特許第5852097号(P5852097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5852097レーザ誘起ブレークダウン分光のための認識アルゴリズムを形成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852097
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】レーザ誘起ブレークダウン分光のための認識アルゴリズムを形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/63 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
   G01N21/63 Z
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-503756(P2013-503756)
(86)(22)【出願日】2011年3月15日
(65)【公表番号】特表2013-524237(P2013-524237A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011028453
(87)【国際公開番号】WO2011126681
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2013年8月2日
(31)【優先権主張番号】61/320,992
(32)【優先日】2010年4月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/981,626
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512258953
【氏名又は名称】アプライド・リサーチ・アソシエイツ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100153028
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 忠
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ムルタリ,ロザリー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】クレマース,デヴィッド・エイ
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−249624(JP,A)
【文献】 特表2006−528782(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/025216(WO,A1)
【文献】 特表2012−501181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/74
G01J 3/00− 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ誘起ブレークダウン分光のための認識アルゴリズムを形成するための方法であって、
物質に対応する複数のスペクトルデータ集合から最も数学的に異なるスペクトルデータ集合を決定するステップであって、前記最も数学的に異なるスペクトルデータ集合は、第1の気化物質からの放射光を示す第1のスペクトルを含む、ステップと、
前記複数のスペクトルデータ集合をモデル構築データ集合と性能評価データ集合に分離するステップであって、前記モデル構築データ集合と前記性能評価データ集合は、前記第1のスペクトルを含む、ステップと、
前記モデル構築データ集合のうちの1つであって、前記決定された最も数学的に異なるスペクトルデータ集合に対応する第1のモデル構築データ集合前記第1のスペクトルを識別する第1の識別モデルにプロセッサを用いて自動的に変換するステップと、
前記モデル構築データ集合から前記第1のモデル構築データ集合を除去して構築データ集合の部分集合を生成するステップと、
前記複数のスペクトルデータ集合から次に最も数学的に異なるスペクトルデータ集合を決定するステップであって、前記次に最も数学的に異なるスペクトルデータ集合は、第2の気化物質からの放射光を示す第2のスペクトルを含む、ステップと、
前記構築データ集合の部分集合を前記第2のスペクトルを識別する第2の識別モデルに変換するステップであって、前記構築データ集合の部分集合は、前記決定された次に最も数学的に異なるスペクトルデータ集合に対応する第2のモデル構築データ集合である、ステップと、
前記第1の識別モデルと前記第2の識別モデルを結合してレーザ誘起ブレークダウン分光のための前記認識アルゴリズムを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
レーザ誘起ブレークダウン分光装置により前記スペクトルデータ集合を収集するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スペクトルデータ集合から異常なデータを除去するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モデル構築データ集合のそれぞれを規格化するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
一組の識別モデルを作成するステップを更に含み、前記一組の識別モデルは、数学的に異なる程度が最大のデータ集合を生じさせるものから数学的に異なる程度が最小のデータ集合を生じさせるものへ並んだ順序で用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
識別能力に従って前記第1の識別モデルと前記第2の識別モデルを配列するステップを更に含み、前記第1の識別モデルと前記第2の識別モデルは、最高識別能力から最低識別能力へ配列され、前記認識アルゴリズムは、前記第1の識別モデルと前記第2の識別モデルを順序どおりに呼び出す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記モデル構築データ集合と前記性能評価データ集合は、それぞれ実質的に均衡のとれた強度の測定値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記モデル構築データ集合と前記性能評価データ集合は、それぞれ同程度の最大強度の測定値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記モデル構築データ集合は、前記スペクトルデータ集合のうちの最も高い強度測定値を含み、前記性能評価データ集合は、前記スペクトルデータ集合のうちの最も低い強度測定値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記認識アルゴリズムを用いて前記性能評価データ集合を分析することによって選別パラメータを構築するステップであって、前記選別パラメータは統計値である、ステップと、
前記選別パラメータに従って前記認識アルゴリズムを修正するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の識別モデルは、主成分分析、部分最小二乗分析、多重回帰分析、又はニューラルネットワーク分析を使用する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
レーザ誘起ブレークダウン分光のための認識アルゴリズムを形成するための方法であって、
レーザ誘起ブレークダウン分光装置を用いて物質に対応するスペクトルデータ集合を収集するステップであって、前記スペクトルデータ集合のそれぞれは、前記物質のうちの1つからの放射光を示すスペクトルを含む、ステップと、
前記スペクトルデータ集合をモデル構築データ集合と性能評価データ集合に分離するステップと、
前記モデル構築データ集合を、前記物質のそれぞれを同定する一組の識別モデルにプロセッサを用いて自動的に変換するステップであって、前記一組の識別モデルは、数学的に異なる程度が最大のデータ集合を生じさせるものから数学的に異なる程度が最小のデータ集合を生じさせるものへ並んだ順序で用いられる、ステップと
も数学的に異なるスペクトルデータ集合を識別する1つの識別モデルを、前記モデル構築データ集合のうちの1つに基づいて生成するステップと、
レーザ誘起ブレークダウン分光のための前記認識アルゴリズムを形成するステップであって、前記認識アルゴリズムは、前記1つの識別モデルを含む、ステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記最も数学的に異なるスペクトルデータ集合を前記モデル構築データ集合から除去して構築データ集合の部分集合を生成するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)次のスペクトルデータ集合を、前記次のスペクトルデータ集合を識別する次のモデルに変換するステップと、
(b)前記次のスペクトルデータ集合を前記構築データ集合の部分集合から除去するステップと、
(c)前記構築データ集合の部分集合が前記スペクトルデータ集合のうちの2以上を含む場合に(a)と(b)を反復するステップと、
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記次のモデルを前記認識アルゴリズムに追加するステップを更に含み、前記認識アルゴリズムのモデルは、前記モデルに対応する前記スペクトルデータ集合に従って数学的に異なる程度が最大のものから最小のものへ配列され、前記認識アルゴリズムは、前記モデルを順序どおりに呼び出す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記構築データ集合の部分集合のうちの前記スペクトルデータ集合は、最高識別能力から最低識別能力へ並んだ順序で前記次のモデルに変換される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記認識アルゴリズムを用いて前記性能評価データ集合を分析することによって選別パラメータを構築するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記選別パラメータに従って前記認識アルゴリズムを修正するステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記認識アルゴリズムを前記レーザ誘起ブレークダウン分光装置に組み込むステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は、2010年4月5日に出願された「計量化学的データ分析と組み合わせたレーザ誘起ブレークダウン分光による金属、化学物質、病原体、及び爆発物等の物質の識別のためのデータ分析アルゴリズムの構築方法」と題する米国仮出願番号61/320,992の利益を主張するものである。
【0002】
本明細書は、概して、認識アルゴリズムを形成するための方法に関し、より具体的には、レーザ誘起ブレークダウン分光(laser−induced breakdown spectroscopy:LIBS)により物質を同定するための認識アルゴリズムを形成するための方法に関する。
【0003】
LIBSは、レーザパルスがナノグラムからマイクログラムの分量の物質を気化させ、その気化された物質を熱的に短寿命プラズマ(〜8000K)に励起する分光分析手法である。プラズマ中の原子、イオン、及び単分子から放射された光が、集められて分析される。LIBSは、指紋スペクトルの特徴的な成分によって、即ち、サンプルからの放射光の、個々の成分に対応する固有な放射スペクトル線の特性を観測することによって、目標物質の組成を判別する基礎的な分析のために利用されることができる。
【発明の概要】
【0004】
LIBSは、個々の成分の同定から金属、化学物質、病原体、及び爆発物等の物質の同定へと適用範囲を拡大することができる。これらの場合には、個々の基本スペクトル線とは対照的に、LIBSのスペクトルデータの形状が、物質の同定のために用いられることができる。このスペクトルデータには、通常、観測する波長領域にわたって、多数の基本放射とバックグラウンド放射とが含まれる。スペクトルデータは、LIBS測定装置から集められて、同定のためのアルゴリズムへ入力されることができる。しかしながら、そのようなアルゴリズムは、スペクトルから抽出された情報の派生データが含まれ得る比較的複雑なスペクトルデータを区別しなければならないため、構築することが困難である。
【0005】
したがって、LIBSを用いて物質を同定するための認識アルゴリズムを形成するための代替的方法に対する必要性が存在する。
【0006】
1つの実施態様において、レーザ誘起ブレークダウン分光のための認識アルゴリズムを形成するための方法は、物質に対応する複数のスペクトルデータ集合から最も数学的に異なるデータ集合を決定するステップ、前記スペクトルデータ集合をモデル構築データ集合と性能評価データ集合に分離するステップ、前記モデル構築データ集合のうちの1つを第1のスペクトルを識別する第1の識別モデルにプロセッサを用いて自動的に変換するステップ、前記モデル構築データ集合から前記第1のスペクトルを除去して構築データ集合の部分集合を生成するステップ、前記スペクトルデータ集合から次に最も数学的に異なるスペクトルデータ集合を決定するステップ、前記構築データ集合の部分集合を第2のスペクトルを識別する第2の識別モデルに変換するステップ、及び、前記第1の識別モデルと前記第2の識別モデルを結合してレーザ誘起ブレークダウン分光のための前記認識アルゴリズムを形成するステップを含むことができる。前記最も数学的に異なるデータ集合には、第1の気化物質からの放射光を示す第1のスペクトルが含まれることができる。前記モデル構築データ集合と前記性能評価データ集合には、前記第1のスペクトルが含まれることができる。前記次に最も数学的に異なるスペクトルデータ集合には、第2の気化物質からの放射光を示す第2のスペクトルが含まれることができる。
【0007】
別の実施態様において、レーザ誘起ブレークダウン分光のための認識アルゴリズムを形成するための方法は、レーザ誘起ブレークダウン分光装置を用いて物質に対応するスペクトルデータ集合を収集するステップ、前記スペクトルデータ集合をモデル構築データ集合と性能評価データ集合に分離するステップ、前記モデル構築データ集合を総合識別モデルにプロセッサを用いて自動的に変換するステップ、前記スペクトルデータ集合を前記総合識別モデルに従って数学的に異なる程度が最大のものから最小のものへ順位付けするステップ、最も数学的に異なるスペクトルデータ集合を識別する個別識別モデルを生成するステップ、及び、レーザ誘起ブレークダウン分光のための前記認識アルゴリズムを形成するステップを含むことができる。前記スペクトルデータ集合のそれぞれには、前記物質のうちの1つからの放射光を示すスペクトルが含まれることができる。前記総合識別モデルは、前記物質のそれぞれを同定することができる。前記認識アルゴリズムには、前記個別識別モデルが含まれることができる。
【0008】
更に別の実施態様において、レーザ誘起ブレークダウン分光のための認識アルゴリズムを形成するための方法は、レーザ誘起ブレークダウン分光装置を用いて物質に対応するスペクトルデータ集合を収集するステップ、前記スペクトルデータ集合を個別識別モデルにプロセッサを用いて自動的に変換するステップ、及び、レーザ誘起ブレークダウン分光のための前記認識アルゴリズムを形成するステップを含むことができる。前記スペクトルデータ集合のそれぞれには、前記物質のうちの1つからの放射光を示すスペクトルが含まれることができる。前記個別識別モデルのそれぞれは、前記スペクトルデータ集合のうちの1つを識別することができる。前記認識アルゴリズムには、最高識別能力から最低識別能力へ配列された前記個別識別モデルが含まれることができる。前記認識アルゴリズムは、前記個別識別モデルを順序どおりに呼び出すことができる。
【0009】
本明細書において説明される実施態様によって提供されるこれらの及び更なる特徴は、以下の詳細な説明を図面と共に検討することによってより完全に理解されるだろう。
【0010】
図面に示された実施態様は、本質的に説明的且つ例示的なものであり、特許請求の範囲によって定められる対象を制限することを意図されてはいない。そのような説明的な実施態様に関する以下の詳細な説明は、以下の図面と共同して解釈することによって理解されることが可能である。図面において、同様の構造は同様の符号により示されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本明細書において開示及び説明される1つ又は複数の実施態様に基づく認識アルゴリズムを形成するための方法を図式的に表す。
図2図2は、本明細書において開示及び説明される1つ又は複数の実施態様に基づくレーザ誘起ブレークダウン分光装置を図式的に表す。
図3図3は、本明細書において開示及び説明される1つ又は複数の実施態様に基づくレーザ誘起ブレークダウン分光装置によって発生したスペクトルを図式的に表す。
図4図4は、本明細書において開示及び説明される1つ又は複数の実施態様に基づくスペクトルデータ集合を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において説明される実施態様は、概して、レーザ誘起ブレークダウン分光(以下、LIBS)により物質を同定するためのアルゴリズムを形成するための方法に関する。概略的に、認識アルゴリズムは、機械読み取り可能命令を実行するプロセッサにスペクトルデータ集合を入力し、その入力を認識アルゴリズムに変換することによって形成される。認識アルゴリズムを形成するための方法の様々な実施態様が、本明細書においてより詳細に説明される。
【0013】
ここで図1を参照すると、LIBSにより物質を同定するための認識アルゴリズムを形成するための方法10の実施態様が、図式的に表されている。この方法は、機械読み取り可能命令20を実行するプロセッサ40にスペクトルデータを入力し、分析に対する結果を出力するステップ30と、その分析結果を受け取り、それを認識アルゴリズムに変換するステップ50とを含む。
【0014】
機械読み取り可能命令20を実行するプロセッサ40にスペクトルデータを入力するステップ30には、スペクトルデータを受け取るステップ又はスペクトルデータを収集するステップが含まれることができる。LIBS装置100のスペクトルデータ特性における変動を捕捉するために、(単独の形、又は1つの母材の形の)それぞれの物質に対して十分な数(例えば100)の個々のスペクトルが収集されることが可能である。収集されたスペクトルは、後述されるように、1つ又は複数の機械読み取り可能媒体、又はスペクトルデータを記憶する能力を有した他のデバイスへ(捕捉又は収集処理の間に、又はその後に)送信され、そこに記憶される。こうして、スペクトルデータは、プロセッサ40の外部にある任意のタイプのデバイス若しくは通信インターフェースからプロセッサ40へ入力されることができ、又は、スペクトルデータは、プロセッサ40によって生成、例えば測定されたパラメータから計算されることができる。本明細書において用いられるように、「プロセッサ」という用語は、集積回路、マイクロチップ、コンピュータ、又は機械読み取り可能命令20を実行する能力を有した任意の他のコンピューティングデバイスを意味する。図1には示されていないが、プロセッサ40は、電子データを記憶するための機械読み取り可能媒体に通信可能に接続されることができる。機械読み取り可能媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードドライブ、又は機械読み取り可能命令を記憶する能力を有した任意のデバイスであり得る。このように、プロセッサ40の如何なる入力又は出力も、機械読み取り可能媒体上に記憶されることができる。
【0015】
その上、「機械読み取り可能命令」、「アルゴリズム」、及び「ソフトウェア」という文言は、例えば、プロセッサによって直接実行されることができる機械語、又は、コンパイル若しくはアセンブルされ機械読み取り可能媒体上に記憶されることができるアセンブリ言語、オブジェクト指向プログラミング(object−oriented programming:OOP)、スクリプト言語、マイクロコード等のような、任意の世代(例えば、1GL、2GL、3GL、4GL、又は5GL)の任意のプログラミング言語で書かれた論理を意味するということが特筆される。これに代えて、論理は、ハードウェア記述言語(hardware description language:HDL)で書かれることができ、例えば、書き替え可能ゲートアレイ(field−programmable gate array:FPGA)構成又は特定用途向けIC(application−specific integrated circuit:ASIC)、及びそれらの均等物の何れかによって実装されることができる。
【0016】
ここで図2を参照すると、スペクトルデータはLIBS装置100を用いて収集されることができるということが特筆される。図2において、スペクトルデータを収集するためのLIBS装置100の一実施態様が図式的に表されている。LIBS装置100は、物質120を気化してプラズマ122を生成するためのレーザ102と、プラズマ122からの放射光124を電子的なデータに変換するためのセンサ110とを備えている。図示された実施態様において、レーザ102とセンサ110は、スペクトルデータの収集を統合するためのプロセッサ112に通信可能に接続される。
【0017】
例えば、スペクトルデータは、レーザ102からのレーザ光114の放射を同期させ、プラズマ122による放射光124を収集することによって収集されることができる。図2に示された実施態様において、レーザ光114は、レーザ102によって発生され、物質120上に集光してプラズマ122を発生するように、集光レンズ104を通って伝搬される。本明細書において用いられる「光」という用語は、電磁スペクトルの様々な波長、特に、例えば約200nmから約1000nmまでといったように、約100nmから約1200nmまでの波長を表すということが特筆される。
【0018】
図示された実施態様において、光124は、プラズマ122から反射光学系106を通って(光ファイバとして図2に描かれた)光ガイド108へと放射される。反射光学系106は、図2に描かれたように、2つのミラーから成ることができる。光ガイド108には、光を伝送する任意の物体、例えば、限定ではないが、光をその軸に沿って伝送する円筒形形状のガラス又はポリマー材料が含まれることができる。光124は、この光124をスペクトルデータに変換する能力を有したセンサ110へ伝送される。例えば、このセンサ110には、例えばエシェル分光計やポリクロメータ等の分光計が含まれることができる。次いで、センサ110は、上記スペクトルデータをプロセッサ112へ送信する。LIBS装置のある特定の実施態様が上述されたが、LIBS装置は、レーザ誘起されたプラズマ光を、プラズマにより発生した光のスペクトル成分を表す電子的なデータに変換する能力を有した任意のデバイスであり得るということが特筆される。
【0019】
図2及び3をまとめて参照すると、スペクトル130の具体例が、横軸上に波長(nm)をとり縦軸上に強度(カウント)をとって描かれている。スペクトル130は、物質120から発生したプラズマ122からの放射光124の特定の波長における強度の大きさを表している。スペクトル130は、基本スペクトル線132(即ち局所的な最大)とバックグラウンド放射とから成る。如何なる理論にも束縛されることを意図していないが、基本スペクトル線132は、一般に、炭素、窒素、酸素、水素等といった個々の成分からの放射に対応しており、それぞれのスペクトル130は、ある特定の物質(即ち、材料から生成されたプラズマ)を表し、またそれに対応している。それぞれのスペクトルは、LIBS装置100によって検出された個々のデータサンプル、LIBS装置100によって検出された多数のデータサンプルの蓄積、又はLIBS装置100によって検出された多数のデータサンプルの平均であり得る。例えば、1つの実施態様において、それぞれのスペクトルは、センサ110(例えば、センサの取得パラメータ:遅延1μs、ウィンドウ20μs、及び露光期間1s)によって収集された10個のデータサンプルの蓄積(例えば、和又は他の既知のデータ結合手法)を表す。
【0020】
上述されたLIBS装置100は、例えば、金属、化学物質、病原体、又は爆発物等といったような、純物質としての、又は他の物質の母材中に結合されている、関心のある物質(非限定的な例には、アルミニウム上のリン酸トリブチル、木材上のトリニトロトルエン、ブロッコリ上の大腸菌が含まれる)からのスペクトル130を収集するために利用されることができる。このように、本明細書において説明される実施態様は、サンプルの同定、エアロゾル、液体、及び固体中の微量成分検出、爆発物検出、岩石及び土壌の成分分析、並びに金属の選別の何れのためにも、利用されることができる。
【0021】
図1及び4をまとめて参照すると、機械読み取り可能命令20には、プロセッサ40に入力されたスペクトルデータを処理するための論理が含まれることができる。1つの実施態様において、スペクトルデータ集合150に含まれるスペクトル130は、モデル構築のためのモデル構築データ集合152と、モデル性能検証のための性能評価データ集合154に分離される。スペクトルデータ集合150のそれぞれは、単一の物質又は物質タイプから収集されたスペクトル130から成る。例えば、もし認識アルゴリズムが2つの物質を同定するように構築されるとしたら、スペクトルデータ集合150のうちの1つは、第1の物質から収集されたスペクトル130から成り、スペクトルデータ集合150のうちの別の1つは、第2の物質から収集されたスペクトル130から成るであろう。スペクトルは、物質の単一サンプル(例えば、金属の一小片)又は1種類の物質の多数のサンプル(例えば、1種類の金属の多数の小片)から収集されることができる。
【0022】
スペクトルデータ集合150は、数多くの方法を用いて分離されることができ、対応するスペクトル測定結果が、2つのデータ集合に分離されるということが特筆される。そうしたデータ集合のうちの1つは、モデル構築のために用いられることができ、また、データ集合のうちの1つは、モデル性能評価のために用いられることができる。具体的には、スペクトルデータ集合150は、モデル構築データ集合152と性能評価データ集合154がそれぞれ、実質的に均衡のとれた強度の測定値(例えば、対応する強度測定値)を含むように、スペクトル130の強度の最大値、又はスペクトル130の強度曲線より下の面積に従って、分離されることができる。例えば、スペクトル130は、モデル構築データ集合152に含まれるスペクトルの強度測定値の和が、対応する(即ち同一の物質を表す)性能評価データ集合154の強度測定値の和に実質的に等しくなるように、分離されることができる。別の実施態様において、スペクトルデータ集合150は、モデル構築データ集合152と性能評価データ集合154の両方が、同程度に分配された最大強度を有するスペクトル130から成るように、分離されることができる。更なる実施態様において、スペクトルデータ集合150は、モデル構築データ集合152が最も高い強度測定値を有するスペクトル130から成り、性能評価データ集合154が最も低い強度測定値を有する対応するスペクトル130から成るように、分離されることができる。全体の強度は、スペクトル130のそれぞれに関する強度曲線より下の面積に基づいて、又は、強度曲線の相対的な大きさを定量化する任意の他の方法に基づいて、決定されることができる。例えば、100個のスペクトル130を含むスペクトルデータ集合150は、最も高い最大強度を有する50個のスペクトル130を含むモデル構築データ集合152と、最も低い最大強度を有する50個のスペクトルを含む性能評価データ集合154とに、分離されることが可能であり、逆も同じである。
【0023】
スペクトルデータ集合150、モデル構築データ集合152、及び性能評価データ集合154は、偶数個のスペクトル130を含むように図4に描かれているが、偶数個又は奇数個のスペクトル130を含むことができるということが特筆される。更にまた、スペクトルデータ集合150内のスペクトル130の全てが、モデル構築データ集合152と性能評価データ集合154に含まれてもよいし、含まれなくてもよい。このように、モデル構築データ集合152と性能評価データ集合154は、等しい数又は等しくない数のスペクトル130を含むことができる。例えば、100個のスペクトル130を含むスペクトルデータ集合150は、50個のスペクトル130を含むモデル構築データ集合152と50個のスペクトルを含む性能評価データ集合154、70個のスペクトル130を含むモデル構築データ集合152と30個のスペクトル130を含む性能評価データ集合154、又は、59個のスペクトル130を含むモデル構築データ集合152と23個のスペクトル130を含む性能評価データ集合154(即ち、18個のスペクトルが除かれている)に、分離されることが可能である。
【0024】
強度の均衡をとるため、又は望ましくないデータを除外するために、モデル構築データ集合152と性能評価データ集合154に包含されるものから、スペクトル130が除かれることができる。1つの実施態様において、スペクトルデータ集合150、モデル構築データ集合152、及び性能評価データ集合154に含まれるスペクトル130は、異常な又は特徴のないスペクトルに関して選別される。当該異常な又は特徴のないスペクトルは、スペクトルデータ集合150、モデル構築データ集合152、及び性能評価データ集合154から取り除かれることが可能である。上記の選別は、発見的方法、例えば標準偏差や分散分析等といった統計論を用いた既知のエラー又は評価に基づいて、行われることができる。
【0025】
本明細書において説明される実施態様において、スペクトルの規格化がスペクトル130に適用されることができる。このような規格化の非限定的な例には、スペクトル130に対して、当該スペクトル130より下にある面積が1に等しくなるような数値、又は当該スペクトル130の最大強度が1に等しくなるような数値を乗じることが含まれる。
【0026】
1つの実施態様において、計量化学的分析、又は(ニューラルネットワーク分析等の)他の数学的に基づいた識別分析が、適用された分析方法に関してスペクトルデータ集合150から最も異なるデータ集合を決定するために、実行される。この識別分析は、選択された分析方法に関して他のスペクトルデータ集合150から識別するのが最も容易なスペクトルデータ集合を決定するために、発見的方法により、又はモデルを用いて(例えば、計量化学的分析ソフトウェアを利用して)実行されることができる。例えば、スペクトル130の全てを同時に分析するための総合識別モデルが作成されることができる。総合識別モデルを作成した後に、その総合識別モデルの結果を用いて性能評価データ集合154が評価されて、識別分析に従ってスペクトルデータ集合が順位付けされることができる。この総合識別モデルにより決定される最も離れたスペクトルデータ集合は、最も分析的に異なるスペクトルデータ集合である。このように、スペクトルデータ集合150は、総合識別モデルの結果に従って、最も識別が容易なものから最も識別が困難なものへ順位付けされることができる。これに代えて、スペクトルデータ集合150は、発見的方法により順位付けされることもできる。
【0027】
本明細書において用いられる「識別モデル」という文言は、物質によって生成された入力スペクトルを識別又は同定するように実行される能力を有する、機械読み取り可能命令を意味するということが特筆される。この識別モデルは、判別関数分析、線形相関且つ部分最小二乗回帰による判別分析、多重線形回帰、ニューラルネットワーク分析、主成分分析、正準相関、冗長性分析、多重回帰分析、多変量分散分析、及び、多変量回帰を併用した単変量又は多変量主成分分析、のうちの少なくとも1つから成ることができる。本明細書において説明される実施態様において、識別モデルは、プロセッサにより実行されたソフトウェア(例えば、米国ニュージャージー州ウッドブリッジのカモソフトウェア社(Camo Software Inc.)によるUnscrambler、米国マサチューセッツ州ネイティックのマスワークス社(Mathworks)によるMatlab、及び選択された判別分析の能力を有した任意の他のソフトウェア)によって生成されることができる。更にまた、識別モデルは、特定の物質(例えば、銅)、物質の種類(例えば、金属)、又は発見的に分類された物質(銅と、銅のスペクトルと類似の特性を共有するスペクトルを持つ物質)をそれらのスペクトルに従って認識するように構築されることができるということが特筆される。このように、観測されたスペクトルに基づいて単一の物質又は多数の物質を識別するように、任意の個別的な識別モデルが構築されることができる。
【0028】
図1及び4をまとめて参照すると、方法10は、入力を認識アルゴリズムに変換するステップ50を含む。スペクトルデータ集合150が用いられて、結合された場合にLIBSスペクトル130に従ってサンプルを同定する能力を有する、個別識別モデルが生成される。例えば、第1のモデル構築データ集合から、第1の識別モデルが作成されることができる。次いで、この第1の識別モデルの性能が、当該第1のモデル構築データ集合に対応する(即ち、同一のスペクトルデータ集合から分離された、つまり同一の物質に対応する)第1の性能評価データ集合を用いて評価されることができる。この第1の識別モデルに関して十分な識別性能が達成されると、モデル構築データ集合から当該第1のモデル構築データ集合が除去されて、構築データ集合の部分集合が生成される。もしこの構築データ集合の部分集合に十分なモデル構築データ集合が残っていれば、第2のモデル構築データ集合から第2の識別モデルが作成されることができる。次いで、この第2の識別モデルの性能が、当該第2のモデル構築データ集合に対応する(即ち、同一のスペクトルデータ集合から分離された、つまり同一の物質に対応する)第2の性能評価データ集合を用いて評価されることができる。この第2の識別モデルに関して十分な識別性能が達成されると、上記構築データ集合の部分集合から、当該第2のモデル構築データ集合が除去されることができる。この構築データ集合の部分集合に十分なスペクトルが残っていると仮定すると、本明細書において説明されるように、第3のモデル構築データ集合から第3の識別モデルが作成されることができる。
【0029】
本明細書において説明される実施態様において、個別識別モデルは、上述されたモデル作成、識別、及び除去の処理に従って作成されることが可能である。この処理が反復されるにつれて、次のスペクトルデータ集合が、当該次のスペクトルデータ集合を構築データ集合の部分集合に含まれるスペクトルから識別する次のモデルに変換されることができる。次いで、当該次のスペクトルデータ集合が、上記構築データ集合の部分集合から除去されることができる。この処理は、当該構築データ集合の部分集合がスペクトルデータ集合のうちの1つのみから成るようになるまで、反復されることができる。概略的には、この処理は、関心のある全てのモデル構築データ集合152が個々のモデル構築データ集合152(即ち、一群のスペクトル130及び/又は個々のスペクトル130)へと識別されるまで、反復される。次いで、個別識別モデルは、性能評価データ集合154によってテストされ、個別識別モデルのそれぞれに関して十分な同定性能が達成される(即ち、当該個別識別モデルが十分な精度で所望の物質を同定する)まで、必要なだけ改良される。
【0030】
1つの実施態様において、個別識別モデルは、数学的に異なる程度が最大のものから最小のものへ並んだ順序で作成される。例えば、スペクトルデータ集合を数学的に異なる程度が最大のものから最小のものへ順位付けするために、総合識別モデルが利用されることが可能である。次いで、スペクトルデータ集合の順位付けに従って、モデル作成、識別、及び除去の処理が作動することができる。即ち、最も数学的に異なるスペクトルデータ集合に対応する個別識別モデルが最初に作成されることができ、当該最も数学的に異なるスペクトルデータ集合が最初に除去されることができる。数学的に次に最も異なるスペクトルデータ集合に対応する個別識別モデルが2番目に作成されることができ、当該数学的に次に最も異なるスペクトルデータ集合が2番目に除去されることができ、以下同様である。
【0031】
本明細書において説明される実施態様において、個別識別モデルが直列的に及び/又は互いに並列的に呼び出されるように個別識別モデルを結合することによって、認識アルゴリズムが生成される。個別識別モデルが直列的に呼び出される実施態様において、テストスペクトルが認識アルゴリズムに入力され、個別モデルのそれぞれが連続的に呼び出される。例えば、前述したことを限定することなく、第1の個別識別モデルが、テストスペクトルをある可能な物質の選択の中から識別するために呼び出されることができ、第2の個別識別モデルが、当該テストスペクトルを他の可能な物質の選択の中から更に識別することができる。個別識別モデルが並列的に呼び出される実施態様において、テストスペクトルが認識アルゴリズムに入力され、多数の個別識別モデルが同時に呼び出されることができる。
【0032】
このように、認識アルゴリズムは、モデルテストフローに従って配列された個別識別モデルを含む。このモデルテストフローは、個別識別モデルの呼び出しを指定するものであり、個別識別モデルの生成に引き続いて定義されることができる。1つの実施態様において、個別識別モデルは、性能評価データ集合154(図4)を用いて評価される。例えば、それぞれの個別識別モデルの識別能力は、正確性に従って、即ち、個別識別モデルのそれぞれが、性能評価データ集合154に含まれるスペクトルに関係付いている物質を正しく同定する可能性に従って、評価及び順位付けされることができる。次いで、この順位付けは、モデルテストフローを定義するために利用されることができる。具体的には、アルゴリズムの構築において、含まれる全ての物質を識別するのに必要なだけ、個別識別モデルが連続的に適用されることができる。これに代えて、同様に順位付けされた識別モデルが並列的に適用されることができ、又は、個別識別モデルが代替のモデルテストフローによって正しい順序に配列されることができる。更にまた、この識別能力は、実際の使用状況下におけるテスト又は使用を通じて評価される(即ち、正確性及び頑強性が観測され得る)こともできるということが予期される。したがって、個別識別モデルは、最高識別能力から最低識別能力までにわたって適用されることができる。
【0033】
別の実施態様において、モデルテストフローは、認識アルゴリズムの個別識別モデルが、上述されたとおり総合識別モデルにより定められる如く、数学的に異なる程度が最大のものから最小のものへ配列されるように、定義されることができる。このように、モデルテストフローは、個別識別モデルに対応するスペクトルデータ集合に基づくことができる。
【0034】
本明細書において説明される実施態様によれば、モデルテストフローは、認識アルゴリズムが定義された後に、更に改良されることができる。認識アルゴリズムの性能を分析するために、性能評価データ集合154のような既知のスペクトルが利用されることができる。1つの実施態様において、性能評価データ集合154は、規格化されて認識アルゴリズムによって分析される。次いで、スペクトルをそれに関係付いた物質と正しく照合することに基づいて、認識アルゴリズムの正確性が評価されることができる。次いで、認識アルゴリズム全体としての性能、又はその構成要素である個別識別アルゴリズムの性能が、選別パラメータを構築するために利用されることができる。例えば、この選別パラメータは、モデルテストフローに取り込まれて認識アルゴリズムの正確性を改善する統計値(例えば、平均値や標準偏差等)であり得る(即ち、識別モデルの予測結果に関連する標準偏差を用いた公式が生成されることができ、その公式の結果に基づいて、入力スペクトルを識別モデルの結果によって示されるものであるとして同定すべきか否かについての決定がなされることができる)。選別パラメータを取り込むことによって認識アルゴリズムが修正された後に、識別性能を再評価するために、上記の既知のスペクトルが認識アルゴリズムによって再度、評価されることができる。実際の場面における認識アルゴリズムを用いた未知のスペクトルのテストにおいて、選別パラメータが予測結果と組み合わせて用いられて、サンプルのスペクトルデータが当該認識アルゴリズムを用いた認識に対して有効であるかどうかを判定することができる。
【0035】
認識アルゴリズムが構成されると、その認識アルゴリズムは、例えばスペクトルデータ集合150を収集したLIBS装置等の、LIBS装置に組み込まれることができる。具体的には、図2を参照すると、認識アルゴリズムは、LIBS装置100の制御システム(例えば、米国テキサス州オースティンのナショナルインストゥルメンツ社(National Instruments)によるLabVIEW 8.6)と協力することができる。このようにして、認識アルゴリズムは、センサ110の出力から直接的に入力されたLIBSスペクトルの自動化されたリアルタイム分析のために、プロセッサ112によって実行されることができる。ユーザによる操作の側面から見ると、LIBS装置100は、レーザ102を発光させるコマンドの送信、プラズマ122から放射されたスペクトルの収集、認識アルゴリズムへのスペクトルの入力、及び同定結果の報告のために、単一のボタンが「クリック」されるように構成されることができる。
【0036】
本明細書において説明されるレーザ誘起ブレークダウン分光により物質を特定するための認識アルゴリズムを形成するための方法の実施態様は、自動化された迅速な物質のその場分析のための認識アルゴリズムを構築するために、利用されることができるということが、ここに至って理解されるべきである。このように、認識アルゴリズムは、LIBSの詳しい専門的知識を持たない人による使用のために、携帯型LIBS装置と統合されることができる。例えば、携帯型LIBS装置は、空港において、例えば、密輸品、危険な化学物質や爆発物といったような物質について、手荷物を検査するのに利用されることができる。
【0037】
本明細書において説明される実施態様がより容易に理解されることができるように、以下の例への言及がなされる。この例は、本開示の実施態様の実例を挙げることを意図しており、本開示の範囲を限定するものではない。
【0038】
<例>
LIBS装置を用いて、13個の異なる病原体種及び変種からスペクトルデータが取得された。血液寒天培地プレートの表面における病原性微生物の塗抹標本を識別するために、本明細書において説明された実施態様に従って構築された計量化学的モデリングに基づく認識アルゴリズムが、LIBS装置の制御システムと共に利用され展開された。認識アルゴリズムは、5つのありふれた病原性微生物(アシネトバクター・バウマンニ、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、及び黄色ブドウ球菌)と、完全なグラム陽性生物である枯草菌を同定した。加えて、8つの特徴のはっきりした臨床実験的な黄色ブドウ球菌の変種が特定された。
【0039】
LIBS分析の準備のために、細菌種又は変種は、新鮮なルリア培地(Luria broth agar:LBA)プレート上に画線され、一晩培養(37℃、18時間)された。LBAプレート上の単一のコロニーが、5%(体積比)のウシ血液寒天培地(bovine blood agar:BA)プレート上に画線され、一晩培養された。翌朝、LIBSデータ収集のためのより広い表面積の細菌性物質を作るために、BAプレート上のコロニーが、エタノール燃焼されたグラスホッケースティックを用いて血液寒天培地プレートの表面全体の上に塗り広げられた。
【0040】
次いで、(例えば図2に示されたような)LIBS装置を用いて血液寒天培地プレートからLIBSスペクトルが収集された。具体的には、プラズマ光が軸外放物面ミラーと光ファイバを用いて収集され、次いでデュアルチャネル分光計(Avantes社、AvaSpec-ULS2048-2-USB2)へ導かれた。血液寒天培地の表面の病原体に目標を定めるためにレーザビームの前でサンプルが手動でいろいろな方向に動かされたため、レンズとサンプル間の距離は測定の間変化したということは留意されるべきである。放物面ミラーに開けられたホールにより、レーザパルスの光路と収集される光は、視差を持たず共線となるようにされた。記録されたそれぞれのスペクトルは、10個のスペクトルの蓄積を示した。総計1300個の個別のスペクトル(各サンプルに対し100個のスペクトル)が収集された。
【0041】
LIBSスペクトルデータの計量化学的モデリングに基づく認識アルゴリズムが用いられて、種及び変種を識別することに成功した。当該アルゴリズムが展開されたLIBS分析制御システムの性能は、新たなサンプルが検査済みの13個の異なる種及び変種のうちの1つと一致するかどうかを判定するのに、2分間のサンプリング及び分析で十分であるということを示した。
【0042】
「実質的に」及び「約」という用語は、如何なる量的な比較、数値、測定、又は他の表現からも生じ得る本来的な不確かさの程度を表現するために、本明細書において使用されることができるということが特筆される。これらの用語はまた、問題となっている対象の基本的な役割に変化をもたらさずに、量的な表現が言及された記述と異なり得る程度を表現するために、本明細書において使用される。
【0043】
特定の実施態様が本明細書において例示及び説明されてきたが、特許請求の範囲に記載された対象の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な他の変更及び修正がなされることができるということが理解されるべきである。その上、特許請求の範囲に記載された対象の様々な側面が本明細書において説明されてきたが、そうした側面は、組み合わされて利用される必要はない。したがって、添付された特許請求の範囲は、全てのそのような変更及び修正を包含し、それらは特許請求の範囲に記載された対象の範囲内のものであるということが意図される。
図1
図2
図3
図4