(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
地中に鋼矢板を打設して横断面視で凹凸状の土留めを構築し、所定の間隔をあけて構築した一対の前記土留めの間の地盤を地上部から開削し、開削空間内に一対の側壁部と底版部を備えるU字状のコンクリート躯体を構築してなる掘割式の半地下構造物において、
棒状に形成され、基端を前記鋼矢板に固着し、前記土留めの内面から前記開削空間に突設された複数のずれ止め部材を備え、
前記側壁部が、前記ずれ止め部材を埋設して前記土留めと一体に構築され、且つ無筋コンクリート造として構築され、
一体化した前記側壁部と前記土留めの合成壁構造の横断面視で、前記側壁部の表面に近い前記土留めの内面の凸面部に、前記側壁部の表面から遠い前記土留めの内面の凹面部よりも前記ずれ止め部材が多く配設されていることを特徴とする半地下構造物。
地中に鋼矢板を打設して横断面視で凹凸状の土留めを構築し、所定の間隔をあけて構築した一対の前記土留めの間の地盤を地上部から開削し、開削空間内に一対の側壁部と底版部を備えるU字状のコンクリート躯体を構築してなる掘割式の半地下構造物において、
棒状に形成され、基端を前記鋼矢板に固着し、前記土留めの内面から前記開削空間に突設された複数のずれ止め部材を備え、
前記側壁部が、前記ずれ止め部材を埋設して前記土留めと一体に構築され、且つ無筋コンクリート造として構築され、
前記側壁部にひび割れ誘発目地が設けられ、
一体化した前記側壁部と前記土留めの合成壁構造の横断面視で、前記ひび割れ誘発目地が、隣り合う鋼矢板の継手部に対し、前記側壁部の表面に沿う横方向に位置をずらして配設されていることを特徴とする半地下構造物。
地中に鋼矢板を打設して横断面視で凹凸状の土留めを構築し、所定の間隔をあけて構築した一対の前記土留めの間の地盤を地上部から開削し、開削空間内に一対の側壁部と底版部を備えるU字状のコンクリート躯体を構築してなる掘割式の半地下構造物において、
前記土留めは、前横方向に沿って交互に並ぶ前記鋼矢板の凸部及び凹部によって構成され、
基端を前記鋼矢板に固着し、前記土留めの内面から前記開削空間に突設され、かつ軸部と軸部の先端に一体形成された頭部とを備えたスタッドからなる複数のずれ止め部材を備え、
前記側壁部が、前記スタッドを埋設して前記土留めと一体に構築され、且つ無筋コンクリート造として構築され、
前記スタッドは、前記凸部及び凹部の両方に配設され、
一体化した前記側壁部と前記土留めの合成壁構造の横断面視で、前記合成壁構造の中立軸を境に前記側壁部の表面側の圧縮力作用領域に、前記凸部及び凹部の前記スタッドの突出方向先端が配されるようにして、前記スタッドが突設されていることを特徴とする半地下構造物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の地下構造物や半地下構造物には、大断面になるほど、地下水によって大きな浮力が発生する。特に、半地下構造物底面の深度が深くなり、地下水位面との水頭差が大きくなると、土留めを境に内側と外側の地下水位の違いによってボイリングを生じさせるような水圧(揚圧力)が作用することになる。
【0006】
そして、ボックス型のコンクリート躯体(トンネル構造)からなる地下構造物においては、上方地盤を埋め戻すことで大きな上載荷重を確保でき、ボックス型のコンクリート躯体自体で浮力や揚圧力に抵抗することができる。
【0007】
一方、上方が地上部に開口するU型擁壁の半地下構造物においては、埋め戻し地盤による上載荷重がないため、浮力や揚圧力の作用によって浮き上がり、位置ずれが生じるおそれがある。このため、U型擁壁の半地下構造物においては、ボックス型の地下構造物よりも確実強固なずれ止め対策が必要であり、従来、コンクリート量を増して大きな自重を確保するなどの対策が採られていた。しかしながら、このコンクリートを増量する対策では、材料や掘削土量が増大して高コスト化し、また、側壁部や床版部の厚さが増大することによって敷地境界にかかる施工スペースの確保が困難になるなどの問題があった。
【0008】
さらに、半地下構造物においては、上方が地上部に開口しているため、ボックス型の地下構造物と比較し、コンクリート躯体が環境影響を受けやすく、海から飛来する塩分や凍結防止剤などのコンクリート外部から侵入する塩分や中性化による鉄筋腐食、アルカリ骨材反応などによって、コンクリート躯体、特に側壁部にひび割れが発生しやすい。このため、特に半地下構造物は、点検、メンテナンスなどの供用中の継続的な管理が必要であり、この管理に多大な労力とコストを要するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、確実且つ好適に浮き上がりを防止できるとともに、点検、メンテナンスなどの管理を軽減できる半地下構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0011】
本発明の半地下構造物は、地中に鋼矢板を打設して横断面視で凹凸状の土留めを構築し、所定の間隔をあけて構築した一対の前記土留めの間の地盤を地上部から開削し、開削空間内に一対の側壁部と底版部を備えるU字状のコンクリート躯体を構築してなる掘割式の半地下構造物において、棒状に形成され、基端を前記鋼矢板に固着し、前記土留めの内面から前記開削空間に突設された複数のずれ止め部材を備え、前記側壁部が、前記ずれ止め部材を埋設して前記土留めと一体に構築され、且つ無筋コンクリート造として構築され
、一体化した前記側壁部と前記土留めの合成壁構造の横断面視で、前記側壁部の表面に近い前記土留めの内面の凸面部に、前記側壁部の表面から遠い前記土留めの内面の凹面部よりも前記ずれ止め部材が多く配設されていることを特徴とする。
【0012】
この発明においては、U字状のコンクリート躯体(U型擁壁)の側壁部と鋼矢板を打設して構築した土留めとをずれ止め部材によって一体にすることができ、従来、U型擁壁の半地下構造を構築する際に、仮設として用いられていた鋼矢板の土留めを本設に適用することができる。これにより、鋼矢板の根入れによる地盤との摩擦抵抗及び鋼矢板の自重を、U字状のコンクリート躯体の地下水による浮き上がりに対する抵抗(浮き上がり抵抗)として活用でき、埋め戻し地盤による上載荷重がない半地下構造物であっても、確実にコンクリート躯体に位置ずれ(すなわち、地盤との相対的な位置ずれ、または鋼矢板と側壁部の間に位置ずれ)が生じることを防止でき、安定した半地下構造物を好適に構築することが可能になる。
【0013】
また、ずれ止め部材を介してコンクリート躯体の側壁部の背面側に鋼矢板が一体化されることで、主働土圧によって生じる引張力を鋼矢板で負担することができる。これにより、U字状のコンクリート躯体の側壁部を無筋コンクリート造とすることが可能になり、このように側壁部を無筋コンクリート造とした場合であっても十分な耐力を備えた半地下構造物を構築することが可能になる。
【0014】
さらに、このようにコンクリート躯体の側壁部を無筋コンクリート造にできることで、上方が開口したU字状のコンクリート躯体を備え、このコンクリート躯体が環境影響を受けやすい半地下構造物であっても、海から飛来する塩分や凍結防止剤などのコンクリート外部から侵入する塩分や中性化による鉄筋腐食が生じることがなく、側壁部ひいてはコンクリート躯体のひび割れ発生を大幅に低減することが可能になる。これにより、従来と比較し、点検、メンテナンスなどの供用中の管理に要する労力やコストを大幅に軽減することが可能になる。
また、この発明においては、合成壁構造の壁厚方向で中立軸に近いほど大きなせん断力が発生するため、中立軸に近くなる土留めの凸面部に多くのずれ止め部材を配設しておくことによって、確実且つ効果的に鋼矢板と側壁部の間の位置ずれを防止することができる。
【0015】
また、本発明の半地下構造物においては、一体化した前記側壁部と前記土留めの合成壁構造の横断面視で、前記合成壁構造の中立軸を境に前記側壁部の表面側の圧縮力作用領域に、前記ずれ止め部材の突出方向先端が配されるようにして、前記ずれ止め部材が突設されていることが望ましい。
また、本発明の半地下構造物においては、地中に鋼矢板を打設して横断面視で凹凸状の土留めを構築し、所定の間隔をあけて構築した一対の前記土留めの間の地盤を地上部から開削し、開削空間内に一対の側壁部と底版部を備えるU字状のコンクリート躯体を構築してなる掘割式の半地下構造物において、
前記土留めは、前横方向に沿って交互に並ぶ前記鋼矢板の凸部及び凹部によって構成され、基端を前記鋼矢板に固着し、前記土留めの内面から前記開削空間に突設され、かつ軸部と軸部の先端に一体形成された頭部とを備えたスタッドからなる複数のずれ止め部材を備え、前記側壁部が、前記スタッドを埋設して前記土留めと一体に構築され、且つ無筋コンクリート造として構築され、
前記スタッドは、前記凸部及び凹部の両方に配設され、一体化した前記側壁部と前記土留めの合成壁構造の横断面視で、前記合成壁構造の中立軸を境に前記側壁部の表面側の圧縮力作用領域に、
前記凸部及び凹部の前記スタッドの突出方向先端が配されるようにして、前記スタッドが突設されていることを特徴とする。
【0016】
この発明においては、単にずれ止め部材でコンクリート躯体の側壁部と土留めの鋼矢板を一体にするのではなく、ずれ止め部材の先端が合成壁構造の中立軸よりも側壁部の表面側の圧縮力作用領域に配されているため、合成壁構造に主働土圧が作用し、土留めに基端を固着したずれ止め部材が引っ張られ、無筋コンクリート造の側壁部にコーン破壊が生じ引き抜けることを防止できる。これにより、ずれ止め部材によって、好適にコンクリート躯体と土留めを一体にした半地下構造物を構築することができる。
【0017】
さらに、本発明の半地下構造物においては、前記側壁部の上下方向の中央を境に上方に配設された複数のずれ止め部材の総断面積よりも、前記側壁部の下方に配設された複数のずれ止め部材の総断面積が大きくなるように、前記複数のずれ止め部材が配設されていることがより望ましい。
【0018】
本発明の対象としている半地下構造物において、主働土圧によって側壁部に作用する曲げ荷重、鋼矢板と側壁部の間のずれを引き起こすせん断力は、側壁部の上端部から下端部に向かうほど(深度方向の深い位置ほど)大きくなる。このため、本発明においては、ずれ止め部材の設置本数を調整したり、径が異なるずれ止め部材を用いるなどして、側壁部の上下方向の中央を境に上方のずれ止め部材の総断面積よりも、下方のずれ止め部材の総断面積が大きくなるように、複数のずれ止め部材を配設することによって、確実且つ効果的にコンクリート躯体の位置ずれを防止することができる。
【0019】
また、本発明の半地下構造物においては、前記側壁部の上端部側と下端部側にそれぞれ、前記ずれ止め部材が集中的に配設されていることがさらに望ましい。
【0020】
この発明においては、側壁部の上端部側と下端部側にずれ止め部材を集中的に配設し、鋼矢板と側壁部を上端部側と下端部側で一体に拘束して、上下端部のずれを防止することにより、少ないずれ止め部材で効果的に鋼矢板と側壁部の間の位置ずれの発生を抑止することができる。これにより、側壁部の全面にずれ止め部材を配置する場合と比べ、ずれ止め部材費用の削減及びずれ止め部材の取付作業の負担軽減を図ることが可能になる。
【0023】
また、本発明の半地下構造物においては、前記鋼矢板の内面及び/又は外面から前記地盤内に突設される摩擦抵抗部材を備えていることがより望ましい。
【0024】
この発明においては、地盤内に突設される摩擦抵抗部材が設けられていることで、地盤との摩擦面が増え、浮き上がりに対する抵抗を高めることができる。さらに、鋼矢板の剛性を高めることができ、コンクリート躯体側の荷重負担を低減することが可能になる。これにより、コンクリート躯体の側壁部を無筋コンクリート造とした場合であっても、十分な耐久性を備えた半地下構造物にすることができ、側壁部を無筋コンクリート造にすることによるひび割れ発生の抑止効果、ひいては管理の軽減効果を確実に得ることが可能になる。
【0025】
さらに、本発明の半地下構造物においては、前記土留めを形成する複数の鋼矢板の少なくとも一部の鋼矢板には、下端部側に、上下方向に開口する貫通空間を形成し、前記下端部側を筒状に形成する引抜抵抗部材が一体に取り付けられていることがより望ましい。
【0026】
この発明においては、鋼矢板の下端部側に引抜抵抗部材を一体に取り付けて、下端部側を筒状に形成することによって、鋼矢板を打設した状態で、この筒状部分の貫通空間に土砂が詰まり、鋼矢板ひいては本設として使用する土留めの引抜抵抗力を増大させることが可能になる。これにより、コンクリート躯体の地下水による浮き上がりに対する抵抗(浮き上がり抵抗)を増大させることができ、さらに確実に、コンクリート躯体の厚さを大きくすることなく、安定的に半地下構造物を構築することが可能になる。
【0027】
また、本発明の半地下構造物においては、
地中に鋼矢板を打設して横断面視で凹凸状の土留めを構築し、所定の間隔をあけて構築した一対の前記土留めの間の地盤を地上部から開削し、開削空間内に一対の側壁部と底版部を備えるU字状のコンクリート躯体を構築してなる掘割式の半地下構造物において、棒状に形成され、基端を前記鋼矢板に固着し、前記土留めの内面から前記開削空間に突設された複数のずれ止め部材を備え、前記側壁部が、前記ずれ止め部材を埋設して前記土留めと一体に構築され、且つ無筋コンクリート造として構築され、前記側壁部にひび割れ誘発目地が設けられ、一体化した前記側壁部と前記土留めの合成壁構造の横断面視で、前記ひび割れ誘発目地が、隣り合う鋼矢板の継手部に対し、前記側壁部の表面に沿う横方向に位置をずらして配設されていること
を特徴する。
【0028】
この発明においては、U字状のコンクリート躯体を開削空間内に構築する際、底版部のコンクリートを打設した後に側壁部のコンクリートを打設することになる。そして、このとき、底版部と側壁部の間にコンクリートの硬化時の温度差が生じ、側壁部が底版部に拘束される形になるため、側壁部にひび割れが発生するおそれがある。これに対し、側壁部にひび割れ誘発目地を設けておくことによって、無秩序にひび割れが発生することを防止でき、側壁部の耐久性や美観を損なうことを防止できる。
【0029】
また、このひび割れ誘発目地が隣り合う鋼矢板の継手部に対して横方向の異なる位置に配設されているため、ひび割れ誘発目地を設けることによって止水性が損なわれることを防止できる。すなわち、鋼矢板の継手部からひび割れ誘発目地を通じて、側壁部の表面側に地下水の漏水が生じることを防止できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の半地下構造物においては、コンクリート躯体の側壁部と土留めとをずれ止め部材によって一体にすることができ、鋼矢板の根入れによる地盤との摩擦抵抗及び鋼矢板の自重をコンクリート躯体の浮き上がり抵抗として活用することができる。
【0031】
これにより、上方が開口したU字状のコンクリート躯体を備えた半地下構造物であっても、コンクリート重量を増して大きな自重を確保したり、側壁部や床版部の厚さを増大する必要がなく、材工費が増大したり、敷地境界にかかる施工スペースの確保が困難になるなどの従来の不都合を解消することが可能になる。
【0032】
また、ずれ止め部材を介して側壁部の背面側に鋼矢板が一体化されることで、主働土圧によって生じる引張力を鋼矢板で負担することができ、側壁部を無筋コンクリート造として形成することが可能になるとともに、十分な耐力を備えた半地下構造物を構築することが可能になる。
【0033】
そして、このように側壁部を無筋コンクリート造にできることで、U字状に形成されて、コンクリート躯体が環境影響を受けやすい半地下構造物であっても、海から飛来する塩分や凍結防止剤などのコンクリート外部から侵入する塩分や中性化による鉄筋腐食が側壁部に生じてひび割れが発生することがない。これにより、従来と比較し、供用中の継続的な点検、メンテナンスの管理に要する労力やコストを大幅に軽減することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、
図1から
図3を参照し、本発明の一実施形態に係る半地下構造物について説明する。ここで、本実施形態は、例えば都市部の道路構造などとして構築される掘割式の半地下構造物に関するものである。
【0036】
本実施形態の半地下構造物Aは、
図1及び
図2に示すように、地中に鋼矢板1を打設し、横方向(壁厚方向)T1に所定の間隔をあけて構築した一対の土留め2と、一対の土留め2の間の地盤Gを地上部から開削し、この開削空間H内に構築したコンクリート躯体3とを備えて構成されている。
【0037】
また、土留め2は、周知のU形、ハット形、Z形などの鋼矢板1を用い、隣り合う鋼矢板1と互いの嵌合継手(継手部4)を嵌合させながら、順次複数の鋼矢板1を地中に打設して形成されている。さらに、この土留め2は、上下方向T2に延び、半地下構造物Aの延設方向に沿う横方向T3に交互に規則的に並ぶ凸部2aと凹部2bを備え、横断面視(
図2の断面視)で凹凸状に形成されている。そして、各土留め2の下端部(鋼矢板1の下端部1a)側を、所定の根入れ長を確保するように地盤G内に埋設した状態で残しつつ、地上部から予め設定された深度方向(上下方向T2)の所定深さまで一対の土留め2の間の地盤Gを掘削することによって、開削空間Hが形成されている。なお、土留め2を形成する複数の鋼矢板1は全てが必ずしも同じ長さである必要はない。例えば地下水流を阻害しないように、短い鋼矢板1を適宜設けたり、鋼矢板1自体に予め孔を設けるようにしてもよい。
【0038】
また、土留め2には、棒状に形成された複数のずれ止め部材5が、基端5aを土留め2の鋼矢板1に固着し、鋼矢板1の内面(土留め2の内面2c)から開削空間H側に突出させて設けられている。本実施形態では、このずれ止め部材5として、軸部と軸部の先端5bに一体形成された頭部とを備えてなる鋼製のスタッドが適用され、軸部の基端5aを土留め2の内面2cに溶接で接続するなどして取り付けられている。また、本実施形態では、コンクリート躯体3の側壁部6の上端部6a側から下端部6b側までの上下方向T2の間に複数のずれ止め部材5が所定の間隔をあけ、開削空間Hを形成する土留め2の内面2c全体に、縦横整列したり、千鳥配置にするなどして、略均等に分散配置されている。
【0039】
一方、コンクリート躯体3は、上方に開口したU型擁壁であり、底版部7と一対の側壁部6とを備えてU字状に形成されている。底版部7は、開削空間Hの底面上にコンクリートを打設し、所定の厚さをもって形成されている。また、底版部7は、鉄筋コンクリート造として形成されていることが好ましい。
【0040】
側壁部6は、各土留め2の内面2cに密着するようにコンクリートを打設し、平面状の表面(内面)6cを備えて壁状に形成されている。また、この側壁部6は、無筋コンクリート造として形成され、土留め2の内面2cに突設したずれ止め部材5をコンクリート内に埋設することで土留め2と一体に構築されている。さらに、底版部7の周端部側と側壁部6の下端部6b側は、例えば底版部7の鉄筋を側壁部6側に延設し、側壁部6のコンクリートに埋設させるなどして、一体に剛結されている。なお、側壁部6と底版部7とを接続するための鉄筋は、側壁部6の鉄筋として扱わず、これにより、側壁部6が無筋コンクリート造であるものとする。
【0041】
さらに、本実施形態では、
図3に示すように、側壁部6にひび割れ誘発目地8が設けられている。ひび割れ誘発目地8は、一体化した側壁部6と土留め2の合成壁構造10の横断面視で、隣り合う鋼矢板1の継手部4に対し、側壁部6の表面6cに沿う横方向T3に位置をずらして配設されている。また、本実施形態のひび割れ誘発目地8は、側壁部6の表面6cから背面6dに貫通し、側壁部6の上端部6aから下端部6bまで延設され、エラスタイトなどの目地材を挿入して構成されている。目地材の材料費を最も低減するためには、目地材のT1方向の幅を最小とすることが好適である。そのため、目地材を入れる平面位置は、側壁部6の表面6cから鋼矢板1までの距離が最も短くなる、鋼矢板1の凸部2a平面上とし、表面6c及び凸部2aに直交する方向に配置するのが最適である。よって、ハット形鋼矢板1を使用した場合の鋼矢板1の継手位置は、凹部2bに配置することが好適である。なお、隣り合う鋼矢板1を溶接して土留め2が形成されている場合には、隣り合う鋼矢板1の溶接部と、側壁部6の表面6cに沿う横方向T3の同位置にひび割れ誘発目地8を配設するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態の半地下構造物Aにおいては、
図2に示すように、一体化した側壁部6と土留め2の合成壁構造10の横断面視で、合成壁構造10の中立軸Cを境に側壁部の表面側の圧縮領域(圧縮力作用領域)に、ずれ止め部材5の突出方向先端5bの頭部が配されるようにして、ずれ止め部材5が突設されている。
【0043】
そして、上記のように構成した本実施形態の半地下構造物Aにおいては、コンクリート躯体3の側壁部6と土留め2の鋼矢板1とがずれ止め部材5によって一体化されている。これにより、本実施形態の半地下構造物Aにおいては、従来では仮設として使用される土留め2を本設に適用して構築されており、鋼矢板1の根入れによる地盤Gとの摩擦抵抗及び鋼矢板1の自重がコンクリート躯体3の地下水11による浮き上がりに対する抵抗(浮き上がり抵抗)となる。
【0044】
このため、地下水11による浮力や、ボイリングを生じさせるような揚圧力がコンクリート躯体3に作用しても、これら浮力や揚圧力がコンクリート躯体3からずれ止め部材5に、ずれ止め部材5から土留め2に伝搬して受け止められ、土留め2の地盤Gとの摩擦抵抗や自重による抵抗によって支持される。これにより、埋め戻し地盤によって上載荷重が得られないU字状のコンクリート躯体3を備えた半地下構造物Aであっても、コンクリート躯体3が浮力や揚圧力によって位置ずれすることがない。
【0045】
また、ずれ止め部材5を介してコンクリート躯体3の側壁部6の背面6d側に土留め2の鋼矢板1が一体化されていることにより、主働土圧によって生じる引張力を鋼矢板1で負担することができる。これにより、側壁部6を無筋コンクリート造とした場合であっても、本実施形態の半地下構造物Aは、鉄筋コンクリート造と同等以上の十分な耐力を備えて構築されることになる。
【0046】
さらに、本実施形態の半地下構造物Aにおいては、単にずれ止め部材5でコンクリート躯体3の側壁部6と土留め2の鋼矢板1を一体にするのではなく、ずれ止め部材5の先端5bが合成壁構造10の中立軸Cよりも側壁部6の表面6c側の圧縮領域に配されている。そして、合成壁構造10に主働土圧が作用し、土留め2が引張力を負担するとともに、基端5aを土留め2に固着したずれ止め部材5が土留め2側に引っ張られることになるが、ずれ止め部材5の先端5b側が側壁部6の内部で圧縮力を受けていることで、無筋コンクリート造の側壁部6にコーン破壊が生じ、ずれ止め部材5が引き抜けることが防止される。
【0047】
ここで、従来の鉄筋コンクリート造の側壁部は、埋設された縦筋や横筋が側壁部の表面に沿って上下方向T2や横方向T3に連続的に延設されている。このため、これら鉄筋が腐食した際には、連続的に上下方向T2や横方向T3にひび割れが発生し、耐久性や美観が急速に損なわれるおそれがある。このことから、従来の半地下構造物においては、ある程度高頻度で点検やメンテナンスの管理を行うことが必要になる。
【0048】
これに対し、本実施形態の半地下構造物Aでは、側壁部6を無筋コンクリート造にしたことで、上方が開口したU字状に形成され、環境影響を受けやすいコンクリート躯体3であっても、従来のように、海から飛来する塩分や凍結防止剤などのコンクリート外部から侵入する塩分や中性化による鉄筋腐食によって、側壁部6にひび割れが発生することがない。このため、点検、メンテナンスなどの供用中の継続的な管理が不要になり、あるいはその頻度が大幅に少なくて済み、従来と比較し、管理に要する労力やコストが大幅に軽減されることになる。
【0049】
この一方で、本実施形態の半地下構造物Aでは、側壁部6にずれ止め部材5のスタッドが埋設されている。そして、ずれ止め部材5が腐食した場合には、やはり側壁部6にひび割れが生じるおそれがある。しかしながら、このずれ止め部材5は、従来の縦筋や横筋のように上下方向T2や横方向T3に連続的に延設されていないため、たとえずれ止め部材5の腐食に伴ってひび割れが発生したとしても、局所的なひび割れとなり、耐久性や美観を急速に損なうおそれはない。これにより、本実施形態の半地下構造物Aにおいては、やはり、点検やメンテナンスの管理の頻度が大幅に少なくなる。あるいは管理が不要になる。
【0050】
また、U字状のコンクリート躯体3を開削空間H内に構築する際には、底版部7のコンクリートを打設した後に側壁部6のコンクリートを打設することになる。そして、このとき、底版部7と側壁部6の間にコンクリートの硬化時の温度差が生じ、側壁部6が底版部7に拘束される形になってしまう。このため、コンクリートの硬化時に側壁部6にひび割れが発生するおそれがあるが、本実施形態のように、側壁部6にひび割れ誘発目地8が設けられている場合には、側壁部6に無秩序にひび割れが発生することがなく、側壁部6の耐久性や美観を損なうことが防止される。
【0051】
また、このようにひび割れ誘発目地8を設けると、鋼矢板1の継手部4からひび割れ誘発目地8を通じ、地下水11が側壁部6の表面6c側に漏出し、耐久性や美観を損なうことが考えられる。これに対し、本実施形態のように、ひび割れ誘発目地8を隣り合う鋼矢板1の継手部4に対して横方向T3の異なる位置に配設しておくことで、鋼矢板1の継手部4とひび割れ誘発目地8が連通することがなく、地下水11の漏水の発生が防止されることになる。
【0052】
したがって、本実施形態の半地下構造物Aにおいては、U字状のコンクリート躯体(U型擁壁)3の側壁部6と鋼矢板1を打設して構築した土留め2とをずれ止め部材5によって一体にすることができ、従来、U型擁壁の半地下構造物を構築する際に、仮設として用いられていた鋼矢板1の土留め2を本設に適用することができる。これにより、鋼矢板1の根入れによる地盤Gとの摩擦抵抗及び鋼矢板1の自重を、U字状のコンクリート躯体3の地下水11による浮き上がりに対する抵抗(浮き上がり抵抗)として活用でき、埋め戻し地盤による上載荷重がない半地下構造物Aであっても、確実にコンクリート躯体3に位置ずれ(すなわち、地盤Gとの相対的な位置ずれ、または鋼矢板1と側壁部6の間に位置ずれ)が生じることを防止でき、安定した半地下構造物Aを好適に構築することが可能になる。
【0053】
よって、上方が開口したU字状のコンクリート躯体3を備えた半地下構造物Aであっても、コンクリート重量を増して大きな自重を確保したり、側壁部6や床版部7の厚さを増大する必要がなく、材工費が増大したり、敷地境界にかかる施工スペースの確保が困難になるなどの従来の不都合を解消することが可能になる。
【0054】
また、ずれ止め部材5を介してコンクリート躯体3の側壁部6の背面6d側に鋼矢板1が一体化されることで、主働土圧によって生じる引張力を鋼矢板1で負担することができる。これにより、U字状のコンクリート躯体3の側壁部6を無筋コンクリート造とすることが可能になり、このように側壁部6を無筋コンクリート造とした場合であっても十分な耐力を備えた半地下構造物Aを構築することが可能になる。
【0055】
さらに、このようにコンクリート躯体3の側壁部6を無筋コンクリート造にできることで、上方が開口したU字状のコンクリート躯体3を備え、このコンクリート躯体3が環境影響を受けやすい半地下構造物Aであっても、海から飛来する塩分や凍結防止剤などのコンクリート外部から侵入する塩分や中性化による鉄筋腐食が生じることがなく、側壁部6ひいてはコンクリート躯体3のひび割れ発生をなくすことが可能になる(あるいは大幅に低減することが可能になる)。これにより、従来と比較し、点検、メンテナンスなどの供用中の管理に要する労力やコストを大幅に軽減することが可能になる。
【0056】
また、本実施形態の半地下構造物Aにおいては、単にずれ止め部材5でコンクリート躯体3の側壁部6と土留め2の鋼矢板1を一体にするのではなく、ずれ止め部材5の先端5bが合成壁構造10の中立軸Cよりも側壁部6の表面6c側の圧縮領域に配されているため、合成壁構造10に主働土圧が作用し、土留め2に基端5aを固着したずれ止め部材5が引っ張られ、無筋コンクリート造の側壁部6にコーン破壊が生じ引き抜けることを防止できる。これにより、ずれ止め部材5によって、好適にコンクリート躯体3と土留め2を一体にした半地下構造物Aを構築することができる。
【0057】
さらに、本実施形態の半地下構造物Aにおいては、コンクリート躯体3を開削空間H内に構築する際に、底版部7と側壁部6の間にコンクリートの硬化時の温度差が生じた場合であっても、側壁部6にひび割れ誘発目地8が設けられているため、側壁部6に無秩序にひび割れが発生することを防止でき、側壁部6の耐久性や美観を損なうことを防止できる。
【0058】
また、このひび割れ誘発目地8が隣り合う鋼矢板1の継手部4に対して横方向T3の異なる位置に配設されているため、ひび割れ誘発目地8を設けることによる止水性低下を防止できる。すなわち、鋼矢板1の継手部4からひび割れ誘発目地8を通じて、側壁部6の表面6c側に地下水11の漏水が生じることを防止できる。
【0059】
以上、本発明に係る半地下構造物の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0060】
例えば、本実施形態では、本発明にかかる半地下構造物Aが都市部の道路構造などであるものとして説明を行ったが、本発明にかかる半地下構造Aは、鉄道構造や水路構造など、他のあらゆる掘割式の半地下構造物に適用可能である。
【0061】
また、本実施形態では、鋼矢板1がU形、ハット形、Z形などの鋼矢板であるものとして説明を行ったが、鋼管矢板など、他の形状の鋼矢板を用いて本発明にかかる半地下構造物Aを構成するようにしてもよい。
【0062】
さらに、本実施形態の半地下構造物Aにおいては、従来仮設の土留め2を本設として適用するため、
図1に示すように、少なくとも一部の鋼矢板1の下端部1a側を支持層G1に到達させ、この支持層G1に根入れして土留め2を形成するようにしてもよい。そして、この場合には、より確実に、土留め2による浮き上がり抵抗を得ることができ、安定的に半地下構造物Aを構築することが可能になる。
【0063】
さらに、上層(の全ての地盤G)が液状化層であった場合、従来では半地下構造物を構築することが困難とされるが、上記のように土留め2を本設に適用するとともに、鋼矢板1を支持層G1に到達させて土留め2を構築することによって、上層が液状化層である場合であっても、半地下構造物Aを構築することが可能になる。
【0064】
また、本実施形態では、側壁部6の上端部6a側から下端部6b側までの上下方向T2の間に複数のずれ止め部材5が土留め2の内面2c全体に略均等に分散配置されているものとした。
【0065】
これに対し、側壁部6の上下方向T2の中央を境に上方に配設された複数のずれ止め部材5の総断面積よりも、側壁部6の下方に配設された複数のずれ止め部材5の総断面積が大きくなるように、複数のずれ止め部材5を配設するようにしてもよい(
図4参照)。
【0066】
そして、この場合には、
図4(a)、(b)、(c)に示すように、主働土圧によって合成壁構造10に作用する曲げモーメント、鋼矢板1と側壁部6の間のずれを引き起こすせん断力が側壁部6の上端部6aから下端部6bに向かうほど(深度方向の深い位置ほど)大きくなるため、側壁部6の上下方向T2の中央を境に上方のずれ止め部材5の総断面積よりも、下方のずれ止め部材5の総断面積が大きくなるように、複数のずれ止め部材5を配設することによって、確実且つ効果的にコンクリート躯体3の位置ずれを防止することができる。このとき、例えば、
図4(a)に示すようにずれ止め部材5の設置本数が下方に向かうほど多くなるように調整したり、下方に向かうほど径が大きなずれ止め部材5を用いるなどして、側壁部5の上下方向T2の中央を境に上方のずれ止め部材5の総断面積よりも、下方のずれ止め部材5の総断面積が大きくすればよい。
【0067】
さらに、
図5に示すように、側壁部6の上端部6a側と下端部6b側にそれぞれ、ずれ止め部材5を集中的に配設するようにしてもよい。
【0068】
この場合には、側壁部6の上端部6a側と下端部6b側にずれ止め部材5を集中的に配設し、鋼矢板1と側壁部6を上端部6a側と下端部6b側で一体に拘束して、上下端部6a、6bの位置ずれを防止する。これにより、少ないずれ止め部材5で効果的に鋼矢板1と側壁部6の間の位置ずれの発生を抑止することができる。よって、側壁部6の全面にずれ止め部材5を配置する場合と比べ、ずれ止め部材費用の削減及びずれ止め部材5の取付作業の負担軽減を図ることが可能になる。
【0069】
さらに、
図6に示すように、一体化した側壁部6と土留め2の合成壁構造10の横断面視で、側壁部6の表面6cに近い土留め2の内面2cの凸面部12に、側壁部6の表面6cから遠い土留め2の内面2cの凹面部13よりもずれ止め部材5を多く配設するようにしてもよい。
【0070】
この場合には、合成壁構造10の壁厚方向T1で中立軸Cに近いほど大きなせん断力が発生するため、中立軸Cに近くなる土留め2の凸面部12にずれ止め部材5を多く配設しておくことによって、確実且つ効果的に鋼矢板1と側壁部6の間の位置ずれを防止することができる。
【0071】
また、土留め2を形成する複数の鋼矢板1の少なくとも一部の鋼矢板1を、
図7及び
図8に示すように、下端部1a側に、この下端部1a側を筒状に形成する引抜抵抗部材15を一体に取り付けて形成するようにしてもよい。そして、このように下端部1a側に引抜抵抗部材15を取り付けると、上下方向T2に開口する貫通空間16が形成される。このため、鋼矢板1を打設した状態で、筒状部分の貫通空間16に土砂が詰まり、引抜抵抗部材15の上方に受動抵抗面が形成され、この受動抵抗面で囲まれた略円錐状の地盤Gが鋼矢板1の引抜抵抗に寄与することになる。これにより、鋼矢板1ひいては本設として使用する土留め2の引抜抵抗力を増大させることが可能になり、コンクリート躯体3の浮き上がり抵抗を増大させることができるとともに、さらに確実に、コンクリートの厚さを大きくすることなく、安定的に半地下構造物Aを構築することが可能になる。確実に引抜抵抗部材15の引抜抵抗力を確保するためには、引抜抵抗部材15が地震時にも液状化しない支持層内に根入れされていると好適である。支持層に根入れされていることで、地表面から支持層へいたる中間層が地震時に液状化した場合でも、確実に引抜抵抗部材15部分で引抜抵抗力を発揮することができる。
【0072】
また、このとき、引抜抵抗部材15は、
図7(a)、
図7(b)に示すように土留め2の内面2c側、外面2d側のどちらに取り付けても引抜抵抗を増大させる効果を得ることができるが、隣地境界の制約がある場合などにおいて、土留め2の内面2c側に設けることが好適である。引抜抵抗部材15のT1方向の厚みが隣地境界線に干渉しない場合は、より大きな地盤Gの受働抵抗面を確保でき浮力に対する抵抗力が大きくなるため、外面2d側に引抜抵抗部材15を設けることが好適である。
【0073】
また、引抜抵抗部材15は必ずしも鋼矢板1の下端部1aに取り付ける必要はなく、
図9に示すように、鋼矢板1の材軸方向の中間部に取り付けてもよい。下部地盤が粘性土層や硬質地盤である場合には、引抜抵抗部材15を当該地盤G内に根入れすることが施工上困難となることがあるため、このような場合は、鋼矢板1の下端部1aを通常の鋼矢板断面のままとしておき、中間部に引抜抵抗部材15を設置することで引抜抵抗力を増大させることが好適である。
【0074】
また、
図10に示すように、土留め2を形成する複数の鋼矢板1の少なくとも一部の鋼矢板1に、鋼矢板1の内面1b及び/又は外面1cから地盤G内に突設される摩擦抵抗部材17を備えて、半地下構造物Aを構成するようにしてもよい。
【0075】
この摩擦抵抗部材17は、特にその形状を限定する必要はないが、例えば、
図11(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、平板状に形成したり、平板に貫通孔を設けて形成したり、T型、H型などとして形成すればよい。地盤Gに接する表面積の大きい形状とすれば地盤Gとの摩擦抵抗を増やすことができるため、浮き上がり抵抗に対してより好適となる。
【0076】
そして、地盤G内に摩擦抵抗部材17が突設されることで、鋼矢板1ひいては土留め2の剛性を高めることができ、コンクリート躯体3側の荷重負担を低減することが可能になる。これにより、コンクリート躯体3の側壁部6を無筋コンクリート造とした場合であっても、より確実に、十分な耐久性を備えた半地下構造物Aにすることができ、側壁部6を無筋コンクリート造にすることによるひび割れ発生の抑止効果、ひいては管理の軽減効果を確実に得ることが可能になる。さらに、曲げモーメントが卓越する箇所に摩擦抵抗部材17を取り付けることで、局部的に鋼矢板1の剛性を高めることができ、作用する曲げモーメントが小さい箇所では鋼矢板1の剛性を小さくすることができるため、鋼矢板1の剛性を低減することも可能になり、材工費の低減を図ることが可能になる。
【0077】
また、摩擦抵抗部材17は、鋼矢板1の上端部1dから下端部1aまでの間に設けられていれば、上記効果を発揮することができる。この一方で、
図9に示すように、鋼矢板1の上端部1d側に設けておくと、摩擦抵抗部材17が比較的軟らかな上層地盤Gに配設されることになるため、摩擦抵抗部材17を設けることによって鋼矢板1の打設時に生じる打設抵抗(貫入抵抗)が増大することを抑えることができる。よって、鋼矢板1の上端部1d側に摩擦抵抗部材17を設けておくと、施工性を損なうことがない。
【0078】
さらに、隣地境界の制約などがある場合には、
図10(b)に示すように、土留め2の外面側の凹み部分に摩擦抵抗部材17を取り付け、摩擦抵抗部材17を壁厚の内側に配設してもよい。