【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の冷却機器の圧縮機用ダンパーは以下のとおり構成される。
【0007】
(1)本発明は、中空の密閉容器と、密閉容器に充填した粘性流体とを備えており、冷却機器の圧縮機に設けた環状取付部と前記冷却機器に備える圧縮機を支持する支持体との間に取付けられて圧縮機を防振支持する冷却機器の圧縮機用ダンパーにおいて、
前記密閉容器は、前記環状取付部が載置されて圧縮機の自重を弾性支持する厚肉のゴム状弾性体でなる筒状支持部と、前記筒状支持部の内側に設けられ振動により側方変位する圧縮機の環状取付部と接触して弾性変形する薄膜状のゴム状弾性体でなるベローズ部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
前記密閉容器は、前記環状取付部が載置されて圧縮機の自重を弾性支持する厚肉のゴム状弾性体でなる筒状支持部を備える。このため冷蔵庫の中でも比較的重い圧縮機の自重を確実に支持することができる。また自重の支持だけでなく、圧縮機の駆動サイクルで発生する上下方向での振動も減衰させることができる。
前記密閉容器は、前記環状取付部の係合孔に挿入されて圧縮機の側方変位を弾性支持する薄膜状のゴム状弾性体でなるベローズ部を備える。このため圧縮機の駆動サイクルで発生する振動による側方変位を薄膜状の柔らかいベローズ部によって緩衝するとともに減衰させることができる。
【0009】
(2)前記本発明において、前記筒状支持部の上端部には、環状取付部を多点で支持する複数の支持突起を有する。支持突起は筒状支持部よりも支持力に乏しく、環状取付部が載置されると圧縮変形した状態で圧縮機を腰高に弾性支持し振動による側方変位を可能とする。圧縮機は低回転化によってゆっくり大きく側方変位するように挙動する傾向がある。本発明ではこうした圧縮機の振動特性を利用して、支持突起によって圧縮機を腰高に弾性支持することでその側方変位をさせやすくする。そして前記ベローズ部は、振動により圧縮機とともに側方変位する環状取付部と接触し弾性変形により受け止めて圧縮機の側方変位を緩衝し、該弾性変形により粘性流体を攪拌して振動を減衰させる。
このように本発明の圧縮機用ダンパーの防振メカニズムは、筒状支持部によって圧縮機を支持するとともにその上端部に設けた支持力に乏しい支持突起によって圧縮機の側方変位を許容し、その側方変位をベローズ部の弾性変形と、それによる粘性流体の攪拌抵抗によって振動減衰させる。なお、本発明のダンパーが許容する側方変位は、圧縮機に接続した冷媒パイプを損傷しない程度の側方変位である。
【0010】
(3)前記本発明は、密閉容器に筒状支持部の下端部に埋設した筒状の外周補強壁を有する。
外周補強壁は芯材となってゴム状弾性体でなる筒状支持部の支持力を増強することができ、歪んだり腰折れすることなく重量物の圧縮機を確実に支持できる。
【0011】
(4)前記本発明は、密閉容器に筒状支持部の内周面を支持する筒状の内周補強壁を有する。
内周補強壁によってゴム状弾性体でなる筒状支持部の内周面を支持するので筒状支持部の支持力を増強することができ、歪んだり腰折れすることなく重量物の圧縮機を確実に支持できる。
【0012】
(5)前記本発明は、外周補強壁と内周補強壁を同心多重状に配置して有する。
この同心多重状の配置によれば、ゴム状弾性体でなる筒状支持部の支持力を内外からさらに増強することができる。
【0013】
(6)前記本発明は、ベローズ部が筒状支持部の上端部の下側位置で筒状支持部の内周面に繋がる連結部を有する。
振動する圧縮機の環状取付部が支持突起を潰すことがある。この際にベローズ部が筒状支持部の上端部に繋がる構造であると、環状取付部の底面とベローズ部の連結部とが略面一となって大きく接触することでベローズ部が拘束され、その可動範囲が狭くなり減衰性能が低下する虞がある。
しかしながら本発明では、ベローズ部が筒状支持部の上端部の下側位置で繋がる構造のため、環状取付部の底面とベローズ部の連結部との間に形成される隙間を維持しやすくなる。その結果、ベローズ部が環状取付部との接触によって拘束され難くなり、所望の減衰性能を安定して発揮することができる。
【0014】
(7)前記本発明は、密閉容器が筒状であり、その内周部に硬質材でなり圧縮機の支持体に設けた固定ピンを挿通する筒状の軸受け部を有する。
密閉容器に固定ピンを挿通するための硬質材でなる軸受け部を有するため、ダンパーを確実に支持体に装着することができる。
【0015】
(8)前記本発明は、軸受け部の外周に筒状の軸受け補強壁を有する。
例えば移動時に冷蔵庫を斜めに倒したり、圧縮機に偏荷重が加わった場合には、垂直に起立する固定ピンに対して交差方向に荷重や振動が加わり軸受け部に大きな応力が作用し、損傷する虞がある。本発明ではそうした場合でも、軸受け補強壁によって固定ピンを挿通した軸受け部が損傷しないよう補強することができる。
【0016】
(9)前記本発明は、軸受け補強壁が脱気用のスリットを有する。
これによれば密閉容器を形成する際に、軸受け補強壁のスリットを通じてエアーを逃がすことができるので、粘性流体にエアーが残留せず、所望の減衰性能を発揮することができる。
【0017】
(10)前記本発明は、密閉容器は開口端を有する容器本体と該開口端を閉塞する蓋体とを有しており、容器本体が該開口端を形成した前記筒状支持部と前記ベローズ部とを有する。
この密閉容器によれば容器本体と蓋体とで圧縮機用ダンパーを構成することができる。
【0018】
(11)前記本発明は、容器本体に固着フランジを有する前記外周補強壁を設け、蓋体に固着フランジを有する前記内周補強壁を設け、固着フランジどうしを固着して容器本体を蓋体で密閉する。
これによれば外周補強壁と内周補強壁を補強に機能させるのみならず、固着フランジどうしの固着により容器本体を蓋体で確実に密閉させる機能も持たせることができ、固着用の専用部品の使用を廃止でき部品点数の増加を防ぐことができる。
【0019】
(12)本発明は、さらに、圧縮機を収容する機械室を備え、前記圧縮機用ダンパーを前記機械室内に配置した冷蔵庫であり、圧縮機の低回転化に適した防振システムを冷蔵庫に適用することで、信頼性、静音化を高めながら、省エネ化を図ることができる。
【0020】
(13)本発明は、さらに、機械室を冷蔵庫本体上部に設けた冷蔵庫であり、上部に圧縮機を配置した場合、下部を床面に固定端として上部を自由端とした振動モードで、防振ゴムの支持力と減衰力が乏しいと圧縮機が上部でより一層大きく変位する虞があるが、前記圧縮機用ダンパーを適用することで、振動を適切に吸収でき、信頼性を高めることができる。また、圧縮機を上部に配置することで、圧縮機の音が使用者に伝わりやすくなるが、前記圧縮機用ダンパーを適用することで、振動にまつわる音を適切に吸収でき、より静音化を高めることができる。
【0021】
(14)本発明は、さらに、回転数を可変可能としたインバータ圧縮機を適用した冷蔵庫であり、圧縮機の回転数を可変させ能力制御する際の幅広い回転数(周波数)に対して、振動を適切に吸収でき、信頼性、静音化を高めながら、冷却能力の向上および省エネ化を図ることができる。