(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記満充電モードにおいて前記定電圧充電の開始後、前記制御部は、前記蓄電情報と第9閾値とに基づいて発電を停止するか否かを判断する、請求項10に記載の燃料電池システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1では通常運転時における燃料電池の発電効率を向上できるが、燃料電池の起動時や二次電池の蓄電量が大きいときにおける問題を解決するものではない。すなわち、燃料電池の起動時や二次電池の蓄電量が大きいときには、燃料電池の電圧が高い状態が続き、通常運転時よりも電極に酸化物が形成され易く電極が劣化し易いという問題があるが、特許文献1は、そのような弊害を解決するものではない。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、通常運転時における燃料電池の発電効率を向上できるとともに、起動時および二次電池の蓄電量が大きいときにおける電極の劣化を抑制できる、燃料電池システムおよびそれを備える輸送機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一の局面によれば、アノードとカソードとを有する燃料電池と、燃料電池に電気的に接続される二次電池と、酸化剤をカソードへ供給するための酸化剤供給部と、カソードへ酸化剤を供給する酸化剤供給部の供給動作を制御する制御部とを備え、制御部は、起動モードおよび満充電モードのそれぞれにおける酸化剤欠乏処理の回数が、通常運転モードにおける酸化剤欠乏処理の回数よりも多くなるように、酸化剤供給部の供給動作を制御する、燃料電池システムが提供される。
【0009】
この発明では、通常運転モードにおいて酸化剤欠乏処理を実行することによって、燃料電池の出力を回復させ、通常運転時における燃料電池の発電効率を向上できる。また、起動時および二次電池の蓄電量が大きいときには電極に酸化物が形成され易く電極が劣化し易いが、起動モードおよび満充電モードにおいて通常運転モードよりも酸化剤欠乏処理の回数を多くすることによって、燃料電池の電圧を低下させ酸化物を還元する。これによって、起動時および二次電池の蓄電量が大きいときにおける電極の劣化を抑制でき、電極の耐久性を向上できる。さらに、このように起動時の電極の劣化を抑制することによって、その後の通常運転モードに移行する際の燃料電池の出力を高く維持することができる。
【0010】
好ましくは、燃料電池システムは、燃料電池の起動時間を取得する第1時間取得部をさらに備え、起動モードにおいて、制御部は、起動時間と第1閾値とに基づいて酸化剤欠乏処理を実行するか否かを判断する。起動モードでは、燃料電池の電圧が高い状態が継続すると電極に酸化物が形成され電極が劣化するおそれがある。したがって、燃料電池の起動時間が第1閾値に達すると酸化剤欠乏処理を実行することによって、燃料電池の電圧を低下させて酸化物を還元させ、電極の劣化を抑制できる。
【0011】
また好ましくは、燃料電池システムは、燃料電池の出力に関する出力情報を取得する出力取得部をさらに備え、起動モードにおいて、制御部は、出力情報と第2閾値とに基づいて酸化剤欠乏処理を実行するか否かを判断する。起動モードでは、起動開始からの時間の経過とともに燃料電池の出力が上昇し、電極に酸化物が形成され電極が劣化するおそれがある。したがって、燃料電池の出力に関する出力情報が第2閾値に達すると酸化剤欠乏処理を実行することによって、燃料電池の電圧を低下させて酸化物を還元させ、電極の劣化を抑制できる。
【0012】
さらに好ましくは、燃料電池システムは、燃料電池の温度を取得する温度取得部をさらに備え、起動モードにおいて、制御部は、燃料電池の温度と第3閾値とに基づいて酸化剤欠乏処理を実行するか否かを判断する。起動モードでは、時間の経過とともに燃料電池の温度が上昇し、電極に酸化物が形成され電極が劣化するおそれがある。したがって、燃料電池の温度が第3閾値に達すると酸化剤欠乏処理を実行することによって、燃料電池の電圧を低下させて酸化物を還元させ、電極の劣化を抑制できる。
【0013】
好ましくは、燃料電池システムは、燃料電池の電圧に関する電圧情報を取得する電圧取得部をさらに備え、制御部は、電圧情報と第4閾値とに基づいて酸化剤欠乏処理を終了するか否かを判断する。酸化剤欠乏処理を実行すれば、燃料電池の電圧が低下する。したがって、燃料電池の電圧に関する電圧情報が第4閾値まで低下すれば、酸化剤欠乏処理が効果的に行われたと判断し、酸化剤欠乏処理を終了する。これにより酸化剤欠乏処理を効果的に実行することができる。
【0014】
また好ましくは、燃料電池システムは、酸化剤欠乏処理の継続時間を取得する第2時間取得部をさらに備え、制御部は、酸化剤欠乏処理の継続時間と第5閾値とに基づいて酸化剤欠乏処理を終了するか否かを判断する。この場合、酸化剤欠乏処理が効果的に行われたと判断できる時間を第5閾値として設定しておく。そして、酸化剤欠乏処理の継続時間が第5閾値に達すれば、酸化剤欠乏処理が効果的に行われたと判断し、酸化剤欠乏処理を終了する。これにより酸化剤欠乏処理を効果的に実行することができる。
【0015】
さらに好ましくは、燃料電池システムは、燃料電池の出力に関する出力情報を取得する出力取得部をさらに備え、起動モードにおいて、制御部は、出力情報と第6閾値とに基づいて通常運転モードに移行するか否かを判断する。起動モードでは、時間の経過とともに燃料電池の出力が上昇し、やがて燃料電池の通常運転が可能な状態となる。したがって、燃料電池の出力に関する出力情報が第6閾値に達すれば、燃料電池の通常運転が可能な状態になったと判断し、通常運転モードに移行する。これにより円滑に通常運転モードに移行することができる。
【0016】
好ましくは、燃料電池システムは、燃料電池の温度を取得する温度取得部をさらに備え、起動モードにおいて、制御部は、燃料電池の温度と第7閾値とに基づいて通常運転モードに移行するか否かを判断する。起動モードでは、時間の経過とともに燃料電池の温度が上昇し、やがて燃料電池の通常運転が可能な状態となる。したがって、燃料電池の温度が第7閾値に達すれば、燃料電池の通常運転が可能な状態になったと判断し、通常運転モードに移行する。これにより円滑に通常運転モードに移行することができる。
【0017】
また好ましくは、燃料電池システムは、燃料電池の通常運転時間を取得する第3時間取得部と、燃料電池に関する出力保持率を算出する保持率算出部とをさらに備え、通常運転モードにおいて、制御部は、通常運転時間と出力保持率とに基づいて酸化剤欠乏処理を実行するか否かを判断する。通常運転モードでは、時間の経過とともに徐々に燃料電池が劣化し燃料電池の出力が低下していく。したがって、燃料電池の出力低下が許容範囲を超えている(燃料電池の劣化が予想以上に早い)場合に酸化剤欠乏処理を必要とする。当該燃料電池システムは、燃料電池の出力低下量に相関する出力保持率を算出するとともに、燃料電池の通常運転時間を取得し、出力保持率と通常運転時間とに基づいて酸化剤欠乏処理を実行するか否かを判断する。すなわち、通常運転モードにおいて、時間の経過とともに低下する燃料電池の出力が、許容範囲を超えて低下しているか否かによって、酸化剤欠乏処理の実行の要否を判断する。燃料電池の出力が許容範囲を超えて低下していれば、酸化剤欠乏処理が必要と判断する。これによって、通常運転モードにおいて、燃料電池の劣化状態を把握でき、必要な場合にのみ酸化剤欠乏処理を実行できる。その結果、燃料電池の劣化を抑制して燃料電池の出力を回復させ、燃料電池の発電効率を確実に向上できる。
【0018】
さらに好ましくは、燃料電池システムは、二次電池の蓄電量に関する蓄電情報を検出する蓄電検出部をさらに備え、通常運転モードから満充電モードに移行した後、制御部は、蓄電情報と第8閾値とに基づいて通常運転モードに戻るか二次電池の定電圧充電を開始するかを判断する。この場合、満充電モードにおいて、二次電池の蓄電情報が第8閾値未満であれば通常運転モードに戻り、一方、二次電池の蓄電情報が第8閾値に達すれば二次電池の定電圧充電を開始する。このように定電圧充電を行うことによって二次電池の過充電を防ぐことができる。
【0019】
好ましくは、満充電モードにおいて定電圧充電の開始後、制御部は、蓄電情報と第9閾値とに基づいて発電を停止するか否かを判断する。この場合、満充電モードにおいて定電圧充電の開始後、二次電池の蓄電情報が第9閾値に達すれば、二次電池を満充電できたと判断し、燃料電池の発電を停止させる。これにより二次電池の過充電を防ぐことができる。
【0020】
また好ましくは、燃料電池システムは、二次電池の定電圧充電時間を取得する第4時間取得部をさらに備え、満充電モードにおいて定電圧充電の開始後、制御部は、定電圧充電時間と第10閾値とに基づいて発電を停止するか否かを判断する。この場合、定電圧充電によって二次電池を満充電できたと判断できる時間を第10閾値として設定しておく。そして、満充電モードにおいて、定電圧充電時間が第10閾値に達すれば、二次電池を満充電できたと判断し、燃料電池の発電を停止させる。これにより二次電池の過充電を防ぐことができる。
【0021】
さらに好ましくは、燃料電池システムは、二次電池の定電圧充電時間を取得する第4時間取得部をさらに備え、満充電モードにおいて定電圧充電の開始後、制御部は、定電圧充電時間と第11閾値とに基づいて酸化剤欠乏処理を実行するか否かを判断する。満充電モードでは、定電圧充電時間の経過とともに徐々に燃料電池が劣化し燃料電池の出力が低下していく。したがって、燃料電池の出力が低下して酸化剤欠乏処理が必要になると考えられる時間を第11閾値として設定しておく。そして、満充電モードにおいて、定電圧充電時間が第11閾値に達すれば、酸化剤欠乏処理が必要と判断し、酸化剤欠乏処理を実行する。これによって、燃料電池の劣化を抑制して燃料電池の出力を回復させ、燃料電池の発電効率を向上できる。
【0022】
燃料電池システムを輸送機器に用いる場合には、燃料電池システムを長い時間継続動作できかつ燃料電池の寿命が長いことが望ましい。そのためには燃料電池の発電効率を向上させかつ燃料電池の電極の劣化を抑制する必要がある。この発明では、通常運転時における燃料電池の発電効率を向上できるとともに、起動時および二次電池の蓄電量が大きいときにおける電極の劣化を抑制でき、燃料電池システムを長い時間継続動作できかつ燃料電池の寿命を長くできる。したがって、この発明は、輸送機器に好適に用いられる。
【0023】
この発明では、第6閾値は第2閾値より大きく、第7閾値は第3閾値より大きく、第9閾値は第8閾値より大きく、第10閾値は第11閾値より大きい。
【0024】
この発明において、「酸化剤欠乏処理」とは、一時的にカソードへの酸化剤の供給を停止するあるいは一時的にカソードへの酸化剤の供給量をそれまでの供給量よりも減少させる処理をいう。
【0025】
「起動モード」とは、燃料電池が定常的に発電可能となるまでの燃料電池システムの駆動状態をいう。
【0026】
「通常運転モード」とは、燃料電池が定常的に発電可能な燃料電池システムの駆動状態をいう。
【0027】
「満充電モード」とは、二次電池を満充電するための燃料電池システムの駆動状態をいう。
【0028】
「燃料電池に関する出力保持率」とは、通常運転開始時の燃料電池に関する出力に対する、現時点での燃料電池に関する出力の割合をいう。
【0029】
この発明の上述の目的およびその他の目的、特徴、局面および利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1を参照して、この発明の一実施形態の燃料電池システム10は、メタノール(メタノール水溶液)を改質せずにダイレクトに電気エネルギの生成(発電)に利用する直接メタノール型燃料電池システムである。
【0032】
燃料電池システム10は、燃料電池セルスタック(以下、単にセルスタックという)12を含む。セルスタック12は、それぞれメタノールに基づく水素イオンと酸素(酸化剤)との電気化学反応によって発電できる複数の燃料電池(燃料電池セル)14を含む。これらの燃料電池14は積層(スタック)されかつ直列接続されている。各燃料電池14は、固体高分子膜からなる電解質膜16と、電解質膜16を挟んで互いに対向するアノード(燃料極)18およびカソード(空気極)20とを含む。アノード18およびカソード20はそれぞれ、電解質膜16側に白金触媒層(図示せず)を有する。隣り合う燃料電池14間にはセパレータ22が挟まれている。
【0033】
また、燃料電池システム10は、燃料タンク24を含む。燃料タンク24は、セルスタック12の電気化学反応の燃料となる高濃度(好ましくは、メタノールを約50wt%含む)のメタノール燃料(高濃度メタノール水溶液)を収容している。燃料タンク24にはレベルセンサ26が装着されている。レベルセンサ26は、たとえばフロートセンサであり、燃料タンク24内の液面の高さ(液位)を検出する。
【0034】
燃料タンク24は、パイプP1を介して水溶液タンク28に接続されている。水溶液タンク28は、燃料タンク24からのメタノール燃料をセルスタック12の電気化学反応に適した濃度(好ましくは、メタノールを約3wt%含む)に希釈したメタノール水溶液を収容している。水溶液タンク28にはレベルセンサ30が装着されている。レベルセンサ28は、たとえばフロートセンサであり、水溶液タンク28内の液面の高さ(液位)を検出する。パイプP1には燃料ポンプ32が介挿されている。燃料ポンプ32を駆動することによって、燃料タンク24から水溶液タンク28へメタノール燃料が供給される。
【0035】
水溶液タンク28は、パイプP2を介してセルスタック12のアノード入口I1に接続されている。パイプP2には、上流側から順に、水溶液ポンプ34および濃度センサ36が介挿されている。水溶液ポンプ34を駆動することによって、水溶液タンク28からセルスタック12へメタノール水溶液が供給される。濃度センサ36としては、たとえば超音波センサが用いられる。超音波センサは、メタノール水溶液の濃度(メタノール水溶液におけるメタノールの割合)に応じて変化する超音波の伝播時間(伝播速度)を電圧値として検出する。コントローラ52(後述)は、その電圧値に基づいてメタノール水溶液の濃度を検出する。セルスタック12のアノード入口I1付近には、セルスタック温度センサ38が設けられている。セルスタック温度センサ38は、メタノール水溶液の温度を検出し、それをセルスタック12ひいては燃料電池14の温度とみなす。
【0036】
セルスタック12のアノード出口I2は、パイプP3を介してラジエータユニット40の水溶液用ラジエータ40aが接続されている。ラジエータユニット40は、水溶液用のラジエータ40aと気液分離用のラジエータ40bとを一体的に設けたものである。ラジエータ40aは、パイプP4を介して水溶液タンク28に接続されている。
【0037】
上述したパイプP1〜P4は主として燃料の流路となる。
【0038】
セルスタック12のカソード入口I3には、パイプP5が接続されており、パイプP5には、エアポンプ42が介挿されている。エアポンプ42を駆動させることによって、外部からセルスタック12に酸素(酸化剤)を含む気体としての空気が供給される。パイプP5近傍には、外気温を検出する外気温センサ44が設けられている。
【0039】
セルスタック12のカソード出口I4には、パイプP6を介して気液分離用のラジエータ40bが接続されている。ラジエータ40bは、パイプP7を介して水タンク46に接続されている。水タンク46は、水溶液タンク28に供給すべき水を収容している。水タンク46にはレベルセンサ48が装着されている。レベルセンサ48は、たとえばフロートセンサであり、水タンク46内の液面の高さ(液位)を検出する。
【0040】
水タンク46にはパイプ(排気管)P8が設けられている。パイプP8は水タンク46の排気口に設けられ、セルスタック12からの排気を外部に排出する。
【0041】
上述したパイプP5〜P8は主として酸化剤の流路となる。
【0042】
水タンク46は、パイプP9を介して水溶液タンク28に接続されている。パイプP9には、水ポンプ50が介挿されている。水ポンプ50を駆動させることによって、水タンク46から水溶液タンク28へ水が供給される。
【0043】
上述したパイプP9は水の流路となる。
【0044】
ついで、
図2を参照して、燃料電池システム10の電気的構成について説明する。
燃料電池システム10はコントローラ52を含む。コントローラ52は、CPU54、クロック回路56、メモリ58、電圧検出回路60、電流検出回路62、電源制御回路64および電源回路66を含む。
【0045】
CPU54は、必要な演算を行い燃料電池システム10の動作を制御する。クロック回路56は、CPU54にクロック信号を与える。メモリ58は、たとえばEEPROMからなり、燃料電池システム10の動作を制御するためのプログラムやデータおよび演算データ等を格納する。電圧検出回路60は、セルスタック12の電圧を検出する。電流検出回路62は、電気回路68を流れる電流を検出する。電源制御回路64は、セルスタック12の出力(電圧と電流)を制御する。電源回路66は、電気回路68に所定の電圧を供給する。
【0046】
コントローラ52のCPU54には、メインスイッチ70および入力部72からの入力信号が入力される。メインスイッチ70がオンされることによってコントローラ52に運転開始指示が与えられ、メインスイッチ70がオフされることによってコントローラ52に運転停止指示が与えられる。セルスタック12の発電動作中にメインスイッチ70がオフされた場合は、コントローラ52に運転停止指示および発電停止指示が与えられる。入力部72によって、各種指示や各種情報入力が行われる。
【0047】
また、CPU54には、レベルセンサ26,30,48、濃度センサ36、セルスタック温度センサ38および外気温センサ44からの検出信号が入力される。さらに、CPU54には、電圧検出回路60からの電圧検出値、および電流検出回路62からの電流検出値が入力される。
【0048】
CPU54によって、燃料ポンプ32、水溶液ポンプ34、エアポンプ42、水ポンプ50およびラジエータファン74等の補機類が制御される。ラジエータファン74は、ラジエータ40の近傍に設けられ、ラジエータ40を冷却する。
【0049】
また、ユーザに各種情報を報知するための表示部76がCPU54によって制御される。さらに、セルスタック12の出力(電圧と電流)を制御する電源制御回路64がCPU54によって制御される。
【0050】
また、電気回路68には、負荷78、駆動ユニット80および二次電池82が接続されている。負荷78はたとえば電動モータである。駆動ユニット80は、負荷78および二次電池82に電気的に接続されている。駆動ユニット80は、負荷78の駆動を制御するためのコントローラ84、および二次電池82の蓄電量を検出する蓄電量検出器86を含む。二次電池82は、セルスタック12の出力を補完するものであり、セルスタック12からの電力によって充電され、その放電によって負荷78や補機類等に電力を供給する。
【0051】
CPU54には、インターフェイス回路88を介して蓄電量検出器86からの蓄電量検出値が入力される。CPU54は、入力された蓄電量検出値と二次電池82の容量とを用いて二次電池82の蓄電率を算出する。また、CPU54は、電圧検出回路60からの電圧検出値と電流検出回路62からの電流検出値とに基づいて、セルスタック12の出力を算出する。そして、CPU54は、算出されたセルスタック12の出力とメモリ58に記憶された出力とに基づいて出力保持率を算出する。
【0052】
記憶手段であるメモリ58には、
図3〜
図6の動作を実行するためのプログラム、閾値、各種演算値および各種検出値等が格納される。また、メモリ58には、
図7に示すような、燃料電池システム10の通常運転時間と出力保持率と酸化剤欠乏処理の要否との関係を示すテーブルデータが格納されている。
【0053】
この実施形態では、酸化剤供給部はエアポンプ42を含む。制御部はCPU54を含む。CPU54およびクロック回路56が、第1〜第4時間取得部に相当する。セルスタック温度センサ38が温度取得部に相当する。電圧検出回路60が電圧取得部に相当する。出力取得部は、CPU54、電圧検出回路60および電流検出回路62を含む。保持率算出部は、CPU54、メモリ58、電圧検出回路60および電流検出回路62を含む。蓄電検出部は、CPU54および蓄電量検出器86を含む。
【0054】
ついで、
図3および
図4を参照して、燃料電池システム10の起動モードの動作の一例について説明する。
たとえば、メインスイッチ70がオンされると燃料電池システム10が起動される。
【0055】
その後、CPU54が二次電池82の蓄電率が所定値(好ましくは50%)未満であることを検出すれば、セルスタック12ひいては燃料電池14の発電が開始される。このとき、CPU54が、燃料ポンプ32を駆動させ(ステップS1)、水溶液ポンプ34を駆動させ(ステップS3)、エアポンプ42を駆動させ(ステップS5)、電源制御回路64によって負荷78を接続させる(ステップS7)。そして、CPU54によって燃料電池システム10の起動時間の計測を開始し、電圧検出回路60によってセルスタック12の電圧の検出を開始し、CPU54によってセルスタック12の出力の検出を開始し、セルスタック温度センサ38によってセルスタック12の温度の検出を開始する(ステップS9)。
【0056】
CPU54は、燃料電池システム10の起動時間が第1閾値(好ましくは1分)以上か否かを判断する(ステップS11)。燃料電池システム10の起動時間が第1閾値以上であれば、ステップS13へ進み、一方、燃料電池システム10の起動時間が第1閾値未満であれば、セルスタック12の出力が第2閾値(好ましくは300W)以上か否かを判断する(ステップS15)。ステップS15において、セルスタック12の出力が第2閾値以上であれば、ステップS13へ進み、一方、セルスタック12の出力が第2閾値未満であれば、セルスタック12の温度が第3閾値(好ましくは20℃)以上か否かを判断する(ステップS17)。ステップS17において、セルスタック12の温度が第3閾値以上であれば、ステップS13へ進み、一方、セルスタック12の温度が第3閾値未満であれば、ステップS11へ戻る。
【0057】
ステップS13において、エアポンプ42が停止されて酸化剤欠乏処理が開始されると、CPU54によって酸化剤欠乏処理の継続時間の計測が開始され(ステップS19)、燃料ポンプ32が停止される(ステップS21)。
【0058】
そして、CPU54は、セルスタック12の電圧が第4閾値(好ましくは5V)以下か否かを判断する(ステップS23)。これによって、エアポンプ42が実際に停止しているか否かを認識することができる。セルスタック12の電圧が第4閾値より大きければ待機し、一方、セルスタック12の電圧が第4閾値以下であればステップS25へ進み、CPU54は、酸化剤欠乏処理の継続時間が第5閾値(好ましくは10秒)以上か否かを判断する。酸化剤欠乏処理の継続時間が第5閾値未満であれば待機し、一方、酸化剤欠乏処理の実行時間が第5閾値以上であれば、エアポンプ42の駆動を再開して酸化剤欠乏処理を終了し(ステップS27)、燃料ポンプ32の駆動を再開し(ステップS29)、酸化剤欠乏処理の実行回数A、すなわち酸化剤欠乏処理区間の回数をカウントする(ステップS31)。
【0059】
その後、CPU54は、セルスタック12の出力が第6閾値(好ましくは500W)以上か否かを判断する(ステップS33)。セルスタック12の出力が第6閾値未満であれば、セルスタック12の温度が第7閾値(好ましくは65℃)以上か否かを判断する(ステップS35)。セルスタック12の温度が第7閾値未満であれば、第1閾値、第2閾値および第3を所定値分インクリメントし(ステップS37)、ステップS11に戻る。好ましくは、第1閾値は1分、第2閾値は50W、第3閾値は5℃、それぞれインクリメントされる。
【0060】
一方、ステップS33においてセルスタック12の出力が第6閾値以上であるか、ステップS35においてセルスタック12の温度が第7閾値以上であれば、ラジエータファン74を駆動し(ステップS39)、その時点でのセルスタック12の出力をメモリ58に記録して(ステップS41)、起動モードの動作を終了し、通常運転モードの動作に移行する。起動モードの実行時間は、たとえば10分程度である。
【0061】
つぎに、
図5を参照して、燃料電池システム10の通常運転モードの動作の一例について説明する。
まず、CPU54によって、燃料電池システム10の通常運転時間(発電積算時間)の計測が開始され、出力保持率の算出が開始され、二次電池82の蓄電率の算出が開始される(ステップS51)。この実施形態において、「出力保持率」とは、通常運転開始時のセルスタック12の出力に対する、現時点でのセルスタック12の出力の割合をいう。具体的には、
図4のステップS41においてメモリ58に記憶されたセルスタック12の出力に対する、現時点でのセルスタック12の出力の割合をいう。
【0062】
そして、CPU54は、通常運転モードでの酸化剤欠乏処理の実行回数Bに1を加えた値が、起動モードでの酸化剤欠乏処理の実行回数A以上である(B+1≧A)か否かを判断し(ステップS53)、B+1≧Aでなければ、通常運転時間および出力保持率に基づいて酸化剤欠乏処理の要否を判断する(ステップS55)。このとき、
図7に示す関係を有するテーブルデータを参照して、酸化剤欠乏処理の要否が判断される。
【0063】
ステップS55において酸化剤欠乏処理が必要であると判断されれば、エアポンプ42が停止されて酸化剤欠乏処理が開始され(ステップS57)、ラジエータファン74が停止され(ステップS59)、燃料ポンプ32が停止される(ステップS61)。
【0064】
そして、CPU54は、セルスタック12の電圧が第4閾値以下か否かを判断する(ステップS63)。セルスタック12の電圧が第4閾値より大きければ待機し、一方、セルスタック12の電圧が第4閾値以下であればステップS65へ進み、CPU54は、酸化剤欠乏処理の継続時間が第5閾値以上か否かを判断する。酸化剤欠乏処理の継続時間が第5閾値未満であれば待機し、一方、酸化剤欠乏処理の継続時間が第5閾値以上であれば、エアポンプ42の駆動を再開して酸化剤欠乏処理を終了し(ステップS67)、燃料ポンプ32の駆動を再開し(ステップS69)、ラジエータファン74の駆動を再開する(ステップS71)。そして、酸化剤欠乏処理の実行回数Bをカウントし(ステップS73)、ステップS53に戻る。
【0065】
ステップS53においてB+1≧Aであるときや、ステップS55において酸化剤欠乏処理が不要であると判断されたときには、終了し、満充電モードへ移行する。なお、
図5に示す動作においてステップS53がYESになる場合は、通常運転モードにおける酸化剤欠乏処理の実行回数Bが、起動モードにおける酸化剤欠乏処理の実行回数Aより1回少ない場合である。
【0066】
さらに、
図6を参照して、燃料電池システム10の満充電モードにおける動作の一例について説明する。
まず、二次電池82の蓄電率が第8閾値(好ましくは90%)以上であるか否かが判断される(ステップS101)。二次電池82の蓄電率が第8閾値未満であれば、通常運転モードに戻り、一方、二次電池82の蓄電率が第8閾値以上であれば、定電圧充電が開始され(ステップS103)、CPU54は、定電圧充電時間の計測を開始する(ステップS105)。この実施形態では、電源制御回路64でセルスタック12の出力(電圧と電流)を制御することによって、二次電池82の定電圧充電を行うことができる。定電圧充電を行うことによって、二次電池82の過充電を防ぐことができる。
【0067】
そして、二次電池82の蓄電率が第9閾値(好ましくは100%)以上であるか否かが判断される(ステップS107)。二次電池82の蓄電率が第9閾値未満であれば、定電圧充電時間が第10閾値(好ましくは1時間)以上であるか否かが判断される(ステップS109)。定電圧充電時間が第10閾値未満であれば、CPU54は、満充電モードでの酸化剤欠乏処理の実行回数Cが、通常運転モードでの酸化剤欠乏処理の実行回数Bより多い(C>B)か否かを判断し(ステップS111)、C>Bでなければ、定電圧充電時間が第11閾値(好ましくは10分)以上であるか否かが判断される(ステップS113)。そして、定電圧充電時間が第11閾値未満であれば待機し、一方、定電圧充電時間が第11閾値以上であれば、エアポンプ42が停止されて酸化剤欠乏処理が開始され (ステップS115)、ラジエータファン74が停止され(ステップS117)、燃料ポンプ32が停止される(ステップS119)。
【0068】
そして、CPU54は、セルスタック12の電圧が第4閾値以下か否かを判断する(ステップS121)。セルスタック12の電圧が第4閾値より大きければ待機し、一方、セルスタック12の電圧が第4閾値以下であればステップS123へ進み、CPU54は、酸化剤欠乏処理の継続時間が第5閾値以上か否かを判断する。酸化剤欠乏処理の継続時間が第5閾値未満であれば待機し、一方、酸化剤欠乏処理の継続時間が第5閾値以上であれば、エアポンプ42の駆動を再開して酸化剤欠乏処理を終了し(ステップS125)、燃料ポンプ32の駆動を再開し(ステップS127)、ラジエータファン74の駆動を再開する(ステップS129)。そして、酸化剤欠乏処理の実行回数Cをカウントし(ステップS131)、第11閾値を所定値(好ましくは10秒)分インクリメントし(ステップS133)、ステップS101に戻る。
【0069】
ステップS111において、満充電モードでの酸化剤欠乏処理の実行回数Cが、通常運転モードでの酸化剤欠乏処理の実行回数Bより多ければ、ステップS107に戻る。
【0070】
また、ステップS107において二次電池82の蓄電率が第9閾値以上であるか、ステップS109において定電圧充電時間が第10閾値以上であれば、発電を停止し、終了する。
【0071】
このように動作する燃料電池システム10によれば、セルスタック12の電圧および電流は、たとえば
図8に示すようになる。
図8において、下向きの矢印(↓)は、酸化剤欠乏処理を実行した箇所を示す。
【0072】
燃料電池システム10によれば、通常運転モードにおいて酸化剤欠乏処理を実行することによって、セルスタック12の出力を回復させ、通常運転時におけるセルスタック12の発電効率を向上できる。また、起動時および二次電池82の蓄電量が大きいときには電極(特にカソード20)に酸化物が形成され易く電極が劣化し易いが、起動モードおよび満充電モードにおいて通常運転モードよりも酸化剤欠乏処理の回数を多くすることによって、セルスタック12の電圧を低下させ酸化物を還元する。これによって、起動時および二次電池82の蓄電量が大きいときにおける電極の劣化を抑制でき、電極の耐久性を向上できる。さらに、このように起動時の電極の劣化を抑制することによって、その後の通常運転モードに移行する際のセルスタック12の出力を高く維持することができる。このように通常運転モード以外の期間において、積極的に酸化剤欠乏処理を行うことによって、上述のような効果が得られる。
【0073】
起動モードにおいて、セルスタック12の起動時間が第1閾値に達すると酸化剤欠乏処理を実行することによって、セルスタック12の電圧を低下させて酸化物を還元させ、電極の劣化を抑制できる。
【0074】
起動モードにおいて、セルスタック12の出力が第2閾値に達すると酸化剤欠乏処理を実行することによって、セルスタック12の電圧を低下させて酸化物を還元させ、電極の劣化を抑制できる。
【0075】
起動モードにおいて、セルスタック12の温度が第3閾値に達すると酸化剤欠乏処理を実行することによって、セルスタック12の電圧を低下させて酸化物を還元させ、電極の劣化を抑制できる。
【0076】
酸化剤欠乏処理の実行中に、セルスタック12の電圧が第4閾値まで低下すれば、酸化剤欠乏処理が効果的に行われたと判断し、酸化剤欠乏処理を終了する。これにより酸化剤欠乏処理を効果的に実行することができる。
【0077】
酸化剤欠乏処理の継続時間が第5閾値に達すれば、酸化剤欠乏処理が効果的に行われたと判断し、酸化剤欠乏処理を終了する。これにより酸化剤欠乏処理を効果的に実行することができる。
【0078】
起動モードにおいて、セルスタック12の出力が第6閾値に達すれば、燃料電池システム10は、セルスタック12の通常運転が可能な状態になったと判断し、通常運転モードに移行する。これにより円滑に通常運転モードに移行することができる。
【0079】
起動モードにおいて、セルスタック12の温度が第7閾値に達すれば、燃料電池システム10は、セルスタック12の通常運転が可能な状態になったと判断し、通常運転モードに移行する。これにより円滑に通常運転モードに移行することができる。
【0080】
燃料電池システム10では、セルスタック12の出力低下が許容範囲を超えている(セルスタック12の劣化が予想以上に早い)場合に酸化剤欠乏処理を必要とする。燃料電池システム10は、セルスタック12の出力低下量に相関する出力保持率を算出するとともに、セルスタック12の通常運転時間を取得し、出力保持率と通常運転時間とに基づいて酸化剤欠乏処理を実行するか否かを判断する。すなわち、通常運転モードにおいて、時間の経過とともに低下するセルスタック12の出力が、許容範囲を超えて低下しているか否かによって、酸化剤欠乏処理の実行の要否を判断する。セルスタック12の出力が許容範囲を超えて低下していれば、酸化剤欠乏処理が必要と判断する。これによって、通常運転モードにおいて、セルスタック12の劣化状態を把握でき、必要な場合にのみ酸化剤欠乏処理を実行できる。その結果、セルスタック12の劣化を抑制してセルスタック12の出力を回復させ、セルスタック12の発電効率を確実に向上できる。
【0081】
満充電モードにおいて、二次電池82の蓄電率が第8閾値未満であれば通常運転モードに戻り、一方、二次電池82の蓄電率が第8閾値に達すれば二次電池82の定電圧充電を開始する。このように定電圧充電を行うことによって、二次電池82の過充電を防ぐことができる。
【0082】
満充電モードにおいて二次電池82の定電圧充電の開始後、二次電池82の蓄電率が第9閾値に達すれば、二次電池82を満充電できたと判断し、二次電池82の発電を停止させる。これにより二次電池82の過充電を防ぐことができる。
【0083】
満充電モードにおいて、定電圧充電時間が第10閾値に達すれば、二次電池82を満充電できたと判断し、セルスタック12の発電を停止させる。これにより二次電池82の過充電を防ぐことができる。
【0084】
満充電モードにおいて、定電圧充電時間が第11閾値に達すれば、酸化剤欠乏処理が必要と判断し、酸化剤欠乏処理を実行する。これによって、セルスタック12の劣化を抑制してセルスタック12の出力を回復させ、セルスタック12の発電効率を向上できる。
【0085】
なお、酸化剤欠乏処理時において、たとえば
図9に示すように、エアポンプ42を停止するだけでなく、燃料ポンプ32およびラジエータファン74を停止し、水溶液ポンプ34の駆動を抑制するようにしてもよい。これによって、酸化剤欠乏処理時における燃料電池システム10の補機類の消費電力を低減できる。また、酸化剤欠乏処理時において、水溶液ポンプ34の駆動を停止せず、水溶液ポンプ34の駆動を抑制してメタノール水溶液を一定量流すことによって、アノード18に発生した二酸化炭素をセルスタック12の外へ除去し、セルスタック12の電位を安定させることができる。さらに、酸化剤欠乏処理後のセルスタック12の出力を向上させることができる。
【0086】
また、水溶液ポンプ34は、
図9において点線で示すように、水溶液ポンプ34の駆動の停止期間が短くなるように駆動制御されてもよい。
【0087】
さらに、
図10に示すように、酸化剤欠乏処理時において、電源制御回路64によってセルスタック12の電圧を略V字状に、すなわち、定格電圧から漸次減少させゼロにしてから漸次増加させ定格電圧に戻すように、制御してもよい。このようにセルスタック12の電圧を抑制することによって、セルスタック12の電流を抑制することができる。したがって、定格電流以上の大電流によるセルスタック12や二次電池82へのダメージを防ぐことができる。また、酸化剤欠乏処理時において、酸素の消費速度を上げ、
図10に示すP−Q期間を短くすることによって、酸化剤欠乏処理区間(
図10のP−R期間)を短くすることができる。
【0088】
このような燃料電池システム10は、輸送機器に好適に用いることができる。
【0089】
ここでは、燃料電池システム10を自動二輪車100に搭載した場合について説明する。
図11を参照して、自動二輪車100について説明する。自動二輪車100について左右、前後、上下とは、自動二輪車100のシートにドライバがそのハンドル114に向かって着座した状態を基準とした左右、前後、上下を意味する。
【0090】
図11を参照して、自動二輪車100は車体フレーム102を有する。車体フレーム102は、ヘッドパイプ104、ヘッドパイプ104から後方へ斜め下方に延びるフロントフレーム106、およびフロントフレーム106の後端部に連結されかつ後方へ斜め上方に立ち上がるリヤフレーム108を備えている。リヤフレーム108の上端部には、図示しないシートを設けるためのシートレール110が固設されている。
【0091】
ヘッドパイプ104内には、ステアリング軸112が回動自在に挿通されている。ステアリング軸112の上端には、ハンドル114が固定されたハンドル支持部116が取り付けられている。ハンドル支持部116の上端には表示操作部118が配置されている。表示操作部118は、入力部72および表示部76を備える。
【0092】
ステアリング軸112の下端にはフロントフォーク120が取り付けられており、フロントフォーク120それぞれの下端には前輪122が回転自在に取り付けられている。
【0093】
リヤフレーム108の下端部には、スイングアーム(リヤアーム)124が揺動自在に取り付けられている。スイングアーム124の後端部124aには、後輪126に連結されかつ後輪126を回転駆動させるためのたとえばアキシャルギャップ型の電動モータ128が内蔵されている。この例では、電動モータ128が負荷78に相当する。
【0094】
このような自動二輪車100には、主として車体フレーム102に沿って燃料電池システム10の構成部材が配置されている。
【0095】
セルスタック12は、フロントフレーム106から吊るされ、フロントフレーム106の下方に配置されている。フロントフレーム106の下方でありかつセルスタック12の上方には、ラジエータユニット40が配置されている。リヤフレーム108の一対の板状部材の間には、上方から順に燃料タンク24、水溶液タンク28および水タンク46が配置されている。燃料タンク24の前側でありかつフロントフレーム106の上側には、二次電池82が配置されている。二次電池82の上側には、燃料ポンプ32が配置されている。フロントフレーム106の左側の収納スペースには、水溶液ポンプ34およびエアポンプ42が収納されている。フロントフレーム106の右側の収納スペースには、コントローラ52および水ポンプ46が配置されている。フロントフレーム106にはメインスイッチ70が設けられている。スイングアーム124には、電動モータ128に電気的に接続される駆動ユニット80が内蔵されている。駆動ユニット80は、電動モータ128の回転駆動を制御するためのコントローラ84、および二次電池82の蓄電量を検出する蓄電量検出器86を含む。
【0096】
このように燃料電池システム10を自動二輪車100に用いる場合には、燃料電池システム10を長い時間継続動作できかつセルスタック12の寿命が長いことが望ましい。燃料電池システム10では、通常運転時におけるセルスタック12の発電効率を向上できるとともに、起動時および二次電池82の蓄電量が大きいときにおける電極の劣化を抑制でき、燃料電池システム10を長い時間継続動作できかつセルスタック12の寿命を長くできる。したがって、燃料電池システム10は自動二輪車100に好適に用いられる。
【0097】
なお、
図3のステップS9において、起動時間の計測は、ステップS7における負荷接続から開始されたが、これに限定されない。たとえば、起動時間の計測は、ステップS1における燃料ポンプ32の駆動開始時点から行われてもよい。
【0098】
図3および
図4に示す起動モードでは、ステップS23およびS25がともにYESの場合に、ステップS27へ進み、酸化剤欠乏処理を終了させていたが、これに限定されない。ステップS23およびS25のいずれか一方がYESになれば、酸化剤欠乏処理を終了させるようにしてもよい。
【0099】
上述の実施形態では、
図5のステップS53においてB+1≧Aか否かを判断し、かつ
図6のステップS111においてC>Bか否かを判断することによって、起動モードおよび満充電モードのそれぞれにおける酸化剤欠乏処理の回数が、通常運転モードにおける酸化剤欠乏処理の回数よりも多くなるように、エアポンプ42の動作が制御されていた。しかし、この発明はこれに限定されない。たとえば、
図5のステップS53においてB=A/2か否かを判断するようにしてもよい。また、所定値を設定しておき、A≧所定値、C≧所定値、B<所定値、の条件を満たすようにエアポンプ42の動作が制御されてもよい。さらに、起動モードにおける酸化剤欠乏処理の回数と、通常運転モードにおける酸化剤欠乏処理の回数とは等しくてもよい。
【0100】
上述の実施形態では、
図7に示すように出力保持率と通常運転時間とに基づいて酸化剤欠乏処理の要否を判断したが、これに限定されない。たとえば、出力低下率(=100−出力保持率)と通常運転時間とに基づいて酸化剤欠乏処理の要否を判断するようにしてもよい。
【0101】
上述の実施形態では、出力情報として、セルスタック12の出力が用いられたが、これに限定されない。出力情報は、燃料電池14の出力であってもよい。電圧情報として、セルスタック12の電圧が用いられたが、これに限定されない。電圧情報は、燃料電池14の電圧であってもよい。蓄電情報として、二次電池82の蓄電率が用いられたが、これに限定されない。蓄電情報は、二次電池82の蓄電量であってもよい。
【0102】
温度取得部は、燃料電池14自体の温度を直接検出するセンサであってもよい。
【0103】
上述の実施形態では、セルスタック12(燃料電池14)のカソード20にエアポンプ42によって空気を供給する場合について説明したが、これに限定されない。この発明では、酸化剤を含む任意の気体をカソード20に供給でき、酸化剤供給部は任意の送気ポンプを含むことができる。
【0104】
上述の実施形態では、燃料としてメタノールを、燃料水溶液としてメタノール水溶液を用いたが、これに限定されず、燃料としてエタノール等のアルコール系燃料、燃料水溶液としてエタノール水溶液等のアルコール系水溶液を用いてもよい。
【0105】
この発明の燃料電池システムは、自動二輪車だけではなく、自動車、船舶等の任意の輸送機器に好適に用いることができる。
【0106】
この発明は、改質器搭載タイプの燃料電池システムや水素を燃料電池に供給するタイプの燃料電池システムにも適用できる。また、この発明は、据え付けタイプの燃料電池システムにも適用でき、さらに、パーソナルコンピュータ、携帯機器等の電子機器に搭載される可搬型の燃料電池システムにも適用できる。
【0107】
以上、この発明の好ましい実施形態について説明されたが、この発明の範囲および精神を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能であることは明らかである。この発明の範囲は、添付された請求の範囲のみによって限定される。