【実施例】
【0016】
図1は本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、
図2はモータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、
図1に示すように、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸36に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50と、インバータ41,42が接続された電力ライン(以下、駆動電圧系電力ライン54aという)とバッテリ50が接続された電力ライン(以下、電池電圧系電力ライン54bという)とに接続されて駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを電池電圧系電力ライン54bの電圧VL以上の範囲で調節すると共に駆動電圧系電力ライン54aと電池電圧系電力ライン54bとの間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータ55と、インバータ41,42を制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に昇圧コンバータ55を制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70と、を備える。
【0017】
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサからのクランクポジションθcrやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサからの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた圧力センサからの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブや排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサからのカムポジションθca,スロットルバルブのポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサからのスロットルポジションTP,吸気管に取り付けられたエアフローメータからの吸入空気量Qa,同じく吸気管に取り付けられた温度センサからの吸気温Ta,排気系に取り付けられた空燃比センサからの空燃比AF,同じく排気系に取り付けられた酸素センサからの酸素信号O2などが入力ポートを介して入力されており、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁への駆動信号やスロットルバルブのポジションを調節するスロットルモータへの駆動信号,イグナイタと一体化されたイグニッションコイルへの制御信号,吸気バルブの開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、エンジンECU24は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、エンジンECU24は、クランクシャフト26に取り付けられた図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0018】
モータMG1,MG2は、いずれも、永久磁石が埋め込まれた回転子と三相コイルが巻回された固定子とを備える周知の同期発電電動機として構成されている。インバータ41,42は、
図2に示すように、6つのトランジスタT11〜T16,T21〜26と、トランジスタT11〜T16,T21〜T26に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16,D21〜D26と、により構成されている。トランジスタT11〜T16,T21〜T26は、それぞれ駆動電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とに対してソース側とシンク側になるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータMG1,MG2の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。したがって、インバータ41,42に電圧が作用している状態で対をなすトランジスタT11〜T16,T21〜T26のオン時間の割合を調節することにより、三相コイルに回転磁界を形成でき、モータMG1,MG2を回転駆動することができる。インバータ41,42は、駆動電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とを共用しているから、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータに供給することができる。駆動電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ57が接続されている。
【0019】
昇圧コンバータ55は、
図2に示すように、2つのトランジスタT51,T52とトランジスタT51,T52に逆方向に並列接続された2つのダイオードD51,D52とリアクトルLとからなる昇圧コンバータとして構成されている。2つのトランジスタT51,T52は、それぞれ駆動電圧系電力ライン54aの正極母線,駆動電圧系電力ライン54aおよび電池電圧系電力ライン54bの負極母線に接続されており、トランジスタT51,T52の接続点と電池電圧系電力ライン54bの正極母線とにリアクトルLが接続されている。したがって、トランジスタT51,T52をオンオフすることにより、電池電圧系電力ライン54bの電力を昇圧して駆動電圧系電力ライン54aに供給したり、駆動電圧系電力ライン54aの電力を降圧して電池電圧系電力ライン54bに供給したりすることができる。電池電圧系電力ライン54bの正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ58が接続されている。以下、昇圧コンバータ55によって駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを電池電圧系電力ライン54bの電圧VLに対して昇圧する(高くする)ことを昇圧コンバータ55による昇圧を行なうと称することがある。
【0020】
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流,コンデンサ57の端子間に取り付けられた電圧センサ57aからのコンデンサ57の電圧(駆動電圧系電力ライン54aの電圧)VHやコンデンサ58の端子間に取り付けられた電圧センサ58aからのコンデンサ58の電圧(電池電圧系電力ライン54bの電圧)VLなどが入力ポートを介して入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26へのスイッチング制御信号や昇圧コンバータ55のトランジスタT51,T52へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、モータECU40は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転子の電気角θe1,θe2やモータMG1,MG2の回転角速度ωm1,ωm2,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算したり、モータMG2の回転角速度ωm2に基づいてモータMG2の回転軸に換算した駆動輪38a,38bの回転角速度としての駆動輪回転角速度ωbを演算したりしている。なお、駆動輪回転角速度ωbは、モータMG2から駆動輪38a,38bの間の特性に限定することにより得られる2慣性系の制御系設計モデルに対して制御サンプル時間で0次ホールドを用いて離散化したモデルを用いて演算するものとしたり、駆動輪38a,38bに車輪速センサを取り付けて車輪速センサからの信号に基づいて演算するものとしたりすることができる。
【0021】
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vbやバッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりHVECU70に送信する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、電流センサにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてそのときのバッテリ50から放電可能な電力の容量の全容量に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0022】
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号やシフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,大気圧センサ89からの大気圧Poutなどが入力ポートを介して入力されている。HVECU70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、HVECU70は、大気圧センサ89からの大気圧Poutに基づいて駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimを設定している。この許容上限電圧VHlimは、実施例では、大気圧Poutと許容上限電圧VHlimとの関係を予め定めて許容上限電圧設定用マップとして図示しないROMに記憶しておき、大気圧Poutが与えられると記憶したマップから対応する許容上限電圧VHlimを導出して設定するものとした。許容上限電圧設定用マップの一例を
図3に示す。
図3の例では、許容上限電圧VHlimは、大気圧Poutが標準圧力Poutset(例えば1気圧)より低い圧力Pout1(例えば、0.8気圧や0.85気圧,0.9気圧など)以上の領域では標準電圧VHlimsetを設定し、大気圧Poutが圧力Pout1より低い領域では大気圧Poutが低いほど標準電圧VHlimsetに比して低くなる傾向に設定するものとした。これは、大気圧Poutが低いほどモータMG1,MG2やインバータ41,42,昇圧コンバータ55などの耐圧が低下する、という理由に基づく。
【0023】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を計算し、この要求トルクTr*に対応する要求動力が駆動軸36に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2との運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード,エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸36に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードおよび充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであるから、両者を合わせてエンジン運転モードとして考えることができる。
【0024】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。
図4は、実施例のHVECU70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0025】
駆動制御ルーチンが実行されると、HVECU70は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimなど制御に必要なデータを入力する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2のロータの回転位置θm1,θm2に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の蓄電割合SOCとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimは、大気圧センサ89からの大気圧Poutに基づいて設定されたものを入力するものとした。
【0026】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて走行に要求される(駆動軸36に出力すべき)要求トルクTr*を設定すると共に設定した要求トルクTr*に基づいてエンジン22に要求される要求パワーPe*を設定する(ステップS110)。ここで、要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとして図示しないROMに記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。要求トルク設定用マップの一例を
図5に示す。要求パワーPe*は、要求トルクTr*に駆動軸36の回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数など)を乗じたものからバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じた値として計算することができる。
【0027】
続いて、エンジン22が運転中であるか運転停止中であるかを判定し(ステップS120)、エンジン22が運転中であると判定されたときには、要求パワーPe*をエンジン22を運転停止するための停止用閾値Pstopと比較し(ステップS130)、要求パワーPe*が停止用閾値Pstopより大きいときには、エンジン22の運転を継続すると判断し、要求パワーPe*とエンジン22を効率よく動作させる動作ライン(例えば燃費動作ライン)とに基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定してエンジンECU24に送信する(ステップS140)。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子とを
図6に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。また、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される目標運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量調節制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。
【0028】
次に、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2とプラネタリギヤ30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算したモータMG1の目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を計算する(ステップS150)。式(1)は、プラネタリギヤ30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力しながら走行しているときのプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を
図7に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤの回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリアの回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2であるリングギヤの回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されて駆動軸36に作用するトルクと、モータMG2から出力されて駆動軸36に作用するトルクとを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。式(2)中、右辺第1項は、エンジン22から目標トルクTe*を出力するときにエンジン22からプラネタリギヤ30を介してモータMG1の回転軸に作用するトルクをキャンセルするためのトルクである。
【0029】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/ρ (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0030】
次に、次式(3)に示すように、モータMG1のトルク指令Tm1*をプラネタリギヤ30のギヤ比ρで除したものを要求トルクTr*に加えてモータMG2から出力すべきトルクの仮の値としての仮トルクTm2tmpを設定し(ステップS250)、式(4),(5)に示すように、バッテリ50の入出力制限Win,WoutからモータMG1のトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)を減じた値をモータMG2の回転数Nm2で除してモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを計算し(ステップS260)、式(6)に示すように、仮トルクTm2tmpをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm2*を設定する(ステップS270)。
【0031】
Tm2tmp=Tr*+Tm1*/ρ (3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (5)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (6)
【0032】
続いて、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいて目標電圧VHtagを設定し(ステップS280)、次式(7)に示すように、目標電圧VHtagを許容上限電圧VHlimで制限して駆動電圧系電力ライン54aの電圧指令VH*を設定する(ステップS290)。ここで、目標電圧VHtagは、モータMG1を目標駆動点(回転数Nm1,トルク指令Tm1*)で駆動できる電圧Vm1とモータMG2を目標駆動点(回転数Nm2,トルク指令Tm2*)で駆動できる電圧Vm2とのうち高い方を設定するものとした。なお、実施例では、後述するように、トルク指令Tm1*が設定された実行用トルクT1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*に基づく実行用トルクT2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング制御を行なうことから、実行用トルクT2*がトルク指令Tm2*より大きな場合でも対応できるように、モータMG2を目標駆動点(回転数Nm2,トルク指令Tm2*)で駆動できる最低電圧Vm2minより若干高い電圧を電圧Vm2とするものとした。
【0033】
VH*=min(VHtag,VHlim) (7)
【0034】
そして、設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの電圧指令VH*をモータECU40に送信して(ステップS300)、本ルーチンを終了する。モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを受信したモータECU40は、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが電圧指令VH*となるよう昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32の制御を行なうと共に、
図8に例示するモータ制御ルーチンにより、トルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26のスイッチング制御を行なう。以下、
図3の駆動制御ルーチンの説明を一旦中断し、
図8のモータ制御ルーチンについて説明する。
図8のモータ制御ルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0035】
モータ制御ルーチンが実行されると、モータECU40は、まず、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2やトルク指令Tm1*,Tm2*,モータMG2の回転角速度ωm2,モータMG2の回転軸に換算した駆動輪38a,38bの回転角速度である駆動輪回転角速度ωb,電圧センサ57aからの駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS400)。ここで、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*は、
図4の駆動制御ルーチンにより設定されたものをHVECU70から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2やモータMG2の回転角速度ωm2,駆動輪回転角速度ωbは、回転位置検出センサ44からのモータMG2の回転子の回転位置θm2に基づいて演算されたものを入力するものとした。
【0036】
こうしてデータを入力すると、入力した駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHとモータMG1の回転数Nm1およびトルク指令Tm1*とに基づいてインバータ41の制御方式Cm1を設定すると共に(ステップS410)、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHとモータMG2の回転数Nm2およびトルク指令Tm2*とに基づいてインバータ42の制御方式Cm2を設定する(ステップS420)。ここでは、インバータ42の制御方式Cm2の設定を例として説明する。インバータ42の制御方式Cm2は、実施例では、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHとモータMG2の回転数Nm2およびトルク指令Tm2*とに応じて、モータMG2の電圧指令と三角波(搬送波)電圧との比較によってトランジスタT21〜T26のオン時間の割合を調節するパルス幅変調(PWM)制御方式のうち三角波電圧の振幅以下の振幅の正弦波状の電圧指令を変換して得られる擬似的三相交流電圧をモータMG2に供給する正弦波制御方式,パルス幅変調制御方式のうち三角波電圧の振幅より大きな振幅の正弦波状の電圧指令を変換して得られる過変調電圧をモータMG2に供給する過変調制御方式,矩形波電圧をモータMG2に供給する矩形波制御方式から1つを選択して設定するものとした。具体的には、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHとモータMG2のトルクTmおよび回転数Nm2と制御方式Cm2との関係を予め定めて制御方式設定用マップとして図示しないROMに記憶しておき、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHとモータMG2の回転数Nm2およびトルク指令Tm2*とが与えられると記憶したマップから対応する制御方式Cm2を導出して設定するものとした。制御方式設定用マップの一例を
図9に示す。インバータ42の制御方式Cm2は、
図9に示すように、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VH毎に、モータMG2のトルク指令Tm2*や回転数Nm2が小さい側から順に正弦波制御方式,過変調制御方式,矩形波制御方式となるよう定められていると共に、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが高いほど正弦波制御方式の領域と過変調制御方式の領域との境界や過変調制御方式の領域と矩形波制御方式の領域との境界が高回転数高トルク側となるよう定められている。ここでは、インバータ42の制御方式Cm2の設定について説明したが、インバータ41の制御方式Cm1の設定についても同様に行なうことができる。モータMG1,MG2やインバータ41,42の特性として、矩形波制御方式,過変調制御方式,正弦波制御方式の順で、モータMG1,MG2の出力応答性や制御性がよくなり、出力が小さくなり、インバータ41,42のスイッチング損失などが大きくなることが分かっているから、低回転数低トルクの領域では、正弦波制御方式でインバータ41,42を制御することによってモータMG1,MG2の出力応答性や制御性を良くすることができ、高回転数高トルクの領域では、矩形波制御方式を用いてインバータ41,42を制御することによって大出力を可能とすると共にインバータ41,42のスイッチング損失などを低減することができる。
【0037】
続いて、モータMG1のトルク指令Tm1*を実行用トルクT1*として設定し(ステップS430)、インバータ42の制御方式Cm2が正弦波制御方式であるか否かを判定し(ステップS440)、インバータ42の制御方式Cm2が正弦波制御方式であると判定されたときには、次式(7)に示すように、駆動輪回転角速度ωbとモータMG2の回転角速度ωm2との差分に制御ゲインkvを乗じて制振トルクTvの仮の値としての仮制振トルクTvtmpを設定し(ステップ350)、式(8)に示すように、仮制振トルクTvtmpを制限トルクTlim,−Tlimで制限して制振トルクTvを設定し(ステップS452)、モータMG2のトルク指令Tm2*と制振トルクTvとの和をモータMG2の実行用トルクT2*として設定し(ステップS454)、設定した実行用トルクT1*,T2*でモータMG1,MG2が駆動されるよう制御方式Cm1,Cm2でインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26のスイッチング制御を行なって(ステップS470)、本ルーチンを終了する。ここで、制限トルクTlim,−Tlimは、車両の振動を抑制することができる程度で且つモータMG2から出力する実行トルクT2*がバッテリ50の入出力制限Win,Woutを超えない程度に制振トルクTvの大きさ(正側および負側の大きさ)を制限するために用いられるものであり、実験などによって定めることができる。こうしたインバータ42の制御により、車両に生じる振動を抑制することができる。以下、制振トルクTvがモータMG2から出力されるよう制御することを制振制御という。
【0038】
Tvtmp=kv・(ωb-ωm2) (7)
Tv=max(min(Tvtmp,Tlim),-Tlim) (8)
【0039】
ステップS440でインバータ42の制御方式が正弦波制御方式でない、即ち、過変調制御方式や矩形波制御方式であると判定されたときには、モータMG2のトルク指令Tm2*をモータMG2の実行用トルクT2*として設定し(ステップS460)、設定した実行用トルクT1*,T2*でモータMG1,MG2が駆動されるよう制御方式Cm1,Cm2でインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26のスイッチング制御を行なって(ステップS470)、本ルーチンを終了する。過変調制御方式や矩形波制御方式でインバータ42を制御するときには、正弦波制御方式でインバータ42を制御するときに比してモータMG2の制御性がよくないことから、モータMG2による制振制御を適正に行なうことができない可能性がある。したがって、実施例では、過変調制御方式や矩形波制御方式でインバータ42を制御するときには、モータMG2による制振制御を実行しないものとした。
【0040】
以上、
図5のモータ制御ルーチンについて説明した。
図4の駆動制御ルーチンの説明に戻る。ステップS130でエンジン22の要求パワーPe*が停止用閾値Pstop以下であると判定されると、駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimに基づいてエンジン22の運転停止を許容する車速範囲の上限としての停止許可車速Vev1を設定し(ステップS160)、車速Vを停止許可車速Vev1と比較する(ステップS170)。ここで、停止許可車速Vev1は、実施例では、駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimと停止許可車速Vev1との関係を予め定めて停止許可車速設定用マップとして図示しないROMに記憶しておき、許容上限電圧VHlimが与えられると記憶したマップから対応する停止許可車速Vev1を導出して設定するものとした。停止許可車速設定用マップの一例を
図10に示す。停止許可車速Vev1は、図示するように、許容上限電圧VHlimが低いほど低くなる傾向に設定するものとした。この停止許可車速Vev1は、上述した
図9の制御方式設定用マップにおける正弦波制御方式の領域と過変調制御方式の領域との境界に応じて、車速Vが停止許可車速Vev1以下の領域ではインバータ42を正弦波制御方式で制御することになるように設定するものとした。この理由については後述する。
【0041】
車速Vが停止許可車速Vev1より高いときには、エンジン22の目標回転数Ne*に自立運転用の回転数Nidl(例えば、1000rpmや1200rpmなど)を設定すると共に目標トルクTe*に値0を設定してエンジンECU24に送信し(ステップS180)、上述のステップS150,S250〜S290の処理によってモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの電圧指令VH*を設定し、設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの電圧指令VH*をモータECU40に送信して(ステップS300)、本ルーチンを終了する。したがって、車速Vが停止許可車速Vev1より高いときには、エンジン22を自立運転することにより、エンジン22を回転停止させるものに比して、その後に運転者によってアクセルペダル83が踏み込まれたときに、エンジン22からパワーを迅速に出力することができる。
【0042】
ステップS170で車速Vが停止許可車速Vev1以下のときには、エンジン22の運転を停止して回転数Neを値0にする(ステップS190)。エンジン22の運転停止は、エンジン22の運転を停止させるための運転停止信号をエンジンECU24に送信してエンジンECU24でエンジン22の燃料噴射制御や点火制御を停止し、エンジン22の回転数Neを迅速に値0にするためのトルクがモータMG1から出力されるようモータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると共に要求トルクTr*が駆動軸36に出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信してモータECU40でトルク指令Tm1*,Tm2*に基づく実行用トルクT1*,T2*を用いてインバータ41,42のスイッチング制御を行ない、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルク指令Tm1*,Tm2*と許容上限電圧VHlimとに応じて電圧指令VH*を設定してモータECU40に送信してモータECU40で電圧指令VH*を用いて昇圧コンバータ55のスイッチング制御を行なう、ことによって行なわれる。なお、このとき、モータMG2から出力すべきトルク(仮トルクTm2tmp)は、要求トルクTr*とモータMG1から出力されてプラネタリギヤ30を介して作用するトルクをキャンセルするためのトルクとの和のトルクとなる。実施例では、上述したように、車速Vが停止許可車速Vev1以下の領域ではインバータ42を正弦波制御方式で制御することになるよう駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimに応じて停止許可車速Vev1を設定するものとしたから、エンジン22の運転を停止して回転数Neを値0にする際には、モータMG2によって制振制御をより確実に実行することができ、ショックが生じるのを抑制することができる。
【0043】
こうしてエンジン22の運転停止(回転停止)が完了すると、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定し(ステップS200)、上述のステップS250〜S300の処理により、モータMG2のトルク指令Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの電圧指令VH*を設定し、設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの電圧指令VH*をモータECU40に送信して、本ルーチンを終了する。
【0044】
次回に本ルーチンが実行されたときには、ステップS120でエンジン22が運転中でない、即ち、エンジン22は運転停止中であると判定され、駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimに基づいてエンジン22の運転停止の継続を許容する車速範囲の上限としての停止継続車速Vev2を設定し(ステップS210)、車速Vを停止継続車速Vev2と比較する(ステップS220)。ここで、停止継続車速Vev2は、実施例では、駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimと停止継続車速Vev2との関係を予め定めて停止継続車速設定用マップとして図示しないROMに記憶しておき、許容上限電圧VHlimが与えられると記憶したマップから対応する停止継続車速Vev2を導出して設定するものとした。停止継続車速Vev2は、停止許可車速Vev1と同様に、許容上限電圧VHlimが低いほど低くなる傾向で、且つ、停止許可車速Vev1より若干小さな値となるよう設定するものとした。停止許可車速Vev1より若干小さな値を停止継続車速Vev2に設定する理由については後述する。
【0045】
車速Vが停止継続車速Vev2以下のときには、要求パワーPe*をエンジン22の始動するための始動用閾値Pstartと比較する(ステップS230)。ここで、始動用閾値Pstartは、エンジン22の始動と運転停止とが頻繁に行なわれるのを抑制するために、停止用閾値Pstopより若干(例えば、数kWなど)大きな値を用いるのが好ましい。
【0046】
要求パワーPe*が始動用閾値Pstart未満のときには、エンジン22の運転停止を継続すると判断し、上述のステップS200,S250〜S300の処理により、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの電圧指令VH*を設定してモータECU40に送信して、本ルーチンを終了する。
【0047】
ステップS220で車速Vが停止継続車速Vev2より高いときや、ステップS220で車速Vが停止継続車速Vev2以下であるがステップS230で要求パワーPe*が始動用閾値Pstart以上のときには、エンジン22を始動する(ステップS240)。エンジン22の始動は、エンジン22をクランキングするためのトルクがモータMG1から出力されるようモータMG1のトルクTm1*を設定すると共に要求トルクTr*が駆動軸36に出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信してモータECU40でトルク指令Tm1*,Tm2*に基づく実行用トルクT1*,T2*を用いてインバータ41,42のスイッチング制御を行ない、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルク指令Tm1*,Tm2*と許容上限電圧VHlimとに応じて電圧指令VH*を設定してモータECU40に送信してモータECU40で電圧指令VH*を用いて昇圧コンバータ55のスイッチング制御を行ない、エンジン22の回転数Neが所定回転数Nref(例えば、1000rpmや1200rpmなど)以上に至ったときにエンジン22の運転を開始させるための運転開始信号をエンジンECU24に送信してエンジンECU24で燃料噴射制御や点火制御などを開始する、ことによって行なわれる。なお、このとき、モータMG2から出力すべきトルク(仮トルクTm2tmp)は、要求トルクTr*とモータMG1から出力されてプラネタリギヤ30を介して作用するトルクをキャンセルするためのトルクとの和のトルクとなる。実施例では、上述の停止継続車速Vev2を、モータMG1からエンジン22をクランキングするためのトルクを出力してエンジン22を始動する際にインバータ42を正弦波制御方式で制御することになるよう(車速Vが停止継続車速Vev2より高くなったときにエンジン22を始動することを考慮して、停止許可車速Vev1より小さな値として)駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimに応じて設定するものとした。これにより、モータMG1によってエンジン22をクランキングして始動する際に、モータMG2による制振制御をより確実に実行することができ、ショックが生じるのを抑制することができる。
【0048】
こうしてエンジン22の始動が完了すると、上述のステップS140〜S300の処理により、エンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*,駆動電圧系電力ライン54aの電圧指令VH*を設定してエンジンECU24やモータECU40に送信して、本ルーチンを終了する。
【0049】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimに応じて、車速Vが停止許可車速Vev1以下の領域では正弦波制御方式でインバータ42を制御することになるよう(許容上限電圧VHlimが低いほど低くなる傾向に)停止許可車速Vev1を設定するから、エンジン22を運転停止して回転数Neを値0にする際に、モータMG2による制振制御をより確実に実行することができ、ショックが生じるのを抑制することができる。
【0050】
実施例のハイブリッド自動車20では、許容上限電圧VHlimと停止許可車速Vev1との関係を定めた
図10の停止許可車速設定用マップに許容上限電圧VHlimを適用して停止許可車速Vev1を設定するものとしたが、インバータ41,42や昇圧コンバータ55の保護要件などによって予め定められた停止許可車速Vev1の基準値Vev1setと、
図10の停止許可車速設定用マップに許容上限電圧VHlimを適用して得られる値(実施例の停止許可車速Vev1)と、のうち小さい方を停止許可車速Vev1に設定するものとしてもよい。
【0051】
実施例のハイブリッド自動車20では、駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimを用いて停止許可車速Vev1を設定するものとしたが、許容上限電圧VHlimに代えて、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを用いて停止許可車速Vev1を設定するものとしてもよい。この場合、
図10の停止許可車速設定用マップの「許容上限電圧VHlim」を「電圧VH」に置き換えて用いて停止許可車速Vev1を設定するものとしてもよい。
【0052】
実施例のハイブリッド自動車20では、駆動電圧系電力ライン54aと電池電圧系電力ライン54bとに接続されて駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを調節可能な昇圧コンバータ55を備えるものとしたが、これを備えないものとしてもよい。この場合、駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimを用いて停止許可車速Vev1を設定するのに代えて、インバータ41,42に作用するインバータ電圧Vinv(この場合、バッテリ50の端子間電圧Vbに略等しい電圧)を用いて停止許可車速Vev1するものとしてよく、例えば、
図10の停止許可車速設定用マップの「許容上限電圧VHlim」を「インバータ電圧Vinv」に置き換えて用いて停止許可車速Vev1を設定するものなどとしてもよい。なお、昇圧コンバータ55を備えない場合にインバータ電圧Vinvを用いて停止許可車速Vev1を設定するものとしてよいのは、バッテリ50の状態(蓄電割合SOCや電池温度Tbなど)に応じてバッテリ50の端子間電圧Vb(インバータ電圧Vinv)が変化するためである。
【0053】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の運転停止中には、車速Vが停止継続車速Vev2より高いときや要求パワーPe*が始動用閾値Pstart以上に至ったときにエンジン22を始動するものとしたが、車速Vが始動用閾値Pstart以上か否かに拘わらず、要求パワーPe*が始動用閾値Pstart以上に至ったときにエンジン22を始動するものとしてもよい。
【0054】
実施例のハイブリッド自動車20では、正弦波制御方式でインバータ42を制御するときにはモータMG2による制振制御を実行し、過変調制御方式や矩形波制御方式でインバータ42を制御するときにはモータMG2による制振制御を実行しないものとしたが、過変調制御方式でインバータ42を制御するときには、モータMG2による制振制御を実行するものとしてもよい。
【0055】
実施例のハイブリッド自動車20では、正弦波制御方式でインバータ42を制御するときにモータMG2による制振制御を実行するものとしたが、これに加えてまたは代えて、正弦波制御方式でインバータ41を制御するときにモータMG1による制振制御を実行するものとしてもよい。
【0056】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の運転中に、要求パワーPe*が停止用閾値Pstop以下であり、車速Vが停止許可車速Vev1より高いときには、エンジン22を回転数Nidlで自立運転するものとしたが、エンジン22への燃料供給を停止し、エンジン22が所定回転数(例えば、回転数Nidlなど)で回転するようモータMG1によってモータリングするものとしてもよい。この場合でも、エンジン22を回転停止させるものに比して、その後に運転者によってアクセルペダル83が踏み込まれたときに、エンジン22からパワーを迅速に出力することができる。
【0057】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に出力するものとしたが、
図11の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、エンジン22のクランクシャフトに接続されたインナーロータ132と駆動輪38a,38bに動力を出力する駆動軸36に接続されたアウターロータ134とを有しエンジン22からの動力の一部を駆動軸36に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機130を備えるものとしてもよい。
【0058】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸36に出力するものとしたが、
図12の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に変速機230を介してモータMGを取り付けると共にモータMGの回転軸にクラッチ229を介してエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータMGの回転軸と変速機230とを介して駆動軸36に出力すると共にモータMGからの動力を変速機230を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。
【0059】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG2が「モータ」に相当し、インバータが「インバータ」に相当し、エンジン22の間欠運転を伴って走行するようエンジン22とインバータ41,42とを制御し、インバータ42についてはモータMG2の駆動可能領域がモータMG2による制振制御を実行する制御方式(正弦波制御方式)の領域とモータMG2による制振制御を実行しない制御方式(過変調制御方式や矩形波制御方式)の領域とに区分されてなる制御方式設定用マップとモータMG2の回転数Nm2およびトルク指令Tm2*とを用いて得られる制御方式で制御し、更に、駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimに応じて、車速Vが停止許可車速Vev1以下の領域では正弦波制御方式でインバータ42を制御することになるよう(許容上限電圧VHlimが低いほど低くなる傾向に)停止許可車速Vev1を設定する、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40とが「制御手段」に相当する。
【0060】
ここで、「エンジン」としては、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン22に限定されるものではなく、水素エンジンなど、車軸に動力を出力可能なものであれば如何なるタイプのエンジンであっても構わない。「モータ」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、車軸に動力を出力可能なものであれば如何なるタイプのモータであっても構わない。「バッテリ」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、モータと電力のやりとりが可能なものであれば如何なるタイプのバッテリであっても構わない。「制御手段」としては、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52とからなる組み合わせに限定されるものではなく、単一の電子制御ユニットによって構成されるものなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、エンジン22の間欠運転を伴って走行するようエンジン22とインバータ41,42とを制御し、インバータ42についてはモータMG2の駆動可能領域がモータMG2による制振制御を実行する制御方式(正弦波制御方式)とモータMG2による制振制御を実行しない制御方式(過変調制御方式や矩形波制御方式)とに区分されてなる制御方式設定用マップとモータMG2の回転数Nm2およびトルク指令Tm2*とを用いて得られる制御方式で制御し、更に、駆動電圧系電力ライン54aの許容上限電圧VHlimに応じて、車速Vが停止許可車速Vev1以下の領域では正弦波制御方式でインバータ42を制御することになるよう(許容上限電圧VHlimが低いほど低くなる傾向に)停止許可車速Vev1を設定するものに限定されるものではなく、エンジンを間欠運転しながら走行するようエンジンとインバータとを制御し、インバータについては、モータの駆動可能領域がモータによる制振制御を実行する第1制御方式の領域と第1制御方式の領域より高回転数高トルク側で且つモータによる制振制御を実行しない第2制御方式の領域とに区分されてなる制御方式関係にモータの目標駆動状態を適用して得られる制御方式で制御し、更に、第1制御方式の領域と第2制御方式の領域との境界に応じて、エンジンの運転停止を許容する車速範囲の上限としての停止許可車速を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0061】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0062】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。