特許第5852225号(P5852225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852225
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】電力受電装置及び電力受電方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/00 20160101AFI20160114BHJP
【FI】
   H02J17/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-504522(P2014-504522)
(86)(22)【出願日】2012年3月13日
(86)【国際出願番号】JP2012056385
(87)【国際公開番号】WO2013136431
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】岩脇 圭介
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−147213(JP,A)
【文献】 特開2010−239847(JP,A)
【文献】 特開2013−183497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 17/00
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力送電装置と非接触で電力の授受を行う電力受電装置であって、
電部と、
前記受電部と電気的負荷と電気的に接続され、前記電気的負荷に供給する直流電圧を変更可能な直流電圧変更手段と、
前記電力送電装置の送電部前記受電部との間において電力の授受が行われる際に、前記送電部の電流と前記受電部の電流との電流位相差が180度に近づくように、前記直流電圧変更手段から前記電気的負荷に供給される前記直流電圧を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする電力受電装置。
【請求項2】
当該電力受電装置は、更に前記受電部に電気的に直列に接続されたコンデンサを備え
前記直流電圧変更手段は、前記直流電圧を変更することにより、前記電気的負荷に係るインピーダンスと前記直流電圧変更手段に係るインピーダンスとの合成インピーダンスを変更可能であり、
前記制御手段は、前記合成インピーダンスが前記送電部及び前記受電部間に係る励磁リアクタンスよりも小さくなる方向に、前記直流電圧変更手段を制御す
ことを特徴とする請求項1に記載の電力受電装置。
【請求項3】
当該電力受電装置は、更に前記受電部に電気的に並列に接続されたコンデンサを備え
前記直流電圧変更手段は、前記直流電圧を変更することにより、前記電気的負荷に係るインピーダンスと前記直流電圧変更手段に係るインピーダンスとの合成インピーダンスを変更可能であり、
前記制御手段は、前記合成インピーダンスが前記送電部及び前記受電部間に係る励磁リアクタンスよりも大きくなる方向に、前記直流電圧変更手段を制御す
ことを特徴とする請求項1に記載の電力受電装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記電力送電装置における交流電力の共振周波数である送電側共振周波数を取得する取得手段を含み、
前記制御手段は、前記取得手段により取得された前記送電側共振周波数に基づいて前記励磁リアクタンスを求める
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の電力受電装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記電気的負荷に係るインピーダンスを検出するインピーダンス検出手段を含み
前記制御手段は、前記検出された前記電気的負荷に係るインピーダンスに基づいて、前記合成インピーダンスが予め定められた所定範囲内に収まるように前記直流電圧変更手段を制御する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の電力受電装置。
【請求項6】
電力送電装置の送電部と非接触で電力の授受を行受電部と、前記受電部と電気的負荷と電気的に接続され、前記電気的負荷に供給する直流電圧を変更可能な直流電圧変更手段と、を備える電力受電装置における電力受電方法であって、
前記送電部前記受電部との間において電力の授受が行われる際に、前記送電部の電流と前記受電部の電流との電流位相差が180度に近づくように、前記直流電圧変更手段から前記電気的負荷に供給される前記直流電圧を制御する制御工程を備える
ことを特徴とする電力受電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電部と受電部との間で非接触で電力授受を行うシステムにおける電力受電装置及び電力受電方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置では、例えば磁界共鳴、電磁誘導等により送電部及び受電部が磁界結合されることにより、送電部と受電部との間で非接触で電力授受が行われる。この種の装置では、送電部及び受電部との間における漏洩電磁界の低減が図られる。
【0003】
例えば、特許文献1には、1次(送電側)コイル及び2次(受電側)コイル各々に流れる電流を監視し、1次コイルに流れる電流と2次コイルに流れる電流が逆向きになる状態で、1次コイル及び2次コイルが共鳴するように、周波数や共振コンデンサを調整する装置が記載されている。
【0004】
或いは、特許文献2には、送電コイルと受電コイルとの距離がある程度近くなると、送電コイルと受電コイルとの磁界共鳴において、伝送されるエネルギーがピークとなる駆動周波数が2つ出現するので、高周波側の駆動周波数で駆動することにより、送受電間の電流位相差を逆位相として、発生する磁界を比較的弱くする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−147213号公報
【特許文献2】特開2010−239847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の背景技術によれば、例えば、伝送されるエネルギーがピークとなる駆動周波数が2つ出現する条件や、バッテリ等の負荷に係るインピーダンスと、送電コイルと受電コイルとの間の電流位相と、の相関については考察されていない。すると、送電部及び受電部との間における漏洩電磁界を適切に低減することが困難になる可能性があるという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、例えば負荷が変動したり、送電コイル及び受電コイル間の距離が変動しても、漏洩電磁界を適切に低減することができる電力受電装置及び電力受電方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電力受電装置は、上記課題を解決するために、電力送電装置と非接触で電力の授受を行う電力受電装置であって、受電部と、前記受電部と電気的負荷と電気的に接続され、前記電気的負荷に供給する直流電圧を変更可能な直流電圧変更手段と、前記電力送電装置の送電部前記受電部との間において電力の授受が行われる際に、前記送電部の電流と前記受電部の電流との電流位相差が180度に近づくように、前記直流電圧変更手段から前記電気的負荷に供給される前記直流電圧を制御する制御手段と、を備える。
【0009】
本発明の電力受電装置によれば、当該電力受電装置は、電力送電装置と、例えば磁界共鳴方式、電磁誘導方式等により、非接触で電力の授受を行う電力受電装置である。電力受電装置は、受電部、直流電圧変更手段及び制御手段を備えて構成されている。
【0010】
受電部は、電力送電装置の送電部と空間を隔てて対向して配置される。ここで、受電部及び送電部各々は、所定のインダクタンスとなるように構成されている。また、受電部及び送電部間の距離(即ち、ギャップ)や、受電部及び送電部間の水平方向の相対位置に応じて、受電部及び送電部間の結合係数が変化する。
【0011】
直流電圧変更手段は、受電部と、例えばバッテリ等の電気的負荷とに電気的に接続されている。該直流電圧変更手段は、電気的負荷に供給される直流電圧を変更可能に構成されている。直流電圧」とは、受電部を介して受電された交流電力から、整流器等により変換された直流電力に係る直流電圧を意味する。「電気的負荷に供給される直流電圧」とは、電力受電装置における直流電力のうち、電気的負荷に供給される直流電力に係る直流電圧を意味する。直流電圧変更手段は、整流器等により変換された直流電力に係る直流電圧を、例えば昇圧又は降圧等することにより、電気的負荷に供給される直流電圧を変更する。
【0012】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる制御手段は、送電部及び受電部間において電力の授受が行われる際に、電力受電装置と電力送電装置とで構成する系全体に係る共振周波数である総合共振周波数に対応する、送電部の電流と受電部の電流との電流位相差が、180度に近づくように、直流電圧変更手段から電気的負荷に供給される直流電圧を制御する。「総合共振周波数」とは、無効電力が比較的少なくなる共振周波数であり、送電部から受電部に伝送される電力がピークとなる共振周波数である。
【0013】
ここで、本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、非接触で電力伝送が行われる場合、送電部と受電部との間には所定のギャップが存在する。このため、送電部と受電部との間の結合係数が比較的低く、比較的大きな漏洩電磁界が生じる。この漏洩電磁界を低減するために、送電部における電流と受電部における電流との電流位相差を逆相(即ち、180度)に近づける方法が提案されている。
【0014】
しかしながら、電流位相差が逆相に近くなるように、最適な駆動周波数(本発明に係る“総合共振周波数”に相当)を予め設定したとしても、例えばバッテリ等の充電状態に応じて負荷が変動する電気的負荷が存在する場合、最適な駆動周波数と電流位相差との関係は、充電状態に応じて変化してしまう。すると、漏洩電磁界が低減されない可能性がある。
【0015】
そこで本発明では、制御手段により、送電部及び受電部間において電力の授受が行われる際に、総合共振周波数に対応する電流位相差が、180度に近づくように、直流電圧変更手段から電気的負荷に供給される直流電圧が制御される。このように構成すれば、電気的負荷が、例えばバッテリ等の充電状態に応じて負荷が変化するものであっても、漏洩電磁界を適切に低減することができる。
【0016】
本発明の電力受電装置の一態様では、当該電力受電装置は、更に前記受電部に電気的に直列に接続されたコンデンサを備え、前記直流電圧変更手段は、前記直流電圧を変更することにより、前記電気的負荷に係るインピーダンスと前記直流電圧変更手段に係るインピーダンスとの合成インピーダンスを変更可能であり、前記制御手段は、前記合成インピーダンスが前記送電部及び前記受電部間に係る励磁リアクタンスよりも小さくなる方向に、前記直流電圧変更手段を制御す
【0017】
この態様によれば、受電部と共振する共振コンデンサとしてのコンデンサは、受電部に電気的に直列に接続されている。この場合、電気的負荷に係るインピーダンスと直流電圧変更手段に係るインピーダンスとの合成インピーダンスを、送電部及び受電部間に係る励磁リアクタンスよりも小さくなる方向に、合成インピーダンスを変化させると、総合共振周波数に対応する電流位相差が、180度に近づくことが、本願発明者の研究により判明している。
【0018】
そこで、制御手段は、合成インピーダンスが、励磁リアクタンスよりも小さくなる方向に、該合成インピーダンスを変更するように直流電圧変更手段を制御することにより、電流位相差を180度に近づける。この結果、比較的容易にして、漏洩電磁界を適切に低減することができる。
【0019】
或いは、本発明の電力受電装置の他の態様では、当該電力受電装置は、更に前記受電部に電気的に並列に接続されたコンデンサを備え、前記直流電圧変更手段は、前記直流電圧を変更することにより、前記電気的負荷に係るインピーダンスと前記直流電圧変更手段に係るインピーダンスとの合成インピーダンスを変更可能であり、前記制御手段は、前記合成インピーダンスが前記送電部及び前記受電部間に係る励磁リアクタンスよりも大きくなる方向に、前記直流電圧変更手段を制御す
【0020】
この態様によれば、受電部と共振する共振コンデンサとしてのコンデンサは、受電部に電気的に並列に接続されている。この場合、電気的負荷に係るインピーダンスと直流電圧変更手段に係るインピーダンスとの合成インピーダンスが、送電部及び受電部間に係る励磁リアクタンスよりも大きくなる方向に、合成インピーダンスを変化させると、総合共振周波数に対応する電流位相差が、180度に近づくことが、本願発明者の研究により判明している。
【0021】
そこで、制御手段は、合成インピーダンスが、励磁リアクタンスよりも大きくなる方向に、該合成インピーダンスを変更するように直流電圧変更手段を制御することにより、電流位相差を180度に近づける。この結果、比較的容易にして、漏洩電磁界を適切に低減することができる。
【0022】
本発明の電力受電装置の他の態様では、前記制御手段は、前記電力送電装置における交流電力の共振周波数である送電側共振周波数を取得する取得手段を含み、前記制御手段は、前記取得手段により取得された前記送電側共振周波数に基づいて前記励磁リアクタンスを求める。
【0023】
この態様によれば、比較的容易にして励磁リアクタンスを求めることができ、実用上非常に有利である。尚、ここでいう交流電力の共振周波数とは、交流電力の電圧の位相と電流の位相とが一致し、力率が最大となる周波数のことである。
【0024】
本発明の電力受電装置の他の態様では、前記制御手段は、前記電気的負荷に係るインピーダンスを検出するインピーダンス検出手段を含み前記制御手段は、前記検出された前記電気的負荷に係るインピーダンスに基づいて、前記合成インピーダンスが予め定められた所定範囲内に収まるように前記直流電圧変更手段を制御する。
【0025】
この態様によれば、比較的容易にして、電流位相差を180度に近づけることができ、実用上非常に有利である。
【0026】
本発明の電力受電方法は、上記課題を解決するために、電力送電装置の送電部と非接触で電力の授受を行受電部と、前記受電部と電気的負荷と電気的に接続され、前記電気的負荷に供給する直流電圧を変更可能な直流電圧変更手段と、を備える電力受電装置における電力受電方法であって、前記送電部前記受電部との間において電力の授受が行われる際に、前記送電部の電流と前記受電部の電流との電流位相差が180度に近づくように、前記直流電圧変更手段から前記電気的負荷に供給される前記直流電圧を制御する制御工程を備える。
【0027】
本発明の電力受電方法は、上述した本発明の電力受電装置と同様に、電気的負荷が、例えばバッテリ等の充電状態に応じて負荷が変化するものであっても、漏洩電磁界を適切に低減することができる。
【0028】
尚、本発明の電力受電方法においても、上述した、本発明の電力受電装置に係る各種態様と同様の各種態様を採ることができる。
【0029】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態に係る非接触給電装置の構成を示すブロック図である。
図2】比較例に係る非接触給電装置の等価回路図である。
図3】駆動周波数と1次コイル及び2次コイルの電流位相差との関係の一例、並びに、各々の駆動周波数の電流位相の一例、である。
図4】電流位相差と漏洩電磁界強度との関係の一例を示す特性図である。
図5】ωkL≦Zの場合の1次コイル及び2次コイル間の電流位相差、並びに入力電流位相各々と、周波数との関係の一例である。
図6】ωkL>Zの場合の1次コイル及び2次コイル間の電流位相差、並びに入力電流位相各々と、周波数との関係の一例である。
図7】ωkL>>Zの場合の1次コイル及び2次コイル間の電流位相差、並びに入力電流位相各々と、周波数との関係の一例である。
図8】第1実施形態に係る非接触給電装置の等価回路図である。
図9】ωkL>>Z´の場合の1次コイル及び2次コイル間の電流位相差、並びに入力電流位相各々と、周波数との関係の一例である。
図10】第2実施形態に係る非接触給電装置の構成を示すブロック図である。
図11】第3実施形態に係る非接触給電装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の電力受電装置に係る実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0032】
<第1実施形態>
本発明の電力受電装置に係る第1実施形態について、図1乃至図9を参照して説明する。
【0033】
(非接触給電装置の構成)
先ず、本実施形態に係る非接触給電装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る非接触給電装置の構成を示すブロック図である。
【0034】
図1において、非接触給電装置は、電力送電装置101と、電力受電装置105と、を備えて構成されている。非接触給電装置は、電力送電装置101と電力受電装置105との間における、例えば電磁誘導、磁界共鳴等によって非接触で電力を、電力送電装置101から電力受電装置105へ供給して、例えばバッテリ等の電気的負荷に電力を供給する装置である。
【0035】
電力送電装置101は、直流電源102、1次共振コンデンサ103、1次コイル(アンテナ)104、インバータ110及び共振周波数検出装置111を備えて構成されている。直流電源102とインバータ110とにより、1次コイル104に高周波交流電力が供給される。尚、電力送電装置101は、直流電源102及びインバータ110に代えて、高周波交流電源を備えていてもよい。
【0036】
電力受電装置105は、2次コイル(アンテナ)106、2次共振コンデンサ107、DC/DCコンバータ108、電気的負荷109及び制御装置112を備えて構成されている。DC/DCコンバータ108は、例えば整流器(図示せず)により変換された直流電力に係る直流電圧を、例えば昇圧又は降圧等することにより、電気的負荷109に供給される直流電圧を変更(制御)する。
【0037】
本実施形態に係る「1次コイル104」、「2次コイル106」及び「DC/DCコンバータ108」は、夫々、本発明に係る「送電部」、「受電部」及び「直流電圧変更手段」の一例である。
【0038】
(比較例)
ここで、比較例に係る非接触給電装置を参照して、共振周波数の特性について説明する。
【0039】
先ず、比較例に係る非接触給電装置について、図2を参照して説明する。図2は、比較例に係る非接触給電装置の等価回路図である。
【0040】
図2において、1次コイル及び2次コイル各々のインダクタンスを“L”とする。1次コイル及び2次コイル間の結合係数を“k”とする。1次コイル及び2次コイル間の相互インダクタンスは、“kL”と表わされる。リーケージインダクタンス(漏洩インダクタンス)は、“(1−k)L”と表わされる。1次側共振コンデンサのキャパシタンス及び2次側共振コンデンサのキャパシタンス各々を“C”とする。電気的負荷に係る負荷インピーダンスを“Z”とする。
【0041】
このような非接触給電装置において、駆動周波数を変化させた際の、1次コイル及び2次コイル間の電流位相差と、1次コイル及び2次コイル各々における電流位相と、を図3を参照して説明する。図3は、駆動周波数と電流位相差との関係の一例、並びに、1次コイル及び2次コイル各々の電流位相の一例、である。尚、図3において“f0”は、2次コイルと2次側共振コンデンサの共振周波数(以下、2次側自己共振周波数と呼ぶ)である。
【0042】
駆動周波数が、2次側自己共振周波数f0と等しい場合には、1次コイル及び2次コイル各々の電流位相は、図3(c)のようになり、その電流位相差は90度となる(図3(a)参照)。駆動周波数が、2次側自己共振周波数f0よりも小さい場合には、1次コイル及び2次コイル各々の電流位相は、図3(b)のようになり、その電流位相差は90度未満となる(つまり、90度よりも同相側になる)(図3(a)参照)。他方、駆動周波数が、2次側自己共振周波数f0よりも大きい場合には、1次コイル及び2次コイル各々の電流位相は、図3(d)のようになり、その電流位相差は90度より大きくなる(つまり、90度よりも逆位相側になる)(図3(a)参照)。
【0043】
次に、1次コイル及び2次コイル間の電流位相差と、漏洩電磁界強度との関係について、図4を参照して説明する。図4は、電流位相差と漏洩電磁界強度との関係の一例を示す特性図である。
【0044】
図4に示すように、電流位相差が180度(つまり、逆位相)に近づくほど、漏洩電磁界の強度が減少することがわかる。このことから、電流位相差が180度付近となるような駆動周波数で、非接触給電装置を駆動することにより、漏洩電磁界の効果的な低減を図ることができる。
【0045】
ところで、電力送電装置から電力受電装置への効率的な電力伝送を図る場合、駆動周波数を、非接触給電装置に係る共振周波数(本発明に係る“総合共振周波数”に対応)に設定する必要がある。非接触給電装置に係る共振周波数について、図5乃至図7を参照して説明を加える。図5乃至図7は、1次コイル及び2次コイル間の電流位相差、並びに入力電流位相各々と、周波数との関係の一例を、励磁リアクタンスと負荷インピーダンスとの関係毎に示す図である。
【0046】
図5に示すように、負荷インピーダンスZが、励磁リアクタンスωkL以上である場合、共振点(即ち、入力電流位相が“0deg”となる周波数)は、2次側自己共振周波数f0のみである。
【0047】
他方、図6に示すように、負荷インピーダンスZが、励磁リアクタンスωkLより小さい場合、共振点は、2次側自己共振周波数f0に加え、周波数f(0+θ)及び周波数f(0−θ)の3点となる。この場合、駆動周波数を周波数f(0+θ)とすれば、1次コイル及び2次コイル間の電流位相差が180度に近づくので、漏洩電磁界を低減することができる。
【0048】
更に、図7に示すように、負荷インピーダンスZが、励磁リアクタンスωkLより非常に小さい場合、周波数f(0+θ)に対応する1次コイル及び2次コイル間の電流位相差は、図6に示した場合によりも180度に近づき、漏洩電磁界をより低減することができる。
【0049】
ところで、1次コイル及び2次コイル間の結合係数kは、例えば1次コイル及び2次コイル間のギャップ等の影響を受け変化する。また、例えばバッテリのように、その充電状態に応じて電流・電圧が変動する電気的負荷は、給電時に負荷インピーダンスZが変動する。このため、例えばバッテリに電力を供給する際に、駆動周波数を固定すると、漏洩電磁界を低減することはできるが、バッテリの充電状態に応じて無効電力が増加する可能性がある。他方、例えばバッテリに電力を供給する際に、該バッテリの充電状態に応じて駆動周波数を変化させると、無効電力の増加を抑制することはできるが、漏洩電磁界の低減が困難になる可能性がある。
【0050】
(第1実施形態に係る非接触給電装置の動作)
そこで、本願発明者は、励磁リアクタンスωkLと負荷インピーダンスZとの関係に着目した。本実施形態では、負荷インピーダンスZに代えて、図8に示すように、DC/DCコンバータ108(図1参照)に係るインピーダンスと、電気的負荷109(図1参照)に係る負荷インピーダンスZとの合成インピーダンスZ´を用いる。尚、図8は、第1実施形態に係る非接触給電装置の等価回路図である。
【0051】
合成インピーダンスZ´が、励磁リアクタンスωkLよりも非常に小さい場合、図9に示すように、共振点は、2次側自己共振周波数f0、周波数f(0+θ)及び周波数f(0−θ)の3点となる。そして、周波数f(0+θ)に対応する1次コイル及び2次コイル間の電流位相差は、180度に近い値となる。つまり、負荷インピーダンスZに代えて、合成インピーダンスZ´を用いた場合も、負荷インピーダンスZと同様の傾向を示すことがわかる。
【0052】
従って、負荷インピーダンスZや結合係数kに変化が生じた場合であっても、励磁リアクタンスωkLと合成インピーダンスZ´との関係が所定の状態を維持するように、DC/DCコンバータ108を制御すれば、漏洩電磁界を低減しつつ、無効電力の増加を抑制して効率的な電力伝送を実施することができる。
【0053】
具体的には、電力受電装置105の制御装置112は、例えば無線通信により、電力送電装置101の共振周波数検出装置111により検出された、インバータ110の共振周波数を取得する。
【0054】
尚、共振周波数検出装置111は、例えば、インバータ110の電流位相及び電圧位相各々を検出し、該検出された電流位相及び電圧位相の位相差から、インバータ110の共振周波数を推定すればよい。
【0055】
制御装置112は、取得されたインバータ110の共振周波数に基づいて、共振点(本発明に係る“総合共振周波数”に対応)を推定する。尚、共振点の推定方法には、公知の各種態様を適用可能であるので、説明の煩雑化を避けるため、ここでは説明を割愛する。
【0056】
次に、制御装置112は、推定された共振点に対応する、1次コイル104及び2次コイル106間の電流位相差が180度に近づくような合成インピーダンスZ´となるように、DC/DCコンバータ108を制御する。具体的には、制御装置112は、所望の合成インピーダンスZ´となるように、電気的負荷109に供給される直流電圧を変更するようにDC/DCコンバータ108を制御する。この結果、共振点が変化することに伴い、1次コイル104及び2次コイル106間の電流位相差を180度に近づけることができる。
【0057】
尚、1次コイル104及び2次コイル106間の電流位相差を180度に近づけるために、合成インピーダンスZ´を小さくし過ぎると、電流が増加することに起因して、2次コイル106における損失が増加し、電力伝送効率が低下する。また、コイルから発生する磁界が増加するため、漏洩電磁界が増加する(漏洩電磁界の低減効果が減少する)、ことが本願発明者の研究により判明している。このため、合成インピーダンスZ´に下限値を設ける、或いは、駆動周波数に上限値(図9における“fmax”参照)を設けることが望ましい。
【0058】
実践的には、電力受電装置105を、次のように構成すればよい。即ち、漏洩電磁界が許容範囲に収まるように、駆動周波数の範囲を設定する(例えば、図9における“fmin〜fmax”)。そして、推定された共振点が、該設定された駆動周波数の範囲の下限値よりも小さい場合は、制御装置112が、合成インピーダンスZ´を低くするようにDC/DCコンバータ108を制御する。他方、推定された共振点が、該設定された駆動周波数の範囲の上限値よりも大きい場合は、制御装置112が、合成インピーダンスZ´を高くするようにDC/DCコンバータ108を制御する。尚、駆動周波数の範囲は、非接触給電装置の仕様等に鑑みて、適宜設定すればよい。
【0059】
<第2実施形態>
本発明の電力受電装置に係る第2実施形態を、図10を参照して説明する。第2実施形態では、2次共振コンデンサが、2次コイルに電気的に並列に接続されている以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図10を参照して説明する。図10は、図1と同趣旨の、第2実施形態に係る非接触給電装置の構成を示すブロック図である。
【0060】
図10に示すように、電力受電装置105において、2次共振コンデンサ113は、2次コイル106に、電気的に並列に接続されている。
【0061】
本実施形態では、上述した第1実施形態とは異なり、合成インピーダンスZ´が励磁リアクタンスωkLよりも大きくなるほど、共振点に対応する1次コイル104及び2次コイル106間の電流位相差が180度に近くなる。
【0062】
このため、制御装置112は、例えば、推定された共振点が、該設定された駆動周波数の範囲の下限値(図9における“fmin”参照)よりも小さい場合、合成インピーダンスZ´を高くするようにDC/DCコンバータ108を制御する。他方、推定された共振点が、該設定された駆動周波数の範囲の上限値(図9における“fmax”参照)よりも大きい場合、制御装置112は、合成インピーダンスZ´を低くするようにDC/DCコンバータ108を制御する。
【0063】
<第3実施形態>
本発明の電力受電装置に係る第3実施形態を、図11を参照して説明する。第3実施形態では、電力受電装置がインピーダンス検出装置を備えている以外は、第2実施形態の構成と同様である。よって、第3実施形態について、第2実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図11を参照して説明する。図11は、図1と同趣旨の、第3実施形態に係る非接触給電装置の構成を示すブロック図である。
【0064】
図11に示すように、電力受電装置105は、電気的負荷109に係る負荷インピーダンスZを検出するインピーダンス検出装置114を備えて構成されている。
【0065】
ここで、本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、例えばガイドレール等により、1次コイル104及び2次コイル106間の相対位置を常に一定に保つことが可能な場合、1次コイル104及び2次コイル106間の結合係数kは一定となる(或いは、実践上一定とみなすことができる)。このため、結合係数kの変動を考慮しなくてよいので、負荷インピーダンスZの変動に応じて、合成インピーダンスZ´が、予め定められた値となるように、或いは、予め定められた範囲内に収まるように、DC/DCコンバータ108を制御すればよい。
【0066】
そこで、本実施形態では、制御装置112は、インピーダンス検出装置114により検出された負荷インピーダンスZに基づいて、合成インピーダンスZ´が、予め定められた値となるように、或いは、予め定められた範囲内に収まるように、DC/DCコンバータ108を制御する。
【0067】
尚、「予め定められた値」は、共振点に対応する1次コイル104及び2次コイル106間の電流位相差が180度近傍となり、且つ、漏洩電磁界が許容範囲となるような値である。同様に、「予め定められた範囲」は、共振点に対応する1次コイル104及び2次コイル106間の電流位相差が180度近傍となり、且つ、漏洩電磁界が許容範囲となるような範囲である。
【0068】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電力受電装置及び電力受電方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
101…電力送電装置、102…直流電源、103…1次共振コンデンサ、104…1次コイル、105…電力受電装置、106…2次コイル、107、113…2次共振コンデンサ、108…DC/DCコンバータ、109…電気的負荷、110…インバータ、111…共振周波数検出装置、112…制御装置、114…インピーダンス検出装置
図1
図2
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図4
図5
図6
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図8
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図10
図11