特許第5852018号(P5852018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5852018炭化水素をアップグレードするためのプロセス及びそのプロセスにおいて使用するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852018
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】炭化水素をアップグレードするためのプロセス及びそのプロセスにおいて使用するための装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 31/08 20060101AFI20160114BHJP
   C10G 31/06 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   C10G31/08
   C10G31/06
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-553998(P2012-553998)
(86)(22)【出願日】2011年2月16日
(65)【公表番号】特表2013-520529(P2013-520529A)
(43)【公表日】2013年6月6日
(86)【国際出願番号】US2011025091
(87)【国際公開番号】WO2011106217
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2014年2月10日
(31)【優先権主張番号】12/711,124
(32)【優先日】2010年2月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100117569
【弁理士】
【氏名又は名称】亀岡 幹生
(74)【代理人】
【識別番号】100107504
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 克則
(72)【発明者】
【氏名】リー、リン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ファー − ミン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ、ザンキン
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−012453(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/073440(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/073447(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0166261(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/082585(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
B01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素をアップグレードするためのプロセスであって、
(a)入口と出口を有し、0.25mmから2.5mmの間の内径を有する毛細管が通っている本管、及び前記毛細管と0から90°の間の角度で交差する注入管を含む毛細管混合機中で、
本管内に設置された毛細管に注入され、毛細管の先端で液滴の微細な噴霧を形成する炭化水素油と注入管を通して供給される超臨界流体と混合して、体積で10:1から1:5の間の油対超臨界流体の比率にて、超臨界流体中の炭化水素油の液滴の分散液を形成することであって、
この分散液が前記本管内の毛細管の外側で形成されること、
(b)超臨界流体条件下で、アップグレーディング反応が起こることを可能にするのに十分な滞留時間にわたって、反応域中の分散液を反応させ、それによって反応生成物を形成すること、及び
(c)反応生成物を、ガス、流出水、及びアップグレードした炭化水素相に分離すること、
を含む上記プロセス。
【請求項2】
生成物のアップグレードした炭化水素相が、炭化水素油のAPI比重より少なくとも8°高いAPI比重を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
炭化水素油が、約20°より低いAPI比重を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
(a)のステップの前に、炭化水素油を約80℃から約400℃の間の温度に加熱することを更に含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
炭化水素油が、全重質石油原油、タールサンドビチューメン、石油原油から得られた重質炭化水素画分、重質真空軽油、減圧残油、石油タール、コールタール及びそれらの混合物からなる群から選択される炭化水素を含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
超臨界流体が、約374℃から約1000℃の間の温度の超臨界水を含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
反応域中の分散液が、外部から供給される触媒又は促進剤が何も存在しない中で反応する請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
反応域中の分散液が、外部から添加される水素が存在しない中で反応する請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
分散液が、反応域中で約1分から約6時間の間の滞留時間を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
毛細管混合機中の油が、約1から約500cm/秒の間の空塔速度を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
毛細管内の油が、約10から約1000の間のレイノルズ数を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
炭化水素油が、本管内に設置された毛細管に注入され、毛細管の先端で液滴の微細な噴霧を形成し、毛細管の外側で超臨界流体中に徐々に溶解する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
反応生成物の分離が、ガス、流出水、及びアップグレードした炭化水素相に、1つ又は複数の高圧分離器を使用することによって行われる、請求項1〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記毛細管混合機が、並行に配置されている複数の毛細管混合機を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
炭化水素をアップグレードするためのシステムであって、
(a)流体をこの流体の臨界温度を超える温度に加熱し、超臨界流体を形成するためのヒーター、
(b)入口と出口を有し、0.25mmから2.5mmの間の内径を有する毛細管が通っている本管、及び毛細管と0から90°の間の角度で交差する注入管を含む毛細管混合機であって、
本管内に設置された毛細管に注入され、毛細管の先端で液滴の微細な噴霧を形成する炭化水素油と注入管を通して供給される超臨界流体とを混合して分散液を形成することを可能とする前記毛細管混合機
(c)超臨界流体をヒーターから毛細管混合機の注入管に供給するための流体の入口、
(d)炭化水素油を毛細管混合機の本管の入口に供給するための油の入口、
(e)毛細管混合機の本管の出口と流体連通している反応域、並びに
(f)反応域中で形成された生成物を、ガス、流出水、及びアップグレードした炭化水素相に分離するための反応域と流体連通している分離器、
を含む上記システム。
【請求項16】
反応域からかすを除去する手段を更に含む請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
並行に配置されている複数の毛細管混合機を含む請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超臨界流体を使用する、全重質油、ビチューメン等の炭化水素のアップグレーディング(upgrading)に関する。本開示は、更に超臨界流体中に炭化水素を分散させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中のかなりの数の油層から生産される油は、周囲条件下で流れるには全く重質過ぎる。これは遠く離れた重質油資源を市場近くに届けることを難しくしている。かかる重質油を流動性のあるものにするために、当技術分野で知られている最も一般的な方法の1つはその重質油を十分な希釈液、例えばナフサ又は重質油よりはるかに低い密度を有する任意のその他の流れと混合することによって、粘度及び密度を低下させることである。その希釈された原油は、生産坑口装置からパイプラインを介してアップグレーディング施設に送られ、この施設で希釈液の流れは別のパイプライン中で回収されて生産坑口装置に戻されて再利用され、その重質油は、マーケットに対してより高い価値の製品を製造するために当技術分野で知られている適当な技術(コーキング、水素化分解、水素処理等)によってアップグレードされる。これらのより高い価値の製品のいくつかの典型的な特徴としては、より低い硫黄含量、より低い金属類含量、より低い全酸価、より低い残油含量、より高いAPI比重、及びより低い粘度が挙げられる。これらの望ましい特徴の殆どは、高温高圧で触媒の存在下で、重質油を水素ガスと反応させることによって達成される。
【0003】
この希釈液の添加/除去プロセスは、多くの欠点を有することが知られている。希釈液の取り扱い及び回収のために必要なインフラストラクチャーは、特に長距離に対しては費用のかかものであり得る。水素処理又は水素化分解等の水素添加プロセスは、設備及びインフラストラクチャーにおいて大きな投資を必要とする。水素添加プロセスはまた、水素生産コストが天然ガス価格に非常に敏感であるので高い操業コストがかかる。かなりの量の遠く離れた重質油層が、水素プラントを支えるのに十分な量の低コストの天然ガスへのアクセスを有することすらできない。これらの水素添加プロセスはまた、高価な触媒、及び触媒再生を含めた資源集約的な触媒取扱技術を一般に必要とする。場合によっては、生産拠点に最も接近して位置している製油所及び/又はアップグレーディング施設は、重質油を受け入れるための容量又は施設のいずれも有さないことがある。コーキングが、製油所又はアップグレーディング施設においてしばしば実施される。かなりの量の副生成物の固体コークスが、コーキングプロセス中に排斥されて、液体炭化水素の収率の低下をもたらす。加えて、コーキングプラントからの液体生成物は、しばしば更なる水素処理を必要とする。その上、コーキングプロセスからの液体生成物の体積は、フィード原油の体積より著しく少ない。
【0004】
超臨界水を使用して、重質炭化水素原材料を非常に望ましい特性(低い硫黄含量、低い金属類含量、より低い密度(より高いAPI)、より低い粘度、より低い残油含量等)を有するアップグレードした炭化水素生成物又は合成石油にアップグレードすることによってこれらの欠点を克服したプロセスが提案されている。上記プロセスは水素の外部供給も触媒の外部供給も必要とせず、感知できるほどのコークスの副生成物も生成しない。より伝統的な合成石油製造のためのプロセスと比較すると、超臨界水を使用することの利点としては、高い液体炭化水素の収率、外部から供給される水素又は触媒の必要性がないこと、アップグレードした炭化水素生成物のAPI比重の著しい増加、アップグレードした炭化水素生成物の著しい粘度低下、並びにアップグレードした炭化水素生成物中の硫黄、金属類、窒素、TAN、及びMCR(マイクロ残留炭素)の著しい減少が挙げられる。
【0005】
重質炭化水素をアップグレードするための進展が超臨界水を使用してなされたにもかかわらず、上記プロセスには困難が残存する。例えば、合成石油を製造するための商業的に受け入れられる生産性水準を達成するためには超臨界水中への高粘度の炭化水素の十分な分散を達成する必要性が残っている。温度及び圧力の実際的な動作範囲の下で、重質油は超臨界水中に完全には溶解しない。結果として、プロセス開発及び反応器設計は、二相システムに適応しなければならない。超臨界水がかす又はコークスの副生成物の形成をもたらすことがある望ましくない副反応を阻止すること、及びこれが水と油との間の良好な接触によって促進されることが、知られている。したがって、水−油の混合を高めることによって、このプロセス性能を更に改善及び最適化することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの実施形態は、炭化水素をアップグレードするためのプロセスであって、
(a)毛細管が通っている毛細管混合機中で、炭化水素油を超臨界流体と混合して、体積で10:1から1:5の間の油対超臨界流体の比率を有する液滴の分散液を形成すること、
(b)超臨界流体条件下で、アップグレーディング反応が起こることを可能にするのに十分な滞留時間にわたって、反応域中の分散液を反応させ、それによって反応生成物を形成すること、及び
(c)反応生成物を、ガス、流出水、及びアップグレードした炭化水素相に分離すること、
を含むプロセスに関する。
【0007】
本開示のもう1つの実施形態は、炭化水素をアップグレードするためのシステムであって、
(a)流体をこの流体の臨界温度を超える温度に加熱し、超臨界流体を形成するためのヒーター、
(b)入口と出口を有し、内径約0.25mmから約2.5mmの間の毛細管が通っている本管、及び毛細管と0から90°の間の角度で交差する注入管を含む毛細管混合機、
(c)超臨界流体をヒーターから毛細管混合機の注入管に供給するための流体の入口、
(d)炭化水素油を毛細管混合機の本管の入口に供給するための油の入口、
(e)毛細管混合機の本管の出口と接続可能な反応域、並びに
(f)反応域中で形成された生成物を、ガス、流出水、及びアップグレードした炭化水素相に分離するための反応域と接続可能な分離器、
を含むシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本プロセスの実施形態のプロセスフロー図である。
図2図2は、本プロセスで使用するための混合装置の断面図である。
図3図3は、本プロセスのもう1つの実施形態のプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
超臨界水を使用して重質油をアップグレードする技術のさまざまな態様が、同一出願人による2007年12月28日に出願された米国特許出願第11/966,708号、並びに全てが2006年10月31日に出願された第11/555,048号、第11/555,130号、第11/555,196号、及び第11/555,211号に記載されている。本開示はまた、溶媒−油の混合を高めるための本明細書に開示されている技術を使用することによって、超臨界流体を使用して炭化水素をアップグレードするプロセスに関する。本開示は、超臨界水中への重質油の分散の改良によるアップグレーディングプロセスの改良に関する。
【0010】
任意の炭化水素フィード(本明細書では「油」とも称する)が、本プロセスによって適切にアップグレードされ得る。このプロセスは、20°に満たないAPI比重(アメリカ石油協会比重)を有する重質炭化水素に対して特に適する。適切な重質炭化水素のなかには、重質原油、タールサンドから抽出された重質炭化水素、一般に呼ばれているタールサンドビチューメン、例えば、カナダから得られるアサバスカタールサンドビチューメンなど、ベネズエラのオリノコ重質油地帯の原油等の重質石油原油、ボスカン重質油、石油原油から得られる重質炭化水素画分、特に重質真空軽油、減圧残油、並びに石油タール、タールサンド及びコールタールがある。使用され得る重質炭化水素原材料のその他の例は、オイルシェール、シェール油、及びアスファルテンである。
【0011】
重質炭化水素フィード及び超臨界流体は、反応域に入る前に毛細管混合機中で接触させて分散液を形成する。このフィード油は、毛細管先端で小さな液滴の微細な噴霧を形成する。その油は、そのとき超臨界流体中に徐々に溶解する。特定のフィードの溶解限度によっては、この重質油は完全に溶解して単一相を形成することができない。この溶解限度は、API比重及びアスファルテン含量等の油特性によって影響される。油によっては有利には超臨界流体中に完全に溶解し、これによって単一相を最終的に形成する。超臨界流体中に完全に溶解させることができる油についてさえも、混合機におけるより良好な分散はその溶解プロセスを容易にし得る。図1は、本プロセスの一実施形態を示している。貯水タンク1からの水は、送水ポンプ3によって水ヒーター5に送達され、水ヒーターで水は超臨界温度に加熱されて超臨界流体を形成する。油タンク2からの重質炭化水素油は、油ポンプ4によって任意選択の油ヒーター6に送達される。超臨界流体及び油は、毛細管混合機7に送達され、毛細管混合機で水中油型分散液が形成される。一実施形態において、この分散液は10:1から1:5の油対水の体積比を有する。
【0012】
フィード油の粘度によっては、毛細管内部の油粘度が周囲条件におけるその値より大幅に低く、その油が流動性を有するように、その油を予熱することが必要であり得、さもなければ受け入れ難いほど高い圧力低下があり得る。より低い油粘度は、また、より小さい液滴直径が形成され得るので混合を改善する助けとなる。妥当な圧力低下及び良好な混合を獲得するために必要な温度は、加工される原油の特性に依存し、それ故注意深く選択される必要がある。低い相対粘度を有するいくつかの重質原油については、必要となる混合性能を得るために、室温よりわずかに高い温度が十分であり得る。非常に高い粘度を有するその他の原油については、はるかに高い温度が必要となり得る。このフィード油は、フィード油の粘度によって80から400℃の間に予熱することができる。
【0013】
反応物が混合されて分散液を形成した後、反応物は反応域8中に移され、反応域中で反応物は、超臨界水の温度及び圧力条件、即ち超臨界水条件の下で、外部から添加される水素が存在しない中で、アップグレーディング反応を開始するのに十分な滞留時間にわたって反応することができる。アップグレーディング反応のために必要な温度は、超臨界流体によって提供される。この反応は、外部から添加される触媒又は促進剤が存在しない中で起こることが好ましいが、本発明によれば触媒及び促進剤の使用は許容される。
【0014】
反応域8は、反応生成物(例えば、合成石油、水、及びガス)を収集するための手段を備える浸漬管反応器、並びに、金属類又は固形物がいずれも蓄積することができ、「かすの流れ」82として除去され得る底の部分を含む。
【0015】
超臨界水条件は、水の臨界温度、即ち374℃から1000℃まで、好ましくは374℃から600℃、最も好ましくは374℃から400℃までの温度、及び水の臨界圧、即ち3,205psia(22.1MPa)から10,000psia(68.9MPa)まで、好ましくは3,205psiaから7,200psia(49.6MPa)、最も好ましくは3,205から4,000psia(27.6MPa)の圧力を含む。
【0016】
反応物は、これらの条件下で、アップグレーディング反応が起こることを可能にするのに十分な時間にわたって反応する。好ましくは、その滞留時間は、そのアップグレーディング反応が選択的に、コーキング又は残留物形成等の望ましくない副反応を有することなく、最大限に起こることを可能にするように選択されよう。反応器の滞留時間は、1分から6時間、好ましくは8分から2時間、最も好ましくは10から40分であることができる。
【0017】
反応が十分に進行した後、単相の反応生成物81は、反応域から引き出され冷却され、ガス91、流出水93、及びアップグレードした炭化水素相92に分離される。好ましくは、この分離は、流れを冷却し、1つ又は複数の高圧分離器9を使用することによって行なわれる。これらは、二相分離器、三相分離器、又はその他の当技術分野で知られているガス−油−水分離装置であり得る。然しながら、任意の分離の方法が本発明に従って使用され得る。
【0018】
本発明のプロセスに従う重質炭化水素の処理によって得られたガス状生成物の組成は、フィード特性に依存することがあり、一般的には軽質炭化水素、水蒸気、酸性ガス(例えば、CO及びHS)、メタン、並びに水素を含む。流出水93は、使用、再使用又は廃棄することができる。流出水は、水タンク1、給水処理システム又は反応域8に再循環させることができる。
【0019】
本明細書において時々「合成石油」と呼ばれているアップグレードした炭化水素生成物92は、炭化水素加工技術において知られている方法を使用して、その他の炭化水素生成物に更にアップグレード又は加工することができる。
【0020】
本プロセスの処理過程は、連続的、半連続的又はバッチ処理過程として行なうことができる。この連続的処理過程においてその全体のシステムは、油のフィード流れ及び水の別のフィード流れにより動作し、定常状態に到達し、それによって全ての流速、温度、圧力並びに入口、排出口、及び再循環の流れの組成は、時間と共に感知できるほどには変化しない。
【0021】
いかなる動作理論にも縛られることを望むものではないが、多数のアップグレーディング反応の1つ又は複数が本プロセスにおいて使用される超臨界反応条件においては同時に起こっているように思われる。主な化学/アップグレーディング反応には、熱分解、水蒸気改質、水性ガスシフト、脱金属及び脱硫が含まれると思われる。
【0022】
正確な経路は、反応器動作条件(例えば、温度、圧力、油/水比率)、反応器設計及び炭化水素原材料に依存し得る。
【0023】
図2は、毛細管混合機7の設計を示している。混合機の適切な設計により優れた混合が達成されて、顕著な圧力低下なしで油を超臨界流体中に分散できることが見出された。油液滴直径を引き下げ、それによって油分散を高めて物質移動を改善するためには、毛細管混合機内の高い速度を維持することが必要である。より小さい毛細管の大きさはより高い油の速度をもたらして、より小さい液滴直径を形成し、それ故超臨界水相中への油の分散を高めることになる。混合機内の高い速度は、混合機の潜在的なつまりも防止する。混合機内の毛細管100の内径は、約0.01インチ(0.25mm)から約0.1インチ(2.5mm)の間である。毛細管100は、本管104内に設置されており、超臨界流体はこの本管中に注入管102を通して注入される。注入管は、0°(超臨界流体が油流と同じ方向に注入されるように)から90°(超臨界流体が油流に対して垂直に注入されるように)の間の角度で、本管と交差することができる。
【0024】
混合機の高温域内の油の滞留時間を最小限にすることは、分解及びコーキング反応を避けるために有利である。毛細管内側の油の空塔速度(superficial velocity)は、1から500cm/秒の間、更に20から100cm/秒の間である。毛細管を取り囲んでいる管内の超臨界水の速度は、1から50cm/秒の間である。毛細管内の油のレイノルズ数は、10から1000、更に20から400である。外側の管内のレイノルズ数は、200から7000、更に3000である。
【0025】
この毛細管は超臨界流体によって取り囲まれているため、毛細管内側のフィード油は毛細管の壁を経る熱伝達によって加熱される。かかる加熱は油粘度を低下させるには十分であり、それ故毛細管中の圧力低下を減少させ、超臨界流体中への油分散を容易にすることができ、そのため別の油予熱は必要ない。
【0026】
毛細管を取り囲みながら、超臨界流体は油と同じ方向に流れて、毛細管先端での油噴霧を容易にする。
【0027】
本プロセスの一実施形態によれば、炭化水素フィードは、複数の並行した毛細管混合機に送達される。原材料、特定の毛細管混合機設計及び必要容量によって多くの毛細管混合機を同時に利用することができる。例えば100以上の毛細管混合機、更に1000以上の毛細管混合機を並行して使用することができる。
【0028】
以下の実施例は、本発明を例証するが、後に続く特許請求の範囲に含まれているものを超えて多少なりとも本発明を限定することが意図されてはいない。
【実施例】
【0029】
試験法
API比重は、ASTM試験法D4052−91に従い、デジタル密度計を使用して測定した。
【0030】
酸価は、ASTM試験法D664、石油製品の酸価に従って決定した。
【0031】
マイクロ残留炭素(Micro Carbon Residue)は、ASTM試験法ASTM D4530−85に従って決定した。その結果はMCRT、重量%として報告する。
【0032】
フィード中の金属類含量は、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP−AES)により決定した。
【0033】
粘度は、ASTM試験法D445−94に従って測定した。この測定の温度は、他に指定のない限りは40℃であった。粘度は、センチストークス(CST)で報告した。
【0034】
一連の実験は、プロセス性能について、水と油との混合の効果を調べるために行なわれた。全ての試験は、0.5ml/分のフィード油流速及び3の水対油の体積比を用いて、3400psig(23.4MPa)で行なわれた。
【0035】
図1は、超臨界水を使用する重質油アップグレーディングのためのプロセスフロー図を示す。プロセス性能についての水−油混合の効果を調べるため、さまざまなタイプの混合機が実験では使用された。
【0036】
ISCOシリンジポンプを水及びフィード油に対して使用した。ポンプヘッド及び混合機へのフィードラインは、粘度を低下させるために80〜150℃に加熱した。
【0037】
水を水ヒーター中で超臨界温度(400℃)に加熱し、次いで混合機中で液体フィード油に触れさせた。その水−油混合物を、次に反応器の輪形の隙間に供給し、反応器内側のその輪形領域内を下向きに流した。かす(dreg)、つまり最初に超臨界水に溶解しなかった重質成分又は反応中に形成された重質成分のいずれかは、反応器の底に蓄積し除去された。超臨界水中に溶解した生成物は、次に浸漬管を通して上方に流れて反応器から離れ、高圧分離器に運んだ。システム圧力は、背圧レギュレータにより調整した。ガス流速は、湿式テストメーターにより測定した。ガス組成はガス採取ボンベ及び非直結のガスクロマトグラフを使用して分析した。
【0038】
図1に示されているユニットを、380〜425℃の範囲の動作温度に加熱し、次に水をシステム中にポンプで注入してシステムを動作圧力まで持っていった。温度及び圧力が安定した時点で、フィード油のポンプによる注入を開始した。高圧分離器(HPS)は、HPSが試料を収集するために反応器の排出口に向けて開かれたとき圧力の混乱がないようにアルゴンを使用して加圧した。
【0039】
HPS中で蒸気相の水及び油は、液体の水と油とに凝結した。図1には、1個のHPSが示されているのみであるが、並行した複数のHPSを使用して選択された時間にわたって生成物試料を収集することができる。殆どの実験用の運転について、最初の2時間はシステムのラインアウト期間と考え、この期間中に収集された生成物は分析のために使用しなかった。この2時間の始動期間からの典型的な炭化水素生成物試料は、この試料は主として抽出により形成されるので非常に軽質であった。この2時間の始動期間の後、反応器の排出口を定常状態条件下で試料を収集するために別のHPSに向けた。それぞれの採取期間の後、水及び油をHPSの底からドレイン排出した。それぞれの運転の終わりに、その反応器は反応温度及び圧力で保ち、更に2時間にわたって水を勢いよく流して反応器から全ての炭化水素を除去した。
【0040】
動作中に形成されたいかなるかすも、2時間毎に反応器の底から除去した。かすを除去する間、反応器圧力は約100psig(0.69MPa)低下したが、その圧力は水の臨界圧を超えて、約3205psig(22.1MPa)に留まった。
【0041】
表1は、運転条件を示しており、Hamaca原油及びHamaca DCO(希釈された原油)のフィード特性は表6に示されている。表1に示されているように、さまざまなタイプの混合機が使用された。運転1〜5については、インラインの混合機プラス20フィート(6.1m)のコイルが使用された。0.25インチ(0.63cm)の外径の230マイクロメーターの細孔の大きさを有するSwagelok、T字管タイプの粒子フィルターを、油−水の混合を促進するためにインラインの混合機として使用した。超臨界状態(400℃)の水を、インラインの混合機中で液体フィード油に触れさせた。混合機の後に、この水−油の流れは次に、水−油の接触を更に向上させるために、高温のサンドバス(反応器温度と同じ)中に浸漬された20フィート(6.1m)の螺旋コイルを通して流れた。運転6〜8については、インラインの混合機中での混合の後に、その水−油分散液は、コイルを通して流れることなく反応器に送られた。
【0042】
運転9〜12について、油と超臨界水とを混合するために毛細管混合機が使用された。その混合機の設計は図2に示されている。この毛細管混合機は、1/4インチ(0.63cm)のSwagelok、T字管を使用して構成されており、0.01インチ(0.25mm)又は0.032インチ(0.81mm)の内径を有する1/16インチ(0.19cm)の外径の毛細管が、液体フィード油を超臨界水の流れ中に注入するために使用された。そのフィード油は、毛細管に入る前に130℃に加熱された。T字管内の毛細管は、超臨界水に取り囲まれており、そのためフィード油は毛細管中で約400℃に更に加熱された。小さい油流速及び相対的に高い毛細管の表面積のため、毛細管先端において油の温度は400℃に非常に近かったことが推定される。高温のため、油粘度は室温におけるよりはるかに低かった。したがって、APIが2.4程の低さである超重質油フィードを使用してさえ、顕著な圧力低下は全ての毛細管にわたって観察されなかった(1psi未満)。毛細管先端で高温の油は超臨界水中に注入されて、高度の混合を達成した。
【表1】
【0043】
表2は、これらの運転からの結果を示している。毛細管混合機を使用する運転については、毛細管内側のレイノルズ数もこの表に記載されている。小規模の実験ユニットの場合、レイノルズ数は相対的に小さいことに留意されたい。商業的ユニットにおいて、レイノルズ数ははるかに高くなるが期待される。運転1についての油フィードは、Hamaca DCO(希釈された原油)であり、インラインの混合機がフィード油と超臨界水とを混合するために使用された。インラインの混合機の後に、この水−油の流れは、水−油の接触を更に向上させるために、高温のサンドバス(反応器温度と同じ)中に浸漬された20フィート(6.1m)の螺旋コイルを通して流れた。その液体の収率は62%であることが分かった。かなりの量の固形物が、予熱コイル中及び予熱コイルと反応器との間の移送ライン中にも蓄積した。
【表2】
【0044】
運転2〜5は、上記と同じプロセス用機器を使用して、フィードとしてHamacaの全原油(API=8)を使用した。興味深いことに、Hamacaの全原油の場合、予熱コイル中の固形物堆積は、Hamaca DCOの運転からのものより少なかった。然しながら、液体の収率はわずかに低かった。
【0045】
運転6〜8においては、予熱コイルが使用されず、液体の収率は約55%であった。
【0046】
運転9〜11は、Hamaca原油について毛細管混合機を使用した。インラインの混合機を用いる結果(運転6〜8)と比較して、液体の収率において顕著な改善(55%から67%まで)が分かる。加えて、毛細管混合により、固形物が、反応器、混合機又は混合機と反応器との間の移送ライン中に蓄積しない。これは、機器を洗浄のために中断することなく連続して動作することができるので非常に有利である。
【0047】
Hamaca DCO(運転12)の場合の毛細管混合の性能は同様の傾向を示した。液体の収率は、約62%から約75%まで増大した。
【0048】
実験結果は、毛細管混合機の使用がより高い液体の収率及び反応器システム中の固形物の蓄積がないことをもたらしたことを実証している。
【0049】
表3及び4は、アップグレードした液体生成物の特性を示している。これら2つの表のデータを比較すると、Hamaca及びHamaca DCOの両方の場合、生成物の品質が基本的に同等であることは、毛細管混合機を使用することによって液体の収率が生成物の品質を維持しながら高められることを示すと理解することができる。予熱コイルを除くことによって全体の滞留時間を減少させることもできることに留意されたい。
【表3】

【表4】
【0050】
毛細管混合の適用によって、重質油のアップグレーディングプロセスにおいて超臨界流体中への重質油の分散の性能が改善されることが示された。Hamaca及びHamaca DCOに加えて、該毛細管混合機は、その他のフィードのアップグレーディングについても使用された。表5は、液体の収率データを示している。アップフロー反応器がこれらの運転には使用され、プロセスフロー図が図3に示されている。油及び超臨界水を毛細管混合機7中で混合し、アップフロー反応器8の底に送った。反応後、全ての生成物は頂部から反応器を離れ、次いでかす分離器9の中に流れた。このかす分離器は反応器と同じ温度で保たれた。生成物及び超臨界水は上方に流れ、かす分離器を頂部で離れ(流れ91)、HPS10中に入り、その間にかすは底に沈殿させた。表5に示されている全ての運転は、400℃の反応温度で行なった。表6はこれらのフィードの特性を示している。実験結果は、意外にも、小さい直径の毛細管混合装置が、APIが2程の低さであり粘度が何万センチポアズ程の高さである重質油を、超臨界水中に顕著な圧力低下なしで分散させるのに有効であることを示している。毛細管混合の適用によって、従来の既知のシステムと比較して20%を超える液体の収率の増加がもたらされる。加えて、この改善された混合は、反応器システム中の固形物形成を減少し、それは長期の実機操業にとって重要である。
【表5】

【表6】
【0051】
本明細書に記載された教示及びサポート実施例に照らして可能である本発明への多数の改変が存在する。したがって、以下の特許請求の範囲内で、本発明は本明細書で具体的に説明するか例示したものとは別の様式で実施され得ることが理解される。
図1
図2
図3