特許第5852326号(P5852326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852326
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20160114BHJP
   B60N 2/44 20060101ALI20160114BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   B60N2/42
   B60N2/44
   A47C7/40
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-107176(P2011-107176)
(22)【出願日】2011年5月12日
(65)【公開番号】特開2012-236519(P2012-236519A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2014年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100097054
【弁理士】
【氏名又は名称】麻野 義夫
(72)【発明者】
【氏名】笠間 秀治
(72)【発明者】
【氏名】沖本 良太
【審査官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−111346(JP,U)
【文献】 実開平2−136560(JP,U)
【文献】 特開2002−345585(JP,A)
【文献】 特表平09−504248(JP,A)
【文献】 特開2010−173430(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10022441(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/42
A47C 7/40
B60N 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバック内に設けられ、ヘッドレストを支持するバックフレームと、このバックフレームの左右のサイドフレームの間に両端部が係止されて、乗員の腰部付近を支えるように左右方向に延在する支えばね部材とを備えた車両用シートにおいて、
前記支えばね部材の両端部は、それぞれ、各サイドフレームに固定され、
前記支えばね部材における両端部の間に位置する中央部分は、平面視で前記支えばね部材が略台形状になるように、前方に略フラット状態で突出し、且つ、後方に沈み込んだときにそのばね力によって、前記前方に突出される状態に自動復帰するように成形されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記左右のサイドフレームに一端部が係止され、他端部が前記支えばね部材に係止される復帰ばね部材が設けられ、この復帰ばね部材は、前方に突出された支えばね部材の中央部分が後向きの荷重で後方に沈み込んだ時に、当該復帰ばね部材のアシストによって、前方に突出される状態に復帰させるものであることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記支えばね部材は、前記左右のサイドフレームの間に、上下に間隔を隔てて複数個が設けられ、上下の支えばねが連結部材で連結されていて、前記復帰ばね部材は左右各1個であり、左右のサイドフレームに左右各1個の一端部がそれぞれ係止され、その他端部は、前記上下の支えばね部材の連結部材にそれぞれ係止されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記バックフレームと左右のサイドフレームの間の空間内で、支えばね部材の前側に、乗員の上半身の背中を支持するクッションパッドが収納され、このクッションパッドの両側部に、上下方向に延在するスリットが形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シートバック内に設けられ、ヘッドレストを支持するバックフレームを備えた車両用シートがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、バックフレームに衝撃受圧フレームとヘッドレスト支持フレームとを設けた自動車用シートが開示されている。衝撃受圧フレームは、その下端がバックフレームの下部に回動可能に取付けられている。また、ヘッドレスト支持フレームは、その上下の中央部がバックフレームの上部に回動可能に取付けられるとともに、その下端が前記衝撃受圧フレームの上端に連結されている。従って、衝撃受圧フレームの後傾に連動してヘッドレスト支持フレームは、その上端が前方移動するように回動する構成となっている。
【0004】
これにより、後突時には、衝撃受圧フレームが乗員に押されて後傾するのに伴って、ヘッドレスト支持フレームの上端に支持されたヘッドレストが前方移動し、乗員の頭部とヘッドレストとの間の隙間が少なくなって、乗員の頸部が保護されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−1842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、バックフレームに衝撃受圧フレームおよびヘッドレスト支持フレームの2つのフレームを設けてそれら2つのフレームを連動させる構成のため、構造が複雑であるという問題がある。
【0007】
本発明は、前記のような問題を解決するためになされたものであり、後突時における乗員の頸部の保護が可能な簡略な構造の車両用シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、シートバック内に設けられ、ヘッドレストを支持するバックフレームと、このバックフレームの左右のサイドフレームの間に両端部が係止されて、乗員の腰部付近を支えるように左右方向に延在する支えばね部材とを備えた車両用シートにおいて、前記支えばね部材の両端部は、それぞれ、各サイドフレームに固定され、前記支えばね部材における両端部の間に位置する中央部分は、平面視で前記支えばね部材が略台形状になるように、前方に略フラット状態で突出し、且つ、後方に沈み込んだときにそのばね力によって、前記前方に突出される状態に自動復帰するように成形されていることを特徴とする車両用シートを提供するものである。
【0009】
前記左右のサイドフレームに一端部が係止され、他端部が前記支えばね部材に係止される復帰ばね部材が設けられ、この復帰ばね部材は、前方に突出された支えばね部材の中央部分が後向きの荷重で後方に沈み込んだ時に、当該復帰ばね部材のアシストによって、前方に突出される状態に復帰させる構成とすることができる。
【0010】
前記支えばね部材は、前記左右のサイドフレームの間に、上下に間隔を隔てて複数個が設けられ、上下の支えばねが連結部材で連結されていて、前記復帰ばね部材は左右各1個であり、左右のサイドフレームに左右各1個の一端部がそれぞれ係止され、その他端部は、前記上下の支えばね部材の連結部材にそれぞれ係止されている構成とすることができる。
【0011】
前記バックフレームと左右のサイドフレームの間の空間内で、支えばね部材の前側に、乗員の上半身の背中を支持するクッションパッドが収納され、このクッションパッドの両側部に、上下方向に延在するスリットが形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、支えばね部材は、中央部分が前方に略フラット状態で突出するように成形されている。そして、支えばね部材の中央部分に加わる荷重が設定値未満の無負荷時や着座時等の通常時には、支えばね部材自体で中央部分の後方への撓みを制限することで、着座した乗員の腰部付近が支えばね部材で適切に支えられるようになる。
【0013】
また、支えばね部材の前方に突出した中央部分に加わる荷重が設定値以上になる、例えば後突時の後向きの荷重で、支えばね部材の中央部分が後方に大きく撓む(沈み込む)ようになる。
【0014】
これにより、乗員の腰部付近とともに上半身がシートバックに深く沈み込むようになり、乗員の頭部とヘッドレストとの間の隙間が少なくなって、乗員の頸部にかかる負担が軽減するようになる。なお、後方に大きく撓んだ(沈み込んだ)支えばね部材の中央部分は、そのばね力によって、前方に突出される状態に自動復帰するようになる。
【0015】
このように、支えばね部材の中央部分を前方に略フラット状態で突出させるという簡略な構造で、乗員の腰部付近の支えと後突時における乗員の頸部の保護との両立が実現できるようになる。
【0016】
一方、左右のサイドフレームに一端部を係止し、他端部を支えばね部材に係止する復帰ばね部材を設けると、前方に突出された支えばね部材の中央部分が後向きの荷重で後方に沈み込んだ時に、復帰ばね部材のばね力のアシストによって、支えばね部材の中央部分を前方に突出される状態に確実に復帰させることができる。
【0017】
また、復帰ばね部材で支えばね部材の中央部分を支持することで、支えばね部材の中央部分が左右方向に横倒れすることを未然に防ぐことができる。
【0018】
さらに、復帰ばね部材のばね力を調整することで、支えばね部材に通常の着座荷重が作用した場合の着座フィーリングの調整が容易に行えるとともに、後突時の作動荷重の調整も容易に行えるようになる。
【0019】
また、上下の支えばね部材の内側部分を連結部材で連結し、左右各1個の復帰ばね部材の一端部を左右のサイドフレームにそれぞれ係止し、その他端部を連結部材にそれぞれ係止する構成とすれば、支えばね部材毎に復帰ばね部材を設ける場合に比べて、構造がより簡略になる。
【0020】
さらに、バックフレームと左右のサイドフレームの間の空間内で、支えばね部材の前側に、乗員の上半身の背中を支持するクッションパッドを収納し、このクッションパッドの両側部に、上下方向に延在するスリットを形成する構成とすれば、乗員の腰部付近とともに上半身がシートバックにより早くより深く沈み込むようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る車両用シートの側面図である。
図2】(a)はバックフレームの斜視図、(b)は(a)のA部の拡大図である。
図3】(a)はバックフレームの要部正面図、(b)は(a)の側面図である。
図4】乗員とシートバックとの位置関係を示す側面図である。
図5】シートバックの左半分であり、(a)は無負荷状態の平面断面図、(b)は着座状態の平面断面図、(c)は後突状態の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る車両用シート1の側面図である。
【0023】
車両用シート1は、シートクッション2と、このシートクッション2に前後傾(リクライニング)可能に設けられるシートバック3と、このシートバック3の上端に取付けられるヘッドレスト4とを備えている。また、シートクッション2とシートバック3を連結して、シートクッション2の傾斜角を調整するリクライニング装置5を備えている。
【0024】
図2のように、左右のリクライニング装置5は、連結軸7で連動するように連結されている。また、一方のリクライニング装置5には、図1のように、操作レバー6が設けられている。そして、乗員は操作レバー6を操作して、連結軸7によって連結された左右のリクライニング装置5を連動させながら、シートクッション2に対するシートバック3の傾斜角を調整する。
【0025】
シートバック3内には、図2のように、ヘッドレスト4を支持するバックフレーム10が設けられている。
【0026】
バックフレーム10は、略逆U字状の上部フレーム11と、この上部フレーム11の両下端から下方に延在するように各下端に取付けられた左右のサイドフレーム12と、これらのサイドフレーム12の下端同士を連結する下部フレーム13とを含んでいる。
【0027】
上部フレーム11には、ヘッドレスト4の図略のポールを挿入するための左右一対のヘッドレスト支持部11aが設けられている。
【0028】
各サイドフレーム12の上下方向の適所には、それぞれ、3つのばね固定片14が溶接等により取付けられている。
【0029】
各サイドフレーム12の間には、各サイドフレーム12同士を連結するように、左右方向に延在する3個の支えばね部材20A,20B,20Cが張設されている。各支えばね部材20A,20B,20Cは、上下に間隔を隔てて配設されており、各両端部20a,20b,20cは、それぞれ、各サイドフレーム12のばね固定片14に固定されている。
【0030】
各支えばね部材20A,20B,20Cは、S字を連ねたような波形状に形成されており(Sばね)、シート1に着座した乗員の上半身を支えることが可能なように構成されている。上側の1個の支えばね部材20Aは乗員の背中の中央付近を支え、下側の2個の支えばね部材20B,20Cは乗員の腰部付近を支えるようになっている。
【0031】
具体的には、各支えばね部材20A,20B,20Cに乗員からの後向きの荷重が加わることにより、各支えばね部材20A,20B,20Cの中間部分が後方へ変位するように撓み変形し、この変形に伴って発生する復元力によって乗員の上半身が支えられるようになっている。なお、下側の2個の支えばね部材20B,20Cが本発明の「支えばね部材」に相当する。
【0032】
各支えばね部材20B,20Cの両端部20b,20cよりも内側部分は、上下方向に延在する連結部材15で一体的に連結されている。
【0033】
各支えばね部材20B,20Cは、両端部20b,20cの間に位置する中央部分が、平面視で略台形状に、前方に略フラット状態で突出するように予め成形されている。
【0034】
各支えばね部材20B,20Cの前方に突出する中央部分は、各支えばね部材20B,20Cの中央部分に加わる荷重が設定値未満の時には、支えばね部材20B,20C自体で中央部分の後方への撓みを制限することで、着座した乗員の腰部付近が支えばね部材で適切に支えられるようになる。ここで、設定値未満とは、図5(a)のように、シートバック3に乗員の背中Mの荷重が加わっていない無負荷(セット)状態、図5(b)のように、シートバック3に乗員の背中Mの荷重が軽く加わっている着座状態である。なお、乗員の背中Mの荷重は、通常、約80〜120Kg程度に想定されている。
【0035】
また、支えばね部材20B,20Cの前方に突出した中央部分に加わる荷重が設定値以上になると、支えばね部材20B,20Cの中央部分が後方に大きく撓む(沈み込む)ように設定されている。ここで設定値以上とは、図5(c)のように、シートバック3に乗員の背中Mの荷重が重く加わっている後突状態である。
【0036】
各サイドフレーム12の前側位置には、各支えばね部材20B,20Cの上下方向の略中間位置に一端部22aが係止される復帰ばね部材(コイルばね)22がそれぞれ設けられている。この各復帰ばね部材22の他端部22bは、支えばね部材20B,20Cの両端部20b,20cよりも内側部分の連結部材15にそれぞれ係止されている。この復帰ばね部材22は左右に各1個で設けられている。
【0037】
前記のように構成した車両用シート1であれば、支えばね部材20B,20Cは、中央部分が前方に略フラット状態で突出するように成形されている。そして、支えばね部材20B,20Cの中央部分に加わる荷重が設定値未満の無負荷時や着座時等の通常時には、支えばね部材20B,20C自体で中央部分の後方への撓みを制限することで、着座した乗員の腰部付近が支えばね部材で適切に支えられるようになる。
【0038】
また、支えばね部材20B,20Cの前方に突出した中央部分に加わる荷重が設定値以上になる、例えば後突時の後向きの荷重で、支えばね部材20B,20Cの中央部分が後方に大きく撓む(沈み込む)ようになる。これにより、乗員の腰部付近とともに上半身がシートバックに深く沈み込むようになり、図4のように、乗員の頭部とヘッドレスト4との間の隙間が少なくなって(d1→d2)、乗員の頸部にかかる負担が軽減するようになる。
【0039】
なお、後方に大きく撓んだ(沈み込んだ)支えばね部材20B,20Cの中央部分は、そのばね力によって、前方に突出される状態に自動復帰するようになる。
【0040】
このように、支えばね部材20B,20Cの中央部分を前方に略フラット状態で突出させるという簡略な構造で、乗員の腰部付近の支えと後突時における乗員の頸部の保護との両立が実現できるようになる。
【0041】
また、復帰ばね部材22を設けると、前方に突出された支えばね部材20B,20Cの中央部分が後向きの荷重で後方に沈み込んだ時に、復帰ばね部材22のばね力のアシストによって、支えばね部材20B,20Cの中央部分を前方に突出される状態に確実に復帰させることができる。
【0042】
また、復帰ばね部材22で支えばね部材20B,20Cの中央部分を支持することで、支えばね部20B,20C材の中央部分が左右方向に横倒れすることを未然に防ぐことができる。
【0043】
さらに、復帰ばね部材22のばね力を調整することで、支えばね部材20B,20Cに通常の着座荷重が作用した場合の着座フィーリングの調整が容易に行えるとともに、後突時の作動荷重の調整も容易に行えるようになる。
【0044】
また、各支えばね部材20B,20Cを連結部材15で連結して、左右各1個の復帰ばね部材22の一端部22aを左右のサイドフレーム12の前側位置にそれぞれ係止する。そして、その他端部22bを各支えばね部材20B,20Cの連結部材15に係止する。これにより、支えばね部材20B,20C毎に復帰ばね部材22を設ける場合に比べて、構造がより簡略になる。
【0045】
前記実施形態では、左右各1個の復帰ばね部材22の他端部22bを各支えばね部材20B,20Cの連結部材15に係止したが、連結部材15を省略して、支えばね部材20B,20C毎に復帰ばね部材22を設けることもできる。
【0046】
さらに、前記実施形態において、バックフレーム10と左右のサイドフレーム12の間の空間内で、支えばね部材20A,20B,20Cの前側に、図5(a)に点々で一部を示すように、乗員の上半身の背中を支持するクッションパッド25を収納している。そして、図2(a)および図5(a)のように、このクッションパッド25の両側部に、上下方向に延在するスリット26を形成することができる。
【0047】
このようにすれば、スリット26の間のクッションパッド25によって、乗員の腰部付近とともに上半身がシートバック3により早くより深く沈み込むようになる。
【符号の説明】
【0048】
1 車両用シート
3 シートバック
4 ヘッドレスト
10 バックフレーム
12 サイドフレーム
15 連結部材
20B,20C 支えばね部材
20b,20c 両端部
22 復帰ばね部材
22a 一端部
22b 他端部
25 クッションパッド
26 スリット
図1
図2
図3
図4
図5