(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記の1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子がアルカリ土類金属の炭酸塩のナノ粒子、ピロケイ酸塩のナノ粒子並びにアルミナ及びアルミナ多形体から選択される金属酸化物のナノ粒子から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
前記の1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子が炭酸カルシウムのナノ粒子、モンモリロナイトのナノ粒子、アルミナのナノ粒子及びベーマイトのナノ粒子から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
前記の1.0に等しい形状ファクターを有する無機ナノ粒子がアルカリ土類金属の炭酸塩のナノ粒子、アルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子、金属酸化物のナノ粒子、メタロイド酸化物のナノ粒子及びシロキサンのナノ粒子から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
前記工程(i)の混合物が1.0より大きい形状ファクター又は1.0に等しい形状ファクターを有する全無機ナノ粒子を最大10重量%の量で含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、透明ポリマー材料の製造方法であって、特に容易に工業化可能であり且つ改善された機械的特性及び良好な光学的特性を有するポリマー材料を得ることを可能にする前記製造方法を提供することによって、先行技術の解決策の欠点を緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に従う解決策は、透明ポリマー材料の製造方法であって、透明ポリマー材料を得るために、
(i)・厳密に1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子;並びに
・少なくとも80重量%の量のポリカーボネート(PC)である第1の熱可塑性ポリマー(以下、「ポリカーボネート第1熱可塑性ポリマー」とも言う)及びこの第1の熱可塑性ポリマー以外の第2の透明熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックス:
を混合して混合物を得ることから成る工程;並びに
(ii)このポリマーマトリックスを単独で又は混合物状で加熱して溶融状態にすることから成る工程:
を任意の順序で含み、
工程(i)の混合物が厳密に1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子を厳密に5重量%より少ない量で含み、そして、
工程(i)においてポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)から選択される溶融状態の熱可塑性ポリマーと共に得られる予混合物の形の無機ナノ粒子を用いないことを特徴とする、前記製造方法を提供するものである。
【0013】
言い換えれば、本発明の製造方法の主題事項は、最初に1以上の形状ファクターを有する無機ナノ粒子とPC、PS及びPMMAから選択される溶融状態の熱可塑性ポリマーとの予混合物又はマスターバッチを作ってこの予混合物をポリマーマトリックス中に加えることから成る工程を排除する。
【0014】
以下の説明において、各種用語は以下の意味を有する。
・「透明ポリマー材料」とは、この材料を通して見た時に像のコントラストの有意の損失が観察されない材料を意味する。言い換えれば、像とその観察者との間に該透明ポリマー材料を介在させた時に像の品質が有意に低下しないものである。
・「任意の順序」とは、工程(i)を工程(ii)の前に、工程(ii)と一緒に又は工程(ii)の後に実施することができることを意味する。
・「加熱して溶融状態にする」とは、温度を上昇させて柔らかい状態のポリマーマトリックスを得ることを意味する。この柔らかい状態は当業者によく知られており、慣用的にはポリマーマトリックスをポリカーボネート第1熱可塑性ポリマーのガラス転移温度又は軟化温度より高い温度に加熱した時に達することができる。例として、マトリックスを約260℃に加熱することができる。
・工程(ii)における「混合物状で」とは、ポリマーマトリックスが工程(i)の混合物状にある時に、即ち工程(i)を工程(ii)の前に又は工程(ii)と一緒に実施した時に、このポリマーマトリックスを加熱して溶融状態にすることを意味する。
【発明の効果】
【0015】
驚くべきことに、特に光学分野においては前記の理由でポリマー混合物に基づいて作業することに問題(屈折率及び/又は混和性に関する問題)があると先験的には推測されたとしても、本発明における厳密に1.0より大きい形状ファクターを有するナノ粒子はかかる混合物中に良好に分散されることがわかった。
【0016】
さらに、ポリマーマトリックス中の熱可塑性ポリカーボネートの少なくとも80重量%という下限値は、第1ポリマーと第2ポリマーとが有意に異なる屈折率を有する場合に、ポリマー材料の屈折率の過度の変化を有意に抑制することを可能にする。この光学特性の劣化は、このポリマー材料の機械的光学系(めがね)用途に必要なことに反するものとなる。
【0017】
最後に、この下限はまた、機械的特性(特に剛性及び耐衝撃性の点)並びに光学的特性(特にポリマー材料の光透過性の点)の両方に関連する、第1ポリマーと第2ポリマーとの間の不混和性という悪影響を有意に軽減することを可能にする。
【0018】
本発明の方法の別の利点は、温度に対する寸法安定性の改善及び従って熱膨張の抑制を示す透明ポリマー材料を得ることを可能にするということである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特定的な実施形態において、前記ポリマーマトリックスは、ポリカーボネート第1熱可塑性材料を少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%の量で含むことができる。
【0020】
さらに、前記ポリマーマトリックスは、ポリカーボネート第1熱可塑性ポリマー少なくとも80重量%及び第2熱可塑性ポリマーを多くとも20重量%、好ましくはポリカーボネート第1熱可塑性ポリマー少なくとも90重量%及び第2熱可塑性ポリマー多くとも10重量%から成ることができる。特に好ましい態様において、このポリマーマトリックスは、ポリカーボネート第1熱可塑性ポリマー95重量%及び第2熱可塑性ポリマー5重量%から成ることができる。
【0021】
一般的に、ナノ粒子の形状ファクターとは、一般的に「長さ」と称される粒子の特定「最大寸法」(L)と、一般的に「幅」又は「直径」と称される粒子の特定「最小寸法」(以下において文字「l」と示す)との間の比である。
【0022】
該形状ファクターは、顕微鏡、特に光学顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)を用いて得られた画像を分析することによって慣用的に決定される。
【0023】
ナノ粒子の「最大寸法」Lは、顕微鏡画像を分析して
・最大フェレ径;若しくは
・ナノ粒子を内接する(s'insere)直方体の長さ:
を測定することにより、又は
・長さLを直接測定することにより、決定される。
【0024】
ナノ粒子の「最小寸法」lは、顕微鏡画像を分析して
・円相当径;若しくは
・最小フェレ径;若しくは
・粒子を内接する直方体の幅:
を測定することにより、又は
・幅lを直接測定することにより、決定される。
【0025】
形状ファクターL/lは、上記の定義に関連した1つの長さと1つの幅と間の比、即ち、
(a)最大フェレ径対最小フェレ径;又は
(b)最大フェレ径対円相当径;又は
(c)粒子を内接する直方体の長さ対粒子を内接する直方体の幅;又は
(d)直接測定した長さ対直接測定した幅:
の比に相当する。
【0026】
本発明のナノ粒子の母集団についての平均形状ファクターは、個々のナノ粒子についての形状ファクターの数平均と規定され、言い換えれば各ナノ粒子の長さL対幅lの比の数平均と規定される。
【0027】
用いられる技術がSEMである場合、粒子のサンプルを最初に溶剤中に分散させ、次いでこれをシリコンウエハー上に置く。
【0028】
用いられる技術がTEMである場合、粒子のサンプルを最初に溶剤中に分散させ、次いでこれをビニルポリホルマールのような透明非晶質ポリマーのフィルムで覆われた銅グリッド上に置く。
【0029】
拡大率は、粒子が適度に明確になり且つ充分な数で存在するように、合理的態様で選択される。かかる条件下で、適度な数の画像、例えば約20個の画像を分析することにより、確実で信頼できる態様で粒子を特徴付けることが可能となる。拡大率が小さすぎると、粒子の数が多くなりすぎ、凝集レベルが大きくなり、そして数多くの粒子が、それぞれがこの尺度でたった数ピクセルだけで表わされるほど小さくなってしまう恐れがある。拡大率が大きすぎて例えば1画像当たりの粒子が10個より少ないような場合には、確実で且つ信頼できる態様で形態学的特徴を得るためには、非常に多数の画像、特に数百もの画像を処理することが必要となる。従って、画像分析法は、ナノ粒子間の良好な度合いの分散を提供し且つサンプル内で分散が均一であることを保証するような態様で、選択される。
【0030】
形状ファクターL/lは上に特定した4つの異なる比(比a、b、c又はd)に相当し得るという事実を考慮に入れると、本発明の意味において用語「形状ファクター」は、比a〜dの内の少なくとも1つ、好ましくはこれらの比の内の少なくとも2つ、より一層好ましくはこれらの比の内の少なくとも3つ、さらにより一層好ましくは4つの比全部を用いて測定した無機ナノ粒子の形状ファクターを意味するものと理解されたい。
【0031】
本発明の無機ナノ粒子の形状ファクターは、有利には1.5以上、好ましくは2以上、好ましくは5以上、好ましくは10以上、好ましくは50以上、好ましくは100以上、特に200以上であることができる。本発明の無機ナノ粒子の形状ファクターは、一般的に10000以下、好ましくは5000以下、特に1000以下である。
【0032】
本発明の第2のポリマーに関しては、これはスチレンのホモポリマー、アクリレートのホモポリマー、アクリルアミドのホモポリマー及びそれらの混合物から選択することができる。
【0033】
好ましいアクリレートホモポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチルアクリレート及びポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0034】
この第2のポリマーはまた、スチレン、アクリレート、アクリルアミド及びポリカーボネートのモノマーのコポリマー並びにそれらの混合物から選択することもできる。
【0035】
コポリマーの例としては、スチレンとアクリロニトリルとのコポリマー(SAN)、メタクリル酸メチルのコポリマー、アクリル酸ブチルのコポリマー、及びビスフェノールAのコポリマーを挙げることができる。
【0036】
本明細書を通じて挙げられる無機ナノ粒子は、典型的にはその少なくとも1つの寸法がナノメートル(10
-9m)サイズのものである。
【0037】
用語「寸法」とは、本明細書においては、所定集団の全ナノ粒子の数平均寸法を意味し、この寸法は当業者によく知られた慣用の方法によって測定される。
【0038】
例として、本発明のナノ粒子の寸法は、次の方法によって測定することができる。
・遠心分離による沈降及びX線分析を用いた方法(方法1);
・レーザーグラニュロメトリーによる光拡散を用いた方法(方法2);
・レーザーグラニュロメトリーによる光回折を用いた方法(方法3);及び
・電子顕微鏡を用いた方法、特にSEM又はTEM(方法4)。
【0039】
方法1において、ナノ粒子の寸法はストークス径と称される。例えば、ナノ粒子の寸法は、同じ密度を有していて且つ同じ流体中で層流状況に落ちる時に当該ナノ粒子と同じ速度を有する球体の直径と同一とする。
【0040】
方法2に従えば、ナノ粒子の寸法は、拡散直径と称される。例えば、ナノ粒子の寸法は、1.55の屈折率を有していて且つ同じ固体アングルにおいて当該ナノ粒子と同じ光量を拡散する球体の直径と同一とする。しかしながら、ナノ粒子の性状によっては、ナノ粒子の屈折率を測定するために当業者によく知られたMie理論を適用することが必要な場合がある。例として、Mie理論の適用において、炭酸カルシウムナノ粒子の屈折率は1.55ではなくて1.59(実部)であり、吸収係数は0.020〜0.022(虚部)である。
【0041】
方法3においては、ナノ粒子の寸法は回折直径と称される。例えば、ナノ粒子の寸法は、光線の波動性状の理由で、当該ナノ粒子と同じ光線束の屈折をもたらす円の直径と同一とする。
【0042】
方法4において、ナノ粒子の寸法は、ナノ粒子の最も小さい寸法と規定されるナノ粒子の幅lを指す。例えば、ナノ粒子の寸法は、形状ファクターを測定するために上に記載した画像分析技術を用いて測定した幅lと同一とする。この測定方法は、大きい形状ファクター、特に100以上、例えば200〜1000の範囲の形状ファクターを有するナノ粒子について、好ましい。
【0043】
ナノ粒子の寸法を測定する4つの方法(方法1、2、3又は4)は、有意に異なる結果をもたらすことがある。従って、これらの方法1〜4の内の少なくとも1つに従って得られた結果、好ましくはこれらの方法の内の少なくとも2つに従って得られた結果、より一層好ましくはこれらの方法の内の少なくとも3つに従って得られた結果、特に好ましくはこれら4つの方法のすべてに従って得られた結果が、本発明のナノ粒子のナノメートルサイズの寸法の条件を満たさなければならない。
【0044】
本発明の無機ナノ粒子の寸法は、特に最大400nm、好ましくは最大300nm、より一層好ましくは最大100nmである。
【0045】
特に好ましい態様において、前記無機ナノ粒子の寸法は、少なくとも1nmであって80nm以下、より一層好ましくは少なくとも10nmであって70nm以下、例えば40nmである。
【0046】
有利には、本発明の無機ナノ粒子は、ポリマーマトリックス中に混合される前に、混合物内への分散性を改善して凝集を抑止するために、いわゆる「表面」処理に特に付すことができる。
【0047】
当業者によく知られた任意のタイプの表面処理、例えば無機ナノ粒子の官能化又はグラフト化等を構想することができる。
【0048】
従って、厳密に1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子を表面処理に付した場合、本発明に従って溶融状態のポリマーマトリックス中に混合される(工程i)のは、こうして処理された無機ナノ粒子である。
【0049】
さらに、前記無機ナノ粒子の形状ファクターは有利には、前記表面処理の後に決定することができる。表面処理の後に計算される形状ファクターは、表面処理の前に計算されるものと実質的に同じである。
【0050】
本発明に従う厳密に1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子は、
・アルカリ土類金属の炭酸塩のナノ粒子、例えば炭酸カルシウムのナノ粒子等;
・ピロケイ酸塩のナノ粒子、例えばモンモリロナイトのナノ粒子等;
・金属酸化物のナノ粒子、例えばアルミナ又はアルミナ多形体(例えばベーマイト等)のナノ粒子等:
から選択することができる。
【0051】
満足できる光学的特性(特に光学領域におけるもの)を保証しつつ、透明ポリマー材料の機械的特性を改善するためには、本発明の工程(i)の混合物が厳密に1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子を最大2重量%、好ましくは最大1重量%、さらにより一層好ましくは最大0.5重量%の量で含むようにする。特に好ましい例は、前記無機ナノ粒子を0.25重量%の量で有する混合物(工程i)である。
【0052】
本発明の工程(i)の混合物は、他のタイプのナノ粒子、特に形状ファクターが1である無機ナノ粒子を随意に含むこともできる。
【0053】
形状ファクターが1である無機ナノ粒子は、
・アルカリ土類金属の炭酸塩のナノ粒子、例えば炭酸カルシウムのナノ粒子等;
・アルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子、例えば硫酸バリウムのナノ粒子等;
・金属酸化物のナノ粒子、例えばアルミナ、酸化亜鉛又は酸化チタンのナノ粒子等:
・メタロイド酸化物のナノ粒子、例えば二酸化ケイ素のナノ粒子等;
・シロキサンのナノ粒子、例えばシルセスキオキサンのナノ粒子、より特定的にはトリシラノールフェニルポリへドラールシルセスキオキサン(TP−POSS)のナノ粒子等:
から選択されるナノ粒子であることができる。
【0054】
グレードに応じて、ある種のナノ粒子は1.0の形状ファクター又は厳密に1.0より大きい形状ファクターを有することができる。炭酸カルシウムを例として挙げることができる。Solvay社からSocal(登録商標)31の名称で販売されている炭酸カルシウムのナノ粒子は1.0の形状ファクターを有する立方体形状のものであり、一方、Solvay社からSocal(登録商標)90Aの名称で販売されている炭酸カルシウムのナノ粒子は針の形で存在し、従って厳密に1.0より大きい形状ファクターを有する。
【0055】
本発明の工程(i)の混合物中の全無機ナノ粒子の量、言い換えれば1以上の形状ファクターを有する全無機ナノ粒子の量は、最大10重量%であるのが好ましく、最大5重量%であるのがさらに好ましい。
【0056】
この上限値は、特にポリマーマトリックス中で混合される時にナノ粒子が凝集するのを抑制する働きをし、それにより、このナノ粒子がマトリックス全体に均一に分散されるのを保証し且つ透明性をより良好に維持する働きをする。
【0057】
特に工程(i)の混合物中の無機ナノ粒子の量が0.5重量%より多い場合に、無機ナノ粒子の存在下でポリマーマトリックスの分解を抑制するため、そして光学的特性を維持しつつ機械的特性をさらに改善するためには、この混合物に少なくとも1種の酸化防止剤をさらに含ませることができる。この/これらの酸化防止剤は、ポリマーマトリックス中に少なくとも一部可溶のものである。
【0058】
特定実施形態において、前記酸化防止剤は、無機ナノ粒子を加える前にポリマーマトリックス中に混合される。好ましくはポリマーマトリックスを最初に酸化防止剤の存在下で溶融させ(工程ii)、次いでこのマトリックス中に厳密に1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子を混合する(工程i)。
【0059】
有利には,工程(i)の混合物は、最大5重量%の量の酸化防止剤、好ましくは最大2重量%の量の酸化防止剤を含むことができる。この混合物中の酸化防止剤の量が5重量%より多いと、得られる透明ポリマー材料の光学的特性及び機械的特性が劣化することがある。
【0060】
本発明の酸化防止剤は、当業者によく知られた任意のタイプの酸化防止剤であることができる。好ましくは、用いられる酸化防止剤は、ホスファイトを含む。例として、次の酸化防止剤を挙げることができる:Ultranox(登録商標)626、Irgafos(登録商標)168、又はIrganox(登録商標)HP2921。
【0061】
本発明の製造方法によって得られる透明ポリマー材料は、照準器用光学レンズ、ヘルメットバイザー若しくは眼科用レンズのタイプの光学物品、又は自動車ガラスタイプの物品の製造に用いることができる。
【0062】
例として、前記光学物品の厚さは、最大15mm、好ましくは少なくとも0.1mmであって最大5mm、特に好ましくは少なくとも0.5mmであって最大4mmであることができる。
【0063】
典型的には、前記光学物品は、前記透明ポリマー材料から、当業者によく知られた任意の造形方法、例えば熱成形、ドレープ成形(drapage)、押出、カレンダー加工、紡糸、射出、射出−圧縮又は吹込成形等によって、製造することができる。
【0064】
好ましくは、本発明の透明ポリマー材料は、棒状体の形で押出され、この棒状体は次いで造粒され、前記光学物品を製造するために必要なその後の上記造形方法の内の少なくとも1つ、特に射出−成形又は熱−圧縮を用いた造形に付される。
【0065】
本発明の他の特徴及び利点は、以下に単に非限定的例示として与えた実施例から明らかになる。
【実施例】
【0066】
以下の実施例で用いた各種成分の出所は、次の通りである:
・ポリカーボネート(PC)第1熱可塑性ポリマーは、Bayer AG社よりMakrolon(登録商標)Al2647の名称で販売されているポリカーボネート(PC)である;
・第2熱可塑性ポリマーは、Sigma-Aldrich Co.社より参照番号200336の下で販売されているポリメチルメタクリレート(PMMA)である;
・厳密に1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子は、Southern Clay Product Inc.社よりCloisite(登録商標)20A(C20A)又はCloisite(登録商標)30B(C30B)の名称で販売されている。
【0067】
これらの無機ナノ粒子は、層状タイプのものである。それらの寸法は、TEMにより、40000倍の拡大率で、少なくとも20個の像に対して、これらのナノ粒子を最初にエタノール中に分散させ、次いでそれらを銅グリッド上に置き、最後にそれらを透明非晶質ポリマーフィルムで覆って、測定した。これは、ほぼ1nmに等しい幅l又は数平均寸法及び200nm〜1000nmの範囲の長さLを与えた。かくして、TEM分析及び直接測定(比d)に従えば、これらのナノ粒子の形状ファクターL/lは200〜1000の範囲である。
【0068】
ポリマー材料の調製
【0069】
第1熱可塑性ポリマー及び第2熱可塑性ポリマー並びに厳密に1.0より大きい形状ファクターを有するナノ粒子を、下記の表1に設定した割合で、最初に慣用の容器中に入れて固体状態で互いに混合した(工程i)。各成分の割合は重量測定によって決定される。
【0070】
その後、固体状態の3つの成分の混合物(第1ポリマー、第2ポリマー及び厳密に1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子)を押出機中に入れて、混合されたポリマーマトリックスを加熱して溶融状態にした(工程ii)。この押出機は、DSM Xplore社より販売されているDSM micro 15の名称の再循環式二軸スクリュー型タイプで40回転/分(rpm)の剪断速度を示すものであることができる。従って、ポリマーマトリックスを加熱して溶融状態にする工程(工程ii)の前にナノ粒子の混合(工程i)を実施した。
【0071】
押出機の温度は、混合物のポリマーマトリックスが溶融するように設定した。押出温度は、ポリカーボネート第1熱可塑性ポリマーのガラス転移温度又は軟化温度より高くした。さらに、この温度は好ましくはポリカーボネート第1熱可塑性ポリマーの熱分解を抑制するように設定すべきである。例えば、押出機の温度は260℃に設定した。
【0072】
混合は、第1に混合物中の無機ナノ粒子の良好な分散を得るのに、そして第2に第1熱可塑性ポリマーの高温分解を抑制するのに充分な時間期間実施した。実施例では、混合物中の溶融状態の第1熱可塑性ポリマーの滞留時間のために採用した最適時間は14分だったが、この時間は何ら限定的なものではなく、7分〜20分の範囲にすることができた。
【0073】
もちろん、他の調製方法も可能である。例えば、すでに溶融状態にあるポリマーマトリックス中に厳密に1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子を加えることができる。溶融状態のポリマーマトリックスを例えば3分間混合した後に、前記ナノ粒子を溶融ポリマーマトリックス中に、押出機のフィードホッパーによって直接加えることができ、得られた混合物を押出チャンバー中に充分な時間、例えば11分間流す。従って、ポリマーマトリックスを加熱して溶融状態にする工程(工程ii)の後に、ナノ粒子の混合(工程i)を実施する。この実施が好ましい。
【0074】
また、ポリマーマトリックスを押出機によって作業し得るものにする温度において本発明の3つの成分すべてを互いに混合することを構想することもできる。従って、ポリマーマトリックスを加熱して溶融状態にする工程(工程ii)と同時に、ナノ粒子を混合する(工程i)。
【0075】
混合の終わりに、得られたポリマー材料を、押出機の出口において棒状体として造形する。この棒状体を次いで冷却し、粒状体の形にする。
【0076】
本発明のポリマー材料の機械的特性及び光学的特性を研究するために、前記粒状体を前記の特性を測定するためのサンプルを作るのに適した変形に付した。
【0077】
機械的及び光学的特性
【0078】
研究した機械的特性は、線熱膨張係数及び曲げ弾性率であり、研究した光学的特性は光透過度だった。
【0079】
線熱膨張係数(LCTE)
【0080】
LCTEは温度変化に対するポリマー材料の寸法安定性を特徴付ける。ポリマー材料の熱膨張を抑制するためには、この係数ができるだけ小さいことが好ましい。この特性は、特に自動車ガラス用途において、非常に重要である。
【0081】
LCTEの測定は、4mm×50mm×1.5mmの寸法を有する棒状体の形のサンプルに対して、Metravib社より販売されているVA4000粘性分析器を用いた熱機械分析によって実施した。得られたLCTE測定の不確実性は、0.5×10
-6/℃だった。
【0082】
前記棒状体は、商品名Darragonのホットプレート液圧式熱圧着プレスを用いて造形されたポリマー材料の粒状体から出発して得られた。
【0083】
LCTEを測定するために、サンプルを2個のジョーの間に入れた。上部のジョーは測定カラムに固定され、サンプルの長さの変化に連動した動きを記録する。最初に5℃/分の速度で周囲温度から100℃までの最初の昇温をサンプルに加えた。次いでサンプルを5℃/分の速度で周囲温度まで冷ました。最後に、周囲温度から90℃まで5℃/分の速度で昇温しながら、測定を実施した。
【0084】
曲げ弾性率
【0085】
曲げ弾性率は、ポリマー材料の剛性を特徴付ける。曲げ弾性率が高ければ高いほど、材料の剛性が大きい。
【0086】
曲げ弾性率の測定は、4mm×50mm×1.5mmの棒状体の形のサンプルに対して実施した。
【0087】
前記の棒状体は、商品名Darragonのホットプレート液圧式熱圧着プレスを用いて造形されたポリマー材料の粒状体から出発して得られた。この棒状体の曲げ弾性率を、Metravib社から販売されているVA4000粘性分析器を用いて測定した。
【0088】
サンプルを3℃/分の速度で30℃の温度に昇温した。次に30℃の温度平坦域において10分間かけて弾性率の測定を実施した。加えた振動数は1ヘルツ(Hz)であり、動態的変動(振動の振幅)は5μmだった。
【0089】
光透過度
【0090】
光透過度は、ポリマー材料の透明性を特徴付ける。光透過度が高ければ高いほど、材料の透明性が良好である。
【0091】
光透過度の測定は、4mm×50mm×1.5mmの寸法を有する棒状体の形のサンプルに対して、Varian社より販売されているCary 50分光光度計を用いて、650nmの波長において実施した。
【0092】
前記棒状体は、商品名Darragonのホットプレート液圧式熱圧着プレスを用いて造形されたポリマー材料の粒状体から出発して得られた。
【0093】
得られた結果を下記の表1にまとめる。比較例はCxと示す。PC及びPMMAの量はポリマー100重量部に対する重量部で表わされる(pcr)。工程(i)の混合物中の厳密に1.0より大きい形状ファクターを有する無機ナノ粒子の量は、重量%で表わされる。さらに、光透過度は、次の式を用いて、PCのみを含有する参照用サンプル0に対する百分率で表わされる。
【数1】
【0094】
【表1】
【0095】
表1は、ポリカーボネート以外の第2の透明熱可塑性ポリマー、特にPMMAの存在と、厳密に1より大きい形状ファクターを有するナノ粒子の添加[0.25%のC20A(サンプル5)又はC30B(サンプル6)]との間の相乗効果を示す。
【0096】
本発明に従って作られたサンプル5及び6は、サンプルC1〜C4について得られたものよりはるかに大きい曲げ弾性率について優れた光透過度を示す。
【0097】
また、有利なことに、本発明に従うサンプルにおいては、LCTEの低下の結果として、熱膨張も抑制される。