(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5852276
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】土壌改良材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/01 20060101AFI20160114BHJP
C09K 17/06 20060101ALI20160114BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
B01D21/01 101A
C09K17/06 H
C02F1/52 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-42158(P2015-42158)
(22)【出願日】2015年3月4日
【審査請求日】2015年7月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513002968
【氏名又は名称】有限会社谷田建設
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】野田 隆
【審査官】
目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−129309(JP,A)
【文献】
特開昭53−035675(JP,A)
【文献】
特開2004−209424(JP,A)
【文献】
特開2011−235253(JP,A)
【文献】
特開2010−172882(JP,A)
【文献】
特開2001−107047(JP,A)
【文献】
特開2003−082351(JP,A)
【文献】
特開平10−001667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D21/00−21/34
C02F1/52−1/56
C09K17/00−17/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏粒体と、同石膏粒体と比重が異なる多孔粒体であって凝集剤を含浸させた多孔粒体とを含有する水処理剤を懸濁水に混入することで懸濁水を固液分離し、固液分離によって得られた固体分を含有させた土壌改良材を製造することを特徴とする土壌改良材の製造方法。
【請求項2】
前記石膏粒体及び多孔粒体として廃棄物を利用することを特徴とする請求項1に記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項3】
前記多孔粒体は、石膏粒体よりも比重が大きく粒径が小さい、又は、石膏粒体よりも比重が小さく粒径が大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の土壌改良材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏を用いた水処理剤及び水処理方法、並びに水処理で得られる土壌改良材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、石膏ボードは、建築用資材等として大量に生産・使用されるとともに、大量に廃棄されている。
【0003】
この大量に廃棄される石膏ボードは、土木現場や工場などにおいて懸濁水を凝集処理する水処理剤の原料として有効に再利用することが考えられている。たとえば、特許文献1に開示されているように、廃棄された石膏ボードを粉砕した後に熱処理して再生石膏を生成し、その再生石膏を主成分として凝集効果を有する水処理剤が製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−235253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来のように石膏ボードから生成した再生石膏を主成分とする水処理剤では、凝集効果が低く、また、その製造に多大なコストがかかるといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1に係る本発明では、
土壌改良材の製造方法において、石膏粒体と、同石膏粒体と比重が異なる多孔粒体であって凝集剤を含浸させた多孔粒体とを含有する
水処理剤を懸濁水に混入することで懸濁水を固液分離し、固液分離によって得られた固体分を含有させた土壌改良材を製造することにした。
【0007】
また、請求項2に係る本発明では、
前記請求項1に係る本発明において、前記石膏粒体及び多孔粒体として廃棄物を利用することにした。
【0008】
また、請求項3に係る本発明では、
前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記多孔粒体は、石膏粒体よりも比重が大きく粒径が小さい、又は、石膏粒体よりも比重が小さく粒径が大きいことにした。
【発明の効果】
【0009】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0010】
すなわち、本発明では、石膏粒体と、同石膏粒体と比重が異なる多孔粒体であって凝集剤を含浸させた多孔粒体とを含有する水処理剤及び同水処理剤を用いた水処理方法であるために、この水処理剤を懸濁水に混入させて水処理を行うことで、凝集作用を有する石膏粒体と多孔粒体とによって懸濁水に含有される懸濁物を凝集して、懸濁水を澄水(上澄み液)と凝集物(沈殿物)とに良好に固液分離(沈殿分離)させることができる。
【0011】
特に、水処理剤に比重が異なる石膏粒体と多孔粒体とが含有されているために、懸濁水に混入した後にそれぞれの粒体が異なる速度でばらばらに沈下することになり、懸濁水との接触時間を長くすることができるので、より良好に懸濁物を凝集することができ、水処理剤の凝集効果を向上させることができる。
【0012】
また、固液分離されたことによって得られる固体分(凝集物)には、凝集作用を有する石膏粒体及び多孔粒体とが含まれているとともに、石膏由来のカルシウム分や硫黄分が含まれているために、水捌け性を向上させる作用や肥料としての作用を有しており、土壌改良材として利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る水処理剤及び水処理方法並びに土壌改良材の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0015】
本発明では、石膏粒体と多孔粒体とで水処理剤が製造され、その水処理剤を懸濁水に混入させることで水処理方法が実行され、その水処理後に得られる固体分から土壌改良材が製造される。
【0016】
水処理剤は、比重の異なる石膏粒体と多孔粒体とを混合させたものである。石膏粒体と多孔粒体との混合比率は、たとえば、重量比で石膏粒体:多孔粒体=7:3とすることができるが、これに限られず、使用目的等に応じて適宜決定することができる。なお、石膏粒体と多孔粒体とで比重が異なっていればよく、石膏粒体の方が比重が大きい場合に限られず、石膏粒体の方が比重が小さい場合でもよい。水処理剤としては、比重の大きい方を多く混合させることで沈下性を良くすることができ、一方、比重の小さい方を多く混合させることで分散性を良くすることができる。また、比重の大きい方の粒径を小さくしたり、比重の小さい方の粒径を小さくするなど、粒径を異ならせてもよい。
【0017】
石膏粒体は、石膏(硫酸カルシウム)分が含有されている粒であればよく、たとえば、廃棄される石膏ボードを所定の粒径に粉砕し石膏分を選別したものを利用することができる。このように、廃棄される石膏ボードを用いることで、大量に廃棄される石膏ボードを有効に再利用することができるとともに、水処理剤の原料コストを低減することができる。
【0018】
多孔粒体は、多孔質な粒であればよく、たとえば、廃棄される粘土瓦や軽石などを所定の粒径に粉砕したものを利用することができる。このように、廃棄される粘土瓦や軽石などを用いることで、大量に廃棄される粘土瓦や軽石などを有効に再利用することができるとともに、水処理剤の原料コストを低減することができる。
【0019】
また、多孔粒体は、多孔部分に凝集剤が含浸されているものであればよい。凝集剤は、凝集作用を有する液状の物質であればよく、たとえば、ポリエチレンイミン系鎖状高分子複合体などを用いることができるが、これに限られず、使用目的等に応じて適宜決定することができる。凝集剤の含浸比率は、たとえば、重量比で3%とすることができるが、これに限られない。
【0020】
上記石膏粒体と多孔粒体とを混合することで水処理剤を製造することができる。なお、多孔粒体は、粘土瓦や軽石などの多孔質な粒に液状の凝集剤を含浸させたものであるため、そのまま石膏粒体と混合させると、多孔粒体同士や多孔粒体と石膏粒体とが付着してしまうため、付着が生じない程度に自然乾燥又は強制乾燥させてから石膏粒体と混合することが好ましい。
【0021】
水処理剤は、そのままでも凝集効果を有するが、さらに凝集効果を向上させるために磁化させてもよい。たとえば、8000ガウスの環状磁性体の中心部を1m/sec以上の速度で通過させて100ガウス以上の磁気を帯びさせることができる。これにより、水処理剤は、磁気の作用により懸濁水の低クラスター化を図ることができ凝集効果を向上させることができる。
【0022】
以上のようにして製造された水処理剤は、懸濁水に混入させることで、懸濁水の水処理を行うことができる。懸濁水としては、上水・下水を問わず、また、工業排水や農業用水など、懸濁物が含有された液体が対象となる。
【0023】
水処理剤を懸濁水に混入させて水処理を行うと、凝集作用を有する石膏粒体と多孔粒体とによって懸濁水に含有される懸濁物を凝集して、懸濁水を澄水(上澄み液)と凝集物(沈殿物)とに固液分離(沈殿分離)させることができる。その際に、水処理剤に比重が異なる石膏粒体と多孔粒体とが含有されているため、懸濁水に混入した後にそれぞれの粒体が異なる速度でばらばらに沈下することになり、懸濁水との接触時間が長くなって良好に懸濁物を凝集する。
【0024】
水処理剤を使用して行われる水処理(水処理方法)は、特定の用途に限定されるものではない。たとえば、河川底等の清掃作業において、懸濁した河川(懸濁水)に水処理剤を混入させると、作業現場において底が目視できない懸濁水を底を目視できる澄水に変化させることができ、作業効率を向上させることができる。
【0025】
以上のようにして水処理剤を用いて水処理を行うと、懸濁水が液体分(澄水)と固体分(凝集物)とに固液分離される。これらのうち固体分については、凝集作用を有する石膏粒体及び多孔粒体とが含まれていることから水捌け性を向上させる作用が有り、また、石膏由来のカルシウム分や硫黄分が含まれていることから肥料としての作用も有ることから、自然乾燥又は強制乾燥させた後に中性の土壌改良材として有効に利用することができる。
【0026】
以上に説明したように、本発明は、石膏粒体と、同石膏粒体と比重が異なる多孔粒体であって凝集剤を含浸させた多孔粒体とを含有する水処理剤及び同水処理剤を用いた水処理方法である。
【0027】
そのため、本発明では、水処理剤を懸濁水に混入させて水処理を行うことで、凝集作用を有する石膏粒体と多孔粒体とによって懸濁水に含有される懸濁物を凝集して、懸濁水を澄水(上澄み液)と凝集物(沈殿物)とに良好に固液分離(沈殿分離)させることができる。
【0028】
特に、本発明では、水処理剤に比重が異なる石膏粒体と多孔粒体とが含有されている。
【0029】
そのため、本発明では、懸濁水に混入した後にそれぞれの粒体が異なる速度でばらばらに沈下することになり、懸濁水との接触時間を長くすることができるので、より良好に懸濁物を凝集することができ、水処理剤の凝集効果を向上させることができる。
【0030】
また、本発明では、水処理によって固液分離されたことで得られる固体分(凝集物)に、凝集作用を有する石膏粒体及び多孔粒体とが含まれているとともに、石膏由来のカルシウム分や硫黄分が含まれている。
【0031】
そのため、本発明では、水処理によって固液分離されたことで得られる固体分(凝集物)を、水捌け性を向上させる作用や肥料としての作用を有する土壌改良材として有効に利用することができる。
【要約】
【課題】懸濁水を良好に処理することができる水処理剤、及び、同水処理剤を用いて懸濁水を処理する水処理方法、並びに、同水処理剤で水処理した後に得られた固体分からなる土壌改良材を提供すること。
【解決手段】本発明では、水処理剤において、石膏粒体と、同石膏粒体と比重が異なる多孔粒体であって凝集剤を含浸させた多孔粒体とを含有することにした。また、本発明では、水処理方法において、前記水処理剤を懸濁水に混入して懸濁水を固液分離させることにした。さらに、本発明では、土壌改良材において、前記水処理剤を懸濁水に混入することで懸濁水を固液分離し、固液分離によって得られた固体分を含有することにした。
【選択図】
図1