(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852287
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】封止剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20160114BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20160114BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20160114BHJP
C08K 3/00 20060101ALI20160114BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20160114BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
C08L23/08
C08L23/26
C08K3/00
H01L31/04 560
C09K3/10 Q
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-502487(P2015-502487)
(86)(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公表番号】特表2015-518067(P2015-518067A)
(43)【公表日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】IB2013051860
(87)【国際公開番号】WO2013144755
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】MI2012A000522
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511020829
【氏名又は名称】サエス・ゲッターズ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・ヴァッカ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ボヌッチ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・スコポーニ
【審査官】
井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−182914(JP,A)
【文献】
特表2010−504646(JP,A)
【文献】
国際公開第1998/009808(WO,A1)
【文献】
特開2004−214641(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/125685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
H01L31/04−31/06、51/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐ 少なくとも1つのエチレン−オクテン共重合体;
‐ 無水マレイン酸変性ポリオレフィン;
‐ エチレン−酢酸ビニル共重合体;
‐ 少なくとも1つの不活性充填剤;
‐ 少なくとも1つの水分捕捉剤;
‐ 少なくとも安定化又は酸化防止保存剤;
を含む、水分に敏感なデバイスの隔離のための封止剤組成物。
【請求項2】
前記エチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、不活性充填剤、水分捕捉剤、及び保存剤の質量が、合計して前記組成物の全質量の少なくとも95%に達することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記無水マレイン酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記無水マレイン酸変性ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体が、1g/10分を超えるメルトフローインデックス及び0.87〜0.96g/ccの密度を有することを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記エチレン−オクテン共重合体が、5g/10分以上のメルトフローインデックスを有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
30g/10分以上のメルトフローインデックスを有する第2のエチレン−オクテン共重合体をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が、30質量%を超える酢酸ビニル含有量を有し、30g/10分を超えるメルトフローインデックスを有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの水分捕捉剤が、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、及びアルミノケイ酸塩から選択される1以上の化合物の粉体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの水分捕捉剤が、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムを含むことを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの難燃剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
‐ 前記組成物の全質量に対して、5〜20質量%の量の前記無水マレイン酸変性ポリオレフィン;
‐ 前記組成物の全質量に対して、40〜60質量%の量の前記エチレン−オクテン共重合体;
‐ 前記組成物の全質量に対して、0.5〜5質量%の量の前記エチレン−酢酸ビニル共重合体;
‐ 前記組成物の全質量に対して、1〜30質量%の量の前記少なくとも1つの不活性充填剤;
‐ 前記組成物の全質量に対して、20〜40質量%の量の前記少なくとも1つの水分捕捉剤;
‐ 前記組成物の全質量に対して、0.5〜5質量%の量の前記少なくとも1つの安定化又は酸化防止保存剤
を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
‐ 前記組成物の全質量に対して、8〜10質量%の量の前記無水マレイン酸変性ポリオレフィン;
‐ 前記組成物の全質量に対して、50〜55質量%の量の前記エチレン−オクテン共重合体;
‐ 前記組成物の全質量に対して、1〜4質量%の量の前記エチレン−酢酸ビニル共重合体;
‐ 前記組成物の全質量に対して、1〜10質量%の量の前記少なくとも1つの不活性充填剤;
‐ 前記組成物の全質量に対して、25〜35質量%の量の前記少なくとも1つの水分捕捉剤;
‐ 前記組成物の全質量に対して、1〜3質量%の量の前記少なくとも1つの安定化又は酸化防止保存剤;及び、
‐ 前記組成物の全質量に対して、0.5〜3質量%の量の前記少なくとも1つの難燃剤
を含むことを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
水分に敏感なデバイスにおける封止剤としての、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
光起電力セル、光電気化学太陽電池(SSPECs)、及び色素増感太陽電池(DSSCs)のうち、少なくとも1つを含み、少なくとも1つの第1基板と少なくとも1つの第2基板とを有する太陽電池モジュールであって、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物が、前記第1基板と前記第2基板の間に位置することを特徴とする、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部環境からの水分の浸透に敏感なデバイスを隔離するための封止剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
低い水蒸気透過率を有する封止剤組成物を用いて、水分に敏感なデバイスのための隔離構造を作製することが知られている
【0003】
特に、太陽電池パネルの機能は、パネル内部の水分の透過(浸透)により低減する恐れがあることが知られている。そのため、そうした透過を防ぐために、光起電力デバイスのための隔離構造が知られており、これはガラス又は他の水分を通さない材料でできた複数のプレート(基板)を含み、これらは金属材料でできたスペーサによって端部領域で連結している。ガラスプレートに対向するスペーサの側面とこのプレートの内面との間に、封止剤組成物が使用され、この封止剤組成物は太陽電池パネル内への水分子の侵入に対するバリアを形成する目的を有する。太陽光発電パネル及び水分に敏感な他のデバイスに使用される封止剤組成物は、例えば、パネル又はデバイスの製造プロセスの工程で熱サイクルに供される。そのため、120〜130℃の温度まで熱力学的安定性を備える配合を得ることは有利である。
【0004】
一般的に、公知の封止剤組成物は、接着促進剤として、シランで変性されたオレフィンポリマーを含む。
【0005】
特許文献1には、
a)400〜600,000 D、好ましくは5,000〜300,000 Dの数平均分子量を有する、30〜60質量%、好ましくは40%超50質量未満のオレフィン系ポリマー、
b)2〜35質量%、好ましくは5〜25質量%の変性ポリマー、
c)5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%の微粒子状の不活性充填剤、
d)5〜25質量%、好ましくは10〜15質量%の水分吸着剤、及び
e)0〜3質量%の保存剤、特に酸化防止剤またはUV保護剤
を含む一次封止剤が記載されている。
【0006】
高分子量のオレフィン系ポリマーとして、ポリイソブチレン、ポリブテン、ブチルゴム(ポリイソブチレン‐イソプレン)、スチレンのブロックコポリマー、特に、SBS、SIS、SEBS、SEPS、SIBS、SPIS、及びこれらの変性形態、並びにアモルファスα−オレフィンのコポリマー及び/又はターポリマーが記載されている。
【0007】
変性ポリマーとしては、シランで変性されたポリオレフィンの使用が記載されている。
【0008】
特許文献2には、以下の組成:
a)組成物全体の約10〜80質量%の量の不飽和又は反応性ポリオレフィン又はその組合せ;
b)組成物全体の約5〜約80質量%の量のオレフィン系重合体又はその組合せ;
c)組成物全体の約10〜約60質量%の量の少なくとも1種の充填剤;
d)組成物全体の約2.5〜約25質量%の量の少なくとも1種の水分捕捉剤;及び
e)組成物全体の約0.1〜約3質量%の量の酸化防止剤又はUV安定剤を含む少なくとも1種の保存剤;
を有する光起電力素子用のシーラント剤組成物が記載されている。
【0009】
この組成物は、好ましくは、組成物全体の5質量%〜30質量%の量のシラン変性ポリマーを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開公報第WO2009/036752号
【特許文献2】国際公開公報第WO2011/047185号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、シランで変性されたポリマーから生じる接着性を促進する効果の大きさは、封止剤組成物の他の成分及び封止される(シールされる)材料によって左右される。そのため、シランで修飾されたポリマーを含む封止剤組成物は、目的とする材料との関係で適用性が限られ、また、これらは保存性に関して特別な注意を必要とする。
【0012】
さらに、これまでになされた努力にもかかわらず、高い熱安定性と低い水蒸気透過率(MVT)を有する封止剤組成物の必要性が存在し続けている。
【0013】
そのため、本発明の目的は、上記した欠点を有さず、且つ、高い熱安定性及び低い水蒸気透過率(MVT)を有する封止剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的は、本願の特許請求の範囲の請求項1でその主な特徴を規定した封止剤組成物、同請求項13でその特徴を規定した使用、及び同請求項15でその特徴を規定した太陽電池モジュールで達成される。本発明に係る組成物、使用、及び太陽電池モジュールの他の特徴は、残りの請求項に規定されている。
【0015】
本発明に係る組成物は、
‐ 無水マレイン酸変性ポリオレフィン;
‐ 少なくとも一つのエチレン−オクテン共重合体;
‐ エチレン−酢酸ビニル共重合体;
‐ 少なくとも1つの不活性充填剤;
‐ 少なくとも1つの水分収着剤、及び
‐ 少なくとも安定化又は酸化防止保存剤
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましくは、発明の組成物において、上記した成分は、水分に敏感なデバイスの製造プロセスにおいて、封止剤(「シーリング剤」又は「シーラント」とも言う。)として使用される組成物全体の少なくとも95質量%までを占める。
【0017】
本発明者らは、上記で示した成分の選択、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィン変性とエチレン−オクテン共重合体(以下、「コポリマー」とも言う。)との組み合わせが、シラン変性ポリオレフィンの存在の有無にかかわらず、優れた封止効果を有する組成物もたらすことができることを見出した。そのため、本発明の一態様によれば、本発明の組成物は、シラン変性ポリオレフィンを含まない。
【0018】
また、本発明に係る組成物は、高い熱安定性と低い水蒸気透過率(WVT)を示す。
【0019】
さらに、エチレン−酢酸ビニル共重合体の存在は、接着性の封止剤の冷却後であっても、圧縮力の適用後の接着性の向上をもたらすので、タッキング(仮付け)及び粘着剤として良好な特性を示す。
【0020】
本発明に係る組成物において、エチレン−オクテン共重合体と、無水マレイン酸変性ポリオレフィンとの量の質量比は、有利には1:1〜10:1であり、より好ましくは3:1〜8:1であり、さらに好ましくは4:1〜6:1である。
【0021】
好ましくは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンは、1g / 10分を超えるMFI値(「メルトフローインデックス」の頭字語)及び0.87〜0.96 g/ccの密度を有する、無水マレイン酸でグラフト化されたポリエチレン/ポリプロピレンの共重合体である。MFI値は、所定の温度及び所定の加圧圧力で、ISO1133国際手順に従って評価することができる、溶融状態におけるポリマー材料の流動性を特定するパラメータであり、同組成物の密度も同様に国際規格であるASTM D 792に従って一般的に評価される。
【0022】
好ましくは、エチレン−オクテン共重合体は、10〜35%、より好ましくは15〜25%の結晶化度、0.86〜0.90 g/ccの密度、及び5g / 10分以上のMFI値によって特徴づけられる。
【0023】
好ましくは、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルの高い含有量(30質量%を超える)を有し、30g / 10分を超えるMFI値を有する。
【0024】
1つの代替実施形態において、上述したエチレン−オクテン共重合体は、より高いMFI値、好ましくは30g / 10分を超えるMFI値を有する第2のエチレン−オクテン共重合体と組み合わせて用いられる。
【0025】
不活性充填剤として、本発明に係る組成物は、石膏、ケイ酸塩、酸化ケイ素、酸化チタン、及びカーボンブラックを含み得る。本発明の変形例の組成物は、タルク及びカーボンブラックの混合物を含む。特に有利な場合において、6:1〜8:1、より好ましくは2:1〜4:1の質量比のタルク及びカーボンブラックの混合物が用いられる。
【0026】
水分吸着剤(「水分捕捉剤」とも言う。)として、デバイスを隔離(又は「遮断」とも言う。)するための封止剤組成物において通常用いられる化合物を使用でき、例えば、アルカリ土類金属酸化物及びアルミノケイ酸塩からなる群から選択される1以上の化合物の粉体を用いることができる。アルカリ土類金属酸化物は、好ましくは、リチウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウムの酸化物から選択される。好ましくは、水分吸着剤として、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムが用いられる。
【0027】
本発明に係る組成物において好ましく用いられる保存剤は、立体障害構造のフェノール類(立体障害ヒンダードフェノル類)、ヒンダードアミン類、及びメルカプト化合物からなる群から選択され、ベンゾフェノンおよびベンゾトリアゾールが、本発明に係る組成物において使用するのに適した市販の酸化防止保存剤である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、封止剤組成物は:
‐ 組成物の全質量に対して、5〜20質量%、より好ましくは8〜10質量%の量の無水マレイン酸変性ポリオレフィン;
‐ 組成物の全質量に対して、40〜60質量%、より好ましくは50〜55質量%の構成量のエチレン−オクテン共重合体;
‐ 組成物の全質量に対して、0.5〜5質量%、より好ましくは1〜4質量%の構成量のエチレン−酢酸ビニル共重合体;
‐ 組成物の全質量に対して、1〜30質量%、より好ましくは1〜4質量の構成量の少なくとも1つの不活性充填剤;
‐ 組成物の全質量に対して、20〜40質量%、より好ましくは25〜35質量%の構成量の少なくとも1つの水分吸着剤、及び、
‐ 組成物の全質量に対して、0.5〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%の量の少なくとも1つの保存剤、を含む。
【0029】
本発明に係る組成物は、有利には、少なくとも1つの難燃剤、好ましくは水酸化マグネシウムからなる、少なくとも1種の難燃剤をさらに含む。
【0030】
難燃剤は、組成物の全質量に対して、0.5質量%〜3質量%の量で本発明の好ましい実施形態に係る組成物中に存在する。
【0031】
本発明の封止剤組成物は、封止剤組成物として使用できる独自の混合物として処方化されることができ、又はエンドユーザによって使用される直前に混合される2成分の予備混合物(プレミックス)として処方化することもできる。
【0032】
本発明の封止剤組成物は、例えば、電子デバイス、感光性デバイス、特にペースメーカー等の医療デバイス、特にOLED及びOLETデバイス等の有機電界発光素子、固体光電気化学太陽電池(SSPECs)、色素増感太陽電池(DSSCs)、及び少なくとも一つの光起電力セルを備える太陽電池パネル等の水分(湿気)に敏感なあらゆるデバイスの隔離構造を製造するために有利に使用される。
【0033】
一態様において、本発明は、例えばガラス、金属、又は他の水分を通さない材料のシート等の、少なくとも1つの第1の基板と少なくとも1つの第2の基板の間に挟まれた少なくとも1つの光起電力セルを含む太陽電池パネルに関する。本発明の組成物は、第1の基板及び第2の基板の間、並びに金属材料から成るスペーサ等の任意の追加要素の間に、封止剤として配置される。
【実施例】
【0034】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【0035】
実施例1
本発明のポリマー組成物を、DOW Engage (登録商標) 8411タイプのポリエチレン(1-オクテン)、DOW Amplify(登録商標) TY 1351タイプの無水マレイン酸変性ポリオレフィン、Arkema Evatane (登録商標) 33-45タイプの、ラジカル高圧重合により調製されたエチレン−酢酸ビニルのランダム共重合体、及びエチレングリコールビス[3,3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチレート] タイプの保存剤(それぞれの質量比; 100:19:6:3)から得た。
【0036】
このようにして得られた混合物を、一定の回転速度に設定された2つの逆回転ツール(二軸スクリュー方式)を備える恒温チャンバー内で、約220℃の温度まで加熱し、回転させながら3分間保持した。
【0037】
次いで、10:1の比のタルクとカーボンブラックの混合物、及び2:1の比のCaOとMgOの混合物を、得られた組成物の全質量に対して、それぞれ6%と28%の量で加えた。次いで、この混合物を一定速度で回転させて保持し、組成物に対して2質量%に相当する量の難燃剤を加えた。温度を245℃まで上昇させた。
【0038】
組成物を冷却し、示差走査熱量分析による特性評価を行って相転移温度の範囲を評価すし、結晶相の溶融の結果を26〜137℃であると同定した。
【0039】
加えて、ガラス接着性を以下のとおりに測定した。150℃でのラミネート法により、25×10mmの区分を覆って、ガラス試験片上に厚さ0.3mmの試料を製造した。この試料に、10秒間の1Nの予備荷重(予備荷重速度:1mm/分)適用し、次いで10kNのロードセル(同様に試験速度は1mm/分)を適用して、引張試験に供した。
【0040】
試験結果は、0.3mmの試料厚さにおいて、1250Nの最小接着強度の、ガラスに対する高い接着性を示した。
【0041】
比較例2
エチレン−酢酸ビニル共重合体を加えなかった点のみを変えて、実施例1に記載した方法を繰り返した。そのため、実施例1に記載したのと同様のポリマー組成物を調製したが、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含んでいなかった。
【0042】
得られた組成物を、ガラスに対する接着性を測定するために、重ね剪断試験に供した。試験結果は、0.3mmの試料厚さにおいて、1140Nの最小接着強度のガラスに対する高い接着性を示した。この値は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いた配合と比較して、接着性の10%の減少を示す。
【0043】
比較例3
唯一のポリマー成分として、60,000 g/モルの重量平均モル質量を有する、ポリ(イソブチレン)を用いて、実施例1に記載した調製方法によりポリマー組成物を得た。実施例1及び比較例2で用いた質量比の、上記したポリマー成分及び保存剤、タルク、カーボンブラック、及び酸化カルシウムを、一定の回転速度に設定された2つの逆回転ツールを備える恒温チャンバー内に導入した。
【0044】
示差走査熱量測定分析は、36〜120℃のわずかな(限られた)結晶部分の溶融による可逆的な吸熱変化を示す。この分析は、120℃以上で、この材料が機械的特性の必然的な大幅な減少とともに完全に溶融することを示す。