(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転軸線を中心として回転するロータ本体、及び該回転軸線が延びている軸方向に並んで該ロータ本体に固定されている複数の動翼段を有するロータと、複数の動翼段のそれぞれの上流側に配置されている複数の静翼段と、該ロータを覆うと共に複数の該静翼段が内周側に取り付けられているケーシングと、を備え、
前記ケーシングは、前記回転軸線を中心として環状を成し、一つの前記動翼段及び一つの前記静翼段を覆う複数の翼環部と、前記回転軸線を中心として環状を成し、前記翼環部の内周側で且つ前記動翼段の外周側であって、複数の前記静翼段の相互間に配置される複数の分割環と、前記静翼段の上流側又は下流側に配置される前記分割環を取り付けるための複数の遮熱環と、を備えているガスタービンにおいて、
前記軸方向で互いに隣り合っている二以上の前記翼環部は一体形成された合体翼環を成し、
複数の前記遮熱環のうちで所定遮熱環には、前記分割環と前記静翼段とのうちで該所定遮熱環の上流側に配置された上流側部材が取り付けられると共に、該分割環と該静翼段とのうちで該所定遮熱環の下流側に存在する下流側部材が取り付けられ、
前記ケーシングは、さらに、
前記所定遮熱環の上流側に配置されて、前記翼環部に取り付けられ、該所定遮熱環と前記上流側部材とのうちの少なくとも一方の被押付部材を下流側に押す押付部材を備えているガスタービン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ガスタービンの第一静翼段及び第二静翼段を一体化して、一体化した翼環と動翼との間のクリアランスを制御して、ガスタービンの性能をより一層向上させる方法が採用されている。
【0008】
上記特許文献1に記載のガスタービンのケーシングでは、上流側の部品から順次下流側の部品を組み付け、最終的に、最下流側の固定リングをボルトにより上流側に移動固定することで、各部品間の弾性メタルパッキンを圧縮しつつ、各部品を上流側に押付けて固定している。
【0009】
しかしながら、第一段用の翼環と第二段用の翼環とを一体的にすると、一体になった翼環の軸方向中央近傍に配置する遮熱環(例えば、第一静翼と第二静翼との間の第一分割環と、第二静翼との境に位置する遮熱環)を組み付ける際に、この遮熱環を軸方向又は周方向から組み込んで、この遮熱環を翼環に固定することが難しい。
【0010】
すなわち、従来技術では、第一段用の翼環と第二段用の翼環とを一体的にすると、遮熱環、分割環及び静翼等を軸方向又は周方向から組み付けることが難しく、ケーシングの組立が困難であるという問題点がある。
【0011】
そこで、本発明は、複数の翼環部を一体化したケーシングの組立性を確保することができるガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するための発明に係るガスタービンは、
回転軸線を中心として回転するロータ本体、及び該回転軸線が延びている軸方向に並んで該ロータ本体に固定されている複数の動翼段を有するロータと、複数の動翼段のそれぞれの上流側に配置されている複数の静翼段と、該ロータを覆うと共に複数の該静翼段が内周側に取り付けられているケーシングと、を備え、
前記ケーシングは、前記回転軸線を中心として環状を成し、一つの前記動翼段及び一つの前記静翼段を覆う複数の翼環部と、前記回転軸線を中心として環状を成し、前記翼環部の内周側で且つ前記動翼段の外周側であって、複数の前記静翼段の相互間に配置される複数の分割環と、前記静翼段の上流側又は下流側に配置される前記分割環を取り付けるための複数の遮熱環と、を備えているガスタービンにおいて、
前記軸方向で互いに隣り合っている二以上の前記翼環部は一体形成された合体翼環を成し、
複数の前記遮熱環のうちで所定遮熱環には、前記分割環と前記静翼段とのうちで該所定遮熱環の上流側に配置された上流側部材が取り付けられると共に、該分割環と該静翼段とのうちで該所定遮熱環の下流側に存在する下流側部材が取り付けられ、
前記ケーシングは、さらに、
前記所定遮熱環の上流側に配置されて、前記翼環部に取り付けられ、該所定遮熱環と前記上流側部材とのうちの少なくとも一方の被押付部材を下流側に押す押付部材と、
を備えている。
【0013】
当該ガスタービンによれば、複数の翼環部が一体形成されて合体翼環を成しても、所定遮熱環および上流側部材又は下流側部材を軸方向に押してパッキンのシール性が維持される。また所定遮熱環および上流側部材又は下流側部材を軸方向又は周方向から翼環部へ組付けることが容易になり、ケーシング全体の組立が容易になる。
【0014】
前記ケーシングは、軸方向の上流側から下流側に向かって、前記押付部材、前記所定遮熱環および前記翼環部のうち前記所定遮熱環の外周面より更に径方向の内側に延びる下流側壁の順に配置された構造を備え、前記所定遮熱環を軸方向から前記押付部材および前記下流側壁で挟む構造を備えていてもよい。
【0015】
この場合、軸方向の上流側から押付部材と下流側壁で所定遮熱環を挟み、所定遮熱環が押付部材により軸方向の下流側に押され、所定遮熱環が翼環部に押し付けられるので、所定遮熱環と上流側部材または下流側部材の間に挿入されたパッキンを圧縮することができる。また所定遮熱環の軸方向の位置が固定されるので、ガスタービンの安定運転が可能である。
【0016】
前記翼環部は、前記所定遮熱環の軸方向の上流側に隣接して、前記所定遮熱環の外周面より更に径方向内側に伸びる上流側壁を備え、前記上流側壁には前記押付部材が軸方向に貫通する貫通溝が設けられていてもよい。
【0017】
この場合、上流側壁に設けられた貫通溝を介して、押付部材を軸方向の上流側から挿入して、遮熱環に押付けることができる。従って、押付部材の軸方向からの取付けが容易になり、上流側から遮熱環を下流側壁に押付けることができ、パッキンのシール性が維持できる。
【0018】
また、前記ケーシングには、前記翼環部の内周側の前記所定遮熱環の軸方向の上流側であって、前記所定遮熱環の外周面を上面として径方向の内側に環状の空間が形成されていてもよい。
【0019】
この場合、所定遮熱環の軸方向の上流側で翼環部の径方向の内側であって、遮熱環の外周面から径方向の内側に環状の空間が設けられているので、所定遮熱環および押付部材を軸方向から容易に取り付けることができる。
【0020】
また、前記所定遮熱環には、前記所定遮熱環の上流側に配置されている前記押付部材が径方向に摺動可能なガイド部が形成され、前記翼環部の内周側には、径方向外側に向かって凹み、前記所定遮熱環が入り込むと共に前記押付部材が入り込む遮熱環溝が形成され、
前記押付部材は、径方向内側から前記遮熱環溝に入れられて、前記翼環部に取り付けられていてもよい。
【0021】
この場合、前記押付部材には、軸方向下流側に突出して前記所定遮熱環の前記ガイド部と係合するガイド突起部が形成され、前記所定遮熱環における径方向外側の部分であって、前記遮熱環溝に入り込む被取付部の径方向の頂部厚さの寸法が、前記遮熱環溝における軸方向の最大溝幅の寸法より、少なくとも前記ガイド突起部の軸方向の長さ分短くてもよい。
【0022】
この場合、所定遮熱環の被取付部の軸方向頂部厚さが、少なくとも遮熱環溝の軸方向の最大溝幅より頂部突起の軸方向突出長さだけ短くしてあれば、所定遮熱環を軸方向から着脱できるので、所定遮熱環と上流側部材または下流側部材との間のパッキンを軸方向から挿入でき、挿入時にパッキンの表面を損傷するおそれがない。
【0023】
また、前記遮熱環溝の上流側壁には、径方向外側に向かうに連れて次第に下流側に向かう傾斜面が形成されていてもよい。
【0024】
この場合、押付部材を遮熱環溝に押し入れる過程で、移動ガイド部としての傾斜面により、押付部材は径方向外側に移動しつつ下流側に移動させることができるので、押付部材の遮熱環への押付力が一層大きくなり、パッキンのシール性能が更に向上する。
【0025】
また、前記ガスタービンにおいて、前記所定遮熱環は、複数の遮熱片を有し、前記複数の遮熱片は、周方向に並んで環状を成すことで該所定遮熱環を構成し、前記複数の前記遮熱片には、それぞれ、前記押付部材で前記周方向を向く面に対向して、該押付部材の該周方向の相対移動を規制する周方向対向面が形成されていてもよい。
【0026】
当該ガスタービンでは、遮熱片の押付部材に対する周方向の相対移動が規制されるため、押付部材を翼環部(合体翼環)に固定することで、遮熱片の周方向の位置決めを行うことができる。
【0027】
また、前記ガスタービンにおいて、前記上流側部材は、複数の上流側部材片を有し、複数の上流側部材片は、周方向に並んで環状を成し、複数の上流側部材片には、それぞれ、前記押付部材で前記周方向を向く面に対向して、前記押付部材の前記周方向の相対移動を規制する周方向対向面が形成されていてもよい。
【0028】
当該ガスタービンでは、上流側部材片が押付部材に対する周方向の移動が規制されるため、押付部材を翼環部に固定することで、上流側部材片の周方向の位置決めを行うことができる。
【0029】
また、前記ガスタービンにおいて、前記上流側部材は、複数の上流側部材片を有し、複数の上流側部材片は、周方向に並んで環状を成し、前記所定遮熱環に対する前記上流側部材片の前記周方向の相対移動を規制する周方向規制部材を備え、前記所定遮熱環及び前記上流側部材片には、それぞれ、前記周方向規制部材の互い異なる部分が入り込み、該周方向規制部材の前記周方向の相対移動を規制する凹部が形成されていてもよい。
【0030】
当該ガスタービンでは、周方向規制部材を所定遮熱環の凹部及び上流側部材片の凹部に入れることで、所定遮熱環に対する上流側部材片の周方向の位置決めを行うことができる。
【0031】
また、前記ガスタービンにおいて、前記下流側部材は、複数の下流側部材片を有し、複数の下流側部材片は、周方向に並んで環状を成し、前記翼環部に対する前記下流側部材片の前記周方向の相対移動を規制する周方向規制部材を備え、前記翼環部及び前記下流側部材片には、それぞれ、前記周方向規制部材の互い異なる部分が入り込み、該周方向規制部材の前記周方向の相対移動を規制する凹部が形成されていてもよい。
【0032】
当該ガスタービンでは、周方向規制部材を翼環部の凹部及び下流側部材片の凹部に入れることで、翼環部に対する下流側部材片の周方向の位置決めを行うことができる。
【0033】
また、前記押付部材は、ボルト頭部と、一方の端部が該ボルト頭部に固定され、少なくとも他方の端部側に雄ネジが形成されている軸部と、を有するボルトにより、前記翼環部に取り付けられ、前記押付部材、前記翼環部、及び前記所定遮熱環には、それぞれ前記軸方向に貫通して互いに連通し、前記ボルトの軸部が入り込む貫通孔が形成され、
前記押付部材と前記翼環部とのうちの一方の前記貫通孔の内周面には、前記ボルトの前記雄ネジが螺合する雌ネジが形成されていてもよい。
【0034】
当該ガスタービンでは、押付部材と翼環部とのうちの一方の貫通孔の内周面に形成されている移動ガイド部としての雌ネジに、固定具であるボルトを捻じ込むことにより、押付部材を下流側に移動させつつ、押付部材及び所定遮熱環を合体翼環(翼環部)に固定することができる。
【0035】
また、前記押付部材は、ボルト頭部と、一方の端部が該ボルト頭部に固定され、少なくとも他方の端部側に雄ネジが形成されている軸部と、を有するボルトにより、前記翼環部に取り付けられ、前記ボルトの前記軸部が前記押付部材及び前記翼環部に係合してもよい。
【0036】
また、前記ガスタービンにおいて、前記上流側部材と前記所定遮熱環との間を、前記軸方向に弾性変形してシールするパッキンと、前記下流側部材と前記所定遮熱環との間を、該軸方向に弾性変形してシールするパッキンと、のうちの少なくとも一方のパッキンを備えていてもよい。
【0037】
当該ガスタービンでは、所定遮熱環又は上流側部材が下流側に移動する過程で、所定遮熱環と下流側部材又は上流側部材との間のパッキンが軸方向に弾性変形して、所定遮熱環と下流側部材又は上流側部材との間がシールされる。したがって、当該ガスタービンでは、パッキンをわざわざ軸方向に弾性変形させる手間を省くことができるので、容易に組み立てることができる。
【0038】
また、前記ガスタービンにおいて、前記二以上の翼環部のうち、第一翼環部には、複数の静翼段のうちの第一静翼段を構成する複数の第一静翼が取り付けられ、前記第一翼環部より下流側に配置されている第二翼環部には、前記第一静翼段よりも下流側に配置される第二静翼段を構成する複数の第二静翼が取り付けられ、
前記所定遮熱環は、複数の前記分割環のうち、前記第一静翼段と前記第二静翼段との間に配置される第一分割環の下流側部を前記第二翼環部に取り付けると共に、前記第二静翼の外側シュラウドにおける上流側部を前記第二翼環部に取り付ける第二上流側遮熱環を含み、前記上流側部材は前記第一分割環であり、前記下流側部材は前記第二静翼段であってもよい。
【0039】
この場合、前記所定遮熱環は、複数の前記分割環のうち、前記第二静翼段の下流側に配置される第二分割環の上流側部を前記第二翼環部に取り付けると共に、前記第二静翼の外側シュラウドにおける下流側部を前記第二翼環部に取り付ける第二下流側遮熱環を含み、前記上流側部材は前記第二静翼段であり、前記下流側部材は前記第二分割環であってもよい。
【0040】
さらに、前記所定遮熱環は、前記第一分割環の上流側部を前記第一翼環部に取り付けると共に、前記第一静翼の外側シュラウドにおける下流側部を前記第一翼環部に取り付ける第一下流側遮熱環を含み、前記上流側部材は前記第一静翼段であり、前記下流側部材は前記第一分割環であってもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明では、合体翼環であっても、ケーシングを容易に組み立てることができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係るガスタービンの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0044】
「第一実施形態」
まず、本発明に係る第一実施形態としてのガスタービンについて、
図1〜
図10を参照して説明する。
【0045】
本実施形態のガスタービンは、
図1に示すように、外気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機1と、燃料供給源からの燃料を圧縮空気に混合して燃焼させ、燃焼ガスを生成する複数の燃焼器2と、燃焼ガスにより駆動するタービン3と、を備えている。
【0046】
タービン3は、ケーシング4と、このケーシング4内で回転するロータ5とを備えている。ロータ5は、ロータ5の回転で発電する発電機(図示されていない。)と接続されている。なお、以下では、ロータ5の回転中心となる回転軸線Arが延びている方向を軸方向Daとする。また、回転軸線Arに対する径方向Drで、回転軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、回転軸線Arから遠ざかる側を径方向外側Droとする。さらに、燃焼ガスの流れの軸方向Daにおける上流側及び軸方向Daにおける下流側を、単に、上流側、下流側ということにする。
【0047】
ロータ5は、回転軸線Arを中心として、軸方向Daに延びているロータ本体6と、軸方向Daに並んでロータ本体6に固定されている複数の動翼段8と、を備えている。各動翼段8は、いずれも、回転軸線Arに対する周方向Dcに並んでいる複数の動翼9を有している。ロータ本体6は、各動翼段8毎に、動翼段8を構成する複数の動翼9が固定されるロータディスク7を有している。ロータ本体6は、この各動翼段8毎のロータディスク7が軸方向Daに並んで相互に接続されている。
【0048】
ケーシング4の内周側には、軸方向Daに並んだ複数の静翼段10が固定されている。各静翼段10は、いずれも、いずれかの動翼段8の上流側に配置されている。各静翼段10は、回転軸線Arに対する周方向Dcに並んでいる複数の静翼11を有している。
【0049】
ケーシング4は、
図2及び
図3に示すように、翼環部20と分割環30と遮熱環40と押付部材50とボルト60と遮蔽板90を備えている。翼環部20は、各段の静翼11及び動翼9を覆い、環状に形成された部材である。分割環30は、翼環部20の内周側で且つ動翼9の外周側であって、複数の静翼段10の相互間に環状に配置された部材である。遮熱環40は、静翼11や分割環30を翼環部20に取り付けるための環状に形成された部材である。押付部材50は、遮熱環40を下流側に押す部材であり、押付部材50を翼環部20にボルト(固定具)60で固定する。遮蔽板90は、分割環30の外周側であって翼環部20の内周側に配置される。また、ケーシング4は、翼環部20の外周を覆う環状の車室(不図示)を備えている。
【0050】
各静翼11は、径方向Drに延びる静翼本体12と、この静翼本体12の径方向外側Droに設けられている外側シュラウド13と、この静翼本体12の径方向内側Driに設けられている内側シュラウド18と、を有している。
【0051】
外側シュラウド13は、その上流側部から径方向外側Droに延びる上流側脚14(
図3)と、その下流側部から径方向外側Droに延びる下流側脚16と、を有している。上流側脚14の径方向外側端部には、上流側に向かって突出している上流側突起15が形成されている。また、下流側脚16の径方向外側端部には、下流側に向かって突出している下流側突起17が形成されている。
【0052】
各動翼9(
図2)は、径方向Drに延びる動翼本体9xと、この動翼本体9xの径方向内側Driに設けられているプラットホーム9yと、このプラットホーム9yの径方向内側Driに設けられている翼根(不図示)と、を有している。動翼9は、翼根がロータディスク7に埋め込まれて、このロータディスク7に固定されている。
【0053】
静翼11の内側シュラウド18と外側シュラウド13との間、及び動翼9のプラットホーム9yとこれに径方向Drで対向する分割環30との間は、燃焼器2からの高温高圧の燃焼ガスGが流れる燃焼ガス流路Pを成している。
【0054】
複数の静翼段10のうちで最上流の第一静翼段10aを構成する複数の第一静翼11aは、複数の翼環部20のうちの第一翼環部20aに取り付けられている。また、第一静翼段10aの下流側に配置される第二静翼段10bを構成する複数の第二静翼11bは、複数の翼環部20のうちの第二翼環部20bに取り付けられている。これら第一翼環部20aと第二翼環部20bとは、一体形成されて合体翼環20x(翼環部20)を成している。
【0055】
翼環部20には、第一静翼段10aを構成する複数の第一静翼11a、第二静翼段10bを構成する複数の第二静翼11bの他、第一静翼段10aと第二静翼段10bとの間に配置される第一分割環30aと、第二静翼段10bの下流側に配置される第二分割環30bとが取り付けられる。さらに、翼環部20は、固定ブロック49と第一下流側遮熱環40aと第二上流側遮熱環40bと第二下流側遮熱環40cと第三遮熱環40dを備えている。固定ブロック49は、第一静翼11aの外側シュラウド13の上流側部を翼環部20に取り付けるための部材である。第一下流側遮熱環40aは、第一静翼11aの外側シュラウド13の下流側部及び第一分割環30aの上流側部を翼環部20に取り付けるための部材である。第二上流側遮熱環40bは、第一分割環30aの下流側部及び第二静翼11bの外側シュラウド13の上流側部を翼環部20に取り付けるための部材である。第二下流側遮熱環40cは、第二静翼11bの外側シュラウド13の下流側部及び第二分割環30bの上流側部を翼環部20に取り付けるための部材である。第三遮熱環40dは、第二分割環30bの下流側部を翼環部20に取り付けるための部材である。
【0056】
第一下流側遮熱環40a、第二上流側遮熱環40b、第二下流側遮熱環40c及び第三遮熱環40dの翼環部20への取り付けには、これらの遮熱環40を下流側へ押す前述の押付部材50と、これを翼環部20に固定するための固定具としてのボルト60とが用いられる。
【0057】
翼環部20の第一翼環部20aの内周側には、第一静翼11a用の固定ブロック49が取り付けられる第一上流側取付部21eと、第一下流側遮熱環40a及び第一下流側押付部材50aが取り付けられる第一下流側取付部21aとが形成されている。また、翼環部20の第二翼環部20bの内周側には、第二上流側遮熱環40b及び第二上流側押付部材50bが取り付けられる第二上流側取付部21bと、第二下流側遮熱環40c及び第二下流側押付部材50cが取り付けられる第二下流側取付部21cと、第三遮熱環40d及び第三押付部材50dが取り付けられる第三取付部21dと、が形成されている。第一下流側取付部21a、第二上流側取付部21b、第二下流側取付部21c及び第三取付部21dは、いずれも、翼環部20から径方向内側Driに突出している。また、各取付部は、上流側から下流側に向かって、第一上流側取付部21e、第一下流側取付部21a、第二上流側取付部21b、第二下流側取付部21c、第三取付部21dの順で並んでいる。
【0058】
図4および
図5に示すように、第一下流側取付部21a、第二上流側取付部21b、第二下流側取付部21cについては、各遮熱環40を間に挟んで、遮熱環40に隣接させて、軸方向の上流側及び下流側に、翼環部20から遮熱環40の外周面より更に径方向内側Driに向かって延びる凸状の上流側壁23及び下流側壁25が配置されている。すなわち、第一下流側取付部21a、第二上流側取付部21b、第二下流側取付部21cにおいて、上流側壁23及び下流側壁25は、翼環部20から径方向内側Driに延びる環状の凸状物を形成し、両者に挟まれて形成された遮熱環空間に、遮熱環40が周方向Dcに挿入される。すなわち、翼環部20は、各遮熱環40が軸方向から上流側壁23と下流側壁25により挟まれた構造を有する。また、周方向Dcに挿入される各遮熱環40の径方向外側Droに向く外周面は、翼環部20の内周側に接触している。この翼環部20の径方向内側Driに向く内周面が、各遮熱環40の外周面に接する遮熱環溝22を形成している。
【0059】
第一分割環30a及び第二分割環30bを含む各分割環30は、複数の分割片31(
図3)を有している。複数の分割片31は、回転軸線Arに対する周方向Dcに並んで環状を成すことで分割環30を構成する。
【0060】
各分割片31は、
図3〜
図5に示すように、周方向Dcに広がる分割片本体32と、この分割片本体32の上流側部から径方向外側Droに延びる上流側脚34と、この分割片本体32の下流側部から径方向外側Droに延びる下流側脚36と、を有している。上流側脚34の径方向外側端部には、上流側に向かって突出している上流側突起35が形成されている。また、下流側脚36の径方向外側端部には、下流側に向かって突出している下流側突起37が形成されている。
【0061】
第一分割環30aを構成する複数の第一分割片31aにおける下流側脚36には、
図4及び
図7に示すように、上流側から下流側に凹んで第二上流側押付部材50bの一部が入り込む押付部材溝36sが形成されている。なお、
図7は、
図4におけるVII矢視図であるが、第一遮蔽板90aは図示されていない。また、第二静翼段10bを構成する複数の第二静翼11bにおける下流側脚16には、
図5及び
図8に示すように、上流側から下流側に凹んで第二下流側押付部材50cの一部が入り込む押付部材溝16sが形成されている。なお、
図8は、
図5におけるVIII矢視図であるが、翼環部20は図示されていない。各押付部材溝36s,16sには、周方向Dcで互いに対向する一対の周方向対向面36t,16tが形成されている。また、
図5に示すように、第二分割環30bを構成する複数の第二分割片31bにおける下流側突起37には、下流側から上流側に凹んだピン溝37sが形成されている。
【0062】
各遮熱環40は、複数の遮熱片41を有している。複数の遮熱片41は、回転軸線Arに対して周方向Dcに並んで環状を成すことで遮熱環40を構成する。各遮熱片41は、静翼11及び/又は分割片31が取り付けられる内側環取付部42と、この内側環取付部42に対して径方向外側Droに位置し、翼環部20に取り付けられる被取付部47と、を有している。被取付部47には、軸方向Daに貫通し、ボルト60の軸部62が挿通される貫通孔48が形成されている。
【0063】
第一下流側遮熱環40aを構成する複数の第一下流側遮熱片41aの内側環取付部42には、
図4に示すように、その上流側から下流側に凹んで、第一静翼11aの下流側突起17が入り込む第一静翼取付溝46aが形成されている。さらに、この第一下流側遮熱片41aの内側環取付部42には、その下流側から上流側に凹んで、第一分割環30aを構成する第一分割片31aの上流側突起35が入り込む第一分割環取付溝45aが形成されている。また、第一下流側遮熱片41aの内側環取付部42には、その下流側から上流側に凹んで、第一分割環上流側パッキン70aが入り込むパッキン溝43が形成されている。
【0064】
また、第一下流側遮熱片41aの被取付部47には、
図4及び
図6に示すように、上流側から下流側に凹んで第一下流側押付部材50aの一部が入り込む押付部材溝47sが形成されている。押付部材溝47sには、周方向Dcで互いに対向する一対の周方向対向面47tが形成されている。なお、
図6は、
図4におけるVI矢視図である。
【0065】
第二上流側遮熱環40bを構成する複数の第二上流側遮熱片41bの内側環取付部42には、その上流側から下流側に凹んで、第一分割片31aの下流側突起37が入り込む第一分割環取付溝45bと、その上流側から下流側に凹んで、第一分割環下流側パッキン70bが入り込むパッキン溝43とが形成されている。さらに、この第二上流側遮熱片41bの内側環取付部42には、その下流側から上流側に凹んで、第二静翼11bの上流側突起15が入り込む第二静翼取付溝46bと、その下流側から上流側に凹んで、第二静翼上流側パッキン71bが入り込むパッキン溝44とが形成されている。
【0066】
また、第二上流側遮熱片41bの被取付部47には、
図4及び
図7に示すように、上流側から下流側に凹んで第二上流側押付部材50bの一部が入り込む押付部材溝47sが形成されている。押付部材溝47sには、周方向Dcで互いに対向する一対の周方向対向面47tが形成されている。
【0067】
第二下流側遮熱環40cを構成する複数の第二下流側遮熱片41cの内側環取付部42には、
図5に示すように、その上流側から下流側に凹んで、第二静翼11bの下流側突起17が入り込む第二静翼取付溝46cと、その上流側から下流側に凹んで、第二静翼下流側パッキン71cが入り込むパッキン溝44とが形成されている。さらに、この第二下流側遮熱片41cの内側環取付部42には、その下流側から上流側に凹んで、第二分割片31bの上流側突起35が入り込む第二分割環取付溝45cと、その下流側から上流側に凹んで、第二分割環上流側パッキン70cが入り込むパッキン溝43が形成されている。
【0068】
また、第二下流側遮熱片41cの被取付部47には、
図5及び
図8に示すように、上流側から下流側に凹んで第二下流側押付部材50cの一部が上流側から入り込む押付部材溝47sが形成されている。押付部材溝47sには、周方向Dcで互いに対向する一対の周方向対向面47tが形成されている。
【0069】
第三遮熱環40dを構成する複数の第三遮熱片41dの内側環取付部42には、その上流側から下流側に凹んで、第二分割片31bの下流側突起37が入り込む第二分割環取付溝45dと、その上流側から下流側に凹んで、第二分割環下流側パッキン70dが入り込むパッキン溝43が形成されている。さらに、この内側環取付部42には、下流側から上流側に貫通するピン孔42sが形成されている。
【0070】
第一下流側押付部材50aには、
図4及び
図6に示すように、第一下流側遮熱片41aの被取付部47における押付部材溝47sに入り込む遮熱環規制部51と、この遮熱環規制部51より径方向内側Driに位置し、第一静翼11aの下流側脚16に接触する静翼押付部52と、を有している。遮熱環規制部51には、軸方向Daに貫通し、第一下流側遮熱片41aの貫通孔48と連通する貫通孔53が形成されている。第一下流側押付部材50aの貫通孔53及び第一下流側遮熱片41aの貫通孔48は、いずれも、第一下流側ボルト60aの軸部62が挿通される孔を成している。
【0071】
第二上流側押付部材50bは、
図4、
図7及び
図9A,Bに示すように、遮熱環規制部51と分割環押付部52bと分割環規制部57bを有する。遮熱環規制部51は、第二上流側遮熱片41bの被取付部47における押付部材溝47sに入り込む部材である。分割環押付部52bは、第一分割片31aにおける下流側脚36の上流側面に接触する部材である。分割環規制部57bは、第一分割片31aの押付部材溝36sに入り込む部材である。分割環押付部52bは、遮熱環規制部51より径方向内側Driに位置している。また、分割環規制部57bは、遮熱環規制部51より径方向内側Driであって、分割環押付部52bより下流側に位置している。遮熱環規制部51には、軸方向Daに貫通し、第二上流側遮熱片41bの貫通孔48と連通する貫通孔53が形成されている。この貫通孔53の内周面に雌ネジ(移動ガイド部)54が形成されている。第二上流側押付部材50bの貫通孔53及び第二上流側遮熱片41bの貫通孔48は、いずれも第二上流側ボルト60bの軸部62が挿通される孔を成している。さらに、この遮熱環規制部51には、上流側から下流側に向かって凹んで、第一遮蔽板90aの下流端が入り込む遮蔽板溝55が形成されている。
【0072】
第二下流側押付部材50cには、
図5及び
図8に示すように、遮熱環規制部51と静翼押付部52と静翼規制部57cを有する。遮熱環規制部51は、第二下流側遮熱片41cの被取付部47における押付部材溝47sに入り込む部材である。静翼押付部52は、遮熱環規制部51より径方向内側Driに位置し、第二静翼11bの下流側脚16の上流側面に接触する部材である。静翼規制部57cは、第二静翼11bの押付部材溝16sに入り込む部材である。静翼押付部52は、遮熱環規制部51より径方向内側Driに位置している。また、静翼規制部57cは、遮熱環規制部51より径方向内側Driであって、静翼押付部52より下流側に位置している。遮熱環規制部51には、軸方向Daに貫通し、第二下流側遮熱片41cの貫通孔48と連通する貫通孔53が形成されている。この貫通孔53の内周面に雌ネジ(移動ガイド部)54が形成されている。第二下流側押付部材50cの貫通孔53及び第二下流側遮熱片41cの貫通孔48は、いずれも第二下流側ボルト60cの軸部62が挿通される孔を成している。
【0073】
第三押付部材50dは、翼環部20の第三取付部21dにおける上流側の面に接触する翼環接触部51dと、この翼環接触部51dより径方向内側Driに位置し、第二分割環30bの下流側脚36に接触する分割環押付部52dと、を有している。翼環接触部51dには、軸方向Daに貫通し、第三遮熱片41dの貫通孔48と連通する貫通孔53が形成されている。貫通孔53の内周面に雌ネジ54が形成されている。第三押付部材50dの貫通孔53及び第三遮熱片41dの貫通孔48は、いずれも第三ボルト60dの軸部62が挿通される孔を成している。
【0074】
翼環部20の第一下流側取付部21aには、
図4に示すように、径方向内側Driから径方向外側Droに向かって凹み、第一下流側押付部材50aの遮熱環規制部51及び第一下流側遮熱片41aの被取付部47が入り込む遮熱環溝22が形成されている。すなわち、第一下流側遮熱片41aを挟んで軸方向の上流側及び下流側には、第一下流側遮熱片41aに隣接して、第一下流側遮熱片41aの径方向外側Droに向く外周面41atより更に径方向の内側Driへ凸状に延びる環状の上流側壁23および下流側壁25が形成されている。また、軸方向で上流側壁23および下流側壁25に挟まれて、翼環部20の内周側に溝状の遮熱環溝22が形成されている。
【0075】
遮熱環溝22を形成する上流側壁23及び下流側壁25には、軸方向Daに貫通し、第一下流側押付部材50aの貫通孔53及び第一下流側遮熱片41aの貫通孔48と連通する貫通溝23sおよび貫通孔26が形成されている。また、下流側壁25の貫通孔26は、第一下流側ボルト60aの軸部62の先端側に形成されている雄ネジに螺合可能な第一下流側ナット(移動ガイド部)65が入り込む孔を成している。
【0076】
この第一下流側取付部21aの下流側壁25の上流側面は、第一下流側遮熱片41aにおける被取付部47の下流側面と対向し、この第一下流側遮熱片41aの下流側への相対移動を規制する軸方向対向面25tを成している。
【0077】
翼環部20の第二上流側取付部21bには、径方向内側Driから径方向外側Droに向かって凹み、第二上流側押付部材50bの遮熱環規制部51及び第二上流側遮熱片41bの被取付部47が入り込む遮熱環溝22が形成されている。すなわち、第二上流側遮熱片41bを挟んで軸方向の上流側及び下流側には、第二上流側遮熱片41bに隣接して、第二上流側遮熱片41bの径方向外側Droに向く外周面41btより更に径方向の内側Driへ凸状に延びる環状の上流側壁23および下流側壁25が形成されている。軸方向で上流側壁23および下流側壁25に挟まれて、翼環部20の内周側に溝状の遮熱環溝22が形成されているのは、第一下流側取付部21a周りの構造と同様である。
【0078】
この遮熱環溝22の下流側壁25には、軸方向Daに貫通し、第二上流側押付部材50bの貫通孔53及び第二上流側遮熱片41bの貫通孔48と連通する貫通孔26が形成されている。この下流側壁25の貫通孔26は、第二上流側押付部材50bの貫通孔53及び第二上流側遮熱片41bの貫通孔48と共に、第二上流側ボルト60bの軸部62が挿通される孔を成している。
【0079】
この第二上流側取付部21bの下流側壁25の上流側面は、第二上流側遮熱片41bにおける被取付部47の下流側面と対向し、この第二上流側遮熱片41bの下流側への相対移動を規制する軸方向対向面25tを成している。
【0080】
翼環部20の第二下流側取付部21cには、
図5に示すように、径方向内側Driから径方向外側Droに向かって凹み、第二下流側押付部材50cの遮熱環規制部51及び第二下流側遮熱片41cの被取付部47が入り込む遮熱環溝22が形成されている。すなわち、第二下流側遮熱片41cを挟んで軸方向の上流側及び下流側には、第二下流側遮熱片41cに隣接して、第二下流側遮熱片41cの径方向外側Droに向く外周面41ctより更に径方向の内側Driへ凸状に延びる環状の上流側壁23および下流側壁25が形成されている。軸方向で上流側壁23および下流側壁25に挟まれて、翼環部の内周側に溝状の遮熱環溝22が形成されているのは、第一下流側取付部21a周りの構造と同様である。
【0081】
この遮熱環溝22の下流側壁25には、軸方向Daに貫通し、第二下流側押付部材50cの貫通孔53及び第二下流側遮熱片41cの貫通孔48と連通する貫通孔26が形成されている。この下流側壁25の貫通孔26は、第二下流側押付部材50cの貫通孔53及び第二下流側遮熱片41cの貫通孔48と共に、第二下流側ボルト60cの軸部62が挿通される孔を成している。
【0082】
この第二下流側取付部21cの下流側壁25の上流側面は、第二下流側遮熱片41cにおける被取付部47の下流側面と対向し、この第二下流側遮熱片41cの下流側への相対移動を規制する軸方向対向面25tを成している。
【0083】
翼環部20の第三取付部21dには、軸方向Daに貫通し、第三押付部材50dの貫通孔53及び第三遮熱片41dの貫通孔48と連通する貫通孔26が形成されている。この第三取付部21dの貫通孔26は、第三押付部材50dの貫通孔53及び第三遮熱片41dの貫通孔48と共に、第三ボルト60の軸部62が挿通される孔を成している。
【0084】
翼環部20の第一下流側取付部21a、第二上流側取付部21b、第二下流側取付部21cにおける各押付部材の軸方向の上流側には、各押付部材を搬入して、軸方向の上流側から各押付部材を取り付けるための空間80が設けられている。空間80は、翼環部の内周側と各段静翼又は分割環の外周面で囲まれた環状の空間として形成されている。
【0085】
なお、以上で説明した各パッキンは、いずれも、軸方向Daに弾性変形可能な弾性メタルパッキンである。
【0086】
次に、
図4、
図6及び
図10を用いて、第一下流側取付部21a(第一下流側押付部材50a)周りの取付構造を説明する。
第一下流側遮熱片41aの軸方向Daの上流側に配置された上流側壁23には、第一下流側押付部材50aが軸方向に挿通可能な貫通溝23sが、周方向Dcに複数個形成されている。貫通溝23sは、上流側壁23の周方向Dcで互いに対向する一対の周方向対向面23tに挟まれた押付部材空間80aとして形成され、径方向内側Driの方向は全面が開口している。押付部材空間80aは、空間80に連通している。
【0087】
また、前述のように、第一下流側遮熱片41aの軸方向Daの上流側部分であって、周方向Dcおよび軸方向Daの貫通溝23sに対応する位置には、第一下流側押付部材50aの軸方向Daの下流側端部(遮熱環規制部51)が軸方向Daの下流側に向かって入り込む押付部材溝47sが形成されている。
【0088】
第二上流側取付部21b周りの取付構造についても、第一下流側取付部21aと同様の構造である。すなわち、
図4及び
図7に示すように、第二上流側遮熱片41bの軸方向Daに隣接して上流側壁23および下流側壁25が形成され、その間に遮熱環溝22が形成されている。第二上流側遮熱片41bの径方向外側Droに向く外周面41btが、翼環部20に形成された遮熱環溝22に嵌めこまれている。
【0089】
また、上流側壁23には、第二上流側押付部材50bが軸方向Daに挿通可能な貫通溝23sが、周方向Dcに複数個形成されている。貫通溝23sは、上流側壁23の周方向Dcで互いに対向する一対の周方向対向面23tに挟まれた押付部材空間80aとして形成され、径方向内側Driの方向は全面が開口している。
【0090】
また、第二上流側遮熱片41bの上流側部分であって、周方向Dcおよび軸方向Daの貫通溝23sに対応する位置には、第二上流側押付部材50bの軸方向の下流側端部(遮熱環規制部51)が軸方向Daの下流側に向かって入り込む押付部材溝47sが形成されている。
【0091】
第二下流側取付部21c周りの取付構造についても、第一下流側取付部21a及び第二上流側取付部21bと同様の構造である。すなわち、
図5及び
図8に示すように、第二下流側遮熱片41cの軸方向Daに隣接して上流側壁23および下流側壁25が形成され、第二下流側遮熱片41cの径方向外側Droに向く外周面41ctが翼環部20に形成された遮熱環溝22に嵌めこまれている。
【0092】
また、上流側壁23に設けられた第二下流側押付部材50cを軸方向Daに挿通可能な貫通溝23sの構造および第二下流側遮熱片41cに設けられた押付部材溝47sの構造も第一下流側取付部21a周りの構造と同様である。
【0093】
また、本実施形態における第一下流側取付部21a、第二上流側取付部21b、第二下流側取付部21cにおいて、軸方向Daの上流側に押付部材を配置して、押付部材と翼環部(下流側壁25)との間に遮熱環を挟んで軸方向Daから翼環部にボルト締結で固定している。軸方向Daの上流側から下流側に向けて、押付部材、遮熱環および翼環部の順番に並べて、軸方向から翼環部に固定する理由は、間に挟んだパッキンが常にバネ力を保持した状態で取付けられているので、パッキンの復元力により遮熱環が軸方向Daに移動しないよう、正規の位置に遮熱環を保持する必要があるからである。このようにすれば、運転時と停止時で遮熱環の位置が常に固定され、ガスタービンの安定運転が維持できる。
【0094】
また、本実施形態において、所定遮熱環は、第一下流側遮熱環40a、第二上流側遮熱環40b、及び第二下流側遮熱環40cである。また、第一下流側遮熱環40aに対する上流側部材が第一静翼段10aであり、下流側部材が第一分割環30aである。第二上流側遮熱環40bに対する上流側部材が第一分割環30aであり、下流側部材が第二静翼段10bである。また、第二下流側遮熱環40cに対する上流側部材が第二静翼段10bであり、下流側部材が第二分割環30bである。
【0095】
次に、ケーシング4、特に、翼環部20の内側に取り付ける各部材の組立手順について説明する。
【0096】
まず、
図3及び
図4に示すように、翼環部20の第一下流側取付部21aの貫通孔26に、翼環部20の一部としての第一下流側ナット65(移動ガイド部)を組み込む(ステップ1)。
【0097】
次に、翼環部20の第二上流側取付部21bにおける遮熱環溝22に、所定遮熱環である第二上流側遮熱環40bを構成する第二上流側遮熱片41bを周方向Dcから挿入する。第二上流側押付部材50bを、第二上流側遮熱環40bの上流側の空間80及び貫通溝23sを介して軸方向Daから取付ける。次に、第二上流側ボルト60bで軸方向Daから第二上流側遮熱片41b及び第二上流側押付部材50bを固定する。さらに、第二上流側押付部材50bの遮熱環規制部51を第二上流側遮熱片41bの押付部材溝47sに取付ける。
【0098】
なお、上述のように、第二上流側ボルト60bで、第二上流側遮熱片41b等を取付ける際、第一分割片31aの下流側突起37を第二上流側遮熱片41bの第一分割環取付溝45bに差し込む。さらに、第一分割環下流側パッキン70bを第二上流側遮熱片41bのパッキン溝43に周方向Dcから挿入し、第二上流側ボルト60bで同時に固定する。第二上流側ボルト60bで締付ける過程で、第二上流側押付部材50bが軸方向下流側に第二上流側遮熱片41bを押し付け、パッキン70bが軸方向Daに圧縮されて、パッキン70bのシール性が維持される。
【0099】
次に、翼環部20の第一下流側取付部21aにおける遮熱環溝22に、第一分割環上流側パッキン70aを取り付けた第一下流側遮熱片41aを周方向Dcから挿入する。第一下流側押付部材50aを、第一下流側遮熱環40aの上流側の空間80及び貫通溝23sを介して軸方向Daから取付ける。さらに、第一下流側ボルト60aにより軸方向Daから第一下流側遮熱片41a及び第一下流側押付部材50aを固定する。この際、第一下流側押付部材50aの遮熱環規制部51を第一下流側遮熱片41aの押付部材溝47sに入れる。
【0100】
第二上流側取付部21bと同様に、第一下流側ボルト60aで締付ける過程で、第一下流側押付部材50aが軸方向下流側に第一下流側遮熱片41aを押し付け、パッキン70aが軸方向Daに圧縮されて、パッキン70aのシール性が維持される。
【0102】
次に、
図3及び
図5に示すように、翼環部20の第二下流側取付部21cにおける遮熱環溝22に第二下流側遮熱片41cを周方向Dcから挿入する。第二下流側押付部材50cを、第二下流側遮熱環40cの上流側の空間80及び貫通溝23sを介して軸方向Daから取付けて、第二下流側ボルト60cにより軸方向Daから固定する。さらに、第二下流側押付部材50cの遮熱環規制部51を第二下流側遮熱片41cの押付部材溝47sに入れる。
【0103】
次に、
図3〜
図5に示すように、第二静翼上流側パッキン71b及び第二静翼下流側パッキン71cを取り付けた第二静翼11bを第二上流側遮熱片41bと第二下流側遮熱片41cとの間に周方向Dcから組み込み、第二下流側ボルト60cにより固定する。第二下流側ボルト60cで締付ける過程で、第二下流側押付部材50cが軸方向下流側に第二下流側遮熱片41cを押し付け、パッキン71cが軸方向Daに圧縮されて、パッキン70cのシール性が維持される。
【0104】
次に、翼環部20の第三取付部21dの上流側に第三押付部材50dを組込む。
【0106】
次に、第二分割片31bの上流側突起35を第二下流側遮熱片41cの第二分割環取付溝45cに差し込むと共に、第二分割環上流側パッキン70cを第二下流側遮熱環40cのパッキン溝43に軸方向Daから押し込む。続いて、第二分割環下流側パッキン70dを取り付けた第三遮熱片41dを第三取付部21dの軸方向Daの下流側から組込む。さらに、第三ボルト60dを軸方向Daから挿入して、第二分割片31b、第三遮熱片41d及び第三押付部材50dを固定する。これにより、第三ボルト60dで締付ける過程で、第三遮熱片41d及び第二分割片31bが軸方向の上流側に押されて、パッキン70c,70dが圧縮され、パッキン70c,70dのシール性が維持される。
【0107】
以上のように、本実施形態では、第一静翼11aが取り付けられる第一翼環部20aと第二静翼11bが取り付けられる第二翼環部20bとが一体形成された翼環部20を成しているので、合体翼環全体としての高精度のクリアランス制御が可能となり、タービンの性能が一層向上する。
【0108】
また、本実施形態では、翼環部20の軸方向Da中央近傍に配置する第一分割環30aの組立過程において、第一分割環30a等に適用するパッキンを軸方向Daに圧縮しながら、第一分割環30a等を翼環部20に固定することができる。第一分割片31a等を翼環部20に取り付ける際、所定遮熱環40毎に、押付部材50を所定遮熱環40の上流側に配置し、これら押付部材50をボルト60の操作により下流側に押付けるようにしたからである。
【0109】
「第二実施形態」
次に、本発明に係る第二実施形態としてのガスタービンについて、
図11〜
図18を参照して説明する。
【0110】
本実施形態のガスタービンは、第一実施形態における翼環部20(合体翼環20x)及びこの翼環部20に対する各種取付部品の構成が異なるもので、その他の構成は第一実施形態と基本的に同一である。そこで、以下では、本実施形態の翼環部20(合体翼環20y)、及びこの翼環部20(合体翼環20y)に対する各種取付部品について説明する。
【0111】
本実施形態の翼環部20には、
図11に示すように、第一実施形態と同様、第一静翼段10aを構成する複数の第一静翼11aと、第二静翼段10bを構成する複数の第二静翼11bと、第一静翼段10aと第二静翼段10bとの間に配置される第一分割環30aと、第二静翼段10bの下流側に配置される第二分割環30bとが取り付けられる。さらに、翼環部20には、第一実施形態と同様、固定ブロック49と、第一下流側遮熱環40fと、第二上流側遮熱環40gと、第二下流側遮熱環40hと、第三遮熱環40iが取り付けられる。すなわち、固定ブロック49は、第一静翼11aの外側シュラウド13の上流側部を翼環部20に取り付けるため部材である。第一下流側遮熱環40fは、第一静翼11aの外側シュラウド13の下流側部及び第一分割環30aの上流側部を翼環部20に取り付けるための部材である。第二上流側遮熱環40gは、第一下流側遮熱環40fと、第一分割環30aの下流側部及び第二静翼11bの外側シュラウド13の上流側部を翼環部20に取り付けるための部材である。第二下流側遮熱環40hは、第二静翼11bの外側シュラウド13の下流側部及び第二分割環30bの上流側部を翼環部20に取り付けるための部材である。第三遮熱環40iは、第二分割環30bの下流側部を翼環部20に取り付けるための部材である。
【0112】
本実施形態では、第一下流側遮熱環40f及び第二上流側遮熱環40gの翼環部20への取り付けの際には、これらの遮熱環40f,40gを下流側へ押す押付部材50f,50gと、これを翼環部20に固定するための固定具としてのボルト60f,60gとが用いられる。
【0113】
翼環部20の第一翼環部20fの内周側には、第一実施形態と同様、第一静翼11a用の固定ブロック49が取り付けられる第一上流側取付部21jと、第一下流側遮熱環40f及び第一下流側押付部材50fが取り付けられる第一下流側取付部21fとが形成されている。また、翼環部20の第二翼環部20gの内周側には、第二上流側遮熱環40g及び第二上流側押付部材50gが取り付けられる第二上流側取付部21gと、第二下流側遮熱環40hが取り付けられる第二下流側取付部21hと、第三遮熱環40iが取り付けられる第三取付部21iと、が形成されている。各取付部は、第一実施形態と同様、上流側から下流側に向かって、第一上流側取付部21j、第一下流側取付部21f、第二上流側取付部21g、第二下流側取付部21h、第三取付部21iの順で並んでいる。
【0114】
なお、
図12〜
図14に示すように、第一下流側取付部21f及び第二上流側取付部21gについては、翼環部20の内周側から径方向の外側Droに向かって凹んだ遮熱環溝22が形成されている。各遮熱環は径方向外側Droに向く外周面が遮熱環溝22に径方向の内側Driから当接するように配置されている。また、各遮熱環に隣接して軸方向Daの下流側には、翼環部20から遮熱環の外周面から更に径方向内側に向かって延びる凸状の下流側壁25が形成されている。
【0115】
また、径方向で翼環部20の内周側と静翼段又は分割環の外周面との間には、環状の空間80が形成されている。遮熱環溝22の上流側面25fとその軸方向Daの下流側に配置された遮熱環の被取付部47との間には、環状の押付部材空間80aが形成され、空間80に連通している。押付部材は、空間80を介して押付部材空間80aに径方向の内側Driから挿入され、径方向内側Driから翼環部20に固定される。
【0116】
これにより、軸方向Daの上流側から下流側に向けて、押付部材、遮熱環および下流側壁の順に配置され、遮熱環を間に挟んで、軸方向から押付部材と下流側壁で遮熱環を挟み込む構造が形成されている。
【0117】
第一分割環30a及び第二分割環30bは、第一実施形態と同様、複数の分割片31a,31bを有して構成されている。また、各分割片31a,31bも、
図12及び
図18に示すように、周方向Dcに広がる分割片本体32と、この分割片本体32の上流側部から径方向外側Droに延びる上流側脚34と、この分割片本体32の下流側部から径方向外側Droに延びる下流側脚36と、を有している。上流側脚34の径方向外側端部には、上流側に向かって突出している上流側突起35が形成されている。また、下流側脚36の径方向外側端部には、下流側に向かって突出している下流側突起37が形成されている。
【0118】
第一分割環30aを構成する複数の第一分割片31aにおける下流側突起37、および第二分割環30bを構成する複数の第二分割片31bにおける下流側突起37には、それぞれ、上流側から下流側に貫通するピン溝37uが形成されている。また、第二静翼段10bを構成する複数の第二静翼11bにおける上流側突起15には、下流側から上流側に貫通する規制部材溝15uが形成されている。
【0119】
また、各遮熱環40f,40g,40h,40iも、第一実施形態と同様、複数の遮熱片41f,41g,41h,41iを有して構成されている。各遮熱片41f,41g,41h,41iは、静翼11及び/又は分割片31が取り付けられる内側環取付部42と、内側環取付部42に対して径方向外側Droに位置し、翼環部20に取り付けられる被取付部47と、を有している。
【0120】
第一下流側遮熱環40fを構成する複数の第一下流側遮熱片41fの内側環取付部42には、
図12、
図13及び
図15に示すように、その上流側から下流側に凹んで、第一静翼11aの下流側突起17が入り込む第一静翼取付溝42fが形成されている。さらに、この第一下流側遮熱片41fの内側環取付部42には、その下流側から上流側に凹んで、第一分割片31aの上流側突起35が入り込む第一分割環取付溝45fと、その下流側から上流側に凹んで、第一分割環上流側パッキン70aが入り込むパッキン溝43が形成されている。また、この第一下流側遮熱片41fの被取付部47には、上流側から下流側に向かって凹み、径方向Drに延びて、第一下流側押付部材50fの一部が入り込んで径方向Drに摺動可能なガイド溝部48fが形成されている。このガイド溝部48fには、周方向Dcで互いに対向する一対の周方向対向面48t(
図15)が形成されている。さらに、この被取付部47には、下流側に向かって突出し、第一下流側遮熱片41fの翼環部20に対する径方向Drの位置を規制する頂部突起49fが形成されている。
【0121】
第二上流側遮熱環40gを構成する複数の第二上流側遮熱片41gの径方向の内側環取付部42には、
図12、
図14及び
図16に示すように、その上流側から下流側に凹んで、第一分割片31aの下流側突起37が入り込む第一分割環取付溝45gが形成されている。また、その上流側から下流側に凹んで、第一分割環下流側パッキン70bが入り込むパッキン溝43が形成されている。さらに、この第二上流側遮熱片41gの内側環取付部42には、その下流側から上流側に凹んで、第二静翼上流側パッキン71bが入り込むパッキン溝44が形成されている。第一分割環取付溝45gには、その周方向Dcの一部に、第一分割環取付溝45gの溝底から下流側に凹むピン穴45u(
図14)が形成されている。また、この第二上流側遮熱片41gの被取付部47にも、第一下流側遮熱片41fと同様、上流側から下流側に向かって凹み、径方向Drに延びて、第二上流側押付部材50gの一部が入り込んで径方向Drに摺動可能なガイド溝部48gが形成されている。このガイド溝部48gには、周方向Dcで互いに対向する一対の周方向対向面48t(
図16)が形成されている。さらに、この被取付部47には、下流側に向かって突出し、第二上流側遮熱片41gの翼環部20に対する径方向Drの位置を規制する頂部突起49gが形成されている。
【0122】
第二下流側遮熱環40hを構成する複数の第二下流側遮熱片41hの内側環取付部42には、
図18に示すように、その上流側から下流側に凹んで、第二静翼11bの下流側突起17が入り込む第二静翼取付溝46hと、その上流側から下流側に凹んで、第二静翼下流側パッキン71cが入り込むパッキン溝44が形成されている。さらに、この第二下流側遮熱片41hの内側環取付部42には、その下流側から上流側に凹んで、第二分割片31bの上流側突起35が入り込む第二分割環取付溝45hと、その下流側から上流側に凹んで、第二分割環上流側パッキン70cが入り込むパッキン溝43が形成されている。また、この第二下流側遮熱片41hの被取付部47の上流側には、その上流側から下流側に向かって突出する突起49hが形成され、被取付部47の下流側には、その下流側から上流側に向かって突出する突起49hが形成されている。これらの突起49hは、いずれも、第二下流側遮熱片41hの翼環部20に対する径方向Drの位置を規制するものである。また、被取付部47の下流側に設けられ、下流側から上流側に向かって突出する突起49hには、下流側から上流側に向かって凹むピン溝49uが形成されている。
【0123】
第三遮熱環40iを構成する複数の第三遮熱片41iの内側環取付部42には、その上流側から下流側に凹んで、第二分割片31bの下流側突起37が入り込む第二分割環取付溝45iと、その上流側から下流側に凹んで、第二分割環下流側パッキン70dが入り込むパッキン溝43が形成されている。第二分割環取付溝45iには、その周方向の一部に、第二分割環取付溝45iの溝底から下流側に凹むピン穴45uが形成されている。また、この第三遮熱片41iの被取付部47には、軸方向Daに貫通し、第三ボルト60iの軸部62及びこの軸部62に装着されたスリーブ67が挿通される貫通孔48が形成されている。
【0124】
第一下流側押付部材50fには、
図13及び
図15に示すように、その下流側から上流側に凹み、第一下流側遮熱片41fのガイド溝部48fに入り込むガイド突起部52fと、径方向Drに貫通して、第一下流側ボルト60fの軸部62が挿通可能な貫通孔53が形成されている。
【0125】
第二上流側押付部材50gには、
図14及び
図16に示すように、第一下流側押付部材50fと同様、その下流側から上流側に凹み、第二上流側遮熱片41gのガイド溝部48gに入り込むガイド突起部52gと、径方向Drに貫通して、第二上流側ボルト60gの軸部62が挿通可能な貫通孔53とが形成されている。
【0126】
翼環部20の第一下流側取付部21fには、
図13及び
図15に示すように、径方向内側Driから径方向外側Droに向かって凹み、第一下流側押付部材50f及び第一下流側遮熱片41fの被取付部47が入り込む遮熱環溝22が形成されている。また、この第一下流側取付部21fには、遮熱環溝22の溝底から径方向外側Droに向かって延び、第一下流側ボルト60fの雄ネジ63が螺合可能な雌ネジ穴23fが形成されている。さらに、第一下流側取付部21fには、遮熱環溝22の下流側壁から下流側に向かって凹み、第一下流側遮熱片41fの頂部突起49fが入り込む側壁溝24fが形成されている。なお、遮熱環溝22の上流側面25fには、径方向外側Droに向かうに連れて次第に下流側に向かう傾斜面が、第一下流側押付部材50fの移動ガイド部として形成されていてもよい。
【0127】
ここで、第一下流側押付部材50fの下流側面56fと第一下流側遮熱片41fの被取付部47の上流側面46fとは、互いに接触している。この第一下流側押付部材50fは、この接触面を介して、第一下流側遮熱片41fの被取付部47を下流側に押しながら、雌ネジ穴23fに螺合するボルト60fで、第一下流側取付部21fに固定される。これにより、軸方向Daの上流側から下流側に向かって、第一下流側押付部材50f、第一下流側遮熱片41fおよび下流側壁25の順に配置され、第一下流側遮熱片41fを軸方向Daから第一下流側押付部材50fおよび下流側壁25で挟み込む構造を形成する。その結果、第一下流側押付部材50fが、第一下流側遮熱片41fを軸方向Daの下流側に押付け、第一下流側遮熱片41fの被取付部47が軸方向Daの下流側に押されて、パッキン溝43に配置されたパッキン70aが軸方向Daに圧縮され、パッキン70aのシール性が維持される。
【0128】
また、
図15に示すように、第一下流側遮熱片41fの被取付部47及び頂部突起49fが、遮熱環溝22および側壁溝24fに径方向Dr及び軸方向Daから着脱可能とするためには、被取付部47の上流側面46fと遮熱環溝22の上流側面25fの間の軸方向Daの隙間Dが、頂部突起49fの軸方向の突出長さ(L3)より大きく形成されていることが必要である。言い換えると、被取付部47の径方向外側であって軸方向の頂部厚さ(L2)が、少なくとも遮熱環溝22の軸方向Daの最大溝幅(L1)より頂部突起49fの軸方向突出長さ(L3)を差し引いた溝幅より小さく形成されている必要がある。このような形状を選定すれば、第一下流側遮熱片41f(被取付部47)を遮熱環溝22に空間80および押付部材空間80aを介して径方向内側Driから挿入し、更に軸方向下流側に移動させ、頂部突起49fを軸方向Daから側壁溝24fに挿入することが可能となり、軸方向Daから第一下流側遮熱片41fの着脱が可能となる。また、逆に分解の際は軸方向Daから第一下流側遮熱片41fを取り外すことも可能となる。なお、押付部材空間80aの軸方向Daの幅は、少なくとも隙間Dより大きくすることが望ましい。
【0129】
翼環部20の第二上流側取付部21gには、
図14及び
図16に示すように、径方向内側Driから径方向外側Droに向かって凹み、第二上流側押付部材50g及び第二上流側遮熱片41gの被取付部47が入り込む遮熱環溝22が形成されている。また、この第二上流側取付部21gには、この遮熱環溝22の溝底から径方向外側Droに向かって延び、第二上流側ボルト60gの雄ネジ63が螺合可能な雌ネジ穴23gが形成されている。さらに、この第二上流側取付部21gには、この遮熱環溝22の下流側壁から下流側に向かって凹み、第二上流側遮熱片41gの頂部突起49gが入り込む側壁溝24gが形成されている。なお、遮熱環溝22の上流側面25gには、径方向外側Droに向かうに連れて次第に下流側に向かう傾斜面が、第二上流側押付部材50gの移動ガイド部として形成されていてもよい。
【0130】
ここで、第二上流側遮熱環40gの遮熱環溝22は、径方向Drに2段階に切り込まれた溝22o,22iで形成されている。外側遮熱環溝22oは、径方向Drの外側に配置され、第二上流側遮熱片41gの被取付部47が、径方向外側の面で外側遮熱環溝22oの底面に接する。また、外側遮熱環溝22oより径方向内側には、外側遮熱環溝22oの上流側に隣接して、内側遮熱環溝22iが形成されている。内側遮熱環溝22iの径方向内周面には、上述の貫通孔53が径方向に形成されている。内側遮熱環溝22iの上流側面25giは、前述の外側遮熱環溝22oの上流側面25goと共に、遮熱環溝22の前述の上流側面25gを形成する。なお、第二上流側遮熱環40gの遮熱環溝22は、2段に形成された溝ではなく、第一下流側遮熱環40fの遮熱環溝22と同様に、軸方向Daの幅を広げた1つの溝で形成してもよい。
【0131】
第一下流側押付部材50fと同様に、第二上流側押付部材50gにおいても、この第二上流側押付部材50gの下流側面56gと第二上流側遮熱片41gの上流側面46gとは、互いに接触している。第二上流側押付部材50gは、この接触面を介して、第二上流側遮熱片41gの被取付部47を下流側に押しながら、雌ネジ穴23gに螺合するボルト60gで、第二上流側取付部21gに固定される。これにより、第一下流側取付部21fは、軸方向Daの上流側から下流側に向かって、第一下流側押付部材50f、第一下流側遮熱片41fおよび下流側壁25の順に配置され、上流側に第一下流側押付部材50fおよび下流側に下流側壁25を配置して、第一下流側遮熱片41fを軸方向Daから挟み込む構造となる。また、第二上流側取付部21gも同様に、第二上流側押付部材50g、第二上流側遮熱片41gおよび下流側壁25の順に配置され、上流側に第二上流側押付部材50gおよび下流側に下流側壁25を配置して、第二上流側遮熱片41gを軸方向Daから挟み込む構造となる。その結果、第一下流側押付部材50fが、第一下流側遮熱片41fを軸方向Daの下流側に押付け、第二上流側遮熱片41gの被取付部47が軸方向Daの下流側に押されて、パッキン溝44に配置されたパッキン71bが軸方向Daに圧縮され、パッキン71bのシール性が維持される。
【0132】
また、
図16に示すように、第二上流側遮熱片41gの被取付部47及び頂部突起49gが、外側遮熱環溝22oおよび側壁溝24gに径方向Dr及び軸方向Daから着脱可能とするためには、被取付部47の上流側面46giと外側遮熱環溝22oの径方向外側の上流側面25goの間の隙間Dが、頂部突起49gの軸方向の突出長さ(L3)より大きく形成されていることが必要である。言い換えると、被取付部47の径方向外側であって軸方向Daの頂部厚さ(L2)が、少なくとも外側遮熱環溝22oの軸方向Daの最大溝幅(L1)より頂部突起49gの軸方向突出長さ(L3)を差し引いた溝幅より小さく形成されている必要がある。このような形状を選定すれば、被取付部47を外側遮熱環溝22oに径方向内側から挿入し、頂部突起49gを軸方向Daから側壁溝24gに挿入することが可能となる。また、逆に取外しの際は、軸方向Daから第二上流側遮熱片41gの被取付部47を取り外すことも可能となる。なお、遮熱環溝22が、径方向Drに2段階に切り込まれた溝ではなく、第一下流側遮熱環40fと同様に、軸方向Daの幅を広げた1つの溝で形成されている場合は、上述の説明は、外側遮熱環溝22oを遮熱環溝22と置き換えることができる。
【0133】
さらに、
図14及び
図17に示すように、この第二上流側取付部21gであって、周方向Dc及び軸方向Daで第二静翼11bの規制部材溝(凹部)15uと同じ位置には、下流側から上流側に貫通する規制部材溝(凹部)21uが形成されている。これら第二静翼11bの規制部材溝15u及び第二上流側取付部21gの規制部材溝21uには、周方向規制部材95が入られる。第二上流側取付部21gには、この規制部材溝21uにおける下流側の開口を塞ぐ規制部材受け板97がボルト96により固定されている。
【0134】
翼環部20の第二下流側取付部21hには、
図18に示すように、径方向内側Driから径方向外側Droに向かって凹み、第二下流側遮熱片41hの被取付部47が入り込む遮熱環溝22が形成されている。この遮熱環溝22の上流側壁及び下流側壁には、第二下流側遮熱片41hの突起が入り込む側壁溝24hが形成されている。
【0135】
翼環部20の第三取付部21iには、径方向外側Dro及び上流側に向かって凹み、第三遮熱片41iの被取付部47が入り込む遮熱環溝22が形成されている。この遮熱環溝22の上流側壁には、ここから上流側に向かって凹み第三ボルト60dの雄ネジ63が螺合可能な雌ネジ穴23iが形成されている。さらに、この遮熱環溝22の上流側壁には、第二下流側取付部21hの遮熱環溝22にまで貫通するピン孔24uが形成されている。
【0136】
なお、本実施形態において、所定遮熱環は、第一下流側遮熱環40f、及び第二上流側遮熱環40gである。また、第一下流側遮熱環40fに対する上流側部材が第一静翼段10aであり、下流側部材が第一分割環30aである。また、第二上流側遮熱環40gに対する上流側部材が第一分割環30aであり、下流側部材が第二静翼段10bである。
【0137】
次に、ケーシング4、特に、翼環部20の内側に取り付ける各部材の組立手順について説明する。
【0138】
まず、
図18に示すように、翼環部20の第二下流側取付部21hにおける遮熱環溝22に、第二下流側遮熱片41hの被取付部47を周方向Dcから差し込む。そして、第三取付部21iの遮熱環溝22の上流側壁23から第二下流側取付部21hの遮熱環溝22にまで貫通するピン孔24uに、ピン(周方向規制部材)60hを下流側から入れて、このピン60hの上流端部を第二下流側遮熱片のピン溝49uに差し込む。この結果、この第二下流側遮熱片41hは、ピン60hにより周方向Dcの移動が拘束される。
【0139】
次に、第二分割片31bの上流側突起35を第二下流側遮熱片41hの第二分割環取付溝45hに軸方向Daから差し込むと共に、第二分割環上流側パッキン70cを第二下流側遮熱片41hのパッキン溝43に軸方向Daから差し込む。
【0140】
次に、翼環部20の第三取付部21iにおける遮熱環溝22に、第二分割環下流側パッキン70dが取り付けられている第三遮熱片41iを差し込む。
【0141】
次に、第二分割片31bのピン溝(凹部)37u及び第三遮熱片41iのピン穴(凹部)45uに、これらの上流側からピン(周方向規制部材)65iを差し込み、第三遮熱片41iに対する第二分割片31bの周方向Dcの移動を拘束する。
【0142】
続いて、スリーブ67が装着されている第三ボルト60iを第三遮熱片41iの貫通孔48に挿通させ、第三取付部21iの雌ネジ穴23iに捻じ込んで、この第三遮熱片41iを第三取付部21iに固定する。
【0143】
次に、第二静翼11bの下流側突起17を第二下流側遮熱片41hの第二静翼取付溝46hに差し込むと共に、第二静翼下流側パッキン71cを第二下流側遮熱片41hのパッキン溝44に軸方向Daから差し込む。
【0144】
次に、
図14及び
図17に示すように、第二上流側取付部21gに規制部材受け板97をボルト98で固定する。続いて、第二静翼11bの規制部材溝(凹部)15u及び第二上流側取付部21gの規制部材溝(凹部)21uに、周方向規制部材95を上流側から入れる。そして、周方向規制部材95の貫通孔95aを経て、規制部材受け板97の雌ネジ97aにボルト96を捻じ込み、周方向規制部材95を固定する。
【0145】
次に、第二上流側取付部21gの遮熱環溝22に、第二上流側押付部材50gを径方向内側から差し込むと共に、第二上流側遮熱片41gを軸方向下流側に当接させながら、第二上流側押付部材50gを第二上流側ボルト60gで第二上流側取付部21gに固定する。この際、第二上流側押付部材50gのガイド突起部52gを第二上流側遮熱片41gのガイド溝部48gに挿入する。そして、第二上流側押付部材50gの貫通孔53に第二上流側ボルト60gの軸部62を挿通させ、遮熱環溝22の溝底に形成されている雌ネジ穴23gに捻じ込み、この第二上流側押付部材50gを径方向外側Droから固定する。
【0146】
第二上流側遮熱片41gが下流側に押されている過程で、第二静翼上流側パッキン71bが軸方向Daに圧縮され、第二上流側遮熱片41gと第二静翼11bとの間がシールされる。さらに、第二静翼11bが第二上流側遮熱片41gにより下流側に押され、第二静翼下流側パッキン71c(
図18)が軸方向Daに圧縮され、第二静翼11bと第二下流側遮熱片41hとの間がシールされる。
【0147】
次に、第一分割片31aの下流側突起37を第二上流側遮熱片41gの第一分割環取付溝45gに差し込むと共に、第一分割環下流側パッキン70bを第二上流側遮熱片41gのパッキン溝43に差し込む。
【0148】
次に、第一分割片31aのピン溝(凹部)37uおよび第二上流側遮熱片41gのピン穴(凹部)45uに、これらの上流側からピン(周方向規制部材)65gを差し込み、第二上流側遮熱片41gに対する第一分割片31aの周方向Dcの移動を拘束する。
【0149】
次に、
図13に示すように、翼環部20の第一下流側取付部21fにおける遮熱環溝22に、第一分割環上流側パッキン70aが取り付けられた第一下流側遮熱片41fの被取付部47を差し込む。
【0150】
次に、第一下流側取付部21fの遮熱環溝22に、第一下流側押付部材50fを差し込むと共に、この第一下流側押付部材50fを第一下流側ボルト60fで第一下流側取付部21fに固定する。この際、第一下流側押付部材50fのガイド突起部52fを第一下流側遮熱片41fのガイド溝部48fに入れると共に、第一下流側押付部材50fの下流側面56fを第一下流側遮熱片41fの被取付部47の上流側面46fを軸方向Daで接触させて、第一下流側押付部材50fで第一下流側遮熱片41fを軸方向下流側に押す。
【0151】
第一下流側遮熱片41fが下流側に押されている過程で、第一分割環上流側パッキン70aが軸方向Daに圧縮され、第一下流側遮熱片41fと第一分割片31aとの間がシールされる。さらに、第一分割片31aが第一下流側遮熱片41fにより下流側に押され、第一分割環下流側パッキン70bが軸方向Daに圧縮され、第一分割片31aと第二上流側遮熱片41gとの間がシールされる。また、第一下流側ボルト60fの捻じ込みにより、第一分割片31aの径方向Dr及び軸方向Daの位置決めも完了する。
【0152】
最後に、第一静翼11aの下流側突起17を第一下流側遮熱環40fの第一静翼取付溝42fに差し込むと共に、翼環部20の第一上流側取付部21jに固定ブロック49(
図11)を固定する。
【0153】
以上のように、本実施形態でも、第一実施形態と同様、第一静翼11aが取り付けられる第一翼環部20fと第二静翼11bが取り付けられる第二翼環部20gとが一体形成され翼環部20(合体翼環20y)を成しているので、合体翼環全体としての高精度のクリアランス制御が可能となり、タービンの性能が一層向上する。
【0154】
また、本実施形態でも、第一実施形態と同様、翼環部20の軸方向Da中央近傍に配置する第一分割環30aや第二静翼11bに対するパッキンを組立過程において軸方向Daに圧縮しながら、この第一分割環30aや第二静翼11bをこの翼環部20に固定することができる。
【0155】
また、本実施形態では、翼環部20に取り付ける複数の部品を軸方向Daに移動させて組み込むことができるので、第一実施形態よりも部品を翼環部20に容易に組み込むことができる。
【0156】
また、本実施形態では、第一実施形態に比較して、パッキン類を軸方向からパッキン溝に挿入できるので、パッキン取付時のパッキン表面の損傷を防止できる。
【0157】
また、以上の各実施形態の翼環部20は、いずれも、二段分の静翼11が取り付けられるものであるが、さらに多くの段数の静翼11を取り付けるようにしてもよい。また、ここでの翼環部20は、最上流の第一静翼段10aを含む複数の静翼段10を取り付けるものであるが、第一静翼段10aよりも下流側の複数の静翼段を取り付けるものであってもよい。