(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動ピストン(6、6a)と発電機または電動機の可動部(14)とを備えるスターリング機関であって、前記移動ピストン(6、6a)はシリンダ(2)の中に取り付けられており、前記シリンダ(2)内で、前記移動ピストン(6、6a)が、前記スターリング機関の作動容積を構成するチャンバであって、前記移動ピストン(6、6a)の2つの作動面にそれぞれ連関する膨張チャンバ(VE)と圧縮チャンバ(VC)の間で、熱源に接続された高温熱交換器(7)、再生器(9)、および熱シンクに接続された冷却熱交換器(8)に作動気体を通しながら前記気体を周期的に移動させ、弾性復帰手段が前記移動ピストン(6、6a)に対して力を及ぼし、前記ピストン(6、6a)の2つの前記作動面の間の断面積比(aC/aE)が≧0.35であることで、膨張容積VEに向かう軸Xに沿った前記ピストンの変位によって前記ピストン(6、6a)の前記変位と逆位相の前記作動気体の圧力成分PXがもたらされ、前記可動部(14)に伝達されるすべての機械エネルギーを前記移動ピストン(6、6a)で発生させるようにするスターリング機関において、前記断面積比aC/aEが0.70未満であること、および前記スターリング機関が、前記圧力成分PXに比例するエネルギー量で前記移動ピストン(6、6a)と連結される少なくとも1つの共振ピストン(10)を備えることを特徴とするスターリング機関。
20μmから50μmの径方向の遊びによって形成される動的シールであって、その2つの表面のうちの少なくとも一方が、耐摩耗性で、静的および動的な摩擦を減らすことができる自己潤滑性の被覆を備える動的シールによって、それぞれのピストンが径方向に支承される、請求項1から5のいずれか一項に記載のスターリング機関。
前記ピストンとそれを囲む前記シリンダの間に形成される前記動的シールが、前記シリンダの壁体内または前記ピストン内に設けられた少なくとも1つの気体容積に含まれる所定圧力の作動気体である、請求項6に記載のスターリング機関。
前記気体容積が、時間とともに変化する圧力にさらされる容積の近傍に設けられた少なくとも1つの逆止弁を備えており、前記容積が最も高い周期的圧力にさらされたときに作動気体の供給を受ける、請求項7に記載のスターリング機関。
前記共振ピストン(10)および/または前記移動ピストンが、それぞれの前記ピストンの中心軸の周りに対称に配置され、それぞれの前記ピストンに対して、それぞれの前記ピストンに心合わせされた軸方向の力を及ぼすコイルばねによってフレーム(4)に懸架される、請求項1から8のいずれか一項に記載のスターリング機関。
追加ウエイト(41a)が、その固有周波数を前記機関の前記移動ピストン(6、6a)の固有周波数に調整するように、さらにその振動運動によって前記移動ピストン(6、6a)の震動を補償するように、弾性手段(42c)によって前記フレームに懸架される、請求項1から13のいずれか一項に記載のスターリング機関。
前記追加ウエイト(41a)が、前記機関の前記移動ピストン(6、6a)の動作周波数で前記ウエイトを前記移動ピストンと反対方向に振動するように調整された弾性手段(42c)によって、前記機関の前記フレームおよび前記移動ピストン(6、6a)に懸架される、請求項1から13のいずれか一項に記載のスターリング機関。
空気圧ばね(46a)が前記移動ピストン(6、6a)を前記追加ウエイト(41)の空気圧ばね(46b)と連結し、かつ前記空気圧ばね(46a)が前記移動ピストン(6、6a)の延長部に位置する管状要素(6a)の中に少なくとも部分的に組み込まれる、請求項15に記載のスターリング機関。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示したスターリング機関は、フレームの役を果たす要素4によって組み立てられた2つの円筒部分2、3によって構成される縦長のケーシング1を備える。このケーシング1の内部は加圧された作動気体によって満たされている。部分2の円筒形ハウジング5はスターリングエンジンの作動容積をなし、その中に、2つの部分6、6aからなる移動ピストンが長手方向に変位自在に取り付けられている。移動ピストン6、6aとハウジング5の外側端の間に位置する容積は、熱源(図示せず)につながれた高温熱交換器7に連絡し、スターリングエンジンの高温チャンバあるいは膨張容積V
Eをなす一方、その円筒形ハウジング5の反対端に位置する容積は、冷熱源(図示せず)につながれた低温熱交換器8に連絡し、スターリングエンジンの低温チャンバあるいは圧縮容積V
Cをなす。再生器9は高温熱交換器7および低温熱交換器8の間に配設される。
【0017】
圧縮チャンバV
Cに隣接する移動ピストン6、6aの管状部分6aは、ピストン6、6aに関して軸対称をなす環状の第2の共振ピストン10の円筒形開口部の中に嵌合する。支持体11と一体をなすこの第2のピストン10は、円筒形ハウジング5の長手方向軸に沿って変位自在である。
【0018】
弾性懸架装置12が、その中心部で支持体11に固定され、さらにその外周で、フレーム4と一体をなす支持体13に固定される。この弾性懸架装置12は、らせん形アームを有する板状装置である。
図3Aに示す変形形態では、共振ピストン10は、中心軸の周りに対称に配置されたコイルばね12aであって、ピストンに心合わせされた軸方向の力をピストンに対して及ぼすコイルばね12aによってフレーム4に懸架される。
【0019】
一方ではピストン6aと10の間、もう一方ではピストンと円筒形ハウジング5の間に配設されるパッキン25は、気体の漏洩を許容レベル内に抑える働きをする。
【0020】
円筒部分3の内部容積内には、ここでは永久磁石を備える円筒形部材によって構成される発電機の可動部14が収まる。この可動素子14は、装置12と類似した環状弾性懸架装置16と一体をなす内縁部を有する環状支持部15の外周と一体をなす。この装置12の外周はフレーム4に固定されており、その中心は、移動ピストン6、6aに固定された端部を有するロッド17と一体をなす。発電機の電機子は、放射方向に配置された薄板の集合体18によって形成され、そこに環形の1つまたは複数の巻線19が収まる。発電機の可動素子14は、ここでは放射面上に配置された薄板の集合体によって形成されるアーマチュア20によって囲われる。
【0021】
移動ピストン6、6aの弾性懸架機構は、フレーム4と一体をなす固定支持体22と、ロッド17と一体をなす可動支持体23の間に配設された1つまたは複数のコイルばね21によって補強することができる。
【0022】
低温圧縮容積と発電機容積の間に設けられた調節弁24を備える管路は、作動気体の圧力振幅を、したがってエンジンの出力を調整することができる。この弁はさらに、共振ピストンが描く動線の振幅を調整することもできる。
【0023】
図2は、第2の共振ピストン10を通る直径方向の部分断面図を示したもので、2つのピストン6aおよび10の円筒形軸受面の代替的な解決法を図示している。パッキンに代えて、ピストンの円筒形表面とそのエンクロージャの間に、案内および支承手段として、20〜50ミクロン程度の遊びを伴って環状の隙間を設けることは有利である。このような遊びは、製造公差という点からも、作業気体の漏洩が装置のエネルギー効率に及ぼす影響という点からも全くもって許容されるものである。ピストンの機械的摩擦は、耐摩耗性で、静的および動的な摩擦を減らすことができる自己潤滑性の表面被覆によって減らすことができる。好ましい実施形態では、特許文献3に記されているような静圧気体軸受を利用することも考えられる。
【0024】
そこで、ピストン10の内部は中空であり、それによって、2つのピストン6aと10の間、または、ピストンと縦長のケーシング1の隣接面の間であり、ピストンとピストン6a壁体の隣接面の間である環状の隙間に開口するノズル27に供給する気体のタンクとして働くスペース26が設けられる。区画26は、逆止弁28を通して作動容積から気体の供給を受け、常に作動体積における最大圧力に保たれる。区画26は、移動ピストン6、6a内またはフレーム4内に設けて、静圧気体軸受のノズル27への気体の供給が行われるようにすることもできる。
【0025】
図3は、部分2のスペース5が、スターリングエンジンの駆動部分を形成するピストン6、6aおよび10ともども、上述の実施形態と類似したハイブリッド型変形形態を示したものである。部分2は、回転式発電機31を備えた区画30に連結されている。駆動移動ピストン6、6aは、ロッド17を介してクランク機構32に連結されており、クランク機構32は、ピストン6、6aの軸方向の運動および力を、回転式発電機31の可動部分と連動するクランク軸33に伝達する。
【0026】
クランク機構の実施形態には様々なものを想定することができる。
図3には、Ross型のクランク機構の概略を示したが、これについては、たとえば、非特許文献2に詳細に記されている。その519ff頁には、ロッドの横方向変位をロッドの運動軸に対して最小化することができるクランク機構の計算について記載されている。Philipsが使用している台形クランク機構(たとえば、非特許文献3に示されているもの)などのように、クランク機構のその他の実施形態も想定することができる。
【0027】
発電機の可動部分は、回転運動のバランスを取り、それによって発生電圧に重畳される波を滑らかにすることができるはずみ車34を備えることができる。また、ウエイト35は、ピストンの往復運動による震動を緩和することができる。
【0028】
記載されているスターリング機関の動作は以下のとおりである。第2の共振ピストン10の運動は、弾性要素によって伝えられる力および第2の共振ピストン10の軸方向面にかかる気体の圧力によって支配される。その運動によって作動気体の圧力は変化する。
【0029】
そのため、移動ピストン6、6aは、これから述べる幾つかの条件が満たされる限りにおいて、膨張チャンバV
Eと圧縮チャンバV
Cの間の作動気体の移動と、リニア発電機の可動部14に伝達されるすべての駆動エネルギーの発生という二重の役割を果たす。
【0030】
この目的を達成するため、圧縮容積V
Cを画定する移動ピストン6、6aの面積a
Cと、膨張容積V
Eを画定するその同じ移動ピストン6、6aの面積a
Eの比を定める必要がある。
【0031】
等温サイクルの解析では、作動容積内の作動気体の圧力は、次式が成り立つ場合には、移動ピストン6、6aの位置には依存しなくなることが示されている。
【0032】
【数1】
例:
高温容積V
Eの温度T
H、T
H=923°K=650℃
低温容積V
Cの温度T
C、T
C=323°K=50℃
a
C/a
E≧0.35
【0033】
エンジンの動作は、面積比a
C/a
Eがこの限度を上回る場合にのみ可能となる。すなわち、移動ピストン6、6aの変位(
図4)によって、そのピストン6、6aの変位Xと反対向きでなければならない圧力成分P
Xが生じなければならない。移動ピストン6、6aの変位は、移動ピストン6、6aが容積V
Eの方向に変位するときにプラスである。
【0034】
この駆動移動ピストンはフリーピストンとして設計することができる。その場合、そのピストンの弾性懸架機構は、ピストンが共振ピストンと同じ周波数で振動するように調和を取らなければならない。ピストンの振幅は、発電機によってもたらされる電気的な力によって制御される。発電機の端子に一定の電荷が与えられるときは、振幅は一定である。
【0035】
ハイブリッド型機関では、ピストン6、6aは、クランク機構によって回転式発電機の可動部分の軸に機械的に連結される。その場合、ピストン6、6aの行程は、そのクランク機構の幾何学形状によって決まる。その回転速度は発電機によって電気的に制御され、その周波数は第2の共振ピストン10の周波数に対応するものでなければならない。
【0036】
図4は、システムの最重要特性を示したベクトル図で、時間tは時計の針の方向に進む。ベクトルXは駆動移動ピストン6、6aの変位を表し、ベクトルYは共振ピストン10の変位を表す。共振状態では、YはXに対して遅れを取る。駆動移動ピストン6、6aは、その変位により、Xと反対向きの小さな圧力変化P
Xを生じる。共振ピストン10の変位YはY方向に圧力変化P
Yを生じ、作動気体の圧力変動PはP
XとP
Yの2つの成分の合計となる。
【0037】
共振ピストン10はサイクル毎に圧力成分P
Xに比例する一定量のエネルギーを受け取り、それによってピストンは運動状態に保たれる。P
Xは加熱温度T
Hに依存するため、共振ピストン10の振幅Yはその温度T
Hに応じて変化する。圧力振幅P
YはYに比例するため、その圧力振幅P
Yおよびスターリングエンジンによって発生する機械出力は加熱温度T
Hとともに大きく増大する。
【0038】
図5は、移動ピストンおよび作動ピストンを備えるスターリングエンジンによって生み出される機械エネルギー(曲線1)と本発明によるエンジンの機械エネルギー(曲線2)とを加熱管の温度T
Hとの関係で比較したものである。本発明の対象であるスターリング機関を起動するためには、まず高温熱交換器を、選択したa
C/a
E比に依存する閾値である比較的高い温度T
H(たとえば600℃)まで持っていかなければならない。すると、駆動移動ピストン6、6aは、それに連関させた発電機によって振動を始める。共振ピストン10は最初は小さな振幅で振動し始め、加熱温度T
Hとともにその振幅が次第に増大する。作動気体の圧力振幅も、さらにスターリング機関によって与えられる機械出力も増大する。高温熱交換器の温度が約700℃になると、公称出力に到達する。
【0039】
移動ピストンと駆動ピストンを備えたスターリングエンジンは、それよりも明らかに低い加熱温度(設計により、300〜400℃前後)から起動可能である。その後、出力は温度T
Hとともに次第に増大し、ほぼ同等の公称条件のもと、本発明の対象である機関と同じような出力に到達する。
【0040】
本発明の対象である機関では、高温熱交換器の温度のわずかな上昇が、そのエンジンから発生する出力の大幅な増大をもたらす。この高温部分における気体の膨張によって奪われる熱出力もその温度とともに大幅に増大する。そのため、エンジンの速度の安定性は高温熱交換器に対する熱供給に正確に依存し、その調節は単純な手段によって行うことが可能である。温度T
Hは、エンジンが発する出力によって高い精度で制御されるため、高温部分が過熱するリスクは最小限に抑えられる。
【0041】
図6は、従来型の機関(曲線1)と本発明による機関(曲線2)のそれぞれの熱効率ETAを、サイクル毎の発生エネルギー(WRK)との関係で描いて比較したものである。定格速度運転では、2つの機関はほぼ同等の性能を有する。部分負荷状態では、本発明によるスターリング機関は、従来の機関よりも明らかに高い加熱温度T
Hレベルで、したがって、熱エネルギーから機械エネルギーへの転換に有利な条件のもとで作動する。そのため、本発明による機関は、広い範囲の部分負荷で、より高い熱効率ETAに到達することができる。
【0042】
本発明による機関では、共振ピストン10は、摩擦によるその損失を補償して振動運動を保つ働きをするわずかな量のエネルギーをサイクル毎に受け取る。共振ピストン10の振幅Yは、作動気体の圧力変化を、したがってエンジン速度を決定する。ピストンの摩擦が時間の経過に対して比較的一定である状態は、前述の静圧気体軸受を利用することで得られるが、その状態であれば、微細な調節が可能である。一方、調節弁24は、作動気体の圧力振幅、したがって共振ピストンの振幅の調整を可能にする。
【0043】
共振ピストンを使用することにより、純粋ヘリウムなど、軽い作動気体によってシステムを動作させることができる。一方、共振管はより重い混合気体の方が動作がよい。スターリング機関の熱交換機器(加熱装置、再生器、冷却器)における損失は気体の密度に依存するが、本発明では、その損失はより小さい。
【0044】
エンジン負荷が変わっても高温熱交換器の温度T
Hがわずかしか変化しないということは、燃料を使って加熱するユニットにおいては特に有利であることがわかる。一般に、バーナの動作はその場の温度条件にかなり影響される。すなわち、温度条件が十分に安定していなければ、汚染物質が最小限の完全燃焼を得ることはできない。
【0045】
詳細な研究の結果、スターリングエンジンに関して様々な形態で適用されている技術である燃焼ガスの内部再循環(特許文献4参照)を用いたバーナについて、こうした利点を明らかにすることができた。酸化剤の希釈により、燃焼チャンバ内に無炎燃焼が起こって、その容積の相当部分を占める。そこで以下のような幾つかの条件が満たされると、ごくわずかな過剰量の空気で完全燃焼を得ることができる。
供給される新鮮な空気とリサイクルガスによって形成される混合物の温度は、燃料の着火温度よりも高くなければならない。希釈雰囲気における天然ガスの場合、その閾値は720℃超に位置する。
NO
xの大量生成を防ぐため、ガスの温度はどの部分でも1300〜1400℃の限度を超えてはならない。
高温熱交換器表面の温度T
Hは、燃焼の際に放出されるエネルギーと、スターリングの作動気体の膨張によって高温熱交換器から奪われるエネルギーとが均衡したものとして定まる。特許文献4の条件における動作条件が広い出力範囲で満たされるのは、本発明の対象であるスターリングエンジンの場合のように、T
Hが機関の出力の変化によってわずかしか変化しない場合に限られる。
【0046】
従来のフリーピストン式スターリング機関は、エンジン速度が制御された状態を保つために、機関の起動段階ばかりでなく、公称条件の前後で動作を安定させるときにも、高度な調節手段(たとえば、特許文献5や特許文献6)を必要とする。こうした機関では、最適な動作条件からのずれはエンジンの性能を大きく減ずる可能性がある。
【0047】
本発明の対象であるスターリング機関の制御は、それと比べて明らかに単純であることがわかるが、それは主として以下のような理由による。2つのピストンは、第一義的にはシステムのエンクロージャと連結されており、それぞれの間の連結は付帯的なものである。そのため、本発明の対象である機関の2つのピストンの間のうなりは容易に減衰させることができ、完全になくすことも可能である。一方、このスターリング機関のバーナは出力の変化により素速く反応するが、これは、移動する熱出力が変わってもその温度がほとんど変化しないためである。熱源のT
Hの変化はP
Xを、したがって共振ピストンに移動する出力を変化させ、共振ピストンの振幅Yの素速い変化をもたらす。そうすることで圧力振幅が変わり、それによってエンジンの出力が調整される。
【0048】
先行技術によって設計されたフリーピストン式スターリングエンジンでは、移動ピストンの運動は作動気体の圧力変化に依存する。移動ピストンの運動の振幅のわずかな変化は、再生器とそこを通る気体との間でやり取りされるエネルギー量の変化をもたらし、それは作動気体の瞬間的な圧力に影響を及ぼすが、その瞬間的な圧力の方は移動ピストンの運動に影響を与える。こうして不安定が生じる可能性があるが、その不安定は、駆動ピストンに対する発電機の作用によって間接的に制御することしかできない。
【0049】
本発明では、移動ピストンの運動の振幅は、移動ピストンと連関させた発電機によって直接制御される。そのため、移動ピストンの運動の振幅の変化は、発電機に加わる負荷によって直接制御され、それにより、エンジンの定格サイクルに対する一切の有意な外乱が食い止められる。こうした制御の質により、これらのエンジンは大きな圧力振幅で動作することができ、公知の構成で制御可能な出力密度を上回る出力密度を達成することができる。
【0050】
図7は、外部シリンダの中に設置し、スターリングエンジンの圧縮容積V
Cと連結した2つの共振ピストン10a、10bを備えるスターリング機関の構成を直径方向断面で示したものである。2つの共振ピストンは、それぞれのシリンダ内で弾性手段40によって懸架される。それぞれのピストンの質量、ならびにそれぞれのピストンに作用する機械および空気圧による弾性力は、それらのピストンに機関の運転周波数に等しい共振周波数が与えられるように調整される。これらのピストン10a、10bおよびそれぞれのシリンダによって形成される2つのサブアセンブリは同一である。2つのピストン10a、10bは同軸であり、機関の中心軸に関して対称に配置される。機関の可変圧力の作用により、2つの共振ピストンは互いに反対方向に振動し、それぞれの慣性力は相殺し合う。
【0051】
図8の変形形態では、2つのピストン10aおよび10bは、機関の主軸に対して横方向に配置された共通の1つのシリンダの中に同軸状に設置される。共通シリンダの2つの外部容積45aおよび45bは、管路29によってスターリングエンジンの圧縮容積V
Cに接続される。中央部容積45cは、発電機の容積の圧力など、ほぼ一定の平均圧力にさらされる容積48に管路44によって接続することができる。この2つのピストン10aおよび10bが可変圧力の作用によって振動すると、それぞれの慣性力は互いに打ち消し合う。変形形態として、中央部容積45cは低温チャンバV
Cに、外部容積45aおよび45cは容積48にそれぞれ接続することができる。複数対の同軸共振ピストン10a、10bを機関の主軸に関して対称に配置することで、それら共振ピストン10a、10b全体によってもたらされる横方向の力は、すべての共振ピストンが同じ動線を描く限り、打ち消される。
【0052】
図9は、一例として、共振ピストン10a、10b、10c、10dの菱形の構成を示したものである。この構成は、共振ピストンをそれぞれのシリンダとともに小径のエンクロージャ内に配置することを可能にする。それぞれの運動が同一である限り、これらの共振ピストンによって機関全体に横方向の力がかかることはない。さらに一般的には、これらの共振ピストン10a、10b、10c、10dが機関の主軸に関して対称形の構成をなして設けられる場合には、それらの共振ピストンの慣性力は打ち消し合う。
【0053】
フリーピストン式スターリング機関でたびたび遭遇する問題は、振動するピストンからフレームに伝えられる大きな震動力によって引き起こされる。外部に漏れる不快な騒音を抑えるため、この種の機関は防音エンクロージャの中に収め、床面から引き離さなければならない。また、フレームの震動はこの種の機関の速度に影響を及ぼし、それによってその動作に不調を生じるおそれがある。
【0054】
そうした震動は、共通の1つの燃焼チャンバを挟んで互いに反対向きの2つの同一機関を設けることによって相殺することができる。タンデム型アセンブリのそうした構成は、たとえば、非特許文献4で提案されている。そうした解決法はとりわけ、比較的高い出力を発生する機関の場合に適している。
【0055】
図7は、フレームの震動に対する公知の緩和手段であって、機関のフレーム4と一体をなすエンクロージャ3に弾性手段42によって懸架された追加ウエイト41を備える緩和手段を示したものである。この共振器の固有周波数を調整して機関の運転周波数に合わせることにより、機関の震動を減らすことができる。しかし、同調の精度が十分でないと、うなりを生じる可能性があり、それが不快を生じたり、機関の動作の妨げとなったりするおそれがある。
【0056】
本発明は、その欠点を少なくとも部分的に補い、機関のエンクロージャに伝達される震動を緩和することのできるもう1つのシステム(
図10に図示)を提案する。この考え方によれば、追加ウエイト41は移動ピストン6、6aおよび機関のフレーム4に対して弾性的に連結される。弾性懸架機構42a、42bおよび42cは、機関の運転周波数でそうした2つのウエイトが互いに反対向きに振動して、エンクロージャまたは機関のフレームに伝わる震動力が打ち消されるように調整する。それにより、ピストンの運動によって生じる震動をその発生源で減衰させる。
【0057】
弾性手段42a、42bおよび42cは、コイル状もしくは板状の機械ばね、電磁石、空気圧手段、またはそれら様々な弾性支持体の組み合わせのいずれからなるものであってもよい。この震動抑制システムは、単一振動体の作用を効果的に補償することができる。そのため、このシステムは、対向する共振ウエイトを備えるスターリング機関に特に適している。これは、移動ピストンによって発生する震動だけを補償すればよいためである。
【0058】
図11は、スターリング機関の円筒形区画3を一例として示したものである。この実施形態では、追加ウエイト41は、空気圧ばね42bの容積46を画定するピストン6aの管状要素の延長部の中に設置した可動ピストンを形成する。ピストンの形を取るこの追加ウエイト41は、シール部片25を備えることができる。変形形態として、容積46の密封は、追加ウエイト41によって形成されるピストンの円筒形表面とそれに対応する管状エンクロージャにより、ピストンの円筒形壁体と管状エンクロージャの円筒形壁体の間にごくわずかな環状スペースを設けることで得ることもできる。この環状スペースはまた、追加ウエイト41とピストン6aの管状延長部の間の径方向位置を安定させるための静圧気体軸受を備えることができ、それによってそれら2つの面の間の摩擦を減らす。
【0059】
この追加ウエイト41は、機械的ばねによって、好ましくはらせん状アーム42cを有する板ばねによって、心合わせされ、弾性的に懸架される。追加ウエイト41に付帯する補助ウエイト41aは、その追加ウエイトの振動を調整して、移動ピストン6、6aと追加ウエイト41とが逆位相で振動するようにする役割を果たすもので、それによって、フレームに伝わる震動力を最小限にまで減衰させることができる。
【0060】
この図に示すように、電機子と巻線は発電機の可動部分を取り囲むものであってよく、アーマチュアは発電機の中に設置してよい。
【0061】
図12は
図11の変形形態を示したもので、この変形形態では、追加ウエイト41は、機関のフレーム4に剛性的に結合された支持体47に固定された補助シリンダ49の中に収まる。この場合、
図10の空気圧ばね42bは、移動ピストン6,6aの延長部の中に位置して、静止ピストン50によって画定される第1の可変容積46aからなる。この容積46aは、補助シリンダ49内に位置する第2の容積46bに管43によって接続される。管43は、機関のフレーム4と一体をなす支持体47に対して剛性的に固定され、静止ピストン50を貫通する。
【0062】
2つの可変容積46aおよび46bは、パッキン25を備えるか、または対応するそれぞれのシリンダに対する径方向の遊びがごくわずかである滑面を備える可動式または固定式ピストン手段によって密閉される。それぞれのシリンダは、摩擦による損失を減らすため、静圧気体軸受を備えることができる。
【0063】
図12による実施形態では、振動ウエイト6、6aおよび41はそれぞれの支持体によって個別に案内される。この解決法は、これらの可動要素に対して最適な支承を果たすものであり、それら要素の径方向の動きおよび摩擦による損失を最小化する。この解決法の欠点は比較的かさばるところにある。
【0064】
2つの振動ウエイトを有するシステムの実施形態については、数々の変形形態を想定することができる。たとえば、
図12による変形形態は、支持体47と一体をなす静止ピストンを囲む円筒形の可動ウエイト41を含むことができる。また、これらすべての変形形態では、空気圧ばね42bの作用を補強するために補足的な機械ばねを使用することができる。
【0065】
複雑で高価なサーボ制御システムを使用しないこと、機関によって発生する震動が低減されること、部分負荷での動作条件において有利であることは、多くの用途で実に多くの利点を有する。たとえば、
家庭の暖房用として、季節の変わり目に、部分負荷で設備の停止/再起動を最小限にして動作することができる。それにより、再起動のたびのエネルギー損失を防ぎ、頻繁な熱サイクルにさらされることによる金属の疲労を減らすことができる。また、システムの柔軟性により、家庭の電気エネルギー需要に対する動作の適合を高めるとともに、給湯用の貯湯管理を改善することができる。
バイオマスの燃焼時に、燃料の量によって放出熱が変動する可能性がある。本発明の対象である機関を使用すれば、加熱管の温度の変化は小さくなり、それによって最適な条件のもとで安定した燃焼が維持される。
システムの柔軟性と部分負荷での効率のよさは、太陽光エネルギーを、たとえば朝、夕、曇天時などに、効率よく転換することを可能にする。そのため、年間の平均を取れば、本発明の対象であるスターリング機関は、従来のシステムよりも長い期間にわたる動作を可能にする。
【0066】
回転式発電機を使用すると、電力系統に容易に併入することができる三相電流を発電することができる。
【0067】
上述のハイブリッドエンジンも、部分負荷での効率のよさにおいて傑出している。ハイブリッドエンジンは、高い運転柔軟性が要求されるあらゆる用途で有利に利用することができる。
【0068】
起動時、共振ウエイトの運動およびそれによって発生する圧力振幅は小さい。そのため、機関は、それぞれの容積間で圧力のバランスを取る必要なしに運転を開始することができる。したがって、従来のキネマティック機関で一般的に使用される短絡弁の助けを借りる必要もなくなる。