特許第5852891号(P5852891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852891
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】水素発生装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/06 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
   C01B3/06
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-9127(P2012-9127)
(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公開番号】特開2013-147381(P2013-147381A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】512129217
【氏名又は名称】株式会社TI
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰男
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−226502(JP,A)
【文献】 特開2005−335989(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/084790(WO,A1)
【文献】 特開2001−110437(JP,A)
【文献】 特開2002−134141(JP,A)
【文献】 特開2011−190119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 − 3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなる中空の反応セルと、
前記反応セルの一端側を加熱する加熱手段と、
前記反応セルの加熱手段に被われていない部分で加熱手段から離間して設けられ、反応セルの内部において反応場として機能する部分の周囲を冷却する冷却手段と、
前記反応セル内の空気を除去するととともに、反応セル内を常時減圧状態に維持するための真空ポンプと、
前記反応セル内に水を供給する水供給手段と、前記反応セルの加熱される部分内に収納され、その表面から無数の微細粒子が飛散する反応剤とからなる水素発生装置。
【請求項2】
前記反応セル内は、−0.5〜−1気圧の減圧状態に維持される請求項1記載の水素発生装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、少なくとも前記反応セルの一部と接触し、前記反応セルを冷やすための液体が収容される筐体を備え、
前記筐体には、当該液体を循環させる循環手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の水素発生装置。
【請求項4】
前記冷却手段は、前記反応セルと熱的に接続した放熱フィンであることを特徴とする請求項1記載の水素発生装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記水供給手段に接続されるとともに、前記水供給手段の水を前記水供給手段と前記筐体との間で循環させる水循環手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の水素発生装置。
【請求項6】
前記反応剤は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、チタン酸カリウム(K2Tio3)及びチタン酸ナトリウム(Na2TiO3)のうちの一種からなり、これらはアルミナのるつぼに入れられて反応セル内に収納される請求項1記載の水素発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレスの反応容器内にアルカリ金属溶融塩を収納せしめ、この反応容器を500℃前後に加熱し、前記溶融塩の液面から微細粒子を飛散せしめ、この微細粒子群に水蒸気を接触せしめて核変換を起こさせることにより水から水素を採集する技術に関して本件出願人はPCT出願を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】PCT/JP2011/66472
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記出願の技術においては、簡易な構成で水素を安定してより効率よく発生させることが望まれていた。
【0005】
本発明は簡易な構成で水素を安定して効率よく発生させることができる水素発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水素発生装置は、金属材料からなる中空の反応セル(1)と、前記反応セルの一部を加熱するための加熱手段(2)と、前記反応セルの他部を冷却するための冷却手段(30)と、前記反応セル内の空気を除去するための空気除去手段(50)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る水素発生装置において、前記冷却手段は、少なくとも前記反応セルの一部と接触する筐体(31)を備え、当該筐体には前記反応セルを冷やすための媒体が収容されていることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る水素発生装置において、前記冷却手段は、少なくとも前記反応セルの一部と接触し、前記反応セルを冷やすための液体が収容される筐体を備え、前記筐体には、当該液体を循環させる循環手段(35、P)を備えていることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る水素発生装置において、前記冷却手段は、前記反応セルと熱的に接続した放熱フィンを備えていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る水素発生装置において、前記反応セル内に水を供給する水供給手段(25)を備え、前記冷却手段は、少なくとも前記反応セルの一部と接触し、内部に水が収容される筐体を備え、前記筐体には、前記水供給手段と前記筐体とを接続し、前記水供給手段の水を前記水供給手段と前記筐体との間で循環させる水循環手段(35、P)を備えていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る水素発生装置において、前記反応セル内には、金属元素を供給せしめる反応剤(6)が収納されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る水素発生装置は、反応セルと反応セルの一端部を加熱する加熱装置と空気除去装置の他に、反応セルの他端部を冷却する冷却装置を備えているので、より簡易な構成で反応を促進させ水素を安定して効率よく発生させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る水素発生装置の概略図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る水素発生装置の概略図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る水素発生装置の概略図である。
図4】本発明の第4の実施形態に係る水素発生装置の概略図である。
図5】第3の実施形態に係る水素発生装置で採集されたガスの質量分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、本実施形態の水素発生装置は、反応セル1として機能する密閉性を有する金属性の筒状の容器20と、当該容器20の一端側を加熱する加熱装置2と、当該容器の他端側を冷却する冷却装置30と、前記容器20の他端側に設けられる排出管3に接続され、容器内の酸素を取り除くための空気除去手段としての真空ポンプを備える減圧装置50と、を備えている。
【0015】
なお、本実施形態の加熱装置2と冷却装置30は、容器20の一端側と他端側とに夫々設けられているが、必ずしもその位置に設けられている必要はなく、少なくとも加熱装置2と冷却装置30とが離間して設けられていれば良い。
【0016】
反応セル1は、その一端側に取り付けられ、加熱装置として機能する面状ヒータ2a(水素バーナによる加熱でもよい)により350℃以上に加熱され、特に500℃程度の温度に加熱されるのが好ましい。
【0017】
反応セル1は、他端側に開口20aを有する有底筒状に形成された反応セル本体21と、この開口20aを閉塞する蓋体22とを備えており、反応セル本体21と蓋体22とは、留め金具23によって係止され反応セル1内の密封性を保持している。なお、反応セル本体21と蓋体22との間にパッキンを介在させ、反応セル1内の密封性を向上させることも可能である。
【0018】
反応セル本体21は、金属材料を圧延して有底筒状に形成される。また、圧延の他、中実円柱状の金属材料を軸方向に切削して有底筒状に形成することもできる。
【0019】
また、蓋体22は反応セル本体21と同様の金属材料によって形成されている。また、反応セル本体21の他端側には、空気除去手段としての真空ポンプを備える減圧装置50と接続される排出管3が取り付けられている。なお、この排出管3は、蓋体22に設けられていても構わない。
【0020】
また、反応セル本体21及び蓋体22は、表面に酸化被膜を作る金属材料で構成される。例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)等の板状構造体となり得る単体金属、あるいは、ステンレス鋼(SUS304、430、316等)、ニッケル合金(インコネル)、チタン合金(航空機用)、アルミニウム合金(ジェラルミン)、銅合金(黄銅、青銅、白銅)等の合金、更には、鉄に亜鉛(Zn)、スズ(Sn)をメッキしたトタン、ブリキ等が含まれる。
【0021】
これらは、その表面に酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)、酸化銅(CuO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ニッケル(NiO)の酸化膜をそれぞれ形成する。
【0022】
また、合金としてのステンレス鋼は酸化クロムの不動態膜、ニッケル合金は酸化ニッケル(NiO)チタン合金は酸化チタン(TiO2)、アルミニウム合金は酸化アルミニウム(Al2O3)、銅合金又は酸化銅、トタンは酸化亜鉛(ZnO)、ブリキは酸化スズ(SnO2)の膜をそれぞれ形成する。
【0023】
また、反応セル1の他端側には、反応セル1の内部における反応の活性化を図るために、その周面を覆うようにして冷却装置30が取り付けられる。この冷却装置30は、環状に形成される金属製の筐体31を有しており、筐体31の内壁面が反応セル1の外壁面に密着して取り付けられている。例えば、当該筐体31は、上下又は左右2分割に形成され、図示しない留め具によって係止可能になっており、反応セル1への取り付けが容易になっている。この筐体31の内部には、図示しないが冷却液が収容されており、筐体31を伝熱部材として、反応セル1の外壁面を冷却する。
【0024】
なお、この冷却装置30は、特に、反応セル1の内部において反応場として機能させたい場の周囲に取り付けられることが好ましい。また、上記実施形態では、筐体31は反応セル1の全周にわたって設けられているが、反応セル1の半周、若しくは一部に設けるようにしても構わない。さらに、筐体31内に収容される冷却液としては水などが考えられるが、液体に限られるものではなく、例えば、一般的に公知のゲル状又は固形状の媒体(温度を下げるための物質)などでも構わない。
【0025】
このように構成された本実施形態に係る水素発生装置は、減圧装置の真空ポンプを駆動することで、反応セル1内からは操作開始前に完全に空気、特に真空ポンプからの作動により空気中の酸素が除去される。反応セル1内が無酸素状態ではあるが、水素が反応セル1内で発生すると、完全な真空ではなくなるので、真空ポンプを常時作動させておいて、反応セル1内を−0.5〜−1気圧の減圧状態に保つようにする。
【0026】
このように反応セル1内が無酸素状態で面状ヒータ2aによって反応セル1を350℃以上、特に500℃前後に加熱されると、反応セル1の内壁から水素が発生する。このとき、反応セル1内に空気中の酸素が存在すると、この酸素が反応セル1の内壁に当初から存在した酸化膜とは別の新たな酸化膜を生じ、反応を短時間で停止させてしまう。また、反応セル1内が常圧だと発生した水素が内壁付近に滞溜して反応を妨げるが、真空ポンプ4により減圧すると、発生した水素がその内壁から除去され、反応が活性化する。
【0027】
図1の第1の実施形態に係る水素発生装置においては、反応セル1内に水は供給されていないが、図2に示す第2の実施形態に係る水素発生装置においては、同様の材料で形成された反応セル1の一端側に水又は水蒸気を供給する水供給手段である水タンク25と接続された水供給パイプ5を取付け、ここから水を反応セル1内に供給すると、水は直ちに120℃程度の水蒸気となり、反応セル1内の水蒸気は、反応セル1の内壁に接触し電離して水素を放出する。したがって、発生する水素の量は第1の実施形態に係る水素発生装置の場合に比較して増大する。
【0028】
また、第1の実施形態で示す冷却装置30の筐体31内に収容されている冷却液の代わりに、図2に示すように、水タンク25内の水を冷却装置30の筐体31内に供給し、更に、供給された水を水タンク25に戻す循環経路35及び水タンク25内の水を循環させるポンプPを、水タンク25と筐体31との間に設けることで、効率良く反応セル1の他端側を冷却することができる。
【0029】
なお、当該循環経路とポンプPは、水タンク25を介さずに単に水を循環させるようにしても構わない。この場合には、循環経路を外気に触れるようにして構成することが好ましい。
【0030】
さらに、図3に示す第3の実施形態に係る水素発生装置においては、同様の材料で形成された反応セル1内に水を供給するとともに、反応剤6を収納したものである。反応剤6としては、300℃以上で溶融塩を作る水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)が最も好ましい。固体反応剤としては、チタン酸カリウム(K2TiO3)、チタン酸ナトリウム(Na2TiO3)が好ましい。これらの反応剤は大きな親水性を示す。すなわち、反応剤はアルカリ金属と酸素を含むものであり、第1の実施形態に係る水素発生装置と比較して著しく水素発生量は増大し、第2の実施形態に係る水素発生装置よりも単位時間当りの水素発生量は多い。この場合、反応剤6表面からは、ナノオーダーの目には見えない無数の微細粒子が飛散し、この微細粒子が反応セル1の内壁と反応して水素が発生する。
【0031】
反応剤6は、面状ヒータ2aで加熱されることにより300℃以上で溶融塩となり、その液面から無数のナノオーダーの微細粒子Pが反応セル1の中間部分(反応空間)に充満している。また、反応剤6としては、500℃程度では固体のチタン酸カリウム(K2TiO3)、チタン酸ナトリウム(Na2TiO3)でもよい。なお、この反応剤6は、適宜、補充されるが、反応剤6を補充する場合には、蓋体22を取り外すことによって行われる。
【0032】
また、第1、及び第2の実施形態に係る水素発生装置の冷却装置30では、冷却液を収容又は循環させることで反応セル1を冷却するようにしたが、例えば、図3に示すように、反応セル1の他端側の周面に配置される筐体31の外壁面をフィン状に(放熱フィンとして)形成して、筐体31を伝熱部材として反応セル1と熱的に接続し、外気による空冷にて反応セル1を冷却するようにしても良い。
【0033】
なお、第2の実施形態において、冷却効果を上げるために、筐体31の外壁面をフィン状に形成して冷却液とフィンによる冷却効果によって反応セル1を冷却するようにしても構わない。
【0034】
次に、図4を参照して上述した第2の実施形態に係る水素発生装置を具体化した第4の実施形態に係る水素発生装置10について説明を行う。
【0035】
図4に示すように、本実施形態の水素発生装置は、反応セル1として機能する密閉性を有する金属性の筒状の容器20と、当該容器20の一端側を加熱する加熱装置2と、当該容器20の他端側を冷却する冷却装置30と、容器20の他端側に接続される排出管3を介して連絡し、水素を含む気体と水蒸気とを分離するための分離装置60と、分離した水素を含む気体を排出する排出管67と、排出管67を介して連絡する空気除去手段としての真空ポンプを備える減圧装置50と、減圧装置50の下流側であって、当該排出管67を介して連絡し、水素を除く他の気体を除去し水素のみを取り出す除去槽70と、分離した水素を排出する排出管70aを介して連絡し、水素を貯留する水素タンク80と、を備えている。
【0036】
反応セル1は、上述した第2の実施形態に係る水素発生装置と同様の構成をしており、内部に水酸化ナトリウム(NaOH)が反応剤6として収納されている。なお、反応セル1は、内部の反応剤6を適宜面状ヒータ2a側に送り出すことができるように面状ヒータ2a側が下となるように水平から若干傾いて配置されている。
【0037】
反応セル1の水供給パイプ5は、水タンク25に接続されており、図示しないバルブの開閉によって反応セル1内に所定の量の水を供給することができるように構成されている。このバルブは、手動式であっても自動式であっても構わないが、自動式である場合には、コントローラ(図示せず)による電子制御によって開閉することができる。
【0038】
また、反応セル1の一端側には、面状ヒータ2aが取り付けられており、反応セル1が加熱される。面状ヒータ2aの加熱温度は、図示しないヒータコントローラ等によって所定の温度に制御される。
【0039】
一方、反応セル1の他端側には、冷却装置30が取り付けられており、反応セル1が冷却される。本実施形態では、この冷却装置による反応セル1の温度は制御されないが、例えば、ペルチェ素子等の電気的温度制御装置を更に設けることで所定の温度に制御可能である。
【0040】
排出管3は、反応セル1内から空気を除去するために真空ポンプを備える減圧装置50と接続されるが、反応セル1内で発生した気体は水蒸気を含むため、そのまま真空ポンプを駆動させると、真空ポンプ内に水蒸気が混入し真空ポンプを損傷してしまう。このため、真空ポンプの保護のために、本実施形態に係る水素発生装置は、排出管3は、分離装置60を介して真空ポンプを備える減圧装置50と接続されている。
【0041】
排出管3は、反応セル1内で発生した水素(H)と反応しなかった未分解の水蒸気(H2O)を排出し、水素と水蒸気を分離する分離装置60内の底部に延びている。この分離装置60は、コールドトラップと称されるもので、水蒸気を冷却して凍らせる有底筒状の収納部61と、この収納部61の周囲を冷却する冷却体65と、を備えている。また、収納部61の上部には、水素を排出するための水素用排出パイプ67が外部へと延びており、真空ポンプを備える減圧装置50と接続されている。なお、水素用排出パイプ67は、減圧装置50を介して水素タンク80と接続されて、水素が当該水素タンク80に貯留される。
【0042】
なお、反応セル1内で発生した気体は、水酸化ナトリウムの微粒子又は気体状の水酸化ナトリウムが含まれるため、水素とこれらを分離する必要がある。本実施形態に係る水素発生装置10は、減圧装置50の下流であって、水素タンク80に接続される前の経路上に除去漕70が設けられている。除去漕70は内部に水72が満たされたタンクであり、真空ポンプによって引かれた気体を水に通している。このように真空ポンプによって引かれた気体を水72に通すことで、気体内に含まれる水酸化ナトリウム(Na)を水に溶かし水素のみを取り出すことができる。
【0043】
次に、図5を参照して具体的な実験データを開示しながら本実施形態に係る水素発生装置について説明する。
1.仕 様
1)反応セルの寸法
直径10cm 長さ40cm
2)材質
SUS304(18%Cr−8Ni残Fe)
内壁にSiO2、Fe2O3、Cr2O3、MnO2、CuOを均等に混合した塗
料を塗布した。
3)アルミナ(Al2O3)のるつぼに反応剤としてカセイソーダ(NaOH)を
1mol入れて反応セル内の一端側に設置した。
4)温度
反応セルの一端側を500〜520℃に加熱した。
5)反応セルの内壁の塗料と反応剤を取り換えずに一連の実験を2度(A、B実験)行った。また、減圧にしないで正圧での実験(C実験)を1度行った。
2.結 果
1)A実験
・1日目 注水量 699cc
ドレン回収量 653cc
実注水量 46cc
H2発生量 366l
・2日目 注水量 804cc
ドレン回収量 698cc
実注水量 106cc
H2発生量 701l
・3日目 注水量 787cc
ドレン回収量 736cc
実注水量 51cc
H2発生量 323l
A実験では、上述のように3日間行い(1〜3回)、その総計は以下の通りであり、A実験終了後NaOHの使用量と反応容器の増加した重量とを測定した。
・総計
総注水量 2,290cc
総ドレン回収量 2,087cc
総実注水量 203cc
NaOH使用量 27.7g
総H2発生量 1,417l
反応容器の増加重量 15g
2)B実験
・1日目 注水量 431cc
ドレン回収量 428cc
実注水量 3cc
H2発生量 49l
・2日目 注水量 372cc
ドレン回収量 342cc
実注水量 30cc
H2発生量 220l
・3日目 注水量 398cc
ドレン回収量 374cc
実注水量 24cc
H2発生量 204l
・4日目 注水量 451cc
ドレン回収量 418cc
実注水量 33cc
H2発生量 278l
・5日目 注水量 788cc
ドレン回収量 761cc
実注水量 27cc
H2発生量 237l
・6日目 注水量 360cc
ドレン回収量 344cc
実注水量 16cc
H2発生量 99l
・総計
総注水量 2,800cc
総ドレン回収量 2,667cc
総実注水量 133cc
総H2発生量 1,087l
NaOH使用量 16g
反応容器の増加重量 10g
3)C実験
反応容器内を常圧とし、水タンク11から0.1cc/min〜0.5cc/minの水を供給し、真空ポンプは停止したままとした。
・総計
実注水量 178cc
総ドレン回収量 163cc
実注水量 15cc
総H2発生量 8l
反応容器内を開けると、内壁が真っ赤に錆びていた。
【0044】
反応セル1内で発生した気体を質量分析器で分析したところ、図5に示すような結果となり、水素が95%以上であり、酸素は0.14%と殆んど無視できる程であった。このように、本実施形態に係る水素発生装置10は、簡単な構成で大量の水素を得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の方法及び装置は水素ステーション用、船舶用、水素発電用又はエネファーム用の水素発生装置として利用され得る。
【符号の説明】
【0046】
1 反応セル
2 加熱装置
6 反応剤
30 冷却装置
50 減圧装置
図1
図2
図3
図4
図5