(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5852279
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】石鹸コーティング方法、石鹸コーティング構造体及びロウソク製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/02 20060101AFI20160114BHJP
B65B 33/02 20060101ALI20160114BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20160114BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20160114BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20160114BHJP
B65D 81/36 20060101ALI20160114BHJP
A61K 8/00 20060101ALI20160114BHJP
B65D 67/00 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
B65D65/02 Z
B65B33/02
A61Q19/10
C11D17/04
B65D85/50 Z
B65D81/36 V
A61K8/00
B65D67/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-77275(P2015-77275)
(22)【出願日】2015年4月4日
【審査請求日】2015年8月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515072978
【氏名又は名称】サルラボラトリーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100178179
【弁理士】
【氏名又は名称】桐生 美津恵
(72)【発明者】
【氏名】大橋 安佐枝
(72)【発明者】
【氏名】ゲーサニー バイウット
(72)【発明者】
【氏名】ソンクラーン ジャンヤーン
【審査官】
二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許第00008954(GB,B)
【文献】
欧州特許出願公開第00949158(EP,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2003−0069002(KR,A)
【文献】
西独国実用新案第20210936(DE,B)
【文献】
独国特許出願公開第102004008214(DE,A1)
【文献】
国際公開第2005/107442(WO,A1)
【文献】
特表2014−513076(JP,A)
【文献】
特開2000−212600(JP,A)
【文献】
特開昭57−155975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00 − 79/02
B65D 65/00 − 65/46
A61K 8/46
C11D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形石鹸と、
前記固形石鹸の表面をコーティングするロウ部材と、
前記固形石鹸に1周のみ巻き付けられた状態で前記固形石鹸と前記ロウ部材との間に配置され、前記ロウ部材の所定箇所から接触し合って2つの端部が外部に露出している紐状部材と
を備えたことを特徴とする石鹸コーティング構造体。
【請求項2】
前記紐状部材は木綿で形成されていることを特徴とする
請求項1に記載の石鹸コーティング構造体。
【請求項3】
前記ロウ部材はミツロウであることを特徴とする
請求項1又は2に記載の石鹸コーティング構造体。
【請求項4】
前記ロウ部材には、前記固形石鹸とは色彩の異なる物質が混合されていることを特徴とする
請求項1から3の何れか1項に記載の石鹸コーティング構造体。
【請求項5】
固形石鹸をコーティングする石鹸コーティング方法であって、
前記固形石鹸に対して紐状部材を1周分巻き付けるステップと、
前記1周分巻き付けた状態で、前記紐状部材のうち同じ位置で対向する対向部を支持するステップと、
前記対向部を支持した状態で、前記固形石鹸と前記紐状部材のうち前記1周分巻き付けられた巻付部とを、加熱溶融したロウ部材の中に浸漬するステップと、
前記固形石鹸及び前記巻付部を前記ロウ部材の中から取り出すステップと、
前記固形石鹸及び前記巻付部に付着した前記ロウ部材を常温で硬化させるステップと、
前記ロウ部材の所定箇所から接触し合って外部に露出している前記紐状部材の2つの端部それぞれの長さが所定の長さとなるように、前記紐状部材を切断するステップと
を備えたことを特徴とする石鹸コーティング方法。
【請求項6】
前記固形石鹸から下方に垂れて硬化した前記ロウ部材を削ることにより、前記固形石鹸に付着した前記ロウ部材の厚さが略均一となるように調整するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載の石鹸コーティング方法。
【請求項7】
請求項1から4の何れか1項に記載の石鹸コーティング構造体が備える前記紐状部材の前記端部が引っ張られることにより切断され前記固形石鹸から剥離された前記ロウ部材を、前記紐状部材の周りに付着させて、ロウソクを形成するステップを備えたことを特徴とするロウソク製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石鹸コーティング方法
、石鹸コーティング構造体
及びロウソク製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、固形石鹸は包装紙で包装され、紙箱に詰められて販売・保存されているものが多い。防湿性、保香性に優れた包装紙も開発されているが(例えば、特許文献1参照)、包装紙は空気を遮断することができないため、固形石鹸の劣化は免れない。特にコールドプロセス製法で製造された石鹸は劣化し易く、空気に触れた状態にしておくと、数ヶ月で石鹸表面が溶解したり変色したりする。
固形石鹸を空気に触れないようにして保存性を高めるための方法として、例えば、固形石鹸をプラスチック製の容器内に真空パックする方法が存在する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−51329号公報
【特許文献2】特開2004−168375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラスチック製の容器から固形石鹸を取り出した後は、その容器は不要となって廃棄されるだけであり、また当該容器を焼却した場合に有毒ガスが発生する場合があり、資源保護や環境負荷の面から好ましくない。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、固形石鹸の劣化を防いで長期保存を可能とし、かつ、資源を有効活用することができる石鹸コーティング方法
、石鹸コーティング構造体
及びロウソク製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、固形石鹸の劣化を防いで長期保存を可能とし、かつ、環境負荷を低減することができる石鹸コーティング方法
、石鹸コーティング構造体
及びロウソク製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、固形石鹸の劣化を防いで長期保存を可能とし、かつ、固形石鹸を使用する際に固形石鹸のコーティングを容易に剥離することができる石鹸コーティング方法及び石鹸コーティング構造体を提供することを目的とする。
また、本発明は、固形石鹸の劣化を防いで長期保存を可能とし、かつ、固形石鹸のコーティングを剥離する際及び剥離した後にユーザに楽しみを与えることができる石鹸コーティング方法及び石鹸コーティング構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的の少なくとも1つを達成するために、本発明に係る石鹸コーティング方法は、固形石鹸をコーティングする石鹸コーティング方法であって、前記固形石鹸に対して紐状部材を1周分巻き付けるステップと、前記1周分巻き付けた状態で、前記紐状部材のうち同じ位置で対向する対向部を支持するステップと、前記対向部を支持した状態で、前記固形石鹸と前記紐状部材のうち前記1周分巻き付けられた巻付部とを、加熱溶融したロウ部材の中に浸漬するステップと、前記固形石鹸及び前記巻付部を前記ロウ部材の中から取り出すステップと、前記固形石鹸及び前記巻付部に付着した前記ロウ部材を常温で硬化させるステップとを備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、固形石鹸に対して紐状部材を1周分巻き付けて対向部を支持し、対向部を支持した状態で固形石鹸と巻付部とを、加熱溶融したロウ部材の中に浸漬して取り出すことで、固形石鹸の表面をロウ部材でコーティングすることができ、固形石鹸を空気から遮断し固形石鹸の劣化を防いで長期保存が可能となる。
また、固形石鹸及び巻付部をロウ部材の中に浸漬した後に取り出した場合、紐状部材の両端部はロウ部材から外部に露出した状態となるため、固形石鹸を使用する際には、紐状部材の少なくとも1端部をユーザが手で引っ張ることで、ロウ部材を切断することができ、固形石鹸からロウ部材を容易に剥離することができる。
固形石鹸から剥離したロウ部材は、紐状部材が燃焼可能な材質の場合には紐状部材の周りにロウ部材を付着させることでロウソクとして使用でき、資源を有効活用することができる。
また、ロウ部材を固形石鹸から剥離する楽しみや、剥離したロウ部材でロウソクを作る楽しみをユーザに与えることができる。
また、上記石鹸コーティング方法により製造されたものは、長期保存が可能であり、かつ、石鹸及びロウソクとして使用することができるため、防災用品として常備しておくことができる。
【0008】
上記発明において、前記ロウ部材にはミツロウが含まれることを特徴とする。
この発明によれば、ミツロウは常温で固体であるため、固形石鹸をコーティングして空気から遮断することができ、固形石鹸の劣化を防ぐことができる。また、ミツロウは常温である程度の柔軟性があるため、ミツロウを容易に切断して固形石鹸を取り出すことができる。また、ミツロウを燃やしても有害物質が発生しないため、環境に負荷を与えることがない。
【0009】
また、本発明に係る石鹸コーティング構造体は、固形石鹸と、前記固形石鹸の表面をコーティングするロウ部材とを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、ロウ部材によって固形石鹸の表面をコーティングすることで、固形石鹸を空気から遮断することができるため、固形石鹸の劣化を防いで長期保存が可能となる。また、固形石鹸を使用する際に固形石鹸から剥離されるロウ部材はロウソクとして使用することができるため、資源を有効活用することができる。また、石鹸コーティング構造体は、長期保存が可能であり、かつ、石鹸及びロウソクとして使用することができるため、防災用品として常備しておくことができる。
【0010】
上記発明において、前記固形石鹸と前記ロウ部材との間に配置され、少なくとも1端部が外部に露出している紐状部材をさらに備えたことを特徴とする。
この発明によれば、ロウ部材でコーティングされた固形石鹸を使用する際に、外部に露出している紐状部材をユーザが手で引っ張ることで、ロウ部材を切断することができ、固形石鹸からロウ部材を容易に剥離することができる。
剥離したロウ部材は、紐状部材が燃焼可能な材質の場合には紐状部材の周りにロウ部材を付着させることでロウソクとして使用できるため、資源を有効活用することができる。
また、紐状部材を用いてロウ部材を固形石鹸から剥離する楽しみや、剥離したロウ部材でロウソクを作る楽しみをユーザに与えることができる。
【0011】
上記発明において、前記紐状部材は前記固形石鹸に略1周分巻き付けられた状態で前記固形石鹸と前記ロウ部材との間に配置され、前記紐状部材の両端部は近接又は接触した状態で外部に露出していることを特徴とする。
この発明によれば、紐状部材の両端部は近接又は接触した状態で外部に露出しているため、紐状部材のそれぞれの端部を引っ張ることでそれぞれで半周分ずつロウ部材を切断することができ、固形石鹸からロウ部材を容易に剥離することができる。
【0012】
上記発明において、前記ロウ部材はミツロウを含むことを特徴とする。
この発明によれば、ミツロウは常温で固体であるため、固形石鹸をコーティングして空気から遮断することができ、固形石鹸の劣化を防ぐことができる。また、ミツロウは常温である程度の柔軟性があるため、ミツロウを容易に切断して固形石鹸を取り出すことができる。また、ミツロウを燃やしても有害物質が発生しないため、環境に負荷を与えることがない。
【0013】
上記発明において、前記ロウ部材には、前記固形石鹸とは色彩の異なる物質が混合されていることを特徴とする。
この発明によれば、固形石鹸とロウ部材との色彩を異ならせることで、固形石鹸とロウ部材とを容易に区別することができる。
【0014】
上記発明において、前記紐状部材は燃焼可能であることを特徴とする。
この発明によれば、紐状部材の周りに固形石鹸から剥離したロウ部材を付着させて、ロウソクを作ることができ、資源を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る石鹸コーティング構造体の平面図である。
【
図2】同実施形態に係る石鹸コーティング構造体の
図1に示すA−A線断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る石鹸コーティング方法を示すフローチャートである。
【
図4】固形石鹸に紐状部材を1周分巻き付けた様子を示す図である。
【
図5】紐状部材の対向部を支持している様子を示す模式図である。
【
図6】対向部を支持した状態で、固形石鹸と巻付部とを加熱溶融したロウ部材の中に浸漬する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る石鹸コーティング構造体1の平面図、
図2は石鹸コーティング構造体1の
図1に示すA−A線断面図である。
これらの図に示すように、石鹸コーティング構造体1は、扁平な略円柱の形状を有している。石鹸コーティング構造体1の外部は、略均一な厚さのロウ部材10でコーティングされており、内部にはロウ部材10と密着した状態で固形石鹸20が収納されている。
【0017】
固形石鹸20は扁平な円柱形状を有している。なお、固形石鹸20の形状は扁平な円柱形状に限定されるものではなく、直方体形状、球状等、任意の形状をとることができる。
固形石鹸20は、公知の技術で製造された石鹸であり、固形であればどのような石鹸であってもよい。なお、石鹸コーティング構造体1は固形石鹸20が空気に触れないように固形石鹸20をロウ部材10でコーティングする構造を有しているため、空気に触れても変質し難いホットプロセス製法の石鹸よりも、変質し易いコールドプロセス製法の石鹸の方が、本発明の効果が顕著に現れる。
【0018】
コールドプロセス製法とは、油脂と苛性ソーダとを常温で混合して鹸化を行うことにより、石鹸を製造する方法である。コールドプロセス製法は、ホットプロセス製法と異なり、加熱しないため油脂の芳香が残り、また、塩析を行わないため油脂原料中のグリセリンやビタミン等が除去されないので美肌効果がある反面空気に触れると変質し易い。
【0019】
ロウ部材10は、ロウ(ワックス)又はロウと類似の性状を示す物質を含んで構成される。ロウは、高級脂肪酸と一価または二価の高級アルコールとのエステルであり、一般的に常温で固体であり、加熱すると比較的低い温度で融解し、気化すると容易に燃焼する。また、ロウは酸化や加水分解に対して安定しているため、固形石鹸20を長期間保存するためのコーティング材として適している。
ロウ部材10としては、常温で固体であり、触れてもべたついたり凹まない程度の硬度を有し、長期間変質し難いものが好ましい、このようなものとしてはミツロウが存在する。ミツロウは、ミツバチが巣を作る際に分泌するロウであって、ミツバチの巣の主成分であり、融点は約60〜65℃程度である。
【0020】
なお、ロウ部材10は、ミツロウに限らず、例えば、パラフィンワックス、米ぬかロウ、綿ロウ、木ロウ、ワセリン、ロウと類似の性状を示す化学合成した物質等であってもよいし、これらの混合物であってもよい。ただし、ロウ部材10を固形石鹸20から剥離した後に当該ロウ部材10を燃焼させる場合には、環境負荷を低減するために有害ガスが発生しないものが好ましい。
【0021】
ロウ部材10には、ロウ部材10の色彩を固形石鹸20と異ならせるために、クレイ(ミネラル粘土)が混合されている。クレイは、シリカが主成分であり、アルミニウム、カルシウム、カリウム、鉄、マグネシウム等のミネラルを含む。クレイの色彩は、含まれるミネラルの量によって異なり、茶、赤、黄、白等が存在する。
ロウ部材10と固形石鹸20との色彩を異ならせることによって、ユーザが固形石鹸20からロウ部材10を剥離する際に、ロウ部材10と固形石鹸20とを区別し易くなる。
なお、ロウ部材10に混合するものとしてはクレイに限らず、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、紅花色素等、固形石鹸20と色彩が異なる任意の物質を混合することができる。ただし、ロウ部材10を固形石鹸20から剥離した後に当該ロウ部材10を燃焼させる場合には、有害ガスが発生しない天然のものが好ましい。
【0022】
また、ロウ部材10の柔軟性を高めたり、固形石鹸20からロウ部材10を剥離し易くするための物質を、ロウ部材10に混合してもよい。
【0023】
固形石鹸20の周とロウ部材10との間には、細長い紐状部材30が配置されている。
図1に示すように、紐状部材30は、固形石鹸20に略1周分巻き付けられた状態で、固形石鹸20とロウ部材10との間に配置されている。紐状部材30の2つの端部32は、近接した状態で外部に露出している。なお、各端部32の位置関係や外部に露出している紐状部材30の長さによっては、端部32同士が接触する場合もある。
【0024】
このような紐状部材30を設けたことにより、ユーザが固形石鹸20を使用しようとする際に、外部に露出している紐状部材30を手で引っ張ることで、周に沿ってロウ部材10を切断することができ、固形石鹸20からロウ部材10を容易に剥離して、固形石鹸20を取り出すことができる。また、2つの端部32が外部に露出しているため、それぞれの端部32を引っ張ることでそれぞれで半周分ずつロウ部材10を切断することができ、1つの端部32で1周分のロウ部材10を切断するよりも、楽に切断することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、紐状部材30は、固形石鹸20に略1周分巻き付けられた状態で、固形石鹸20とロウ部材10との間に配置されているとしたが、これに限定されることはなく、紐状部材30が固形石鹸20に1周に満たない長さだけ巻き付けられており、周の一部のロウ部材10のみを紐状部材30で切断できるようにしてもよい。
また、紐状部材30の配置場所は固形石鹸20の周上に限らず、固形石鹸20とロウ部材10との間であれば任意の場所で構わない。また、外部に1つの端部32だけを露出させるようにしてもよい。
【0026】
紐状部材30の材質は、一般的にロウソクの芯に用いられる木綿で形成されている。
なお、紐状部材30の材質は木綿に限定されることはなく、ロウ部材10を切断できるだけの強度があるものであればよい。ただし、固形石鹸20から剥離したロウ部材10をロウソクとして利用する場合には、紐状部材30をロウソクの芯として利用することができるように、紐状部材30の材質としては燃焼可能であって燃焼させても有害ガスが発生しないものが適している。
【0027】
このように、固形石鹸20の表面をロウ部材10でコーティングすることで、固形石鹸20を空気から遮断することができるため、固形石鹸20がコールドプロセス製法の石鹸であったとしても、当該固形石鹸20の劣化を防ぎ長期保存が可能となる。
また、ユーザが固形石鹸20を使用する際には、紐状部材30の端部32を手で引っ張ることで、ロウ部材10を紐状部材30で切断し、固形石鹸20からロウ部材10を容易に剥離することができる。
剥離したロウ部材10は、紐状部材30の周りにロウ部材10を付着させ、手で圧力を加えて固めることで、ロウソクとして使用することができるため、資源を有効活用することができる。なお、気温が低くてロウ部材10が固まり難い場合には、ロウ部材10を加熱溶融して形を整えた上で冷却固化して、ロウソクを作成してもよい。
また、紐状部材30の端部32を手で引っ張ってロウ部材10を固形石鹸20から剥離し内部に封印されている固形石鹸20を取り出す楽しみや、剥離したロウ部材10でロウソクを作る楽しみをユーザに与えることができる。
【0028】
また、石鹸コーティング構造体1は、長期保存が可能であり、かつ、石鹸及びロウソクとして使用することができるため、防災用品として常備しておくことができる。
ユーザが石鹸コーティング構造体1を日常的に使用していれば、石鹸コーティング構造体1を災害時に使用することとなった場合でも、日常の延長として石鹸コーティング構造体1を使用することができ、災害時のストレスを低減することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、ロウ部材10と固形石鹸20との間に紐状部材30を設けることで、固形石鹸20からロウ部材10を容易に剥離することを可能としているが、紐状部材30を設けずに、例えばナイフで石鹸コーティング構造体1を2つに切断した後に、当該切断面からロウ部材10と固形石鹸20とを分離することも可能である。また、ロウ部材10に柔軟性がある場合には、手でロウ部材10を剥がすことも可能である。
【0030】
次に、
図3に示すフローチャートを参照して、固形石鹸20をロウ部材10でコーティングして、石鹸コーティング構造体1を製造する石鹸コーティング方法について説明する。
まず、公知の方法で扁平な円柱状の固形石鹸20を製造する(ステップS101)。
次に、
図4に示すように、固形石鹸20に対して紐状部材30を1周分巻き付ける(ステップS102)。これにより、紐状部材30のうち同じ位置で対向する部分としての対向部34が形成される。
【0031】
次に、紐状部材30を固形石鹸20に巻き付けた状態で対向部34を手で挟んで持ち上げ、
図5に示すように、固形石鹸20の上側で対向部34を支持する(ステップS103)。なお、本実施形態では対向部34を人手で支持しているが、機械で支持してもよい。
【0032】
次に、
図6に示すように、ステンレス製等の容器40の中にロウ部材10を所定温度まで加熱して溶融させたものを予め用意しておく。そして、対向部34を支持した状態で対向部34を下降させ、固形石鹸20と、紐状部材30のうち固形石鹸20に巻き付けられた部分である巻付部36と、を容器40内のロウ部材10の中に浸漬する(ステップS104)。
浸漬させてから数秒程度で対向部34を上昇させて、容器40内のロウ部材10の中から固形石鹸20及び巻付部36を取り出す(ステップS105)。
取り出された固形石鹸20及び巻付部36に付着したロウ部材10を、常温で硬化させる(ステップS106)。
【0033】
以上の手順により、石鹸コーティング構造体1が完成する。
なお、ロウ部材10によるコーティングの厚さを調整するために、ステップS104〜S106までのステップを複数回繰り返してもよい。
また、コーティングの厚さを略均一にして、紐状部材30によるロウ部材10の切断を容易にするために、固形石鹸20から下方に垂れて硬化したロウ部材10を削ってもよいし、ロウ部材10が常温で冷却されて硬化する前に形状を整えてもよい。
また、ロウ部材10から露出する紐状部材30の長さを例えば1cm程度の長さに調整するために、ロウ部材10が硬化した後に、ロウ部材10から露出している紐状部材30の端部32を切断してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1:石鹸コーティング構造体
10:ロウ部材
20:固形石鹸
30:紐状部材
32:端部
34:対向部
36:巻付部
40:容器
【要約】
【課題】固形石鹸の劣化を防いで長期保存を可能とし、かつ、資源を有効活用することができる石鹸コーティング方法及び石鹸コーティング構造体を提供する。
【解決手段】石鹸コーティング構造体1は、固形石鹸20と、固形石鹸20の表面をコーティングするロウ部材10と、固形石鹸20に略1周分巻き付けられた状態で固形石鹸20とロウ部材10との間に配置され、各端部32が近接又は接触した状態で外部に露出している紐状部材30と、を備える。
【選択図】
図1