(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
付着工程の前に、プローブ(3)の終端部(4)へのサンプル(11)の全て又は一部の付着工程中において、サンプル(11)の周囲に氷の層(13)を形成するために、サンプリングされる生物学的物質(7)のサンプル(11)を溶液(12)で覆う、請求項1又は2に記載のサンプリング方法。
質量分析計等の測定装置を使用して分析することを目的に、溶液(12)が、水、生理食塩水、バッファー、液体培養培地又は生物学的物質(7)のサンプル(11)をイオン化するために一般的に使用されるマトリックスを含む群から選ばれる、請求項2又は3に記載のサンプリング方法。
溶液(12)でプローブ(3)の終端部(4)又はサンプリングされる生物学的物質(7)のサンプル(11)を湿らせる工程が、氷の被覆層(13)を形成するために少なくとも2回、連続的に繰り返される、請求項2から4の何れか一項に記載のサンプリング方法。
分離工程が、急速冷凍された終端部(4)に付着された生物学的物質(7)のサンプル(11)を容器(9)又は分析用プレート(14)と接触させることなく実施される、請求項10に記載のサンプリング方法。
終端部(4)に付着された生物学的物質(7)のサンプル(11)の全て又は一部から終端部(4)を分離させる工程が、終端部(4)に機械的衝撃を加えることにより実施される、請求項10に記載のサンプリング方法。
急速凍結された終端部(4)に付着された生物学的物質(7)のサンプル(11)の全て又は一部から終端部(4)を分離させる工程が、加熱手段(10)により、又は周囲空気で実施される、請求項11に記載のサンプリング方法。
分離工程が、生物学的物質(7)のサンプル(11)を容器(9)又は分析用プレート(14)と逐次接触させることにより達成され、これにより、氷の表層(13)が溶解し、生物学的物質(7)が沈着される、請求項10に記載のサンプリング方法。
生物学的物質(7)のサンプル(11)の全て又は一部が、終端部(4)に付着した、生物学的物質(7)の同じサンプル(11)の一部の、いくつかの明確な沈着が達成されるように、分析用プレート(14)に分配される、請求項14に記載のサンプリング方法。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上述の不具合の全て又はいくつかを改善することを目的とする。
このために、本発明の目的は、終端部を備えたプローブを使用し、未精製で、濃縮され、又は培養培地、おそらくは寒天との接触を通して培養された生物学的物質のサンプルの全て又は一部をサンプリングする方法であって、プローブの終端部を冷却し、生物学的物質のサンプルへの終端部の接触を通して、又は生物学的物質のサンプルに終端部により作用する圧力を適用することにより、サンプリングされる生物学的物質のサンプルの全て又は一部を付着させ、生物学的物質のサンプルをその支持体、例えば培養培地から分離させるように、生物学的物質のサンプルの全て又は一部をサンプリングする工程を含む方法にある。
【0008】
この方法により、形態及びコンシステンシーにかかわらず、インビトロで培養される生物学的物質の任意のタイプのサンプルをサンプリングすることが可能になる。さらに、このサンプリング方法を用いると、サンプルと接触するその端部を各使用の後に滅菌することができ、又はサンプルと決して直接接触しないため、プローブが汚染するおそれがない。
【0009】
さらに、このサンプリング方法を用いると、使い捨ての終端部を使用する必要がなくなり、使用コストを低減させ、速い使用サイクルを可能にする(装置の生産性を良好にする)。
【0010】
一実施手段では、プローブは、冷却されるための手段を含む低温プローブである。
【0011】
サンプリング方法の一実施形態によれば、付着工程の前に、終端部に氷層を形成するために、蒸留水等の溶液でプローブの終端部を湿らせる工程が実施される。
【0012】
この構成により、サンプルをサンプリングするため付着させることが可能となる消耗品を即時に作製することが可能となる。さらに、このサンプリング方法の実施により、サンプルは、プローブの終端部と直接接触することは決してない。
【0013】
該方法の一実施形態によれば、付着工程の前に、プローブの終端部へ上記サンプルの全て又は一部を付着させる工程中、サンプルの周囲に氷層を形成させるために、サンプリングされる生物学的物質のサンプルを溶液で覆う。
【0014】
該方法の一実施形態によれば、質量分析計等の測定装置を使用して分析する観点で、溶液は、水、生理食塩水、バッファー、液体培養培地又は生物学的物質のサンプルをイオン化するために一般的に使用されるマトリックスを含む群から選ばれる。例えば、バッファーはカーボネートバッファー(10〜100mmol/L、理想的には25mmol/L)でありうる。
【0015】
この構成により、サンプルの質量分析計による分析方法を一工程だけ低減することができ、マトリックスは、サンプリング中の付着工程のためとその質量分析計での分析の観点でのサンプル調製工程のために使用されるという二重の機能を有している。
【0016】
あるいは、溶液は、微生物の培養培地でありうる。
【0017】
サンプリング方法の一実施形態によれば、プローブの終端部又はサンプリングされる生物学的物質のサンプルを溶液で湿らせる工程は、鍾乳石のような氷の表面被覆層を形成するために、少なくとも2回、連続的に繰り返される。
【0018】
この構成により、このようにしてつくられる鍾乳石の付着表面を拡大させ、よって、より大きなサンプルをサンプリングすることが可能になる。
【0019】
サンプリング方法の一実施形態によれば、終端部は取外し可能である。
【0020】
この構成により、終端部の有用な付着面積をかなり増加させることが可能である。
【0021】
サンプリング方法の一実施形態によれば、終端部は強磁性を有する。
【0022】
サンプリング方法の一実施形態によれば、生物学的物質のサンプルの全て又は一部をサンプリングする工程は、例えば電磁石を用いて、強磁性終端部に隣接して磁場を印加し、終端部を誘引し、よってそれを回収することからなる。
【0023】
この構成により、サンプリングされたサンプルを汚染させる危険がなく、サンプリングを自動化することが可能となる。
【0024】
本発明の他の目的は、プローブの急速冷凍された終端部に付着した生物学的物質のサンプルの全て又は一部を容器中に又は分析用プレート上に沈着させる方法にあり、該沈着方法は、プローブの終端部を上記終端部に付着した生物学的物質のサンプルの全て又は一部から分離する工程を含む。
【0025】
この構成により、サンプルの全て又は一部を用いることが可能になる。
【0026】
沈着方法の一実施形態によれば、分離工程は、急速冷凍された終端部に付着した生物学的物質のサンプルを容器又は分析用プレートと接触させることなく、実施される。
【0027】
この場合、終端部を該終端部に付着した生物学的物質のサンプルの全て又は一部から分離させる工程は、終端部に機械的衝撃を加えることにより実施される。
【0028】
この構成により、凍結状態のサンプリングされたサンプルの全てを、直ぐに収集することが可能になる。
【0029】
沈着方法の一実施形態によれば、急速凍結された終端部に付着した生物学的物質のサンプルの全て又は一部から終端部を分離させる工程は、加熱手段により、又は周囲空気で実施される。
【0030】
この構成により、液体状態でサンプルを収集することが可能になり、数種の異なった支持体上にサンプルのいくつかの部分を分配することが可能になる。
【0031】
沈着方法の一実施形態によれば、分離工程は、容器又は分析用プレートとの生物学的物質のサンプルの逐次的接触により達成され、この接触は、氷の表層の溶解と生物学的物質の沈着をもたらす。
【0032】
この構成により、沈着されるサンプルの量及び沈着支持体の選択のコントロールが可能になり、表層の溶解により、生物学的物質の分配及び沈着された層の深さの双方において、均質な沈着を得ることが可能になる。
【0033】
沈着方法の一実施形態によれば、生物学的物質のサンプルの全て又は一部が、生物学的物質の同じサンプルの一部のいくつかの区別される沈着をつくるように分析用プレート上に分配され、これが終端部に付着される。
【0034】
この構成により、同じサンプルからの沈着物についていくつかの測定をなすことが可能になり、これらの付着物の各々は均質であり、ある種の測定スペクトル、特に質量分析測定の品質を改善することが可能になり、ここで、沈着物における均質性の度合いが低いと、多くのノイズを含むシグナルを持つ強くないピークを含むスペクトルが生じる。
【0035】
沈着方法の一実施形態によれば、沈着は、容器又は分析用プレートと、終端部が付着した生物学的物質のサンプルの全て又は一部との、例えば線状での連続的接触を通してなされる。
【0036】
この構成により、沈着支持体に対する生物学的物質の濃度勾配を達成し、例えば質量分析測定に対して、最も良好な結果を得ることを可能にする勾配区間での測定に焦点を当てることが可能になる。
【0037】
本発明の他の目的は、未精製で、濃縮され、又は培養培地との接触を通して培養され、容器又は分析用プレートに沈着されることが意図された、生物学的物質のサンプルの全て又は一部をサンプリングし沈着させるための装置であって、終端部を備えたプローブ、終端部を急速冷凍することを意図した冷却手段、駆動手段であって、終端部に付着させるためにサンプルに含まれる水分の全て又は一部が凍結するようにプローブからサンプルに圧力をかけ、サンプルの全て又は一部を、培養培地等のその支持体から分離させ、サンプルの全て又は一部を容器又は分析用プレートにもたらすことを意図した駆動手段を有することを特徴とする装置である。
【0038】
この構成により、最小量の時間で数回のサンプリング及び沈着を実施することを可能にする自動化され、再利用可能な装置が提供される。
【0039】
一実施態様によれば、装置は、終端部からサンプルを取り外すことを意図した加熱手段を含む。
【0040】
特定の実施態様では、加熱手段は終端部を滅菌することを意図している。このような滅菌は、任意のサンプリングの前に実施される。
【0041】
有利には、冷却手段及び加熱手段は、少なくとも一つのペルチェ素子からなる。有利には、いくつかのオーバーレイペルチェ素子が使用される。
【0042】
この構成により、サンプルが液体状態までより素早く通過することを可能にし、その再懸濁及びホモジナイズを容易にする。
【0043】
一実施態様では、終端部は金属製又は鉱物である。
【0044】
この構成により、サンプルの水に含まれる熱をさらに素早く吸収し、よってより素早く凍結させることが可能になる。
【0045】
有利には、終端部は疎水性コーティング又は処理により、少なくとも部分的に被覆されている。このようなコーティングにより、未凍結の際に終端部に存在するサンプル及び/又は液体を、より早く最適に排水することができる。
【0046】
一実施態様では、終端部は取外し可能である。
【0047】
この構成により、サンプリングされる生物学的物質のサンプルに直接付着させるために、急速凍結された終端部を分離させることが可能になる。
【0048】
さらに、冷蔵環境に終端部を保管することが可能になり、これは即時分析を実施することが所望される場合は特に有利な場合がある。
【0049】
一実施態様によれば、終端部はサンプリングされる生物学的物質のサンプル又は溶液の全て又は一部の付着を最適にする形状を有する。特定の実施態様によれば、終端部は尖端部を有する。有利には、終端部の形状はテーパー状でありうる。このような形状により、湿らせている間のサンプル又は溶液の付着が非常に容易になる。
【0050】
この構成により、サンプルを正確にサンプリングすることが可能になり、非常に小さなサンプル、例えば細菌の微小コロニーをサンプリングすることも可能になる。
【0051】
一実施態様によれば、装置は、培養培地で培養されたサンプリングされる生物学的物質のサンプルと接触するプローブを介して駆動手段により加えられる圧力を制御し、該圧力を停止させるためにこれを実施する少なくとも一つのセンサを有する。
【0052】
この構成により、サンプル支持体、例えば寒天培養培地の如何なる付着も防止することが可能になる。
【0053】
一実施態様によれば、センサは、例えばペトリ皿支持体下に配することができる、圧力又は力センサである。
【0054】
この構成により、電子スケールの方式で、生物学的物質の量を制御することが可能になる。
【0055】
一実施態様によれば、装置は、あらゆる圧力を回避するために、終端部と生物学的物質との接触を検出するセンサを有する。
【0056】
一実施態様によれば、センサは電気バイナリセンサである。
【0057】
この構成により、低コストで、サンプル支持体、例えば寒天培養培地へのあらゆる付着を防止することが可能になる。
【0058】
本発明の他の目的は、複数の交換可能な終端部を有する、先に記載の装置を含むキットである。
【0059】
これらの終端部は使い捨てであってもなくてもよい。それらは、尖突状、ループ状、又は円筒状で、様々なサイズでありうる。この構成により、サンプリングされるサンプルのサイズに適合するように、同装置に対して、種々の形状及びサイズの終端部を有するようにすることができる。
【0060】
本発明の他の目的は、先に記載したような装置又はキットを含む生物学的分析装置にある。
【0061】
とにかく、本発明は、非限定的な形で、本発明に係る方法の工程を実施する装置を示す添付図面を参照して、次の説明によれば、さらに良好に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1に示すように、本発明に係るサンプリング・沈着装置(apparatus)1は、サンプリング・沈着装置(device)2を含む。
【0064】
このサンプリング・沈着装置2は、プローブ3と、プローブ3の空間的移動を意図した駆動手段5を含む。
【0065】
この駆動手段5は、自動化された多関節アーム、又は当業者に知られている任意の他の均等な手段により構成することができる。
【0066】
プローブ3は、金属製の取外し可能な尖突状の終端部を有し、これは、生物学的物質7における正確なサンプリングの実施を可能にする様々なサイズの尖突部を有する終端部4に置き換えることができる。
【0067】
駆動手段5の作用により、プローブ3は、ペトリ皿6中の寒天培養培地8で培養された細菌コロニーにより構成される生物学的物質7の培養物の上を移動する。
【0068】
生物学的物質7の組成物は、本質的に液体水を含有する。
【0069】
また、プローブ3は、その終端部4を急速凍結するための冷却手段(図示せず)も含む。この手段は、例えば、プローブ3中に位置する導管により終端部4に送られる液体窒素により、又は終端部4に接触する容積中の冷媒ガスを圧抜きすることにより、構成されうる。
【0070】
また、終端部4と接触する一又は複数のペルチェ素子により構成することもできる。特に、
図5には、冷却手段が、終端部4が取り付けられているペルチェ素子の2つのステージ17a及び17bを含む実施態様が示されている。
【0071】
これらの素子は、それらの電力供給電圧を逆にすることにより、終端部4の冷却と加熱の双方に使用される利点を有している。
【0072】
周囲空気との熱交換を防止するために、サンプルと接触しない、終端部4の上方部分を断熱することが有利である。この断熱により、終端部4の熱的作用を最適化することが可能になる。
【0073】
実際には、2を越えるオーバーレイペルチェ素子を考えることが可能である。素子の数が多くなればなる程、得られる極端な温度が大きくなる。
【0074】
よって、終端部4の冷却及び加熱はより素早くなるであろう。高温に加熱することにより、終端部を滅菌するためにこの構造を使用することを考えることができる。これは、逐次的にサンプリングされる生物学的物質の種々のサンプル間での汚染を防止するのに特に有利である。
【0075】
よって、生物学的物質7のサンプリング/沈着サイクルを大幅に加速させ、制御することができる。
【0076】
サンプリング方法の実施により、サンプリングされる生物学的物質7(この場合、ペトリ皿6の培養培地8で培養されている細菌コロpニー)のサンプル11の全て又は一部をプローブ3の終端部4に付着させることが可能になる。
【0077】
サンプリング方法の第1の実施態様では、氷の皮膜が、冷却手段によって終端部4に付着される。
【0078】
氷の皮膜13の形成は、周囲空気中に含まれる水分の存在により可能になる。
【0079】
このため、装置2は、プローブ3と終端部4を冷却することを意図した極低温源を直接含むことができる。
【0080】
図2に示されるように、終端部4を有するプローブ3は、駆動手段5を介し、ペトリ皿6に含まれる寒天8上に成長している細菌7のコロニー11に接触させられる。
【0081】
これらの駆動手段5は、終端部4を介し、サンプリングされるコロニー11に圧力を加える。終端部4を覆う氷の皮膜13が低温であることに関連した圧力により、細菌コロニー11に含まれる水を凍結させることが可能になる。
【0082】
この圧力は、ペトリ皿6の下に位置させられ、駆動手段5の下降を制御し、特定の圧力閾値を超えるとこの下降を停止させるセンサ(図示せず)により測定される。
【0083】
あるいは、終端部4は、コロニー11に、該コロニーに圧力を作用させることなく単に接触する。このため、ひとたび接触がなされると、駆動手段5の下降を停止させる接触センサを有することが有用である。このようなセンサは、例えば電気バイナリセンサでありうる。
【0084】
凍結するとき、コロニー11に含まれる水は、プローブ3の終端部4の表面上に位置する氷の層13と固体ブロックを形成する。サンプリングされるコロニー11の全て又は一部は氷に含まれ、よって終端部4に付着する。
【0085】
圧力又は接触作用時間は、有利には装置2により制御することができる。
【0086】
図3に示されたサンプリング方法の第2の実施形態では、質量分析計等の測定装置により分析する観点で、プローブ3の終端部4は、溶液12、例えば液体水又は生物学的物質7のサンプル11をイオン化するために一般的に使用されるマトリックスで湿らされる。
【0087】
ついで、溶液12は、終端部4の端部に一般に液滴16状の氷の層13を形成する。液滴16は冷却手段の作用下で凍結し、サンプリングされる細菌コロニー11と、駆動手段5を介して接触される付着面を形成する。
【0088】
また
図3に例証されているサンプリング方法の第2の実施形態の変形例では、プローブ3の終端部4は、サンプリングされるコロニー11の付着に使用される氷の層13の大きさを増加させるために、逐次的に数回、溶液12で湿らされる。
【0089】
よって、サンプリングされるコロニー11の寸法に氷の層13の大きさを調節することができる。
【0090】
サンプリング方法のこれらの実施形態では、終端部への溶液12の液滴の付着を容易にすることができる形状を有するプローブ3の終端部4を持つことが有利である。この形状はテーパー状でありうる。また、該端部は、溶液12の液滴の付着を最適にするために、該端部の縁部に溝、例えば水平な溝を有しうる。
【0091】
特定の実施態様によれば、溶液を収容する容器は、さらに特定の形状を有しうる。第1に、形成される液滴の体積と合致した小容量の貯蔵部を有していることが有利である。第2に、容器の内部は、液滴が有さなければならないものに相当する特定の形状を有していることが有利である。よって、貯蔵部の内部はテーパー状でありうる。さらに、比較的長い凍結された液滴を得ることを可能にし、よって生物学的物質のサンプルによる終端部4の汚染の危険性が制限される限り、容器は深い方が有益である。
【0092】
他の特定の実施態様によれば、容器は、それ自身の冷却手段を有しうる。その場合、容器に含まれる溶液12は冷却される。上記溶液をその氷点近傍の温度に維持することによって、終端部が溶液に浸漬されている場合、凍結液滴の素早い形成を達成することができる。
【0093】
サンプリング方法の第3の実施形態(図示せず)では、溶液12の液滴は、サンプリングされるコロニー11上に付着され、後者は液体で全体的又は部分的に被覆される。ついで、プローブ3の終端部4が溶液12の液滴に適用され、後者が凍結され、サンプリングされるコロニー11の全て又は一部をトラップし、ついで後者を凍結させる。
【0094】
次の工程では、駆動手段5により、寒天層8からコロニー11の全て又は一部が分離され、よってサンプリング工程が達成される。
【0095】
駆動手段5により、容器9、例えば試験管9又は分析用プレート14、特に質量分析に使用される分析用プレートの上に、サンプリングされたコロニー11を移動させることが可能になる。
【0096】
沈着方法の実施により、続いて、プローブ3の急速凍結された終端部4をそれに付着したコロニー11の全て又は一部から分離させることが可能になる。
【0097】
この沈着方法の実施により、続いて、コロニー11と終端部4との分離が、冷却手段の作用の中断後、周囲空気中の如何なる支持体との接触もなく、達成される。実際、冷却手段の作用がひとたび中断されると、プローブ3の終端部4に形成される氷が溶解し、よってそれに付着しているコロニーを解放する。ついで、細菌が懸濁されている、最初に形成された氷の量に応じて多かれ少なかれ実質的な容量の液滴が形成される。
【0098】
本発明に係る沈着方法の第1の実施形態の変形例では、加熱手段10が、終端部4に対してコロニー11を保持している氷がより素早く溶解するようにすることに寄与する。
【0099】
この加熱手段10は、炎、熱風溶接ユニット、収束光線、抵抗電気部品に電流を通過させることによって生じるジュール効果、又は任意の他の等価な熱生成手段により、等しく構成することもできるであろう。
【0100】
また、この加熱手段10は、プローブ3の終端部4を滅菌するための滅菌手段として、続いて使用することもできる。
【0101】
上述の沈着方法の第1の実施形態と同様にして、上述のサンプリング方法の第2の実施形態でサンプリングされたコロニー11は、加熱手段10により、終端部4からまた分離される。
【0102】
沈着方法のこの実施形態では、コロニー11は、氷の層13上に機械的衝撃を加えることにより、プローブ3の終端部4からまた分離することができる。
【0103】
この機械的衝撃により、氷の層13が破壊される。ついで、これは、試験管9にサンプリングされるコロニー11と同時に収集される。このような試験管は、ついで、自動分析システム、例えばVITEK(登録商標)2自動システム、又は分析用プレート14によって使用することができる。
【0104】
沈着方法の第2の実施形態によれば、コロニー11の全て又は一部は分析用プレート14上へのコロニー11の全て又は一部の接触を通して沈着され、この接触が容器9又は分析プレート14の表面の表面張力の氷の層13への作用により、サンプルの氷の表層13を漸進的に溶解させる。
【0105】
この接触は、分析用プレート14上に分配されるスポット形態で逐次的になされ、又は線状で連続的になされる。
【0106】
スポット状での沈着により、サンプリングされた生物学的物質(コロニー11)と同じサンプルから、複数の異なった沈着物を得ることが可能になる。ついで、これらのスポットは、例えば質量分析に用いることができる。
【0107】
連続した線状の沈着により、沈着の終わりより沈着開始でより強い濃度を有する濃度勾配の生物学的物質7を得ることができる。よって、質量分析が確保できる測定法である場合、分析結果が最も良好である区間を見つけるために、異なった濃度勾配区間で測定をなすことができる。
【0108】
図4は、サンプリング及び沈着方法を実施するいくつかの手段を示す。
【0109】
サンプリング方法に対応するアプリケーション1Aでは、細菌コロニー11の全て又は一部が直接冷凍され、ついでプローブ3によりそのペトリ皿にサンプリングされ、ついで、試験管9に沈着され、そこで、細菌は、一般的な分析を受ける観点で、その終端部4の周囲にプローブ3により形成される氷柱の液状化後に懸濁しているであろう。
【0110】
アプリケーション1Bでは、試験管9に収容される細菌懸濁液の一部がサンプリングされ、分析用プレート14に沈着される。
【0111】
アプリケーション1Cでは、試験管9に収容される細菌懸濁液の一部がサンプリングされ、第2の一般的な分析、例えば抗生物質に対する感受性の試験の観点で、他の支持体に沈着される。
【0112】
アプリケーション2Aでは、細菌コロニー11又はこのコロニーの一部は、直接冷凍され、ついで、ペトリ皿6にサンプリングされる。
【0113】
このサンプリングの一部は、質量分析計の分析用プレート14上に直接沈着される一方、アプリケーション2Bでは、他の部分が、第2の一般的な分析、例えば抗生物質に対する感受性の試験の観点で、他の支持体に沈着される。
【0114】
またサンプリングは、第2の分析を延期するために、プローブ3上に凍結形態で保存されることもできる。これは、終端部4が取外し可能な場合に容易である。実際、終端部4は、冷蔵庫4内にこの端部を入れることにより、凍結形態で保存することができる。
【0115】
コロニー11の全て又は一部の質量分析を達成するために使用される分析プレート14は、サンプルをイオン化させるのに使用されるマトリックス15を含む。
【0116】
特定の実施形態では、マトリックス15は、分析用プレート14にスポット状で分配された後、乾燥した沈着物の形態になる。
【0117】
分析用プレート14と接触したコロニー11の全て又は一部の凍結した沈着物の液状化により、細菌を含む均質な液状混合物中にマトリックス15の要素を再懸濁させることが可能になる。
【0118】
アプリケーション3Aによって例証される他の解決手段は、その自然な形態では液状であるマトリックス15中に直接プローブ3の終端部4を湿らせ、プローブ3の終端部4の周囲にマトリックス15の氷柱を形成させた後、ペトリ皿6中のコロニー11をサンプリングすることからなる。
【0119】
プローブ3によりサンプリングされるコロニー11の全て又は一部とマトリックス15とからなる、分析用プレート14との接触で凍結した沈着物の液状化により、細菌をまた含む均質な液状混合物にマトリックス15の成分が再懸濁される。
【0120】
これら2つの後者の実施態様では、イオン化マトリックスの要素中の濃度が、混合物中に存在する細菌の数に関して十分であることが前もって担保されることが重要である。
【0121】
さらに、水等の非毒性溶液を使用して、これらの方法によりサンプリングされ、ペトリ皿6に再播種されたコロニー11は、再度増殖し、これらのサンプリング及び沈着方法により死滅しない。
産業上の応用例を以下に示唆する。
【実施例】
【0122】
実施例1:
この第1の実施例では、氷のチップ(先端)が、未知の微生物コロニーをサンプリングし、以下のプロトコルに従い、質量分析計を使用して、未知の微生物コロニーを同定するために、質量分析計標的にそれを沈着させるために使用される:
−氷針を用い、血液寒天培地(ビオメリュー製)のコロニーをサンプリングする。
−氷チップを用い、384位質量分析計標的(Bruker)にコロニーを沈着させる。沈着物は、周囲温度で標的上に氷チップを簡単に適用することより得られる。微生物と水の薄膜がこのようにして標的の表面に沈着される。
−サンプルの表面に2μlのマトリックスを沈着させる(α−シアノ酸をアセトンと水の50/50溶液に10mg/mlまで溶解させたもの)。
−MALDI−TOF(Ultraflex II,Bruker)質量分析計中に標的を導入する。
−2000〜20000Daの質量の獲得を最適化するように質量分析計を調節する。当業者であれば、機器のテンション及びレーザ出力の調節には特に慣れているであろう。
−ベンチマークタンパク質(ProteinMixte,Bruker)を用い、質量分析計を較正する。
−50レーザショットの20シリーズを使用してサンプルを分析する。各シリーズから得られる質量スペクトルを合計して微生物の質量スペクトルを得る。可能な限り最も情報の豊富なスペクトル、すなわち最も可能で良好に定められた質量ピークが得られるように、ショット数は当業者により調節可能である。
−Flex Analysisソフトウェア(Bruker)を使用し、微生物の質量スペクトルで観察される質量を測定する。
−データベースに含まれる質量と微生物の質量スペクトルで観察される質量を比較する。この目的のためにいくつかのデータベースが存在する:本出願人は自身のデータベースを有しているが、Bruker社(Biotype)又はAnagnostec(Saramis)社のデータベースも使用可能である。
−未知の微生物の質量スペクトルで観察されるものに最も近い質量を有する微生物を同定する。
【0123】
この実施例に対しては、このプロトコルを2つの異なるコロニーに適用したが、それにより、
図6及び7に見られる質量スペクトルを得ることができた。
【0124】
図6の質量スペクトルにより、コロニーをStaphylococcus aureusコロニーとして同定することができる。
【0125】
図7の質量スペクトルにより、コロニーをEscherichia coliコロニーとして同定することができる。
【0126】
優れた成功率で、非常に素早くサンプリングと沈着を達成することが可能になるため、この方法は有利である。最初の試みから、それらの種類にかかわらず、全てのコロニーが、成功裏にサンプリングされ、ついで、氷針により沈着される。
【0127】
さらに、標的が周囲温度にあるので、氷針は、それが表面に触れた場合、非常にゆっくりと溶解する。これに起因するわずかな水流によってサンプルが運ばれ、微生物の微細で均質な沈着物が提供される。
【0128】
この後者の点は、厚い沈着物が質量分析におけるシグナル抑制の原因であるため、特に有利である。よく知られているこの現象は、サンプルの量に不適切なマトリックスの割合及び過剰な塩のためである。また不均一な沈着物は、シグナルが不均一になると、質量分析計の調節が困難になるため、不利益である。
【0129】
実施例2:
第2の例では、実施例1と同じプロトコルが実施されるが、違いは、工程2ではあ、沈着物が質量分析計標的の表面に氷チップを擦りつけることにより得られる点である。
【0130】
図8に図示したスペクトルが得られる。このスペクトルにより、Escherichia coliが同定される。
このプロトコルは、実施例1と同じ利点を有する。さらに、より広い表面に対して沈着させることが可能であり、同じサンプルのいくつかの逐次的獲得の達成、又は異なるパラメーターを有するいくつかの質量スペクトルの逐次的獲得のために有用である。
【0131】
実施例3:
第3の実施例では、既知の種の25の菌株が、以下の表1に示す指示に従い、COS(コロンビアヒツジの血液の培地、ビオメリュー,照会番号43041又はSDA(サブローグルコース培地,ビオメリュー,照会番号43555)培養培地を伴うペトリ皿において培養される。
【0132】
【0133】
− 培養の16時間後、各ペトリ皿について、本発明の方法に従い、コロニーを氷針でサンプリングし、MALDI−TOF標的に沈着させる。この操作を繰り返し、研究される各種について、2つの独立した沈着物を得る。サンプリング及び沈着を、以下の操作態様に従って実施する。
− テーパー状の基部を有する円筒状の金属製チップ(終端部)を、ペルチェ効果により−10℃に保持した(
図5に従い、金属製チップは2のペルチェ素子と接触)。ついで、9℃に保持された水の容器中に15秒それを浸す。
− 金属製チップを水から取り出す。水滴は自然と金属製チップに付着する。この水滴を、−10℃で金属製チップから冷所に移動させることにより15秒で凍結させる。このようにして氷針が形成される。
− 針を微生物のコロニーに配し、すぐに引き抜く。即座に、微生物のコロニーは氷針に付着し、氷針に付着したままである。このようにして、氷針により微生物のコロニーがサンプリングされる。逆に、培養培地の寒天は取り上げられない。
− 微生物のコロニーを、Shimadzu社の使い捨て48位のFleximass DS標的に沈着させる。各沈着位置は直径3mmの円形である。らせん状の動きをしつつ、標的の48の沈着位置の一つの表面に、氷突部を擦りつけることにより、沈着を実施する。この動きは沈着位置の中心で開始し、水及び微生物の薄膜で、全沈着位置がカバーされるように4巡回後に完了した。
− 微生物のサンプルを数分、外気で乾燥させる。
− 1μLのマトリックス(溶液で使用準備が整ったα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(ビオメリュー,照会番号411071))をサンプルの表面に沈着させる。
− マトリックス及び微生物のサンプルを数分、外気で乾燥させる。
− 標的を、FLEXIMASS DS標的支持体(Shimadzu)を具備するMALDI−TOF質量分析計(Axima Assurance,Shimadzu)に導入する。
− 質量分析計を調節し、2000〜20000Daの質量の獲得を最適化する。当業者であれば、機器のテンション及びレーザー出力の調節には特に慣れているであろう。
− E.coli(ATCC8739菌株)の沈着物を用い、質量分析計を較正する。
− 5レーザーショットの100シリーズを使用し、サンプルを分析する。各シリーズから得られる質量スペクトルを合計し、微生物の質量スペクトルを得る。可能な限り最も情報の豊富なスペクトル、すなわち最も可能で良好に定められた質量ピークが得られるように、ショット数は当業者により調節可能である。
− LaunchPad バージョン2.8ソフトウェア(Shimadzu)を使用し、微生物の質量スペクトルにおいて観察される質量を測定する。
− 微生物の質量スペクトルで観察される質量を、Spectral IDバージョン1.1.0インターフェイス(ビオメリュー)を使用する、Saramis(ビオメリュー)データベースに含まれる質量と比較し、データベースに存在する微生物の質量スペクトルと比較することにより、微生物を同定する。
【0134】
この実施例では、本プロトコルにより、以下の表2に記載の結果に従い、沈着物を同定することができた。
【0135】
【0136】
以下のコメントを考慮し、同定された種は、予期された種に、厳密に対応している:
− スペクトルIDは種の略語名を提供する。当業者はこれらの略語名に慣れている。例えば、G.capitatumは、Geotrichum capitatumを意味し、Entero.casseliflavusは、Enterococcus casseliflavusを意味していることは明らかである。
− Micrococcus luteusは、Mic.luteus/lylaeとして、すなわちMicrococcus luteus又はMicrococcus lylaeの可能性があるとして同定されている。MALDI−TOF分析及びSaramisデータベースを使用しても、これら2つの種の間を差別化することはできない。
− Shigella flexneriはEsch.coli、すなわちEscherichia coliとして同定されている。上述したように、Shigella flexneri及びEscherichia coliは、あまりに近すぎて、MALDI−TOFで区別することができない2つの種である。スペクトルID及びSaramisは、これら2つの種をEscherichia coliと分類している。
− Aeromonas hydrophiliaは、Aer.salm.salmonicida又はAerhydro./caviae.として同定されている。3つの種は非常に近く、MALDI−TOFで差別化することは困難である。
− Salmonella ser.Gallinarum(pullovorum)は、Salmonella群として同定されている。MALDI−TOF分析は、他の血清型から、血清型Gallinarum(pullovorum)を明白に区別するための、十分な解析度を有していない。よって、スペクトルIDソフトウェア及びSaramisは、Salmonella genusのレベルで、一つのみを同定する。
【0137】
このように、本プロトコルにより、分析した種の全てを同定することができた。75のうちの72の沈着物が同定され、これは97.3%の正確な同定率を表す。この同定率は非常に良好で、実際、当業者が慣れている手動のサンプリング及び沈着と、続くMALDI−TOF分析を用いて得られるものよりも良好である。
【0138】
この方法は、優れた成功率で、任意の種類の微生物(細菌又は酵母(G.capitatum))に対して、非常に素早いサンプリング及び沈着を達成することが可能である、という利点を有する。特にこの方法により、非常に異なる形態及びコンシステンシーの微生物(プロテウス菌、桿菌、大腸菌群等)に、等しい効果でサンプリング及び沈着させることが可能になる。
【0139】
本発明は、本発明の特定の実施例及び実施態様に関連して説明しているが、これらに限定されるものではなく、記載された工程及び手段に均等な技術の全て及びその組合せを包含することは明らかである。