(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852396
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】太陽電池の検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/042 20140101AFI20160114BHJP
【FI】
H01L31/04 500
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-226004(P2011-226004)
(22)【出願日】2011年10月13日
(65)【公開番号】特開2013-89638(P2013-89638A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】709002303
【氏名又は名称】日清紡メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】仲濱 秀斉
(72)【発明者】
【氏名】前田 修二
(72)【発明者】
【氏名】ロー ヒューゴ ビセンテ
(72)【発明者】
【氏名】筒井 悠司
【審査官】
吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/096114(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/129585(WO,A1)
【文献】
特開2011−159726(JP,A)
【文献】
特開2008−135718(JP,A)
【文献】
特開2010−114299(JP,A)
【文献】
特開2005−235920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一製造条件で太陽電池を生産する生産工程と、
前記生産工程で生産された太陽電池を検査する検査工程と、
前記検査工程の結果により得られた前記太陽電池の状態が、予め設定された太陽電池の性能に適合するかどうか判断する判断工程と、
前記太陽電池の状態が予め設定された太陽電池の性能に適合しない場合に、前記生産工程の前記一製造条件を変更し、前記生産工程と前記検査工程及び前記判断工程を再度行う再判断工程と、
前記太陽電池の状態が予め設定された太陽電池の性能に適合する場合に、前記一製造条件を生産工程に適合する条件として決定する生産条件決定工程と、
を有し、
前記検査工程はサーモ撮影検査、EL撮影検査、及びラマン分光検査が含まれることを特徴とする太陽電池の検査方法。
【請求項2】
前記サーモ撮影検査、前記EL撮影検査、及び前記ラマン分光検査は少なくても二つの検査結果を一つの製造条件の見直しに利用されることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の検査方法。
【請求項3】
前記生産条件決定工程の後に生産される太陽電池に番号を付与する番号付与工程が含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池の検査方法。
【請求項4】
前記検査工程は生産工程の中のラミネート工程の後に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも一つの太陽電池セルを備えた太陽電池を検査する太陽電池の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの利用方法としてシリコン型の太陽電池が知られている。太陽電池の製造工程は目的の発電能力を有しているかどうかに影響を与える。それで、製造された太陽電池が目的にする発電能力の性能評価が重要である。
【0003】
太陽電池の性能評価方法として、ソーラシミュレータによる出力特性の測定を利用する方法が知られている(特許文献1参照)。これと異なる方法として太陽電池セルに対して順方向に電流を印加することで、順方向に電流を流しエレクトロルミネッセンス(EL)作用を生じさせ、発光状態から太陽電池セルの良否を判定する方法がある(特許文献2参照)。しかしながら特許文献2には太陽電池セルからの発光光の明るさのみで良否の判断を行っているので、クラックがあっても、明るさが所定の値以上であれば良品と判断される。しかし、クラックが有る場合は急激に太陽電池の発電能力が低下してしまう可能性があるので、不良品と判断すべきである。
【0004】
特許文献3では、太陽電池に順方向の電流を流し、温度分布を撮影して欠陥部分を特定する技術が記載されている。太陽電池に電流を流すと、例えば配線の不良接続部分は接触抵抗が増大し、それによって不良接続部分が発熱することを利用した方法である。
【0005】
特許文献4は、本出願人が平成22年4月9日に出願したものであり、その出願内容は、下記の通りである。ラマン分光法を利用して、シリコンが無い状態の欠陥とシリコン基板に残っている残留応力による欠陥と不純物の混入による欠陥とを判断できる検査装置および検査方法である。またその検査装置は、EL発光光を撮影して欠陥を検査するEL検査装置と、サーモグラフィー撮影画像を応用するサーモ検査装置と、ラマン検査装置とを同時に利用して、太陽電池をより正確に検査する検査装置でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−88419
【特許文献2】WO2006/059615
【特許文献3】特開平8−37317
【特許文献4】特願2010−090110
【特許文献5】特許第4235685
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の検査装置及び検査方法では、太陽電池検査の精度の向上が得られるものの、あらゆる製造工程が終わったモジュールの品質状態を十分確認できないという問題がある。また検査結果が製造条件に反映出来ないという問題がある。
【0008】
更に、検査結果は得られるものの、様々な規格または仕様の太陽電池モジュールに最適な製造条件が分からないという問題がある。従って、一度ある製造条件により生産が始まるとそれにより多量に生産が継続され、不良品が多量に発生する。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、太陽電池モジュールの品質判定を正確に行うことが可能で、その検査結果を反映し、様々な太陽電池モジュールに最適な製造条件を得ることができる太陽電池の検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明に係る太陽電池の検査方法は、以下のような構成を特徴としている。
【0011】
第1発明の太陽電池の検査方法は、一製造条件で太陽電池を生産する生産工程と、前記生産工程で生産された太陽電池を検査する検査工程と、前記検査工程の結果により得られた前記太陽電池の状態が、予め設定された太陽電池の性能に適合するかどうか判断する判断工程と、前記太陽電池の状態が予め設定された太陽電池の性能に適合しない場合に、前記生産工程の前記一製造条件を変更し、前記生産工程と前記検査工程及び前記判断工程を再度行う再判断工程と、前記太陽電池の状態が予め設定された太陽電池の性能に適合する場合に、前記一製造条件を生産工程に適合する条件として決定する生産条件決定工程と、を有することを特徴とする。
第1発明の太陽電池の検査方法によれば、太陽電池の検査結果により正確に太陽電池の品質の判断ができる。また、一太陽電池に適合する製造条件を知り得ることができるので、歩留まりを極めて向上させることができる。更に、不良品の大量発生を防ぐことができる。
【0012】
第2発明は、第1発明において、前記検査工程は、サーモ撮影検査、EL撮影検査、及びラマン分光検査が含まれることを特徴とする。
第2発明により、太陽電池のより正確な検査ができ、前記製造条件の正確度が向上する。
【0013】
第3発明は、第2発明において、前記サーモ撮影検査、前記EL撮影検査、及び前記ラマン分光検査は少なくても二つの検査結果を用いて一つの製造条件の見直しを行うことを特徴とする。
第3発明により、太陽電池のより検査の正確度がより向上する。
【0014】
第4発明は、第1から3までの発明において、前記生産条件決定工程の後に生産される太陽電池に番号を付与する番号付与工程が含まれることを特徴とする。
第4発明により、ある製造条件によって生産された太陽電池の経年劣化の追跡観察が可能になり、品質劣化の原因解明が出来る。
【0015】
第5発明は、第1から4の発明において、前記検査工程は生産工程の中のラミネート工程の後に設けられることを特徴とする。
第5発明により、生産ラインの中に置かれて生産工程の一工程として検査及び製造条件の見直しが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】1枚の太陽電池セルを受光面から見た平面図。
【
図4】本発明の太陽電池の検査工程を詳しく示す図。
【
図5】EL撮影検査の検査結果とサーモ撮影検査の検査結果の相関関係を示す図。
【
図6】EL撮影検査の検査結果とラマン分光検査の検査結果の相関関係を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
<1>太陽電池パネルの構成
本実施例の検査装置が扱う検査対象としての太陽電池パネル10について説明する。
図1は、検査対象装置の太陽電池パネル10の構成を示す図で、(a)は平面図、(b)はその断面図である。
【0018】
図1(a)の平面図に示すように、角型の太陽電池セル18がリード線19により複数個直列に接続されてストリング15を形成している。そして、ストリング15を複数列リード線19により接続し、両端に電極16、17を接続したものが、検査対象としての太陽電池パネル10となる。上記リード線19により太陽電池セル18を接続したストリング15の製造は、配線機と呼ばれる装置により行われる。太陽電池セル18に対してリード線19を押圧し加熱しながら行われる。この工程は、リード線19の接続及び太陽電池セルに影響を与える。リード線に対する押圧力が高すぎると太陽電池セルに割れを発生させる原因になり、小さすぎると接続不良の原因になる。
【0019】
太陽電池パネル10は以下のように製造される。まず
図1(b)に示すように、下側に配置された透明保護層としてのカバーガラス11上に充填材13を置き、その上に複数個直列に接続されたストリング15を複数列リード線により接続されたものを配置し、その上から充填材14を配置し、最後に不透明な素材からなる裏面材12を配置している。充填材13、14としては、EVA樹脂(エチレンビニルアセテート)を使用している。この後、上記のように積層した構成部材をラミネート装置により、真空中で加熱した状態で加圧することで、EVA樹脂を溶融及び架橋反応させてラミネート加工する。
【0020】
本発明の検査対象の太陽電池としては、上記の太陽電池パネル10に限定されず、太陽電池セル18が1枚だけのもの、太陽電池セル18を複数枚直線的につないだストリング15の状態のものも含まれる。また、ラミネート加工前後のどちらの状態でも検査対象とすることが出来る。しかし、本発明にて目的にしている太陽電池の品質の判定、また太陽電池の品質劣化の原因解明の効果を得るためには太陽電池パネルの形の製品が最も望ましい。
【0021】
図2は、1枚の太陽電池セル18を受光面から見た平面図である。太陽電池セル18は薄板状のシリコン半導体の表面に電気を取り出すための電極であるバスバー18aが印刷されている。加えてシリコン半導体の表面には効率よく電流をバスバーに集めるためにバスバーと垂直方向にフィンガー18bと呼ばれる細かい導体が印刷されている。
【0022】
<2>太陽電池の生産工程
太陽電池の生産工程は、シリコンをインゴットから加工して太陽電池セルまで生産する前工程と、太陽電池セルにリード線を付けるなどの工程を経て太陽電池の製品までに至る後工程とに分かれる。なお、前工程と後工程とは別の場所にて行われるのが一般的である。
【0023】
図3は太陽電池生産の後工程を示す図であり、
図3を参照して後工程について説明する。
まず、配線機を利用して太陽電池セルとリード線を接続して、ストリングを作製する。ストリングを複数列接続したものをガラス上に封止材を載せた上に設置し、その上に封止材とバックシートをレイアップする。その後、ラミネート工程に進んで太陽電池パネルに加工される。その後トリミングされた後、太陽電池モジュールの電極に端子ボックスが取り付けられる。それから、外部からの水分などの浸入を防ぐためにシーリングされてフレームを取り付けると生産工程は完成する。更に、最終検査を行った後、完成品として出荷される。
【0024】
本発明は、前記最終検査の際、太陽電池の状態が予め設定されている性能に適合しない場合、生産工程の製造条件を見直して、見直した生産工程は前記生産工程に再度適用され太陽電池の生産が再び行われる。製造条件の見直しは、生産された太陽電池の性能が予め設定されている性能に適合するまで繰り返し行われる。これにより、太陽電池の大きさ、具体的に使う部品の材質、使われる機械の種類などにより、ある太陽電池の最善の生産方法が異なっても、その太陽電池の生産に最も適合する製造条件を迅速に得ることができる。
【0025】
一方、ある製造条件で製造された太陽電池の性能が予め設定されている性能に適合する場合には、現在の製造条件を今の太陽電池の生産に適合する条件として決定する。尚、決定された製造条件は現在の太陽電池を生産する製造条件として登録される。
【0026】
その製造条件で生産された太陽電池は、番号を付けて出荷される。ここで、上記番号はこの太陽電池の生産工程の製造条件に対応する番号で設定される。製造条件と一緒に太陽電池の大きさなどの様々な情報を付与することができる。上記番号と製造条件とが互いに対応していれば十分であり、後で、太陽電池ごとに太陽電池とその製造条件が対応していて、その対応する情報の統計解析などを利用して太陽電池の経年劣化の原因を把握することができる。したがって、長時間使用した太陽電池に対して履歴を追跡することが可能になり、品質低下の原因の解明、また品質低下の原因工程の特定が可能となる。
【0027】
上記配線機と上記ラミネート装置は太陽電池の寿命と品質に最も影響を与える工程であり、本発明の検査方法は、後工程の最終工程で検査するばかりでなく、ラミネート工程以降のどこで実施されても良い。例えば、ラミネート工程の後の生産工程の中のいずれかの一工程として検査工程を設けることでも良い。
【0028】
<3>太陽電池の検査方法
図4は太陽電池の検査工程を詳しく示す図である。まず、実施例による太陽電池の検査方法はサーモ撮影検査方法、EL検査方法及びラマン分光検査方法が含まれる。各検査三つの検査装置については本出願人が平成22年4月9日に出願した特許文献4に記載しているので説明を省略する。
【0029】
少なくともラミネート工程を完了した太陽電池が太陽電池の検査装置に搬入され(S1)、次に検査装置に電流が印加されて検査が始まる(S2)。検査は三つの検査に分かれて行い、サーモ検査(S3)とEL検査(S4)とラマン分光検査(S5)とを行う。
【0030】
まず、上記サーモ撮影検査について説明する。画像の明るさに依存しないようにカメラのシャッターを補償して(S31)、撮影を行う(S32)。撮影された画像に発熱斑の有無を調査する。発熱斑がなく均一に発熱した場合には配線の不良接続部分が無いことを意味する。しかしその画像の中に発熱斑が確認された場合、配線の不良接続部があり使用中の発電で発熱部が広がって行って太陽電池の寿命に悪影響を与える。以上のように発熱斑を確認し(S35)、発熱斑が多いと製造条件を変更して生産工程を再度行うようにする。発熱斑の多い少ないは、発熱斑部分の面積などの特性値を閾値として設定することができる。サーモ撮影検査の場合、太陽電池の大きさ、具体的に使用する構成部品の材質、使われる製造装置の種類などによって、望ましい製造条件または判断の前記閾値は変更することが出来るが、発熱斑の特性値がある閾値以上になる場合、生産工程の条件を見直すのが良い。
【0031】
上記EL撮影検査について説明する。太陽電池に印加された電流によりEL作用により発光する(S41)。発光光を撮影して太陽電池の欠陥(フィンガー断線、ダークエリア、割れ)の有無を検査する(S43)。フィンガー断線が多くなるセルが有る場合には発電能力が加速度的に落ちる恐れがあり、クラック又はダークエリア(欠けを含む)がある場合には日々の膨張・収縮によりクラック又はダークエリアが拡大する恐れがある。以上のようにEL発光光を撮影判断し、フィンガー断線が無い条件、クラックの無い条件、ダークエリアの無い条件の全てを満足しない場合には製造条件を見直し変更して(S44)、別の製造条件で生産工程を再度行う。EL撮影検査の場合、太陽電池の大きさ、具体的に使用する構成部品の材質、使われる製造装置の種類などによって、望ましい製造条件または判断の基準が変わるが、フィンガー断線、クラック、ダークエリアがある程度以上になる場合、生産工程の条件を見直すのが良い。フィンガー断線、クラック、ダークエリアの判断手法は、特許文献5に記載された手法などを使用することが可能であり、詳細説明は省略する。
【0032】
上記ラマン分光検査について説明する。波長既知のレーザー光を測定部に照射し、そこで得られる散乱光を分光してスペクトルを得る際、シリコン構造を示すスペクトル強度が最大になる焦点位置に調整する。この方法によりラマン分光測定を行い(S51)、ピークの強度及び半値幅を計算する(S52)。その半値幅が狭いとシリコンの結晶性がよいと判断されるが、広いと結晶性が悪いと判断される。結晶性が良好であれば発電性能が高く、結晶性が悪いと逆に発電性能が低い傾向がある。この指標を用いれば結晶性を見ることで発電の良し悪しを評価することが出来る。
【0033】
尚、ラマン分光検査の結果、スペクトル強度が最大となる焦点位置の高さ方向の座標(以降Z軸と略す)の値を比較しセルの位置がずれる場合にはラミネート加工の条件が最適化されていないことを示す。ラミネート装置にて充填材とセルの積層体を加熱加圧する際、充填材を均一に溶融させ適性加圧条件が維持できれば、セル位置は一定を保つ。しかしながら、加工条件が悪い場合にはセル割れ及びマイクロクラックが発生し、あるいは、充填材の溶融流動が不均一化した場合、セル位置がずれることになる。極端にセル位置が変わる場合には生産工程の条件を変更する必要がある(S53)。
【0034】
図5に従って、サーモ撮影検査とEL検査とラマン分光検査が行われた後、生産工程の条件を見直す方法について例を挙げながら説明する。
図5はEL撮影検査の検査結果とサーモ撮影検査の検査結果の相関関係を示す図であり、横軸はサーモ撮影検査の結果として大きくなるほど(右へ行くほど)発熱斑がなく配線接続部が良い状態を表し、縦軸はEL撮影検査の結果として大きくなるほど(上へ行くほど)セル割れ及びマイクロクラックなどの欠陥がなく太陽電池セルの状態が良いことを表している。そして、縦・横軸共に大きくなれば良いとの判断がなされる。殆どの生産工程では、EL撮影検査とサーモ撮影検査についてトレードオフの関係である。例えば、配線機の場合、リード線の押圧力が強くなるほど配線接続部は良くなるものの、押圧力が増加するとセルに欠陥が生じてEL発光光の撮影画像は暗くなる可能性が高くなる。
【0035】
図6はEL撮影検査の検査結果とラマン分光検査装置の相関関係を示す図であり、横軸はEL撮影検査の結果として大きくなるほど(右へ行くほど)セル割れ及びマイクロクラックなどの欠陥がなく太陽電池セルの状態が良いことを表し、縦軸はラマン検査の結果で得られるZ軸の位置ずれ値が小さくなるほど(上へ行くほど)セルの位置ズレがないことを表している。
ここで、セル位置のズレの評価方法としては例えば以下の方法がある。すなわち、太陽電池モジュールの4つの角にあるセルと、中央にあるセルのガラスからの距離を測定し、中央セルに対して角のセルのガラスからの距離の測定結果がずれている場合にはラミネート加工の条件が不適切となることを示している。
そして、縦・横軸共に大きければ大きいほど良いと判断されるのであるが、殆どの生産工程はEL撮影検査とラマン検査についてはトレードオフの関係を示している。ちなみに、ラミネート装置の場合、ラミネート装置で適性条件であればセル位置が一定でありEVA樹脂の気泡が無くなり、EL撮影検査によるセル割れ及びマイクロクラックなどの欠陥が無い太陽電池セルの状態が良好となる。しかし加圧条件が極端に不適正な場合ではセル割れが発生し、不適正な場合にはセル割れはしないがセル位置のずれが発生する。この場合、ラミネート装置の加圧条件を気泡が認められないよう、セル割れ及びセルずれがないように調整し製造条件を変更することが適切である。
【0036】
図7は太陽電池の経年劣化について説明する図であり、横軸は使用年数、縦軸は発電量を示す。
図7で示されているように使用年数が増えても発電量が変わらないのが理想的な太陽電池であるが、時間が経過すれば発電量が徐々に減少する。時間経過により徐々に発電量が減って行く劣化パターン1は、シリコン電極材料やシリコンの結晶構造などのミクロ単位の欠陥と、配線接続などのマクロ単位の欠陥によるものと推定される。使用開始から15年から20年の期間経過で発電量が加速度的に急激に低下してしまう劣化パターン2は、ミクロ単位の欠陥とマクロ単位の欠陥に合わせて太陽電池への水分侵入による腐食・断線が重なった結果と推定される。
【0037】
更に、このような発電不具合の劣化パターンを参照し本発明の検査方法を適用すれば、検査対象になった太陽電池の生産工程について不適切な工程を特定するのが出来るようになる。例えば、劣化パターン2の場合には
図3の太陽電池の周辺シール工程で問題があると判断できる。それを踏まえて、周辺シール工程の条件を見直すことができる。なお、劣化パターンとその生産条件を比較しながら統計分析すると、ある劣化の原因となっている製造条件を特定することができる。これを利用してトレーサビリティ分析が可能になり製造条件の改善ができ、太陽電池の不具合がない長寿命の実現が可能になる。
【符号の説明】
【0038】
10 太陽電池パネル
11 カバーガラス(透明保護層)
12 裏面材
13、14 充填材
15 ストリング
16、17 電極
18 太陽電池セル
19 リード線
18a バスバー
18b フィンガー