(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐火性粒子に対する化合物(A)の含有重量比〔化合物(A)/耐火性粒子〕が0.000025〜0.00105である請求項1又は2記載の自硬性鋳型用組成物。
酸硬化性樹脂を含有する粘結剤組成物であって、下記一般式(1)で表される2価アルコール、及び下記一般式(2)で表されるエーテル基含有2価アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を、前記粘結剤組成物中に0.5〜7.0重量%含有する粘結剤組成物。
HO−R1−OH (1)
(R1は炭素数2〜8のアルキレン基である。)
HO−(R2O)n−H (2)
(R2は炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは2〜5の数である。)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の自硬性鋳型用組成物は、耐火性粒子と、酸硬化性樹脂を含有する粘結剤組成物と、硬化剤とを混合してなる自硬性鋳型用組成物であって、前記一般式(1)で表される2価アルコール(A1)、前記一般式(2)で表されるエーテル基含有2価アルコール(A2)及び前記一般式(3)で表されるケトン(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を、前記自硬性鋳型用組成物中に0.0049〜0.069重量%含有する自硬性鋳型用組成物である。
【0014】
本発明で用いられる化合物(A)はジオール等の溶剤からなるものであるが、これらジオールなどの溶剤が酸素原子(水酸基)を介する水素結合により、硬化反応で生じた水を取り巻くと考えられ、脱水作用により、これが深部硬化を向上させると推測される。以下、本発明の自硬性鋳型用組成物に含有される成分について説明する。
【0015】
≪粘結剤組成物≫
本発明で用いられる粘結剤組成物は酸硬化性樹脂を含有する。
【0016】
<酸硬化性樹脂>
酸硬化性樹脂としては、例えば、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、フェノール類とアルデヒド類の縮合物、メラミンとアルデヒド類の縮合物、及び尿素とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種からなるものや、これらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるものが使用できる。また、前記群から選ばれる2種以上の共縮合物からなるものや、前記群から選ばれる1種以上と前記共縮合物との混合物からなるものも使用できる。このうち、深部硬化性の観点及び樹脂粘度の観点から、フルフリルアルコールとフェノール類とアルデヒド類の縮合物、フルフリルアルコールとメラミンとアルデヒド類の縮合物、及びフルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種からなるフラン樹脂、あるいはこれらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるフラン樹脂が好ましい。また、造型時のホルムアルデヒドの発生量を低減する観点及び鋳型強度向上の観点から、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物であることが好ましい。なかでも、粘結剤組成物の粘度を適度な範囲に調整する観点から、酸硬化性樹脂はフルフリルアルコールを含有することが好ましい。
【0017】
前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、フルフラール、テレフタルアルデヒド等が挙げられ、これらのうち1種以上を適宜使用できる。鋳型強度向上の観点からは、ホルムアルデヒドを用いるのが好ましく、造型時のホルムアルデヒド発生量低減の観点からは、フルフラールやテレフタルアルデヒドを用いるのが好ましい。
【0018】
前記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールFなどが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0019】
フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物を製造する場合には、フルフリルアルコール1モルに対して、アルデヒド類を0.01〜1モル使用することが好ましい。また、フェノール類とアルデヒド類の縮合物を製造する場合には、フェノール類1モルに対して、アルデヒド類を1〜3モル使用することが好ましい。また、メラミンとアルデヒド類の縮合物を製造する場合には、メラミン1モルに対して、アルデヒド類を1〜3モル使用することが好ましい。また、尿素とアルデヒド類の縮合物を製造する場合には、尿素1モルに対して、アルデヒド類を1.0〜2.0モル使用することが好ましく、1.5〜2.0モル使用することがより好ましく、1.7〜2.0モル使用することが更に好ましい。
【0020】
フルフリルアルコールとアルデヒド類と尿素の縮合物を製造する場合には、フルフリルアルコール中で酸触媒下において、尿素とアルデヒド類を縮合させるのが好ましく、フルフリルアルコール1モルに対して、アルデヒド類を0.05〜3モル、尿素を0.03〜1.5モル使用することが好ましい。
【0021】
粘結剤組成物中の酸硬化性樹脂の含有量は、最終的な鋳型強度を向上させる観点から、好ましくは50〜99重量%であり、より好ましくは55〜99重量%であり、更に好ましくは60〜99重量%である。
【0022】
特に、酸硬化性樹脂がフルフリルアルコールを含有する場合、粘結剤組成物の粘度を適度な範囲に調整する観点から、粘結剤組成物中のフルフリルアルコールの含有量は、好ましくは25〜98重量%であり、より好ましくは30〜98重量%であり、更に好ましくは35〜98重量%である。
【0023】
また、自硬性鋳型においては、混練むらの防止と鋳型強度の均一発現の観点から、粘結剤組成物の粘度は低いほうが好ましい。上記観点から、E型粘度計で測定した25℃における粘結剤組成物の粘度は、1〜80mPa・sであることが好ましく、より好ましくは5〜60mPa・sであり、さらに好ましくは8〜40mPa・sである。
【0024】
アミノ基を有する化合物(例えば尿素など)から得られる粘結剤組成物では、該アミノ基が樹脂成分と架橋結合を形成すると考えられ、得られる鋳型の可撓性に好ましい影響を与えることが推測される。アミノ基の含有量は窒素含有量(重量%)で見積もることが出来る。なお、鋳型の可撓性は、原型から鋳型を抜型する際に必要である。特に、複雑な形状の鋳型を造型した際に、鋳型の可撓性が高いと、抜型時に鋳型の肉厚が薄い部分に応力が集中することに起因する鋳型割れを防ぐことができる。本発明で用いられる粘結剤組成物では、得られる鋳型の割れを防ぐ観点、及び最終的な鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物中の窒素含有量は、2.0重量%以上であることが好ましく、2.2重量%以上であることがより好ましく、2.3重量%以上であることが更に好ましく、2.5重量%以上であることが更により好ましい。また、鋳物の窒素に起因するガス欠陥を防止する観点から、粘結剤組成物中の窒素含有量が4.0重量%以下であることが好ましく、3.8重量%以下であることがより好ましく、3.7重量%以下であることが更に好ましく、3.6重量%以下であることが更により好ましい。上記観点を総合すると、粘結剤組成物中の窒素含有量は、2.0〜4.0重量%であることが好ましく、2.2〜3.8重量%であることがより好ましく、2.3〜3.7重量%であることが更に好ましく、2.5〜3.6重量%であることが更により好ましい。粘結剤組成物中の窒素含有量を上記範囲内に調整するには、粘結剤組成物中の窒素含有化合物の含有量を調整すればよい。窒素含有化合物としては、尿素、メラミン、尿素とアルデヒド類の縮合物、メラミンとアルデヒド類の縮合物、尿素樹脂及び尿素変性樹脂等が好ましい。粘結剤組成物中の窒素含有量は、ケルダール法により定量することが出来る。更には、尿素、尿素樹脂、フルフリルアルコール・尿素樹脂(尿素変性樹脂)、及びフルフリルアルコール・尿素ホルムアルデヒド樹脂由来の窒素含有量は、尿素由来のカルボニル基(C=O基)を13C-NMRで定量することで求めることも出来る。深部硬化性向上の観点からは、前記粘結剤組成物中の窒素含有量が2.0〜4.0重量%であることが好ましく、3.0〜4.0重量%であることがより好ましい。
【0025】
自硬性鋳型用組成物中の粘結剤組成物の含有量は鋳型強度向上の観点から0.4〜5.0重量%が好ましく、0.6〜3.0重量%がより好ましく、0.8〜2.0重量%が更に好ましい。
【0026】
<化合物(A)>
自硬性鋳型の深部硬化性向上の観点から、本発明の自硬性鋳型用組成物は前記一般式(1)で表される2価アルコール(A1)、前記一般式(2)で表されるエーテル基含有2価アルコール(A2)及び前記一般式(3)で表されるケトン(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を含有する。
【0027】
2価アルコール(A1)は前記一般式(1)で表され、R
1は炭素数2〜8のアルキレン基である。例えば、エチレン基、プロピレン基、1−メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、ペンチレン基、へキシレン基、1−ブチルエチレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等が挙げられる。深部硬化性向上の観点からR
1は炭素数2〜6が好ましく、炭素数4〜6がより好ましい。具体的な化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール等が挙げられる。中でも、鋳型の深部硬化性向上の観点からエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。
【0028】
エーテル基含有2価アルコール(A2)は前記一般式(2)で表され、R
2は炭素数2〜4のアルキレン基であり、鋳型の深部硬化性向上の観点から炭素数2〜3のアルキレン基が好ましく、炭素数2のアルキレン基がより好ましい。具体的には、R
2はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。nはアルキレンオキシ基の平均繰り返し数を表し、鋳型の深部硬化性向上の観点から2〜5の数であり、2〜4が好ましく、2〜3が更に好ましい。具体的な化合物としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラブチレングリコール、ペンタブチレングリコール及びそれらの混合物が挙げられる。深部硬化性向上の観点からジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。
【0029】
ケトン(A3)は前記一般式(3)で表され、R
3及びR
4はそれぞれ炭素数1〜6の炭化水素基であって、深部硬化性向上の観点からR
3及びR
4の炭素数の合計は2〜8が好ましく、2〜7がより好ましい。R
3及びR
4は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、フェニル基、メチルフェニル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、フェニル基である。R
3及びR
4が環を形成する場合はR
3とR
4の炭素数の合計が3〜6のアルキレン基であって、鋳型の深部硬化性向上の観点からR
3とR
4の炭素数の合計が4〜5が好ましい。環を形成する場合のR
3とR
4で構成されるアルキレン基は例えば、ブチレン基、ペンチレン基が好ましい。環を形成しない場合、ケトン(A3)の具体的な化合物としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノンが好ましい。環を形成する場合は、ケトン(A3)の具体的な化合物としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられ、シクロヘキサノンが好ましい。ケトン(A3)について、全体としては、深部硬化性向上の観点から、シクロヘキサノン、アセトン、アセトフェノンが好ましく、シクロヘキサノンがより好ましい。
【0030】
本発明で用いられる化合物(A)は、鋳型の深部硬化性向上の観点から、自硬性鋳型用組成物中、0.0049重量%以上であり、0.0069重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましい。また、鋳型の深部硬化性向上の観点から、自硬性鋳型用組成物中、0.069重量%以下であり、0.049重量%以下が好ましく、0.03重量%以下がより好ましく、0.02重量%以下が更に好ましい。これらの観点を総合すると、化合物(A)は、自硬性鋳型用組成物中、0.0049〜0.069重量%であり、0.0069〜0.049重量%が好ましく、0.01〜0.03重量%がより好ましく、0.01〜0.02重量%が更に好ましい。
【0031】
化合物(A)は、自硬性鋳型用組成物の深部硬度を向上させ、配合を容易にする観点から、あらかじめ、粘結剤組成物中に含有されていてもよい。即ち、本発明の粘結剤組成物は、酸硬化性樹脂及び化合物(A)を含有し、鋳型の深部硬化性向上の観点から、該粘結剤組成物中に化合物(A)を0.5〜7.0重量%含有する粘結剤組成物である。化合物(A)は、鋳型の深部硬化性向上及び鋳型強度維持の観点から、粘結剤組成物中0.7〜5.0重量%含有するのが好ましく、1.0〜3.0重量%含有するのがより好ましく、1.0〜2.0重量%含有するのが更に好ましい。
【0032】
前記耐火性粒子に対する化合物(A)の含有重量比は、0.000025〜0.00105であることが、鋳型の深部硬化性向上及び鋳型強度維持の観点から好ましく、0.00005〜0.0007であることがより好ましく、0.00007〜0.0005であることが更に好ましく、0.0001〜0.0003であることがより更に好ましく、0.0001〜0.0002であることがより更に好ましい。
【0033】
<硬化促進剤>
本発明で用いられる粘結剤組成物中には、鋳型の割れを防ぐ観点、及び鋳型強度を向上させる観点から、硬化促進剤が含まれていてもよい。硬化促進剤としては、鋳型強度を向上させる観点から、下記一般式(4)で表される化合物、フェノール誘導体、及び芳香族ジアルデヒドからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0034】
【化1】
〔式中、X
1及びX
2は、それぞれ水素原子、CH
3又はC
2H
5の何れかを表す。〕
【0035】
一般式(4)で表される化合物としては、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン、2,5−ビスメトキシメチルフラン、2,5−ビスエトキシメチルフラン、2−ヒドロキシメチル−5−メトキシメチルフラン、2−ヒドロキシメチル−5−エトキシメチルフラン、2−メトキシメチル−5−エトキシメチルフランが挙げられる。なかでも、鋳型強度を向上させる観点から、2,5−ビスヒドロキシメチルフランを使用するのが好ましい。粘結剤組成物中の一般式(4)で表される化合物の含有量は、一般式(4)で表される化合物の酸硬化性樹脂への溶解性の観点、及び鋳型強度を向上させる観点から、0.5〜63重量%であることが好ましく、1.8〜50重量%であることがより好ましく、2.5〜50重量%であることが更に好ましく、3.0〜40重量%であることが更により好ましい。
【0036】
フェノール誘導体としては、例えばレゾルシン、クレゾール、ヒドロキノン、フロログルシノール、メチレンビスフェノール等が挙げられる。なかでも、鋳型の深部硬化性向上の観点及び鋳型強度向上の観点から、レゾルシンが好ましい。粘結剤組成物中の上記フェノール誘導体の含有量は、フェノール誘導体の酸硬化性樹脂への溶解性の観点、及び鋳型強度向上の観点から、1〜25重量%であることが好ましく、2〜15重量%であることがより好ましく、3〜10重量%であることが更に好ましい。なかでも、レゾルシンを用いる場合は、粘結剤組成物中のレゾルシンの含有量は、レゾルシンの酸硬化性樹脂への溶解性の観点、鋳型の深部硬化性向上の観点及び最終的な鋳型強度を向上させる観点から、1〜10重量%であることが好ましく、2〜7重量%であることがより好ましく、3〜6重量%であることが更に好ましい。
【0037】
芳香族ジアルデヒドとしては、テレフタルアルデヒド、フタルアルデヒド及びイソフタルアルデヒド等、並びにそれらの誘導体等が挙げられる。それらの誘導体とは、基本骨格としての2つのホルミル基を有する芳香族化合物の芳香環にアルキル基等の置換基を有する化合物等を意味する。鋳型の割れを防ぐ観点から、テレフタルアルデヒド及びテレフタルアルデヒドの誘導体が好ましく、テレフタルアルデヒドがより好ましい。粘結剤組成物中の芳香族ジアルデヒドの含有量は、芳香族ジアルデヒドを酸硬化性樹脂に十分に溶解させる観点、及び芳香族ジアルデヒド自体の臭気を抑制する観点から、好ましくは0.1〜15重量%であり、より好ましくは0.5〜10重量%であり、更に好ましくは1〜5重量%である。
【0038】
<水>
本発明で用いられる粘結剤組成物中には、さらに水が含まれてもよい。例えば、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物などの各種縮合物を合成する場合、水溶液状の原料を使用したり縮合水が生成したりするため、縮合物は、通常、水との混合物の形態で得られるが、このような縮合物を粘結剤組成物に使用するにあたり、合成過程に由来するこれらの水をあえて除去する必要はない。また、粘結剤組成物を取扱いやすい粘度に調整する目的などで、水をさらに添加してもよい。ただし、水が過剰になると、酸硬化性樹脂の硬化反応が阻害されるおそれがある。従って、粘結剤組成物中の水の含有量は、粘結剤組成物を扱いやすくする観点と鋳型初期強度を維持する観点から、0.5〜30重量%の範囲とすることが好ましく、5〜25重量%の範囲がより好ましい。更に、最終的な鋳型強度を向上させる観点から、5〜10重量%とすることが好ましい。また、深部硬化性に顕著な差違が認められるのは、水の含有量が5〜25重量%の範囲である。
【0039】
<その他の添加剤>
また、粘結剤組成物中には、さらにシランカップリング剤等の添加剤が含まれていてもよい。例えばシランカップリング剤が含まれていると、最終的な鋳型強度を向上させることができるため好ましい。シランカップリング剤としては、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシランや、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシランなどが用いられる。好ましくは、アミノシラン、エポキシシラン、ウレイドシランである。シランカップリング剤の粘結剤組成物中の含有量は、最終的な鋳型強度を向上させる観点から、0.01〜0.5重量%であることが好ましく、0.05〜0.3重量%であることがより好ましい。
【0040】
≪耐火性粒子≫
耐火性粒子としては、ケイ砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂、ムライト砂、合成ムライト砂等の従来公知のものを使用でき、また、使用済みの耐火性粒子を回収したものや再生処理したものなども使用できる。自硬性鋳型用組成物中の耐火性粒子の含有量は91.5〜99.5重量%が好ましく、95〜99重量%がより好ましく、97〜98.8重量%が更に好ましい。
【0041】
≪硬化剤≫
硬化剤としては、キシレンスルホン酸(特に、m−キシレンスルホン酸)やトルエンスルホン酸(特に、p−トルエンスルホン酸)、メタンスルホン酸等のスルホン酸系化合物、リン酸、酸性リン酸エステル等のリン酸系化合物、硫酸等を含む酸性水溶液など、従来公知のものを1種以上使用できる。更に、硬化剤中に一般式(1)で表される化合物以外のアルコール類、一般式(2)で表される化合物以外のエーテルアルコール類及びエステル類よりなる群から選ばれる1種以上の溶剤や、カルボン酸類を含有させることもできる。なお、本発明で用いられる硬化剤は硬化剤組成物ともいう。これらのなかでも、最終的な鋳型強度の向上の観点から、前記アルコール類、前記エーテルアルコール類を含有させることが好ましく、前記エーテルアルコール類を含有させることがより好ましい。また、硬化剤に上記溶剤やカルボン酸類を含有させると、硬化剤中の水分量が低減されるため、最終的な鋳型強度が更に向上する。硬化剤中の前記溶剤や前記カルボン酸類の含有量は、最終的な鋳型強度向上の観点から、5〜50重量%であることが好ましく、10〜40重量%であることがより好ましい。
【0042】
最終的な鋳型強度の向上を図る観点から、前記アルコール類としては、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコールが好ましく、エーテルアルコール類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルが好ましく、エステル類としては、酢酸ブチル、安息香酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが好ましい。また、硬化剤組成物の粘度を低減させる観点、及び硬化剤組成物の保存安定性向上の観点からは、メタノールやエタノールを含有させることが好ましい。カルボン酸類としては、最終的な鋳型強度向上及び臭気低減の観点から、水酸基を持つカルボン酸が好ましく、乳酸、クエン酸、リンゴ酸がより好ましい。自硬性鋳型用組成物中の硬化剤の含有量は、鋳型強度向上の観点から、0.12〜3.5重量%が好ましく、0.2〜1.0重量%がより好ましく、0.3〜0.6重量%が更に好ましい。
【0043】
本発明の自硬性鋳型用組成物(混練砂)の調製方法としては、例えば、上記本発明の粘結剤組成物と、この粘結剤組成物を硬化させる硬化剤とを耐火性粒子に加え、これらをバッチミキサーや連続ミキサーなどで混練する方法を例示できる。この際、前記硬化剤を耐火性粒子に添加した後、本発明の粘結剤組成物を添加することが好ましい。上記方法によれば、本発明の粘結剤組成物が化合物(A)を含有しているため、化合物(A)が最終的な自硬性鋳型用組成物に供給される。つまり、本発明の粘結剤組成物中には、予め化合物(A)が配合されているため、該粘結剤組成物と、耐火性粒子や硬化剤とが混合された場合に、化合物(A)が均一に配合され、深部硬化性の向上に寄与するものと推測される。なお、本発明の自硬性鋳型用組成物を得る際に、化合物(A)を含有しない粘結剤組成物を用いてもよい。その場合は、粘結剤組成物を耐火性粒子等に添加する際、又は添加前もしくは添加後に、別途、化合物(A)を耐火性粒子等に添加すればよい。また、本発明の自硬性鋳型用組成物を得る際に、化合物(A)を組成物中0.5〜7.0重量%の範囲外で含有する粘結剤組成物を用いてもよい。その場合は、最終的な自硬性鋳型用組成物中に化合物(A)が0.0049〜0.069重量%の範囲で含有するように、各成分の量を調整すればよい。
【0044】
自硬性鋳型用組成物における耐火性粒子と粘結剤組成物と硬化剤との比率は適宜設定できるが、耐火性粒子100重量部に対して、粘結剤組成物が0.5〜1.5重量部で、硬化剤が0.07〜1重量部の範囲が好ましい。このような比率であると、十分な強度の鋳型が得られやすい。更に、硬化剤の含有量は、鋳型に含まれる水分量を極力少なくする観点と、ミキサーでの混合効率の観点から、粘結剤組成物中の酸硬化性樹脂100重量部に対して10〜40重量部であることが好ましく、15〜35重量部であることがより好ましく、18〜25重量部であることが更に好ましい。
【0045】
≪自硬性鋳型の製造方法≫
本発明の自硬性鋳型用組成物は、耐火性粒子と、酸硬化性樹脂を含有する粘結剤組成物と、硬化剤とを混合してなる自硬性鋳型用組成物を硬化させる工程を有する鋳型の製造方法に好適である。即ち、本発明の自硬性鋳型の製造方法は、自硬性鋳型用組成物として上記本発明の自硬性鋳型用組成物を使用する自硬性鋳型の製造方法である。
【0046】
本発明の自硬性鋳型用組成物を鋳型造型用の型に充填して、前記自硬性鋳型用組成物を25℃以下で硬化させた場合は、25℃を超える場合に比べて、深部硬化性が良好となる。これは、温度が低いと同じ硬化速度で硬化させるためには、水分量が少なくなるからである。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を具体的に示す実施例について説明する。なお、実施例における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0048】
<深部硬度>
自硬性鋳型用組成物を調製後すぐに直径150mm、高さ170mmのポリカップに入れて、鋳型圧縮強度が0.3MPaに到達した時にポリカップから鋳型を取り出し、鋳型の深部(ポリカップの底面に接触していた面)の表面硬度をフラン鋳型用表面硬度計(ナカヤマ製)で測定した。なお、表1に示す深部硬度の値は、上記フラン鋳型用表面硬度計が示した目盛(無単位)の値であり、数値が大きいほど深部硬化性が良好となる。
【0049】
<30分後の鋳型圧縮強度>
25℃、55%RHの条件下で、自硬性鋳型用組成物を調製後すぐに直径50mm、高さ50mmの円柱形状のテストピース枠に充填し、30分間放置した後、抜型し、JIS Z 2604−1976に記載された方法で、鋳型圧縮強度を測定し、得られた測定値を30分後の鋳型圧縮強度(MPa)とした。
【0050】
<24時間後の鋳型圧縮強度>
自硬性鋳型用組成物を調製後すぐに直径50mm、高さ50mmの円柱形状のテストピース枠に充填した。25℃、55%RHの条件下で充填後5時間経過した時に抜型を行い、更に、25℃、55%RHの条件下で抜型後19時間放置した後、JIS Z 2604−1976に記載された方法で鋳型圧縮強度を測定し、得られた測定値を24時間後の鋳型圧縮強度(MPa)とした。
【0051】
<粘結剤組成物の窒素含有量>
JIS M 8813に示されるケルダール法にて測定を行った。
【0052】
(実施例1〜9及び比較例1〜7)
あらかじめ、化合物(A)又はその他の溶剤を酸硬化性樹脂、硬化促進剤、及びシランカップリング剤と混合し、表1に示す組成の粘結剤組成物を調製した。25℃、55%RHの条件下で、フラン再生砂100重量部に対し、硬化剤〔花王クエーカー社製 カオーライトナー硬化剤 TK−3と、花王クエーカー社製 カオーライトナー硬化剤 F−9との混合物(重量比はTK−3/F−9=35/5)〕0.36重量部を添加し、次いで上記粘結剤組成物0.90重量部を添加し、これらを混合して自硬性鋳型用組成物を得た。得られた自硬性鋳型用組成物について、上述した方法で各項目の評価を行った。結果を表1に示す。なお、上記フラン再生砂としては、空気中、1000℃で1時間加熱したときの重量減少率(LOI)が1.4重量%のものを用いた。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、実施例1〜9は、比較例1〜7に比べ、何れも深部硬化性が良好な結果となった。また、実施例2と実施例8の比較から、レゾルシンを加えることによって、深部硬化性及び最終的な鋳型強度の双方を向上できることが確認された。また、実施例2と実施例9の比較から、窒素含有量が2.7重量%よりも3.6重量%の方が、深部硬化性が向上することが確認された。