(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852541
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】磁気抵抗センサーのための磁気バイアス構造
(51)【国際特許分類】
G11B 5/39 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
G11B5/39
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-224695(P2012-224695)
(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公開番号】特開2013-84338(P2013-84338A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】13/271,015
(32)【優先日】2011年10月11日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503116280
【氏名又は名称】エイチジーエスティーネザーランドビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100162330
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 幹規
(72)【発明者】
【氏名】淡河 紀宏
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩二
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 幸司
【審査官】
斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第7342752(US,B1)
【文献】
特開2010−262731(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/143370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/39
H01L 43/00−43/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサースタックと、
前記センサースタックに隣接して形成されたハード磁気バイアス構造と、
を備え
前記ハード磁気バイアス構造が、第1の下層と、前記第1の下層の上に形成された第2の下層と、前記第2の下層の上に形成された磁気材料とを備え、
前記第1の下層が、磁気シールドの上に形成され、前記磁気シールドと実質的に平行である第1の部分と、前記センサースタックの側面に隣接する第2の部分とを有し、前記第1の下層の前記第1の部分が連続膜として形成され、前記第2の部分が別個の島として形成される、磁気読み出しセンサー。
【請求項2】
前記第1の下層が0.25nm〜0.75nmの厚さを有する、請求項1に記載の磁気読み出しセンサー。
【請求項3】
前記第1の下層がNiTaを含む、請求項1に記載の磁気読み出しセンサー。
【請求項4】
前記第1の下層がNiTaを含み、0.25〜0.75nmの厚さを有する、請求項1に記載の磁気読み出しセンサー。
【請求項5】
前記第1の下層が、NiTa、CrMo、CoCrPt、Cr、NiFe、またはこれらの材料のうちの少なくとも1つを含有する合金を含む、請求項1に記載の磁気読み出しセンサー。
【請求項6】
前記第1の下層が、0.25nm〜0.75nmの厚さを有し、NiTa、CrMo、CoCrPt、Cr、NiFe、またはこれらの材料のうちの少なくとも1つを含有する合金を含む、請求項1に記載の磁気読み出しセンサー。
【請求項7】
前記第1の下層がNiTaを含み、前記第2の下層がCoMoを含む、請求項1に記載の磁気読み出しセンサー。
【請求項8】
前記第1の下層が、NiTa、CrMo、CoCrPt、Cr、NiFe、またはこれらの材料のうちの少なくとも1つを含有する合金を含み、前記第2の下層がCrMoを含む、請求項1に記載の磁気読み出しセンサー。
【請求項9】
前記磁気材料がCoPtを含む、請求項1に記載の磁気センサー。
【請求項10】
前記磁気材料がCoPtCrを含む、請求項1に記載の磁気センサー。
【請求項11】
前記センサースタックが磁化自由層を含み、前記ハード磁気バイアス構造の磁性層が、前記磁化自由層と実質的に平行の向きである前記センサースタックに隣接する磁気異方性を有する、請求項1に記載の磁気センサー。
【請求項12】
前記センサースタックが、磁気シールドの上に形成され、
前記センサースタックが、前記ハード磁気バイアス構造を、前記センサースタックおよび前記磁気シールドから分離させる電気絶縁層をさらに備える、請求項1に記載の磁気センサー。
【請求項13】
磁気データ記録システムであって、
磁気メディアと、
サスペンションアセンブリと、
前記サスペンションアセンブリに取り付けられた磁気読み出しヘッドと、
を備え、
前記磁気読み出しヘッドが、
センサースタックと、
前記センサースタックに隣接して形成されたハード磁気バイアス構造と、
を備え、
前記ハード磁気バイアス構造が、第1の下層と、第2の下層の上に形成された磁気材料とを備え、
前記第1の下層が、磁気シールドの上に形成され、前記磁気シールドと実質的に平行である第1の部分と、前記センサースタックの側面に隣接する第2の部分とを有し、前記第1の下層の前記第1の部分が連続膜として形成され、前記第2の部分が別個の島として形成される、磁気データ記録システム。
【請求項14】
前記第1の下層が0.25nm〜0.75nmの厚さを有する、請求項13に記載の磁気読み出しセンサー。
【請求項15】
前記第1の下層がNiTaを含む、請求項13に記載の磁気読み出しセンサー。
【請求項16】
前記第1の下層が、NiTa、CrMo、CoCrPt、Cr、NiFe、またはこれらの材料のうちの少なくとも1つを含有する合金を含む、請求項13に記載の磁気読み出しセンサー。
【請求項17】
前記センサースタックが磁化自由層を含み、前記ハード磁気バイアス構造の磁性層が、前記磁化自由層と実質的に平行の向きである前記センサースタックに隣接する磁気異方性を有する、請求項13に記載の磁気センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気データ記録に関し、特に、自由層に対するバイアス磁場を改善し、バルクハウゼンノイズを低減する磁気バイアス構造を有する磁気読み出しヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの心臓部は、磁気ディスクドライブと呼ばれるアセンブリである。磁気ディスクドライブは、回転型磁気ディスクと、回転型磁気ディスクの表面に隣接するサスペンションアームによって懸架される読み書きヘッドと、回転ディスク上にある選択した円形トラックの上方に読み書きヘッドを配置するためにサスペンションアームを揺動させるアクチュエータと、を備える。読み書きヘッドは、空気軸受面(ABS)を有するスライダに直結されている。サスペンションアームは、ディスクが回転していないと、スライダを付勢してディスクの表面と接触させるが、ディスクが回転すると、回転ディスクによって空気が渦流される。スライダが空気軸受に乗ると、回転ディスクに磁気インプレッションを書き込み、回転ディスクから磁気インプレッションを読み出すために読み書きヘッドが使用される。読み書きヘッドは、書き込みおよび読み出し機能を実装するために、コンピュータプログラムに従って動作する処理回路に接続されている。
【0003】
書き込みヘッドは、少なくとも1つのコイルと、書き込み極(write pole)と、1つもしくは複数の戻り極(return pole)と、を備えている。電流がコイルを貫流すると、生成された磁界により、磁束が書き込み極を貫流し、その結果、書き込み極の先端から書き込み磁場が放出される。この磁場は十分に強いために、隣接する磁気ディスクの一部分を局所的に磁化し、それによってデータビットを記録する。書き込み磁場はその後、磁気的に柔らかい磁気メディアの下層を通って書き込みヘッドの戻り極に戻る。
【0004】
巨大磁気抵抗(GMR)センサーやトンネル接合磁気抵抗(TMR)センサーなどの磁気抵抗センサーを用いて、磁気メディアから磁気信号を読み出すことができる。センサーは、非磁性導電層(センサーがGMRセンサーである場合)か、あるいは第1の強磁性層と第2の強磁性層との間に挟まれた薄型の非磁性電気絶縁障壁層(センサーがTMRセンサーである場合)を備えており、以降、それぞれ固定層(pinned layer)および自由層と言及する。電流が自由層、スペーサ層および固定層の平面に対して垂直に流れるように(平面に対して垂直な電流(CPP)動作モード)、磁気シールドがセンサースタックの上方および下方に位置付けられており、第1および第2の導線としての役割を果たすこともできる。固定層の磁化方向は、空気軸受面(ABS)に対して垂直に固定されており、自由層の磁化方向は、ABSに対して平行だが、外部磁場を受けて自由に回転する。固定層の磁性は、反強磁性層との交換結合によって固定されているのが典型的である。
【0005】
固定層および自由層の磁性が互いに平行のときに伝導電子の散乱が最小化され、固定層および自由層の磁性が逆平行のときに散乱が最大化される。読み出しモードでは、スピンバルブセンサーの抵抗が、回転ディスクからの磁場の大きさに対して概ね線形に変化する。検知電流がスピンバルブセンサーを通じて伝導されると、抵抗の変化によって潜在的な変化が生じ、再生信号として検出および処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
データ密度を最大化するために磁気抵抗センサーの小型化がこれまで以上に進むにつれて、自由層を付勢(biasing)することがこれまで以上に困難になる。自由層が小さくなるにつれて、自由層の磁化は生来的に不安定になり、バイアス構造が小さいほど、バイアス磁場は弱くなる。そのため、非常に小さなセンサーで自由層の安定性を維持するのに十分な強度のバイアス磁場を提供できる構造に対するニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、センサースタックと、センサースタックに隣接して形成されたハード磁気バイアス構造とを備える磁気読み出しセンサーを提供する。磁気バイアス構造は、その少なくとも一部分が別個の島として形成される第1の下層と、第1の下層の上に形成された第2の下層と、第2の下層の上に形成された磁気材料と、を備える。
【0008】
第1の下層は、最適なバイアス磁場を提供するための0.25〜0.75nmの厚さを有し得る。第1の下層は、NiTa、CrMo、CoCrPt、Cr、NiFe、またはこれらの材料のうちの少なくとも1つを含有する合金で構成されてよく、NiTaで構成されるのが最も好ましい。第2の下層は、CrMoで構成され得る。磁気材料は、CoPtまたはCoPtCrであり得る。
【0009】
センサースタックおよびバイアス構造は、磁気シールドの上に形成することができる。第1の下層は、完全に別個の材料の島として形成することができる。あるいは、第1の下層は、磁気シールドの上に、磁気シールドと実質的に平行に形成され、かつ連続層として形成されている第1の部分と、別個の島として形成されている、センサースタックに隣接して形成された第2の部分とで構成することができる。
【0010】
新たな磁気バイアス構造は、自由層への磁気バイアスを高め、バルクハウゼンノイズを低減する。新たな第1のシード層により、磁性層は、センサースタックに隣接する磁化自由層とでさえも実質的に平行のままである磁気異方性を有する。
【0011】
本発明のこれらおよび他の特徴ならびに利点は、好適な実施形態に関する以下の詳細な説明を図と併せて読めば明らかであろう。図中において、同様の参照符号は、全体を通じて同様の要素を示す。
【0012】
本発明の性質および利点、ならびに好適な使用態様を十分に理解するために、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照すべきである。これらの図面は、必ずしも原寸に比例していない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明が具現化され得るディスクドライブシステムの概略図である。
【
図2】磁気ヘッドの位置を示すスライダのABS図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる磁気抵抗の拡大ABS図である。
【
図4】
図3の磁気抵抗センサーで使用されるハードバイアス構造のABS図である。
【
図5】本発明の代替実施形態にかかるハードバイアス構造のABS図である。
【
図6】先行技術にかかるハードバイアス構造のABS図である。
【
図7】バイアス磁場と第1のシード層厚との間の関係を示すグラフである。
【
図8】本発明の一実施形態かかる磁気センサーを製造するための方法を示す、製造の種々の中間段階における磁気抵抗センサーの図である。
【
図9】本発明の一実施形態かかる磁気センサーを製造するための方法を示す、製造の種々の中間段階における磁気抵抗センサーの図である。
【
図10】本発明の一実施形態かかる磁気センサーを製造するための方法を示す、製造の種々の中間段階における磁気抵抗センサーの図である。
【
図11】本発明の一実施形態かかる磁気センサーを製造するための方法を示す、製造の種々の中間段階における磁気抵抗センサーの図である。
【
図12】本発明の一実施形態かかる磁気センサーを製造するための方法を示す、製造の種々の中間段階における磁気抵抗センサーの図である。
【
図13】本発明の一実施形態かかる磁気センサーを製造するための方法を示す、製造の種々の中間段階における磁気抵抗センサーの図である。
【
図14】本発明の一実施形態かかる磁気センサーを製造するための方法を示す、製造の種々の中間段階における磁気抵抗センサーの図である。
【
図15】本発明の一実施形態かかる磁気センサーを製造するための方法を示す、製造の種々の中間段階における磁気抵抗センサーの図である。
【
図16】本発明の一実施形態かかる磁気センサーを製造するための方法を示す、製造の種々の中間段階における磁気抵抗センサーの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、本発明を実施するために現時点で意図される最良の実施形態である。この説明は、本発明の一般原理を説明するためになされたものであり、本明細書で請求される発明の概念を制限することを意図するものではない。
【0015】
ここで
図1を参照すると、本発明を具現化するディスクドライブ100が示されている。
図1に示すとおり、少なくとも1つの回転型磁気ディスク112がスピンドル114で支持されており、ディスクドライブモーター118によって回転する。各ディスク上の磁気記録は、磁気ディスク112上の同心データトラック(図示せず)の環状パターンという形態である。
【0016】
少なくとも1つのスライダ113が磁気ディスク112の近くに位置付けられており、各スライダ113は、1つもしくは複数の磁気ヘッドアセンブリ121を支持する。磁気ディスクが回転すると、スライダ113がディスク表面122の上方を内外へと放射状に移動して、所望のデータが書き込まれる磁気ディスクの様々なトラックに磁気ヘッドアセンブリ121がアクセスできるようになる。各スライダ113は、サスペンション115によってアクチュエータアーム119に取り付けられている。サスペンション115は、ディスク表面122に対してスライダ113を付勢するわずかなバネ力を提供する。各アクチュエータアーム119は、アクチュエータ手段127に取り付けられている。
図1に示すアクチュエータ手段127は、ボイスコイルモーター(VCM)であってもよい。VCMは、一定の磁場内で移動可能なコイルを備え、コイルの移動方向および速度は、コントローラ129によって供給されるモーター電流信号によって制御される。
【0017】
ディスク記憶システムの動作中、磁気ディスク112の回転は、スライダ113とディスク表面122との間で、スライダに対して上方への力または揚力を働かせる空気軸受を生成する。この空気軸受は、したがって、通常動作中にサスペンション115のわずかなバネ力とのバランスを保ち、スライダ113を、小さく略一定の間隔でディスク表面から離し、わずかに上の位置で支持する。
【0018】
ディスク記憶システムの各種構成要素の動作は、アクセス制御信号および内部クロック信号などの制御ユニット129によって生成される制御信号によって制御される。制御ユニット129は、論理制御回路と、記憶手段と、マイクロプロセッサとを備えるのが典型的である。制御ユニット129は、制御信号を生成して、ライン123上の駆動モーター制御信号およびヘッド位置などの各種システム動作を制御し、ライン128上の制御信号を探す。ライン128上の制御信号は、スライダ113をディスク112上にある所望のデータトラックへと最適に動かし、位置付けるための所望の電流プロファイルを提供する。記録チャネル125を経て、読み書きヘッド121との間で書き込みおよび読み出し信号が通信される。
【0019】
図2を参照すると、スライダ113にある磁気ヘッド121の方向をさらに詳細に見ることができる。
図2はスライダ113のABS図であり、確認できるとおり、誘導型書き込みヘッドと読み出しセンサーとを備える磁気ヘッドがスライダの後端(trailing edge)に位置する。典型的な磁気ディスク記憶システムに関する上記説明および
図1の添付の具体例は、提示だけを目的とするものである。ディスク記憶システムが多数のディスクおよびアクチュエータを備え得ること、および各アクチュエータがいくつかのスライダを支持し得ることは明らかなはずである。
【0020】
図3は、第1および第2の磁気シールド304、306の間に挟まれているセンサースタック302を有する磁気読み出しヘッド300を示す。磁気シールド304、306は、NiFeなど導電性の磁気材料で構成されており、センサースタック302に検知電流を供給するとともに磁気シールドとしても機能する導線として機能することができる。センサースタック302は、磁化固定層構造308と、磁化自由層310と、それらの間に挟まれた非磁性障壁層またはスペーサ層312とを含むことができる。センサースタック302は、その最下部にシード層326を含んでもよく、シード層326は、上記の堆積層に所望の粒状構造を確実に形成する目的で設けることができる。また、センサースタック302は、製造時に下位層を損傷から保護するために、その最上部にキャップ層328を含んでもよい。キャップ層328は、例えば、RuまたはRu/Ta/Ruであり得る。
【0021】
固定層構造は、Ruなどの非磁性逆平行結合層318をまたがって逆平行結合されている第1および第2の磁性層314、316を備えてもよい。第1の磁性層314は、反強磁性材料の層(AFM層)320によって交換結合することができる。この層は、IrMnまたはPtMnなどの材料で構成され得る。この交換結合は、第1の磁性層314の磁性を、矢印の頭の記号322が示す、ABSに対して垂直な第1の方向に強く固定する。磁性層314、316間の逆方向結合は、矢印の尾の記号324が示す、第1の方向と逆平行であり、かつABSに対して垂直な第2の方向に第2の磁性層316の磁性を固定する。
【0022】
自由層310は、矢印330によって示す、ABS図と概ね平行な方向に付勢(bias)される磁性を有する。磁性330はこの方向で付勢されるものの、例えば磁気メディアからの外部磁場に反応して自由に移動する。
【0023】
磁性330の付勢は、ハード磁気バイアス層332、334からのバイアス磁場によって成し遂げられる。これらの磁気バイアス層332、334は、CoPtまたはCoPtCrなどの高保磁力磁気材料から形成される永久磁石である。バイアス層332、334は、アルミナ336、338などの非磁性電気絶縁層の薄層により、センサースタック302から、および少なくとも最下部シールド304から分離される。
【0024】
上記のとおり、センサーがこれまで以上に小型化されるにつれて、自由層310の磁性330を付勢することがこれまで以上に困難になる。
図4は、本発明の一実施形態にかかる、自由層310に付勢するためにバイアス磁場を増大させるハード磁気バイアス構造の拡大図を示す。
図4には1つのバイアス層しか示されていないが、これは一例であり、同様の構造がセンサーの両側に形成できる可能性があることを理解すべきである。
【0025】
図4に示すとおり、ハード磁気バイアス層332は、第1および第2の下層402、404の上に形成される。第1の下層402が非常に薄く形成されるのに対し、第2の下層404はそれよりも実質的に厚い。第1の下層402の厚さは低減され、第1の下層が、第2の下層の増厚箇所の核として機能する別個の島から成る構造を有するように、いくつかの原子層になる。つまり、センサースタック302側の第2の下層404で非常に薄い領域が作られるということであり、ハード磁性層332の磁化容易軸(矢印406で明示)は、自由層310と実質的に平行な方向を向いたままである。
図4では、センサースタック302の自由層310が例示目的で示されているが、センサースタック302(
図3を参照して説明済み)の他の層については、分かりやすくするために省略されている。容易軸の向きが自由層310と概ね平行なので、自由層の付勢を維持するに当たってのバイアス磁場の影響は大きく増大する。
【0026】
これは、バイアス構造における先行技術と比較することができ、その例が
図6に示されている。
図6は、標準的な下層602の上に形成されたハード磁気バイアス層604を示す。先行技術による構造では、ハードバイアス層604の磁化容易軸が、矢印606が示す絶縁膜602の経路をたどる。つまり、磁化容易軸606は、自由層310(
図3)とはまったく平行ではなく、自由層の平面とほぼ直角である。容易軸のこの向きにより、非常に小さなセンサーサイズにおける自由層の付勢の安定性が実質的に下がり、バルクハウゼンノイズが増大する。
【0027】
図4を再度参照すると、本発明はこの課題を克服し、センサースタック302に隣接する箇所であっても、容易軸406が要望どおり自由層310と平行に整列配置された状態を保つ構造を提供する。第1の下層402は、厚さ0.25nm〜0.75nmであるのが好ましく、NiTa、CrMo、CoCrPt、Cr、NiFeまたはこれらの材料のうちの少なくとも1つを含有する合金のいずれかで構成され得る。第2の下層は、CrMoなどの材料で構成され得る。ハードバイアス層332の材料は、CoPtまたはCoPtCrなどであり得る。
【0028】
図7は、エルステッドで示したハードバイアス磁場と第1のシード層の厚さとの間の関係を示す。
図7に示すとおり、第1の下層が厚さ0.25〜0.75へと薄層化されたときに、最大バイアス磁場に達する(データポイント702によって明示)。ただし、第1の下層の厚さがゼロ(すなわち第1の下層が存在しない)まで低減されると、バイアス磁場は大きく低下する(データポイント704によって明示)。そのため、第1の下層402(
図4)の厚さは、0.75nmと0.25nmとの間であるのが好ましい。また
図4に示すとおり、第1の下層402は、完全な膜ではなく、別個の材料の島として形成されている。
【0029】
ここで
図5を参照すると、本発明の代替実施形態では、第1の下層502は、シールド304上方の水平領域に連続層502(a)として形成することができるが、センサースタック302の側面に隣接した垂直に近い領域には、別個の島502(b)として形成される。別個の島構造502(b)がちょうどセンサーの側面に位置することから同様の効果が得られ、異方性504が所望に応じて自由層310と平行の向きを保つのに対し、追加下層502(a)は、上記堆積層404、332で所望の粒成長を促進する必要がある場合に利用できる。
【0030】
図8〜
図16は、本発明の一実施形態にかかる、磁気センサーを製造するための方法を示す。特に
図8を参照すると、磁気シールド702が形成されている。磁気シールドは、NiFeなどの材料で構成され得る。その後、一連のセンサー層704がシールドの上に堆積する。センサー層704は、
図3を参照しながら先ほど説明したセンサースタック302の層を含み得るが、他の何らかのセンサー構造も可能であり得る。ダイヤモンド状炭素(DLC)など、化学機械研磨に対して耐性のある材料705の層(第1のCMP停止層)が、センサー層704の上に堆積することができる。センサー層704およびCMP停止層705の上には、マスク構造706が形成される。マスクは、リソグラフィーでパターン形成されたレジスト材料を含んでよく、底部反射防止コーティング材(BARC:bottom anti-reflective coating)および/またはハードマスク層および画像転写層など他の材料を含んでもよい。マスク構造706は、センサー幅(トラック幅)を画定するように構成されている幅を有する。
【0031】
図9を参照すると、センサー幅を確定するために、マスク構造706によって保護されていないCMP停止層705およびセンサー層704の複数部分を取り除くイオンミリングが実行される。その後、電気絶縁材料の薄層1002が堆積される。絶縁層1002は、アルミナ(Al
2O
3)であるのが好ましく、原子層堆積法などの共形堆積プロセス(conformal deposition process)によって堆積されるのが好ましい。
【0032】
次に
図11を参照すると、非常に薄い第1の下層1102が堆積されている。第1の下層は、NiTa、CrMo、CoCrPt、Cr、NiFeであってよく、NiTaであるのが最も好ましい。上記のとおり、第1の下層は、0.25nm〜0.75nmの厚さまで堆積され、
図11に示す別個の島を形成するように堆積される。ただし、第1の下層1102は、(
図5にて先述のとおり、)シールド702の上の連続層として、かつセンサースタック704の側面で一連の別個の島として堆積できる可能性がある。第1の下層1102が堆積された後、第1の下層1102の表面は、Ar+O
2ガスなどで酸化させることができる。
【0033】
図12を参照すると、第2の下層1202が第1の下層1102の上に堆積される。第2の下層は、CrMoで構成され得る。
図13を参照すると、次にハード磁気バイアス材料1302の層が堆積され、続いて保護層1304が堆積される。ハード磁気材料1302は、CoPtまたはCoPtCrなどの材料であってよく、保護層は、CrまたはTaなどの材料であってよく、この層は、製造時に下位のハード磁気材料1302を保護することができる。
【0034】
化学機械研磨(CMP)が実行され、
図14に示すような構造になる。これが、マスク層706(
図13)を取り除くためのしわ焼成(wrinkle bake)および/または化学リフトオフ(chemical liftoff)などの処理を伴ってもよい。その後、残留するCMP停止層705をセンサー層704の最上部から取り除くために反応性イオンエッチングを実行してよく、
図15に示すような構造が残る。最後に、
図16を参照すると、電気メッキなどにより、NiFeなどの材料から構成される上側磁気シールド1602を形成することができる。
【0035】
以上、各種実施形態を記載してきたが、それらは例示目的でのみ提示されており、限定目的でないという点は理解すべきである。本発明の範囲内に属する他の実施形態が当業者にとって明らかになることもある。そのため、本発明の幅および範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても制限されるべきでなく、以下の請求項とそれらの均等物とに従ってのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0036】
100 ディスクドライブ
112 磁気ディスク
113 スライダ
114 スピンドル
115 サスペンション
118 ディスクドライブモーター
119 アクチュエータアーム
121 磁気ヘッドアセンブリ
122 ディスク表面
123 ライン
125 記録チャネル
127 アクチュエータ手段
128 ライン
129 制御ユニット
300 磁気読み出しヘッド
302 センサースタック
304 第1の磁気シールド
306 第2の磁気シールド
308 磁化固定層構造
310 磁化自由層
312 スペーサ層
314 第1の磁性層
316 第2の磁性層
318 非磁性逆平行結合層
320 反強磁性材料の層
322 矢印の頭
324 矢印の尾
326 シード層
328 キャップ層
332 ハード磁気バイアス層
334 ハード磁気バイアス層
402 第1の下層
404 第2の下層
406 磁化容易軸
502 第1の下層
502(a) 連続層
502(b) 別個の島
602 下層絶縁膜
604 ハード磁気バイアス層
606 磁化容易軸
702 磁気シールド
704 センサー層
705 第1のCMP停止層
706 マスク層
1002 絶縁層
1102 第1の下層
1202 第2の下層
1302 ハード磁気材料
1602 上側磁気シールド