾過法。
【0208】
一態様では、固形層に固定したプロテインAを本発明の完全長抗体産物の免疫親和性精製法に用いる。プロテインAは抗体のFc領域に高い親和性で結合する黄色ブドウ球菌から単離した41kDの細胞壁タンパク質である。Lindmark等 (1983) J. Immunol. Meth. 62:1-13。プロテインAを固定した固形層は、ガラス又はシリカ表面、より好ましくは孔を調節したガラスカラム又はケイ酸カラムを含むカラムが好ましい。ある方法では、カラムは非特異的な混入物の接着を防ぐためにグリセロールなどの試薬でコートされている。
【0209】
精製の初めの工程では、上記に記載のように細胞培養物からの調製物をプロテインA固定固形層に適応し、プロテインAに対象とする抗体を特異的に結合させる。ついで、固形層を洗浄して、固形層に非特異的に結合した混入物を除去する。最後に、対象とする抗体を溶出により固形層から除去する。
【0210】
b. 真核生物の宿主細胞を用いた抗体の生成
一般的に、ベクターは、限定するものではないが、以下の一以上を含む:シグナル配列、複製起点、一以上のマーカ遺伝子、エンハンサー因子、プロモータ及び転写終末因子。
【0211】
(i) シグナル配列成分
真核生物の宿主細胞に用いるベクターは、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいは対象とするポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドを含んでいてもよい。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物細胞での発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。
このような前駆体領域のDNAは、多価抗体をコードするDNAに読み取り枠を一致させて結合される。
【0212】
(ii) 複製開始点
一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である。例えば、SV40開始点は典型的にはただ初期プロモーターを有しているために用いられる。
【0213】
(iii) 選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)必要があれば栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
選択方法の一例では、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択工程を生存する。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
【0214】
哺乳動物細胞に適切な選択マーカーの他の例は、抗体核酸を捕捉することのできる細胞成分を同定することを可能にするもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等々である。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である(例として、ATCC(登録商標)CRL-9096)。
あるいは、抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。米国特許第4965199号を参照のこと。
【0215】
(iv) プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは通常は宿主生物体によって認識され抗体ポリペプチド核酸に作用可能に結合しているプロモーターを含む。真核生物のプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有している。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT(配列番号:206)領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA(配列番号:207)配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
【0216】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗体ポリペプチドの転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点を更に含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主中でDNAを発現させる系が、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は米国特許第4601978号に開示されている。あるいは、ラウス肉腫ウィルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
【0217】
(v) エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物によるこの発明の抗体ポリペプチドをコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強される。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体ポリペプチドコード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされうるが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
【0218】
(vi) 転写終末成分
また、真核生物宿主細胞に用いられる発現ベクターは、典型的には、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
【0219】
(vii) 宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、脊椎動物の宿主細胞を含む本明細書中に記載の高等真核生物細胞を含む。培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC(登録商標)CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC(登録商標)CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CV1 ATCC(登録商標)CCL70); アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC(登録商標)CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC(登録商標)CCL2);イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC(登録商標)CCL34);バッファローラット肝細胞 (BRL3A, ATCC(登録商標)CRL1442);ヒト肺細胞 (W138, ATCC(登録商標)CCL75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB8065);マウス乳房腫瘍細胞 (MMT060562, ATCC(登録商標)CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
宿主細胞は、抗体生産のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
【0220】
(viii) 宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN
TM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0221】
(ix) 抗体の精製
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内で生成され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生成された場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はPelliconの限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0222】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 16571575 (1986))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がC
H3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX
TM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂上でのSEPHAROSE
TMクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿法も、回収される多価抗体に応じて利用可能である。
予備的精製工程に続いて、目的の抗体及び混入物を含む混合液をpH約2.5−4.5、好ましくは低塩濃度(例として、約0−0.25M塩)の溶出緩衝液を用いて低pH疎水性作用クロマトグラフィを行う。
【0223】
イムノコンジュゲート
また、本発明は、化学療法剤、薬剤、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、糸状菌、植物又は動物由来の酵素活性性毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)などの一又は複数の細胞毒性剤にコンジュゲートした抗体を含んで成る、イムノコンジュゲート(「抗体−薬剤コンジュゲート」又は「ADC」と交換可能に称される)を提供する。
【0224】
イムノコンジュゲートは、癌の治療において、細胞障害剤、つまり細胞の成長又は増殖を殺す又は阻害する薬剤の局所的運搬のために使用されてきた(Lambert, J. (2005) Curr. Opinion in Pharmacology 5:543-549; Wu 等 (2005) Nature Biotechnology 23(9):1137-1146; Payne, G. (2003) i 3:207-212; Syrigos及びEpenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614; Niculescu-Duvaz及びSpringer (1997) Adv. Drug Deliv. Rev. 26:151-172; 米国特許第4975278号)。イムノコンジュゲートは、腫瘍への薬剤成分の標的とする運搬とそこでの細胞内集積が可能とし、この非コンジュゲート薬物作用剤の全身性投与により正常細胞並びに除去しようとする腫瘍細胞への毒性が容認できないレベルとなりうる(Baldwin等, (1986) Lancet pp. (Mar. 15, 1986):603-05; Thorpe, (1985) 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,」 in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, A. Pincheraら. (ed.s), pp. 475-506)。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体双方がこの方策に有用であるとして報告されている(Rowland等, (1986) Cancer Immunol. Immunother., 21:183-87)。この方法に用いる薬物には、ダウノマイシン、ドキソルビジン、メトトレキサート及びビンデジンが含まれる(Rowland等, (1986)、上掲)。抗体−毒素コンジュゲートに用いる毒素には、ジフテリア毒素などの細菌性毒素、ゲルダナマイシン(Mandlerら(2000) Jour. of the Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581;Mandlerら(2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028;Mandlerら(2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(EP 1391213;Liu等, (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、及びカリケアマイシン(Lode等, (1998) Cancer Res. 58:2928;Hinman等, (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)などのリシン、小分子毒素などの植物毒が含まれる。該毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機能によりその細胞障害性及び細胞分裂停止性の効果に影響しうる。ある種の細胞障害性剤は、大きな抗体又はタンパク質レセプターリガンドにコンジュゲートした場合に、不活性又は活性が低減する傾向がある。
【0225】
ゼバリン(ZEVALIN)(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン(ibritumomab tiuxetan), Biogen/Idec)は正常及び悪性のBリンパ球の細胞表面上にみられるCD20抗原に対するマウスIgG1κモノクローナル抗体と
111In又は
90Y放射性同位体とがチオウレアリンカーキレート剤にて結合した抗体−放射性同位体コンジュゲートである(Wiseman等, (2000) Eur. Jour. Nucl. Med. 27(7):766-77;Wiseman等, (2002) Blood 99(12):4336-42;Witzig等, (2002) J. Clin. Oncol. 20(10):2453-63;Witzig等, (2002) J. Clin. Oncol. 20(15):3262-69)。ゼバリンはB細胞非ホジキン性リンパ球(NHL)に対して活性を有するが、投与によってほとんどの患者に重症で長期の血球減少を引き起こす。カリケアマイシンに連結したhuCD33抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるマイロターグ(MYLOTARG)(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン(gemtuzumab ozogamicin), Wyeth Pharmaceuticals)は、急性骨髄性白血病の治療用注射剤として2000年に認可された(Drugs of the Future (2000) 25(7):686;米国特許第4970198号;同第5079233号;同第5585089号;同第5606040号;同第5693762号;同第5739116号;同第5767285号;同第5773001号)。ジスルフィドリンカーSPPを介してメイタンシノイド薬剤分子DM1と連結しているhuC242抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるカンツズマブメルタンシン(Cantuzumab mertansine)(Immunogen, Inc.)は、CanAgを発現する癌、例として大腸、膵臓、胃、及び他の癌などの治療用に第II相試験へと進んでいる。メイタンシノイド薬剤分子DM1と連結している抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)モノクローナル抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるMLN−2704(Millennium Pharm., BZL Biologics, Immunogen Inc.)は、前立腺癌の潜在的治療の開発段階にある。アウリスタチン(auristatin)ペプチド、アウリスタチンE(AE)及びモノメチルアウリスタチン(MMAE)、ドラスタチン(dolastatin)の合成類似体は、キメラモノクローナル抗体cBR96(癌細胞上のルイスYに特異的)及びcAC10(血液系悪性腫瘍上のCD30に特異的)(Doronina等, (2003) Nature Biotechnology 21(7):778-784)にコンジュゲートしており、治療的開発段階にある。
【0226】
ある実施態様では、イムノコンジュゲートは、抗体及び化学療法剤又は他の毒素を含む。免疫複合体(イムノコンジュゲート)の生成に有用な化学治療薬を本明細書中(例えば、上記)に記載した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。例として1993年10月28日に公開の国際公開公報93/21232を参照のこと。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、
212Bi、
131I、
131In、
90Y及び
186Reが含まれる。抗体及び細胞障害性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。国際公開94/11026参照。
抗体のコンジュゲートと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウロスタチン、トリコセン(trichothene)及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が、ここで考察される。
【0227】
メイタンシン及びメイタンシノイド
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは一又は複数のメイタンシノイド分子と結合している抗体(完全長又は断片)を含んでなる。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及び類似体は、例えば米国特許第4137230号;同4248870号;同4256746号;同4260608号;同4265814号;同4294757号;同4307016号;同4308268号;同4308269号;同4309428号;同4313946号;同4315929号;同4317821号;同4322348号;同4331598号;同4361650号;同4364866号;同4424219号;同4450254号;同4362663号;及び同4371533号に開示されている。
メイタンシノイド薬剤成分は、(i) 発酵又は化学修飾、発酵産物の誘導体化によって調製するために相対的に利用可能である(ii) 抗体に対する非ジスルフィドリンカーによる共役に好適な官能基による誘導体化に従う、(iii) 血漿中で安定、そして(iv) 様々な腫瘍細胞株に対して有効であるため、抗体薬剤コンジュゲートの魅力的な薬剤成分である。
【0228】
メイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲート、その作製方法及びそれらの治療用途は、例えば米国特許第5,208,020号、同5,416,064号、欧州特許第0425235 B1号に開示されている。Liu等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623(1996)には、ヒト結腸直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲートが記載されている。前記コンジュゲートは培養された結腸癌細胞に対して高い細胞障害性を有することが見出されており、インビボ腫瘍成長アッセイにおいて抗腫瘍活性を示す。Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィド結合を介して、ヒト結腸癌株化細胞の抗原に結合するマウス抗体A7、又はHER-2/neuオンコジーンに結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に結合しているイムノコンジュゲートが記載されている。TA.1-メイタンシノイドコンジュゲートの細胞障害性はヒト乳癌株化細胞SK-BR-3におけるインビトロで試験され、細胞当たり3×10
5HER-2表面抗原が発現した。薬剤コンジュゲートにより、遊離のメイタンシノイド剤に類似した細胞障害度が達成され、該細胞障害度は、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることにより増加する。A7-メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいては低い全身性細胞障害性を示した。
【0229】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子のいずれの生物学的活性もほとんど低減することなく、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることにより調製される。例えば、米国特許第5208020号を参照。1分子の毒素/抗体は、裸抗体の使用において細胞障害性を高めることが予期されているが、抗体分子当たり、平均3−4のメイタンシノイド分子が結合したものは、抗体の機能又は溶解性に悪影響を与えることなく、標的細胞に対する細胞障害性を向上させるといった効力を示す。メイタンシノイドは当該技術分野でよく知られており、公知の技術で合成することも、天然源から単離することもできる。適切なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5208020号、及び他の特許、及び上述した特許ではない刊行物に開示されている。好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノール、及び種々のメイタンシノールエステル等の、メイタンシノール分子の芳香環又は他の位置が修飾されたメイタンシノール類似体である。
【0230】
例えば、米国特許第5208020号又は欧州特許第0425235号B1、Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)、及び2004年10月8日に出願の米国特許出願番号10/960,602に開示されているもの等を含め、抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するために、当該技術で公知の多くの結合基がある。リンカー成分SMCCを含んでなる抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、2004年10月8日に出願の米国特許出願番号10/960,602に開示されるように調製されうる。結合基には、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。更なる結合基を本願明細書中に記載し、例示する。
【0231】
抗体とメイタンシノイドとのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。特に好ましいカップリング剤には、ジスルフィド結合により提供されるN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)及びN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson等, Biochem. J. 173:723-737[1978])が含まれる。
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じる。好ましい実施形態において、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールの類似体のC-3位で形成される。
【0232】
アウリスタチン類及びドラスタチン類
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチン又はドロスタチンペプチジル類似体及び誘導体、アウリスタチン(auristatin) (米国特許第5635483号;同第5780588号)にコンジュゲートした本発明の抗体を含んでなる。ドラスタチン及びアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解及び核と細胞の分割を妨げ(Woyke 等 (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12): 3580-3584)、抗癌活性(米国特許第5663149号)及び抗真菌性活性(Pettit 等 (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチン又はアウリスタチン薬剤成分は、ペプチジル薬剤分子のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端により抗体に接着しうる(国際公開公報02/088172)。
例示的なアウリスタチンの実施態様は、N末端連結モノメチルアウリスタチン薬剤成分DE及びDFを含み、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands", US Ser. No. 10/983,340, filed Nov. 5, 2004に開示される。
【0233】
一般的に、ペプチドベースの薬剤成分は、2以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片間でペプチド結合を形成することによって調製されうる。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野において周知の液相合成方法に従って調製することができる(E. Schroder and K. Lubke, "The Peptides", volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Pressを参照)。アウリスタチン/ドラスタチン薬剤成分は、米国特許第5635483号;同第5780588号;Pettit 等 (1989) J. Am. Chem. Soc. 111: 5463-5465;Pettit 等 (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277;Pettit, G.R., 等 Synthesis, 1996, 719-725;及びPettit 等 (1996) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 5:859-863の方法に従って調製されうる。また、Doronina (2003) Nat Biotechnol 21(7): 778-784;2004年11月5日出願の、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、米国特許出願番号10/983340(例えば、リンカー及びモノメチルバリン化合物、例えばMMAE及びリンカーにコンジュゲートしたMMAFの調整方法を開示している)も参照のこと。
【0234】
カリケアマイシン
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子と結合した抗体を含んでなる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ
1I、α
2I、α
3I、N-アセチル-γ
1I、PSAG及びθ
I1(Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)、Lode等 Cancer Research, 58:2925-2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体が結合可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
【0235】
他の細胞障害剤
抗体と結合可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5877296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成されるイムノコンジュゲートをさらに考察する。
【0236】
腫瘍を選択的に破壊するため、抗体は高い放射性を有する原子を含有してよい。放射性コンジュゲートした抗体を生成するために、種々の放射性同位体が利用される。例には、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位体が含まれる。コンジュゲートが検出に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばtc
99m又はI
123、又は核磁気共鳴(NMR)映像(磁気共鳴映像、mriとしても公知)用のスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含有し得る。
放射-又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、ペプチドは生物合成されるか、又は水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばtc
99m又はI
123、Re
186、Re
188及びIn
111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム-90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Fraker等(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
【0237】
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞障害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992);米国特許第5208020号)。
本発明の化合物は、限定するものではないが、架橋剤:市販されている(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aより)BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、及びSVSB (succinimidyl-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)にて調製したADCが特に考えられる。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467-498頁を参照。
【0238】
抗体薬剤コンジュゲートの調製
抗体薬剤コンジュゲート(ADC)において、抗体(Ab)を、リンカー(L)を介して、一つ以上の薬剤部分(D)、例えば抗体につき約1〜約20の薬剤部分にコンジュゲートする。式IのADCはいくつかの手段、当業者に公知の有機化学反応、状態及び試薬を用いて調製されうる:(1) 共有結合の後に薬剤部分Dと反応してAb-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた抗体の求核基の反応;及び(2) 共有結合の後に抗体の求核基と反応してD-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた薬剤部分の求核基の反応、が含まれる。ADCを調製するための更なる方法は本願明細書中に記載される。
Ab−(L−D)
p I
リンカーは、一つ以上のリンカー成分から成ってもよい。例示的なリンカー成分は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボンイル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」)、及びN-スクシンイミジル(4-イオド-アセチル)アミノ安息香酸エステル(「SIAB」)を含む。更なるリンカー成分は当分野で公知であり、そのいくつかは本願明細書において、記述される。また、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、2004年11月5日に出願した米出願番号10/983340を参照。
【0239】
いくつかの実施態様では、リンカーはアミノ酸残基を含みうる。例示的なアミノ酸リンカー成分には、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドなどがある。例示的なジペプチドは、バリン-シトルリン(vc又はval-cit)、アラニン-フェニルアラニン(af又はala-phe)を含む。例示的なトリペプチドは、グリシン-バリン-シトルリン(gly-val-cit)及びグリシン-グリシン-グリシン(gly-gly-gly)を含む。アミノ酸リンカー成分を含んでなるアミノ酸残基は、天然に生じるもの、並びに微量のアミノ酸及び非天然に生じるアミノ酸類似体、例えばシトルリンを含む。アミノ酸リンカー成分は設定され、特に酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD又はプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断の選択性に最適化できる。
【0240】
抗体上の求核基には、限定するものでなく、以下のものを含む:(i) N末端アミン基、(ii) 側鎖アミン基、例えばリシン、(iii) 側鎖チオール基、例えばシステイン、及び(iv) 抗体がグリコシル化される糖水酸基又はアミノ基。アミン、チオール及び水酸基は、求核であり、反応して、リンカー部分上の求電子性の群及びリンカー試薬により共有結合を形成することができる:(i) 活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸及び酸ハロゲン化物;(ii) アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii) アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド群、が含まれる。特定の抗体は、還元しうる鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、還元剤、例えばDTT(ジチオトレイトール)による処置によって、リンカー試薬を用いたコンジュゲート反応を行ってもよい。ゆえに、各々のシステイン架橋は、理論的には、2の反応性のチオール求核基を形成する。チオールにアミンを転換させる2-イミノチオラン(トラウトの試薬)を用いてリシンを反応させることによって抗体に付加的な求核基を導入することができる。反応性のチオール基は、1、2、3、4又はそれ以上のシステイン残基を導入する(例えば、一又は複数の非天然のシステインアミノ酸残基を含んでなる変異体抗体を調製する)ことによって抗体(又は、その断片)に導入されてもよい。
【0241】
また、本発明の抗体薬剤コンジュゲートは、抗体を修飾して求電子性の部分を導入する(リンカー試薬又は薬剤上の求核置換基と反応させることができる)ことによって生成してもよい。グリコシル化された抗体の糖質を、例えば過ヨウ素酸塩酸化剤を用いて酸化して、リンカー試薬又は薬剤部分のアミン基と反応するアルデヒド又はケトン基を形成させてもよい。生じたイミンシッフ塩基群が安定結合を形成するか、又は例えば安定アミン結合を形成させるホウ化水素試薬によって、還元してもよい。一実施態様では、ガラクトースオキシダーゼ又はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩の何れかによるグリコシル化抗体の炭水化物部分の反応により、薬剤(Hermanson, Bioconjugate Techniques)上の適当な基と反応することができるタンパク質のカルボニル(アルデヒド及びケトン)基が生じうる。他の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含んでいるタンパク質はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩と反応して、第一のアミノ酸の代わりにアルデヒドを生成する(Geoghegan & Stroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146;米国特許第5362852号)。このようなアルデヒドは、薬剤部分又はリンカー求核基と反応することができる。
【0242】
同様に、薬剤部分上の求核基には、限定するものではないが、以下のものを含む:反応して、リンカー部分及びリンカー試薬上の求電子性の基と共有結合することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボン酸エステル及びアリールヒドラジド基:(i) 活性エステル(例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸及び酸ハロゲン化物);(ii) アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii) アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基、が含まれる。
別法として、抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から非結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0243】
本発明の組成物
本発明はまた、抗Bv8抗体を含有する医薬組成物等の組成物、および抗Bv8抗体をコードする配列を含むポリヌクレオチドを包含する。ここで用いるように、組成物は、Bv8に結合する一又は複数の抗体、および/または、Bv8に結合する一又は複数の抗体をコードする配列を含む一又は複数のポリヌクレオチドを含有する。これらの組成物はさらに適切な担体、例えばバッファ等の薬学的に許容される賦形剤を含有してもよく、それは当分野でよく知られている。
本発明の抗Bv8抗体を含んでなる治療用製剤は、所望の純度を持つ抗体と、場合によっては生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤を混合することにより(Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th edition (2000))、水溶液、凍結乾燥又は他の乾燥製剤の形態に調製されて保存される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量と濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、ヒスチジン及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEEN
TM、PLURONICS
TM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0244】
ここでの製剤は、治療される特定の徴候のために必要ならば一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を持つものも含んでよい。そのような分子は、好適には、意図する目的のために有効な量で組み合わされて存在する。
また活性成分は、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、コロイド状ドラッグデリバリー系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)に、あるいはマクロエマルションに捕捉させてもよい。このような技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th edition (2000)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
【0245】
徐放性調合物を調製してもよい。徐放性調合物の好ましい例は、本発明の免疫グロブリンを含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT
TM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは、分子を100日以上かけて放出することを可能にするが、ある種のヒドロゲルはタンパク質をより短い時間で放出する。カプセル化された抗体が体内に長時間残ると、37℃の水分に暴露された結果として変性又は凝集し、生物活性を喪失させ免疫原性を変化させるおそれがある。合理的な戦略を、関与するメカニズムに応じて安定化のために案出することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S結合の形成であることが見いだされた場合、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含有量を制御し、適当な添加剤を使用し、また特定のポリマーマトリクス組成物を開発することによって達成されうる。
【0246】
用途
本発明の抗体は、例えばインビトロ、エクスビボ、及びインビボ治療法において使用され得る。
本発明は、例えば、増加した発現及び/又は活性又は望まない発現及び/又は活性等の、Bv8の発現及び/又は活性に伴う疾病状態を調節するために有用な方法及び組成物を提供し、前記方法は、このような治療が必要である個体に有効量の抗Bv8抗体を投与することを含んでなる。
一態様では、本発明は、腫瘍、癌、及び/又は細胞増殖性疾患を治療又は防止するための方法を提供し、該方法は、このような治療が必要である個体に有効量の抗Bv8抗体を投与することを含んでなる。
一態様では、本発明は、血管形成を阻害するための方法を提供し、該方法は、このような治療が必要である個体に有効量の抗Bv8抗体を投与することを含んでなる。
一態様では、本発明は、腫瘍転移を阻害するための方法を提供し、該方法は、このような治療が必要である個体に有効量の抗Bv8抗体を投与することを含んでなる。
一態様では、本発明は、内皮細胞増殖を阻害するための方法を提供し、該方法は、このような治療が必要である個体に有効量の抗Bv8抗体を投与することを含んでなる。
一態様では、本発明は別の抗血管新生剤の効果を増強するための方法を提供し、該方法は、このような治療が必要である個体に有効量の抗Bv8抗体を投与することを含んでなる。幾つかの実施態様では、個体は腫瘍、癌、及び/又は細胞増殖性疾患を有する。幾つかの実施態様では、他の抗血管新生剤はVEGFを標的とし、例えば抗VEGF抗体等である。
治療の方法において、何れの適切な抗Bv8抗体が使用されてもよいことが理解され、モノクローナル及び/又はポリクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、親和性成熟抗体、ヒト化抗体、及び/又は抗体断片を含む。幾つかの実施態様では、ここに記載される何れの抗Bv8抗体が治療のために使用される。
【0247】
ここに記載される何れの方法のおいて、治療を必要とする被検体の状態を治療することが可能な別の活性剤である第二の医薬(本明細書の抗Bv8抗体は第一医薬)を有効量、本明細書の抗Bv8抗体と共に被検体又は患者に投与してもよい。例えば、本発明の抗体は、別の抗体、化学療法剤(化学療法剤のカクテルを含む)、抗血管新生剤、免疫抑制剤、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、及び/又は増殖阻害剤と共に併用投与されてもよい。このような第二医薬のタイプは、疾患のタイプ、疾病の重症度、患者の状態及び年齢、使用される第一医薬のタイプ及び投与量等を含む様々な要因に依存する。
本発明の抗体は腫瘍成長を阻害するが、例えば、腫瘍の成長を阻害する一又は複数の他の療法剤と組み合わせることが特に望まれ得る。例えば、本発明の抗体は、例えば、結腸直腸癌、肺癌、肝細胞癌、乳癌及び/又は膵臓癌を含む、本明細書に記載される何れの疾病の治療における治療スキームにおいて、例えば、抗VEGF抗体(例えばAVASTIN(登録商標))及び/又は抗ERBB抗体(例えば、HERCEPTIN(登録商標)トラツズマブ抗HER2抗体又はEGFRインヒビター(例えばエルロチニブ(TARCEVA(登録商標)))又はHER2のドメインIIに結合する抗HER2抗体、例えばOMNITARG
TMパーツズマブ抗HER2抗体)等の抗血管新生剤と併用されてもよい。別法では、又は更には、患者は、放射線療法(例えば、遠隔照射、又は抗体等の放射線標識された薬剤を用いた治療)を組み合わせて受けてもよい。上記のこのような組合せ両方は、組合せ投与(二又は複数の薬剤が同じ又は別の製剤に含まれる)、及び個別投与、この場合は、本発明の抗体の投与はアジュバント療法又は複数のアジュバント療法の実施の前及び/又は後に行われ得る、を含む。更に、本発明の抗体を、比較的否細胞障害性の薬剤、例えば、別の抗体等の別の生物学的分子と組み合わせることが、抗体を、細胞に高い毒性である他の薬剤の化学療法剤と組み合わせることと比べ、細胞傷害性を低減するのに期待される。
【0248】
本明細書に記載の抗体と一又は複数の第二医薬との組合せによる治療は、癌のサイン又は症状において好ましくは改善となる。例えば、このような療法は、第二医薬のみ(例えば化学療法剤のみ)を用いて治療された患者と比較して、生存率(全生存率及び/又は無増悪生存率)が改善される結果となり得、及び/又は客観的奏効(objective response)*(部分又は完全、好ましくは完全)となり得る。更には、本明細書に記載の抗体と一又は複数の第二医薬との組合せによる治療は、患者に対して、好ましくは相加的、及びより好ましくは相乗的(相加的より大きい)な治療的利点となる。ある実施態様では、第二医薬の少なくとも一回の投与と、本明細書に記載の抗体の少なくとも一回の投与との間の時間は約1か月以下である。ある実施態様では、第二医薬の少なくとも一回の投与と、本明細書に記載の抗体の少なくとも一回の投与との間の時間は約2週間以下である。ある実施態様では、本明細書に記載の抗体と第二医薬は同時に投与される。
癌の治療では、第二医薬は好ましくは別の抗体、化学療法剤(化学療法剤のカクテルを含む)、抗血管新生剤、免疫抑制剤、プロドラッグ、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、細胞障害性放射療法、コルチコステロイド、制吐剤、癌ワクチン、鎮痛剤、抗血管剤(antivascular agent)、及び/又は増殖阻害剤である。細胞障害剤は、DNAと相互作用する物質、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼI又はII阻害剤、又はスピンドル阻害剤(spindle inhibitor)又はスタビライザー(例えば、好ましくはビンカ・アルカロイド、より好ましくは、ビンブラスチン、デオキシビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビネピジン、ビンフォシルチン、ビンゾリジン、及びビンフニンから選択される)、又は例えば、5-FU、タキサン、ドキソルビシン、又はデキサメタゾン等の化学療法で使用される何れかの薬剤を含む。
幾つかの実施態様では、第二医薬は、癌を治療するために使用される別の抗体であり、例えば、HER2/neuレセプターの細胞外ドメインに指向されるもの、例えばトラツズマブ、又はその機能的断片、pan-HER阻害剤、Src阻害剤、MEK阻害剤、又はEGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体(例えばEGFRのチロシンキナーゼ活性を阻害するもの)、例えばセツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、ジアニリノフタルイミド、ピラゾロ又はピロロピリドピリミジン、キナゾリン、ゲフィチニブ、セツキシマブ、ABX−EFG、カネルチニブ、EKB−569及びPKI−166)、又は二重EGFR/HER-2阻害剤、例えばラパチニブである。更なる第二医薬は、アレムツズマブ(CAMPATH
TM)、FAVID(IDKLH)、変更グリコシル化のCD20抗体、例えば、GA−101/GLYCART
TM、オブリメルセン(GENASENSE
TM)、サリドマイド及びその類似体、例えばレナリドミド (REVLIMID
TM)、イマチニブ、ソラフェニブ、オファツムマブ(HUMAX−CD20
TM)、抗CD40抗体、例えばSGN−40、及び抗CD−80抗体、例えばガリキシマブを含む。
【0249】
制吐剤は、好ましくは、塩酸オンダンセトロン、塩酸グラニセトロン、メトクロプラミド、ドンペリドン、ハロペリドール、ロラゼパム、プロクロルペラジン、デキサメタゾン、レボメプロマジン、又はトロピセトロンである。ワクチンは、好ましくはGM-CSF DNA及び細胞に基づいたワクチン(cell-based vaccines)、樹状細胞ワクチン、組換えウィルス性ワクチン、熱ショックタンパク(HSP)ワクチン、同種又は自己腫瘍ワクチンである。鎮痛剤は好ましくは、イブプロフェン、ナプロキセン、コリンマグネシウムトリサリチル酸、又はオキシコドン塩酸塩である。抗血管剤は、好ましくはベバシズマブ又はRHUMAB-VEGFである。更なる第二医薬は、抗増殖剤、例えば、ファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害剤、抗VEGF阻害剤、p53阻害剤、又はPDGFR阻害剤である。また、ここでの第二医薬は、例えば抗体を用いた治療等の生物学的標的療法(biologic-targeted therapy)、並びに例えば特定のレセプターに対して等の小分子標的療法を含む。
多くの抗血管新生剤が当該分野で同定され知られており、ここに挙げられているもの、例えば定義の下に挙げられているもの、及び例えばCarmeliet and Jain, Nature 407:249-257 (2000); Ferrara等, Nature Reviews:Drug Discovery, 3:391-400 (2004);及びSato Int. J. Clin. Oncol., 8:200-206 (2003)によるもの等を含む。米国公開特許20030055006も参照。一実施態様では、抗Bv8抗体は、抗VEGF中和抗体(又は断片)及び/又は別のVEGFアンタゴニスト又はVEGFレセプターアンタゴニストと組み合わせて使用され、限定するものではないが、例えば、可溶性VEGFレセプター(例えば、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、ニューロピリン(例えば、NRP1、NRP2))断片、VEGF又はVEGFRを遮断可能なアプタマー、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼ(RTK)の低分子量阻害剤、VEGFに対するアンチセンスストラテジー、VEGF又はVEGFレセプターに対するリボザイム、VEGFのアンタゴニスト変異体、;及びこれらの組合せを含む。別法では、又は更には、二又はそれ以上の血管新生阻害剤が、VEGFアンタゴニスト及び他の薬剤に加えて、場合によっては患者に共投与され得る。ある実施態様では、例えば抗癌剤等の一又は複数の更なる治療剤が、抗Bv8抗体、VEGFアンタゴニスト、及び抗血管新生剤と組み合わせて投与されることが出来る。
ここで使用される化学療法剤は上記、例えば「化学療法剤」の定義に記載されている。
【0250】
このような第二医薬は、本明細書の抗体が投与された後48時間以内に、又は前記薬剤の後24時間以内に、又は12時間以内に、又は3〜12時間以内に投与され得、又は所定の期間、好ましくは約1から2日にわたって投与され得る。更には、このような薬剤の投与は、サブ治療的であり得る。
ここでの抗体は、第二医薬と同時に、連続的に、又は交互に、又は他の療法で非反応性の際に投与されることが出来る。このように、第二医薬の併用投与は、個別の製剤又は単一の薬剤的製剤を使用しての同時投与(並行投与)、及び何れかの順番での連続投与、ここでは好ましくは両方(又は全て)の医薬がそれらの生物学的活性を同時に行使する一定期間がある。これらの全ての第二医薬は、お互いに組み合わせて、又は第一医薬とそれらのみによって使用されてもよく、従ってここで使用される「第二医薬」の表現は、それぞれ、第一医薬に加えてそれが唯一の医薬という意味ではない。従って、第二医薬は一つの医薬である必要はなく、一以上のこのような薬剤を構成又は含み得る。
ここに記載のこれらの第二医薬は、一般的には第一医薬と同じ用量及び同じ投与ルートで、又は第一医薬の用量の約1から99%で使用される。このような第二医薬が使用される場合は、特に第一医薬による初回投与の後の連続的投与においては治療による副作用を除く又は低減するために、好ましくは第一医薬が存在しない場合より少ない量で使用される。
【0251】
また、本発明は、難治性腫瘍、再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖を阻害又は防止するための方法及び組成物を提供する。ある実施態様では、再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖は、一又は複数の現在利用可能な治療(例えば癌療法、例として化学療法、放射線療法、手術、ホルモン療法及び/又は生物学的療法/免疫療法、抗VEGF抗体療法、特に特定の癌のための標準的な治療的投薬計画)を受けたか又はそれによって治療された患者が臨床上治療に不十分であるか、又は患者が治療からもはや利益を得ておらずこれらの患者に他の有効な療法が必要とされている状態を表すために用いられる。ある実施態様では、癌は、癌細胞の数が有意に減少していないか又は増加しているか、腫瘍の大きさが有意に減少していないか又は増加しているか、癌細胞の大きさないしは数がもはや減少していない再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖である。ある実施態様では、再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖を有する患者は、一又は複数の現在利用可能な治療に対して抵抗性をもっている。ある実施態様では、難治性なる用語は、一又は複数の現在利用可能な治療(例えば癌療法、例として化学療法、放射線療法、手術、ホルモン療法及び/又は生物学的療法/免疫療法、抗VEGF抗体療法、特に特定の癌のための標準的な治療的投薬計画)を受けたか又はそれによって治療された患者が臨床上治療に不十分である状態を表すために用いられる。ある実施態様では、非応答性/難治性の患者は、治療には反応するが副作用を受けている、治療に反応しない、治療に満足に反応しない等の患者である。ある実施態様では、癌は、腫瘍が以前の治療に対して内因的に非応答性であるか抵抗性がある非応答性/難治性の腫瘍である。ある実施態様では、難治性とは、VEGFアンタゴニストを含む治療法に対する疾患又は状態の内因的な非応答性を指す。癌細胞が難治性、再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖であるかの決定は、インビボ又はインビトロにおいて、癌細胞に対する治療の効果を分析するための当該分野で公知である何れかの方法によって成され、このような場では、分野で容認された「再発」、又は「難治性」又は「非応答性」の意味を使用する。
【0252】
本発明は、被検体において再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖をブロック又は低減するために、有効量の抗Bv8抗体を投与することによって、被検体における再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖をブロック又は低減する方法を提供する。本発明は、患者に有効量の抗Bv8抗体を投与することによって、VEGFアンタゴニストを含む治療に難治性を示す患者の治療方法を提供する。ある実施態様では、抗Bv8抗体は他の癌治療に続いて投与される。ある実施態様では、抗Bv8抗体は癌治療と同時に投与される。別法では、又は更には、抗Bv8抗体療法は、別の癌治療と交互になされ、これは何れの順番で実施されてもよい。本発明は、また、癌を有し易い患者において癌の発生又は再発を防ぐために、一又は複数の阻害性抗体を投与する方法を包含する。一般的に、被検体は、癌治療を受けた又は同時に受けている。一実施態様では、癌治療は、抗血管新生剤、例えばVEGFアンタゴニストを用いた治療である。抗血管新生剤は、当該分野で知られるもの、本明細書の定義に記載のものを含む。一実施態様では、抗血管新生剤は、抗VEGF中和抗体、又は断片(例えば、ヒトA4.6.1、AVASTIN(登録商標)(Genentech, South San Francisco, CA)、Y0317、M4、G6、B20、2C3等)である。米国特許第6582959号、同第6884879号、同第6703020号;国際公開第98/45332号;国際公開第96/30046号;国際公開第94/10202号;欧州特許第0666868B1号、米国特許出願第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、及び同第20050112126号;Popkov等, Journal of Immunological Methods 288:149-164(2004);及び国際公開第2005012359等を参照。更なる薬剤が、難治性腫瘍を治療するため、再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖をブロック又は低減するために、VEGFアゴニスト及び抗Bv8抗体と併用で投与されることができる。
【0253】
本発明の抗Bv8抗体(及びアジュバント治療剤)は、非経口的、皮下、腹膜内、肺内、鼻腔内、そして、必要に応じて局所の治療のために、病巣内投与を含む任意の好適な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下的な投与を含む。加えて、抗Bv8抗体を、特に抗体の用量を減少して、パルス注入によって好適に投与する。投与が短期のものであるか長期のものであるかにある程度依存して、任意の好適な経路、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射によって投与することができる。
【0254】
抗体の調製及び投与において、本発明の抗体の結合標的の位置を考慮することができる。結合標的が細胞内分子である場合、本発明の特定の実施態様では、結合標的が位置する細胞に導入される抗体ないしその抗原結合断片が提供される。一実施態様では、本発明の抗Bv8抗体は、細胞内に細胞内抗体として発現させることができる。本明細書で使用する「細胞内抗体(intrabody)」という用語は、Marasco, Gene Therapy 4: 11-15 (1997);Kontermann, Methods 34: 163-170 (2004);米国特許第6004940号及び同第6329173号;米国公開特許第2003/0104402号及び国際公開第2003/077945号に記載のように、標的分子に選択的に結合することができる、細胞内で発現される抗体ないしその抗原結合タンパク質を指す。例として、細胞内抗体を生成するための遺伝子治療の使用に関しては1996年3月14日に公開の国際公開96/07321も参照のこと。
【0255】
細胞内抗体の細胞内発現は、標的細胞内に、所望の抗体ないしその抗原結合タンパク質をコードする核酸(当該抗体又は抗原結合断片をコードする遺伝子に通常関連付けられる野生型リーダー配列及び分泌シグナルを欠いている)を導入することにより達成することができる。本発明の抗体のすべて又は一部をコードする一又は複数の核酸は標的細胞に運搬され、細胞内標的ポリペプチドに結合し、標的ポリペプチドの活性を調節することができる一又は複数の細胞内抗体が発現される。細胞に核酸を導入するための何らかの標準的方法を使用することができ、これらの方法には、限定するものではないが、微量注入、弾道的注入、電気泳動、リン酸カルシウム沈降、リポソーム、及び対象の核酸を保因するレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス及びワクシニアベクターによる形質移入が含まれる。
ある実施態様では、核酸(場合によってベクターに含まれている)は患者の細胞内へインビボ及びエクスビボの方法によって導入されてよい。インビボ運搬の一例では、患者の例えば治療的介入を必要とする部位に核酸が直接注入される。インビボ運搬の更なる例では、核酸は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ関連ウイルス)、及び脂質ベースの系(例えば、遺伝子の脂質媒介移入に有用な脂質は、DOTMA、DOPE、及びDC-Cholである)による形質移入を用いて細胞内に導入される。遺伝子マーキング及び遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson et al., Science, 256:808-813 (1992)、及び国際公開93/25673及びそこに引用された参考文献を参照のこと。エクスビボ治療の例では、患者の細胞が取り除かれ、核酸がこれら単離した細胞内に導入され、変更した細胞が直接又は、例えば、患者内に着床される多孔性膜内に被包して患者に投与される(例として米国特許第4892538号及び同第5283187号を参照)。核酸のエクスビボ運搬のために一般的に用いられるベクターはレトロウイルスである。
【0256】
別の実施態様では、内部移行する抗体が提供される。抗体は、細胞内への抗体の運搬を増強する特定の特徴を有することができるか、又はそのような特徴を有するように修飾することができる。これを達成する技術は従来技術に既知である。例えば、抗体のカチオン化は、細胞内へのその取り込みを容易にすることが知られている(例えば、米国特許第6703019号参照)。リポフェクション又はリポソームも、細胞内に抗体を送達するために使用することができる。抗体断片を使用する場合、標的タンパク質に特異的に結合する最小の抑制性断片が有利である。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的のタンパク質配列に対する結合能を有するペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは、化学的に合成する、及び/又は組換えDNA技術によって製造することができる。例としてMarasco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7889-7893 (1993)を参照。
標的細胞への抗体の移入は、当分野で公知の他の方法によって増強することができる。例えば、HIV Tat又はアンテナペディアホメオドメインタンパク質由来の配列のような特定の配列は、細胞膜全体に異種タンパク質の効率的な取り込みを導くことができる。例としてChen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999), 96:4325-4329を参照。
【0257】
抗体の結合標的が脳に位置する場合、本発明の特定の実施態様は、血液脳関門を横切る抗体を提供する。血液脳関門を越えて分子を搬送するためには複数の従来技術に既知の手法が存在し、それらには、限定するものではないが、物理的方法、脂質に基づく方法、幹細胞に基づく方法、及びレセプターとチャネルに基づく方法が含まれる。
血液脳関門に抗体を搬送する物理的方法には、限定するものではないが、血液脳関門を完全に包囲すること、又は血液脳関門に開口部を形成することが含まれる。包囲法には、限定するものではないが、脳への直接注入(例えば、Papanastassiou等, Gene Therapy 9: 398-406 (2002))、間質性注入/対流強化送達(例えば、Bobo等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 2076-2080 (1994)参照)、及び脳への送達装置の移植(例えば、Gill等, Nature Med. 9: 589-595 (2003);及びGliadel Wafers
TM, Guildford Pharmaceutical参照)が含まれる。関門に開口を形成する方法には、限定するものではないが、超音波(例えば、米国特許出願公開第2004/0038086号参照)、浸透圧(例えば、高浸透圧性マンニトールの投与による(Neuwelt, E. A., Implication of the Blood-Brain Barrier and its Manipulation, Vols 1 & 2, Plenum Press, N.Y. (1989)))、例えば、ブラジキニン又はパーミアライザーA−7による透過性化(例えば、米国特許第5112596号、同第5268164号、同第5506206号、及び同第5686416号参照)、及び抗体をコードする遺伝子を含むベクターによる血液脳関門にまたがるニューロンの形質移入(例えば、米国特許出願公開第2003/0083299号)が含まれる。
【0258】
血液脳関門を越えて抗体を搬送する脂質に基づく方法には、限定されるものではないが、血液脳関門の血液内皮上のレセプターに結合する抗体結合断片に連結されるリポソームに抗体を封入すること(例えば、米国特許出願公開第2002/0025313号参照)、及び低密度リポプロテイン粒子(例えば、米国特許出願公開第2004/0204354号参照)、又はアポリポタンパク質E(例えば、米国特許出願公開第2004/0131692号参照)中の抗体をコーティングすることが含まれる。
血液脳関門を越えて抗体を搬送する幹細胞に基づく方法は、対象の抗体を発現するように神経前駆細胞(NPC)を遺伝的に操作し、次いで、治療する個体の脳に幹細胞を移植することを伴う。詳細なオンライン文献であるBehrstock等 (2005) Gene Ther. 15 Dec. 2005(神経栄養因子GDNFを発現するように遺伝子操作したNPCが齧歯類及び霊長類のモデルの脳に移植した場合にパーキンソン病の症状を低減したことを報告している)を参照。
【0259】
血液脳関門を越えて抗体を搬送するレセプター及びチャネルに基づく方法には、限定するものではないが、グリココルチコイド遮断薬を用いて血液脳関門の透過性を増大させること(例えば、米国特許出願公開第2002/0065259号、同第2003/0162695号、及び同第2005/0124533号参照)、カリウムチャネルを活性化させること(例えば、米国特許出願公開第2005/0089473号参照)、ABC薬の搬送を抑制すること(例えば、米国特許出願公開第2003/0073713号参照)、抗体をトランスフェリンでコーティングし、一以上のトランスフェリンレセプターの活性を調節すること(例えば、米国特許出願公開第2003/0129186号参照)、及び抗体のカチオン化(例えば、米国特許第5004697号参照)が含まれる。
本発明の抗Bv8抗体は、医学的実用性に合わせた様式で調製し、1回分に分けて、投与される。ここで考慮する要因は、治療する特定の疾患、治療する特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の運搬部位、投与の方法、投与の日程計画、及び医師が知る他の因子を含む。必要ではないが場合によっては、問題の疾患を予防するか又は治療するために一般に用いられる一つ以上の作用剤と抗体とを調製する。そのような他の作用剤の有効量は、製剤中の抗体の量、疾患の型又は治療、及び上記の他の因子に依存する。これらは、一般的に、ここに記載されるものと同じ用量及び投与経路で、又はここに記載される用量の1〜99%で、或いは経験的/臨床的に適切と判断される任意の用量及任意の投与経路で、用いられる。
【0260】
疾患の予防又は治療のために、本発明の抗体の好適な用量は(単独で用いる場合、又は一又は複数の他の付加的な治療剤と組み合わせて用いる場合)、治療する疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度及び経過、抗体を予防目的で投与するか治療目的で投与するか、以前の治療法、患者の病歴及び抗体への応答性、及び担当医師の判断に依存するであろう。抗体は一時的又は一連の治療にわたって適切に患者に投与される。疾患のタイプ及び重症度に応じて、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば0.1mg/kg〜10mg/kg)の抗体を、例えば一以上の分割投与又は連続注入による患者投与の初期候補用量とすることができる。ある典型的な1日量は、上記の要因に応じて、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であろう。症状に応じて、数日間以上にわたる繰り返し投与は、通常、所望の疾患症状の抑制が得られるまで持続する。抗体の用量の例は、約0.05mg/kg〜約50mg/kgの範囲であろう。ゆえに、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg又は25mg/kgの一以上の用量を(又はそれらを組み合わせて)患者に投与してもよい。このような用量は、間欠的に、例えば週ごと又は3週ごとに投与してもよい(例えば患者に約2〜約20、例えば約6用量の抗体が投与される)。初期のより高い負荷投与量の後、一以上のより低い用量を投与してもよい。例示的用量療法は、約4mg/kgの初期負荷投与量の後、約2mg/kgの毎週の維持用量抗体を投与することを含む。しかしながら、他の投与計画が有効かもしれない。この治療の進行は、従来技術及びアッセイにより容易にモニターすることができる。
【0261】
診断方法及び検出方法
本発明の抗Bv8抗体は、特定の細胞又は組織におけるBv8の発現を検出するアッセイ(例えば診断アッセイ又は予後のアッセイ)に有用であり、このアッセイでは抗体は後述のように標識され、及び/又は不溶性の基質に固定される。
別の態様では、本発明は、試料中のBv8-抗Bv8抗体複合体を検出することを含む、Bv8の検出方法を提供する。本明細書において、用いられる「検出」なる用語は、コントロールに対する参照の有無にかかわらず、定性的及び/又は定量的な検出(測定レベル)を含む。
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の何れかの抗Bv8抗体を提供するものであって、この抗Bv8抗体は検出可能な標識を含んでなる。
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の何れかの抗Bv8抗体とBv8の複合体を提供する。いくつかの実施態様では、複合体はインビボ又はインビトロである。いくつかの実施態様では、複合体は癌細胞を含んでなる。いくつかの実施態様では、抗Bv8抗体は検出可能に標識される。
【0262】
抗Bv8抗体(例えば、本明細書に記載される何れかのBv8抗体)は、多くの良く知られた診断的アッセイ法の任意の1つにおいて、Bv8の検出に利用することができる。
例えば、所望する起源から試料を得て、抗体が混合物中に存在する任意のBv8と抗体/Bv8複合体を形成するように試料と抗Bv8抗体を混合させ、混合物に存在する任意の抗体/Bv8複合体を検出することによって、Bv8に関して生物学的試料をアッセイすることができる。特定の試料に適した当該分野で知られた方法によって、アッセイのために生物学的試料を調製することができる。用いられるアッセイの型によって、抗体と試料を混合させる方法、及び抗体/Bv8複合体を検出する方法を選択する。そのようなアッセイには、免疫組織化学法、競合及びサンドイッチアッセイ、及び立体阻害アッセイが含まれる。試料の調製のために、哺乳類動物(典型的にはヒト患者)からの組織又は細胞試料が使用され得る。試料の例は、限定するものではないが、例えば結腸、前立腺、卵巣、肺、胃、膵臓、リンパ腫、及び白血病癌細胞等を含む。また、Bv8は血清で測定されてもよい。試料は、当該技術で知られる様々な手順によって得られ、限定するものではないが、外科的切除、吸引(aspiration)、生検を含む。組織は、フレッシュ又は冷凍であり得る。一実施態様では、試料は、パラフィン又は同様なものに固定及び包埋される。組織試料は、一般的な方法 (例えば“Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology,” 3
rd edition (1960) Lee G. Luna, HT (ASCP) Editor, The Blakston Division McGraw-Hill Book Company, New York; The Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology (1994) Ulreka V. Mikel, Editor, Armed Forces Institute of Pathology, American Registry of Pathology, Washington, D.C.を参照)によって固定(つまり保存)され得る。当業者であれば、試料が、組織学的に染色されるか、又は他の方法で分析されるかといった目的により、固定剤の選択が決定されると理解しているであろう。また、当業者であれば、固定長さが、組織試料の大きさ及び使用した固定剤に依存していることを理解しているであろう。例を挙げると、中性の緩衝ホルマリン、ブアン、又はパラホルムアルデヒドを、試料の固定に使用することができる。一般的に、試料をまず固定し、ついで、上昇列のアルコールを介して脱水され、浸潤させ、組織試料を切片化可能なように、パラフィン又は他の切片用培地に包埋される。また、組織を切片化し、得られた切片を固定することもできる。例として、組織試料は包埋し、一般的な方法により、パラフィンにおいてプロセシングすることができる(例えば、「Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology」, 上掲を参照)。使用可能なパラフィンの例には、限定されるものではないが、Paraplast、Broloid、及びTissuemayが含まれる。ひとたび組織試料が包埋されると、試料はミクロトーム等により切片化することができる(例えば、「Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology」, 上掲を参照)。この手順の例として、切片は、約3ミクロンから約5ミクロン厚の範囲とすることができる。切片化すると、切片はいくつかの標準的な方法により、スライドに付着させられる。スライド用付着剤の例には、限定されるものではないが、シラン、ゼラチン、ポリ-L-リジン等が含まれる。例として、パラフィン包埋切片は、正に帯電したスライド及び/又はポリ-L-リジンでコーティングされたスライドに付着させることができる。パラフィンが包埋物質として使用されているならば、組織切片は、一般的に脱パラフィン化され、水に再水和される。組織切片は、いくつかの一般的な標準方法により、脱パラフィン化することができる。例えば、キシレン及び徐々に下降列のアルコールを使用することができる(例えば、「Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology」, 上掲)。また、商業的に入手可能な脱パラフィン用の非有機剤、例えばホモ-De7(CMS, Houston, Texas)が使用可能である。
Bv8についての分析法では、すべて、1つ又はそれより多い次の試薬を用いる:標識Bv8アナログ、固定化Bv8アナログ、標識抗Bv8抗体、固定化抗Bv8抗体及び立体コンジュゲート。標識試薬は、「トレーサー」としても知られている。
【0263】
利用される標識は、Bv8と抗Bv8抗体の結合を妨害しない任意の検出可能な機能性である。免疫アッセイでは、多くの標識が知られており、その例には、直接に検出することができる分子、例えば蛍光色素、化学発光剤、及び放射性標識、並びに分子、酵素等の検出されるように反応又は誘導体化されるべきものが含まれる。
用いられる標識はBv8と抗Bv8抗体の結合を干渉しないいくらか検出可能な機能がある。イムノアッセイでの使用のための多くの標識が公知であり、例えば、直接検出されうる成分、例えば、蛍光色素、化学発光、及び放射性標識、並びに検出されるように反応される又は誘導体化される酵素などの成分がある。このような標識の例には、ラジオアイソトープ
32P、
14C、
125I、
3H、及び
131I、フルオロフォア、例えば希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシェフェラーゼ、例えばホタルルシェフェラーゼ及び細菌ルシェフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシェフェリン、2,3-ジヒドロフタルジネジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘテロサイクリックオキシダーゼ、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ、色素前駆体、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はマイクロペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベル、安定な遊離ラジカルなどを酸化する過酸化水素を利用する酵素とカップリングさせたもの、などが含まれる。
【0264】
これら標識を共有的にタンパク質又はポリペプチドと結合させるために、常套的方法が利用可能である。例えば、カップリング剤、例えばジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビス-イミデート、ビス-ジアゾ化ベンジジン等が、上記の蛍光剤、化学発光剤、酵素標識で抗体をタグするのに利用することが可能である。例えば、米国特許第3940475号(フルオロメトリー)及び3645090号(酵素);Hunter等, Nature, 144: 945(1962); David等, Biochemistry, 13: 1014-1021(1974);Pain等, J. Immunol. Methods, 40: 219-230(1981);及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30: 407-412(1982)を参照せよ。ここでの好ましい標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼ及びアルカリフォスファターゼ等の酵素である。抗体への酵素を含むそのような標識のコンジュゲーションは、免疫アッセイ技術における通常の技術の1つにとって標準的な操作法である。例えば、O'Sullivan等, "Methods for Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay, " in Methods in Enzymology, 編 J. J. Langone & H. Van Vunakis, 73巻(Academic Press, ニューヨーク, ニューヨーク, 1981), 147-166頁を参照せよ。
【0265】
あるアッセイ法では、試薬の固定化を必要とする。固定化は、溶液で遊離に存在するあらゆるBv8から抗Bv8抗体を分離することを伴う。水不溶性基質又は表面への吸着による(Bennich等, 米国特許第3720760号)、共有結合による(例えば、グルタルアルデヒド架橋を利用して)、又は例えば免疫沈降による、後に抗Bv8抗体又はBv8アナログを不溶化することによるように、アッセイ法の前に抗Bv8抗体又はBv8アナログの何れかを不溶化することによって、これは常套的に完遂される。
試料におけるタンパク質の発現は、免疫組織化学及び染色プロトコールを用いて試験しうる。組織切片の免疫組織化学染色は、試料中のタンパク質の存在を評価ないしは検出するための確実な方法であることが示されている。免疫組織学法(「IHC」)技術は、抗体を用いて、一般的には色素生産性方法又は蛍光性方法によって、インサイツで細胞性抗原を探索して視覚化する。試料の調整では、哺乳動物(典型的にはヒト患者)の組織又は細胞試料を用いてもよい。前記試料は、当分野で公知の様々な手順、限定するものではないが、外科的切除、吸引又は生検などによって採取することができる。組織は新鮮なものでも凍結したものでもよい。一実施態様では、前記試料は固定し、パラフィンなどに包埋する。前記組織試料は従来の方法によって固定(すなわち保存)されてもよい。当分野の通常の技術者は、組織学的染色ないしは他の分析に供する試料の目的に応じて固定液を選択することは理解するところであろう。また、当分野の通常の技術者は、組織試料の大きさ及び用いる固定液に応じて固定の長さを決定することも理解するであろう。
【0266】
IHCは、形態学的染色及び/又は蛍光発光インサイツハイブリダイゼーションなどの付加的な技術と組み合わせて行ってもよい。IHCの直接アッセイ及び間接アッセイの2つの一般的な方法が有用である。第一のアッセイでは、標的抗原(例えばBv8)に対する抗体の結合は、直接的に測定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用を必要とせずに可視化されうる酵素標識一次抗体又は蛍光タグ付加一次抗体などの標識された試薬を用いる。代表的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原と結合し、次いで標識された二次抗体が一次抗体と結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、抗原を視覚化させるために色素生産性基質ないしは蛍光発生基質が加えられる。二次抗体の中には一次抗体上の異なるエピトープと反応するものもあるので、シグナルの増幅が起こる。
一般的に、免疫組織化学に使用する一次及び/又は二次抗体は、検出可能な成分にて標識されるであろう。多くの標識が利用可能である。
【0267】
上記の試料調整手順以外に、IHC前、IHCの間又はIHC後に組織切片の更なる処置が所望されてもよい。例えば、クエン酸塩バッファ中で組織サンプルを加熱するなどのエピトープ検索方法が実施されてもよい(例として、Leong 等 Appl. Immunohistochem. 4(3): 201 (1996)を参照)。
場合によって行うブロック処置の後に、一次抗体が組織試料中の標的タンパク質抗原と結合するような好適な条件下と十分な時間、組織切片を一次抗体に曝露させる。これを達成するための好適な条件は慣例的な実験によって決定できる。試料に対する抗体の結合の範囲は、上記の検出可能な標識の何れか一つを用いて決定される。標識は、3,3'-ジアミノベンジジンクロモゲンなどの色素生産性基質の化学変化を触媒する酵素標識(例えばHRPO)であることが望ましい。好ましくは、酵素標識は、一次抗体(例えば、一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)に特異的に結合する抗体にコンジュゲートさせる。
このようにして調製される検査材料はマウントしてカバーグラスをかけてもよい。その後、例えば顕微鏡を使用してスライドの評価を行い、当分野で通常用いられる染色強度判定基準を用いてもよい。
【0268】
競合アッセイ又はサンドイッチアッセイとして知られている他のアッセイ方法は十分に確立されており、市販の診断法産業において、広く使われている。
競合アッセイは、限られた数の抗Bv8抗体抗原結合部位について試験試料Bv8と競合するトレーサーBv8類似体の能力に依存する。一般的に、抗Bv8抗体は、競合の前又は競合の後に不溶化して、次いで抗Bv8抗体に結合したBv8とトレーサーを結合していないトレーサーとBv8から分離する。この分離は、別の容器へ移す(結合パートナーが予め不溶化された場合)か、又は遠心分離する(結合パートナーが競合反応の後で沈殿した場合)ことにより達成される。マーカー物質の量で測定されるように、試験試料Bv8の量は結合したトレーサーの量に反比例する。Bv8の既知量による用量-反応曲線を作成して、試験結果と比較して試験試料に存在するBv8の量を量的に決定する。検出可能なマーカーとして酵素が用いられる場合に、これらのアッセイはELISAシステムと呼ばれている。
「均質な」アッセイと称される競合アッセイの他の種類は、相分離を必要としない。ここで、Bv8と酵素とのコンジュゲートが調製され、抗Bv8抗体がBv8に結合する場合に抗Bv8抗体の存在により酵素活性が修飾されるように用いられる。この場合、Bv8又はその免疫学的に活性な断片は、二機能性有機架橋によって、ペルオキシダーゼなどの酵素にコンジュゲートされる。抗Bv8抗体の結合が標識の酵素活性を阻害するか又は強化するために、抗Bv8抗体により使用についてコンジュゲートを選別する。この方法自体は、EMITという名前で広く実施される。
【0269】
立体的コンジュゲートは、均質なアッセイの立体障害方法で用いられる。ハプテンに対する抗体は抗Bv8抗体と同時にコンジュゲートを結合することが実質的にできないので、これらのコンジュゲートは低分子のハプテンを小さいBv8断片に共有結合することにより合成される。このアッセイ手順で、試験試料に存在するBv8は抗Bv8抗体を結合し、それによって、抗ハプテンはコンジュゲートを結合できる。その結果、コンジュゲートハプテンの特徴の変化、例えばハプテンが蛍光体である場合の蛍光の変化が生じる。
サンドイッチアッセイは、Bv8又は抗Bv8抗体の測定のために特に有用である。一連のサンドイッチアッセイにおいて、固定された抗Bv8抗体を用いて、試験試料Bv8を吸着し、洗浄によって、試験試料を除去し、結合したBv8を用いて第二の標識した抗Bv8抗体を吸着して、次いで結合した材料を残留するトレーサーから分離する。結合したトレーサーの量は、試験試料Bv8に正比例する。「同時」サンドイッチアッセイにおいて、試験試料は、標識した抗Bv8を加える前に分離されない。一抗体として抗Bv8モノクローナル抗体を、他方の抗体としてポリクローナル抗Bv8抗体を用いる一連のサンドイッチアッセイは、試料をBv8について試験する際に有用である。
前述は、単にBv8のための例示的な検出アッセイにすぎない。Bv8の測定のために抗Bv8抗体を用いる、現在の他の方法又は今後開発される方法は、本明細書に記載のバイオアッセイを含め、本願の権利内に包含される。
【0270】
ある態様では、本発明は、個体、例えばヒト被験者からの生体試料中のポリヌクレオチド(一又は複数)(例えばBv8ポリヌクレオチド)(例えばポリヌクレオチドの有無又は量)を検出するための方法を提供する。様々なポリヌクレオチドの検出方法を行うことができ、例えばRT-PCR、タックマン、増幅法、ポリヌクレオチドマイクロアレイなどが含まれる。
ポリヌクレオチド(例えばmRNA)の検出方法は周知であり、例えば、相補的DNAプローブを用いたハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、標識したBv8のリボプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション)、ノーザンブロット及び関連した技術、及び様々な核酸増幅アッセイ(例えば、Bv8に特異的な相補的プライマーを用いたRT-PCR及び、他の増幅型の検出法、例えば枝分れDNA、SPIA、Ribo-SPIA、SISBA、TMAなど)が含まれる。
【0271】
哺乳動物の生体試料は、例えばノーザンブロット、ドットブロット又はPCR分析を用いて、Bv8のmRNAについて都合よくアッセイすることができる。例えば、定量的PCRアッセイなどのRT-PCRアッセイは公知技術である。本発明の例示的実施態様では、生体試料中のBv8のmRNAの検出方法は、少なくとも一のプライマーを用いて逆転写によって、試料からcDNAを生成し、該Bv8のcDNAを増幅するために、Bv8のポリヌクレオチドをセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとして用いて産生された該cDNAを増幅し、そして、増幅されたBv8のcDNAの有無を検出することを含む。加えて、このような方法は、生体試料中のBv8のmRNAの量(レベル)を決定し得る一ないし複数の工程(例えば、アクチンファミリメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子のコントロールmRNA配列と該レベルを同時に検討すること)を含んでもよい。場合によって、増幅されたBv8のcDNAの配列を決定してもよい。
プローブ及び/又はプライマーは、検出可能なマーカー、例えば放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤又は酵素にて標識されてもよい。このようなプローブ及びプライマーを、試料中のBv8のポリヌクレオチドの存在を検出するため、及び、Bv8のタンパク質を発現する細胞を検出するための手段として用いることができる。技術者に理解されるように、多数の異なるプライマー及びプローブは、(例えば、本願明細書中で示される配列に基づいて)調製されてもよく、Bv8のmRNAの有無及び/又は量を増幅、クローン化及び/又は決定するために効率的に用いてもよい。
【0272】
本発明の任意の方法には、マイクロアレイ技術によって、組織又は細胞試料中のポリヌクレオチド、例えばBv8ポリヌクレオチドの検出を含む手順が含まれる。例えば、核酸マイクロアレイを用いて、試験及びコントロールの組織試料から得た試験及びコントロールのmRNA試料を逆転写させて、cDNAプローブを生成するために標識する。次いで、プローブを、固形支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズさせる。アレイの配列及び各々のメンバーの位置がわかるように、アレイを設定する。例えば、特定の疾患状態において発現されうる選択した遺伝子を、固形支持体上に配列してもよい。特定のアレイメンバーと標識プローブとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。疾患組織の差次的遺伝子発現分析は、貴重な情報を提供する。マイクロアレイ技術は、単一の実験で何千もの遺伝子のmRNA発現性質を評価するために、核酸ハイブリダイゼーション技術及び演算技術を利用する。(2001年10月11日公開の国際公開公報01/75166を参照、(例えば米国特許第5700637号、同第5445934号及び同第5807522号、Lockart, Nature Biotechnology, 14:1675-1680 (1996))、アレイ製作の考察のためにはCheung, V.G.等, Nature Genetics 21(Suppl): 15-19 (1999)を参照)。DNAマイクロアレイは、ガラス又は他の基質上で染色されるか直接合成される遺伝子断片を含有する微小なアレイである。何千もの遺伝子は、通常単一のアレイ上に現れる。代表的なマイクロアレイ実験は以下の工程を伴う:(1)試料から単離したRNAからの蛍光性標識標的の調製、(2)マイクロアレイへの標識した標的のハイブリダイゼーション、(3)洗浄、染色及びアレイのスキャニング、(4)走査画像の分析、そして(5)遺伝子発現性質の生成。一般に、DNAマイクロアレイには2つの主要な種類、cDNAから調製されたPCR産物を含有する遺伝子発現アレイ及びオリゴヌクレオチドアレイ(通常25〜70mer)が用いられる。アレイを形成する際に、オリゴヌクレオチドは、事前に作製して表面にスポットしても、(インサイツで)表面上で直接合成してもよい。
【0273】
Affymetrix GeneChip(登録商標)システムは、ガラス表面上でオリゴヌクレオチドを直接合成することにより製造されるアレイを含んでなる市販のマイクロアレイシステムである。プローブ/遺伝子アレイ:オリゴヌクレオチド(「オリゴ」)(通常25mer)は、半導体ベースのフォトリソグラフィーと固相化学合成技術との組合せによって、ガラスウェーハ上へ直接合成される。各々のアレイは最高400000の異なるオリゴを含有し、各々のオリゴヌクレオチドは何百万ものコピーで存在する。オリゴヌクレオチドプローブがアレイ上の既知の位置で合成されるので、ハイブリダイゼーションのパターン及びシグナル強度は、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアによる遺伝子同一性と相対的な発現レベルに置き換えて解釈できる。各々の遺伝子は、一連の異なるオリゴヌクレオチドプローブによって、アレイ上に表される。各々のプローブ対は、完全一致のオリゴヌクレオチドと、不一致のオリゴヌクレオチドからなる。完全一致プローブは、特定の遺伝子に対して完全に相補的な配列を有するため、遺伝子の発現を測定する。不一致プローブは、中心塩基位置での単一塩基置換によって、完全一致プローブとは異なり、標的遺伝子転写物の結合を妨げる。これによって、完全一致オリゴヌクレオチドを決定するシグナルの一因となるバックグラウンド及び非特異的ハイブリダイゼーションを決定できる。Microarray Suiteソフトウェアは、完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度から不完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度を減算して、それぞれのプローブセットの絶対値又は特異的強度の値を決定する。プローブは、Genbank(登録商標)及び他のヌクレオチド貯蔵所の当時の情報に基づいて選択される。この配列は遺伝子の3'末端の特定の領域を認識すると思われている。GeneChip(登録商標)ハイブリダイゼーションオーブン(「回転式(rotisserie)」オーブン)を用いて、一度に最高64アレイのハイブリダイゼーションを行う。fluidics stationでは、プローブアレイの洗浄と染色が行われる。これは完全に自動化しており、4つのモジュールを含有しており、その各々のモジュールが一つのプローブアレイを保持している。各々のモジュールは、事前にプログラム化されたfluidicsプロトコールを用いたMicroarray Suiteソフトウェアにより個々に制御される。スキャナは、プローブアレイ結合した標識cRNAにより発される蛍光強度を測定する共焦点レーザー蛍光発光スキャナである。Microarray Suiteソフトウェアを有するコンピュータワークステーションがfluidics stationとスキャナを制御する。Microarray Suiteソフトウェアは、プローブアレイについて事前にプログラム化したハイブリダイゼーション、洗浄及び染色プロトコールを用いてfluidics stationを8つまで制御できる。また、ソフトウェアは、ハイブリダイゼーション強度データを得て、適切なアルゴリズムを使用して各々の遺伝子の存在/非存在情報に変換する。最後に、ソフトウェアは、比較分析によって、遺伝子発現における実験間の変化を検出して、テキストファイルに出力する。このファイルは更なるデータ分析のために他のソフトウェアプログラムに用いることができる。
【0274】
幾つかの実施態様では、治療は、結腸直腸癌、肺癌、卵巣癌、下垂体癌、膵臓癌、乳房線維腺腫、前立腺癌、頭頸部扁平上皮癌、軟部肉腫、乳癌、神経芽細胞腫、メラノーマ、胸部癌(breast carcinoma)、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、上皮癌、脳癌、子宮内膜癌、精巣癌、胆管細胞癌、胆嚢癌、肝細胞癌からなる群から選択される癌のための治療である。
生物学的試料は、本明細書、例えば生物学的試料の定義に記載されている。
【0275】
製造品
本発明の他の態様では、上記の疾患の治療、予防及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。該製造品は容器と該容器上又は該容器に付随するラベル又はパッケージ挿入物を具備する。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等々が含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラス又はプラスチックから形成されうる。容器は、症状を治療、予防及び/又は診断するのに有効な組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアル又は静脈内投与溶液バッグでありうる)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は本発明の抗体である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が喘息のような選択した症状の治療に使用されることを示す。更に、製造品は、(a)本発明の抗体を含有する組成物を中に収容する第一の容器;と(b)組成物を中に収容する第二の容器とを含みうる。本発明のこの実施態様における製造品は、第一及び第二の抗体組成物を癌などの特定の症状の治療に使用することができることを示しているパッケージ挿入物を更に含む。あるいは、もしくは付加的に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第二の(又は第三の)容器を更に具備してもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0276】
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。上記に示す一般的な説明により、様々な他の実施態様が実施しうることは理解される。
【実施例】
【0277】
実施例に挙げた市販の試薬は、特に明記しない限りは、製造業者の指示に従って用いた。
【0278】
実施例1:抗Bv8抗体の生成
この実施例は、Bv8に対するネズミ科抗Bv8抗体のヒト化を示す。残基の番号はカバット(Kabat et al., Sequences of proteins of immunological interest, 5th Ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))に従う。一文字アミノ酸表記を用いる。
【0279】
ハイブリドーマ由来抗Bv8抗体の生成
組み換えヒトBv8細胞外ドメインポリペプチド(PeproTech, Rock Hill, NJ)にてマウスまたはハムスターを免疫化することによって抗Bv8抗体を生成した。
図2A、2B、3A、3B、4Aおよび4Bに示す可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)を含む、マウスハイブリドーマ由来のクローン2G9、2B9、3F1を選択した。
図5Aおよび5Bに示すVHおよびVL配列を含む、ハムスターハイブリドーマ由来のクローン2D3も選択した。
【0280】
ハイブリドーマ由来の抗Bv8抗体可変ドメインのクローニングおよびキメラ抗体の生成
RNeasyミニキット(カタログ番号74104; QIAGEN; Valencia, CA)を用いて、マウス抗Bv8モノクローナル抗体である2B9、3F1および2G9並びにハムスター抗Bv8モノクローナル抗体である2D3をそれぞれ産生するハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出した。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)のドメインは、以下の変性プライマーを用いたRT−PCRを用いて増幅した。
2B9 軽鎖(LC)フォワード:
5’GTCAGATATCGTKCTSACMCARTCTCCAGCAATMA3’(配列番号:225)
2B9 重鎖(HC)フォワード:
’GATCGACGTACGCTCAGGTGACKCTGAARGAGTCWGG3’(配列番号:226)
3F1 軽鎖(LC)フォワード:
5’GTACGATATCGTKCTSACCCARTCTCC3’(配列番号:227)
3F1 重鎖(HC)フォワード:
5’GATCGACGTACGCTCAGGTGACKCTGAARGAGTCWGG3’(配列番号:228)
2G9 軽鎖(LC)フォワード:
5’ GTACGATATCGTKCTSACCCARTCTCC 3’(配列番号:229)
2G9 重鎖(HC)フォワード:
’GATCGACGTACGCTGAGGTYCAGCTSCAGCAGTCTGG3’(配列番号:230)
2D3 軽鎖(LC)フォワード:
5’ GATCGATATCCARATGACNCARACNCC 3’(配列番号:231)
2D3 重鎖(HC)フォワード:
5’ GATCGA CGTACGCTGARGTGCARYTGGTGGARTCTGG3’(配列番号:232)
軽鎖リバース:5’GCTGTAGGTGCTGTCTTTGCT3’(配列番号:233)
重鎖リバース:5’CTGGWCAGGGMTCCAGAGTTCCA3’(配列番号:234)
以下のIUBコードに従ってプライマー配列を示す。
IUBコード
G グアニン
A アデニン
T チミン
C シトシン
R (AまたはG)
Y (CまたはT)
M (AまたはC)
K (GまたはT)
S (CまたはG)
W (AまたはT)
H (AまたはCまたはT)
B (CまたはGまたはT)
V (AまたはCまたはG)
D (AまたはGまたはT)
N (AまたはCまたはGまたはT)
フォワードプライマーはVLおよびVH領域のN末端アミノ酸配列に特異的であった。それぞれ軽鎖(LC)および重鎖(HC)リバースプライマーは、消化して、種間で高く保存されている定常軽鎖(CL)および定常重鎖ドメイン1(CH1)内の領域にアニールさせた。
その後、増幅したPCR産生物をTAクローニングベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)にライゲートし、配列決定した。次いで、同定したVL DNA配列を、ヒトκ定常ドメインを含むpRK哺乳動物細胞発現ベクター(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 4285-4289 (1992))内にサブクローニングした。VH DNA配列は、完全長ヒトγ1定常ドメインをコードするpRKベクター内に挿入した。
LCおよびHCの発現ベクターは、Fugene形質移入試薬(Roche, Mannheim, Germany)を用いてアデノウイルス形質転換ヒト胚性腎細胞株293に同時形質移入した。抗体は、無血清培地中で製造され、プロテインAクロマトグラフィにて精製した。
【0281】
アクセプターヒトコンセンサスフレームワークへの直接高頻度可変領域移植
この作業に用いたファジミドは一価性Fab−g3ディスプレイベクターであって、単一phoAプロモーターの制御下の2つのオープンリーディングフレームからなる。第一オープンリーディングフレームは、stIIシグナル配列とそれに融合したアクセプター軽鎖のVL及びCLドメインからなり、第二オープンリーディングフレームは、stIIシグナル配列とそれに融合したアクセプター重鎖のVH及びCH1ドメインと、それに続くマイナーファージコートタンパク質P3からなる。
抗Bv8抗体のCDR移植変異体を生成する前に、マウス抗体の可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)ドメインをヒトコンセンサス配列と配列アラインさせた。
クローン2B9および3F1では、ヒトコンセンサス軽鎖κI(huKI)とヒトコンセンサス重鎖サブグループIII(huGIII)は最も近いヒトフレームワークであり、マウス2B9(m2B9)およびマウス3F1(m3F1)の軽鎖および重鎖の配列の高頻度可変領域は、huKIおよびhuGIIIコンセンサスアクセプターフレームワークにそれぞれ移植し、h2B9.v1(
図6Aおよび6B)およびh3F1.v1(
図4Aおよび4B)と称する直接CDR移植変異体を生成した。
興味深いことに、クローン2G9では、マウス2G9に最も近いヒトフレームワークは、ヒトコンセンサス軽鎖κIV(huKIV)およびヒトコンセンサス重鎖サブグループI(huGI)であった。ゆえに、初め、マウス2G9(m2G9)の軽鎖および重鎖の高頻度可変領域は、huKIおよびhuGIIIにだけでなく、huKIVおよびhuGIコンセンサスアクセプターフレームワークにそれぞれ移植し、h2G9.K1G1、h2G9.K1G3、h2G9.K4G1およびh2G9.K4G3として識別される4つの異なるCDR移植変異体を生成した(
図14および15)。ヒトVLκサブグループIVコンセンサスフレームワーク配列からカバット軽鎖HVR配列を除いたものは配列番号:240に示される。ヒトVHサブグループIコンセンサスフレームワーク配列から重鎖HVR配列を除いたものは配列番号:241に示される。
図1Gを参照のこと。VLドメインでは、以下の領域を、ヒトコンセンサスアクセプター:L1の24−34位、L2の50−56位およびL3の89−97位に移植した。VHドメインでは、H1の26−35位、H2の49−65、71および73位、H3の95−102位に移植した。
各々の高頻度可変領域に別々のオリゴヌクレオチドを用いて、ファージ上に表出したFabとIgGとしてキュンケル突然変異誘発により、直接CDR移植変異体(h2B9.v1、h3F1.v1、h2G9.K1G1、h2G9.K1G3、h2G9.K4G1、h2G9.K4G3)を生成した。正しいクローンはDNA配列決定法によって識別した。
【0282】
ヒト化2G9.K4G1の選択と精製(polish)
4つのCDR移植抗Bv8抗体変異体であるh2G9.K1G1、h2G9.K1G3、h2G9.K4G1およびh2G9.K4G3の結合親和性は、本明細書中に記載のBIAcore
TM−3000機器を用いたBiacoreによって測定した。加えて、ここに記載のように、4つの変異体のBv8中和活性を調べるために、副腎皮質内皮細胞(ACE)増殖アッセイを行った。
Biacore分析の結果は、変異体h2G9.K1G1およびh2G9.K1G3が、h2G9.K4G1およびh2G9.K4G3と比較して高濃度の分析で有意に速い解離速度を有していたことを示した。さらに、ACE増殖アッセイは、4つの変異体の中でも、変異体h2G9.K4G1がACE細胞へのBv8の結合をほとんど完全に遮断したので、最も良好な活性を有していたことを示した。しかしながら、BIAcore分析とACE増殖アッセイは、h2G9.K4G1抗Bv8抗体の結合親和性と中和活性はキメラ2G9抗Bv8抗体のものよりも低かったことを示した。ゆえに、抗Bv8抗体h2G9.K4G1は親和性成熟について選択されており、さらにその結合親和性を改善していた。
抗Bv8抗体h2G9.K4G1の親和性成熟開始前に、HVR配列を、製造工程の間の異性化、システイン不対合および脱アミドに関する起こりうる安定性の問題について分析した。潜在的な問題は以下の部位に認識した。(i) 軽鎖可変配列の28位および29位の隣接残基、(ii) 重鎖可変配列の52a位、(iii) 重鎖可変配列の54位、および(iv) 重鎖可変配列の95位および96位の隣接残基。
上記の残基位置に単一アミノ酸置換を有する抗Bv8抗体h2G9.K4G1の変異体を生成し、各変異体をファージ上にFabとして表出させた。以下の単一アミノ酸修飾を有する全12の変異体を生成し、その結合親和性をファージ競合ELISAによって評価した。CDR-L1 - D28E、D28S、G29A、G29S;CDR-H2 - C52aA、C52aS、N54A、N54S;CDR-H3: D95E、D95S、G96A、G96S。h2G9.K4G1と比較して12の変異体の結合親和性を
図14Aおよび14Bに示す。図は、ほとんどの変異体が同じかまたはわずかに改善した結合親和性を持っていたことを示す。驚いたことに、CDR−H3内にD95S置換を有する変異体は1μMのヒトBv8で完全に結合を失っていた。さらに、CDR−H3内にD95E置換を有する変異体は、h2G9.K4G1と比較して100倍の顕著な結合親和性の低下を示した。
h2G9.K4G1.Polishとして識別したクローンは、以下の4つすべてのアミノ酸置換、CDR-L1 - D28S;CDR-H2 - C52aS、N54S;CDR-H3: G96Sを組み合わせて作製した。BIAcore分析は、キメラ2G9 Fabおよびh2G9.K4G1.Polish Fabについて同程度の結合親和性を示し、キメラ2G9 IgGおよびh2G9.K4G1.Polish IgGはいずれもBv8誘導性ACE細胞増殖の完全な遮断を示した(
図21)。さらに、CDR-L1 - D28S;CDR-H2 - C52aS、N54S;CDR-H3: G96Sでのアミノ酸置換(抗Bv8抗体h2G9.K4G1.Polish)は、予測外にも、キメラ2G9抗Bv8抗体のものに近い結合親和性に戻した。
【0283】
高頻度可変領域のソフトランダム化
各々の高頻度可変領域に配列多様性を導入して、ネズミ科高頻度可変領域配列に対するバイアスを維持するソフトランダム化方策を用いてクローンh2G9.K4G1.Polishについての親和性をさらに改善した。これは、Gallop et al., J. Med. Chem. 37:1233-1251 (1994)に最初に記載されたポイズン(poisoned)オリゴヌクレオチド合成方策を用いて達成された。変異させる高頻度可変領域内の所定の位置について、野生型のアミノ酸をコードするコドンを、各々の位置について平均50%の変異率となるように70−10−10−10のヌクレオチド混合物でポイズン化した。ソフトランダム化オリゴヌクレオチドは、ネズミ科高頻度可変領域配列にならって作製され、直接高頻度可変領域移植によって定められる同じ領域を包含した。
【0284】
ファージライブラリの生成
各々の高頻度可変領域について設定したランダム化オリゴヌクレオチドは、660ngのオリゴヌクレオチド、50mM トリス pH7.5、10mM MgCl
2、1mM ATP、20mM DTT及び5Uポリヌクレオチドキナーゼを含有する20μLの反応液中で、37℃で1時間かけて別々にリン酸化した。次いで、6つのリン酸化したオリゴヌクレオチドプールを、20μgのキュンケル鋳型を含む50mM トリス pH7.5、10mM MgCl
2と合わせ、終体積500μlにし、鋳型に対するオリゴヌクレオチド比率を3とした。混合物は、90℃で4分間、50℃で5分間アニーリングし、その後氷上で冷ました。過剰のアニールしなかったオリゴヌクレオチドは、変更プロトコールを用いたQIAquick PCR精製キット(カタログ番号28106, QIAGEN Inc., Valencia, CA)にて除去し、アニールしたDNAの過度な変性を予防した。500μlのアニールした混合物に対して、150μlのPBを添加し、混合物を2つのシリカカラムに分けた。各々のカラムを750μlのPEにて洗浄した後、さらに回転させてカラムを乾燥させ、各々のカラムを、110μlの10mM トリス、1mM EDTA、pH8にて溶出した。次いで、アニールして浄化した鋳型(220μl)を、1μlの100mM ATP、10μlの25mM dNTP(dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを各々25mM) 、15μlの100mM DTT、25μlの10×TMバッファ(0.5M トリス pH7.5、0.1M MgCl
2)、2400UのT4リガーゼ、及び30UのT7ポリメラーゼを添加することによって満たし、室温に3時間置いた。
満たした生成物をトリス−アセテート−EDTA/アガロースゲルにて分析した(Sidhu et al., Methods in Enzymology 328:333-363 (2000))。通常3つのバンドが可視化され、下のバンドは正しく満たされライゲートされた生成物であり、真ん中のバンドは満たされているがライゲートしなかった生成物であり、上のバンドは変位した鎖である。上のバンドはT7ポリメラーゼの内因性側鎖活性によって生成され、避けることが難しい (Lechner et al., J. Biol. Chem. 258:11174-11184 (1983))。しかしながら、このバンドは上のバンドの30分の1の効率で形質転換されるので、通常ライブラリにはほとんど影響しない。この真ん中のバンドは最終ライゲーション反応物に5'リン酸塩がないことによるものであり、このバンドは、効率よく形質転換され、残念ながら主に野生型の配列とする。
次いで、満たした生成物を浄化し、SS320細胞に電気穿孔し、 Sidhu et al., Methods in Enzymology 328:333-363 (2000)に記載のようにM13/KO7ヘルパーファージの存在下で増殖させた。ライブラリのサイズは1〜2×10
9の独立クローンとなった。開始ライブラリからのランダムなクローンを配列決定し、ライブラリの質を評価した。
【0285】
ファージ選別
ヒトBv8(PeproTech)をファージ選別の標的として用いた。第一ラウンドパニングのために、PBS中10μg/mlのヒトBv8をMaxiSorpマイクロタイタープレート(Nunc)にコートした。第一ラウンドの選別のために、8ウェルの標的を用い、単一ウェルの標的を選別の次のラウンドに用いた。スーパーブロッカー(Pierce)を用いて1時間かけてウェルをブロックした。培養上清からファージを回収し、1%BSAおよび0.05%トゥイーン20を含有するPBS(PBST)に懸濁した。2時間ウェルに結合させた後、結合しなかったファージは、0.05%トゥイーン20を含有するPBS(PBT)にて十分に洗浄して除去した。結合したファージは、50mM HCl、0.5M KClにてウェルを30分間培養することによって溶出した。ファージは、XL1ブルー細胞(Strategene)及びM13/KO7ヘルパーファージ(New England BioLabs)を用いて増殖および増幅させ、次のラウンドのパニングのために2YT、50μg/mlカルベニシリン中で37℃で終夜生育させた。標的コートウェルから溶出したファージの力価は、非標的コートウェルから回収したファージの力価と比較して、濃縮を評価した。
第二ラウンドの分類の初めに、溶液分類法(Lee, C.V., et al. (2004) J. Mol. Biol 340(5): 1073-93)を用いてファージライブラリを分類し、これにより選別ストリンジェンシーが増加し、親和性改善クローンの単離が可能となる。ヒトBv8は、スルホ−NHS−LC−ビオチン(b-Bv8, Pierce, Rockford, IL)を用いてビオチン化した。マイクロタイターウェルは、PBS中10μg/mlのニュートラビジンにて4℃で終夜かけてコートし、次いで、スーパーブロッカー(Pierce)を用いて1時間かけてブロックした。選別の第二ラウンドでは、PBSTバッファに懸濁した200μlのファージを、5nM b−Bv8と室温(RT)で2時間かけて混合した。b−Bv8に結合したファージは、ニュートラビジンコートウェルにRTで15分かけて捕捉し、結合しなかったファージはPBTバッファにて洗い流した。ファージは、100mM HClを用いて30分かけて溶出し、中和し、上記のように増殖させた。ラウンド3および4ではb−Bv8終濃度を0.1nMとし、ラウンド5ではb−Bv8終濃度を0.05nMとした点を除き、ラウンド2選別と同様に以降の選別ラウンドを行った。ラウンド4および5の初めに、b−Bv8とのファージ結合の後、500および1000倍過剰量の非ビオチン化ヒトBv8をそれぞれ混合物に添加し、RTに1〜2時間置き、ニュートラビジン上への捕捉前に速い解離速度の結合体を競合させた。
【0286】
ファージIC50を決定するためのファージ競合ELISA
MAXISORP
TMマイクロタイタープレートは、PBS中2μg/mlの組み換えヒトBv8(PeproTech)にて終夜をかけてコートし、次いで、PBSTバッファ(0.5%BSAおよび0.05%トゥイーン20を含むPBS)にて室温(RT)で1時間かけてブロックした。培養上清からのファージは、組織培養マイクロタイタープレート中でPBSTバッファにて段階的に希釈したヒトBv8と共にRTで1時間培養し、その後、80μlの混合物を標的コートウェルに移し、15分置いて、結合していないファージを捕捉した。プレートをPBTバッファ(0.05%トゥイーン20を含むPBS)にて洗浄し、HRP−コンジュゲート抗M13(Amersham Pharmacia Biotech)を添加(PBSTバッファ中1:5000)して40分置いた。プレートをPBTバッファにて洗浄し、テトラメチルベンジジン基質(Kirkegaard and Perry Laboratories, Gaithersburg, MD)を添加することによって反応させた。450nmの吸光度を溶液中の標的濃度に対してプロットし、ファージIC
50を決定した。これは、ファージ表面上に表出したFabクローンについての親和性概算値として用いた。
図14Aおよび14Bは、ヒトBv8に対する精製(polish)したh2G9.K4G1変異体(L1: D28E、D28S、G29A、G29S、H2: C52aA、C52aS、N54A、N54S、H3: D95E、D95S、G96AおよびG96S)の結合を示すファージ競合アッセイの結果を示す。
図16および17は、ヒトBv8に対する親和性改善h2G9.K4G1.Polish変異体(L1/L2ソフトランダム化ライブラリからのh2G9.K4G1.v27、v52、v55、v63、v64、v67、v77、v80;H1/H2ソフトランダム化ライブラリからのh2G9.K4G1.v19、v25、v37、v65、v73、v75、v77、v92)の結合を示すファージ競合アッセイの結果を示す。
【0287】
BIAcoreによる抗体親和性決定
抗Bv8抗体(FabまたはIgG)の結合親和性を決定するために、BIAcore
TM-3000機器による表面プラスモン共鳴(SRP)測定を用いた。簡単に言うと、提供者の指示に従って、CM5バイオセンサーチップはEDCおよびNHS試薬にて活性化し、ヒトBv8(PeproTech)またはカニクイザル(Genentech; PUR21590)をカップリングさせ、およそ150応答単位(RU)を達成し、その後1Mのエタノールアミンにて反応していない基をブロックした。動態学的な測定のために、抗Bv8 Fab(0.19nMから25nM)またはIgG(0.019nMから10nM)の2倍の段階希釈物を含むHBS-Pバッファ(0.01M HEPES pH 7.4、0.15M NaCl、0.005% 界面活性剤P20)を、30μl/分の流速で25℃で注入した。会合(結合)速度(k
on)と解離速度(k
off)は、単一の1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて算出した。平衡解離定数(K
d)を比率k
off/k
onとして算出した。
図18から21を参照のこと。結果は、ヒト化抗Bv8抗体であるh2G9.K4G1.v19およびh2G9.K4G1.v55が、キメラ2G9抗Bv8抗体より少なくとも2倍の強さでヒトおよびカニクイザルのBv8に結合することを示す。
【0288】
ACE増殖アッセイ
ACE細胞は、6ウェルプレートの増殖培地中で1ウェル当たり5000細胞の密度で播種した。阻害アッセイのために、初めに抗Bv8抗体を示した濃度(μg/ml)で添加した。0.5〜1時間後、ヒトBv8(Peprotech)を10nMの終濃度にまで添加した。6日後、各々のウェルに1mlの2×トリプシン(GIBCO)を添加することによって細胞を解離し、Z2コールター粒子計数とサイズ分析機(Beckman Coulter)を用いて2通りのウェルを計数した。
図12、13、15、23および24を参照のこと。
図23は、ヒト化抗Bv8抗体であるh2G9K4G1.v19、h2G9K4G1.v52、h2G9K4G1.v55およびh2G9K4G1.v73が、ヒトBv8誘導性ACE増殖の遮断において有意な改善を示したことを示す。
【0289】
Bv8抗体エピトープをマップするための競合ELISA
NUNC
TM96ウェルMaxisorpイムノプレート(NUNC; Roskilde, Denmark)を、1μg/mlのキメラ2B9 IgGを含むPBSにて終夜をかけてコートし、次いで、PBSTバッファ(0.5% BSAおよび0.05% トゥイーン20を含むPBS)にて室温で1時間かけてブロックした。ヒトBv8のビオチン化は、EZ-結合 スルホ-NHS-LC-ビオチン(カタログ番号21335; Pierce; Rockford, IL)試薬を1:4(HuBv8:ビオチン)のモル比で使用して調製した。
競合アッセイにおいてビオチン化したヒトBv8の量を決定するために、100nMから0.04nMの3倍の段階希釈したビオチン化ヒトBv8を抗体コートプレートに添加して15分置いた。次いで、そのプレートをPBTバッファ(PBSおよび0.05% トゥイーン20)にて洗浄した。結合したビオチン化はストレプトアビジンを用いて検出した。このストレプトアビジンは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(カタログ番号21126; Pierce; Rockford, IL)とコンジュゲートし、PBSTバッファで1:2500に希釈したものである。45分間インキュベートした後、プレートを洗浄し、100μlのテトラメチルベンジジン(R&D Systems)を各々のウェルに添加して、およそ5分間おき、シグナルの顕色を誘導した。青色が見られたら、100μlの1M リン酸塩を各ウェルに添加し、顕色反応を止めた。吸光度は450nmの分光測定により読み取った。
キメラ2B9によりBv8抗体エピトープをマッピングするために、IgG(キメラ2B9、キメラ3F1、キメラ2D3、キメラ2G9およびコントロールIgG)の3倍段階希釈物を、まず、上記結合アッセイによって決定した2nMのビオチン化ヒトBv8を含むPBSTバッファ中で室温で1〜2時間インキュベートし、次いで、それを抗体(キメラ2B9 IgG、1μg/ml)コートプレート上に移して15分置いた。次いで、プレートをPBTバッファにて洗浄し、プレート上のキメラ2B9 IgGに結合したビオチン化ヒトBv8の量を、上記のプロトコールによって検出した。
競合アッセイでは、キメラ3F1およびキメラ2G9抗体はヒトBv8に結合するキメラ2B9と競合したことから、両抗体はキメラ2B9とオーバーラップしたエピトープを有していることが示唆される。しかしながら、キメラ2D3のみは、ヒトBv8に結合するキメラ2B9抗体と部分的に競合したことを示したことから、キメラ2D3抗体はキメラ2B9並びにキメラ3F1およびキメラ2G9抗体とは異なるエピトープを有しうることが示唆される(
図11)。
【0290】
実施例2:インビボ効果研究
ヒトHT−55、Colo−205(結腸直腸カルシノーマ)、A673(横紋筋肉腫)、HPAC(膵臓カルシノーマ)およびCalu−6(肺カルシノーマ)細胞をアメリカ培養細胞保存機関(Manassas, VA)より入手した。ヒト結腸直腸カルシノーマHM7細胞株はLS 174Tの派生体である。Calu−6、A673、HPACおよびHM7をハムF12、低グルコースDMEM1:1中で生育させた。Colo−205およびHT−55はRPMI1640培地中で生育させた。両培地は、10% v/v FBS、1%v/v ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen, Carlsbad, CA)、2mM L-グルタミン(Invitrogen, Carlsbad, CA)および1μg/ml FUNGIZONE
TM(Invitrogen, Carlsbad, CA)を補充した。細胞は、コンフルエンスな状態にまで37℃、5%CO
2で生育させ、回収し、1mlあたり15×10
6細胞で滅菌マトリゲルに懸濁した。異種移植片は、6〜8週齢のBALB/cヌードマウス(Charles River; Hollister, CA)の背側腹に1マウスあたり1.5×10
6細胞を皮下(S.C.)注射により摂取し、成長させた。週2回10mg/kgの用量の抗Bv8抗体であるキメラ2D3、キメラ3F1、キメラ2B9およびキメラ2G9、ヒト化2G9変異体19、ヒト化2G9変異体55およびヒト化2G9.K4G1.Polishのi.p.による処置は腫瘍細胞の接種後24時間に開始した。コントロールとして、10mg/kgの抗GP-120 Mab、週2回と、5mg/kgの抗VEGF Mab G6.31またはB20、週2回を用いた(Liang, W.C., et al., J Biol Chem 281, 951-961 (2006))。すべての実験の移植した腫瘍は、カリパーを用いて長軸および垂直軸に沿って週2回測定した。腫瘍体積は、楕円体の体積式(0.5×L×W×W)を用いて算出し、すべての処置において1群あたり10マウスからの平均腫瘍体積と標準偏差を図に示した。また、抗Bv8抗体は、抗VEGF抗体と組み合わせて用いると、LXFL529ヒト肺非小細胞カルシノーマにおいて相加効果を有する。ベージュヌードマウス(n=7〜9)に、LXFL529ヒト肺非小細胞カルシノーマ細胞を移植した。次いで、腫瘍の移植後24時間以内に、マウスを、コントロール抗ブタクサ1428および抗Bv8マウス抗体(3F1および2B9)にて処置した。腫瘍がおよそ400mm
3に達した後にマウスを抗VEGF抗体にて処置した。結果は、単剤として及び抗VEGF抗体と組み合わせたキメラ及びヒト化抗Bv8抗体による処置により様々な腫瘍において腫瘍増殖が低減したことを示す。
図25から37を参照のこと。
【0291】
マウスLLC (ルイス肺カルシノーマ)、ヒトH460 (非小細胞肺カルシノーマ)およびHT29 (大腸結腸カルシノーマ)細胞をアメリカ培養細胞保存機関(Manassas, VA)より入手した。LLCおよびHM7細胞を、1%Lグルタミンと10%胎仔ウシ血清(Hyclone; Logan, UT)を添加したRPMI1640培地中で培養した。細胞は、37℃、5%CO
2下で生育させ、回収し、遠心分離し、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)にて1回洗浄し、数を数えた。LLC細胞は、50%HBSSおよび50%マトリゲル
TM(BD Biosciences; San Jose, CA)に懸濁し、HM7細胞はHBSS(Invitrogen; Carlsbad, CA)に懸濁し、いずれもマウスへ注入するために3.5×10
7細胞/mlの濃度にした。H460細胞は、10%胎仔ウシ血清、100単位/mL ペニシリンG、100μg/mL ストレプトマイシン硫酸塩、1mM ピルビン酸ナトリウム、2mM グルタミン、10mM HEPES、0.075% 炭酸水素ナトリウム、および25μg/mL ゲンタマイシンを含有するRPMI−1640培地中で培養した。細胞は、5%CO
2および95%空気の大気下で37℃の加湿したインキュベーター内の組織培養フラスコ中で培養し、次いで回収し、マウスへ注入するために5×10
7細胞/mlの濃度でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁した。初めにHT29細胞をATCCから入手し、その後、結果として生じた異種移植片腫瘍を、実験のための移入の前に胸腺欠損ヌードマウスの皮下に連続的に移植することによってインビボ系統として維持した。LLC細胞は、8〜9週齢の雌BALB/cヌードマウス(Charles River; Hollister, CA)の背側腹に1マウスあたり3.5×10
6細胞を皮下(S.C.)注射により摂取し、同種移植片として成長させた。HM7細胞は、12週齢の雌胸腺欠損ヌード(nu/nu)マウス(Harlan Sprague Dawley, Inc; Frederick, MD)の後肢に1マウスあたり3.5×10
6細胞をS.C.注射により摂取し、H460細胞は、10〜11週齢の雌胸腺欠損ヌード(nu/nu)マウス(Harlan Sprague Dawley, Inc; Frederick, MD)の背側腹に1マウスあたり1×10
7細胞をS.C.注射により摂取し、そして、1mm
3のHT29腫瘍断片を、11〜12週齢の雌胸腺欠損ヌード(nu/nu)マウス(Harlan Sprague Dawley, Inc; Frederick, MD)の側腹にS.C.移植した。抗Bv8抗体であるキメラ2D3、ネズミ科3F1およびネズミ科2B9は10mg/kg週2回i.p.により投与し、ヒト化抗Bv8抗体2G9は30mg/kg週1回i.p.により投与した。コントロールとして、30または100mg/kg週2回の抗ブタクサMAbをi.p.、および5mg/kg週2回の抗VEGF MAb B20-4.1.1をi.p.投与した。細胞移入または腫瘍移植(HT29)後の以下の時間に処置を開始した。LLCについては7時間、HM7については8日、H460については11日、HT29については36日。試験中、週に最低2回、腫瘍および体重を測定し、全体的な臨床所見を観察した。腫瘍体積は楕円体体積式(0.5×L×W×W)を用いて算出した。経時的に同じ動物からの腫瘍体積の反復測定値を分析するために、混合モデルアプローチを用い、フィットした腫瘍体積データを生成した(Pinheiro et al. nlme: linear and nonlinear mixed effects models; 2009; Version R package version 3.1-96)。カプラン−マイヤープロットを構築し、時間に対して試験中の残りの動物の割合を示す。単剤としておよび抗VEGF抗体と組み合わせたネズミ科およびヒト化抗Bv8抗体による処置により、様々な腫瘍において腫瘍増殖が低減し(
図38から40および42を参照)、生存が延長した(
図41および43)。
【0292】
実施例3:ヒトBv8のマウス2G9抗体への結合を遮断するヒト化抗Bv8抗体の能力を測定するための競合ELISA
Maxisorp384ウェルプレートは、1μg/mlの親マウス2G9 IgG1抗体を含む25μl/ウェルの50mM 炭酸ナトリウムバッファ、pH9.6にて4℃で終夜をかけてコートした。プレートは、0.05%ポリソルベート、pH7.4を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて洗浄し、80μl/ウェルの0.5% BSA、10ppm Proclin、pH7.4を含むPBSにて遮断した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄した。0.5% BSA、0.05% ポリソルベート20、pH 7.4およびビオチン化ヒトBv8(終濃度0.5ng/mlまたは57pM)を含むPBSに段階希釈したヒト2G9抗体(0.11pM〜180nM)の混合物を25μl/ウェル添加した。2時間のインキュベートの後、プレートを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジン(GE Healthcare)を添加した。最後の30分のインキュベートの後、プレートを洗浄し、基質である3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(Kirkegaard & Perry Laboratories)を添加した。1Mのリン酸を添加することによって反応を止め、Multiskan Ascent読み取り機(Thermo Scientific, Hudson, NH)にて450nmの吸光度を読み取った。データ分析のために、4-パラメーター非線形回帰曲線-フィッティングプログラムを用いて力価曲線をフィットし、IC50濃度を決定した(KaleidaGraph, Synergy Software, Reading, PA)。
結果は、ヒト化抗Bv8抗体であるh2G9.K4G1.v19, h2G9.K4G1.v52, h2G9.K4G1.v55, h2G9.K4G1.v73 and h2G9.K4G1.v19H/v55Lは、キメラ2G9およびh2G9.K4G1.Polish抗Bv8抗体と比較して、マウス2G9抗体へのヒトBv8の結合を遮断する能力が大きいことを示す。
図22を参照のこと。
【0293】
開示内容全体にわたって引用したすべての文献は、出典明記によってその全体が本明細書中に明示的に援用される。
本発明は、特定の実施態様であるとみなして参照して記載されており、本発明がこれら実施態様に限定されないことが理解できる。だが、本発明は、添付の特許請求の範囲とその精神の範囲内で施される様々な変更および均等物も包含するものである。
特許請求の範囲を含め本出願全体を通して、「含む」なる用語は、包括的な限定をしない遷移句として用いられ、他の、列挙していない要素または方法工程を除外するものではない。