(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
<実施の形態1>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るダンプトラック停車位置方向指示システムおよび運搬システムの全体構成を示す図である。
【0017】
図2は、積込機械のバケットの移動軌跡に基づいてダンプトラックの停車位置と停車方向を決定する概念を示す図であり、積込機械の一例として積込機械が油圧ショベルである場合を示す図である。
【0018】
図1および
図2において、ダンプトラック停車位置方向指示システムは符号1000で示されている。停車位置方向指示システム1000は、積込機械データ演算装置54と、停車位置方向演算装置100と、積込機械通信装置541と、ダンプトラック通信装置101とを主に備えている。積込機械データ演算装置54と積込機械通信装置541は積込機械50に備えられ、停車位置方向演算装置100とダンプトラック通信装置101は、ダンプトラック1に備えられている。積込機械50とダンプトラック1と停車位置方向指示システム1000は本発明の運搬システムを構成している。積込機械50は採石物等(土砂や鉱石など)を積載して積載位置に移動する容器であるバケット10を備えている。
【0019】
積込機械データ演算装置54は、積込機械50のバケット10の位置を計測するバケット位置検出装置542と、バケット10に砕石物を積載したことを検出する積載検出装置543と、積込機械50の種類を検出する積込機械種類検出装置544とを主に備えている。
【0020】
バケット位置検出装置542は、例えば対地位置を検出可能なGNSS(グローバル ナビゲーション サテライト システム)をバケット10などに適用することなどで、バケット10の位置を検出し、その位置情報を積込機械通信装置541およびダンプトラック通信装置101を介してダンプトラック1に通知できるよう構成されている。積載検出装置543は、例えばバケット10への負荷の変動を検出することなどでバケット10への砕石物の積載を検出し、その積載情報を積込機械通信装置541およびダンプトラック通信装置101を介してダンプトラック1に通知できるよう構成されている。積込機械種類検出装置544は、例えばあらかじめ各積込機械50に応じたIDが決められており、そのIDを積込機械通信装置541およびダンプトラック通信装置101を介してダンプトラック1に通知できるよう構成されている。
【0021】
停車位置方向演算装置100は、積込機械50のバケット位置検出装置542により検出したバケット10の位置に基づいてバケット10の移動軌跡61を演算するバケット軌跡演算装置102と、このバケット軌跡演算装置102により演算した移動軌跡61に基づいてダンプトラック1の停車位置63と停車方向66を決定する停車位置方向決定装置110とを備えている。停車位置方向決定装置110は、バケット軌跡演算装置102により演算した移動軌跡61からバケット10の停止位置を検出し、このバケット10の停止位置をダンプトラック1の停車位置63と決定するバケット停止検出装置103と、バケット軌跡演算装置102により演算した移動軌跡61におけるバケット10の停止位置での接線64と移動軌跡61の進行方向から接線方向65を演算する接線方向演算装置104と、積込機械種類検出装置544からのデータをもとに積込機械50の種類を判断する積込機械判断装置105と、接線方向演算装置104により演算した接線方向65を積込機械判断装置105により判断した積込機械の種類に応じて所定の角度だけ回転させることで停車方向66を決定する接線方向回転装置106とを主に備えている。
【0022】
バケット軌跡演算装置102は、積込機械50のバケット10の位置を水平面に投影した位置を算出し、それを連続的に取得することでバケット10の移動軌跡61を演算できるよう構成されている。または、バケット10の3次元的な移動軌跡を演算したのちに水平面に投影することで移動軌跡61を演算できるよう構成されていても良い。
【0023】
バケット停止検出装置103は、移動軌跡61が所定の一定時間(T1)変化しないことを検出し、その位置をバケット10の停止位置として検出し、停車位置63と決定できるよう構成されている。
【0024】
接線方向演算装置104は、移動軌跡61の停車位置63における接線64を求め、その接線64の移動軌跡61の進行方向に接線方向65を決定することができるよう構成されている。
【0025】
積込機械判断装置105は、積込機械種類検出装置544が検出したデータをもとに積込機械50の種類を判断できるよう構成されている。例えば、あらかじめ積込機械50にIDが割り振られており、そのIDを積込機械判断装置105に記憶させておき、積込機械種類検出装置544がそのIDを積込機械判断装置105に送信すると、積込機械判断装置105が受信したIDを照合することなどで実現可能である。また、鉱山が、ダンプトラック1や積込機械50などの状態や動作を管理し、ダンプトラック1の配車指示などを実施している管制局を備えている場合、その管制局が、ダンプトラック1が次に向かう積込場を決めた段階で、そこで作業している積込機械50の種類に応じたIDをダンプトラック1に送信し、積込機械判断装置105が受信したIDを照合することなどでも実現可能である。
【0026】
接線方向回転装置106は、積込機械判断装置105が判断した積込機械50の種類に応じて、接線64を、停車位置63を通る水平面に垂直な軸周りに、接線方向65が、積載位置60がある側とは反対の方を向くように、所定角度だけ回転させることで、停車方向66を決定することができるよう構成されている。例えば、積込機械50が油圧ショベルの場合は、その所定の回転角度が0度、つまり、回転させないように構成されており、ホイールローダの場合は、その所定の回転角度が90度であるように構成されている。停車方向66を決定するための所定の角度はオペレータが操作装置を操作することで変更できるようになっていてもよい。特に、積込機械50が油圧ショベルである場合は、ダンプトラックの停車方向に対して柔軟に対応できるため、周囲の障害物の有無など応じて変更できるようにしておくと、便利である。
【0027】
停車位置方向決定装置110で決定したダンプトラック1の停車位置63と停車方向66は、停車位置方向演算装置100に備えられる出力装置120(
図3参照)を介してダンプトラック1に搭載された自律走行装置200に送られる。
【0028】
図3に、本発明の実施の形態に係る、露天の採掘場、石切り場、鉱山等で採掘した砕石物を運搬する大型の運搬車両であるダンプトラック(いわゆるマイニングダンプ)であって、さらに、オペレータが操縦することなく自律的に走行可能な自律走行ダンプトラックの全体構成を示す。
【0029】
図3に示すダンプトラック(車両)1は、頑丈なフレーム構造で形成された車体2と、車体2上に起伏可能に搭載されたベッセル(荷台)3と、車体2に装着された前輪4および後輪5と、ダンプトラック1を自律的に走行させる自律走行装置200を備えている。また、ダンプトラック1は、前述したように、ダンプトラック1の停車位置63と停車方向66を演算する停車位置方向演算装置100と、積込機械との間でデータ通信可能なダンプトラック通信装置101とを備えている。
【0030】
自律走行装置200は、次に移動すべき目標位置を認識する目標位置方向認識装置201と、現在の自車両の位置と方向を認識する自己位置方向認識装置202と、自己位置方向から目標位置方向を実現するために移動する経路を生成する目標経路生成装置203と、目標経路に沿って移動できるよう駆動と制動、操舵を制御する目標経路追従装置204とを主に備えている。
【0031】
自律走行装置200により、ダンプトラック1は、目標の位置と方向が指令されると、自己位置と方向を認識し、目標位置と方向を実現するための目標経路を生成し、その経路に追従するように走行することで、指令された目標位置と方向を実現することができるよう構成されている。
【0032】
目標位置方向認識装置201は、自律走行装置200に通知されたダンプトラック1が停車すべき目標位置と目標方向の情報に基づいて目標位置方向を認識するように構成されている。
【0033】
自己位置方向認識装置202には、例えば、対地位置を検出可能なGNSSや車体の加速度を検出可能な加速度センサ、角速度を検出可能なジャイロセンサ、前輪または後輪の少なくともいずれか一つに取り付けられた車輪回転数を検出する車輪回転数センサなどが用いられる。自己位置方向認識装置202は、加速度センサやジャイロセンサ、車輪回転数センサによって車両の移動開始時の位置と方向からの相対的な位置と方向が検出可能となるよう構成されている。また、GNSSは直接位置が検出可能であるため、GNSSによって加速度センサやジャイロセンサ、車輪回転数センサで演算した位置を補正するなどに利用できるよう構成されている。
【0034】
目標経路生成装置203は、ダンプトラック1の幾何学的特性や車両運動特性などを考慮してダンプトラック1が実現可能な経路が演算できるよう構成されている。
【0035】
目標経路追従装置204は、生成した目標経路と自己位置を比較しながら、その偏差が小さくなるようダンプトラック1の駆動、制動、操舵を制御し、目標経路に追従走行できるよう構成されている。
【0036】
以上の構成によって実現される、積込機械50によるダンプトラック1への積込作業における、ダンプトラック1の停車位置63と停車方向66を決定する手順について
図4を用いて説明する。
図4は、
図1に示した停車位置方向指示システムの構成によってダンプトラック1の停車位置63と停車方向66を決定する手順を示すフローチャートである。
【0037】
ステップ1(S601):積載検出装置543が、バケット10が掘削対象物を積載したことを検出する。このとき、積載検出装置543は、バケット軌跡演算装置102に、積込機械通信装置541およびダンプトラック通信装置101を介してその旨を通知する。
【0038】
ステップ2(S602):積載検出装置543からの通知を受信したバケット軌跡演算装置102は、そのときのバケット位置検出装置542が検出するバケット10の位置を取得し、そのバケット10の位置を水平面へ投影したときの位置を積載位置60として記憶するとともに、移動軌跡61の演算を開始する。
【0039】
ステップ3(S603):バケット停止検出装置103は、移動軌跡61が所定の一定時間(T1)変化しないことを検出すると、そのときのバケット10の位置をバケット10の停止位置として検出し、停車位置63と決定するとともに、接線方向演算装置104にそれを通知する。
【0040】
ステップ4(S604):接線方向演算装置104は、移動軌跡61における停車位置63での接線64を求め、その接線64の移動軌跡61の進行方向を、接線方向65と決定するとともに、それを接線方向回転装置106に通知する。
【0041】
ステップ5(S605):接線方向回転装置106は、積込機械判断装置105が判断した積込機械50の種類に基づき、接線64を、停車位置63を通り水平面に対して垂直な軸周りに、接線方向65が移動軌跡61の起点がある側とは反対の方向を向くように、0度または90度回転させる。そのときに接線方向65が向く方向を、ダンプトラック1の停車方向66と決定する。
【0042】
以上の手順より、ダンプトラック1の停車位置63と停車方向66を決定できる。そして、決定した停車位置63と停車方向66を、ダンプトラック1の自律走行装置200に出力装置120を介して通知する。自律走行装置200の目標位置方向認識装置201はそれを目標位置方向と認識し、自律走行装置200は、この目標位置方向を実現するようダンプトラック1を走行させることができる。
【0043】
また、一般的な鉱山では、油圧ショベル50A(
図5参照)やホイールローダ70(
図7参照)などの積込機械が同時に運用されており、ダンプトラック1に積み込み作業を行う積込機械50の種類は、場所や時間によって変化する。そういった場合でも、本発明を適用したダンプトラックは、積込作業を行う積込機械50の種類を判断することによって、その積込機械50にとって適切な停車方向を決定することができる。
【0044】
以下で、積込機械50が油圧ショベルである場合に本発明を適用した例について説明する。
図5に、本発明の実施の形態における油圧ショベルの全体構成図を示す。
【0045】
図5に示す油圧ショベル50Aは、頑丈なフレーム構造で形成されたフロント51と、オペレータの搭乗する運転室521を備えた旋回体52と、油圧ショベル50Aを移動させることができる移動装置531を備えた移動体53とを備えている。また、油圧ショベル50Aは、前述したように、積込機械データ演算装置54と積込機械通信装置541とを備えている。
【0046】
フロント51は、頑丈なフレーム構造で形成されたブーム511と、アーム512と、バケット10Aと、ピン結合部514と、シリンダ515を主に備えている。バケット10Aは、砕石物等を積載するための容器であり、ピン結合部514等を介してアーム512に対して回転可能に連結されている。また、アーム512はブーム511に対してピン結合部514等を介してブーム511に対して回転可能に連結されている。さらに、ブーム511は旋回体52に対してピン結合部514等を介して回転可能に連結されている。そして、旋回体52とブーム511、ブーム511とアーム512、アーム512とバケット10Aは直動動作が可能なシリンダ515で接合されている。このシリンダ515は例えば油圧で駆動する油圧シリンダなどが適用される。このシリンダ515の駆動によりフロント51が動作可能となる。
【0047】
旋回体52は、移動体53に対して旋回モータ522などを介して回転可能に連結されている。この旋回体52が移動体53に対して旋回することでフロント51も旋回することができる。旋回体52は運転室521を備えており、その運転室521には操縦用のレバー、アクセルペダル、ブレーキペダルなどが設置されており、オペレータがこれらを操作することで、油圧ショベル50Aに所望の動作をさせることができるよう構成されている。
【0048】
移動体53は、油圧ショベル50Aを移動させることができるよう、移動装置531を備えている。油圧ショベル50Aは移動体53により掘削位置近傍まで移動し、旋回体52およびブーム511、アーム512、バケット10をシリンダ515により動作させることでバケット10Aに砕石物を積載することができるよう構成されている。
【0049】
前述したように、積込機械データ演算装置54は、油圧ショベル50Aのバケット10Aの位置を計測するバケット位置検出装置542と、バケット10に砕石物を積載したことを検出する積載検出装置543と、積込機械の種類を検出する積込機械種類検出装置544とを主に備えている。
【0050】
バケット位置検出装置542は、例えば油圧ショベル50Aのバケット10Aに設置されたGNSSなどによりバケット10Aの位置を検出できるよう構成されている。本実施の形態ではバケットの中心をバケット位置として検出しているが、アーム512とバケット10Aの接続部にGNSSを取り付けた場合などは、その位置の値から幾何的な演算によりバケット中心を求めることができる。また、GNSSを油圧ショベル50Aのいずれかの場所に設置し、フロント51のブーム511、アーム512、バケット10Aのピン接合部514および旋回体52と移動体53の間の旋回モータ522などに、その回転角度を検出可能なポテンショメータやエンコーダなどを設置することや、ブーム511、アーム512、バケット10などにその傾斜角度を検出できる傾斜センサを設置することなどで、油圧ショベル50Aの位置と油圧ショベル50Aのバケット10Aの位置との相対的な位置関係を取得することができ、それによりバケット10Aの位置を算出する方法も適用可能である。更に、ダンプトラック1へ積込作業を行うときのバケット10Aの姿勢では、水平面に投影した位置でみた場合のバケット中心はアーム512とバケット10Aの接続部或いはアーム512の先端の位置とほぼ一致しているため、アーム512とバケット10Aの接続部或いはアーム512の先端の位置をバケット10Aの位置として検出してもよい。
【0051】
積載検出装置543は、例えば各シリンダ515が備えたセンサが負荷変動を検出することで、バケット10Aへの砕石物の積載を検出できるよう構成されている。負荷変動を検出するセンサには、シリンダ515が油圧シリンダで構成されている場合、その油圧シリンダ内の圧力を検出可能な圧力センサを用いることができる。また、油圧ショベル50Aの運転室521内にオペレータが操作可能な入力装置、例えば、スイッチや音声入力装置など、を設置し、油圧ショベル50Aのオペレータがバケット10Aに砕石物を積み込んだときにその入力装置を操作することでも実現可能である。さらに、油圧ショベル50Aの動作に関するデータベースを作成しておき、行った動作とデータベースを照らし合わせることで、当該動作が積載動作であると判断することで積載を検出できるよう構成されていても良い。
【0052】
積込機械種類検出装置544は、例えば油圧ショベル50Aに応じたIDが登録されており、積込機械通信装置541を介してダンプトラック1にその旨を通知することができるよう構成されている。
【0053】
図6に積込機械が油圧ショベル50Aであるときのダンプトラック1の停車位置63および停車方向66の決定の様子を示す。
【0054】
油圧ショベル50Aのオペレータは、積載位置60でバケット10Aに砕石物を積載し、積込を行う位置にバケット10Aを動作させる。このとき、油圧ショベル50Aのオペレータは周囲の障害物800の有無を考慮し、ダンプトラック1が進入し停車できるような位置と方向を判断し、それを指示するようにバケット10を操作する。ダンプトラック停車位置方向決定システム1000は、
図4に示した手順により、
図5に示すダンプトラック1の停車位置63および停車方向66を決定する。
【0055】
このとき、接線方向回転装置106は、積込機械判断装置105が積込機械を油圧ショベル50Aと判断したときは、接線64を、停車位置63を通り水平面に対して垂直な軸周りに、 0度回転させる、つまり接線64を回転させないよう構成されている。このことにより、停車方向66が
図5に示す方向に決定される。
【0056】
ダンプトラック1の自律走行装置200は決定された停車位置63と停車方向66と、自己位置からそれらを繋ぐ経路を演算し、その経路に追従するように走行する。そして、停車位置63に到着したら停車する。このとき、必ずしも正確に停車位置63に停車する必要はなく、ある一定のマージンをとった停車位置領域に進入した段階で停車する。この停車領域は自己位置認識装置202などの誤差を考慮して決定される。このことにより、何度も前進とバックを繰り返して停車位置を微調整する必要などがなく、効率的である。
【0057】
ここで、従来技術のように、ダンプトラックは、油圧ショベル50Aの積込位置でのバケット10の方向と平行な方向に停車するとあらかじめ決められている場合について述べる。
図7は、従来技術におけるダンプトラックの停車位置および停車方向を示す図である。
【0058】
図7に示すように周囲に障害物がある場合などでは、ダンプトラックがバケット10Aの方向と平行な方向に停車することが困難となる可能性がある。つまり、ダンプ停車位置および方向が事前に決められている場合、障害物が周りに有る場合などに、効率的な停車方向を指示できない恐れがある。一方、
図5で示したように、本発明を適用することで、油圧ショベル50Aのオペレータは障害物800に邪魔されない停車位置63および停車方向66をバケット10Aの操作によって決定できる。
【0059】
次に、積込機械がホイールローダ70の場合に本発明を適用した例について説明する。
図8に、本発明の実施の形態に係る、ホイールローダ70の全体構成図を示す。
【0060】
図8に示すホイールローダ70は、頑丈なフレーム構造で形成されたフロント71と、前輪721を備えた前輪体72と、オペレータの搭乗する運転室731と後輪732を備え、前輪体72と屈折軸733をして屈折可能に取り付けられた後輪体73と、積込機械データ演算装置54と、積込機械通信装置541とを主に備えている。
【0061】
フロント71は、頑丈なフレーム構造で形成されたリフト711とバケット10Bとを主に備えている。バケット10Bは、砕石物等を積載するための容器であり。ピン結合部713等を介してリフト711に対して回転可能に連結されている。また、リフト711は前輪体72に対してピン結合部713等を介して回転可能に連結されている。そして、前輪体72とリフト711、リフト711とバケット10Bは直動動作が可能なシリンダ714で接合されている。このシリンダ714は例えば油圧で駆動する油圧シリンダなどが適用される。このシリンダ714の駆動によりフロント71が動作可能となる。
【0062】
前輪体72は、後輪体73に対して屈折軸733を介して屈折可能に連結されている。この屈折軸733の角度を変更することでホイールローダ70は進行方向を変更することができるよう構成されている。前輪体72に設置された前輪721または後輪体73に設置された後輪732の少なくともいずれか一方を駆動することでホイールローダ70は移動することができるよう構成されている。
【0063】
後輪体73に設置された運転室731には操縦用のレバー、アクセルペダル、ブレーキペダルなどが設置されており、オペレータがこれらを操作することで、ホイールローダ70に所望の動作をさせることができるよう構成されている。
【0064】
前述したように、積込機械データ演算装置54は、ホイールローダ70のバケット10Bの位置を計測するバケット位置検出装置542と、バケット10に砕石物を積載したことを検出する積載検出装置543と、積込機械の種類を検出する積込機械種類検出装置544とを主に備えている。
【0065】
バケット検出装置542、積載検出装置543の構成は油圧ショベル50Aのときと同様であるため説明は省略する。積込機械種類検出装置544は、ホイールローダ70に応じたIDが登録されており、積込機械通信装置541を介してダンプトラック1にその旨を通知することができるよう構成されている。
【0066】
図9に、積込機械がホイールローダ70であるときのダンプトラック1の停車位置63および停車方向66の決定の様子を示す。
【0067】
ホイールローダ70のオペレータは、積載位置60でバケット10Bに砕石物を積載し、積込を行う位置にバケット10Bを動作させる。このとき、ダンプトラック停車位置方向決定システム1000は、
図4に示した手順により、
図9に示すダンプトラック1の停車位置63および停車方向66を決定する。
【0068】
このとき、接線方向回転装置106は、積込機械判断装置105が積込機械をホイールローダ70と判断した時は、接線64を、停車位置63を通り水平面に対して垂直な軸周りに、接線方向65が移動軌跡61の起点がある側とは反対の方向を向くように、90度回転させるよう構成されている。このことにより、停車方向66が
図9に示す方向に決定される。
【0069】
本実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
【0070】
本発明を適用した油圧ショベル50Aやホイールローダ70などの積込機械50による積込作業では、積込機械50のオペレータが積載位置60でバケット10に土砂や鉱石を積載したのち、ダンプトラック1へ積込作業を行いたい位置でバケット10をT1秒間以上停止させることで、ダンプトラック1の停車位置63を決定できる。T1はあらかじめ設定し(例えば5秒間)オペレータに伝えておけば良い。また、停車方向66も、バケット10の移動軌跡61から決定できるため、オペレータはバケット動作を行うだけで良い。つまり、積込機械50のオペレータが、自分にとって積込作業がしやすい位置および方向を、バケット10の操作のみによって決定することができるため、積込作業を行っている場所の周囲の環境などを考慮し、積込機械50のオペレータが最適な停車位置63および停車方向66を選択することで、効率的な積込作業が可能となる。
【0071】
さらに、一度目の積み込みのための砕石物をバケット10に積載した状態で、ダンプトラック1の停車位置63と停車方向66を指示できるため効率的である。
【0072】
なお、積込機械50の運転室内にスイッチなどの入力装置が設置されており、オペレータが停車位置63にバケット10を移動させたのち、その入力装置を操作することで停車位置63を決定し、そのことをバケット停止検出装置103がデータ通信などにより検出できるよう構成されていても良い。また、バケット軌跡演算装置102が演算する移動軌跡61によって検出可能なバケット10の動作を合図として事前に決定しておき、積込機械50のオペレータがその動作によって停車位置63の決定を合図したことをバケット停止検出装置103が検出できるよう構成されていても良い。更に、油圧ショベル50Aが、フロント51の動作を検出する角度センサ、旋回体52の旋回角を検出する回転センサ、フロント51、旋回体52の操縦用のレバーの操作を検出するセンサ、シリンダ515、旋回モータ等に供給される作動油の流量を検出するセンサ等を備える場合は、バケット停止検出装置103がそれらの検出信号をみることでバケット10の停止を検出できるよう構成されていても良い。
【0073】
また、管制局がダンプトラック1の配車管理を行っている場合は、積込機械検出装置544は管制局が備えていても良い。管制局が、ダンプトラック1が次に向かう積込場を決めた段階で、そこで作業している積込機械50の種類に応じたIDをダンプトラック1に通信し、積込機械判断装置105が受信したIDを照合することなどでも本発明は実現可能である。管制局にオペレータがいる場合は、スイッチなどの入力装置により、積込機械50の種類を入力することなどでも本発明は実現可能である。
【0074】
本実施の形態では、バケット軌跡演算装置102、バケット停止検出装置103、接線方向演算装置104、積込機械判断装置105、接線方向回転装置106はダンプトラック1に搭載されている例について説明した。しかし、それらは積込機械に設置されていても本発明は実現可能である。
【0075】
また、本実施の形態では、積載検出装置542、バケット位置検出装置543、積込機械種類検出装置544は積込機械が備えている例について説明した。しかし、それらはダンプトラック1に設置されていても良い。例えば、ダンプトラック1が画像センサなどを備えており、積込機械の積載作業や、バケット10を画像処理等で検出することで、積込機械の種類や、積載したこと、バケット10とダンプトラック1との相対的な位置関係などを、取得できるようにした構成でも本発明は適用可能である。
<実施の形態2>
図10は、本発明の第2の実施の形態に係るダンプトラック停車位置方向指示システムおよび運搬システムの全体構成図を示す図である。本実施の形態では、ダンプトラック1や積込機械50を管理する管制局900が存在し、その管制局900が停車位置方向演算装置100を備えている場合について説明する。
【0076】
図10において、鉱山には、ダンプトラック1や積込機械50などの状態や動作、および、鉱山の操業を管理する管制局900が備えられている。
【0077】
管制局900は、停車位置方向演算装置100と、ダンプトラック1や積込機械50とデータ通信可能な管制局通信装置901を主に備えている。
【0078】
停車位置方向演算装置100は、第1の実施の形態と同様に、バケット軌跡演算装置102と、バケット停止検出装置103、接線方向演算装置104、積込機械判断装置105および接線方向回転装置106からなる停車位置方向決定装置110とを主に備えており、管制局通信装置901によって積込機械50やダンプトラック1とデータ通信が可能なように構成されている。
【0079】
ダンプトラック1は、自律走行装置200と、積込機械や管制局900との間でデータ通信可能なダンプトラック通信装置101とを主に備えている。
【0080】
油圧ショベル50Aやホイールローダ70などの積込機械50に備えられた積込機械データ演算装置54は、バケット位置検出装置542と、積載検出装置543と、積込機械種類検出装置544と、積込機械通信装置541とを主に備えている。
【0081】
本実施の形態では、積込機械50に備えられた積込機械データ演算装置54及び積込機械通信装置541と、管制局900に備えられた停車位置方向演算装置100及び管制局通信装置901とが本発明の停車位置方向指示システム1000を構成し、積込機械50とダンプトラック1と管制局900と停車位置方向指示システム1000とが本発明の運搬システムを構成する。
【0082】
以上の構成によって、次のような手順でダンプトラック1の停車位置63と停車方向66が決定される。油圧ショベル50Aやホイールローダ70などの積込機械50が積込のためバケット10が操作されると、積込機械50に備えられた積込機械データ演算装置54からバケット位置検出装置542が検出したバケット位置などのデータが、積込機械通信装置541および管制局通信装置901を介して、管制局900が備えるダンプ停車位置方向演算装置100に通信される。受信したデータを基に管制局900が備えるダンプ停車位置方向演算装置100は、第1の実施の形態に示したものと同様な方法および手順で、ダンプトラック1の停車位置63と停車方向66を演算することができるように構成されている。
【0083】
以上のように本実施の形態では、第1の実施の形態で示した停車位置方向指示システム1000の内、停車位置方向演算装置100を管制局900が備えている。このことにより、ダンプトラック1の構成を簡素化することができる。通常、鉱山には複数のダンプトラックが走行しているが、本実施の形態ではそれらすべてに停車方向演算装置100を備える必要がないため、第1の実施の形態と比較してコスト削減効果が期待できる。
【0084】
また、第1および第2の実施の形態で示したように、バケット軌跡演算装置102、バケット停止検出装置103、接線方向演算装置104、積込機械判断装置105、接線方向回転装置106、積載検出装置542、バケット位置検出装置543、積込機械種類検出装置544が、ダンプトラック1や積込機械、管制局の少なくともいずれか一つに設置されており、また、ダンプトラック1、積込機械50、管制局900が、それぞれの間でデータ通信可能な通信装置を備えていれば、本発明は実施可能である。
<実施の形態3>
図11は、本発明の第3の実施の形態に係るダンプトラック停車位置方向指示システムの停車位置方向演算装置を搭載したダンプトラックの構成を示す図である。第1および第2の実施の形態では、ダンプトラック1は自律走行ダンプトラックを想定したが、オペレータが操縦するダンプトラック1にも本発明は適用可能である。本実施の形態では、ダンプトラック1をオペレータが操縦している場合について述べる。
【0085】
図11において、ダンプトラック1は積込位置方向演算装置100と、管制局950や積込機械とデータ通信可能なダンプトラック通信装置101と、モニタ950を主に備えている。モニタ950は運転室951に備えられている。
【0086】
停車位置方向演算装置100が第1の実施の形態に示した構成および手順にて決定した停車位置63と停車方向66をオペレータに通知するため、停車位置方向演算装置100は出力装置130を備え、停車位置方向決定装置110で決定したダンプトラック1の停車位置63と停車方向66は、出力装置130を介してそれらの情報をモニタ950に送り、モニタ950に停車位置63と停車方向66を表示できるように構成されている。
【0087】
本実施の形態によれば、例えば、不慣れなオペレータでも適切な停車位置と方向を知ることができるため、作業効率の改善を期待できる。