特許第5852486号(P5852486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852486
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】信号検出装置及び信号検出方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20160114BHJP
   H04J 11/00 20060101ALI20160114BHJP
   H04W 74/08 20090101ALI20160114BHJP
【FI】
   H04B1/16 Z
   H04J11/00 Z
   H04W74/08
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-67343(P2012-67343)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-201509(P2013-201509A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年9月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、総務省、超高速近距離無線伝送技術等の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】浦部 嘉夫
(72)【発明者】
【氏名】安道 和弘
(72)【発明者】
【氏名】入江 誠隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−130118(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/105516(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
H04J 11/00
H04W 74/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号のフレーム先頭に配置されたプリアンブル部を検出するプリアンブル検出手段と、
可変閾値を超える前記受信信号の電力を検出する電力検出手段と、
前記プリアンブル部が検出される前は前記可変閾値を前記受信信号の平均電力に対して所定の値を加算した第1閾値に設定し、前記プリアンブル部が検出され、かつ、前記平均電力が前記第1閾値よりも低い場合、前記可変閾値を前記平均電力に対して所定の値を減算した第2閾値に設定する閾値制御手段と、
を具備し、
前記電力検出手段は、前記プリアンブル部が検出された場合に設定された前記可変閾値に対して、前記受信信号の電力が所定の判定時間にわたって下回った場合、前記フレームの継続期間が終了したと判定する、
信号検出装置。
【請求項2】
前記プリアンブル部は、周期信号である、請求項1に記載の信号検出装置。
【請求項3】
前記プリアンブル検出手段は、自己相関を用いて前記プリアンブル部を検出する請求項1に記載の信号検出装置。
【請求項4】
前記可変閾値を超える電力の受信信号と、検出された前記プリアンブル部との論理和を検出判定信号とする判定手段を具備する請求項1に記載の信号検出装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記プリアンブル部の検出タイミングから所定時間経過後、検出判定信号を無効とする請求項4に記載の信号検出装置。
【請求項6】
前記閾値制御手段は、前記可変閾値を前記第2閾値に設定後、前記受信信号の平均電力が所定の判定時間にわたって前記第2閾値を下回った場合、前記プリアンブル部を検出する前の前記第1閾値に戻す、請求項1に記載の信号検出装置。
【請求項7】
前記閾値制御手段は、前記第2閾値から前記第1閾値へ漸次変更する請求項6に記載の信号検出装置。
【請求項8】
受信信号のフレーム先頭に配置されたプリアンブル部を検出するプリアンブル検出工程と、
可変閾値を超える前記受信信号の電力を検出する電力検出工程と、
前記プリアンブル部が検出される前は前記可変閾値を前記受信信号の平均電力に対して所定の値を加算した第1閾値に設定し、前記プリアンブル部が検出され、かつ、前記平均電力が前記第1閾値よりも低い場合、前記可変閾値を前記平均電力に対して所定の値を減算した第2閾値に設定する閾値制御工程と、
を具備し、
前記電力検出工程では、前記プリアンブル部が検出された場合に設定された前記可変閾値に対して、前記受信信号の電力が所定の判定時間にわたって下回った場合、前記フレームの継続期間が終了したと判定する、
信号検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他システムの信号を検出する信号検出装置及び信号検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、60GHz帯を使用するミリ波無線通信において、複数の無線通信規格が策定若しくは検討されている。免許を受ける必要がない主要な無線LAN(Local Area Network)/無線PAN(Personal Area Network)規格としては、例えば、WiGig(Wireless Gigabit) 、IEEE802.15.3c、Wireless HD(High Definition)、ECMA−387がある。また、IEEE802.11ad規格の策定も進められている。
【0003】
さらに、各規格内においても、目的とするアプリケーションに応じた複数の無線方式(例えば、シングルキャリア方式、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式)が併存している。
【0004】
複数の無線通信規格のそれぞれに対応するシステムが併存し、各システム内においても複数の無線方式が併存する。ミリ波無線通信が普及した場合には、異なる複数の無線方式が近接して使用される状況が多くなると想定される。そのため、各システムが周波数チャネルを使い分けることにより、複数のシステムが同一空間において同時に通信できることが要求されている。
【0005】
しかし、60GHz帯において利用可能な周波数チャネルは、3チャネル乃至4チャネルが想定されているため、ミリ波無線通信が普及した場合には、異なる複数のシステムが同一周波数チャネルを使用する可能性がある。このため、システム間における干渉が発生し、各システムにおける通信性能が低下することが懸念される。
【0006】
干渉を回避するためには、まず、対象システムに対する他システムからの干渉信号を検出することが必要になる。従来、特許文献1に開示の、例えば、無線LANシステムにおける信号検出方法として、電力によるキャリアセンス(以下、単に「キャリアセンス」と表記)が広く用いられている。キャリアセンスは、電力を検出することによって、信号を検出する方法である。
【0007】
上述したミリ波無線通信に関わる複数の無線通信規格のそれぞれにおいて、プリアンブル部分に用いられる周期信号の信号パターンが定められている。信号の相関を利用してプリアンブルを検出することにより、キャリアセンスよりも検出感度の高い信号検出が可能である。
【0008】
自システムの信号検出には、プリアンブルに含まれる既知の信号パターンと受信信号との相互相関によりプリアンブルを検出する方法が使用される。一方、他システムからの干渉信号を検出するためには、複数の無線通信規格の信号パターンとの相互相関を受信側装置で全て評価する必要があるため、相互相関による方法は必ずしも適さない。
【0009】
しかし、いくつかの無線通信規格間では、利用される信号パターンの周期が共通しており、プリアンブル部分に用いられる周期信号の周期のバリエーション数は、信号パターンのバリエーション数に比べて比較的少ない。従って、相互相関による方法に代えて、主要な周期に対する自己相関検出器を受信側の装置に設けることによって、受信側装置は、多種多様な異種システムからの干渉信号を広く検出できる。
【0010】
図1は、特許文献1に開示されている自己相関検出器の説明に供する図である。図1(a)は、特許文献1における自己相関検出器10の構成を示す図である。図1(b)は、自己相関検出器における処理をイメージ的に示す図である。図1(b)において、周期信号の1周期目部分はS1により表され、2周期目部分はS2により表されている。
【0011】
図1(b)に示すように、自己相関検出器では、受信信号である第1信号と、第1信号を遅延器11によって遅延させた第2信号との相関演算を行う。第1信号のS1部分及びS2部分、及び、第2信号のS1部分及びS2部分が相関演算処理の対象である。ただし、第2信号には周期信号の1周期分の遅延が与えられているので、第1信号と第2信号との相関を演算する場合、実際には、第1信号のS2部分と、第2信号のS1部分との相関を演算することになる。相関演算は、具体的には、第1信号と遅延された第2信号とが乗算器12において乗算され、乗算器12において得られた乗算結果が、積分器13において所定期間にわたって積分されることにより行われる。これにより、相関値が得られる。
【0012】
一方、相関演算の処理対象は第1信号のS1部分及びS2部分、及び、第2信号のS1部分及びS2部分なので、正規化に用いられる電力の観測期間もS1及びS2の両方に対応する期間となる。すなわち、電力検出部17による電力観測期間における電力の平均値によって相関値が正規化部15において正規化され、正規化された相関値に基づいて、信号の有無が比較器16において判定される。
【0013】
また、非特許文献1に開示の仮想キャリアセンス方式が一般に用いられている。仮想キャリアセンス方式は、例えば、無線LANにおいて自システムの信号を検出するために、信号のフレームヘッダにフレーム長の情報を入れて送信し、受信機では信号からフレーム長の情報を抽出することによりフレーム継続期間を判断する。電力に基づくキャリアセンスの信頼性が不十分でも、プリアンブル検出と仮想キャリアセンスにより、高い信頼性によってフレームの継続期間を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−221940号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】IEEE Std 802.11-2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ここで、複数の送信信号が衝突しないためのキャリアセンス多元接続(CSMA: Carrier Sense Multiple Access)方式においては、フレームの継続期間を検出することが必要であるため、フレーム長が一定でない場合には、フレームの継続期間を検出する必要がある。
【0017】
しかし、上述した特許文献1に開示の自己相関検出器では、フレームの先頭を検出することはできるが、フレームの終端を検出することは困難である。つまり、フレームの継続期間が未知であるため、CSMAの成立が困難になる。
【0018】
また、非特許文献1に開示の仮想キャリアセンスを用いるためには、受信機が受信信号を復調し、フレーム長の情報を復号することが必要になる。ここで、多種多様な異種システムの信号からフレーム長の情報を得るためには、対象とする全ての異種システムの信号を復調し、データを復号する必要があるため、異種システムの信号検出に仮想キャリアセンス方式を適用するのは現実的ではない。
【0019】
本発明の目的は、多種多様な異種システムの信号を含む一般的な信号を復調することなく、フレーム継続期間を検出する信号検出装置及び信号検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の信号検出装置は、受信信号のフレーム先頭に配置されたプリアンブル部を検出するプリアンブル検出手段と、可変閾値を超える前記受信信号の電力を検出する電力検出手段と、前記プリアンブル部が検出される前は前記可変閾値を前記受信信号の平均電力に対して所定の値を加算した第1閾値に設定し、前記プリアンブル部が検出され、かつ、前記平均電力が前記第1閾値よりも低い場合、前記可変閾値を前記平均電力に対して所定の値を減算した第2閾値に設定する閾値制御手段と、を具備し、前記電力検出手段は、前記プリアンブル部が検出された場合に設定された前記可変閾値に対して、前記受信信号の電力が所定の判定時間にわたって下回った場合、前記フレームの継続期間が終了したと判定する構成を採る。
【0021】
本発明の信号検出方法は、受信信号のフレーム先頭に配置されたプリアンブル部を検出するプリアンブル検出工程と、可変閾値を超える前記受信信号の電力を検出する電力検出工程と、前記プリアンブル部が検出される前は前記可変閾値を前記受信信号の平均電力に対して所定の値を加算した第1閾値に設定し、前記プリアンブル部が検出され、かつ、前記平均電力が前記第1閾値よりも低い場合、前記可変閾値を前記平均電力に対して所定の値を減算した第2閾値に設定する閾値制御工程と、を具備し、前記電力検出工程では、前記プリアンブル部が検出された場合に設定された前記可変閾値に対して、前記受信信号の電力が所定の判定時間にわたって下回った場合、前記フレームの継続期間が終了したと判定する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、多種多様な異種システムの信号を含む一般的な信号を復調することなく、フレーム継続期間を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】特許文献1に開示されている自己相関検出器の説明に供する図
図2】一般的な自己相関方法の説明に供する図
図3】本発明の一実施の形態に係る信号検出装置の構成を示すブロック図
図4図3に示した信号検出装置の信号検出動作の説明に供する図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
まず、キャリアセンスについて、説明する。
【0026】
キャリアセンスでは、受信された信号の電力が測定され、測定された電力値が所定の閾値を上回った場合には、信号が検出されたと認識される。キャリアセンスは、システムの種別によらずに、信号を検出できるという特長がある。一方で、電力によってはノイズと信号との区別がつかない場合がある。
【0027】
このため、キャリアセンスは、次の関係を有する。検出感度を向上させるために所定の閾値を低く設定すると、ノイズを信号として誤って検出してしまう誤検出が生じ易くなり、逆に、誤検出を防ぐために所定の閾値を高めに設定すると、検出感度が悪化する。つまり、検出感度の向上と誤検出の防止との間にはトレードオフの関係がある。
【0028】
ところで、近年の無線通信においては、伝送速度の高速化が進んでいるため、多値変調が利用されることが多い。多値変調が用いられる通信においては、弱いレベルの干渉によっても、データ誤りが発生し易い。干渉を効果的に回避するためには、弱いレベルの干渉も的確に検出する必要がある。
【0029】
このため、上述のトレードオフの関係を有するキャリアセンスでは、多値変調によって変調された信号を受信する場合に要求される干渉検出感度のレベルを満足させることが困難である可能性が高い。
【0030】
そこで、キャリアセンスよりも信号検出感度の良い信号検出方法として、信号間の相関を利用する技術がある。相関を利用する技術は、次の2つに大別される。一つは、受信信号に含まれるプリアンブル部分と、プリアンブル部分に用いられる既知のパターン信号候補との相関値に基づいて、検出対象信号を検出する相互相関方法であり、もう一つは、受信信号を複製した第1信号と第2信号とのプリアンブル部分同士の相関値に基づいて、検出対象信号を検出する自己相関方法である。
【0031】
プリアンブル部分には、特定の信号パターンが繰り返される周期信号が用いられることが多い。自己相関方法では、周期信号の周期性が信号検出に利用される。自己相関方法の信号検出感度は、一般的に、相互相関検出に比べて低いが、キャリアセンスに比べると高い。自己相関方法の信号検出感度がキャリアセンスより高いのは、周期信号の周期性によって、ノイズと信号とを区別できるためである。
【0032】
また、自己相関方法においては、相互相関方法と異なり、上記した特定の信号パターンを受信側が知っている必要がない。従って、簡易な構成によって受信側の装置を実現できる。また、自己相関方法においては、波形の周期性が検出されればよいので、干渉信号のシンボルレートに合わせた受信信号処理をする必要が無い。自己相関方法には、シンボルレート又は変調方式が異なる異種システムの信号検出に対しても適用しやすいというメリットがある。
【0033】
図2は、一般的な自己相関方法の説明に供する図である。図2(a)は、自己相関検出器20の基本構成を示し、図2(b)は、自己相関の処理をイメージ的に示す図である。
【0034】
図2(a)に示す自己相関検出器20において、受信信号が分配された第1信号及び第2信号のうち、第2信号が遅延器21によって所定時間遅延される。所定時間は、検出対象信号のプリアンブル部分に用いられる周期信号の周期に相当する。
【0035】
第1信号と遅延された第2信号とは乗算器22において乗算される。図2(a)の自己相関検出器20においては、単純な乗算器が設けられているが、複素乗算器としてもよい。これは、受信信号として複素ベースバンド信号が扱われ、複素共役が乗算されるためである。
【0036】
乗算器22において得られた乗算結果は、積分器23において所定期間にわたって積分され、相関値が得られる。
【0037】
得られた相関値の絶対値が絶対値算出部24によって算出され、算出された相関値の絶対値と所定の閾値とが比較器25において比較され、比較結果に応じた信号が出力される。
【0038】
ここで、複素ベースバンド信号から得られた相関値は複素数である。ただし、受信信号に含まれるプリアンブル部分に用いられる周期信号の周期と遅延器21において第2信号に与えられる遅延時間とが完全に一致している理想状態においては、得られる相関値は正の実数になる。
【0039】
これに対して、例えば、クロック偏差の誤差要因によって位相回転が生じると、得られる相関値は必ずしも正の実数にならない場合がある。ここでは、積分器23において得られた相関値が直接的に判定に使用されるのではなく、相関値の絶対値が判定に使用される。ただし、誤差要因が十分に小さいことが保証されている場合には、相関成分は、実数成分に略一致し、虚数成分は、例えば、ノイズに起因する。なお、相関値の絶対値が判定に用いられる代わりに、相関値の実数成分が判定に用いられてもよい。
【0040】
すなわち、比較器25には相関値の絶対値又は相関値の実数成分が入力され、所定の閾値と比較され、入力値が所定の閾値より大きい場合には、比較器によって信号が検出されたと判定される。
【0041】
自己相関検出器において、誤検出をできるだけ少なくし、弱い信号を感度良く検出するためには、閾値が適切に設定される必要がある。なお、誤検出とは、本来の検出対象信号ではなく、ノイズを検出対象信号として誤って検出することである。
【0042】
(一実施の形態)
本発明の実施の形態では、複数のミリ波無線通信規格のそれぞれに対応する複数の通信システムが混在している状況を前提とする。各通信システムの送信装置(例えば、アクセスポイント)が、各通信システムにおいて設定されている周期信号をプリアンブル部分に配置して送信する。本発明の一実施の形態に係る信号検出装置は、上記した複数の通信システムの内のいずれかにおいて通信する受信装置、例えば、端末装置に搭載される。
【0043】
信号検出装置は、搭載されている受信装置が通信する通信システム(以下では、「自システム」と呼ぶ)以外の複数の通信システム(以下では、「他システム」と呼ぶ)からのプリアンブル信号を検出する。なお、以下では、信号検出装置が複数の他システムのプリアンブル信号を検出することを前提に説明するが、検出対象のプリアンブル信号に自システムのプリアンブル信号が含まれてもよい。
【0044】
図3は、本発明の一実施の形態に係る信号検出装置100の構成を示すブロック図である。信号検出装置100は、受信装置においてアンテナを介して受信された無線受信信号が無線受信処理(例えば、ダウンコンバート、アナログディジタル変換)を施された後に得られる受信信号(つまり、ベースバンド信号)を入力とする。以下、図3を用いて信号検出装置100の構成について説明する。
【0045】
プリアンブル検出部101は、フレーム先頭のプリアンブルを検出し、プリアンブル検出信号を閾値制御部103及び判定部105に出力する。プリアンブル検出部101には、図2に示した自己相関検出器を用いるのが異種システムの信号検出に適しており好ましいが、これに限らず、他のプリアンブル検出部(例えば、相互相関検出器)を用いてもよい。
【0046】
平均電力演算部102は、入力信号の直近所定時間の平均電力を算出し、算出した平均電力を閾値制御部103に出力する。平均時間は、短時間の変動を平滑化するのに十分な時間とする。平均時間を長くするほど、例えば、雑音の瞬時変動による誤動作を低減でき、精密な閾値設定が可能になるが、信号の変化に対する応答が遅くなるため検出タイミングの遅延が大きくなり、遅延が大きすぎるとCSMA動作に支障が出る。入力される信号の帯域幅の逆数の数倍から数十倍程度に設定するのが好ましい。なお、平均電力演算の操作は、所定時間にわたる正確な平均値を求めてもよいが、例えば、ローパスフィルタによる平滑化操作であってもよい。
【0047】
閾値制御部103は、平均電力演算部102から出力された平均電力に基づいて閾値を設定する。具体的には、プリアンブル検出信号が入力される前では、閾値制御部103は、平均電力に対して所定のレベルマージン(第1レベルマージン値)を加算した値を第1閾値に設定し、誤検出を防止する。これは、誤検出の低減を重視する動作である。なお、第1閾値を無限大とし、検出動作を実質的に無効としてもよい。
【0048】
また、閾値制御部103は、プリアンブル検出信号が入力され、入力されたプリアンブル検出信号の平均電力が第1閾値よりも低い場合、平均電力(プリアンブル部の電力)に対して所定のレベルマージン(第2レベルマージン値)を減算した値を第2閾値に設定する。これは、検出感度を重視する動作である。なお、2つの閾値を用いることで、検出感度の向上と誤検出の低減とを両立できる。
【0049】
また、閾値制御部103は、信号電力が所定の判定時間にわたって第2閾値を下回ることが電力検出部104から通知されると、プリアンブル検出信号入力前の第1閾値に戻す。なお、第2閾値から第1閾値への戻し方は、瞬時に戻してもよいし、所定の時間をかけて段階的にまたは滑らかに、漸次変更してもよい。閾値を漸次変更することにより、信号の瞬時的な変動のためにフレーム検出を誤って終了することを防止でき、安定したフレーム検出ができる。
【0050】
さらに、閾値制御部103は、所定のタイムアウト時間をカウントするタイマーを備える。プリアンブル検出のタイミングからタイムアウト時間にわたり信号電力が下回らない場合、プリアンブル検出信号入力前の第1閾値に戻す。これにより、例えば、背景雑音レベルの変動によって、誤検出の長時間持続を防止できる。タイムアウト時間は、検出対象とする信号に対して通常利用されるフレーム最大長程度に設定するのが好ましい。
【0051】
電力検出部104は、入力された信号の電力を閾値制御部103により制御される閾値と比較し、電力が閾値より大きい場合に電力検出信号を判定部105に出力する。また、電力検出部104は、入力された信号の電力が所定の判定時間にわたって第2閾値を下回る場合、その旨を閾値制御部103に通知する。ここで、信号電力が所定の判定時間にわたって第2閾値を下回るということは、フレームの継続期間が終了したことを意味するので、フレーム継続期間を検出できる。
【0052】
判定部105は、プリアンブル検出部101から出力されたプリアンブル検出信号と、電力検出部104から出力された電力検出信号との論理和を検出判定信号として出力する。すなわち、プリアンブルまたは電力のいずれか一方又は両方が検出されていれば信号検出していると判定する。この動作は、以下の場合に有効である。
【0053】
閾値制御部103においては、プリアンブルを検出してから適正な閾値を算出するまでの時間が必要になる。プリアンブル部の電力を正確に測定するための平均操作、又は、演算に時間を要するからである。したがって、電力検出信号の立ち上がりはプリアンブル検出のタイミングから遅延する。この遅延時間は無視できず、例えば、CSMA動作に支障が出る場合においては、電力検出信号とプリアンブル検出信号の論理和を用いることにより、遅延が生じる電力検出信号によらず、プリアンブル検出信号によって信号検出を判定できる。
【0054】
なお、判定部105は、閾値制御部103のタイムアウト時間と同様のタイムアウト処理を備えてもよい。すなわち、判定部105は、プリアンブル検出タイミングから所定時間経過後、検出判定信号を強制的に無効としてもよい。
【0055】
また、判定部105は、プリアンブル検出前、電力検出信号の立下り後、及び、タイムアウト時間の経過後は検出判定信号を強制的に無効としてもよい。これは、閾値制御部103において第1レベルマージンを無限大とすることと同等の動作である。
【0056】
次に、上述した信号検出装置100の信号検出動作について図4を用いて説明する。プリアンブルの検出前では、平均電力に対して第1レベルマージン値を加算した第1閾値が設定される。このため、ノイズが発生しても、ノイズの電力が第1閾値未満であるため、信号検出がされず、誤検出を防止できる。
【0057】
続いて、プリアンブルが検出され、プリアンブルの平均電力が第1閾値よりも低い場合、平均電力(プリアンブル部の電力)に対して第2レベルマージン値を減算した第2閾値が設定されるため、検出感度を向上できる。
【0058】
信号電力が所定の判定時間にわたって第2閾値を下回った場合、フレームの継続期間が終了したと判定し、第2閾値から第1閾値に変更される。
【0059】
本実施の形態によれば、プリアンブル検出前では、入力信号の平均電力に対して第1レベルマージン値を加算した第1閾値を設定し、プリアンブル検出後、平均電力が第1閾値よりも低い場合、平均電力に対して第2レベルマージン値を減算した第2閾値を設定し、信号電力が所定の判定時間にわたって第2閾値を下回った場合、フレームの継続期間が終了したと判定することにより、多種多様な異種システムの信号を含む一般的な信号を復調することなく、検出感度の向上と誤検出の低減との両立を図り、フレーム継続期間を検出できる。
【0060】
なお、本実施の形態では、フレーム先頭のプリアンブルを検出するプリアンブル検出部を備えることを前提に説明したが、プリアンブル検出部に代えて、フレーム先頭付近に存在する他の特徴的な信号を検出する特徴信号検出部としてもよい。特徴信号としては、例えば、フレーム捕捉のためのユニークワード、同期信号又はフレームヘッダが利用できる。
【0061】
また、本実施の形態では、本発明をハードウェアによって構成する場合を例にとって説明したが、本発明はハードウェアとの連携においてソフトウェアによって実現可能である。
【0062】
また、本実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、各機能ブロックの一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0063】
また、集積回路化の手法にはLSIに限らず、専用回路または汎用プロセッサによって実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内部の回路セルの接続、設定が再構成可能なリコンフィグラブル・プロセッサーを利用してもよい。
【0064】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、別技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明にかかる信号検出装置及び信号検出方法は、複数の通信システムのうち、いずれかの通信システムと通信する受信装置、例えば、端末装置に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
101 プリアンブル検出部
102 平均電力演算部
103 閾値制御部
104 電力検出部
105 判定部
図1
図2
図3
図4