(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、積載物を一度に下ろすための傾動可能な荷台(ダンプ機構)を備え、土砂等(土、砂利、砕石、アスファルト、コンクリート鉱さい、廃鉱、石炭がら、砂利状又は砕石状の石炭石及び珪砂など)を積載、運搬する用途のダンプが利用されている。以下、かかる用途のダンプを「土砂ダンプ」という。
【0003】
土砂等は、土砂等以外(通常の産業廃棄物、瓦礫など)に比べて比重が大きい。このため、土砂等を土砂等以外の積載物と同様に荷台に積み込めば過積載となるおそれがあり、日本国では、土砂ダンプの荷台の容量は法令により規制されている。道路運送車両の保安基準(昭和26年7月28日運輸省令第67号)によれば、「土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法(昭和42年法律第131号)第4条に規定する土砂等運搬大型自動車には、当該自動車の最大積載量をこえて同法第2条第1項に規定する土砂等を積載できるものとして告示で定める物品積載装置を備えてはならない。」と定められており(27条2項)、荷台(ベッセル)の容量(深さ)は、その車両の最大積載量に応じて制限されている。具体的には、大型・中型ダンプの場合は、最大積載量(t)/荷台容積(m
3)≧1.5t/m
3の式を満たすように、小型ダンプの場合は、最大積載量(t)/荷台容積(m
3)≧1.3t/m
3の式を満たすように制限されている。例えば、最大積載量が10tであり、内寸が長さ5.1m、幅2.3mの箱型ベッセルのダンプの場合、ベッセルの深さは、56cm以下に制限される。
【0004】
一方、土砂等以外のものを運搬する用途のダンプの場合、上記の制限はなく、土砂等よりも軽比重のものを積載することを前提としているので、荷台の容量は土砂ダンプに比べて大きく設計することができる。例えば、上記最大積載量及び内寸のダンプにおいて、土砂以外の軽比重の積載物(比重0.5)を積載するとすれば、ベッセルの深さは最大積載量との関係で約166cmまで深くすることができる。以下、土砂等以外のものを運搬する用途の荷台を深くできるダンプを「深ダンプ」という。当然ながら、このような深ダンプに土砂等を積載することは、最大積載量を超える可能性があるので法令により禁じられている。なお、土砂ダンプに土砂以外の積載物を積み込むことは可能であるが、荷台が浅いため、車両の本来の最大積載量まで積載物を積み込むことできず、輸送コストの点からは好ましくない。
【0005】
なお、異なる種類の積載物を積載可能な車両として、例えば、特許文献1には、土砂等の積載と、建設車両等の搭載との両方が可能な車両が開示されている。特許文献1に記載の車両は、土砂ダンプの荷台において、上開き式のリアゲートに歩み板を設けることによって、建設車両の乗り入れを容易にすることができ、一台の車両を、土砂等を積載運搬する用途と建設車両等を積載運搬する両方の用途に使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
土砂ダンプを(構造等変更検査の合格を前提として)深ダンプに改造する場合、従来、ダンプの荷台自体を取り変えたり、荷台に適宜の鋼板部材を溶接したりすることによってその積載容量を大きくする方法があるが、このように溶接により一度部材を接続してしまうと容易には元の構造には戻せなくなる。特に、ダンプの荷台は、通常、アオリ板の一部がヒンジ等によって開閉するように構成されており、さらに開閉可能なアオリ板を固定する固定具等が設けられているが、土砂ダンプと深ダンプとでは、アオリ板の高さ(深さ)が異なるので、アオリ板の開閉機構や固定具を変更する必要があり、単に鋼板部材を溶接してアオリ板を高くするだけでは完全に深ダンプに改造することはできなかった。
【0008】
現状では、各種土木工事や建設工事において、土砂等を運搬する用途と土砂等以外を運搬する用途のために、事業者は土砂ダンプと深ダンプの両方を用意して、それぞれの用途に使用しなければならなかった。具体的には、例えば、トンネル工事の場合、比較的比重の軽い工事資材や機材などは、深ダンプによって工事現場まで運搬され、工事現場から掘削した比重の重い土砂などは、土砂ダンプによって運搬されていた。また、昨今の東日本大震災では東北地方が甚大な被害を受けたところであり、この復興事業のために全国各地のダンプが多数投入されている。現状では、主に瓦礫の撤去を目的として撤去した瓦礫の運搬輸送のために深ダンプが多く必要とされるが、その後の道路整備、居住区の整備などのためには、各種建築資材(土砂、砂利などを含む)の運搬輸送のために土砂ダンプが多く必要となる。
【0009】
しかし、現状ではダンプの絶対的な台数が不足しており、復興遅延の一因ともなっている。特に瓦礫を運搬するための深ダンプの不足が著しい。瓦礫の撤去作業は今後数年間に渡って継続するものと見込まれるが、この比較的短期の需要のためだけに深ダンプを大量に供給することは、経済的にも、資源節約及び環境保全(排ガス規制を含む)の観点からも好ましくない。そもそも、事業者が用途に応じて土砂ダンプと深ダンプの両方を用意することは、経済的な負担が大きいうえに、ダンプが品薄状態であることから、価格も高騰しており、経済的負担はますます大きくなっていた。
【0010】
加えて、用途が制限されているので、各ダンプは往路及び復路のいずれか一方で空荷となることもあり、稼働率や輸送コストの点からも好ましくない。さらに、大型車両のドライバーの高齢化と、近年創設された中型免許制度の影響によって、全国的にドライバー不足が深刻化しつつある。このため、事業者が多数の車両運行のために、ドライバーを中長期にわたって安定的に確保するのは困難になりつつある。
【0011】
なお、特許文献1に記載された車両によれば、例えば、往路において、土砂等を運搬し、目的地で土砂等を積み下ろした後、建設車両を積み込んで、復路において建設車両を運搬することができ、一台の車両を二つの用途に用いることができる。しかしながら、かかる車両では荷台の容量自体は変更できない。
【0012】
本発明は、前述した問題に鑑みてなされたものであり、簡単な取付け取外し作業によって土砂ダンプと深ダンプとを相互に変更可能なアタッチメントを提供することを目的とする。また、かかるアタッチメントを使用して深ダンプを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した課題を解決するため、本発明のアタッチメントは、ダンプ荷台の容量を変更する脱着可能なアタッチメントであって、前記ダンプ荷台の床板に立設された既存のアオリ板の少なくとも一つに取付け可能なアオリ板用パネルと、前記アオリ板用パネルに設けられたゲート機構を介して開閉可能に取付け可能なゲート板用パネルとを備えることを特徴とする。
【0014】
さらに、上記アタッチメントにおいて、前記アオリ板用パネルは、既存のアオリ板のゲート機構に対応する部分において、その高さaが、変更後の荷台の深さをh、既存のアオリ板による荷台の深さをdとした時に、a>h−dとなることが好ましい。
【0015】
また、上記アタッチメントにおいて、前記アオリ板用パネルは、ゲート機構部とパネル本体とを有し、前記ゲート機構部の高さaは、既存のアオリ板による荷台の深さをdとした時に、a>h−dとなることが好ましく、前記ゲート機構部が、前記ゲート板用パネルに当接する側に設けられ、既存のアオリ板を覆うための開口及び中空部を有することが好ましい。さらに、前記パネル本体の高さは、h−dとほぼ同じであることが好ましい。
【0016】
さらに、上記アタッチメントにおいて、前記ゲート板用パネルが、既存のゲート板を取り外した後、前記既存のゲート板の代わりに取付け可能であってもよいし、既存のゲート板と一体的に取付け可能であってもよい。
【0017】
また、本発明のダンプは、ダンプ荷台の容量を変更する脱着可能なアタッチメントが取付けられた荷台を備えるダンプであって、前記ダンプ荷台の床板に立設された既存のアオリ板の少なくとも一つにアオリ板用パネルが取付けられ、前記アオリ板用パネルに設けられたゲート機構を介して開閉可能なゲート板用パネルが取付けられたことを特徴とする。
【0018】
さらに、上記ダンプにおいて、前記アオリ板用パネルが、既存のアオリ板のゲート機構を覆っていることが好ましい。または、前記アオリ板用パネルが、ゲート機構部とパネル本体とを有し、前記ゲート機構部が既存のアオリ板のゲート機構を覆って取付けられ、前記パネル本体が前記既存のアオリ板の上方に取付けられることが好ましい。
【0019】
本発明の深ダンプの製造方法は、土砂ダンプの荷台の床板に立設された既存のアオリ板の少なくとも一つにアオリ板用パネルを取付ける工程と、前記アオリ板用パネルにゲート板用パネルを取付ける工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
また、上記深ダンプの製造方法において、土砂ダンプの荷台の床板に立設された既存のアオリ板の少なくとも一つにアオリ板用パネルを取付ける工程と、前記アオリ板用パネルに設けられた軸受部を介して開閉可能なようにゲート板用パネルを取付ける工程とを備えてもよい。
【0021】
さらに、上記深ダンプの製造方法において、前記アオリ板用パネルが、既存のアオリ板のゲート機構を覆って取付けられることが好ましい。または、前記アオリ板用パネルが、ゲート機構部とパネル本体とを有し、前記ゲート機構部が既存のアオリ板のゲート機構を覆って取付けられ、前記パネル本体が前記既存のアオリ板の上方に取付けられることが好ましい。
【0022】
さらに、上記深ダンプの製造方法において、前記ゲート板用パネルを取付ける工程において、既存のゲート板を取り外した後、前記既存のゲート板の代わりに前記ゲート板用パネルを取付けてもよいし、既存のゲート板に前記ゲート板用パネルを一体的に取付けてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ダンプ荷台に取付け、取外すことができるアタッチメントによって、土砂ダンプと深ダンプとを相互に変更することができ、構造等変更検査を受ける必要はあるものの用途に合わせて1台のダンプを土砂ダンプと深ダンプに使い分けることができる。このため、必要に応じて、工事に使用される複数のダンプについて、深ダンプの割合を増やしたり、土砂ダンプの割合を増やしたりすることができるので、各種土木工事や建設工事が効率的になり、また復興促進に役立つ。また、各ダンプをそれぞれ用意するよりも、土砂ダンプと深ダンプとを相互に変更する方が、資源節約の点からも、環境保全の点からも好ましく、経済的にも有利である。その他の効果については、発明を実施するための形態において述べる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のアタッチメント(
図1)は、土砂ダンプの荷台に立設された既存のアオリ板(
図2)などへ取付け可能であり、また取付けたアタッチメントは、取り外し可能であり、これによって、荷台の容量を変更し、土砂ダンプの荷台(
図2)と深ダンプの荷台(
図3)とを相互に変更するものである。また、本発明は、かかるアタッチメントが取付けられた荷台を備えるダンプ、及びかかるアタッチメントを使用してダンプを製造する方法を含む。本明細書において、アオリ板とは、荷台の床板の各辺に立設された側壁を指し、説明のため、車両の運転席側を前として、左右の側方のアオリ板を側アオリ板、後方のアオリ板を後アオリ板と呼ぶ。なお、ダンプほか、貨物トラックなどにおいては、通常、荷台の前側(キャビンの背面)には、キャビンとの隙間へ積載物が落下することを防ぐために、十分な高さを有するプロテクタ(
図7の符号10参照)が設けられている。このため、荷台の容積を変更する際、前側には特にアタッチメントを取付ける必要がないので、以下、荷台の前面については説明を省略する。なお、前側面が鳥居タイプである場合は、かかる鳥居を平面で覆うようなアオリ板用パネルを設けてもよい。
【0026】
ダンプは荷台の傾斜方式によっていくつかに分類され、例えば、荷台を車両の後方に傾ける(前方を持ち上げる)方式(リヤダンプ)、荷台を左右側方に傾ける方式(サイドダンプ)がある。また、荷台を左右後方にも傾けることができる方式(三転ダンプ)もある。本アタッチメントは、いずれの傾斜方式の荷台にも適用可能である。
【0027】
アタッチメント取付け前の土砂ダンプの荷台(
図2)には、床板5の左右側縁に立設された側アオリ板1と、床板5の後方に立設された後アオリ板2を有している。アオリ板の少なくとも一部は、ゲート機構によって開閉可能に構成されている。ゲート機構は、アオリ板の開閉機構及び/又は固定具の一部を含むものであり、荷台の傾斜する方式に対応して設けられることが好ましく、リヤダンプであれば後アオリ板2が開閉可能に設けられており、サイドダンプであれば側アオリ板1が開閉可能に設けられていることが好ましい。ただし、荷台への積載又は排出作業を容易にするため、傾斜しない方向のアオリ板をゲート機構によって開閉可能にしてもよい。なお、ゲート機構によって開閉可能なアオリ板をゲート板と呼ぶこともある。
図2においては、側アオリ板1の後方端部にゲート機構が設けられ、後アオリ板2が開閉可能なゲート板に対応する。
【0028】
本アタッチメント(
図1)は、既存のアオリ板1の少なくとも一つに接続するアオリ板用パネル(例えば、3R、3L)と、アオリ板用パネル又は既設のアオリ板に設けられたゲート機構(32、34)を介して開閉可能に設けられるゲート板用パネル4とを備える。アオリ板用パネル3及びゲート板用パネル4は、積載物による水平方向への圧力に耐えられるよう構成されていればよい。
【0029】
アオリ板用パネル3R、3Lは、既存のアオリ板に接続して、荷台の側壁を高く(深く)するものである。アオリ板用パネル3R、3Lは、既存のアオリ板に固定してもよいし、床板に固定してもよい。アオリ板用パネル3R、3Lの高さ(深さ)aは、既存のアオリ板による荷台の深さをd、変更後の深ダンプの荷台の深さをhとした時に、a≧(h−d)とすることが好ましい。a=h−dの場合は、既設のアオリ板の上面とアオリ板用パネル3R、3Lの下面と当接させて連結し、a>h−dの場合は、既設のアオリ板にアオリ板用パネルの下方の一部を重畳させて連結する。特に、既存のアオリ板のゲート機構に対応する部分については、既存のアオリ板のゲート機構を覆うため、アオリ板用パネル3R、3Lの高さ(深さ)aをa>h−dとすることが好ましい。なお、a<h−dの場合は、アオリ板用パネル3R、3Lの高さ(深さ)と既設のアオリ板の高さを合計しても、深ダンプの荷台の深さに足りないが、既設のアオリ板とアオリ板用パネル3R、3Lとを連結部材によって隙間を開けて連結することも可能である。
【0030】
また、少なくとも一部のアオリ板用パネル3R、3Lには、ゲート機構(32、34)が設けられている。ゲート機構は、ゲート板を開閉可能とする機構の少なくとも一部であり、ヒンジ、軸受け等の回動機構や、ゲート板を固定する固定具等を含むものである。ゲート機構は、上側に設けられたヒンジ軸などによって、下側が開閉可能な下開き型(
図2(B)、
図4(A))、下側に設けられたヒンジ軸などによって上側が開閉可能な上開き型(
図5(A))、左右両側に設けられたヒンジ軸などによって左右に開閉可能な観音開き型(
図6(A))などがある。本アタッチメントは、いずれの開閉形式のゲート板にも適用可能である。
【0031】
ゲート板用パネル4は、既存のゲート板2を取り外して、既存のゲート板2の代替となるように構成されてもよい(
図3(B)参照)。また、既存のゲート板2を利用可能に構成されてもよい。具体的には、ゲート板用パネル4は、既存のゲート板に一体的に取付けられるように構成されてもよいし(
図4(B)参照)、既存のゲート板に当接するが既存のゲート板の開閉動作とは独立して開閉可能なように構成されてもよい(
図5(B)、
図6(B)参照)。ゲート板用パネル4は、アオリ板用パネル3のゲート機構のみによって開閉可能に構成されてもよいが、アオリ板用パネル3のゲート機構だけではなく、既存のアオリ板1のゲート機構の一部を利用してもよい。
【0032】
本発明によれば、ダンプ荷台にアタッチメントを取付け、取外しすることができるので、一台のダンプにおいて荷台の容量を適宜変更することができる。すなわち、土砂ダンプから深ダンプへ、深ダンプから土砂ダンプへ相互に変更することができる。ただし、アタッチメントの取付け、取り外しをした場合、ダンプの荷台寸法が変更されるので、その都度、車検(構造等変更検査)を受け、行政の許可を受けなければならない。しかし、取付け、取り外しの都度、車検を受けなければならないとしても、各用途のために一組のダンプを所持するよりは運用コストを低減することができる。
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。まず、本実施形態のアタッチメントの概要について説明し、次いで、本アタッチメントを荷台に取付けてダンプを製造する方法について説明する。以下は、アタッチメントを一方開のリヤダンプに適用する例であるが、本発明は、以下の例に限定されるものではない。本アタッチメントは、サイドダンプ、三転ダンプなどにおいて、複数の開閉可能なゲートを有する荷台にも適用することができる。また、ダンプ機構を持たない通常のトラックの荷台などにも適用することができる。
【0034】
[アタッチメントの構成]
図1は、本実施形態のダンプ荷台のアタッチメントの概略構成図である。本アタッチメントは、少なくとも一つのアオリ板用パネル3L、3R、及びゲート板用パネル4を備える。
図1では、アオリ板用パネルとして、右側アオリ板用パネル3R及び左側アオリ板用パネル3Lの二つが示されている。
【0035】
アオリ板用パネル3L、3Rは、既存の側アオリ板1(
図2参照)に接続して、荷台の側壁を高くするものである。少なくとも一部のアオリ板用パネルは、ゲート機構が設けられており、
図1においては、ゲート板用パネル4を開閉可能に接続する軸受部32、軸受部32を固定する軸受取付部33、及びゲート板用パネル4を係止する係止部34が設けられている。
【0036】
図1のアオリ板用パネル3は、パネル本体30とゲート機構部31とで構成されている。パネル本体30は、既存のアオリ板1又はその他の荷台の部材に固定され、既存のアオリ板1と一体となって荷台の側壁を構成する。既存のアオリ板1とパネル本体30とは隙間なく連結されてもいいが、隙間を設けていてもよい。パネル本体30の高さaは、深ダンプの荷台の深さhと既存の側アオリ板による荷台の深さdとの差(h−d)に対して、a≧(h−d)となることが好ましい。特に、パネル本体30の高さaは、材料費を減らすためには、固定用の補助具を除いて、h−dとほぼ同じとすることが好ましいが、強度の面からみれば、a>(h−d)としてもよい。
【0037】
ゲート機構部31は、ゲート機構が設けられ、ゲート板用パネル4の支柱として、ゲート板用パネル4を開閉可能に支持するものである。ゲート機構部31の高さaは、深ダンプの荷台の深さhと既存の側アオリ板による荷台の深さdとの差(h−d)に対して、a>(h−d)となることが好ましい。このように構成すると、既存のアオリ板のゲート機構を覆ってゲート機構部31を取付けることができる。
図1のゲート機構部31の高さは、深ダンプの荷台の深さhと同じである。ゲート機構部31には、ゲート板用パネル4を開閉可能に接続する軸受部32、軸受部32を固定する軸受取付部33、及びゲート板用パネル4などを係止する係止部34等が設けられる。ただし、パネル本体30とゲート機構部31を一体としてもよく、高さhのパネル本体30及びゲート機構部31としてもよいし、高さ(h−d)のパネル本体30及びゲート機構部31としてもよい。
【0038】
ゲート板用パネル4は、既存のゲート板の代替であるか、既存のゲート板に接続(又は当接)するものである。ゲート板用パネル4は、軸受部32に嵌合するヒンジ軸42、ヒンジ軸42を支持するヒンジ部43、及びゲート板用パネル4をアオリ板用パネル3又は既存のアオリ板1に係止する係止爪44が設けられてもよい。
【0039】
図1に示したアタッチメントの構成、形状、数量は単なる例であって、本アタッチメントはダンプ荷台の形式や形状、ダンプ機構の種類に応じて種々変形、変更が可能である。
図1では、アオリ板用パネル3のゲート機構部31は、矩形状であるが、L字型であってもよいし、コの字型又は枠状であってもよい。また、アオリ板用パネルにおいてゲート機構部31とパネル本体30とが一体に構成されてもよい。
【0040】
さらに、
図1では、アオリ板用パネルに軸受部が設けられ、ゲート板用パネルに軸が設けられているが、これに限定されない。アオリ板用パネルに軸が設けられ、ゲート板用パネルに軸受部が設けられてもよい。また、ゲート機構に係る開閉機構は、ヒンジを用いた構造に限定されず、ゲート板用パネルを開閉可能に取付けることができれば足る。
【0041】
加えて、取外した既存のゲート板2をアオリ板用パネル3の一部として使用可能に構成してもよい。また、左右側面のアオリ板用パネルも開閉可能な構成とし、三方開の荷台を構成してもよい。
【0042】
[アタッチメントの取付け方法]
図2は、本アタッチメントを取付ける前のダンプ(土砂ダンプ)の荷台の外観図であり、同図(A)(B)(C)は、各々、荷台の側面、後面、上面図を示す。
図3は、本アタッチメントを取付けた後のダンプ(深ダンプ)の荷台の外観図であり、同図(A)(B)(C)は、各々、荷台の側面、後面、上面図を示す。
【0043】
土砂ダンプの荷台は、床板5、床板5に立設されたアオリ板1(同図では、前側アオリ板1F、右側アオリ板1R、左側アオリ板1Lを含む)、及び開閉可能に設けられた後アオリ板(ゲート板)2によって構成される。左右の側アオリ板1L、1Rには、ゲート板2を開閉可能に取付ける軸受部12、及びゲート板2を係止する係止部14などが設けられている。ゲート板2には、軸受部12に嵌合するヒンジ軸22、係止部14に係る係止爪24などが設けられる。同図では、ゲート板2は、開閉機構により下開きに開閉する。
【0044】
本アタッチメントをダンプ荷台に取付ける場合、まず、荷台から既存のゲート板2を取り外し、アタッチメントの左右一対のゲート機構部31を左右側アオリ板1L、1Rに、その後端部を合わせて接続する。
図1のゲート機構部31は、高さが深ダンプの荷台の深さhと同じであるので、下端を荷台の床板5に合わせ、既存の側アオリ板1L、1Rの後端部近傍において重畳して設けられる。接続手段については、特に限定されず、ボルト、ナット、フックなどによって相互に固定してもよいし、部分的であれば溶接してもよい。
ゲート機構部31は側アオリ板と接続することが好ましいが、必要な強度を確保するため荷台の床板5に直接接続されてもよい。既存のアオリ板1L、1Rにおいて、ゲート板を開閉可能に取付けるための軸受部12などのゲート機構が設けられている場合は、ゲート機構部31は、この既存のゲート機構の一部又は全部を覆うように構成されていることが好ましい。
図1では、ゲート機構部31は、既存の側アオリ板1L、1Rの軸受部12及び係止部14の両方を覆っているが、係止部14を露出させ、ゲート板用パネル4と係止させてもよい。
【0045】
次いで、左右一対のパネル本体30を左右側アオリ板1L、1Rに接続する。
図1のパネル本体30の高さは、深ダンプの荷台の深さhと既存の側アオリ板の高さdとの差(h−d)であるので、パネル本体30の下面が側アオリ板1L、1Rの上面と当接するように配置し、パネル本体30と側アオリ板1L、1Rとを接続する。さらに、パネル本体30は、ゲート機構部31とも接続される。接続手段については、特に限定されず、ボルト、ナット、フックなどによって相互に固定してもよいし、部分的であれば溶接してもよい。この場合、必要な強度を得るために、パネル本体30と既存のアオリ板とを補助金物などによって接続してもよいし、これらの接合面にH型の鋼材を挿入して固定してもよい。
【0046】
そして、ゲート板用パネル4を荷台の後面に配置し、ゲート板用パネル4のヒンジ軸42を、ゲート機構部31の軸受部32に嵌合し、ゲート板用パネル4の係止爪44をゲート機構部31の係止部34に係止する。これによって、ゲート板用パネル4は、係止爪44を係止部34から嵌脱すると、軸受部32及びヒンジ軸42を介して開閉可能な状態となる。
【0047】
以上、本アタッチメントの取付けの作業手順について説明したが、取り外しの作業手順は、上記作業手順を逆に進める。すなわち、ゲート板用パネル4を取外し、その後、パネル本体30を側アオリ板から取外し、最後にゲート機構部31を取り外す。ただし、これらは一例であって、適宜変形、変更が可能である。取付けの作業手順として、パネル本体30を取付けた後、ゲート機構部31を取付けてもよいし、パネル本体30とゲート機構部31とをあらかじめ組み合わせた後、アオリ板に取付けてもよい。
【0048】
また、
図3では、既存のゲート板2を取外した後、既存のゲート板2は使用せずにゲート板用パネル4を設けているが、既存のゲート板2は利用しつつゲート板用パネル4を取付け可能な構成とすることもできる。ゲート板用パネル4の他の例について、
図4ないし
図6を用いて説明する。
【0049】
図4は、ゲート板用パネルの第1の例であり、同図(A)(B)は、各々、ゲート板用パネル4を取付ける前、取付けた後の状態を示す説明図である。本例は、下開き型のゲート板2を有する荷台において、接続補助具46などを介して既存のゲート板2とゲート板用パネル4とを一体的に連結する例である。
【0050】
本例では、ゲート板用パネル4を連結するゲート板2を荷台に後面に配置し、ヒンジ軸22を左右のアオリ板用パネル3の軸受部32に嵌合させる。これによって、ゲート板ないしゲート板用パネルは、ヒンジ機構を介して開閉可能となる。このように、本例では、既存のゲート板も取外したままにせず、後面壁の一部として活用できるので、既存のゲート板が無駄とならない。また、アタッチメントの部材を節減することもできる。なお、同図では、上側にゲート板、下側にゲート板用パネルを配置しているが、各部材を逆に配置してもよい。この場合、
図3と同様に、ヒンジ軸が設けられたゲート板用パネルを使用すればよい。
【0051】
図5は、ゲート板用パネルの第2の例であり、同図(A)(B)は、各々、ゲート板用パネルを取付ける前、取付けた後の状態を示す説明図である。本例の土砂ダンプは、上開き型のゲート機構を備えており、側アオリ板1L、1Rの軸受部12及びゲート板2のヒンジ軸22が下方に設けられ、側アオリ板1L、1Rの係止部14及びゲート板2の係止爪24などが上方に設けられている。本例は、上開き型のゲート板2を有する荷台において、既存のゲート板2の開閉動作とは独立して、ゲート板用パネルを開閉可能に取付けるものである。本例のゲート板用パネル4は、左右一組のパネル40からなる。各パネル40には、アオリ板用パネルに接する側端にヒンジ軸42が縦方向に設けられ、他方の側端に両パネル40を係止する係止爪(一方は係止部として機能する)44が設けられる。
【0052】
ゲート板用パネルの取付けに際しては、ゲート板用パネルを既存のゲート板の上方に配置し、そのヒンジ軸42を左右アオリ板用パネルに設けられた軸受部32に嵌合させる。これによって、ゲート板用パネル4は、既存のゲート板2の開閉動作とは独立して観音開きに開閉可能となる。本例では、既存のゲート板は取外さないため、アタッチメントの取付け作業を短時間で行うことができる。
【0053】
なお、同図では、観音開き型の2枚のパネルを使用したが、
図6で後述する下開き型のゲート板用パネルを使用してもよいし、水平方向に開閉する片開き型としてもよい。また、ダンプ機構を作動させて積載物を排出する際に、荷台の後端と地面との間に十分なクリアランスがある場合は、ゲート板とゲート板用パネルとが一体的に連結された上開き型の構成としてもよい(
図3の態様とは上下逆さまの態様となる)。
【0054】
図6は、ゲート板用パネルの第3の例であり、同図(A)(B)は、各々、ゲート板用パネルを取付ける前、取付けた後の状態を示す説明図である。本例の土砂ダンプは、観音開き型のゲート機構を備えており、ゲート板2は、側アオリ板に接する側端にヒンジ軸22が縦方向に設けられ、他方の側端に両ゲート板2を係止する係止爪(一方は係止部として機能する)24が設けられる。また、側アオリ板1L、1Rには、縦方向のヒンジ軸22を保持する軸受部12が設けられている。本例は、観音開き型のゲート板2を有する荷台において、既存のゲート板2の開閉動作とは独立して、ゲート板用パネルを開閉可能に取付けるものである。本例のゲート板用パネル4は、上端にヒンジ軸42が設けられ、下端の少なくとも一隅に係止爪44が設けられる。
【0055】
アタッチメントの取付けに際しては、既存の側アオリ板の上方に左右アオリ板用パネル3L、3Rが固定される。左右アオリ板用パネル3L、3Rは、上方に軸受部32が設けられ、下方(既存の側アオリ板よりも上方)に係止部34が設けられる。ゲート板用パネル4は、既存のゲート板2の上方に配置され、その上方に設けられたヒンジ軸42を左右アオリ板用パネル3L,3Rの軸受部32に嵌合させ、その下方に設けられた係止爪44を左右アオリ板用パネル3L,3Rの係止部34に係止させる。これによって、ゲート板用パネル4は、既存のゲート板2の開閉動作とは独立して下開きに開閉可能となる。本例でも、既存のゲート機構及びゲート板はそのまま使用することができ、
図5と同様に、アタッチメントの取付け作業を短時間で行うことができる。なお、同図では、下開き型のゲート板用パネルを使用したが、
図5に示した観音開き型の2枚のパネルを使用してもよい。
【0056】
[実施例]
以下、土砂運搬のためのリヤダンプの荷台に本アタッチメントを取付けて荷台の容量を大きくし、深ダンプに変更した例について説明する。
【0057】
図7は、本発明のアタッチメントを土砂ダンプの荷台に取付けた実施例の概略図であり、同図(A)は荷台の外観概略図、同図(B)はアオリ板用パネルのゲート機構部31の概略図、同図(C)はアオリ板とアオリ板用パネルのパネル本体30L、30Rとの接続状態の断面図である。土砂ダンプの荷台は、内寸長さが6200mm、幅が2200mmであり、アタッチメント取付け前の既存の構成として、前方にプロテクタ10及び前側アオリ板1Fが設けられ、床板5の左右端部に高さ490mmの側アオリ板1L、1Rが立設され、さらにダンプの走行時に土砂が飛散しないように覆い被せるシート等を固定するための落下防止囲い体15が側アオリ板1L、1Rの上端において、長手方向に延びる取付軸16に回動可能に設けられている。土砂ダンプの後アオリ板(ゲート板)は
図7(A)では取り外されている。
【0058】
図7(A)に示すように、ダンプ荷台の床板5の左右端部に立設された左右の側アオリ板1L、1Rの後端において、同図(B)に示すアオリ板用パネルのゲート機構部31L、31Rが、後端部分のアオリ板1L、1R及びアオリ板のゲート機構(軸受部12、軸受取付部13)を覆って取付けられる。ゲート機構部31L、31Rは、高さ(軸受取付部33を除く)が1150mmであり、一部に開口が設けられた中空の箱状に構成され、既存のアオリ板1L、1Rの一部と既存の軸受部12及び軸受取付部13を覆う構造となっている。これによって、既存のゲート機構を取り外すことなく、アタッチメントを取付けることができ、土砂ダンプと深ダンプの変更が容易になる。ゲート機構部31L、31Rは、ゲート機構部31L、31Rの6か所の穴から、側アオリ板1L、1Rを貫通してボルトを挿入し、ナットで締めて固定されている。ゲート機構部31L、31Rの上部には軸受部32が設けられた軸受取付部33が取付けられ、軸を介して高さ1150mm、幅2200mmのゲート板用パネル4のヒンジ部43と連結することができる。
【0059】
また、左右の側アオリ板1L、1Rの上方には、アオリ板用パネル本体30L、30Rが取付けられている。パネル本体30L、30Rは、高さが660mmであり、同図(C)に示すように、側アオリ板1の上面とパネル本体30の下面とをボルト38とナット(図示せず)によって固定されている。さらに、アオリ板1とパネル本体30との接合面に積載物が入り込まないように補助板37が設けられている。また、パネル本体30は、接続板36によって、前方において前側アオリ板1F又はプロテクタ10と、後方においてゲート機構部31と接続されている。高さ660mmのパネル本体30L、30Rは、高さが490mmの既存の側アオリ板1L、1Rの上に取り付けられることによって、高さ1150mmの荷台の側壁を構成する。
【0060】
通常、土砂ダンプの荷台の左右側面には、ダンプの走行時に土砂が飛散しないように覆い被せるシート等を固定するための落下防止囲い体15が設けられている。かかる落下防止囲い体15については、作業時間を短縮するためにアタッチメントの取付けの際でも取付けたままとすることが好ましい。アオリ板用パネル本体30の取付け後、取付軸16を介して上向きに回転させてパネル本体30に沿うように係止してもよい。上側に係止された落下防止囲い体によって荷台にシートを掛けることもできる。
【0061】
以上説明したように、本アタッチメントによれば、簡単な取付け、取外し作業によって、土砂ダンプと深ダンプとを相互に変更可能であるので、各用途に対応するために一組のダンプを所有、維持する必要がない。また、土砂ダンプを、現状で台数が不足している深ダンプに転換することができ、需給バランスに応じて、再度深ダンプを土砂ダンプに変更することができる。さらに、本アタッチメントの普及により、ダンプの総台数を徐々に減らしてくことができれば、ドライバー不足の問題を軽減できる可能性がある。
【0062】
また、出発地又は目的地でアタッチメントを脱着できるので(構造等変更検査を要するが)、往路と復路とで別々の種類の積載物を運搬、輸送することができ、往路及び復路のいずれか一方で空荷となることがない。さらに、複数の目的地を経由して、種々の積載物を効率的に輸送するような経路を選択できる可能性がある。このため、輸送コスト、土木工事のコストを大幅に低減できる可能性がある。