特許第5852468号(P5852468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5852468磁気粘性流体緩衝器及びそれに用いられるコイルアセンブリの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852468
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】磁気粘性流体緩衝器及びそれに用いられるコイルアセンブリの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/53 20060101AFI20160114BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   F16F9/53
   F16F9/32 N
   F16F9/32 L
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-39160(P2012-39160)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-174309(P2013-174309A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 啓司
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−216210(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/145357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/53
F16F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気粘性流体によって減衰力を発生する磁気粘性流体緩衝器であって、
前記磁気粘性流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に介装されるピストンと、
前記ピストンによって区画される二つの流体室と、
前記ピストンに連結され前記シリンダの外部に突出する中空形状のロッドと、
前記ピストンに巻装されるマグネットワイヤからなる電磁コイルと、
前記マグネットワイヤの両端からそれぞれ延びる2本のリード線と、
モールド樹脂に前記電磁コイルと前記2本のリード線が埋め込まれるコイルアセンブリと、を備え、
前記ピストンは、
前記ロッドに連結される中空形状の第一コアと、
前記第一コアとの間に前記コイルアセンブリを挟持する第二コアと、を備え、
前記2本のリード線が前記第一コア内側を通って前記ロッドの内側を通る電線に導通され
前記コイルアセンブリは、
前記2本のリード線が埋め込まれるように成形される一次成形体と、
前記一次成形体の外周に巻装される前記マグネットワイヤからなる前記電磁コイルと、
前記一次成形体が組み付けられた前記第一コアを金型に入れて、前記一次成形体との間に前記電磁コイルが埋め込まれるように成形される二次成形体と、を備え、
前記二次成形体の外周面によって前記二つの流体室の間で磁気粘性流体が流れる流路が形成されることを特徴とする磁気粘性流体緩衝器。
【請求項2】
前記コイルアセンブリは、
前記電磁コイルが巻装される環状のボビン部と、
前記第一コアの内側に挿入されるプラグ部と、
前記ボビン部と前記プラグ部を結ぶブリッジ部と、を有し、
前記2本のリード線が前記ボビン部と前記ブリッジ部と前記プラグ部に渡って延びることを特徴とする請求項1に記載の磁気粘性流体緩衝器。
【請求項3】
前記第一コアは、
前記ブリッジ部を収容するブリッジ収容凹部と、
前記ブリッジ収容凹部を挟んで延びる2本の半円柱状軸部と、を有し、
前記第二コアは、前記各半円柱状軸部の外周に結合される円筒状のヨーク部を有し、
前記ヨーク部が前記ピストンの軸方向について前記電磁コイルと並んで設けられることを特徴とする請求項2に記載の磁気粘性流体緩衝器。
【請求項4】
前記ピストンは、
前記各半円柱状軸部の外周に形成される雄ネジと、
前記ヨーク部の内周に形成される雌ネジと、を備え、
前記雄ネジと前記雌ネジが互いに螺合することを特徴とする請求項3に記載の磁気粘性流体緩衝器。
【請求項5】
前記ピストンは、
前記各半円柱状軸部の外周に前記第二コアが嵌合され、
前記各半円柱状軸部の外周に形成される雄ネジと、
前記雄ネジに螺合するナットと、を備え、
前記ナットと前記第一コアの間に前記コイルアセンブリと前記第二コアが介装されることを特徴とする請求項3に記載の磁気粘性流体緩衝器。
【請求項6】
前記ピストンは、
前記各半円柱状軸部の外周に前記第二コアが嵌合され、
前記各半円柱状軸部の外周に形成される環状溝と、
前記環状溝に嵌合する止め具と、を備え、
前記止め具と前記第一コアの間に前記コイルアセンブリと前記第二コアが介装されることを特徴とする請求項3に記載の磁気粘性流体緩衝器。
【請求項7】
前記ピストンは、
各半円柱状軸部の外周に前記第二コアが嵌合され、
各半円柱状軸部の内周に形成される雌ネジと、
前記雌ネジに螺合するボルトと、を備え、
前記ボルトと前記第一コアの間に前記コイルアセンブリと前記第二コアが介装されることを特徴とする請求項3に記載の磁気粘性流体緩衝器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の磁気粘性流体緩衝器の前記コイルアセンブリの製造方法であって、
前記2本のリード線が埋め込まれる一次成形体を成形する一次成形工程と、
前記一次成形体の外周に前記マグネットワイヤを巻装して前記電磁コイルを形成するコイル巻装工程と、
前記一次成形体との間に前記電磁コイルが埋め込まれるように二次成形体を成形する二次成形工程と、を順に行うことを特徴とするコイルアセンブリの製造方法
【請求項9】
前記二次成形工程において、前記一次成形体が組み付けられた前記第一コアを金型に入れて前記二次成形体を成形することを特徴とする請求項8に記載のコイルアセンブリの製造方法。
【請求項10】
前記二次成形工程において、前記一次成形体が組み付けられた前記第一コア及び前記第二コアを金型に入れて前記二次成形体を成形することを特徴とする請求項8に記載のコイルアセンブリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気粘性流体によって減衰力を発生する磁気粘性流体緩衝器及びそれに用いられるコイルアセンブリの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される磁気粘性流体緩衝器は、ピストンに電磁コイルが介装され、電磁コイルへの通電量を制御して電磁コイルに発生する磁場の強さを変えることによって、磁気粘性流体の見かけ上の粘性を変化させる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、この種の磁気粘性流体緩衝器に設けられる電磁コイルは、これを構成するマグネットワイヤの一端がピストンに接続され、マグネットワイヤの他端が1本の電線(リード線)に接続される。この電線は、ピストンから延びるロッド内を通して緩衝器の外側に取り出され、車両に搭載されるコントローラに接続される。
【0004】
コントローラから出力される駆動電流は、1本の電線を通して電磁コイルに導かれ、電磁コイルを流れた後に、ピストン、ロッド、車体等を通してバッテリの負極へと導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6260675号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の磁気粘性流体緩衝器にあっては、電磁コイルに導かれる駆動電流がピストン、ロッド、車体等を通して導かれるため、車両に搭載される他の電気機器等に絶縁処理を施す必要がある。
【0007】
コントローラは、磁気粘性流体緩衝器から取り出される1本の電線を用いて駆動電流を供給するため、駆動電流を出力する駆動回路の構成が制約される。
【0008】
また、従来の磁気粘性流体緩衝器にあっては、電磁コイルをピストンに組み付け、電磁コイルを構成するマグネットワイヤの一端をピストンに接続した後に、これらをモールド樹脂によって包囲する必要があるため、ピストンを効率よく組み立てることが難しい。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、駆動電流がピストンや車体等に流れることなく電磁コイルに導かれ、ピストンの組み立て性を改善できる磁気粘性流体緩衝器及びそれに用いられるコイルアセンブリの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、磁気粘性流体によって減衰力を発生する磁気粘性流体緩衝器であって、磁気粘性流体が封入されるシリンダと、このシリンダ内に摺動自在に介装されるピストンと、このピストンによって区画される二つの流体室と、ピストンに連結されシリンダの外部に突出する中空形状のロッドと、ピストンに巻装されるマグネットワイヤからなる電磁コイルと、マグネットワイヤの両端からそれぞれ延びる2本のリード線と、モールド樹脂に電磁コイルと2本のリード線が埋め込まれるコイルアセンブリと、を備え、ピストンは、ロッドに連結される中空形状の第一コアと、この第一コアとの間にコイルアセンブリを挟持する第二コアと、を備え、2本のリード線が第一コア内側を通ってロッドの内側を通る電線に導通され、コイルアセンブリは、2本のリード線が埋め込まれるように成形される一次成形体と、一次成形体の外周に巻装されるマグネットワイヤからなる電磁コイルと、一次成形体が組み付けられた第一コアを金型に入れて一次成形体との間に電磁コイルが埋め込まれるように成形される二次成形体と、を備え、二次成形体の外周面によって二つの流体室の間で磁気粘性流体が流れる流路が形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、磁気粘性流体緩衝器のコイルアセンブリの製造方法であって、2本のリード線が埋め込まれる一次成形体を成形する一次成形工程と、一次成形体の外周にマグネットワイヤを巻装して電磁コイルを形成するコイル巻装工程と、一次成形体との間に電磁コイルが埋め込まれるように二次成形体を成形する二次成形工程と、を順に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、2本のリード線が第一コアの内側に通され、ロッドの内側に通される2本の電線に導通させることが可能になる。これにより、駆動電流がピストンや車体等に流れることなく電磁コイルに導かれ、車両に搭載される他の機器に及ぼす電気的影響を抑えられる。
【0013】
また、本発明では、コイルアセンブリのモールド樹脂部を第一、第二コアと分離した状態で成形することが可能となり、コイルアセンブリを効率よく製造して、第一、第二コアに組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1参考例に係る磁気粘性流体緩衝器の断面図である。
図2】(A)(B)(C)は、参考例に係るピストンを組み立てる方法を示す工程図である。
図3】(A)(B)(C)は、参考例に係るコイルアセンブリの製造方法を示す工程図である。
図4】(A)(B)(C)は、本発明の第実施形態に係るコイルアセンブリの製造方法を示す工程図である。
図5】(A)(B)(C)は、本発明の第実施形態に係るコイルアセンブリの製造方法を示す工程図である。
図6】本発明の第実施形態に係るピストンコアアセンブリの断面図である。
図7】本発明の第実施形態に係るピストンコアアセンブリの断面図である。
図8】本発明の第実施形態に係るピストンコアアセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
参考例
図1は、磁気粘性流体緩衝器(以下、単に「緩衝器1」という)のピストン部を示す断面図である。緩衝器1は、自動車等の車両の車体と車軸との間に介装され、伸縮作動によって車体の振動を抑える減衰力を発生するものである。
【0017】
緩衝器1は、磁気粘性流体が封入される円筒状のシリンダ9と、このシリンダ9内に摺動自在に配置され、シリンダ9内を二つの流体室3、4に区画するピストン10と、を備える。
【0018】
ピストン10の第1コア30には、ロッド60の一端が連結される。このロッド60の他端は、シリンダ9の外部へ延在している。車体と車軸の一方にロッド60の他端が連結され、他方にシリンダ9が連結される。これにより、緩衝器1は、車体に対する車軸の移動に伴って、ロッド60とシリンダ9が相対移動して伸縮作動する。
【0019】
シリンダ9内の流体室3、4には、ガス室(図示せず)がフリーピストン(図示せず)を介して画成され、このガス室によってロッド60の侵入、退出によるシリンダ9内の容積変化が補償される。
【0020】
ピストン10は、ロッド60に連結されるピストンコアアセンブリ20と、このピストンコアアセンブリ20の外周に所定の間隔をもって配置される円筒状のフラックスリング50と、ピストンコア20にフラックスリング50を支持するプレート91、92と、ピストンコア20にプレート91、92をそれぞれ締結するナット88、98と、を備える。
【0021】
ピストンコアアセンブリ20は、モールド樹脂に電磁コイル65と2本のリード線72、73が埋め込まれたコイルアセンブリ70と、このコイルアセンブリ70を収容する中空形状の第一コア30と、この第一コア30との間にコイルアセンブリ70を挟持する第二コア40とからなる。
【0022】
緩衝器1は、減衰力発生要素として、ピストン10に貫通して二つの流体室3、4を連通するメイン流路6と、このメイン流路6と並列に二つの流体室3、4を連通するバイパス流路(図示せず)とを備える。
【0023】
メイン流路6は、ピストンコアアセンブリ20の外周面22とフラックスリング50の内周面51の間に画成される間隙16と、プレート91、92に開口するメイン開口部94、95とによって構成される。
【0024】
ピストンコアアセンブリ20とフラックスリング50はピストン10の中心線Oについて同心上に配置され、間隙16は円環状に画成される。プレート91、92には、間隙16に向けて開口する複数のメイン開口部94、95が形成される。
【0025】
ピストンコアアセンブリ20には、磁場(磁界)を発生させる電磁コイル65が設けられる。電磁コイル65は、マグネットワイヤ66がコイル状に巻回されたものであり、マグネットワイヤ66の両端に2本のリード線72、73が接続される。電磁コイル65は、リード線72、73を通してマグネットワイヤ66に電流が流れることによって磁場を発生させる。
【0026】
磁気粘性流体は、油等の液体中に強磁性を有する微粒子を分散させたものであり、磁場の強さによって見かけの粘性が変化する。
【0027】
緩衝器1の作動時には、シリンダ9内にてピストン10が摺動すると、磁気粘性流体が図1に矢印で示すようにメイン流路6を流れてピストン10の両側の流体室3、4の間を移動する。このとき、電磁コイル65に電流を流すと、メイン流路6を流れる磁気粘性流体に磁場が作用し、磁気粘性流体の粘性が変化する。電磁コイル65の磁場の強さが大きくなるほど、磁気粘性流体の粘性が大きくなり、緩衝器1が発生する減衰力も大きくなる。
【0028】
ロッド60は、その先端部が第一コア30のネジ穴39に螺合され、ピストンコアアセンブリ20に連結される。ロッド60の先端は、ネジ穴39の底面に当接する。ネジ穴39の底面と、このネジ穴39の底面から突出した一次成形体80のプラグ部76の外周面と、ロッド60内周部との間には、Oリング69が介装される。ロッド60の内側は、Oリング69によって磁気粘性流体が入り込まないように密封される。
【0029】
ピストン10の組み立て時には、図示しないコントローラから延びる2本の電線を有するハーネス12が中空形状のロッド60の内側に通され、このハーネス12の電線13、14が端子74、75にそれぞれ接続される。これにより、電磁コイル65から延びる2本のリード線72、73が第一コア30内側を通ってロッド60の内側を通る電線13、14に導通される。
【0030】
緩衝器1の作動時には、コントローラから出力される駆動電流がハーネス12の電線13、14とリード線72、73を通して電磁コイル65に供給される。この駆動電流がピストン10、ロッド60や車体等に流れることなく電磁コイル65に導かれ、車両に搭載される他の電気機器等に及ぼす電気的影響を抑えられ、この電機機器等に絶縁処理を施す必要がない。
【0031】
コントローラ(図示せず)が電磁コイル65への通電量を制御することにより、緩衝器1が発生する減衰力が調節される。
【0032】
また、コントローラには、2本の電線13、14を用いて駆動電流を電磁コイル65に出力するブリッジ回路等を設けることが可能になるため、制御応答性の向上がはかれる。
【0033】
ピストンコアアセンブリ20は、コイルアセンブリ70と第一コア30と第二コア40を組み立てることによって形成される。コイルアセンブリ70と第一コア30と第二コア40は、ピストン10の中心線Oについて同心上に配置される。
【0034】
コイルアセンブリ70は、2本のリード線72、73が埋め込まれるように成形される一次成形体80と、この一次成形体80の外周に巻装されるマグネットワイヤ66からなる電磁コイル65と、一次成形体80との間に電磁コイル65が埋め込まれるように成形される二次成形体85とを備える。
【0035】
電磁コイル65は、モールド樹脂によって包囲され、電磁コイル65の内部につくられる無駄な隙間が減らされる。これにより、電磁コイル65の絶縁性が確保されるとともに、シリンダ9内の圧力変動が電磁コイル65の内部に導かれることを抑えられる。
【0036】
第一コア30と第二コア40の間にコイルアセンブリ70が挟持される。
【0037】
第一コア30には、コイルアセンブリ70を収容する部位として、ボビン部79を収容する環状のボビン収容部32と、ブリッジ部77、78を収容するスリット状のブリッジ収容凹部27と、プラグ部76が挿入されるプラグ収容孔34とが形成される。
【0038】
ロッド60が連結される第一コア30には、ロッド60と反対側(先端側)に突出する2本の半円柱状軸部18が形成される。各半円柱状軸部18の間にブリッジ部77、78が収容するブリッジ収容凹部27が開口している。つまり、半円柱状軸部18は、ブリッジ収容凹部27を挟んで並ぶ半円柱状の部位である。
【0039】
この各半円柱状軸部18の外周に第二コア40に螺合する雄ネジ33が形成される。各半円柱状軸部18の外周とコイルアセンブリ70の外周面71の双方は、中心線Oと同心上に形成される。各半円柱状軸部18の先端面35は、中心線Oに直交する平面状に形成される。
【0040】
第一コア30には、その中央部を貫通するプラグ収容孔34が形成され、このプラグ収容孔34にプラグ部76が挿入される。
【0041】
ブリッジ部77、78がブリッジ収容凹部27に嵌合し、プラグ部76がプラグ収容孔34に挿入されることにより、コイルアセンブリ70が第一コア30の内側に入って介装される。
【0042】
略円筒状の第一コア30は、コイルアセンブリ70の外周面71と段差無く延びる外周面31と、中心線Oに直交する平面状の基端面36と、この基端面36から突出するボス部37とを有する。円筒状のボス部37の外周には、雄ネジ38が形成される。第一コア30の基端面36とナット88の間にプレート91が設けられ、雄ネジ38にナット88が螺合することによりプレート91が挟持される。
【0043】
ボス部37の内側には、ネジ穴39が形成される。ロッド60は、その先端部がこのネジ穴39に螺合することによって第一コア30に連結される。
【0044】
略円柱状の第二コア40は、各半円柱状軸部18の外周に結合される円筒状のヨーク部52を有する。このヨーク部52の外周面41は、コイルアセンブリ70の外周面71と段差無く延びる。第二コア40は、ヨーク部52が電磁コイル65とピストン10の軸方向に並んで設けられることにより、電磁コイル65の磁束を間隙16に導く。
【0045】
第二コア40は、このヨーク部52の内側に円柱状に突出する凸部44を有する。ヨーク部52と凸部44の間に第一コア30の各半円柱状軸部18が係合する環状凹部53が画成される。ヨーク部52の内周には雌ネジ43(図2の(A)参照)が形成され、この雌ネジ43が各半円柱状軸部18の外周に形成された雄ネジ33に螺合する。また、第二コア40は、ボビン部79に当接する基端面42(図2の(A)参照)を有する。
【0046】
なお、第一コア30の各半円柱状軸部18の内周に雌ネジを形成するとともに、第二コア40の凸部44の外周に雄ネジを形成し、両者を螺合して第一、第二コア30、40を結合するようにしてもよい。
【0047】
第二コア40は、第一コア30の先端面35に当接する底面45を有する。底面45は、中心線Oに直交する平面状に形成される。
【0048】
凸部44は、底面45から円柱状に突出し、その端面46がコイルアセンブリ70の端面84に当接する。凸部44の端面46とコイルアセンブリ70の端面84の双方は、中心線Oに直交する平面状に形成される。
【0049】
第二コア40は、中心線Oに直交する平面状の先端面47と、この先端面47から突出するボス部48を有する。円柱状のボス部48の外周には、雄ネジ49が形成される。第二コア40の先端面47とナット98の間にプレート92が設けられ、雄ネジ49にナット98が螺合することによりプレート92が挟持される。
【0050】
ピストンコアアセンブリ20は、第一、第二コア30、40とコイルアセンブリ70との3つの部品を組み立てることによって形成される。ピストンコアアセンブリ20の組み立て後に、ピストンコアアセンブリ20とフラックスリング50は、プレート91、92を介して連結される。
【0051】
第一、第二コア30、40とフラックスリング50は、それぞれ磁性材料によって形成される。一方、プレート91、92は、非磁性材料によって形成される。これにより、ピストンコアアセンブリ20及びフラックスリング50は、電磁コイル65の磁束を間隙16に導く磁気回路を構成し、メイン流路6を流れる磁気粘性流体に磁場を作用させる。
【0052】
ピストンコアアセンブリ20には第一コア30のブリッジ収容凹部27に空隙54(図2の(B)参照)が設けられているが、この空隙54のまわりには円筒状のヨーク部52が電磁コイル65と並んで延びているため、電磁コイル65の磁束を導く磁路が確保される。
【0053】
次に、図2について説明する。図2の(A)は、組み立てる前の状態を示すピストンコアアセンブリ20の断面図であり、(B)は、組み立てた後の状態を示すピストンコアアセンブリ20の断面図であり、(C)は、(B)のA−A線に沿う断面図である。
【0054】
ピストンコアアセンブリ20の組み立て時には、第一コア30にコイルアセンブリ70を組み付けることによって、プラグ部76がプラグ収容孔34に挿入され、プラグ部76の端面に設けられるリード線72、73の端子74、75が、第一コア30のボス部37の内側に配置される。
【0055】
ピストンコアアセンブリ20の組み立て時には、第一コア30の雄ネジ33に第二コア40の雌ネジ43を螺合させることにより、コイルアセンブリ70は、第一コア30の環状段部29と第二コア40の基端面42の間で押圧されるとともに、第一コア30の嵌合凹部底面28と第二コア40の端面46の間で押圧される。これにより、第一コア30とコイルアセンブリ70と第二コア40とがガタなく結合される。
【0056】
次に、図3に示すコイルアセンブリ70の製造方法について説明する。図3の(A)は、一次成形体80を成形する一次成形工程を示す図であり、(B)は、電磁コイル65を巻装するコイル巻装工程を示す図であり、(C)は、二次成形体85を成形する二次成形工程を示す図である。
【0057】
金型100A〜100Dに2本のリード線72、73をセットする工程(図示せず)が予め行われる。
【0058】
(1)一次成形工程では、例えば図3の(A)に示すような金型100A〜100Dに樹脂を矢印で示すように流し込んで、樹脂を固化させることによって一次成形体80が形成される。
【0059】
一次成形体80は、ピストン10の中央に配置されるプラグ部76と、このプラグ部76から延びる2本のブリッジ部77、78と、各ブリッジ部77、78の端部を結んで環状に延びるボビン部79とを有する。
【0060】
プラグ部76は、中心線Oと同心上に延びる円柱状に形成され、後述する第一コア30のプラグ収容孔34に挿入されるようになっている。
【0061】
2本のブリッジ部77、78は、プラグ部76の端部から中心線Oと直交するピストン10の径方向に配置され、互いに同一直線状に延びるように形成される。
【0062】
ボビン部79は、中心線Oと同心上に延びる環状に形成され、2本のブリッジ部77、78によって支持される。ボビン部79は、マグネットワイヤ66が巻かれる巻芯となる。
【0063】
一方のリード線72は、プラグ部76と一方のブリッジ部77に渡って延びる。他方のリード線73は、プラグ部76と他方のブリッジ部78に渡って延びる。各リード線72、73の基端部は、端子74、75としてそれぞれプラグ部76の端面から突出する。各リード線72、73の先端部は、図示しない端子としてそれぞれボビン部79の内側に突出する。
【0064】
(2)図3の(B)に示すように、コイル巻装工程では、一次成形体80のボビン部79にマグネットワイヤ66が巻かれることによって電磁コイル65が形成される。図示しないマグネットワイヤ66の両端は、ボビン部79に突出してリード線72、73の先端部(端子)にそれぞれ接続される。
【0065】
(3)二次成形工程では、例えば図3の(C)に示すような金型101A、101Bに電磁コイル65が巻装された一次成形体80をセットした後に、樹脂を矢印で示すように流し込んで、樹脂を固化させることによって二次成形体85が形成される。
【0066】
二次成形体85は、一次成形体80のブリッジ部77、78とボビン部79とマグネットワイヤ66を包囲するモールド樹脂からなり、このモールド樹脂が金型101によって成形される。一次成形体80と二次成形体85は、互いに一体化され、コイルアセンブリ70の樹脂部分を構成する。
【0067】
このようにして形成されるコイルアセンブリ70は、電磁コイル65が巻装される環状のボビン部79と、第一コア30の内側に挿入されるプラグ部76と、ボビン部79とプラグ部76を結ぶ2本のブリッジ部77、78と、を有し、2本のリード線72、73がそれぞれボビン部79とブリッジ部77、78とプラグ部76に渡って延びる。コイルアセンブリ70は、中心線Oについて対称的な形状を有する。
【0068】
コイルアセンブリ70は、第一、第二コア30、40に組み付けられる前に、二次成形体85が形成され、そのモールド樹脂部が第一、第二コア30、40と分離した状態で成形されるため、コイルアセンブリ70を効率よく製造して、第一、第二コア30、40に組み付けることができる。
【0069】
コイルアセンブリ70は、上述した構成に限らず、他の製造方法によって二次成形体85を形成してもよい。
【0070】
(第実施形態)
以下、図4に示す第12実施形態におけるコイルアセンブリ70の製造方法について説明する。このコイルアセンブリ70は参考例と基本的に同じ構成であるため、参考例と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0071】
コイルアセンブリ70は、一次成形体80に電磁コイル65が巻装されたものを第一コア30に組み付けた状態で金型111A、111Bを介して二次成形体85を成形する。
【0072】
図4の(A)は、第一コア30に一次成形体80を組み付ける前の状態を示す図であり、(B)は、第一コア30に一次成形体80を組み付けた状態を示す図であり、(C)は、二次成形体85を成形した状態を示す図である。
【0073】
(1)図4の(A)に示すように、電磁コイル65が巻装された一次成形体80と、第一コア30と、を用意する。
【0074】
(2)続いて図4の(B)に示すように、第一コア30に一次成形体80を組み付ける。
【0075】
(3)続いて、二次成形工程では、例えば図4の(C)に示すような金型111A、111Bに一次成形体80が組み付けられた第一コア30をセットした後に、樹脂を矢印で示すように流し込んで、樹脂を固化させることによって二次成形体85が成形される。この後、金型111A、111Bから二次成形体85を介して第一コア30とコイルアセンブリ70が一体になったものを取り出す。
【0076】
このようにして形成される二次成形体85は、樹脂が一次成形体80と第一コア30のボビン収容部32とブリッジ収容凹部27の隙間に入り込み、この隙間を埋める。
【0077】
ピストン10は、モールド樹脂によってピストン10の内部につくられる無駄な隙間が減らされるため、シリンダ9内の圧力変動がピストン10の内部に導かれることが抑えられる。
【0078】
(第実施形態)
また、図5に示すように、一次成形体80に電磁コイル65が巻装されたものを第一コア30と第二コア40の間に組み付けた状態で金型115A、115Bに入れて二次成形体85を成形してもよい。以下、第実施形態におけるコイルアセンブリ70の製造方法について説明する。このコイルアセンブリ70は参考例と基本的に同じ構成であるため、参考例と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0079】
図5の(A)は、第一コア30と一次成形体80と第二コア40を組み付ける前の状態を示す図であり、(B)は、第一コア30に一次成形体80と第二コア40を組み付けた状態を示す図であり、(C)は、二次成形体85を成形する状態を示す図である。
【0080】
(1)図5の(A)に示すように、電磁コイル65が巻装された一次成形体80と、第一コア30及び第二コア40を用意する。
【0081】
(2)続いて図5の(B)に示すように、一次成形体80を第一コア30及び第二コア40に組み付ける。
【0082】
(3)続いて二次成形工程では、例えば図5の(C)に示すような金型115A、115Bに一次成形体80が組み付けられた第一コア30及び第二コア40をセットした後に、樹脂を矢印で示すように流し込んで、樹脂を固化させることによって二次成形体85が成形される。この後、金型115A、115Bから二次成形体85を介して第一コア30とコイルアセンブリ70と第二コア40が一体になったものを取り出す。
【0083】
このようにして形成される二次成形体85は、樹脂が一次成形体80と第一コア30の隙間に入り込むとともに、樹脂が一次成形体80と第二コア40の隙間及びブリッジ収容凹部27内に入り込み、これらの隙間及び空間を埋める。
【0084】
ピストン10は、モールド樹脂によってピストン10の内部につくられる無駄な隙間が減らされるため、シリンダ9内の圧力変動がピストン10の内部に導かれることが抑えられる。
【0085】
(第実施形態)
次に図6に示す本発明の第実施形態を説明する。図6は、ピストン110の断面図である。ピストンコアアセンブリ120は参考例と基本的に同じ構成であるため、参考例と相違する部分のみを説明する。なお参考例と同一の構成には同一の符号を付す。
【0086】
ピストン110のピストンコアアセンブリ120は、コイルアセンブリ70を収容する中空形状の第一コア130と、この第一コア130との間にコイルアセンブリ70を挟持する第二コア140とからなる。
【0087】
第一コア130は、コイルアセンブリ70を収容する部位と、ロッド60が連結される部位と、ロッド60と反対側(先端側)に突出する2本の半円柱状軸部118とを有する。各半円柱状軸部118の間にコイルアセンブリ70のブリッジ部77、78を収容するブリッジ収容凹部127が開口している。
【0088】
各半円柱状軸部118の外周にナット98に螺合する雄ネジ133が形成される。
【0089】
第二コア140は、直円筒状に形成され、その外周部分が電磁コイル65とピストン110の軸方向に並ぶヨーク部152を構成する。
【0090】
第二コア140は、各半円柱状軸部118の外周に嵌合する内周面143と、コイルアセンブリ70に当接する基端面142と、プレート92に当接する先端面144と、コイルアセンブリ70の外周面71と段差無く延びる外周面145とを有する。
【0091】
ピストンコアアセンブリ120の組み立て時に、第一コア130にコイルアセンブリ70と第二コア140とプレート92を組み付けた後に、雄ネジ133にナット98が螺合して締め付けられることにより、プレート92を介して第二コア140の基端面142がコイルアセンブリ70に押圧される。
【0092】
以上のように、ピストン110は、各半円柱状軸部118の外周に第二コア140が嵌合され、各半円柱状軸部118の外周にナット98に螺合する雄ネジ133が形成され、ナット98と第一コア130の間にコイルアセンブリ70と第二コア140が介装されるため、ナット98を介して第一、第二コア130、140とコイルアセンブリ70がガタなく締め付け固定される。
【0093】
(第実施形態)
次に図7に示す本発明の第実施形態を説明する。図7は、ピストン210の断面図である。ピストンコアアセンブリ220は、参考例と基本的に同じ構成であるため、参考例と相違する部分のみを説明する。なお参考例と同一の構成には同一の符号を付す。
【0094】
ピストン210のピストンコアアセンブリ220は、コイルアセンブリ70を収容する中空形状の第一コア230と、この第一コア230との間にコイルアセンブリ70を挟持する第二コア240とからなる。
【0095】
第一コア230は、コイルアセンブリ70を収容する部位と、ロッド60が連結される部位と、ロッド60と反対側(先端側)に突出する2本の半円柱状軸部218とを有する。各半円柱状軸部218の間にコイルアセンブリ70のブリッジ部77、78を収容するブリッジ収容凹部227が開口している。
【0096】
各半円柱状軸部218の先端部外周に環状溝233が形成され、この環状溝233に止め具99が嵌合される。この止め具99は、例えばC字形に湾曲したリング状のものが用いられる。
【0097】
第二コア240は、直円筒状に形成され、その全体が電磁コイル65とピストン210の軸方向に並ぶヨーク部252を構成する。
【0098】
第二コア240は、各半円柱状軸部218の外周に嵌合する内周面243と、コイルアセンブリ70に当接する基端面242と、プレート92に当接する先端面244と、コイルアセンブリ70の外周面71と段差無く延びる外周面245とを有する。
【0099】
ピストンコアアセンブリ220の組み立て時に、第一コア230にコイルアセンブリ70と第二コア240とプレート92を組み付けた後に、各半円柱状軸部218の環状溝233に止め具99が嵌合されることにより、プレート92を介して第二コア240の抜け止めが行われる。
【0100】
以上のように、ピストン210は、各半円柱状軸部218の外周に第二コア240が嵌合され、各半円柱状軸部218の外周に止め具99が嵌合される環状溝233が形成され、止め具99と第一コア230の間にコイルアセンブリ70と第二コア240が介装されるため、止め具99を介して第一、第二コア230、240とコイルアセンブリ70が結合される。止め具99の介装スペースが小さくて済むため、ピストン210の小型化がはかれる。
【0101】
(第実施形態)
次に図8に示す本発明の第実施形態を説明する。図8は、ピストン310の断面図である。ピストンコアアセンブリ320は、参考例と基本的に同じ構成であるため、参考例と相違する部分のみを説明する。なお参考例と同一の構成には同一の符号を付す。
【0102】
ピストン310のピストンコアアセンブリ320は、コイルアセンブリ70を収容する中空形状の第一コア330と、この第一コア330との間にコイルアセンブリ70を挟持する第二コア340とからなる。
【0103】
第一コア330は、コイルアセンブリ70を収容する部位と、ロッド60が連結される部位と、ロッド60と反対側(先端側)に突出する2本の半円柱状軸部318とを有する。各半円柱状軸部318の間にコイルアセンブリ70のブリッジ部77、78を収容するブリッジ収容凹部327が開口している。
【0104】
中空形状の各半円柱状軸部318の内周に雌ネジ333が形成され、この雌ネジ333に螺合するボルト300が設けられる。
【0105】
第二コア340は、直円筒状に形成され、その全体が電磁コイル65とピストン310の軸方向に並ぶヨーク部352を構成する。
【0106】
第二コア340は、各半円柱状軸部318の外周に嵌合する内周面343と、コイルアセンブリ70に当接する基端面342と、プレート92に当接する先端面344と、コイルアセンブリ70の外周面71と段差無く延びる外周面345とを有する。
【0107】
ピストンコアアセンブリ320の組み立て時に、第一コア330にコイルアセンブリ70と第二コア340とプレート92を組み付けた後に、各半円柱状軸部318の雌ネジ333にボルト300が螺合されることにより、プレート92を介して第二コア340の抜け止めが行われる。
【0108】
以上のように、ピストン310は、各半円柱状軸部318の外周に第二コア340が嵌合され、各半円柱状軸部318の内周にボルト300が螺合される雌ネジ333が形成され、ボルト300と第一コア330の間にコイルアセンブリ70と第二コア340が介装されるため、第一、第二コア330、340とコイルアセンブリ70がガタなく結合される。
【0109】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0110】
〔1〕ピストン10は、第一、第二コア30、40とコイルアセンブリ70との3つの部品を組み立てることによって、2本のリード線72、73が第一コア30の内側に通されるため、ロッド60の内側に設けられて駆動電流を供給する2本の電線13、14を2本のリード線72、73にそれぞれ導通させることが可能になる。これにより、コントローラは、駆動電流を出力する回路構成の自由度を高められる。そして、コントローラから出力される駆動電流が、ピストン10、ロッド60や車体等に流れることなく電磁コイル65に導かれ、車両に搭載される他の機器に及ぼす電気的影響を抑えられる。さらに、コイルアセンブリ70のモールド樹脂部を第一、第二コア30、40と分離した状態で成形することが可能となり、コイルアセンブリ70を効率よく製造して、第一、第二コア30、40に組み付けることができる。
【0111】
〔2〕コイルアセンブリ70は、2本のリード線72、73がそれぞれボビン部79とブリッジ部77、78とプラグ部76に渡って延びるため、2本のリード線72、73を第一コア30の内側を通してロッド60の内側に設けられる電線13、14に接続することが可能になる。
【0112】
〔3〕第一コア30は、ブリッジ収容凹部27を挟んで延びる2本の半円柱状軸部18を有する一方、第二コア40は、各半円柱状軸部18の外周に結合される円筒状のヨーク部52を有し、このヨーク部52がピストン10の軸方向について電磁コイル65と並んで設けられるため、ヨーク部52が第一、第二コア30、40が互いに結合される役割と、電磁コイル65の磁束を導く磁路の役割とを果たし、ピストン10を構成する部品点数が少なくて済み、組み立て作業が容易に行われる。
【0113】
〔4〕コイルアセンブリ70は、2本のリード線72、73が埋め込まれるように成形される一次成形体80と、この一次成形体80の外周に巻装されるマグネットワイヤ66からなる電磁コイル65と、一次成形体80との間に電磁コイル65が埋め込まれるように成形される二次成形体85とを備えるため、モールド樹脂によって電磁コイル65が包囲され、電磁コイル65の内部につくられる無駄な隙間が減らされる。これにより、電磁コイル65の絶縁性が確保されるとともに、シリンダ9内の圧力変動が電磁コイル65の内部に導かれることが抑えられる。
【0114】
〔5〕図1、2に示すように、ピストン10は、各半円柱状軸部18の外周に雄ネジ33が形成され、ヨーク部52の内周に雌ネジ43が形成され、雄ネジ33と雌ネジ43が互いに螺合するため、第一、第二コア30、40がコイルアセンブリ70に押圧され、これらがガタなく締め付け固定される。
【0115】
〔6〕図6に示すように、ピストン110は、各半円柱状軸部118の外周に第二コア140が嵌合され、各半円柱状軸部118の外周に雄ネジ133が形成され、この雄ネジ133に螺合するナット98を備え、このナット98と第一コア130の間にコイルアセンブリ70と第二コア140が介装されるため、ナット98によって第一、第二コア30、40がコイルアセンブリ70に押圧され、これらがガタなく締め付け固定される。
【0116】
〔7〕図7に示すように、ピストン210は、各半円柱状軸部218の外周に第二コア240が嵌合され、各半円柱状軸部218の外周に環状溝233が形成され、この環状溝233に嵌合する止め具99を備え、この止め具99と第一コア230の間にコイルアセンブリ70と第二コア240が介装されるため、止め具99によって第一、第二コア230、240とコイルアセンブリ70が固定され、その小型化がはかれる。
【0117】
〔8〕図8に示すように、ピストン310は、各半円柱状軸部318の外周に第二コア340が嵌合され、各半円柱状軸部318の内周に雌ネジ333が形成され、この雌ネジ333に螺合するボルト300を備え、このボルト300と第一コア330の間にコイルアセンブリ70と第二コア340が介装されるため、ボルト300によって第一、第二コア30、40がコイルアセンブリ70に押圧され、これらがガタなく締め付け固定される。
【0118】
〔9〕図3に示すように、コイルアセンブリ70の製造方法として、2本のリード線72、73が埋め込まれる一次成形体80を成形する一次成形工程と、一次成形体80の外周にマグネットワイヤ66を巻装して電磁コイル65を形成するコイル巻装工程と、一次成形体80との間に電磁コイル65が埋め込まれるように二次成形体85を成形する二次成形工程と、を行うため、コイルアセンブリ70のモールド樹脂部が第一、第二コア30、40と分離した状態で成形され、コイルアセンブリ70を効率よく製造して、第一、第二コア30、40に組み付けることができる。
【0119】
〔10〕図4に示すように、二次成形工程において、一次成形体80が組み付けられた第一コア30を金型111A、111Bに入れて二次成形体85を成形するため、二次成形体85のモールド樹脂によって第一コア30とコイルアセンブリ70の間につくられる隙間が埋められる。これにより、シリンダ9内の圧力変動がピストン10の内部に導かれることが抑えられ、ピストン10が圧力変動の影響を受けることを防止できる。
【0120】
〔11〕図5に示すように、二次成形工程において、一次成形体80が組み付けられた第一コア30及び第二コア40を金型115A、115Bに入れて二次成形体85を成形するため、二次成形体85のモールド樹脂によって第一コア30とコイルアセンブリ70と第二コア40の間につくられる隙間が埋められる。これにより、シリンダ9内の圧力変動がピストン10の内部に導かれることが抑えられ、ピストン10が圧力変動の影響を受けることを防止できる。
【0121】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0122】
1 磁気粘性流体緩衝器
3、4 流体室
9 シリンダ
10 ピストン
13 電線
16 間隙
18 半円柱状軸部
27 ブリッジ収容凹部
30 第一コア
33 雄ネジ
40 第二コア
43 雌ネジ
52 ヨーク部
60 ロッド
65 電磁コイル
66 マグネットワイヤ
70 コイルアセンブリ
72 リード線
76 プラグ部
77 ブリッジ部
79 ボビン部
80 一次成形体
85 二次成形体
98 ナット
99 止め具
110 ピストン
111A、111B、115A、115B 金型
118 半円柱状軸部
130 第一コア
133 雄ネジ
140 第二コア
210 ピストン
218 半円柱状軸部
230 第一コア
233 環状溝
240 第二コア
300 ボルト
310 ピストン
318 半円柱状軸部
330 第一コア
333 雌ネジ
340 第二コア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8