(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852230
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】ハンドルと鍋との間の解放可能な接続部および前記接続部を備えた鍋
(51)【国際特許分類】
A47J 45/07 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
A47J45/07 A
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-510894(P2014-510894)
(86)(22)【出願日】2011年8月23日
(65)【公表番号】特表2014-516684(P2014-516684A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】IB2011053690
(87)【国際公開番号】WO2012156787
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2014年5月30日
(31)【優先権主張番号】MI2011A000841
(32)【優先日】2011年5月13日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】511151581
【氏名又は名称】ジービービー エスアールエル
【氏名又は名称原語表記】GBB SRL
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュセッペ ボガーニ
【審査官】
大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】
独国実用新案第202009017496(DE,U1)
【文献】
国際公開第2009/019594(WO,A2)
【文献】
実公昭43−025550(JP,Y1)
【文献】
実公昭36−010166(JP,Y1)
【文献】
実開昭62−033724(JP,U)
【文献】
特表2003−503087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 45/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴(16)を備えるとともに鍋の本体から横方向に突出するように作られたブラケットと、ハンドル上に配置されるように作られた係合メカニズムとを備え、前記係合メカニズムが、前記穴(16)に挿入される係合歯(17)と、第1のカム面(23)をそれに対応する前記穴(16)の縁部(15)に押し付けるために係止位置へと回転可能であるカム要素(19)とを備え、前記カム要素(19)によって前記ブラケット(11)の部品(21)を前記第1のカム面(23)と前記第1のカム面(23)に面する前記係合メカニズムの突出部(20)との間で圧締めする、鍋とハンドルとの間の解放可能な接続部であって、前記第1のカム面を滑動させるとともに前記第1のカム面により前記穴の前記縁部(15)に押し付けることができる弾性ストリップ(40)であって、前記弾性ストリップが全体的にU字形であり、前記U字の一方のアームの端部(41)が自由であって、前記第1のカム面とそれに対応する前記穴の前記縁部との間で弾性的に配置され、U字の他方のアームが前記係合メカニズムに固定された端部(42)を有する弾性ストリップが、前記第1のカム面(23)とそれに対応する前記穴の前記縁部(15)との間に配置されることを特徴とする接続部。
【請求項2】
前記ストリップが鋼で作られることを特徴とする請求項1に記載の接続部。
【請求項3】
前記ブラケット(11)がアルミニウムで作られることを特徴とする請求項1に記載の接続部。
【請求項4】
前記カム要素(19)が、係止位置では前記第1のカム面(23)が前記ストリップを介して押し付ける前記ブラケット部(21)の下方に配置される段差(26)を、前記第1のカム面(23)の下方に有することを特徴とする請求項1に記載の接続部。
【請求項5】
前記カム要素(19)が、前記ハンドルの頂部で目に見えるように配置されるように作られた回転部(18)に、ピンを用いて接続されることを特徴とする請求項1に記載の接続部。
【請求項6】
前記係合メカニズムが、前記係合歯(17)を形成する前部と前記突出部(20)を形成する後部とを備えた、切断され折り曲げられた金属薄板プレート(25)を備えることを特徴とする請求項1に記載の接続部。
【請求項7】
前記係止位置にある前記カム面(23)と前記突出部(20)との間の距離が、圧締めしなければならない前記ブラケットの前記部品(21)の幅よりも狭く、前記カム面が前記係止位置へと回転できるように、前記突出部(20)が弾性的に可縮性であるようにされる請求項1に記載の接続部。
【請求項8】
先行する請求項のいずれか一項に記載のハンドルと鍋との間の解放可能な接続部を備える、取外し可能なハンドルを備えた鍋であって、前記接続部の前記ブラケットが前記鍋本体との一個片として形成されることを特徴とする鍋。
【請求項9】
前記ブラケットおよび前記鍋本体がアルミニウムで作られることを特徴とする請求項8に記載の鍋。
【請求項10】
前記ブラケット(11)が、前記鍋(12)の縁部の少なくとも一部分を外側に折り曲げたものとして形成されることを特徴とする請求項8に記載の鍋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋用の取外し可能なハンドル、および比較的軟質の材料で作られたかかるハンドルを備えた鍋、ならびにハンドルと鍋との間の強度を改善した分離可能な接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドルと鍋の間の分離可能な接続部が、当該分野において知られている。かかるタイプの接続部の一例が、特許文献1で例証されている。かかる接続部は、一旦接続部が完成するとハンドルの強固な固定を達成するために、回転カムの2つの対向面間の反応を利用する。このシステムは、完全に堅牢ではない接続をもたらす遊びが存在し、それによって若干の不安定さをユーザが感じることがないようにするため、必然的に、許容差が非常に小さいものであることを要する。遊びの量が非常に小さいことが求められるため、接続部の製造には比較的コストがかかり、接続が行われるごとに最終的な調節を要することがある。
【0003】
特許文献2は、カムがそれに接して反応する弾性部を提供することを提案している。このように、固定システムの弾性によって、安定した遊びなしの接続部が担保される。
【0004】
既知の回転カムシステムに残っている1つの欠点は、回転中、ハンドル上に存在するカムが、鍋から突出しているブラケットに形成された反応面に接して滑動することである。カムおよびブラケットが同じ硬度の金属で作られていない場合、この滑動作用によって、長期的には2つの表面の一方が損傷することになる。これによって、接続部および部分的に係合された部品の剛性が両方とも弱化して、ハンドルの挿入および解放が困難になる。強度に関連する明白な理由のため、通常、カムは鋼などの硬金属で作られ、したがってブラケットは同様に、等しく硬質な金属で作らなければならない。したがって、ブラケットは通常、鍋に使用される材料の選択に条件を付けないように、適切な材料で作られ、次に鍋に固定される。
【0005】
しかし、別個のブラケットを使用しないようにするか、またはさらには、材料の選択肢がより広くできるようにしてブラケットを製造することが好ましい場合が多い。上述の理由で、カムタイプの係止システムを用いることが常に可能とは限らず、したがって取外し可能なハンドルを使用する手間が省かれる場合が多い。例えば、アルミニウム鍋の場合、既知のシステムでは、取外し可能なハンドルのための係合座部(engaging seat)を有する単一片の鍋を製造することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP1,121,041
【特許文献2】EP2,173,225
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の全体的な目的は、係止カムの回転に対する係合座部の抵抗に関する制約を何ら伴わずに、頑丈で信頼性の高い接合を担保するとともに堅固さという快適な感覚をユーザに与える、分離可能な接続部を提供することによって、上述の欠点を克服することである。
【0008】
この目的を考慮して、本発明にしたがって想起された着想は、穴を備えるとともに鍋の本体から横方向に突出するように作られたブラケットと、ハンドル上に配置されるように作られた係合メカニズムとを備え、係合メカニズムが、前記穴に挿入される係合歯と、第1のカム面をそれに対応する前記穴の縁部に押し付けるために係止位置へと回転可能であるカム要素とを備え、それによってブラケットの部品を前記第1のカム面とそれに面する係合メカニズムの突出部との間で圧締めする、鍋とハンドルとの間の解放可能な接続部であって、カムを滑動させるとともに穴の縁部に押し付けることができるストリップが、前記第1のカム面とそれに対応する穴の縁部との間に配置されることを特徴とする、接続部を提供することである。
【0009】
本発明の革新的な原理、および従来技術と比較した本発明の利点をより明白に例証するため、これらの原理を適用する実施形態の可能な一例について、添付図面を用いて以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の解放位置にある、本発明にしたがって設計されたハンドル接続メカニズムを備えた鍋の部分縦断面図である。
【
図3】
図1および2のものに類似した、ただし接続メカニズムが係止位置にある図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照すると、全体として10で示され、本発明にしたがって設計された接続部は、鍋の本体12から横方向に突出する第1の部品またはブラケット11と、ハンドル14に固定された第2の部品または係合メカニズム13とを備える。鍋およびハンドルは、任意の既知の形状を有してもよく、これ以上詳細には例証も説明もしないものとする。
【0012】
ブラケット11は、歯または縁部17を受け入れる係合穴16を有し、その歯または縁部は、第2の部品13のプレート25(有利には、金属薄板からスタンピングされ切断される)から前方に突出するとともに、ブラケット15の下面上に配置されるように下方にずれている。
【0013】
メカニズム13はまた、ピン27を介して操作部またはレバー18によって回転操作されるカム要素19を備える。有利には、ピン27は金属プレート30上にリベット締めされ、その上に、例えばプラスチックで作られた操作部18がスナップ係合される。歯31は、特別に設けられる溝付き座部32内部での回転に対する移動終点(end−of−travel)の停止部を形成してもよい。
【0014】
メカニズムは、様々な部品を支持する本体43を有する。この本体43およびハンドル14は、一個片としてプラスチックから、または互いに接合された2つの部品として作られてもよい。係合メカニズム13は、プレート25上に、係合歯17の反対側に載置されるとともに、ブラケット11の末端の縁部または区域21に対する停止部を形成するように意図された後方突出部20を有する。
【0015】
カムは、係合メカニズムをブラケット内部で係止し、ハンドルと鍋本体との間で堅固な接続を形成するように、(
図1、2および3、4の比較から分かるように)カムを
図3および4に示される係止位置へと回転させたときに、歯17の係合縁部の反対側にある穴の縁部15を押すことが意図された、第1のカム面または能動端部23を備える。
【0016】
カムの能動面上では、カムはまた、係止位置にあるときに、前方の歯17と同じようにしてブラケット11の下方で係合される、突出する歯26を有する。このように、カムが
図3および4に示される係止位置にあるとき、ハンドルが引き抜かれるのが防止される。カムが
図1および2に示される非係止位置にあるとき、ハンドルは、ブラケットに対して上向きに傾いてもよく、歯17が穴16から引き抜かれ、それによってハンドルが鍋本体から分離されてもよい。逆の移動によってハンドルが鍋本体と再係合される。
【0017】
図2でもはっきりと分かるように、有利には鋼で作られ、カム操作面を滑動させるとともに、穴の縁部15に押し付けることができるストリップ40は、カムの第1の面23とそれに対応する穴の縁部15との間に配置される。このストリップは、有利には、
図1、2と3、4とを比較するとはっきりと分かるように、カムを係止位置へと回転させたとき、カムによって穴の縁部に弾性的に押し付けられるように、弾性であってもよい(好ましくは、ばね鋼で作られる)。このように、ストリップは解放作用と干渉せず、その反対に、操作しなければならない時までカムを非係止位置で保持するのを助けることができる。
【0018】
図1ではっきりと分かるように、有利には、弾性ストリップは全体的にU字形であり、U字の一方のアームの端部41は自由であって、前記第1のカム面とそれに対応する穴の縁部との間で弾性的に配置され、U字の他方のアームはメカニズムに固定された端部42を有する。特に、この第2の端部42は、ある角度で折り曲げられ、メカニズムの支持本体43の表面とプレート25との間で捕捉される。U字形のストリップは、有利には、本体43内に形成された座部44に収容される。
【0019】
ストリップが存在することにより、カムを回転させたときにハンドルを係止するためにブラケット内の座部または穴16に作用する力は、滑動力ではなく単に押す力であるが、それは、カムの滑動が、最小限の摩擦で滑動に対抗するのに適した材料で作られた、ストリップ上でのみ行われるためである。したがって、係止システムの操作を繰り返すことによってブラケット材料が磨耗するリスクはない。
【0020】
ブラケットは、したがって、カムの材料の硬度に匹敵する硬度を有する必要なしに、最も有利であると考えられる材料で作られてもよい。例えば、ブラケットは有利にはアルミニウムで作られてもよい。
【0021】
さらにより有利には、記載される構造により、ハンドル14と鍋本体12との間に本明細書に記載するような解放可能な接続部を備え、接続部のブラケット11が鍋本体との一個片として形成される、取外し可能なハンドルを備えた鍋を提供することが可能である。したがって、係止カムを繰返し操作することによって接続座部が磨耗して、接合部が緩み、長期的にはシージングを引き起こすとともに係合/係脱を妨げることになるリスクなしに、アルミニウムで作られたブラケット11および鍋本体12を備えた鍋を提供することが可能である。
【0022】
採用される解決策によれば、接続部の全体構造を修正する必要はなく、精密な接続を担保するさらなる手法として、やはり図面からはっきりと分かるように、弾性反応面(resilient reaction surface)が有利に使用されてもよい。
【0023】
実施形態のこの有利な変形例によれば、カム要素の能動端部23(カムが
図3および4に示される係止位置にあるとき)と要素25の突出後部20との間の距離は、有利には、カムと突出部20との間で圧締めしなければならないブラケット部21の幅よりもわずかに短い。突出部20は、カムを係止位置または圧締め位置へと回転させる間、適切に逸脱するように、弾性的に可縮性であるようにされる。可縮弾性は、カムを手動で回転させることを可能にするが、それと同時に鍋の通常の使用中におけるハンドルと鍋との間の遊びを防ぐように選択される。
【0024】
部品20の可撓性は様々なやり方で達成されてもよい。例えば、プレート25の残りの部分よりも薄い部分を設けるか、または横断方向もしくは長手方向のアンダーカットや切込みを部品20に設けることが可能であり、あるいは、この部品は、プレート25に対して弾性的に可縮性である別の材料(例えば、ばね鋼)で作られてもよい。部品20はまた、ハンドルに対して横断方向で間隔を空けられ、かつ比較的薄い2つの舌部を、プレートから切り出すことによって作られてもよい。
【0025】
現段階で、予め定義された目的がどのように達成されているかは明白である。非係止位置では、ハンドルを簡単に鍋と係合し、または鍋から係脱することができ、その一方で、カムを滑動させることで係合ブラケットに影響を及ぼすことなく、単にレバー18を係止位置へと回転させることによって、安定した接続が担保される。ストリップはシージングを防ぎ、その弾性的な移動はまた、カムの精密な双安定操作を担保して、ハンドルがブラケットに取り付けられていないときのカムおよび操作レバーの制御されない振動回転を防ぐ助けとなってもよい。
【0026】
ブラケットが取り付けられる代わりに、本発明の原理にしたがって一個片として作られる鍋は、コストがより低く、審美的により魅力があり、また、従来技術では起こり得たように時間に伴って緩むことがある、ブラケットを固定するためのリベットなどの部品を有さない。さらに、鍋は全体的にアルミニウムで作ることができ、当業者には良く知られているすべての利点を伴う。図面に概略的に示されるように、ブラケットは、有利には、単純かつ低コストなやり方で、鍋の縁部の少なくとも一部分を外側に折り曲げたものとして形成されてもよい。これによってまた、ブラケットが取り付けられた鍋の従来の設計に対する依存度がより少なくなる。
【0027】
当然ながら、本発明の革新的な原理を適用する実施形態の上述の説明は、これらの革新的な原理の例として提供されており、したがって、本明細書で請求される権利の範囲を限定するものとして見なすべきではない。例えば、様々な部品の形状およびサイズは、特定の要件に応じて変わることが明白なことがある。ハンドル自体は任意の形状を有してもよく、必ずしも長い形態でなくてもよく、同様に、鍋およびブラケットを備えた鍋の縁部は、様々な形態をしていてもよい。ストリップの弾性はまた、当業者であれば簡単に想像できるように、メカニズムに枢動可能に取り付けられ、適切なばねによってカム面に押し付けられる剛性ストリップを用いて得られてもよい。本発明による解決策は、アルミニウム鍋の場合に特に有利であることが見出されているが、鋼、鉄などの他の材料が使用されてもよい。