特許第5852686号(P5852686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852686
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20160114BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   B60C11/03 300B
   B60C11/03 300E
   B60C11/13 A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-23582(P2014-23582)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-150903(P2015-150903A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 誠
【審査官】 平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/084988(WO,A1)
【文献】 特開2012−201253(JP,A)
【文献】 特開平04−087807(JP,A)
【文献】 特開2001−219714(JP,A)
【文献】 特開2010−095196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、タイヤ赤道の両側をタイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる一対のセンター主溝と、前記センター主溝とトレッド接地端との間をタイヤ周方向にジグザグ状に連続してのびる一対のショルダー主溝と、前記一対のセンター主溝間をつなぐ複数本のセンター横溝と、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間をつなぐ複数本のミドル横溝とが設けられることにより、
前記一対のセンター主溝と前記センター横溝とで区分されたセンターブロックがタイヤ周方向に並ぶセンター陸部、前記センター主溝と前記ショルダー主溝と前記ミドル横溝とで区分されたミドルブロックがタイヤ周方向に並ぶ一対のミドル陸部、及び、前記ショルダー主溝と前記トレッド接地端とで区分されたショルダー陸部を備えた重荷重用タイヤであって、
前記センター主溝及び前記ショルダー主溝は、タイヤ周方向に対して3゜〜9゜で傾斜する長辺部と、前記長辺部とは逆向きに傾斜し、かつ、タイヤ周方向の長さが前記長辺部よりも小さい短辺部とが交互に設けられ、
前記ミドル横溝は、前記センター主溝の接地端側に突出する外側ジグザグ頂部と前記ショルダー主溝のタイヤ赤道側に突出する内側ジグザグ頂部との間をつないで、タイヤ軸方向に対して傾斜して設けられ、
前記センター横溝は、前記一対のセンター主溝の長辺部間をつないで、前記ミドル横溝とは逆方向に傾斜して設けられていることを特徴とする重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記センター主溝は、タイヤ赤道側の第1溝縁と、トレッド接地端側の第2溝縁とを有し、
前記第1溝縁の最もトレッド接地端側の第1頂部は、前記第2溝縁の最もタイヤ赤道側の第2頂部よりもタイヤ赤道の側にある請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記第1頂部から前記第2頂部までのタイヤ軸方向の距離W11と、トレッド接地幅TWとの比W11/TWは、0.005〜0.02である請求項2記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記ショルダー主溝は、タイヤ赤道側の第3溝縁と、トレッド接地端側の第4溝縁とを有し、
前記第3溝縁の最もトレッド接地端側の第3頂部は、前記第4溝縁の最もタイヤ赤道側の第4頂部よりもタイヤ赤道の側にある請求項1乃至3のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記第3頂部から前記第4頂部までのタイヤ軸方向の距離W21と、トレッド接地幅TWとの比W21/TWは、0.005〜0.02である請求項4記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
前記センター主溝のタイヤ軸方向のジグザグ振幅W12は、前記センターブロックのタイヤ軸方向の最大長さWAの10%〜18%である請求項1乃至5のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
前記ショルダー陸部は、タイヤ周方向に連続して形成されている請求項1乃至6のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項8】
前記ミドルブロックは、前記センター主溝を挟んで前記センター横溝に対向する位置に、前記センター主溝に向かって深さが漸増する傾斜スロットを有する請求項1乃至7のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項9】
前記傾斜スロットと、この傾斜スロットに対向する前記センター横溝とは、前記センター主溝での開口長さにおいて、前記センター横溝のタイヤ周方向長さの25%〜50%の領域で重複している請求項8記載の重荷重用タイヤ。
【請求項10】
前記傾斜スロットの最深部の深さは、前記センター主溝の溝深さの50%〜100%である請求項8又は9記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性能及び耐偏摩耗性能を維持しながら、ウエット性能を高めることができる重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トラック及びバスなどに用いられる重荷重用タイヤにおいては、例えば、下記特許文献1に示されるように、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝と、各主溝間及び主溝とタイヤ接地端とをつなぐ横溝によって、複数のブロックが形成されたトレッドパターンが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−195045号公報
【0004】
重荷重用タイヤにおいては、優れたウエット性能が要求されている。ウエット性能を高めるためには、トレッド部の溝容積を増加させることが有効である。
【0005】
しかしながら、トレッド部の溝容積を増加させると、トレッド部のゴムボリュームが減少し、耐摩耗性能が低下するおそれがある。さらには、トレッド部の剛性が低下し、耐偏摩耗性能が低下するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、耐摩耗性能及び耐偏摩耗性能を損なうことなく、優れたウエット性能を得ることができる重荷重用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部に、タイヤ赤道の両側をタイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる一対のセンター主溝と、前記センター主溝とトレッド接地端との間をタイヤ周方向にジグザグ状に連続してのびる一対のショルダー主溝と、前記一対のセンター主溝間をつなぐ複数本のセンター横溝と、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間をつなぐ複数本のミドル横溝とが設けられることにより、前記一対のセンター主溝と前記センター横溝とで区分されたセンターブロックがタイヤ周方向に並ぶセンター陸部、前記センター主溝と前記ショルダー主溝と前記ミドル横溝とで区分されたミドルブロックがタイヤ周方向に並ぶ一対のミドル陸部、及び、前記ショルダー主溝と前記トレッド接地端とで区分されたショルダー陸部を備えた重荷重用タイヤであって、前記センター主溝及び前記ショルダー主溝は、タイヤ周方向に対して3゜〜9゜で傾斜する長辺部と、前記長辺部とは逆向きに傾斜し、かつ、タイヤ周方向の長さが前記長辺部よりも小さい短辺部とが交互に設けられ、前記ミドル横溝は、前記センター主溝の接地端側に突出する外側ジグザグ頂部と前記ショルダー主溝のタイヤ赤道側に突出する内側ジグザグ頂部との間をつないで、タイヤ軸方向に対して傾斜して設けられ、前記センター横溝は、前記一対のセンター主溝の長辺部間をつないで、前記ミドル横溝とは逆方向に傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記センター主溝は、タイヤ赤道側の第1溝縁と、トレッド接地端側の第2溝縁とを有し、前記第1溝縁の最もトレッド接地端側の第1頂部は、前記第2溝縁の最もタイヤ赤道側の第2頂部よりもタイヤ赤道の側にあることが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記第1頂部から前記第2頂部までのタイヤ軸方向の距離W11と、トレッド接地幅TWとの比W11/TWは、0.005〜0.02であることが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記ショルダー主溝は、タイヤ赤道側の第3溝縁と、トレッド接地端側の第4溝縁とを有し、前記第3溝縁の最もトレッド接地端側の第3頂部は、前記第4溝縁の最もタイヤ赤道側の第4頂部よりもタイヤ赤道の側にあることが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記第3頂部から前記第4頂部までのタイヤ軸方向の距離W21と、トレッド接地幅TWとの比W21/TWは、0.005〜0.02であることが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記センター主溝のタイヤ軸方向のジグザグ振幅W12は、前記センターブロックのタイヤ軸方向の最大長さWAの10%〜18%であることが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向の最大長さWBは、前記センターブロックのタイヤ軸方向の最大長さWAの95%〜105%であることが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向の最大長さWCは、前記センターブロックのタイヤ軸方向の最大長さWAの95%〜105%であることが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記ミドルブロックは、前記センター主溝を挟んで前記センター横溝に対向する位置に、前記センター主溝に向かって深さが漸増する傾斜スロットを有することが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記トレッド部のランド比は、70%以上であることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の重荷重用タイヤにあっては、センター主溝及びショルダー主溝は、タイヤ周方向に対して傾斜する長辺部と、長辺部とは逆向きに傾斜し、かつ、タイヤ周方向の長さが長辺部よりも小さい短辺部とが交互に設けられている。これにより、タイヤ軸方向のエッジ成分が大きくなり、ウエット路面でのトラクション性能が向上する。長辺部のタイヤ周方向に対する傾斜角は、3゜〜9゜で規定されている。このようなセンター主溝及びショルダー主溝は、優れた排水性能とエッジ効果を発揮し、重荷重用タイヤのウエット性能を高める。
【0018】
ミドル陸部には、センター主溝の外側ジグザグ頂部とショルダー主溝の内側ジグザグ頂部との間をつないで、タイヤ軸方向に対して傾斜するミドル横溝が設けられている。このようなミドル横溝は、センター主溝とショルダー主溝との間で優れた排水性とエッジ効果を発揮し、重荷重用タイヤのウエット性能を高める。さらに、センター陸部には、一対のセンター主溝の長辺部間をつないで、ミドル横溝とは逆方向に傾斜するセンター横溝が設けられている。このようなセンター横溝は、一対のセンター主溝間で優れた排水性とエッジ効果を発揮し、重荷重用タイヤのウエット性能を高める。
【0019】
これらの相乗効果により、本発明の重荷重用タイヤは、溝容積を増加させることなく、十分なウエット性能を得ることができ、耐摩耗性能及び耐偏摩耗性能を損なうことなく、優れたウエット性能を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の重荷重用タイヤの一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
図2図1のトレッド部のA−A線断面図である。
図3図1のクラウン陸部の拡大展開図である。
図4図1のミドル陸部の拡大展開図である。
図5図1のトレッド部の一部を拡大した斜視図である。
図6図4のミドルブロックを拡大した斜視図である。
図7図1のショルダー陸部の拡大展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の重荷重用タイヤ(全体不図示)のトレッド部2の展開図が示されている。図2には、トレッド部2のA−A線断面が示されている。図1に示されるように、トレッド部2に、タイヤ赤道Cの両側に配されかつタイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる一対のセンター主溝3と、このセンター主溝3のタイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる一対のショルダー主溝4とが形成されている。
【0022】
センター主溝3には、タイヤ周方向に対して傾斜する長辺部3aと、タイヤ周方向の長さが長辺部3aよりも小さい短辺部3bとが交互に設けられている。短辺部3bが、タイヤ周方向に対して長辺部3aとは逆向きに傾斜することにより、ジグザグ状のセンター主溝3が形成されている。
【0023】
長辺部3aのタイヤ周方向に対する傾斜角α1は、好ましくは3゜以上、より好ましくは5゜以上であり、好ましくは9゜以下、より好ましくは7゜以下である。上記傾斜角α1が3゜未満の場合、タイヤ軸方向のエッジ成分が不足し、ウエット路面で十分なトラクション性能が得られないおそれがある。一方、上記傾斜角α1が9゜を超える場合、センター主溝3のジグザグ振幅W12が大きくなることから、センター主溝3の排水性能が低下し、十分なウエット性能が得られないおそれがある。
【0024】
同様に、ショルダー主溝4には、長辺部4aと、タイヤ周方向の長さが長辺部4aよりも小さい短辺部4bとが交互に設けられている。短辺部4bが、タイヤ周方向に対して長辺部4aとは逆向きに傾斜することにより、ジグザグ状のショルダー主溝4が形成されている。
【0025】
センター主溝3と同様に、ショルダー主溝4の長辺部4aのタイヤ周方向に対する傾斜角α2は、好ましくは3゜以上、より好ましくは5゜以上であり、好ましくは9゜以下、より好ましくは7゜以下である。本実施形態の重荷重用タイヤは、センター主溝3の長辺部3a傾斜角α1及びショルダー主溝4の長辺部4aの傾斜角α2が適正な範囲で規定されているので、優れたウエット性能を有する。
【0026】
センター主溝3は、最もタイヤ赤道C側すなわちタイヤ軸方向の内側に突出する内側ジグザグ頂部3i及び最も接地端Te側すなわちタイヤ軸方向の外側に突出する外側ジグザグ頂部3oを有している。同様に、ショルダー主溝4は、最もタイヤ赤道C側すなわちタイヤ軸方向の内側に突出する内側ジグザグ頂部4i及び最も接地端Te側すなわちタイヤ軸方向の外側に突出する外側ジグザグ頂部4oを有している。
【0027】
センター主溝3の溝幅W1及びショルダー主溝4の溝幅W2は、例えば、トレッド部2の接地幅TWに応じて設定されている。ここで、トレッド部2の接地幅TWとは、トレッド接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の長さである。
【0028】
トレッド接地端Teとは、正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷しかつキャンバー角0゜で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地端を意味している。ここで、正規状態とは、タイヤを正規リム(図示省略)にリム組みし、かつ、正規内圧を充填した無負荷の状態とする。以下、特に言及しない場合、タイヤの各部の寸法等はこの正規状態で測定された値とする。
【0029】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" とする。
【0030】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とする。
【0031】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
【0032】
センター主溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド部2の接地幅TWの1.5%〜5%が望ましい。上記溝幅W1が上記接地幅TWの1.5%未満の場合、トレッド部2の排水性が低下するおそれがある。上記溝幅W1が上記接地幅TWの5%を超える場合、ゴムボリュームが不足して、耐摩耗性能及び耐偏摩耗性能が低下するおそれがある。
【0033】
図2に示されるように、センター主溝3の溝深さD1は、例えば、10mm〜20mmが望ましい。上記溝深さD1が10mm未満の場合、トレッド部2の排水性が低下するおそれがある。上記溝深さD1が20mmを超える場合、トレッド部2の剛性が不足して、耐摩耗性能及び耐偏摩耗性能が低下するおそれがある。
【0034】
同様に、ショルダー主溝4の溝幅W2は、例えば、トレッド部2の接地幅TWの1.5%〜5%が望ましく、ショルダー主溝4の溝深さD2は、例えば、10mm〜20mmが望ましい。
【0035】
図3には、一対のセンター主溝3、3を含むトレッド部2の中央領域が示されている。センター主溝3は、タイヤ赤道C側の第1溝縁3cと、トレッド接地端Te側の第2溝縁3dとを有する。第1溝縁3cは、最もトレッド接地端Te側の第1頂部3jを有する。第2溝縁3dは、最もタイヤ赤道C側の第2頂部3pを有する。
【0036】
第1頂部3jは、第2頂部3pよりもタイヤ赤道Cの側に位置されている。すなわち、図3中ハッチングにて示されるように、センター主溝3は、第1頂部3jと第2頂部3pとの間で、タイヤ周方向に直線状に連通する溝直通部3Eを有する。本実施形態では、センター主溝3に溝直通部3Eが設けられているので、センター主溝3の排水性能が向上し、重荷重用タイヤのウエット性能が高められる。
【0037】
溝直通部3Eの幅は、第1頂部3jから第2頂部3pまでのタイヤ軸方向の距離W11で表される。上記距離W11とトレッド接地幅TWとの比W11/TWは、例えば、好ましくは、0.005以上、より好ましくは0.01以上であり、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.015以下である。
【0038】
上記比W11/TWが0.005未満の場合、溝直通部3Eの幅が不足し、センター主溝3の排水性能が十分に高められないおそれがある。一方、上記比W11/TWが0.02を超える場合、トレッド部2の中央領域のゴムボリュームが不足して、耐摩耗性能及び耐偏摩耗性能が低下するおそれがある。
【0039】
図4には、センター主溝3及びショルダー主溝4を含むトレッド部2の中間領域が示されている。ショルダー主溝4は、タイヤ赤道C側の第3溝縁4cと、トレッド接地端Te側の第4溝縁4dとを有する。第3溝縁4cは、最もトレッド接地端Te側の第3頂部4jを有する。第4溝縁4dは、最もタイヤ赤道C側の第4頂部4pを有する。
【0040】
第3頂部4jは、第4頂部4pよりもタイヤ赤道Cの側に位置されている。すなわち、図4中ハッチングにて示されるように、ショルダー主溝4は、第3頂部4jと第4頂部4pとの間で、タイヤ周方向に直線状に連通する溝直通部4Eを有する。本実施形態では、ショルダー主溝4に溝直通部4Eが設けられているので、ショルダー主溝4の排水性能が向上し、重荷重用タイヤのウエット性能が高められる。
【0041】
溝直通部4Eの幅は、第3頂部4jから第4頂部4pまでのタイヤ軸方向の距離W21で表される。上記距離W21とトレッド接地幅TWとの比W21/TWは、例えば、好ましくは、0.005以上、より好ましくは0.01以上であり、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.015以下である。
【0042】
上記比W21/TWが0.005未満の場合、溝直通部4Eの幅が不足し、ショルダー主溝4の排水性能が十分に高められないおそれがある。一方、上記比W21/TWが0.02を超える場合、トレッド部2の中間領域のゴムボリュームが不足して、耐偏摩耗性能が低下するおそれがある。
【0043】
図1乃至4に示されるように、センター主溝3及びショルダー主溝4により、トレッド部2が複数の陸部領域に区分される。すなわち、トレッド部2は、一対のセンター主溝3、3間に挟まれるセンター陸部5、クラウン主溝3及びショルダー主溝4に挟まれる一対のミドル陸部6及びショルダー主溝4のタイヤ軸方向外側に位置する一対のショルダー陸部7の領域に区分される。
【0044】
図3に示されるように、センター陸部5には、一対のセンター主溝3、3間をつなぐ複数本のセンター横溝51が設けられている。センター横溝51は、一対のセンター主溝3、3の長辺部3a、3a間をつなぐ。このようなセンター横溝51は、一対のセンター主溝3、3間で優れた排水性とエッジ効果を発揮し、重荷重用タイヤのウエット性能を高める。
【0045】
センター陸部5は、複数本のセンター横溝51によって、複数のセンターブロック52に区分される。これにより、センター陸部5は、複数のセンターブロック52がタイヤ周方向に隔設されたセンターブロック列53である。
【0046】
センターブロック52は、ジグザグ状のセンター主溝3によって、段差部54を含む8角形状に形成されている。センター主溝3のタイヤ軸方向のジグザグ振幅W12は、例えば、センターブロック52のタイヤ軸方向の最大長さWAの好ましくは、10%以上、より好ましくは13%以上であり、好ましくは18%以下、より好ましくは16%以下である。
【0047】
ジグザグ振幅W12が最大長さWAの10%未満の場合、タイヤ軸方向のエッジ成分が不足し、ウエット路面で十分なトラクション性能が得られないおそれがある。一方、ジグザグ振幅W12が最大長さWAの18%を超える場合、センター主溝3の排水性能が低下し、十分なウエット性能が得られないおそれがある。
【0048】
センター主溝3とセンター横溝51とが交差するブロック頂部のうち、センターブロック52の対角に位置する鋭角なブロック頂部には、一対の面取り部55が形成されている。面取り部55は、センター主溝3とセンター横溝51との間の水の流れを促進する。さらに、面取り部55は、ブロック頂部での応力の集中を緩和し、チッピング等の損傷を抑制する。面取り部55に替えて、上記ブロック頂点に角丸め部が形成されていてもよい。
【0049】
図4に示されるように、ミドル陸部6には、センター主溝3と、ショルダー主溝4との間をつなぐ複数本のミドル横溝61が設けられている。ミドル横溝61は、センター横溝51とは逆方向に傾斜し、センター主溝3の外側ジグザグ頂部3oとショルダー主溝4の内側ジグザグ頂部4iとの間をつなぐ。このようなミドル横溝61は、センター主溝3とショルダー主溝4との間で優れた排水性とエッジ効果を発揮し、重荷重用タイヤのウエット性能を高める。
【0050】
ミドル陸部6は、複数本のミドル横溝61によって、複数のミドルブロック62に区分される。これにより、ミドル陸部6は、複数のミドルブロック62がタイヤ周方向に隔設されたミドルブロック列63である。
【0051】
図3、4に示されるように、ミドルブロック62のタイヤ軸方向の最大長さWBは、例えば、センターブロック52のタイヤ軸方向の最大長さWAの、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上であり、好ましくは105%以下、より好ましくは102%以下である。
【0052】
上記最大長さWBが上記最大長さWAの95%未満の場合、ミドルブロック62のゴムボリュームが不足することから、ミドルブロック62に偏摩耗が発生するおそれがある。一方、上記最大長さWBが上記最大長さWAの105%を超える場合、センターブロック52のゴムボリュームが不足することから、センターブロック52に偏摩耗が発生するおそれがある。
【0053】
図5には、接地端Teの側から視たトレッド部2の一部が拡大して示される。図6には、タイヤ赤道Cの側から視たミドルブロック62が拡大して示される。図4乃至図6に示されるように、ミドルブロック62のセンター主溝3側には、センター主溝3に向かって深さが漸増する傾斜スロット64が設けられている。
【0054】
傾斜スロット64は、センター主溝3を挟んでセンター横溝51に対向する位置に設けられている。このような傾斜スロット64は、ミドルブロック62からセンター横溝51に向かう水の流れを促進し、ミドルブロック62の排水性を高める。
【0055】
本実施形態においては、センター主溝3を挟んで傾斜スロット64に対向するセンターブロック52の頂部には、面取り部55が形成されているので、ミドルブロック62からセンター横溝51に向かう水の流れがより一層促進される。
【0056】
図4に示されるように、センター主溝3を挟んで互いに対向するセンター横溝51と傾斜スロット64とは、タイヤ周方向においてハッチングによって示される領域65で重複する。上記領域65のタイヤ周方向長さL1は、例えば、センター横溝51のタイヤ周方向長さL2の25%〜50%が望ましい。すなわち、傾斜スロット64と、この傾斜スロット64に対向するセンター横溝51とは、センター主溝3での開口長さにおいて、センター横溝51のタイヤ周方向長さL2の25%〜50%の領域で重複するのが望ましい。
【0057】
上記長さL1が上記長さL2の25%未満である場合、傾斜スロット64によるミドルブロック62からセンター横溝51に向かう水の流れを促進する効果が減少するおそれがある。一方、上記長さL1が上記長さL2の50%を超える場合、タイヤ赤道Cを挟んで一方側のミドルブロック62からセンター横溝51に向かう水の流れが過度に強くなり、他方側のミドルブロック62からセンター横溝51に向かう水の流れを阻害し、トレッド部2全体としての排水性が低下するおそれがある。
【0058】
図4に示されるように、傾斜スロット64は、センター主溝3からクラウン主溝4に向かってのび、クラウン主溝4に連通することなくミドルブロック62内で終端する。傾斜スロット64のセンター主溝3での開口64aから傾斜スロット64の終端64bまでの長さL3は、例えば、センター主溝3の溝幅W1の55%〜65%であるのが望ましい。
【0059】
上記長さL3が上記溝幅W1の55%未満である場合、傾斜スロット64の容積が不足し、ミドルブロック62からセンター横溝51に向かう水の流れを促進する効果が減少するおそれがある。一方、上記長さL3が上記溝幅W1の65%を超える場合、ミドルブロック62のゴムボリュームが不足し、耐摩耗性能が低下するおそれがある。さらに、ミドルブロック62の剛性が低下し、耐偏摩耗性能が低下するおそれがある。
【0060】
図2(b)、図6に示されるように、開口64aでの傾斜スロット64の深さD3、すなわち傾斜スロット64の最深部の深さは、例えば、センター主溝3の溝深さD1の50%〜100%であるのが望ましい。
【0061】
上記深さD3が上記溝深さD1の50%未満である場合、傾斜スロット64によるミドルブロック62からセンター横溝51に向かう水の流れを促進する効果が減少するおそれがある。
【0062】
図2(b)、図6に示されるように、傾斜スロット64は、底部にミドルブロック62の踏面62sからタイヤ半径方向内方に傾く傾斜面64cを有している。傾斜面64cとミドルブロック62の踏面62sとがなす角度θは、例えば、50゜〜70゜が望ましい。
【0063】
上記角度θが50゜未満の場合、傾斜スロット64の容積が不足し、ミドルブロック62からセンター横溝51に向かう水の流れを促進する効果が減少するおそれがある。一方、上記角度θが70゜を超える場合、ミドルブロック62のゴムボリュームが不足し、耐摩耗性能が低下するおそれがある。さらに、ミドルブロック62の剛性が低下し、耐偏摩耗性能が低下するおそれがある。
【0064】
図4乃至6に示されるように、センター主溝3及びショルダー主溝4とミドル横溝61とが交差するブロック頂部のうち、ミドルブロック62の対角に位置する鋭角なブロック頂部には、一対の面取り部66が形成されている。面取り部66は、センター主溝3及びショルダー主溝4とミドル横溝61との間の水の流れを促進する。さらに、面取り部66は、ブロック頂部での応力の集中を緩和し、チッピング等の損傷を抑制する。面取り部66に替えて、上記ブロック頂部に角丸め部が形成されていてもよい。
【0065】
図7には、ショルダー主溝4及びショルダー陸部7の拡大図が示されている。ショルダー陸部7は、タイヤ周方向に連続して形成されている。このようなショルダー陸部7は、剛性が高く、いわゆる肩落ち摩耗等の偏摩耗を効果的に抑制する。さらに、タイヤ周方向に連続するショルダー陸部7によって、トレッド接地端Te近傍のゴムボリュームが確保されるので、耐摩耗性能及び耐偏摩耗性能が向上する。
【0066】
図3、7に示されるように、ショルダー陸部7のタイヤ軸方向の最大長さWCは、例えば、センターブロック52のタイヤ軸方向の最大長さWAの、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上であり、好ましくは105%以下、より好ましくは102%以下である。
【0067】
上記最大長さWCが上記長さWAの95%未満の場合、ショルダー陸部7のゴムボリュームが不足することから、ショルダー陸部7に偏摩耗が発生するおそれがある。一方、上記最大長さWCが上記最大長さWAの105%を超える場合、センターブロック52のゴムボリュームが不足することから、センターブロック52に偏摩耗が発生するおそれがある。
【0068】
本実施形態では、タイヤ周方向に連続するショルダー陸部7によって、トレッド部2のランド比が十分に確保され、耐摩耗性能及び耐偏摩耗性能が高められる。より具体的には、トレッド部2のランド比は、例えば、70%以上が望ましい。
【0069】
トレッド部2のランド比が70%未満の場合、トレッド部2のゴムボリュームが不足すると共に、トレッド部2の剛性が低下し、耐摩耗性能及び耐偏摩耗性能が低下するおそれがある。さらに、トレッド部2の剛性低下によって、センターブロック52及びミドルブロック62に欠損が生ずるおそれがある。
【0070】
以上、本発明の重荷重用タイヤが詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0071】
図1の基本構造をなすサイズ215/75R17.5の重荷重用タイヤが、表1の仕様に基づき試作され、ウエット性能及び耐偏摩耗性能がテストされた。テスト方法は、以下の通りである。
【0072】
<ウエット性能>
各試供タイヤが、リム17.5×6.00、内圧700kPaの条件にて、最大積載量4トン積み、のトラック(2−D車)の後輪に装着された。上記車両は、半積載の状態で、厚さ5mmの水膜を有するウエット路面に持ち込まれ、変速ギアを2速、エンジン回転数を1500rpmにそれぞれ固定してクラッチを繋いだ瞬間からの10mの通過時間が測定され、指数化された。結果は、各々の通過時間の逆数であり、実施例1の値を100とする指数で表示されている。評価は、数値が大きいほど排水性能が良好である。
【0073】
<耐偏摩耗性能>
上記車両の一方の後輪に実施例1のタイヤが、他方の後輪にその他のタイヤがそれぞれ装着され、一般道でいずれかのタイヤが50%摩耗するまで走行され、トレッド部の偏摩耗が目視によって確認された。結果は、実施例1を5とする評点で表わされ、数値が大きいほど耐偏摩耗性能が良好である。
【0074】
【表1】
【0075】
表1から明らかなように、実施例の重荷重用タイヤは、比較例に比べて耐偏摩耗性能を損なうことなく、ウエット性能が有意に向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0076】
2 トレッド部
3 センター主溝
3a 長辺部
3b 短辺部
3c 第1端縁
3d 第2端縁
3i 内側ジグザグ頂部
3j 第1頂部
3o 外側ジグザグ頂部
3p 第2頂部
4 ショルダー主溝
4a 長辺部
4b 短辺部
4c 第3端縁
4d 第4端縁
4i 内側ジグザグ頂部
4j 第3頂部
4o 外側ジグザグ頂部
4p 第4頂部
5 センター陸部
6 ミドル陸部
7 ショルダー陸部
51 センター横溝
52 センターブロック
61 ミドル横溝
62 ミドルブロック
64 傾斜スロット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7