特許第5852439号(P5852439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5852439-電着レジストの膜厚制御方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852439
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】電着レジストの膜厚制御方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 13/22 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
   C25D13/22 304A
   C25D13/22 304B
   C25D13/22 305
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-287716(P2011-287716)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-136811(P2013-136811A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊池 一二
(72)【発明者】
【氏名】横沢 賢
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−256895(JP,A)
【文献】 特開平05−009794(JP,A)
【文献】 特開2005−256126(JP,A)
【文献】 特開2005−256096(JP,A)
【文献】 特開平05−009793(JP,A)
【文献】 特開平01−255696(JP,A)
【文献】 特開平06−049692(JP,A)
【文献】 特開2002−129389(JP,A)
【文献】 特開2002−327294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電着液を用いて電着電圧を印加して複数回被塗物に成膜する電着レジストの膜厚制御方法であって、前記電着液で複数回被塗物に電着を行うと前記電着液中の溶剤量の変動により被塗物に電着するレジスト膜の厚みは変動するため、所定のレジスト膜の厚みが得られるように、前記被塗物に電着したレジスト膜の厚みを確認後、前記電着電圧を変更して被塗物に電着することを特徴とする電着レジストの膜厚制御方法。
【請求項2】
請求項1において、レジスト膜の厚みを調整する前記電着電圧の基準値は50Vであり、レジスト膜の厚みを調整する前記電着電圧の調整範囲は30〜70Vとすることを特徴とする電着レジストの膜厚制御方法。
【請求項3】
前記電着電圧の調整範囲の電圧で、所定のレジスト膜の厚みが得られないときは、前記電着電圧を、レジスト膜の厚みを調整する基準電圧に設定後、前記電着液中に溶剤を追加投入し、レジスト膜の厚みの調整が必要なときは、前記電着電圧の調整範囲で電圧を調整することを特徴とする請求項2に記載の電着レジストの膜厚制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子、センサ等の立体電極を形成する素子の製造方法に関する。より詳しくは、膜厚の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動子、センサの電極形成においては、リフトオフ方法が用いられて来たが、工程が煩雑なため、均一な三次元コーティングが可能で工程が短縮出来る電着レジストによるプロセスが増加して来ている。
【0003】
電着の原理は電気めっきと似た方法であり、水溶性塗料を満たした塗料浴中に金属製の被塗物を浸し、これを陽極又は陰極として直流電圧をかけると、膜形成成分が負又は陽に荷電し、被塗物表面に電着する。電着形成物を陽極とする場合をアニオン電着、陰極とする場合をカチオン電着と呼ぶ。元々、電着はカチオン電着塗装などと呼ばれ、車の下塗り塗装などに用いられて来た。カチオン電着塗装は、大きな槽に入れた塗料側を電気の+極とし、−電極に繋がっている車体を塗料槽にくぐらせ、電気的(イオンの働き)に車体に塗料を密着させるやり方で行なわれている。
【0004】
近年、電子部品の小型化に伴い、振動子やセンサなどの電子部品も小型化が進んで来ている。その製造方法の1つとして、フォトリソグラフィ技術を用い、立体電極パターンを形成する方法として電着レジストが使用されるようになって来た。電着レジストによる立体電極の形成方法は、基本となる形状の振動子やセンサをウエハ上に形成した後、そのウエハ全面にパターンを形成させる電極膜を均一に形成させる。この電極膜上に電気を印加することにより、電着膜を形成させる。この電着膜をフォトリソプロセスにより、露光、現像を行い、さらに電極膜をエッチングで除去することにより、電極パターンを形成することが出来る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】PEPR2400 PHOTO RESIST ローム・アンド・ハース電子材料株式会社
【非特許文献2】PEPR2400 フォトレジスト ELECTRONIC MATERIALS ローム・アンド・ハース電子材料株式会社
【非特許文献3】電着型フォトレジストを用いた回路形成技術 日本ペイント株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の水晶振動子やセンサの小型化に際し、電極パターニングも高精度が要求され、電着レジストを用いたプロセスにおいても膜厚の管理が必要である。
【0007】
非特許文献1および非特許文献2に記載されているように、電着レジストの膜厚を管理するためには、電着液の1.固形分濃度、2.溶剤量、3.アミン価の管理が必要であり、定期的に分析をし、管理基準内に維持していく必要がある。この中で、1.固形分濃度および、3.アミン価は短期的に変動するものではないものの、2.溶剤量は、連続作業中においても変動し、膜厚の変化を引き起こすため、作業中においても溶剤の補充が必要となる。
【0008】
例えば、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社のPEPR2400を使用する場合、露光、現像等の条件を一定にするため、最低でも電着レジストの膜厚バラツキを±2μm程度には規定する必要があり、膜厚の調整は、溶剤である2−オクタノンを電着液に混ぜることにより行っている。図2は、従来の電着液調整と電着工程のフロー図である。
【0009】
手動で調整する場合、1回の調整だけでも、2−オクタノンの計量、攪拌し、補充後、循環させて電着出来るまでには30分以上の時間が掛かる。自動で2−オクタノンを定量供給することも可能であるが、電着液の使用回数等により、2−オクタノンの供給量と調整後の膜厚にズレが生じ膜厚の変動が大きくなることもあるため、補正が必要になる。またガスクロで定量分析を行うことにより、オクタノン濃度を測定することも出来るが、装置購入費や測定時間が掛かる。
【0010】
本発明においては、電着液の調整回数を減らし、かつ、電着レジストの膜厚を容易に管理することができる膜厚制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
所定の電着液を用いて電着電圧を印加して複数回被塗物に成膜する電着レジストの膜厚制御方法であって、電着液で複数回被塗物に電着を行うと電着液中の溶剤量の変動により被塗物に電着するレジスト膜の厚みは変動するため、所定のレジスト膜の厚みが得られるように、被塗物に電着したレジスト膜の厚みを確認後、電着電圧を変更して被塗物に電着する電着レジストの膜厚制御方法。
【0013】
レジスト膜の厚みを調整する電着電圧の基準値は50Vであり、レジスト膜の厚みを調整する電着電圧の範囲は30〜70Vとする電着レジストの膜厚制御方法。
【0015】
電着電圧の調整範囲の電圧で、所定のレジスト膜の厚みが得られないときは、電着電圧を、レジスト膜の厚みを調整する基準電圧に設定後、電着液中に溶剤を追加投入し、レジスト膜の厚みの調整が必要なときは、電着電圧の調整範囲で電圧を調整する電着レジストの膜厚制御方法。
【発明の効果】
【0016】
上記手段によって、膜厚が変化した電着液に対する調整回数を大幅に減らすことが可能となり、作業性が向上した。
【0017】
本発明によって、電着液の調整回数を減らし、かつ、電着レジストの膜厚を容易に管理することができる膜厚制御方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施例における、各電圧(40V,50V,100V)における2−オクタノン供給時の膜厚の変化を示すグラフ
図2】従来の電着液調整と電着工程のフロー図
図3】本実施例における、電着液調整と電圧シフトによる電着工程のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における電着レジストの膜厚制御方法を、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社のPEPR2400を使用し、水晶基板に電着レジストを成膜する工程を例に図を用いて説明する。図1は、各電圧(40V,50V,100V)における2−オクタノン供給時の膜厚の変化を示すグラフであり、電着膜厚は電圧と2−オクタノンの調整量により、変化する。図3は、電着液調整と電圧シフトによる電着工程のフロー図である。
【0020】
水晶振動子の電極パターンを形成する方法として、水晶エッチングで振動子の形状を形成後の水晶基板の全面をCr300Å、Au1200Åでスパッタをおこなう。この水晶基板に電着レジストを塗布するため、電着治具に水晶基板10枚をセットする。その後、ポリポジットスプレークリーナで前処理を行い、電着を行う。
【0021】
電着レジストにローム・アンド・ハースのPEPR2400を使用する場合、膜厚調整を行うため、2−オクタノンを投入する。電着電圧と膜厚との関係は、図1に示すようなグラフになる。電着膜厚はワークの面積、表面を覆う膜条件(膜質、膜厚)に拠って変動するため、同一条件もしくは近い条件でデータを取ることが必要である。
【0022】
まず、初期設定として、電着膜厚を5μm±2μmの条件で電着するため、メスシリンダで60mlを計量し、1Lボトルに電着レジストを300ml取り分けた液中に入れ、振りながら混ぜ合わせ後、レジスト槽に入れる。その後、約30分程度循環させた後、ダミーウエハ10枚を電着用治具に固定し、電着を行う。
【0023】
電着レジストの膜厚を測定したところ、電着電圧50Vにおいて、水晶基板の表面端面部5.32μm/中心部4.55μm、裏面端面部5.34μm/中心部4.84μmであったため電着を開始した。
【0024】
電着処理を続け、端面部膜厚が6.5μmを超えたため、電着電圧を40Vに下げ、電着膜厚を確認する。水晶基板の表面端面部5.2μm/中心部4.73μm、裏面端面部5.44μm/中心部4.86μmであったため、この条件で電着を続けた。
【0025】
また経験的に電着電圧50Vで2−オクタノン量を調整する条件では、電着電圧が30V以下および70V以上で調整する条件では、電着液組成がずれるため、生成する電着レジスト膜の均質性が悪くなる。
【0026】
電着電圧が30V以下および70V以上に設定しないと膜厚が調整出来ない条件となるときには、電着電圧を50Vに戻し、再度、2−オクタノンを入れ、電着液成分を調整する。ただし微調整が必要な場合は電着電圧を変更し、膜厚の微調整をおこなうことも出来る。
【0027】
電着後、電着治具から水晶基板を取り外し、遠心乾燥機で700rpm、15分間乾燥させる。その後、85℃、15分間ベーキングする。ベーキングから斜め露光までの4時間、湿度70%以上の条件で加湿をおこなう。なお湿度条件は50%程度以上あれば、露光後の現像においても、パターンの抜けにも連続処理を実施するため、露光機内での乾燥を考慮し、高めの加湿を行なっている。
【0028】
本実施例では、電着電圧50Vで、電着を開始したが、これに限定するものではなく、必要とする電着レジストの膜厚や電着液条件に応じて、設定すればよい。
図1
図2
図3