特許第5852404号(P5852404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852404
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 11/18 20060101AFI20160114BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160114BHJP
   H01M 10/46 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   B60L11/18 C
   H02J7/00 P
   H01M10/46 101
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-231805(P2011-231805)
(22)【出願日】2011年10月21日
(65)【公開番号】特開2013-90540(P2013-90540A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 譲
(72)【発明者】
【氏名】丹野 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 毅
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 治樹
(72)【発明者】
【氏名】大保 慎一
【審査官】 根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−081740(JP,A)
【文献】 特開2009−150779(JP,A)
【文献】 特開2008−076339(JP,A)
【文献】 特開2001−339267(JP,A)
【文献】 特開2000−049592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 11/18
H01M 10/46
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源によって充電可能な車両に搭載され、前記車両が充電ケーブルを介して前記外部電源に接続された場合に、前記充電ケーブルから電力給電に先立ってパイロット信号を受信する電子制御装置であって、
前記パイロット信号の電圧を段階的に変化させるパイロット電圧設定回路と、
前記パイロット信号に基づいて充電制御に必要な処理を行うと共に、前記パイロット電圧設定回路を制御して前記パイロット信号の電圧を変化させるプロセッサと、
前記プロセッサのパイロット信号入力ポートの前段に設けられた入力バッファと、
前記パイロット信号の電圧変化に応じて、前記入力バッファの推奨入力電圧の最小値以上かつ前記入力バッファの推奨入力電圧の最大値以下である前記入力バッファの推奨入力電圧範囲内に収まるように前記入力バッファの入力電圧を変化させる入力バッファ電圧設定回路と、
を備えることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記入力バッファ電圧設定回路は、分圧比を切替可能な抵抗分圧回路であり、前記パイロット信号の電圧変化に応じて、前記抵抗分圧回路の分圧比を切替えることにより、前記入力バッファの推奨入力電圧の最小値以上かつ前記入力バッファの推奨入力電圧の最大値以下である前記入力バッファの推奨入力電圧範囲内に収まるように前記入力バッファの入力電圧を変化させることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記パイロット電圧設定回路は、前記パイロット信号の電圧を第1の電圧と該第1の電圧よりも低い第2の電圧とで切替え、
前記入力バッファ電圧設定回路は、
前記パイロット電圧設定回路が前記第1の電圧の前記パイロット信号を出力する場合は、第1の分圧比で前記入力バッファの入力電圧を前記入力バッファの推奨入力電圧の最大値以下に収め、
前記パイロット電圧設定回路が前記第2の電圧の前記パイロット信号を出力する場合は、第2の分圧比で前記入力バッファの入力電圧を前記入力バッファの推奨入力電圧の最小値以上に収めることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記パイロット電圧設定回路は、
前記電子制御装置のパイロット信号入力端子から前記入力バッファへ至るパイロット信号線に一端が接続されたプルダウン抵抗と、
前記プルダウン抵抗の他端とグランドとの間に接続され、前記プロセッサから出力される制御信号に応じてオンオフ状態が切替わる第1のスイッチング素子と、
を備え、
前記入力バッファ電圧設定回路は、
前記パイロット電圧設定回路の後段側における前記パイロット信号線の途中に介挿された第1の分圧抵抗と、
一端が前記第1の分圧抵抗と前記入力バッファ間の前記パイロット信号線に接続された第2の分圧抵抗と、
一端が前記第2の分圧抵抗の他端に接続され、他端が前記グランドに接続された第3の分圧抵抗と、
前記プロセッサから出力される前記制御信号が入力され、前記制御信号のレベルを反転させて出力するレベル反転回路と、
前記第3の分圧抵抗に並列接続され、前記レベル反転回路から出力される前記制御信号に応じてオンオフ状態が切替わる第2のスイッチング素子と、
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、電気自動車やプラグインハイブリッド車など、外部電源によって充電可能な車両(以下、このような車両をプラグイン車両と総称する)の実用化が進んでいる。プラグイン車両と外部電源との接続には、CCID(Charge Circuit Interrupt Device)と呼ばれる制御ユニットを備えた専用の充電ケーブルが使用される。
【0003】
このような充電ケーブルとプラグイン車両間のインターフェイスに関する規格は、米国の「SAE(Electric Vehicle Conductive Charge Coupler)規格」や日本の「電気自動車用コンダクティブ充電システム一般要求事項(日本電動車両規格)」にて定められている。これらの規格で定められているプラグイン車両の充電手順は、およそ以下の通りである。
【0004】
まず、充電ケーブルのCCIDは、コントロールパイロット信号(以下、パイロット信号と略す)をプラグイン車両に搭載された充電制御用のECU(Electric Control Unit)へ送信し、このパイロット信号の電圧が初期値V1(例えば12V)からV2(例えば9V)に変化した時に、充電ケーブルがプラグイン車両に接続されたと判断する。
次に、充電ケーブルのCCIDは、電源設備(外部電源及び充電ケーブル)の定格電流に応じたデューティ比でパイロット信号を送信することにより、プラグイン車両のECUに電源設備の定格電流を通知する。
【0005】
次に、プラグイン車両のECUは、パイロット信号の電圧をV2からV3(例えば6V)に変化させることにより、充電準備完了を充電ケーブルのCCIDに通知する。
そして、充電ケーブルのCCIDは、パイロット信号の電圧がV2からV3に変化したことを検出すると、プラグイン車両側の充電準備が完了したと判断して、外部電源の電力をプラグイン車両側に給電するためのリレーをオンにする(つまり給電を開始する)。
【0006】
このようにパイロット信号は、プラグイン車両の充電制御において必須の信号であり、パイロット信号の異常を検出することは極めて重要である。例えば下記特許文献1には、プラグイン車両と外部電源とが充電ケーブルを介して接続された状態で、パイロット信号の通信に使用される制御線の断線を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−71989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1にも記載されているように、パイロット信号はプラグイン車両のECU内において、入力バッファを介してCPU(Central Processing Unit)に入力される。入力バッファには推奨入力電圧範囲が定められているが、上記のようにパイロット信号の電圧は広い範囲で変動するので、入力バッファが正常に動作しなくなったり、最悪の場合には入力バッファが破壊される虞がある。そこで、入力バッファを保護するための回路が必要となるが、上記特許文献1ではそのような回路は開示されていない。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、充電ケーブルを介して外部電源からプラグイン車両を充電する場合において、パイロット信号が入力されるCPU等のプロセッサの前段に設けられたパイロット信号用の入力バッファを保護することの可能な電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、電子制御装置に係る第1の解決手段として、外部電源によって充電可能な車両に搭載され、前記車両が充電ケーブルを介して前記外部電源に接続された場合に、前記充電ケーブルから電力給電に先立ってパイロット信号を受信する電子制御装置であって、前記パイロット信号の電圧を段階的に変化させるパイロット電圧設定回路と、前記パイロット信号に基づいて充電制御に必要な処理を行うと共に、前記パイロット電圧設定回路を制御して前記パイロット信号の電圧を変化させるプロセッサと、前記プロセッサのパイロット信号入力ポートの前段に設けられた入力バッファと、前記パイロット信号の電圧変化に応じて、前記入力バッファの推奨入力電圧範囲内に収まるように前記入力バッファの入力電圧を変化させる入力バッファ電圧設定回路とを備える、という手段を採用する。
【0011】
また、本発明では、電子制御装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記入力バッファ電圧設定回路は、分圧比を切替可能な抵抗分圧回路であり、前記パイロット信号の電圧変化に応じて、前記抵抗分圧回路の分圧比を切替えることにより、前記入力バッファの推奨入力電圧範囲内に収まるように前記入力バッファの入力電圧を変化させる、という手段を採用する。
【0012】
また、本発明では、電子制御装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記パイロット電圧設定回路は、前記電子制御装置のパイロット信号入力端子から前記入力バッファへ至るパイロット信号線に一端が接続されたプルダウン抵抗と、前記プルダウン抵抗の他端とグランドとの間に接続され、前記プロセッサから出力される制御信号に応じてオンオフ状態が切替わる第1のスイッチング素子とを備え、前記入力バッファ電圧設定回路は、前記パイロット電圧設定回路の後段側における前記パイロット信号線の途中に介挿された第1の分圧抵抗と、一端が前記第1の分圧抵抗と前記入力バッファ間の前記パイロット信号線に接続された第2の分圧抵抗と、一端が前記第2の分圧抵抗の他端に接続され、他端が前記グランドに接続された第3の分圧抵抗と、前記プロセッサから出力される前記制御信号が入力され、前記制御信号のレベルを反転させて出力するレベル反転回路と、前記第3の分圧抵抗に並列接続され、前記レベル反転回路から出力される前記制御信号に応じてオンオフ状態が切替わる第2のスイッチング素子とを備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プロセッサの前段に設けられたパイロット信号用の入力バッファの入力電圧が、パイロット信号の電圧変化に応じて、その推奨入力電圧範囲内に収まるように設定されるので、充電ケーブルを介して外部電源からプラグイン車両を充電する場合にパイロット信号用の入力バッファを保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る車両充電システムの概略構成図である。
図2】プラグイン車両3に搭載された充電制御用ECU33の内部構成図である。
図3】車両充電システムの動作を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る車両充電システムの概略構成図である。この図1に示すように、本実施形態に係る車両充電システムは、外部電源1と、充電ケーブル2と、プラグイン車両3とから構成されている。外部電源1は、例えば家屋に設けられたアース端子付の電源コンセント11と、この電源コンセント11に単相交流電力を供給するAC電源(商用電源)12とから構成されている。
【0016】
充電ケーブル2は、2本の給電線21、22と、グランド線23と、パイロット線24と、プラグ25と、ケーブル側カプラ26と、CCID27とから構成されている。給電線21、22及びグランド線23のそれぞれは、一端がプラグ25に接続され、他端がケーブル側カプラ26に接続されている。パイロット線24は、一端がCCID27(詳細にはパイロット回路27c)に接続され、他端がケーブル側カプラ26に接続されている。
【0017】
プラグ25が電源コンセント11に接続されることにより、給電線21、22の一端がAC電源12に接続されると共に、グランド線23の一端が外部電源1側のグランドに接続される。また、ケーブル側カプラ26がプラグイン車両3の車両側カプラ31に接続されることにより、給電線21、22の他端がプラグイン車両3のバッテリチャージャ32に接続されると共に、グランド線23及びパイロット線24の他端がプラグイン車両3の充電制御用ECU33に接続される。
【0018】
CCID27は、給電線21、22及びグランド線23の途中に設けられた制御ユニットであり、給電線21、22の途中に介挿されたリレー27a、27bと、パイロット線24を介してパイロット信号CPLをプラグイン車両3の充電制御用ECU33へ送信すると共に、上記リレー27a、27bのオンオフ制御を行うパイロット回路27cとを備えている。なお、パイロット回路27cは、給電線21、22及びグランド線23と接続されており、給電線21、22から電源電圧を、グランド線23からグランド電圧を得る。
【0019】
プラグイン車両3は、電気自動車やプラグインハイブリッド車など、外部電源1によって充電可能な車両であり、車両側カプラ31、バッテリチャージャ32及び充電制御用ECU33を備えている。車両側カプラ31に充電ケーブル2のケーブル側カプラ26が接続されることにより、給電線21、22とバッテリチャージャ32が接続され、グランド線23及びパイロット線24と充電制御用ECU33が接続される。
【0020】
バッテリチャージャ32は、充電制御用ECU33による制御の下、充電ケーブル2(給電線21、22)を介して外部電源1から供給される単相交流電力を直流電力に変換し、当該直流電力によってプラグイン車両3に搭載された駆動用バッテリ(図示省略)を充電する充電回路である。充電制御用ECU33は、プラグイン車両3が充電ケーブル2を介して外部電源1に接続された場合に、充電ケーブル2から電力給電に先立ってパイロット信号CPLを受信し、このパイロット信号CPLに基づいて駆動用バッテリの充電制御に必要な処理を行う電子制御装置である。
【0021】
図2は、充電制御用ECU33の内部構成図である。この図2に示すように、充電制御用ECU33は、パイロット信号入力端子100、アバランシェダイオード101、第1のダイオード102、第1のプルダウン抵抗103、パイロット電圧設定回路104、入力バッファ電圧設定回路105、入力バッファ106、第2のダイオード107及びCPU108を備えている。
【0022】
パイロット信号入力端子100は、車両側カプラ31に充電ケーブル2のケーブル側カプラ26が接続された場合にパイロット線24と接続される外部入力端子である。アバランシェダイオード101は、一端がパイロット信号入力端子100に接続され、他端がグランドに接続されており、パイロット信号入力端子100を介して入力されるパイロット信号CPLの電圧(パイロット信号入力端子100とグランド間の電圧)をV1(例えば12V)以下に保つ役割を担っている。
【0023】
第1のダイオード102は、アノード端子がパイロット信号入力端子100に接続され、カソード端子が第1のプルダウン抵抗103の一端に接続されており、パイロット信号CPLの+側の信号のみを通過させる役割を担っている。第1のプルダウン抵抗103は、一端が第1のダイオード102のカソード端子に接続され、他端がグランドに接続されており、パイロット信号CPLの+側の電圧(つまり第1のダイオード102のカソード端子とグランド間の電圧)をV1からV2(例えば9V)に変化させる役割を担っている。
【0024】
パイロット電圧設定回路104は、CPU108による制御の下、パイロット信号CPLの+側の電圧を段階的に変化させる(V2からV3(例えば6V)に変化させる)回路である。このパイロット電圧設定回路104は、一端が第1のダイオード102のカソード端子に接続された(パイロット信号入力端子100から入力バッファ106へ至るパイロット信号線Lに接続された)第2のプルダウン抵抗104aと、第2のプルダウン抵抗104aの他端とグランド間に接続され、CPU108から出力される制御信号CTに応じてオンオフ状態が切替わる第1のスイッチング素子(例えばトランジスタ)104bとを備えている。
【0025】
このような構成のパイロット電圧設定回路104によると、第1のスイッチング素子104bがオン状態の時に第2のプルダウン抵抗104aの他端がグランドに接続されて、パイロット信号CPLの+側の電圧がV2からV3に変化する。
【0026】
入力バッファ電圧設定回路105は、分圧比を切替可能な抵抗分圧回路であり、パイロット信号CPLの電圧変化に応じて抵抗分圧回路の分圧比を切替えることにより、入力バッファ106の推奨入力電圧範囲(例えば最小値3.5〜最大値5.5V)内に収まるように入力バッファ106の入力電圧を変化させる回路である。
【0027】
具体的には、この入力バッファ電圧設定回路105は、パイロット電圧設定回路104の後段側におけるパイロット信号線Lの途中に介挿された第1の分圧抵抗105aと、一端が第1の分圧抵抗105aと入力バッファ106間のパイロット信号線Lに接続された第2の分圧抵抗105bと、一端が第2の分圧抵抗105bの他端に接続され、他端がグランドに接続された第3の分圧抵抗105cと、CPU108から出力される制御信号CTが入力され、この制御信号CTのレベルを反転させて出力するレベル反転回路105dと、第3の分圧抵抗105cに並列接続され、レベル反転回路105dから出力されるレベル反転後の制御信号CTに応じてオンオフ状態が切替わる第2のスイッチング素子(例えばトランジスタ)105eとを備えている。
【0028】
このような構成の入力バッファ電圧設定回路105によると、パイロット信号CPLの+側の電圧がV2(9V)の場合、第1のスイッチング素子104bがオフ状態なので、第2のスイッチング素子105eはオン状態となる。ここで、第1の分圧抵抗105aの抵抗値をR1、第2の分圧抵抗105bの抵抗値をR2、第3の分圧抵抗105cの抵抗値をR3とすると、第2のスイッチング素子105eがオン状態の時の分圧比は、R2/(R1+R2)で表される。この分圧比によって、入力バッファ106の入力電圧(第2の分圧抵抗105bの一端とグランド間の電圧)が、入力バッファ106の推奨入力電圧範囲の最大値である5.5V以下となるように抵抗値R1、R2は設定されている。
【0029】
一方、パイロット信号CPLの+側の電圧がV3(6V)の場合、第1のスイッチング素子104bがオン状態なので、第2のスイッチング素子105eはオフ状態となる。第2のスイッチング素子105eがオフ状態の時の分圧比は、(R2+R3)/(R1+R2+R3)で表される。この分圧比によって、入力バッファ106の入力電圧が、入力バッファ106の推奨入力電圧範囲の最小値である3.5V以上となるように抵抗値R1、R2、R3は設定されている。
【0030】
入力バッファ106は、入力端子が第1の分圧抵抗105aの他端及び第2の分圧抵抗105bの一端に接続され、出力端子がCPU108のパイロット信号入力ポートINTに接続された(つまりCPU108のパイロット信号入力ポートINTの前段に設けられた)バッファである。上記のように、この入力バッファ106には、例えば最小値3.5〜最大値5.5Vの推奨入力電圧範囲が定められている。パイロット信号CPLは、この入力バッファ106を介してCPU108に入力される。
【0031】
第2のダイオード107は、アノード端子が入力バッファ106の入力端子に接続され、カソード端子が電源ラインに接続されている。この第2のダイオード107は、入力バッファ106の入力電圧が、最大定格電圧(例えば7V)を越えないようにクランプして保護するために設けられたものである。
【0032】
CPU108は、入力バッファ106を介してパイロット信号入力ポートINTに入力されるパイロット信号CPLに基づいて充電制御に必要な処理を行うと共に、パイロット電圧設定回路104及び入力バッファ電圧設定回路105を制御して(制御信号CTを出力して)、パイロット信号CPLの電圧を変化させるプロセッサである。
【0033】
次に、上記のように構成された車両充電システムの動作について、図3のタイミングチャートを参照しながら説明する。
まず、図3中の時刻t1において、充電ケーブル2のプラグ25が外部電源1の電源コンセント11に接続されたとすると、CCID27のパイロット回路27cは、給電線21、22を介してAC電源12から電力供給を受けて起動し、パイロット線24を介して電圧値V1(12V)のパイロット信号CPLを出力する。この時点では、CCID27のリレー27a、27bはオフ状態となっており、充電制御用ECU33のCPU108はスリープ状態にある。
【0034】
なお、図3に示すように、CPU108がスリープ状態の時、CPU108から出力される制御信号CTはローレベルであるので、パイロット電圧設定回路104の第1のスイッチング素子104bはオフ状態となり、入力バッファ電圧設定回路105の第2のスイッチング素子105eはオン状態となる。
【0035】
続いて、図3中の時刻t2において、充電ケーブル2のケーブル側カプラ26がプラグイン車両3の車両側カプラ31に接続されたとすると、充電制御用ECU33のパイロット信号入力端子100にパイロット信号CPLが入力されるが、第1のプルダウン抵抗103によってパイロット信号CPLの+側の電圧(第1のダイオード102のカソード端子とグランド間の電圧)は、V1からV2(9V)に変化する。
【0036】
このように、時刻t2以降、充電制御用ECU33に入力されたパイロット信号CPLの+側の電圧(第1のダイオード102のカソード端子とグランド間の電圧)はV2(9V)になるが、上記のように、第1のスイッチング素子104bはオフ状態、第2のスイッチング素子105eはオン状態となっているため、入力バッファ電圧設定回路105の分圧比はR2/(R1+R2)となり、入力バッファ106の入力電圧は、入力バッファ106の推奨入力電圧範囲の最大値である5.5V以下に抑えられる。
【0037】
CCID27のパイロット回路27cは、上記のようなパイロット信号CPLの電圧変化(パイロット線24の電圧変化)を検知すると、充電ケーブル2がプラグイン車両3に接続されたと判断し、図3中の時刻t3から電源設備(外部電源1及び充電ケーブル2)の定格電流に応じたデューティ比でパイロット信号CPLを送信することにより、充電制御用ECU33に電源設備の定格電流を通知する。
【0038】
そして、充電制御用ECU33のCPU108は、時刻t3から一定時間後の時刻t4にスリープ状態から起動すると、入力バッファ106を介して入力されるパイロット信号CPLのデューティ比を測定して電源設備の定格電流を把握した後、図3中の時刻5にハイレベルの制御信号CTを出力して第1のスイッチング素子104bをオン状態(第2のスイッチング素子105eをオフ状態)に切替え、パイロット信号CPLの電圧をV2からV3(6V)に変化させることにより、充電準備完了を充電ケーブル2のCCID27に通知する。
【0039】
このように、時刻t5以降、充電制御用ECU33に入力されたパイロット信号CPLの+側の電圧(第1のダイオード102のカソード端子とグランド間の電圧)はV3(6V)になるが、上記のように、第1のスイッチング素子104bはオン状態、第2のスイッチング素子105eはオフ状態となっているため、入力バッファ電圧設定回路105の分圧比は(R2+R3)/(R1+R2+R3)となり、入力バッファ106の入力電圧は、入力バッファ106の推奨入力電圧範囲の最小値である3.5V以上に上昇する。
【0040】
CCID27のパイロット回路27cは、パイロット信号CPLの電圧(パイロット線24の電圧)がV2からV3に変化したことを検出すると、プラグイン車両3側の充電準備が完了したと判断して、外部電源1の交流電力をプラグイン車両1側に給電するためのリレー27a、27bをオンにする(つまり給電を開始する)。これにより、外部電源1から充電ケーブル2(給電線21、22)を介して、プラグイン車両3のバッテリチャージャ32に交流電力が供給される。
そして、充電制御用ECU33のCPU108は、パイロット信号CPLのデューティ比から把握した電源設備の定格電流に基づいてバッテリチャージャ32を制御することにより、駆動用バッテリの適切な充電制御を行う。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、CPU108の前段に設けられたパイロット信号CPL用の入力バッファ106の入力電圧が、パイロット信号CPLの電圧変化に応じて、その推奨入力電圧範囲内に収まるように設定されるので、充電ケーブル2を介して外部電源1からプラグイン車両3を充電する場合にパイロット信号CPL用の入力バッファ106を保護することが可能となる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が挙げられる。
例えば、上記実施形態では、充電ケーブル2をプラグイン車両3に接続した時点(図3中の時刻t2)で、自動的にパイロット信号CPLの電圧がV1からV2に変化するような構成を採用したが、本発明はこれに限らず、充電ケーブル2をプラグイン車両3に接続した時点、つまり電圧値V1のパイロット信号CPLが充電制御用ECU33に入力された時にCPU108が起動し、CPU108の制御によってパイロット信号CPLの電圧をV1からV2に変化させる構成を採用しても良い。
【符号の説明】
【0043】
1・外部電源、2・充電ケーブル、3・プラグイン車両、33・充電制御用ECU(電子制御装置)、104・パイロット電圧設定回路、105・入力バッファ電圧設定回路、106・入力バッファ、108・CPU(プロセッサ)
図1
図2
図3